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長崎中華街にヒルトン・ガーデン・イン313室、2027年開業予定|新地1km圏3,842室の+8.1%

投稿日 : 2026.10.27

長崎県

投資・開発

長崎中華街にヒルトン・ガーデン・イン313室、2027年開業予定|新地1km圏3,842室の+8.1%

大和ハウス工業とヒルトンが2025年4月に発表した「ヒルトン・ガーデン・イン長崎中華街」(長崎市新地町9-1、地上13階・313室)は、2027年開業予定(発表文では2027年前半)の案件で、九州で初めて、国内では京都四条烏丸(2022年開業・250室)、横浜みなとみらい(2026年開業・228室)に続く3軒目のヒルトン・ガーデン・インになる。313室という規模は、新地から半径1km圏で2026年に数えられる3,842室の8.1%に相当し、同じ圏内で2027年2月に140室の別案件も控える。本稿では、この1棟が入る新地1km圏の客室ストックの推移、長崎市の推定成約ADRの12ヶ月の山谷、長崎県のカテゴリ別推定OCC、周辺の就業・居住人口、埋立地としての災害リスクと公示地価を順に整理し、開発事業者・地方銀行・ホテルREITの視点で吸収余地を読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

本記事の客室ストックは、長崎新地から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月20日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。

LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。ブッキングカーブ=チェックイン日に向けたOTA残室数の推移で、本稿はLT45からLT1までの観測点のみを用いる。ヒルトン系ホテルの客室数・開業年・ブランド区分は、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)の記載に従う。

計画客室数
313室
地上13階・約27㎡中心・2027年開業予定
新地1km圏の客室数(2026年)
3,842室
70軒。313室は+8.1%
長崎市ADR 2026年9月
¥9,693
前年同月比−4.8%(N=63施設)
長崎県ビジネスホテル推定OCC
78.9%
2026年9月・対象57施設/4,752室
1km圏の就業人口
38,988人
事業所4,213・オフィス系25.8%
Key Takeaways
  • — 313室は新地1km圏3,842室(2026年・70軒)の+8.1%、稼働中ストック3,532室の+8.9%。2027年2月開業予定の140室と合わせ、同じ年に+453室(+12.8%)が入る。
  • — 長崎市の推定成約ADRは2026年9月9,693円(前年同月比−4.8%、N=63施設)。12ヶ月平均は9,911円で、11月と2月に山、6月に谷がある。
  • — 長崎県の推定OCCは2026年9月にビジネスホテル78.9%・シティホテル81.8%。シティは金・土が85.9%と、単価調整局面でも稼働は高い。
  • — 1km圏で推定成約ADR1万5,000円以上は2軒・241室(室数の7.2%)。本案件が15,000〜20,000円帯に入れば、帯の室数は554室へ2.3倍になる。
  • — 計画地は商業地域(容積率500%)で、津波浸水深0.3〜1m未満・液状化しやすい干拓地。周辺の商業地地価公示は5地点すべて3年連続プラス。

案件の概要 — 敷地2,442㎡に延床15,496㎡、1室あたり延床は約49.5㎡

まずは発表資料に沿って案件の輪郭を押さえておきたい。共同通信PRワイヤーに2025年4月24日付で配信された大和ハウス工業とヒルトンの発表によると、計画地は長崎市新地町9-1、新地中華街に隣接する敷地2,442.15㎡で、地上13階・延床15,495.62㎡のホテルを建てる。客室313室は約27㎡を中心とし、館内にはブランド共通のレストラン「Together & Co.」、24時間営業のセルフ型ショップ「&To Go」、フィットネスセンターを備える。着工は2025年5月21日の予定で、開業時期は「2027年前半」と記されているが、本稿ではヒルトンの会社概要に従い「2027年開業予定」と表記する。延床を客室数で割ると1室あたり約49.5㎡になり、宿泊特化型としては共用部に厚みのある構成といえる。

項目内容
名称ヒルトン・ガーデン・イン長崎中華街
所在地長崎県長崎市新地町9-1(住居表示)
規模地上13階・313室(約27㎡中心)、敷地2,442.15㎡、延床15,495.62㎡
事業主/ブランド大和ハウス工業/ヒルトン・ガーデン・イン(九州初・国内3軒目)
開業時期2027年開業予定(発表文では2027年前半)
アクセス長崎駅から路面電車で約10分。西九州新幹線で福岡から約90分
主要施設レストラン「Together & Co.」、24時間ショップ「&To Go」、フィットネスセンター
出典:共同通信PRワイヤー(大和ハウス工業/ヒルトン、2025年4月24日)、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

ブランドの位置づけも確認しておく。ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)によれば、ヒルトン・ガーデン・インは世界1,165軒・65の国と地域で展開するブランドで、国内の運営はヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸(250室・2022年開業)とヒルトン・ガーデン・イン横浜みなとみらい(228室・2026年開業)の2軒である。長崎にはフルサービス型のヒルトン長崎(200室・宴会場3・料飲施設3、2021年開業)がすでにあり、同資料は国内の開業予定13軒の一つとして本案件を「2027年開業予定・313室」と記載している。発表文の中でヒルトン側は、フルサービスのヒルトン長崎とフォーカストサービスの本案件を併せて運営し、幅広い客層に対応すると述べており、同一都市内でのブランド階層の使い分けが前提になっている。国内の外資系ブランドの開業計画全体の中で本案件がどの位置にあるかは、ヒルトン高山283室・長崎313室ほか外資15軒2,709室 — 2026〜2031年開業パイプラインで既存ストックとの突き合わせを整理している。

新地1km圏の客室ストック — 軒数は2倍、室数は+13.5%、1軒あたりは97室から55室へ

ここからが本稿の主題である。新地(北緯32.7415度・東経129.8737度)を中心に半径1kmと3kmで客室ストックの年次推移を追うと、1km圏は2017年の35軒・3,385室から2026年の70軒・3,842室へと、軒数が2倍になる一方で室数は+13.5%にとどまった。1軒あたりの平均客室数は97室から55室へ小さくなっている。3km圏も83軒・5,966室から147軒・7,461室へ、軒数+77%・室数+25%と同じ形をしている。つまり、この10年で長崎中心部に加わった宿の多くは小規模で、313室という1棟の規模感は圏内の平均的な施設の5〜6軒分に相当する。

新地1km圏の客室ストック推移(2017〜2026年、各年末時点で開業済・閉館前の施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、1km圏70軒)
年1km圏 軒数1km圏 室数1軒平均3km圏 軒数3km圏 室数
2017年353,38597室835,966
2020年543,57066室1136,127
2023年603,74962室1246,627
2024年633,86161室1337,248
2025年673,96859室1397,362
2026年703,84255室1477,461
313室の比率+8.1%+4.2%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース)。各年末時点で開業済かつ閉館前の施設を集計

ただし、この年次推移は客室数10室未満のゲストハウスや貸別荘も含めた全施設ベースである。競合として意味を持つ10室以上の施設に絞った稼働中のストックを別途集計すると、2026年10月20日時点で掲載43軒・4,653室のうち、直近3か月に主要予約サイトで販売価格が確認できた稼働中の施設は28軒・3,532室だった。この28軒の内訳はビジネスホテル21軒・3,028室、シティホテル3軒・362室、デラックスホテル2軒・104室で、客室規模では201室以上が7軒・1,678室と全体の半分近くを占める。開業年代で見ると1970年代の5軒・510室と1990年代の5軒・640室が今も稼働の中核にあり、2020年代は7軒・797室とまだ全体の2割強にすぎない。313室は稼働中ストック3,532室に対して+8.9%にあたる。

客室規模掲載 軒数掲載 室数稼働中 軒数稼働中 室数
50室以下153477213
51〜100室85566415
101〜200室121,77281,226
201室以上81,97871,678
合計434,653283,532
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年10月時点)。1km圏・客室数10室以上・レジャーホテル除く

開業後の姿を先取りすると、1km圏には本案件のほかに2027年2月開業予定の「BASE LAYER HOTEL長崎」(140室、計画地から約310m)が掲載されており、2027年中に合わせて453室が加わる計算になる。稼働中ストック3,532室に対しては+12.8%で、2024年に3km圏へ一度に加わったスタジアムシティホテル長崎(243室)・長崎マリオットホテル(207室)・ホテルインディゴ長崎グラバーストリート(66室)の計516室に匹敵する規模の供給が、今度は新地周辺に集中して入る。開業年の供給圧力としては、この2年間で最も大きい局面になるだろう。

新地1km圏の稼働中施設(円の大きさ=客室数)と計画地
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(稼働中28軒)。赤=計画地、紺=シティ/デラックス、青=ビジネス、グレー=ヒルトン長崎・長崎マリオット(1km圏外の参照)
計画地の概要
所在地:長崎市新地町9-1
中心座標:32.7415, 129.8737
用途地域:商業地域(容積率500%・建蔽率80%)
最寄駅:長崎駅から路面電車約10分
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域)
1km圏の稼働中ストック構成
ビジネスホテル21軒・3,028室
シティホテル3軒・362室
デラックスホテル2軒・104室
ホステル・ゲストハウス2軒・38室
2027年の追加(本案件+140室)+453室(+12.8%)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング

長崎市の推定成約ADR — 12ヶ月平均9,911円、2月と11月に山、6月に谷

供給の次は単価である。長崎市(対象62〜65施設の中央値)の推定成約ADRは、2025年10月から2026年9月までの12ヶ月平均で9,911円だった。最も高いのは2025年11月の12,537円で、次いでランタンフェスティバル期の2026年2月が11,554円、最も低いのは2026年6月の7,734円と、山と谷の差は1.6倍に開く。前年同月比では2025年11月(+5.9%)、2026年1月(+3.0%)、2月(+1.3%)がプラスだったのに対し、2026年3月から8月は−7.2%から−21.1%のマイナスが続き、直近の2026年9月は9,693円で−4.8%だった。一方で長崎県全体の中央値は2026年9月に7,988円と前年同月比+7.3%(N=257施設)であり、市中心部の中央値施設だけが単価を譲っている構図が見える。2024年に3km圏へ516室の上位帯が加わり、2025年以降に既存施設の価格帯が再編されつつある可能性があるが、中央値は対象施設の構成変化にも左右されるため、ここでは水準と季節パターンの把握にとどめたい。長崎県でシティホテルとビジネスホテルの前年比の向きが分かれた構造については、長崎のシティホテル、推定成約ADRが6-7月に二桁マイナス — ビジネスホテルは7か月連続プラスを維持した構造差が確定月ベースで掘り下げている。

長崎市 推定成約ADR 月別推移(年別重ね描き・確定月のみ、N=62〜65施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR=対象施設の中央値・税抜相当)
月推定成約ADRN前年同月前年同月比
2025年10月¥11,64063¥12,226−4.8%
2025年11月¥12,53763¥11,833+5.9%
2025年12月¥9,81763¥10,064−2.5%
2026年1月¥9,43262¥9,158+3.0%
2026年2月¥11,55462¥11,408+1.3%
2026年3月¥8,91063¥10,538−15.4%
2026年4月¥8,57163¥10,824−20.8%
2026年5月¥10,48662¥11,303−7.2%
2026年6月¥7,73462¥9,661−19.9%
2026年7月¥8,32462¥10,554−21.1%
2026年8月¥10,23563¥12,097−15.4%
2026年9月¥9,69363¥10,184−4.8%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(長崎市・推定成約ADRの中央値)

先の月も触れておくと、調査時点の掲載水準から推定した2026年11月は14,758円、ランタンフェスティバルが見込まれる2027年2月は14,748円で、いずれも確定月の同月を上回る水準で掲載が始まっている。これらは今後の販売で変動する推定値であり、確定月と同列には扱えない。それでも、11月と2月に単価の山が来るという季節性は3年続けて崩れておらず、2027年開業予定の本案件が開業初年度に取り込める最初の繁忙期が2027年11月になるか、あるいは開業の時期次第で2027年2月に間に合うかは、初年度の収益を左右する論点になるだろう。

価格帯の分布 — 1km圏で1万5,000円以上は2軒241室、313室が入れば帯の厚みは倍以上になる

では本案件がどの価格帯に入るのか。2026年9月の推定成約ADRで1km圏の稼働中施設を並べると、8,000円未満が8軒・910室、8,000〜10,000円が8軒・1,333室と、この2帯で全体の3分の2を占める。10,000〜12,000円は4軒・675室、12,000〜15,000円は1軒・207室で、15,000円以上はドーミーインPREMIUM長崎駅前(218室・15,678円)とセトレ グラバーズハウス長崎(23室・20,310円)の2軒・241室にとどまる。推定成約ADRを算出できた23軒・3,366室のうち、15,000円以上の帯は室数で7.2%しかない。ブランドの既存2軒の水準を参照すると、ヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸は2026年9月に23,737円(2025年7月〜2026年9月のレンジは18,700〜41,700円)、ヒルトン・ガーデン・イン横浜みなとみらいは同月27,371円で、いずれも宿泊特化型の上位帯に位置している。長崎の単価水準はこの2都市より低いため同じ水準をそのまま置くことはできないが、仮に15,000〜20,000円帯に入るとすれば、1km圏でその帯の室数は241室から554室へと2.3倍になり、既存の厚い8,000〜10,000円帯とは競合しにくい位置取りになる。

新地1km圏 稼働中施設の価格帯別客室数(2026年9月の推定成約ADR、N=23軒・3,366室)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。推定成約ADRを算出できない5軒・166室は含まない

上位帯の棲み分けはどうか。1km圏の外側、計画地から1.1〜2.1kmには2万円台以上の施設が揃っている。ヒルトン長崎(200室・2021年開業、計画地から約1.4km)は2026年9月の推定成約ADRが28,386円で、2025年9月の29,394円からほぼ横ばいに保たれている。長崎マリオットホテル(207室・2024年開業)は37,477円、スタジアムシティホテル長崎(243室・2024年開業)は24,191円、ホテルインディゴ長崎グラバーストリート(66室・2024年開業)は22,630円で、いずれも1km圏の最上位であるセトレの20,310円より上にある。本案件が宿泊特化型の上位帯に入るなら、ヒルトン長崎とは1万円前後の価格差を保った階層構造になり、発表文でヒルトン側が述べた「フルサービスとフォーカストサービスの併営」はこの価格差を前提にしたものと読める。

施設客室数開業年計画地からの距離ADR 2025年9月ADR 2026年2月ADR 2026年9月
長崎マリオットホテル2072024約1.2km¥48,791¥36,672¥37,477
ヒルトン長崎2002021約1.4km¥29,394¥29,323¥28,386
スタジアムシティホテル長崎2432024約2.1km¥27,398¥27,289¥24,191
ホテルインディゴ長崎グラバーストリート662024約1.2km¥27,720¥24,449¥22,630
セトレ グラバーズハウス長崎232015約0.8km¥20,287¥23,235¥20,310
ドーミーインPREMIUM長崎駅前2182021約1.0km¥13,173¥14,900¥15,678
カンデオホテルズ 長崎新地中華街2072020約0.2km¥13,295¥20,189¥13,987
(参考)ヒルトン・ガーデン・イン京都四条烏丸2502022—¥23,677¥18,732¥23,737
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設別推定成約ADR・税抜相当)、客室数・開業年はヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)および当社集計

長崎県の推定OCC — ビジネス78.9%・シティ81.8%、金土はシティが86%に届く

単価が調整局面にある一方、稼働は高い水準にある。長崎県のOTA掲載在庫ベースの推定OCC(確定月)は、2026年9月にビジネスホテルが78.9%(対象57施設/4,752室)、シティホテルが81.8%(対象15施設/1,483室)、全施設では77.2%(対象203施設/10,998室)だった。7月・8月も同じ順序で、シティは81.2%・82.8%、ビジネスは78.2%・78.5%と3ヶ月を通じて安定している。曜日で分けると、9月のシティホテルは金・土が85.9%、日〜木が80.3%と5.6ptの差があるのに対し、ビジネスホテルは金・土78.0%、日〜木79.2%とむしろ平日の方が高い。観光と業務の需要が曜日を補い合っている土地柄といえる。

カテゴリ対象施設/客室2026年7月2026年8月2026年9月9月 金・土9月 日〜木
全施設203施設/10,998室75.6%78.3%77.2%78.5%76.8%
ビジネスホテル57施設/4,752室78.2%78.5%78.9%78.0%79.2%
シティホテル15施設/1,483室81.2%82.8%81.8%85.9%80.3%
リゾートホテル28施設/2,239室73.2%80.1%76.5%——
旅館40施設/1,513室64.3%67.5%69.3%——
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)、対象施設/客室は2026年9月(主要予約サイト掲載ベース)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります
長崎県 ブッキングカーブ(2026年9月の月間平均、LT45→LT1、販売済み客室の割合)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。ビジネスホテル=対象59施設/4,785室、シティホテル=対象16施設/1,512室(主要予約サイト掲載ベース・月間平均)

ブッキングカーブを見ると、2026年9月のビジネスホテルはLT45時点で販売済み56.1%、LT1で78.8%と、最後の45日で22.7ptを積み上げている。シティホテルはLT45で61.8%、LT1で81.8%と、出発点が5.7pt高く、直前の伸びは20.0ptでやや小さい。シティ帯は早めに埋まり、ビジネス帯は直前需要で埋まるという、宿泊特化型の上位帯に入る施設が両方の性格を持ちうる位置にあることを示している。同じ2026年9月の長崎県を宿泊日ごとに追った進捗は、長崎県9月前半のブッキングカーブ点検 — 9/12(土)は推定OCC82.7%、旅館とシティに24.2pt差も参考になる。

より長い期間の稼働は観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率で確認できる。長崎県のビジネスホテルは2019年の年平均73.6%に対し2024年69.2%、2025年70.5%、シティホテルは2019年72.7%に対し2024年67.1%、2025年72.2%で、シティ帯はコロナ前の水準をほぼ取り戻した。2025年の月別ではビジネスが11月80.9%、10月77.6%、シティが10月81.1%、11月80.8%と秋に山があり、1月はビジネス61.4%・シティ59.2%が谷になる。推定成約ADRの山谷と重ねると、11月は稼働と単価がともに高く、2月は稼働は中位で単価が高い月だと整理できる。

施設タイプ(長崎県)2019年2024年2025年2025年 最高月2025年 最低月
全体55.1%53.2%56.3%11月 67.5%1月 46.0%
ビジネスホテル73.6%69.2%70.5%11月 80.9%1月 61.4%
シティホテル72.7%67.1%72.2%10月 81.1%1月 59.2%
リゾートホテル57.3%53.6%55.9%11月 70.7%1月 39.5%
旅館40.1%30.9%39.6%8月 47.3%1月 29.3%
出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(客室稼働率・確定値、年平均は月次値の単純平均)

需要の二層 — 観光は延べ766万人泊・外国人比率10%、業務は1km圏に就業3.9万人

需要側は観光と業務の二層で見る必要がある。観光庁「宿泊旅行統計調査」によると、長崎県の延べ宿泊者数は2025年に765.7万人泊で、2024年の763.8万人泊から+0.3%、2019年の724.9万人泊と比べると+5.6%だった。外国人延べ宿泊者数は2025年に76.5万人泊と前年の64.3万人泊から+18.9%で、全体に占める比率は10.0%と2019年の10.4%にほぼ並んでいる。月別では4月(7.9万人泊)、10月(7.8万人泊)、11月(8.0万人泊)に外国人が多く、国内客の少ない1月にも6.1万人泊が入っている。クルーズの寄港も戻っており、九州地方整備局の速報値では2025年の外国クルーズ船の寄港回数は長崎港が194回で九州管内の港湾別で最も多く、博多港の191回を上回った。新地中華街は長崎港の松が枝岸壁から徒歩圏にあり、寄港日の昼間人口が商圏に直接入る立地である。

季節イベントでは、長崎ランタンフェスティバルが2026年は2月6日から23日までの18日間で開催された。今回から2月の第1金曜からの17日間に日程を固定する方針が示されている一方で、2026年は皇帝パレードや出店を取りやめた縮小開催だったと報じられており、2027年の開催規模は本稿執筆時点で公表されていない。会場の中心である新地中華街に隣接する計画地にとって、この期間の単価の山(2026年2月の長崎市ADRは11,554円、1月比+22.5%)をどう取り込むかが開業初年度の設計に関わる。

業務需要の裏付けは就業人口である。総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)を小地域で集計すると、計画地から半径1km圏の事業所数は4,213、従業者数は38,988人で、うちオフィス系の従業者は10,052人(25.8%)だった。長崎市役所(計画地から約0.9km)や長崎県庁(約1.1km)、金融機関の本支店が集まる市中心部の業務地区を圏内または圏の縁に含むためで、9月のビジネスホテルで平日稼働が金・土を上回る背景にはこの就業の厚みがある。

居住人口は別の見方が要る。国土交通省の国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)によれば、半径1km圏の居住人口は2020年の20,869人から2025年に19,687人となり、2040年には16,905人(2020年比−19.0%)、2070年には10,730人まで減る推計である。2025年時点の高齢比率は33.1%と、生産年齢人口の比率56.8%に対して高い。これは国勢調査ベースの居住人口であって滞在人口や来街者数ではなく、宿泊需要を直接左右する指標ではないが、周辺の飲食・小売の商圏が長期的に細る方向にあることは、館内レストランや24時間ショップの位置づけを考える材料になる。

計画地 半径1km圏の居住人口(250mメッシュ、2020年国勢調査ベース)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。居住人口(国勢調査ベース)であり滞在人口ではない

立地リスク — 商業地域500%、津波想定0.3〜1m未満、液状化しやすい干拓地

新地町は江戸期に造成された埋立地の上にあり、ここは港湾埋立地としての災害リスクを数字で確かめておく箇所である。国土交通省 不動産情報ライブラリで計画地の座標を照会すると、用途地域は商業地域(容積率500%・建蔽率80%)で、13階建て・延床15,496㎡の計画は敷地2,442㎡の約6.3倍の床を積む規模になる。ハザード面では、長崎県の津波浸水想定(2016年設定)で計画地周辺は浸水深「0.3m未満」から「0.3m以上1m未満」の帯に入り、想定最大規模の洪水浸水想定では浸水深0.5m未満の区域にあたる。液状化傾向図では地形分類が「干拓地」で「液状化しやすい」区分に該当する。土砂災害警戒区域には含まれない。高潮については、長崎県が2025年2月に有明海沿岸・大村湾沿岸の高潮浸水想定区域図を公表しているが、本稿執筆時点の不動産情報ライブラリの高潮レイヤーには長崎港沿岸の区域が収録されておらず、公表状況は県の河川・海岸部局に確認する必要がある。

項目計画地の該当読み方
用途地域商業地域・容積率500%・建蔽率80%ホテル用途に制約なし
津波浸水想定(長崎県・2016年)浸水深 0.3m未満〜1m未満1階の設備配置・止水計画で対応可能な水深
洪水浸水想定(想定最大規模)浸水深 0.5m未満限定的
液状化傾向干拓地・液状化しやすい基礎・杭の設計条件として織り込む前提
土砂災害警戒区域該当なし—
高潮浸水想定長崎港沿岸分は不動産情報ライブラリに未収録(2026年10月時点)県の公表状況を別途確認
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域・津波浸水想定・洪水浸水想定・液状化傾向図・土砂災害警戒区域)、長崎県(高潮浸水想定区域図)

地価は堅調に推移している。2026年1月1日時点の地価公示で計画地から1km以内の商業地5地点を見ると、最も近い船大工町76番(約470m)は215,000円/㎡で前年比+0.9%、浜町3番32(約510m)は994,000円/㎡で+0.9%、万屋町77番(約630m)は537,000円/㎡で+2.1%、油屋町55番1(約700m)は467,000円/㎡で+3.3%、長崎駅寄りの五島町1番16(約960m)は851,000円/㎡で+1.8%だった。3年を通じて5地点すべてがプラスを維持しており、長崎市全体の全用途平均137,100円/㎡・前年比+1.3%と比べても、中心商業地の上昇は途切れていない。

地価公示地点(商業地)計画地から2024年2025年2026年2026年 前年比容積率
船大工町76番約470m¥211,000¥213,000¥215,000+0.9%400%
浜町3番32約510m¥977,000¥985,000¥994,000+0.9%600%
万屋町77番約630m¥515,000¥526,000¥537,000+2.1%600%
油屋町55番1約700m¥437,000¥452,000¥467,000+3.3%500%
五島町1番16約960m¥813,000¥836,000¥851,000+1.8%600%
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示、各年1月1日時点、円/㎡)

吸収余地の試算 — 313室が必要とする年間9万室泊は1km圏の需要の8.9%

最後に、313室がどれだけの需要を要するかを単純に置いてみる。長崎県ビジネスホテルの2026年9月の推定OCC78.9%を仮置きすると、313室が1年で必要とする販売客室数は313室×365日×78.9%で約90,100室泊になる。同じ稼働率で1km圏の稼働中ストック3,532室が年間に売る客室は約101.7万室泊であり、本案件の必要量はその8.9%にあたる。2027年2月開業予定の140室を加えた453室で見れば約13.0万室泊、比率は12.8%に上がる。参考までに、長崎県の延べ宿泊者数は2024年から2025年に+0.3%しか伸びておらず、県全体の自然増だけでこの量を満たすのは難しい。吸収の経路としては、外国人延べ宿泊者数の+18.9%という伸びの継続、長崎港のクルーズ寄港の増加、そしてヒルトン「会社概要」が2億6,000万人以上と記すヒルトン・オナーズ会員のブランド指名による新規需要の取り込みが現実的な柱になる。既存施設の側から見れば、1km圏で薄かった1万5,000円以上の帯が厚くなることは、上位帯に向けた改装や客室構成の見直しの余地が広がる機会でもある。

感度分析 — 想定ADR×通年OCCで見る313室の年間客室売上

上の吸収量の試算に単価を掛け合わせ、本案件の年間客室売上がどの程度の幅に収まるかを3つのケースで置いた。想定ADRは前節で仮置きした15,000〜20,000円帯(推定成約ADR・税抜相当)、想定OCCは通年の仮置きで、中位ケースは長崎県ビジネスホテルの2026年9月の推定OCC78.9%を通年に延ばしたものである。中位ケースの年間客室売上は約15.8億円、悲観ケース(通年OCC65%・15,000円)では約11.1億円、楽観ケース(通年OCC81.8%・20,000円)では約18.7億円と、上下で1.7倍の幅がある。必要販売室数が1km圏の既存需要に占める比率は7.3〜9.2%の範囲で、単価の仮定よりも稼働の立ち上がりが吸収の難易度を左右する。

ケース想定OCC(通年)想定ADR年間販売室数年間客室売上1km圏既存需要比前提
悲観65.0%¥15,00074,259室泊11.1億円7.3%開業初年度の立ち上がり期を想定
中位78.9%¥17,50090,139室泊15.8億円8.9%長崎県ビジネスホテル2026年9月の推定OCC・15,000〜20,000円帯の中央
楽観81.8%¥20,00093,452室泊18.7億円9.2%長崎県シティホテル2026年9月の推定OCC・帯の上限
注:313室×365日×想定OCC×想定ADR。1km圏既存需要=稼働中3,532室×365日×78.9%(約101.7万室泊)。想定値は当社の仮置きで、事業者の計画値ではない
想定ADR \ 通年OCC65%70%75%78.9%82%
¥14,00010.411.212.012.613.1
¥15,00011.112.012.913.514.1
¥17,50013.014.015.015.816.4
¥20,00014.916.017.118.018.7
¥23,00017.118.419.720.721.5
年間客室売上(億円・税抜相当)。313室×365日×想定OCC×想定ADRの単純積で、料飲・付帯収入と開業初年度の立ち上がりは含まない。太字は中位ケース

※上記は推定OCCと客室数から導いた概算であり、季節変動・開業初年度の立ち上がり・販売チャネル構成は考慮していない。実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要である。

投資家への示唆 — 供給・価格帯・立地の3点

供給:2027年は1km圏に+453室

10年で軒数2倍・室数+13.5%と小型化した街に、313室と140室が同じ年に入る。稼働中ストック3,532室に対して+12.8%は、2024年の3km圏516室に匹敵する圧力であり、開業後2年の稼働立ち上がりを前提に事業計画を組む局面といえる。

価格帯:1万5,000円以上は1km圏で241室

市中心部の中央値ADRは9,693円で前年同月比−4.8%だが、上位帯はヒルトン長崎28,386円・マリオット37,477円が保たれている。宿泊特化型の上位帯は1km圏に2軒しかなく、ブランドの既存2軒(京都23,737円・横浜27,371円)の実績がこの空白に向けた参照になる。

立地:商業地域500%、埋立地の設計条件

就業3.9万人・外国人比率10%・クルーズ194回という二層の需要がある一方、津波0.3〜1m未満・液状化しやすい干拓地という条件は設計で織り込む前提になる。地価は5地点すべてが3年連続プラスで、土地の裏付けは堅い。

まとめ

ヒルトン・ガーデン・イン長崎中華街の313室は、新地1km圏3,842室の+8.1%、稼働中ストック3,532室の+8.9%にあたり、同年の140室と合わせると+12.8%の供給になる。長崎市の推定成約ADRは12ヶ月平均9,911円で2026年に入って前年割れが続くが、ビジネス78.9%・シティ81.8%という推定OCCと、観光庁統計でコロナ前水準を取り戻したシティホテルの稼働が示すように、需要の器そのものは大きい。価格帯では1万5,000円以上が1km圏に241室しかなく、本案件はこの空白に入る形で既存の厚い帯との直接競合を避けられる位置にある。開業までの約半年は、開業月が2027年2月の山に間に合うかどうかと、長崎港の高潮浸水想定の公表状況という2つの確認事項を抱えつつ、2027年の1km圏の吸収を見極める期間になるだろう。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事で2026年11月・2027年2月として示した推定成約ADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の価格調整で下落する可能性がある点にご留意ください。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの客室ストック(長崎新地を中心とする半径1km・3km。年次推移は全施設ベース、稼働中ストックは客室数10室以上・レジャーホテル除く、2026年10月20日時点)、推定成約ADR(長崎市N=62〜65施設・長崎県N=257施設の中央値、および施設別値)、長崎県のカテゴリ別推定OCC(OTA掲載在庫ベース、2026年7〜9月の確定月)。公的データは観光庁「宿泊旅行統計調査」、国土交通省 不動産情報ライブラリ・国土数値情報、経済センサス-活動調査(2021年)。

■ 試算前提

吸収余地は313室×365日×想定OCCで年間必要販売室数を求め、1km圏の稼働中3,532室が同じOCCで販売する室数と比べた。感度分析の想定ADRは15,000〜20,000円帯(中位17,500円・税抜相当)、想定OCCは通年の仮置き(65〜82%)で、季節変動・開業初年度の立ち上がり・料飲などの付帯収入は織り込んでいない。

■ 限界・留意点

推定成約ADR・推定OCCはOTAの公開情報に基づく推定値で、各施設の実績とは異なる。客室ストックの年次推移(70軒・3,842室)と稼働中ストック(28軒・3,532室)は集計対象の定義が異なる。将来月の推定成約ADRは調査時点の掲載水準で、今後変動する。本案件の想定ADR・OCCは当社の仮置きであり、事業者の計画値ではない。

■ 案件・ブランド

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 新地1km/3km圏の客室ストック(OTA掲載確認ベース)、長崎市・長崎県の推定成約ADR(N=62〜65施設/257施設)、施設別推定成約ADR、長崎県のカテゴリ別推定OCCとブッキングカーブ(2026年9月・対象203施設/10,998室)

■ 政府統計・公的データ

■ ニュース・報道

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