NOT A HOTEL株式会社は2026年10月2日付で社名をNOTA株式会社に改め、10月5日の発表会で移動(NOT A GARAGE)、住宅(NOT A HOUSE)、街づくり(NOT A CITY)へ事業領域を広げると説明した。中核の別荘事業は、1棟を年360泊と数え、年10泊=1/36の持分から土地・建物の所有権として売り、オーナーが使わない日はホテルとして貸す仕組みで、同社発表によると全国10拠点、オーナー1,357名、累計契約高は約940億円に達している。本稿では、公式サイトとプレスリリースで確認できる持分価格を「1泊あたりの取得額」に直し、拠点のある町の推定成約ADRと並べる。あわせて同社の精算ルール資料から資金の回り方を読み、会員権型リゾートとの違いを所有権・売却・相続・減価償却の4軸で整理する。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。本稿では拠点が所在する市町村の月次値を2025年10月〜2026年9月の12ヶ月で単純平均しています(全月が確定済みの実績月)。対象施設数が10未満の町は参考値と明記します。
- 掲載価格:OTA等の全プラン(素泊まり〜食事付き)の掲載価格をもとにした平均値(2名利用時・1泊あたり・税込)。本稿では拠点自身がホテルとして販売する際の水準として用います。
- 1泊あたり取得額:持分価格 ÷(年間所有泊数 × 想定保有年数)。保有10年・20年の2通りで示し、出口価値(売却時の回収額)はゼロと置いた本稿の試算値です。管理費は公表されている拠点のみ加えます。自己利用時の宿泊単価(自己利用料)や固定資産税は含みません。
- 2名1室換算:拠点のヴィラ・スイートは1棟(室)貸しで定員3〜10名のため、町のADR(1室2名)と比べる際は定員÷2を「室数」とみなして1室相当に割った額も併記します。定員差を埋める便宜的な換算であり、実際の客室構成とは一致しません。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、NOTA株式会社(旧NOT A HOTEL株式会社)の公式サイト・プレスリリース・精算ルール資料、各報道(末尾の出典一覧参照)
- — 年10泊の持分は公式サイトで北軽井沢・奥湯河原の販売中商品が3,120万〜9,996万円(三浦のCLUB SUITEは2,904万円〜)。出口価値をゼロと置くと、10年使って31.2万〜100.0万円/泊、20年なら15.6万〜50.0万円/泊になる。
- — 所在する町の推定成約ADRと比べると、10年保有・1棟ベースで16〜67倍。定員を2名1室に直すと4〜17倍、20年保有なら2〜8倍まで縮む。1棟8名の別荘と客室1室を並べる前提に注意が要る。
- — 北軽井沢拠点がホテルとして売る掲載価格は¥253,300/泊(2026年6月・全プラン平均)。BASE Lの1泊あたり取得額は10年で1.23倍、20年で0.62倍と、保有年数が長いほど「泊まる権利の原価」がホテル料金を下回る。
- — みなかみ「TOJI」では1棟9億5,370万円が10泊×36口の10億4,076万円より8.4%安く、30泊も10泊×3より8.4%安い。まとめ買いの割引率が一定に設計されている。
- — 資金は「竣工前の持分販売」「地銀が組成するシンジケートローン」「事業会社との資本提携」の三層。累計契約高は2024年11月284億円→2026年1月650億円→同10月940億円で、オーナー1名あたりの契約高も3,500万円から6,900万円へ上がっている。
- — 2025年以降に売り出した拠点は使用貸借契約が中心で、オーナーは賃料を受け取る代わりに月額管理費をデポジットとして預け、使った泊数分だけ宿泊単価で充当する。資金の回り方が拠点の世代で変わっている。
社名変更の時点で何が積み上がっているか — 契約高940億円・オーナー1,357名
まずは発表された数字を時系列に置く。同社が2023年11月にDAO構想を公表した際の説明では、販売・開業済みの拠点は7、オーナーは337名、累計販売額は119億円だった。2024年12月にデットファイナンス105億円を発表した時点(2024年11月末)では9拠点でオーナー659名、累計契約高284億円に増え、2026年2月のシリーズC公表時(2026年1月末)には9拠点のままオーナー1,100名超、累計契約高約650億円に達した。そして2026年10月5日の発表会では10拠点、オーナー1,357名、累計契約高約940億円である。
この推移で見ておきたいのは、オーナー1名あたりの契約高が上がり続けていることだ。119億円÷337名の約3,500万円から、284億円÷659名の約4,300万円、650億円÷1,100名の約5,900万円、940億円÷1,357名の約6,900万円へと、契約高の伸びがオーナー数の伸びを上回っている。2026年1月末から10月までの約9ヶ月で契約高は290億円増え、オーナーは257名増えたので、この期間だけを切り出すと新規契約は1名あたり1億1,000万円超になる。年10泊の最小単位から入るオーナーに加えて、30泊や1棟の買い手が平均を押し上げていると読める。
社名変更そのものは2026年10月2日付で、発表会が10月5日に開かれた。NOTAの下にNOT A HOTEL(別荘)、NOT A HOUSE(住宅・CEO 申真衣氏)、NOT A GARAGE(移動・CEO 江藤大宗氏)、2025年設立のNOT A CITY(街づくり・CEO 大森みどり氏)が並ぶ体制になる。同日発表の新事業を数字だけ拾うと、NOT A HOUSEの住宅プロダクト「POD」は1棟6,980万円〜で、PODオーナーは月額16,500円で全国のNOT A HOTELに年3泊できるオプションが付く。NOT A GARAGE CLUBは初期費用1,590万円・月額19万8,000円・契約5年で、ヘリコプター・クルーザー・車を空き状況に応じて利用する会員制で、初回20枠は満枠と報じられた。NIGO氏がデザインするGulfstream G500「NIGO JET」は2027年12月就航予定・所有期間8年のシェア販売である。別荘で培った「泊まる権利を所有に変える」設計が、住宅と移動にも展開されている。
1棟=360泊を36で割る — 持分の単位と、まとめ買いの割引率8.4%
持分の設計は公式サイトの「買い方」に明記されている。1棟購入は「利用可能日数:毎年360日」で予約可能期間は12ヶ月先まで、シェア購入は「毎年10日〜」で10泊以上なら最大10ヶ月先、30泊以上なら最大12ヶ月先まで予約できる。年360泊を1棟と数えるので、年10泊は1/36、年30泊は1/12にあたる。オーナーは自分の所有泊数を使って全国の拠点を相互利用でき、所有権なので売却・相続ができるとも書かれている。
価格の階段は、みなかみ「TOJI」の公表値が分かりやすい。2025年5月の報道(同社の説明を引用)では、年10泊が2,891万円(50年を想定)、年30泊が7,948万円、1棟(360泊/年)が9億5,370万円だった。10泊を36口に換算すると10億4,076万円で、1棟価格はこれより8.4%安い。30泊も10泊の3倍の8,673万円より8.4%安く、まとめ買いの割引率はきれいに揃っている。1棟で買う人にとっては、36人のオーナーを集める販売コストと分割管理の手間を省ける分が価格に織り込まれていると読める。
| 単位(みなかみ「TOJI」・2025年5月時点) | 価格 | 10泊換算の積み上げ | 割引率 | 1泊あたり取得額(10年/20年) |
|---|---|---|---|---|
| 年10泊(1/36) | 2,891万円 | — | — | 28.9万円/14.5万円 |
| 年30泊(1/12) | 7,948万円 | 8,673万円 | −8.4% | 26.5万円/13.2万円 |
| 1棟(年360泊) | 9億5,370万円 | 10億4,076万円 | −8.4% | 26.5万円/13.2万円 |
次に、買った後の資金の回り方である。同社がオーナー向けに公開している「精算ルールと収支レポートについて」は、契約タイプを賃貸借・使用貸借・準オーナーの3つに分けている。賃貸借契約では、オーナーの所有泊数に応じてNOT A HOTELが賃料を支払い(年間賃料の半額を半年に一度)、オーナーは自分で使った泊数分だけ契約書記載の「宿泊単価(貸出料)」で自己利用料を負担し、半年ごとに賃料と相殺する。使用貸借契約では賃料の支払いがなく、オーナーは毎月「月額管理費(デポジット)」を預け、宿泊時にそこから利用料を充当し、年度末に残額の返金を受ける。準オーナー契約は会員費をデポジットとして預ける方式で、返金の有無は契約による。
同資料の契約タイプ別一覧を読むと、AOSHIMA・NASU・FUKUOKA・ISHIGAKI・MINAKAMIと北軽井沢の初期ハウス(BASE・IRORI)は賃貸借、SETOUCHI・TOKYO・RUSUTSU・MIURA・YUGAWARAと北軽井沢のMASU・IRORI 2.0・NATURE WITHIN・BASE L6〜8は使用貸借に分かれる。つまり2025年以降に売り出した拠点はおおむね使用貸借で、オーナーが受け取る賃料収入はなく、その代わり固定の管理費負担も「使った分の充当」に置き換わっている。使用貸借の例示として資料に載るのが北軽井沢「MASU」で、宿泊単価はハイシーズン¥105,600、スタンダード¥52,800、30泊所有なら年間¥2,217,600(月額¥184,800)を預け、ハイ6泊・スタンダード10泊を使った年は¥1,056,000が返金される。別途、(ハウスにより)土地賃借料が毎月、火災・地震保険料が半期ごとに精算され、固定資産税が年1回(10月の精算時に持分割合に応じて)引き落とされ、不動産取得税はハウスごとに案内される。
| 項目 | 賃貸借契約 | 使用貸借契約 |
|---|---|---|
| 主な拠点・ハウス | AOSHIMA、NASU、FUKUOKA、ISHIGAKI、MINAKAMI、北軽井沢 BASE(L1〜5・M・S)・IRORI | SETOUCHI、TOKYO、RUSUTSU、MIURA、YUGAWARA、北軽井沢 MASU・IRORI 2.0・NATURE WITHIN・BASE L6〜8 |
| オーナーの収入 | 所有泊数に応じた賃料(年額の半分を半年ごと) | なし |
| 自己利用時の負担 | 宿泊単価(貸出料)×利用泊数を賃料と相殺 | 月額管理費(デポジット)から充当、年度末に残額返金 |
| 毎月の支出 | 組合管理費、ソフトウェアライセンス料、(ハウスにより)土地賃借料。火災・地震保険料は半期ごとに精算 | 月額管理費(デポジット)、(ハウスにより)土地賃借料。火災・地震保険料は半期ごとに精算 |
| 年1回の支出 | 固定資産税(10月精算時に持分割合で按分)。不動産取得税はハウスごとに案内 | |
| 精算の時期 | 4〜9月分を10月下旬、10〜翌3月分を4月下旬に精算 | |
10拠点の所在地と公表価格 — 町の推定成約ADRを横に置く
拠点の所在地は公式サイトの各ページに地番まで記載がある。那須の拠点は栃木県大田原市狭原、北軽井沢は群馬県吾妻郡嬬恋村大前、青島は宮崎市青島2丁目、福岡は福岡市中央区大宮、瀬戸内は広島県三原市の佐木島、湯河原は神奈川県足柄下郡湯河原町宮上(奥湯河原)である。本稿では、この所在市町村の推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月の12ヶ月平均)を比較対象にした。那須は大田原市のADRが対象施設8〜9軒の参考値になるため、隣接する那須町(対象49〜54軒)も併記する。
公表価格の確認は2026年10月15日時点の公式サイトで行った。販売中として価格が出ているのは北軽井沢のBASE L(3,120万円〜)、IRORI 2.0(7,092万円〜・2027年11月開業予定)、NATURE WITHIN(9,177万円〜・キャンセル待ち)と、奥湯河原のONSEN SUITE 4室(FRAME 3,452万円〜、RIVER 3,848万円〜、POOL 4,661万円〜、PENTHOUSE 9,996万円〜)、同じくYUAMI(2億6,530万円〜)である。YUAMIは「1棟をまるごと所有できるヴィラ」として発表されており、持分単位の表記がないため1泊あたりの換算から外した。三浦のCLUB SUITE(定員4名)は公式サイトで年10泊2,904万円〜(税込)と表示されており、10年保有で29.0万円/泊、20年で14.5万円/泊、三浦市の推定成約ADR¥16,159(対象4〜5軒の参考値)の18.0倍(2名1室換算9.0倍)、20年で9.0倍(同4.5倍)にあたる。青島・那須・福岡・石垣・みなかみ・瀬戸内は完売で、公式サイトは「開業済みの物件はNOT A HOTEL 2nd社が売買を取り扱います」と案内している。
| 拠点 | 所在地 | 状態・構成 | 定員 | 公表価格(年10泊〜) | 契約 | 町の推定成約ADR(12ヶ月平均) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| AOSHIMA | 宮崎県宮崎市青島 | 2022年11月開業・6棟・完売 | — | (完売・2nd社取扱) | 賃貸借 | ¥8,161(N=55〜59) |
| NASU | 栃木県大田原市狭原 | 2022年12月開業・3棟・完売 | 4〜10名 | (完売・2nd社取扱) | 賃貸借 | ¥5,763(N=8〜9・参考値) 隣接・那須町 ¥19,737(N=49〜54) |
| FUKUOKA | 福岡県福岡市中央区大宮 | 開業済み・8室・完売 | 8名 | (完売・2nd社取扱) | 賃貸借 | ¥16,059(N=79〜84) |
| KITAKARUIZAWA | 群馬県吾妻郡嬬恋村大前 | 2024年開業・BASE/IRORI/MASU/NATURE WITHIN、IRORI 2.0は4棟を2027年11月開業予定 | 2〜8名 | BASE L 3,120万円〜 IRORI 2.0 7,092万円〜 NATURE WITHIN 9,177万円〜 | 賃貸借/使用貸借 | ¥13,789(N=19〜24) |
| MINAKAMI「TOJI」 | 群馬県利根郡みなかみ町 | 開業済み・5棟・完売 | 8名 | 10泊 2,891万円(2025年5月時点) | 賃貸借 | ¥18,236(N=46〜51) |
| ISHIGAKI「EARTH」 | 沖縄県石垣市 | 開業済み・完売 | — | (完売・2nd社取扱) | 賃貸借 | ¥11,328(N=58〜60) |
| SETOUCHI | 広島県三原市(佐木島) | 2026年開業・3棟・完売 | 8〜10名 | 1口(年30泊)3億8,903万7,000円(2025年5月時点) | 使用貸借 | ¥5,715(N=16〜18) |
| YUGAWARA | 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上 | 2026年2月発表・ONSEN SUITE 4室+YUAMI 1棟・販売中 | 3〜10名 | FRAME 3,452万円〜 / RIVER 3,848万円〜 / POOL 4,661万円〜 / PENTHOUSE 9,996万円〜 YUAMI 2億6,530万円〜(持分単位の表記なし) | 使用貸借 | ¥20,509(N=50〜59) |
| MIURA | 神奈川県三浦市 | CLUB VILLA 完売、CLUB SUITE 販売中 | 4名(CLUB SUITE) | CLUB SUITE 2,904万円〜(税込) | 使用貸借 | ¥16,159(N=4〜5・参考値) |
| TOKYO(THE NIGO HOUSE)/RUSUTSU | 千葉県富津市/北海道 | EXCLUSIVE枠 | — | (非公表) | 使用貸借 | — |
この先の計画も並べておく。同社は2026年2月の奥湯河原発表時に「2020年以降に9拠点を開業し、湯河原などの進行中プロジェクトを含めると17拠点になる」と説明した。公式サイトと発表会で名前が出ているのは、千葉県富津市の東京湾岸に建つTOKYO(NIGO氏ディレクション)、ルスツ、屋久島(アトリエ・ジャン・ヌーヴェル)、近畿沿岸(安藤忠雄氏)、沖縄(ヘルツォーク&ド・ムーロン)、京都・東寺の「HERITAGE」、沖縄の「vertex」である。北軽井沢では、公式サイトによると2028年初頭にKIDS PARKが開業予定である。
1泊あたり取得額 — 年10泊3,120万円は10年で31.2万円、20年で15.6万円
ここからが本稿の主軸である。持分価格を「年間所有泊数×想定保有年数」で割ると、泊まる権利1泊あたりの原価が出る。出口価値はゼロと置くので、売却できる分だけ実際の負担はこれより軽い。販売中の7商品(北軽井沢3、奥湯河原4)とみなかみ「TOJI」の計8商品で計算すると、10年保有で28.9万〜100.0万円/泊、20年保有で14.5万〜50.0万円/泊になる。最も手が届きやすいのはTOJIとBASE Lで、20年使えば1泊15万円前後まで下がる。一方でPENTHOUSEやNATURE WITHINは20年でも1泊46万〜50万円の水準である。
この取得額を町の推定成約ADRと並べると、桁が違う。北軽井沢BASE Lの10年保有31.2万円は嬬恋村のADR¥13,800の22.6倍、TOJIの28.9万円はみなかみ町¥18,200の15.9倍、奥湯河原FRAMEの34.5万円は湯河原町¥20,500の16.8倍である。ただし比べている相手が違う。町のADRは1室2名の客室単価で、拠点のヴィラは定員8名の1棟貸しだ。定員÷2を室数とみなして割り直すと、BASE Lは7.8万円/室相当で5.7倍、TOJIは7.2万円で4.0倍、FRAME(定員3名)は23.0万円で11.2倍になる。20年保有ではそれぞれ2.8倍、2.0倍、5.6倍まで縮む。定員が少ないスイート(FRAME・POOL)ほど換算後の倍率が高く、8名定員のヴィラほど低く出る点は、定員差の注記として押さえておきたい。
| 商品(年10泊) | 町 | 持分価格 | 10年:円/泊 | 対町ADR(1棟/2名1室換算) | 20年:円/泊 | 対町ADR(1棟/2名1室換算) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| MINAKAMI TOJI(8名) | みなかみ町 ¥18,236 | 2,891万円 | 289,100 | 15.9倍/4.0倍 | 144,550 | 7.9倍/2.0倍 |
| KITAKARUIZAWA BASE L(8名) | 嬬恋村 ¥13,789 | 3,120万円〜 | 312,000 | 22.6倍/5.7倍 | 156,000 | 11.3倍/2.8倍 |
| YUGAWARA FRAME(3名) | 湯河原町 ¥20,509 | 3,452万円〜 | 345,200 | 16.8倍/11.2倍 | 172,600 | 8.4倍/5.6倍 |
| YUGAWARA RIVER(6名) | 湯河原町 ¥20,509 | 3,848万円〜 | 384,800 | 18.8倍/6.3倍 | 192,400 | 9.4倍/3.1倍 |
| YUGAWARA POOL(4名) | 湯河原町 ¥20,509 | 4,661万円〜 | 466,100 | 22.7倍/11.4倍 | 233,050 | 11.4倍/5.7倍 |
| KITAKARUIZAWA IRORI 2.0(8名) | 嬬恋村 ¥13,789 | 7,092万円〜 | 709,200 | 51.4倍/12.9倍 | 354,600 | 25.7倍/6.4倍 |
| KITAKARUIZAWA NATURE WITHIN(8名) | 嬬恋村 ¥13,789 | 9,177万円〜 | 917,700 | 66.6倍/16.6倍 | 458,850 | 33.3倍/8.3倍 |
| YUGAWARA PENTHOUSE(8名) | 湯河原町 ¥20,509 | 9,996万円〜 | 999,600 | 48.7倍/12.2倍 | 499,800 | 24.4倍/6.1倍 |
| SETOUCHI 1口=年30泊(10名) +管理費 月55万4,400円 | 三原市 ¥5,715 | 3億8,903万7,000円 | 1,296,790 +221,760 | 226.9倍/45.4倍(管理費除く) | 648,395 +221,760 | 113.5倍/22.7倍(管理費除く) |
町のADRより適切な比較相手は、拠点自身がホテルとして売る価格だろう。メトロエンジンリサーチのデータによると、北軽井沢拠点の掲載価格(全プラン平均・税込・2名利用基準・1棟1泊)は2026年6月で¥253,300(観測24日)、福岡拠点は¥176,300(観測30日)だった。BASE Lの1泊あたり取得額は、10年保有ならこの掲載価格の1.23倍、20年保有なら0.62倍になる。IRORI 2.0は2.8倍と1.4倍、NATURE WITHINは3.6倍と1.8倍である。つまりBASE Lクラスの持分は、20年使う前提なら「泊まる権利の原価」が自拠点のホテル料金を下回り、そこに所有権としての出口価値が乗る。ただし使用貸借契約では自己利用の都度、宿泊単価(MASUの例示でハイ¥105,600・スタンダード¥52,800)がかかるので、実際に泊まる1泊の総負担は取得額の原価と自己利用料の合計になる点は見落とせない。
同社が公開する再販実績も出口価値の参考になる。NOT A HOTEL 2ndが運営するマーケットプレイスは、2025年11月末時点で成約30件・合計10.6億円、売却価格の上昇率は購入価格比で平均+33%、最大2.1倍と表示している。売却は購入から4年目以降(3年の保有制限)で、買取と仲介の両方を選べる。平均+33%が今後も続くかは別として、出口価値ゼロで計算した上の表は保守側の数字と位置づけられる。
出口価値をどこまで見込むかで、1泊あたりの実質負担は大きく変わる。BASE L(年10泊・3,120万円)について、保有年数(10・15・20年)と売却時の回収率(取得額に対する割合0%・25%・50%・75%)の2軸で、(取得額−回収額)÷(10泊×保有年数)を並べた。回収率0%・10年保有の31.2万円/泊だけが北軽井沢拠点の掲載価格¥253,300を上回り、15年保有・回収率75%なら5.2万円/泊まで下がる。再販実績の平均+33%は成約30件の実績にとどまるため、本表では回収率を100%未満に置いた。
| 保有年数\回収率 | 0% | 25% | 50% | 75% |
|---|---|---|---|---|
| 10年 | 31.2 | 23.4 | 15.6 | 7.8 |
| 15年 | 20.8 | 15.6 | 10.4 | 5.2 |
| 20年 | 15.6 | 11.7 | 7.8 | 3.9 |
資金調達 — 竣工前販売、地銀シンジケートローン、事業会社との資本提携の三層
では、この別荘を建てる資金はどこから来ているのか。公表されたラウンドを並べると、2021年9月のシードで8.5億円、2022年10月のシリーズAで19億6,000万円(累計41億1,000万円)、2024年12月にデットファイナンス105億円(累計約223億円)、2026年2月にシリーズC 25億9,800万円と18の金融機関からのデット75億円を合わせて約101億円(融資実行済みとコミットメントラインを含む累計332億円)、そして2026年8月6日に総額165億円である。8月の調達ではトヨタの戦略投資会社であるトヨタ・インベンション・パートナーズ(TIP)とジーライオングループとの資本提携が示され、SBIグループとは購入者向けの提携ローンを準備するとした。2026年3月31日には、北軽井沢「IRORI 2.0」4棟(2027年11月開業予定)の建設資金として群馬銀行がアレンジするシンジケートローンにSBI新生銀行が参加している。
資金の流れを事業者側から見ると三層になる。第一層は持分の竣工前販売で、IRORI 2.0のように開業の1年以上前から10泊3,120万円〜の単位で契約が積み上がる。第二層は物件単位のプロジェクト融資で、北軽井沢の例では地銀がアレンジし、他行が参加する形をとる。第三層が会社全体のエクイティとデットで、VC・事業会社・金融機関が入る。会員権型のリゾートトラストが着工後の会員権販売で開業前に事業費を回収し、借入金61億円に対して前受金・預り保証金2,575億円という負債構成をとるのに対し、NOTAは竣工前販売に加えて借入と資本を積極的に使い、拠点の数を4年で9、6年で10へ増やしてきた。累計契約高940億円に対して、公表された累計調達額は2026年1月末の332億円(融資枠を含む)に8月の165億円を加えた約500億円規模で、販売が調達を上回る構造は会員権型と共通している。
会員権型との違い — 所有権・売却・相続・減価償却
最後に、持分所有型と会員権型を4つの軸で並べる。会員権型は前稿で整理したとおり、販売額が預り保証金(10〜20%)、登録料(35〜40%)、不動産代金(45〜50%)で構成され、登録料は戻らず、預り保証金は無利息で、利用権が中心にある。NOTAの持分は土地・建物の所有権そのもので、同社は「減価償却や相続などが可能な資産」と説明し、売却はNOT A HOTEL 2ndのマーケットプレイスで4年目以降にできる。
| 軸 | 持分所有型(NOTA / NOT A HOTEL) | 会員権型(リゾートトラストの例) |
|---|---|---|
| 所有権 | 土地・建物の所有権。1棟=年360泊、年10泊=1/36の持分から | 登録料35〜40%+預り保証金10〜20%+不動産代金45〜50%。利用権が中心で、登録料は戻らない |
| 売却 | 購入4年目以降、NOT A HOTEL 2nd(第二種金融商品取引業)が買取・仲介。2025年11月末で30件・10.6億円、平均+33% | 会員権の流通市場(仲介業者)を通じて売却。名義変更の手続きと費用が伴う |
| 相続 | 所有権として相続できる(同社説明) | 名義変更により承継できる |
| 減価償却 | 建物部分について可能と同社が説明(法人・個人事業の税務判断は別途) | 不動産持分の扱いは商品と税務判断による |
| 利用 | 所有泊数(年10泊〜)。全拠点を相互利用、10泊以上は10ヶ月先・30泊以上は12ヶ月先まで予約可 | 口数に応じた年間利用日数。グループ施設の相互利用 |
| 使わない日 | ホテルとして一般に販売。賃貸借契約は賃料を受け取り、使用貸借契約は受け取らない | 会員制のため一般販売は限定的 |
| 継続費用 | 賃貸借は組合管理費・ソフトウェアライセンス料、使用貸借は月額管理費(デポジット・年度末に残額返金)。両契約とも(ハウスにより)土地賃借料、半期精算の火災・地震保険料、固定資産税(持分按分)、自己利用料(宿泊単価) | 年会費(例示13万円)とルームチャージ |
| 事業者の資金フロー | 竣工前販売+物件単位のシンジケートローン+エクイティ・デット | 着工後の会員権販売で開業前に事業費を回収。不動産代金は開業時に一括売上計上(繰延売上) |
1泊あたりの負担で両者を並べると、前稿で試算した会員権型の1泊負担は20年保有・年8泊・出口価値ゼロで¥77,400(1室2名)だった。NOTAのBASE Lは同じ出口ゼロ・20年で¥156,000だが、こちらは定員8名の1棟で、2名1室換算なら¥39,000になる。会員権型が「毎年の利用権を長期に買う」商品であるのに対し、持分所有型は「不動産の1/36を買って泊まる」商品で、出口で回収できる割合が1泊あたりの実質負担を左右する。再販実績の平均+33%を額面どおりに置けば、20年保有の実質負担は原価を大きく下回るが、本稿はそこまで織り込まず原価だけを示した。
宿泊事業者・投資家への示唆
第一に、別荘地の町で「泊まる権利の原価」がホテル料金の10倍を超える商品が完売を重ねている事実は、宿泊の価格が立地のADRだけでは決まらないことを示している。三原市(ADR¥5,700)の佐木島で1口30泊が3億8,903万7,000円で売れ、大田原市(¥5,800)の那須拠点が完売しているのは、建築家の名前とブランド、相互利用できる拠点網が価格を作っているからだ。町のADRが低い場所でも、商品設計次第で高単価の宿泊需要を呼び込める余地がある。別荘地の宿泊単価と地価がどの程度連動するかは、軽井沢と御代田の単価差・地価差の分析でも整理している。
第二に、賃貸借から使用貸借への移行は、事業者側のキャッシュフローを安定させる方向に働く。賃料の支払い義務がなくなり、オーナーからの月額管理費を預かって利用分を充当する形は、宿泊運営の収入をオーナーの利用実績と切り離しやすい。オーナーにとっても、使った分だけ負担する分かりやすさが残る。新しい拠点ほどこの契約に揃えている点は、同社がモデルを磨き続けている証左といえる。
第三に、既存のホテル運営者から見ると、北軽井沢拠点の掲載価格¥253,300、福岡拠点の¥176,300という水準は、各エリアの最上位帯に高単価の供給が加わることを意味する。嬬恋村のADR¥13,800、福岡市中央区の¥16,100と比べて10倍以上の価格帯で、直接の競合というより新しい価格帯の需要を顕在化させている。同じエリアで上位帯を狙う事業者にとっては、この需要に向けた商品づくりの参考になるだろう。
第四に、投資家にとっては再販市場の厚みが新規販売を支える構造になっている。成約30件・10.6億円はまだ小さいが、平均+33%・最大2.1倍という実績が公開されていること自体が、出口価値ゼロで計算した1泊あたり取得額を保守的な下限として読める根拠になる。累計契約高940億円に対して公表された累計調達は約500億円規模(2026年1月末332億円+8月165億円)で、販売が先に立つ資金構造は会員権型と似ており、住宅(POD)と移動(NOT A GARAGE)への展開も同じ「所有に変える」設計で進められている。
よくある質問
Q. 年10泊が1/36というのはどういう計算ですか。
1棟を年360日利用できる商品として販売しているため、年10泊の持分は360÷10=36分の1にあたります。年30泊なら12分の1です。公式サイトの「買い方」に、1棟購入は毎年360日、シェア購入は毎年10日からと記載されています。
Q. 持分はいつから売却できますか。
購入から4年目以降(3年の保有制限)に、NOT A HOTEL 2ndが運営するマーケットプレイスで売却できます。買取と仲介のどちらも選べ、2025年11月末時点の成約は30件・合計10.6億円、売却価格は購入価格比で平均+33%と公表されています。
Q. 管理費はいくらかかりますか。
拠点とハウスによって異なり、公表されているのは瀬戸内(1口年30泊)の月55万4,400円(2025年5月時点の報道)です。使用貸借契約ではこの月額管理費がデポジットとして預けられ、宿泊時に宿泊単価で充当し、年度末に残額が返金されます。別途、(ハウスにより)土地賃借料が毎月、火災・地震保険料が半期ごとに精算され、固定資産税は年1回、持分割合で按分されます。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
市町村別の推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月の月次値の単純平均。N=は月次の対象施設数の範囲)と拠点の掲載価格(2026年6月)はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計。持分価格・定員・所在地は2026年10月15日閲覧の公式サイト、契約タイプと精算ルールは同社のオーナー向け公開資料、契約高・オーナー数・資金調達額は同社発表と報道による。
■ 試算前提
1泊あたり取得額=持分価格÷(年間所有泊数×保有年数)。保有10年・20年の2通り(感度表は15年を追加)で、出口価値ゼロを基本とし、感度表のみ回収率0〜75%を置いた。2名1室換算は定員÷2を室数とみなす便宜的な換算。管理費は公表のある瀬戸内のみ加算した。
■ 限界・留意点
推定成約ADRは推定値で、対象施設数が10未満の町(大田原市・三浦市)は参考値。管理費・自己利用料(宿泊単価)・固定資産税・不動産取得税・資金の機会費用は含まず、実際の総負担はこれより大きい。TOJIと瀬戸内の価格は2025年5月時点の報道値で、現在は完売。再販の平均+33%は成約30件の実績で、将来の売却価格を示すものではない。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 市町村別の推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月、所在市町村ごとの対象施設数は本文表のN=)、拠点の掲載価格(2026年6月)
■ 同社の公式資料
- NOTA「NOT A HOTEL、NOTAへ社名変更しグループ体制を強化」(2026年10月)
- NOTA「NOT A HOTELがデザインする初めての住宅プロダクト『POD』の予約を開始」(2026年10月)
- NOTA「モビリティのサブスクリプションプラン『NOT A GARAGE CLUB』が登場」(2026年10月5日)
- NOTA「『KITAKARUIZAWA BASE L』追加3棟の一般販売がスタート」(2026年)
- NOT A HOTEL「買い方」(1棟購入・シェア購入の利用可能日数、2026年10月15日閲覧)
- NOT A HOTEL KITAKARUIZAWA(ハウス別の価格・定員・所在地、2026年10月15日閲覧)
- NOT A HOTEL YUGAWARA(ONSEN SUITE・YUAMIの価格・所在地、2026年10月15日閲覧)
- NOT A HOTEL NASU(所在地・定員、2026年10月15日閲覧)/AOSHIMA/FUKUOKA/SETOUCHI/MIURA
- NOT A HOTEL MARKETPLACE(取引実績・2025年11月末時点、2026年10月15日閲覧)
- NOT A HOTEL「精算ルールと収支レポートについて」(契約タイプ・精算ルール・MASUの宿泊単価例示)
■ 金融機関・業界資料
- SBI新生銀行「北軽井沢における群馬銀行との協調融資の実施について」(2026年3月31日)
- リゾートトラスト「リゾートトラストのビジネスモデル(2026年2月)」「2026年3月期 決算説明資料」(会員権型の比較軸)
■ ニュース・報道
- Impress Watch「NOT A HOTELがNOTAに社名変更…」(2026年10月・10拠点・オーナー1,357名・累計契約高約940億円)
- FASHIONSNAP「NOT A HOTELが社名を『NOTA』に変更…」(2026年10月5日)
- BRIDGE「NOT A HOTEL、シリーズCおよびデットファイナンスで101億円を調達──累計調達額は332億円に」(2026年2月)
- 創業手帳「NOT A HOTEL、総額165億円の資金調達」(2026年8月7日)
- FASHIONSNAP「NOT A HOTELがデットファイナンスで105億円を調達」(2024年12月2日・オーナー659名・累計契約高284億円)
- BRIDGE「NOT A HOTEL、シリーズAで20億円調達…」(2022年10月14日)
- BRIDGE「スマホで買える『NOT A HOTEL』40億円分をネット販売開始へ、8.5億円の調達も完了」(2021年9月)
- BRIDGE「NOT A HOTELが売買できるマーケットプレイス誕生へ──グループ会社『NOT A HOTEL2nd』設立」(2024年1月17日)
- 現代ビジネス「シェア別荘『NOT A HOTEL』が『資産』として富裕層の心を惹きつける…」(2025年5月・TOJIと瀬戸内の価格・管理費)
- マイナビニュース(2023年11月7日・7拠点・オーナー337名・累計販売額119億円)
- NOT A HOTEL YUGAWARA発表(2026年2月3日・9拠点開業済み、17拠点へ)
