潮来富士屋ホテル(茨城県潮来市)は2020年3月30日、水戸地裁麻生支部に自己破産を申請して閉館した。茨城県で初めての新型コロナウイルス関連倒産で、負債総額は約1億5千万円と報じられている。本記事では2020年4月配信の倒産速報に加え、倒産に至った経緯と、2026年8月時点で確認できた「その後・現在」の状況を追記した(2026年9月2日更新)。
(株)富士屋ホテル(茨城県潮来市潮来102、設立1962年11月、資本金1000万円)は3月30日、水戸地裁麻生支部に破産を申請した。茨城県初の「新型コロナウイルス」関連倒産となった。
高速道路整備で宿泊需要減少、東日本大震災にコロナがとどめ

出典:水郷潮来観光協会
1957年創業。常陸利根川沿いに立地する潮来富士屋ホテル(1979年竣工、総客室数40室)のほか、常陸利根川を挟んで対岸の千葉県香取市に立地する別館・開花亭(1989年竣工)を経営していた。
宿泊施設への投資負担が嵩み、2003年4月に民事再生法の適用を申請。経営再建を進め、観光客やビジネスマンの宿泊需要の取り込みに努めながら、宴会や結婚式場としてのニーズも獲得していた。
しかし、近年は高速道路の整備によるアクセス改善で宿泊需要が減少、「水郷潮来あやめまつり」などのイベントシーズンを除き、利用客の確保に苦慮していた。
さらに、東日本大震災で業況が大きく落ち込み、近年はやや持ち直したものの、新型コロナウイルスの影響で同まつりへの期待も難しくなり、事業継続を断念した。
東京商工リサーチが報じた。

出典:水郷潮来観光協会
メトロエンジンリサーチによると、茨城県潮来市には宿泊施設が20、部屋数にして408室が提供されている。また千葉県香取市には宿泊施設が29、541室が提供されている。いずれも旅館が多く展開するエリア。
潮来富士屋ホテルはなぜ倒産したのか──負債約1億5千万円、県内初のコロナ関連倒産
信用調査会社の発表と報道を整理すると、(株)富士屋ホテルは2020年3月30日に事業を停止し、水戸地裁麻生支部へ自己破産を申請した。茨城新聞(2020年4月1日)によると、負債総額は約1億5千万円。倒産の背景は、コロナ禍単独ではなく、以下の3段階で経営体力が削られた末の「とどめ」としてのコロナだった。
- ①設備投資負担と民事再生(2003年)──1979年竣工の本館(6階建て・40室)と1989年開業の別館・開花亭への投資負担が重く、2003年に民事再生法の適用を申請して再建途上にあった。
- ②構造的な需要減──高速道路の整備で潮来観光の日帰り化が進み宿泊需要が減少。2011年の東日本大震災でも業況が大きく落ち込んだ。
- ③新型コロナウイルス(2020年)──最大の書き入れ時である「水郷潮来あやめまつり」シーズンの集客が見込めなくなり、事業継続を断念した。
出典:茨城新聞(2020年4月1日)、東京商工リサーチ・帝国データバンクの倒産情報(2020年3月31日〜4月1日発表)
その後・現在(2026年8月時点)──営業再開は確認できず
閉館から6年が経過した2026年8月24日時点で、ホテルバンク編集部が実際に確認した状況は次の通り。
- 公式サイト──旧公式サイトのドメインは接続できない状態が続いている。
- OTA掲載──かつて存在した潮来富士屋ホテルの施設ページは掲載を終了しており、潮来エリアのOTA掲載施設一覧にも「富士屋」を冠する宿泊施設は存在しない。
- 事業譲渡・スポンサー──破産手続き後にスポンサーへの事業譲渡や新運営者による営業再開が行われたことを示す公表・報道は確認できなかった。
- 建物・跡地──旧本館(潮来市潮来102、常陸利根川沿い)の解体や再開発について、公的な発表・報道は確認できなかった。水郷潮来観光協会の旧サイトには閉館前の施設紹介ページが残っているが、これは営業当時の情報であり現在の営業を意味しない。
以上から、2026年8月時点で潮来富士屋ホテルの営業再開は確認できない。今後、跡地活用や再開発に関する公式発表があれば本記事を更新する。
潮来エリアの宿泊市場はいまどうなっているか
メトロエンジンリサーチのOTA公開データ集計によると、潮来市でOTAに価格を掲載する宿泊施設は直近13ヶ月(2025年8月〜2026年8月)で3〜5施設で推移している。2026年8月の平均掲載価格は33,693円(1室2名利用・1室あたり税込、N=90、掲載3施設)で、前年同月比+0.5%とほぼ横ばい。月次では2026年1月の46,113円(N=91)が高く、2026年6月の25,445円(N=66)が低いなど、イベント・季節要因による振れが大きいエリアである。
| 市 | OTA掲載施設数 | 平均掲載価格(2026年8月) |
|---|---|---|
| 潮来市 | 3施設 | 33,693円 |
| 鹿嶋市 | 4施設 | 26,563円 |
| 神栖市 | 11施設 | 21,888円 |
価格は1室2名利用・1室あたり料金(税込)の月次平均。出典:ホテルバンク編集部調べ(メトロエンジンリサーチによるOTA公開データ集計、2026年8月時点)
なお、2020年の倒産速報時点では「潮来市に宿泊施設20・408室」と記載しているが、これは当時の全宿泊施設ベースの集計であり、上記のOTA価格掲載ベースの施設数とは基準が異なるため単純比較はできない。40室を擁した潮来富士屋ホテルの退出後も、潮来市の宿泊供給は小規模な施設構成のまま推移しており、あやめまつり期などの繁忙期需要を近隣の鹿嶋市・神栖市の施設が吸収する構図が続いている。
跡地の続報と「箱根・富士屋ホテル」との混同に注意
跡地・建物の現況について、2026年9月2日時点で改めて確認したが、旧本館(潮来市潮来102)の解体・売却・再開発に関する新たな公表情報・報道は確認できなかった。前節(2026年8月時点)の状況から変化はなく、跡地活用については現時点で公表情報なしという状態が続いている。公式発表があり次第、本記事を更新する。
なお、検索時に混同されやすいが、神奈川県箱根町宮ノ下の「富士屋ホテル」(1878年創業、富士屋ホテル株式会社)は本記事の潮来富士屋ホテルとはまったくの別法人である。箱根の富士屋ホテルは1966年から国際興業グループの傘下にあり、2020年のリニューアル工事を経てグランドオープンし、現在も営業を続けている。2020年に倒産したのは茨城県潮来市の(株)富士屋ホテル(1957年創業)であり、両者に資本・経営上の関係はない。
出典:富士屋ホテル株式会社 会社概要・沿革(2026年9月2日閲覧)
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