【2026年9月2日更新】長野県千曲市の「稲荷山温泉ホテル杏泉閣」(客室数44室)は、近隣施設との競合による業績低迷に新型コロナウイルス感染拡大の影響が重なり、運営会社の稲荷山温泉(株)が2020年4月11日をもって事業を停止し、閉館した。負債は2019年3月期末時点で約6億3,200万円。閉館から約6年を経た2026年6月3日、跡地を含む区画にはドラッグストア「クスリのアオキ稲荷山店」が開業している。本記事では2020年4月14日公開時の速報に加え、倒産の経緯と跡地の現在をまとめる。
稲荷山温泉(株)(資本金9840万円、長野県千曲市稲荷山571-1)は、4月11日をもって事業を停止し、事後処理を弁護士に一任した。「稲荷山温泉ホテル杏泉閣」(長野県千曲市稲荷山571-1、客室数44室)を運営していた。
温泉宿泊施設、宴会・日帰り利用も、地元では存在感、44室

出典:稲荷山温泉ホテル杏泉閣
同社は、1956年12月に温泉宿泊施設の運営を目的に設立されたもので、当初は旧更級郡稲荷山町及び地元住民が出資する第三セクター方式により運営されていた。
1995年には完全民営化され、多くの地元関係者出資のもとで温泉宿泊施設「稲荷山温泉ホテル杏泉閣」を運営。宿泊のほか宴会、日帰り利用にも対応し、2012年3月期には年収入高約2億8,700万円を計上していた。
アクセスは、長野自動車道更埴ICから車で10分、しなの鉄道屋代駅から車で10分、JR中央線稲荷山駅から車で5分。
地元では大きな存在感を有する施設として知られたが、近年は近隣施設との競合の激化などから業績が低迷。従前の設備投資負担も重荷となり、厳しい経営を続けていた。この間、事業再建に向けた取り組みも模索されてきたが、2019年3月期の年収入高が約1億7,300万円にとどまるなど業況は回復せず、今年に入ってからは新型コロナウイルスの感染拡大の影響が広がったことも重なり先行きの見通しが立たず、事業の継続を断念した。
同館のHPには4月11日から営業を休業する旨が記されている。
負債は2019年3月期末時点で約6億3,200万円。
長野県では木曽町の温泉宿泊施設「ホテル木曽温泉」を運営する合同会社おやどが、3月19日付けで事業を停止しており、新型コロナ関連の倒産は同社を含めると県内では2件目となる。
TDBが報じた。

出典:稲荷山温泉ホテル杏泉閣
長野県千曲市ホテル展開状況
メトロエンジンリサーチによると、千曲市には宿泊施設が46、部屋数にして1,361室が提供されている。新規開業予定は確認できなかった。
旅館が30施設と多く展開しているエリア。
44室の同館は同市内で9番目の規模の宿泊施設。
倒産・閉館の経緯(2020年4月)
杏泉閣の歩みと閉館までの経緯を時系列で整理する(いずれも公開当時の報道・信用調査情報に基づく)。
- 1956年12月:旧更級郡稲荷山町と地元住民が出資する第三セクター方式で稲荷山温泉(株)を設立
- 1995年:完全民営化。地元関係者の出資のもと「稲荷山温泉ホテル杏泉閣」(44室)を運営し、宿泊のほか宴会・日帰り利用にも対応
- 2012年3月期:年収入高約2億8,700万円を計上
- 2019年3月期:近隣施設との競合激化などで年収入高は約1億7,300万円に減少。同期末の負債は約6億3,200万円
- 2020年1月以降:新型コロナウイルス感染拡大の影響が広がり、先行きの見通しが立たなくなる
- 2020年4月11日:事業を停止し、事後処理を弁護士に一任。新型コロナ関連倒産としては長野県内2件目
倒産の直接の引き金は新型コロナウイルスによる利用急減だが、その前から業績低迷と設備投資負担という構造的な課題を抱えており、コロナ禍が最後の一押しとなった形だ。
跡地の現在:2026年6月にドラッグストアが開業
閉館後の跡地については、2025年12月11日付で大規模小売店舗立地法第5条第1項(新設)に基づく「(仮称)クスリのアオキ稲荷山店」の届出が長野県に提出された。届出上の店舗面積は1,363平方メートル、駐車場台数は52台で、長野県は「届出書記載の施設の配置及び運営方法は、法令及び国が定める指針に適合している」との審査結果を公表している。
届出・公告上の店舗所在地は「千曲市稲荷山571-1ほか」とされ、旧杏泉閣の所在地(千曲市稲荷山571-1)と一致する。すなわち、旧杏泉閣の敷地を含む区画が商業施設用地として再利用された形だ。
店舗は2026年6月3日に「クスリのアオキ稲荷山店」として開業した。運営会社の公式発表によると、所在地は長野県千曲市大字稲荷山560番地3、営業時間は9時から22時まで。同社にとって長野県内38店舗目、千曲市内では4店舗目の出店となる。温泉宿泊施設としての再開ではなく、閉館から約6年を経て跡地は生活利便施設へと転換された。
出典:長野県 大店立地法届出書の審査結果/クスリのアオキホールディングス ニュースリリース(2026年6月2日)
千曲市の宿泊市場のいま(2026年9月時点)
杏泉閣が立地した千曲市は、戸倉上山田温泉を擁する温泉地エリアである。OTA公開データをもとにした編集部集計では、2026年9月時点でOTA上で販売中の市内宿泊施設はN=24、1室2名利用時の平均掲載価格は23,901円(税込・1室あたり)となっている。前年同月(2025年9月、N=22)の平均掲載価格は31,255円で、販売施設数は前年からわずかに増えており、閉館が相次いだコロナ禍を経てもエリアの宿泊供給は維持されている。なお平均掲載価格は集計対象施設の入れ替わりの影響を受けるため、単純な価格下落とは限らない点に留意されたい。
出典:ホテルバンク編集部調べ(OTA公開データ・2026年9月時点)
よくある質問(FAQ)
Q. 稲荷山温泉ホテル杏泉閣はなぜ倒産したのですか?
A. 近隣施設との競合激化などで業績が低迷し(2019年3月期の年収入高は約1億7,300万円と、2012年3月期の約2億8,700万円から大きく減少)、従前の設備投資負担も重荷となる中、2020年に入って新型コロナウイルス感染拡大の影響が重なり先行きの見通しが立たず、事業継続を断念しました。
Q. いつ閉館したのですか?
A. 運営会社の稲荷山温泉(株)は2020年4月11日をもって事業を停止し、事後処理を弁護士に一任しました。負債は2019年3月期末時点で約6億3,200万円です。
Q. 杏泉閣の跡地は現在どうなっていますか?
A. 大規模小売店舗立地法の届出上の店舗所在地「千曲市稲荷山571-1ほか」が旧杏泉閣の所在地(稲荷山571-1)と一致する区画で、2026年6月3日にドラッグストア「クスリのアオキ稲荷山店」が開業しました。
Q. 稲荷山温泉に今も入浴できますか?
A. 杏泉閣は2020年4月の閉館後、宿泊・日帰り入浴とも営業していません。千曲市内では戸倉上山田温泉エリアを中心に宿泊施設が営業を続けています(2026年9月時点でOTA上で販売中の市内宿泊施設はN=24)。
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