IHGホテルズ&リゾーツが2026年4月27日に発表し、7月17日に開業したホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの(223室)は、既存建物の大規模改修による転用案件である。所有は三菱商事都市開発・東京建物・サンケイビルを含むコンソーシアム、IHGが運営受託契約で運営し、国内2軒目・北海道初のホリデイ・イン エクスプレスとなった。同じすすきの1km圏では2026年に客室10室以上の宿が7軒1,115室加わり、圏内の稼働客室は約2万室に達している。本稿では、改装転用という「器」の選び方と、朝食込み・中価格帯という「位置取り」を、圏内の客室推移・中央区の推定成約ADR・予約進捗・2027〜28年の建築計画から読み解く。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事の客室ストックは、すすきのから半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月25日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。
- — 7軒1,115室:2026年にすすきの1km圏で開業した客室10室以上の宿。稼働客室19,980室の5.6%で、開業年が確認できる施設ベースの純増は579室。
- — +44.9%:1km圏の客室ストックは2017年の14,532室から2026年の21,060室へ。2020年代開業が稼働客室の約3分の1を占める。
- — ¥16,100(前年同月比+7.2%):2026年9月の札幌市中央区の推定成約ADR(N=140施設)。同月の推定OCCは92.7%(対象103施設)で、開業ラッシュは単価を崩していない。
- — LT14で8.8pt差:2026年11月の推定OCCはLT14時点で77.1%と、9月の同時点85.9%を下回る。秋の谷の着地は直前需要で決まる。
- — GOP利回り3.0〜9.3%:223室転用を3シナリオで置いた本稿の仮定。総投資額69億〜132億円の差の大半は1室あたり取得費で、運営指標より器の値段が利回りを動かす。
エグゼクティブサマリー — 1km圏2.1万室に223室の改装転用、純増は年579室
結論を先に置く。すすきの1km圏の客室ストックは10年で+44.9%と拡大したものの、2026年の純増は579室にとどまり、7軒1,115室の開業と退出分が相殺されている。供給が増えた9月でも中央区の推定成約ADRは¥16,100と前年同月比+7.2%を保ち、推定OCCは92.7%と高水準で推移した。すなわち、2026年の開業ラッシュは現時点で単価を崩していない。ホリデイ・イン エクスプレスはこの市場で、ビジネスホテル82軒の推定成約ADR中央値(¥16,400)とほぼ同じ水準に朝食込みで入っており、「中価格帯のど真ん中を朝食込みで取る」位置取りだと読める。器の面では、新築の1室建築費が仮定で2,067〜3,274万円に達する局面で、改装転用を選んだことが開業までの期間と原価の両方で効いている。
開業の事実関係 — 一次情報で確認できる範囲
まず一次情報で確認できる事実を整理する。IHGホテルズ&リゾーツの報道資料(2026年4月27日)とPR TIMESの開業告知によれば、ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきのは全223室、所有は三菱商事都市開発・東京建物・サンケイビルを含むコンソーシアムで、IHGが運営受託契約により運営する。発表時点で既に大規模改修が進んでおり、改修前の建物名は資料に記載がない。本稿でも推定はしない。ブランドの次世代デザイン「Generation 5」を日本で初めて採用し、Express Café・フィットネス・ランドリーを備え、ブランド共通の特徴として全宿泊に朝食が含まれる。地下鉄南北線すすきの駅から徒歩約5分、市電資生館小学校前から徒歩約3分という立地である。
| 項目 | 内容(出典:IHG報道資料 2026-04-27/PR TIMES) |
|---|---|
| 客室数 | 全223室 |
| 所有 | 三菱商事都市開発・東京建物・サンケイビルを含むコンソーシアム |
| 運営 | IHGホテルズ&リゾーツ(運営受託契約) |
| 開業形態 | 既存建物の大規模改修による転用(改修前の建物名は資料に記載なし) |
| ブランド上の位置づけ | 国内2軒目・北海道初のホリデイ・イン エクスプレス、Generation 5デザイン日本初 |
| 館内施設 | Express Café、フィットネス、ランドリー。全宿泊に朝食込み(ブランド共通) |
| 開業日 | 2026年7月17日(PR TIMES開業告知) |
| 所在地 | 札幌市中央区南5条西6丁目(すすきの駅徒歩約5分) |
| IHGの国内展開 | 10ブランド59軒、開業予定24軒(発表時点) |
IHGの日本・ミクロネシア担当マネージングディレクターは同資料で「2026年にIHGが国内で開業するすべてのホテルはリブランド案件である」と述べている。新築ではなく既存建物の転用で供給を積み上げる方針が、札幌の案件にもそのまま当てはまるということである。同じ方針で進む京都の14軒1,063室の看板替えについては、IHG京都14軒1,063室の看板替えが加盟収支まで含めて試算している。この点を念頭に、次節からは圏内の供給構造を数字で確かめていく。
すすきの1km圏の客室ストック10年 — 1.45万室から2.1万室、2020年代開業が稼働客室の3分の1
すすきの(北緯43.0547・東経141.3487)を中心とする半径1km圏の客室ストックを、開業年が確認できる施設ベースで年次に追うと、2017年の86軒14,532室から2026年には125軒21,060室へと+44.9%拡大した。年別に見ると2018年+1,278室、2019年+1,888室と2019年までの伸びが大きく、2020年は+613室、2021年はほぼ横ばい(-43室)で、2022〜24年は年+673〜714室のペースで再び積み上がった。2025年は+143室と小幅にとどまり、2026年に再び伸びている。2026年の純増は579室で、7軒1,115室の開業に対して退出分を差し引いた値がこれにあたる。
開業年代別に稼働客室を分けると、2020年代開業が44軒6,516室で稼働客室の32.6%を占め、2010年代開業の28軒4,526室と合わせると過半が2010年以降の建物である。一方で1970〜80年代開業の稼働客室も2,970室残っており、築40年超の建物が今も圏内供給の約15%を担っている。改装転用の候補となる「器」が一定量あることは、この年代構成からも読み取れる(中央区全体の客室増加と東武ホテルからフェアフィールドへの転換事例は、札幌・中央区は7年で9,654室増|札幌東武ホテル→フェアフィールド転換のその後を参照)。
規模階級では201室以上の34軒が稼働客室10,336室と全体の半分強を占める。ホリデイ・イン エクスプレスの223室はこの階級の下端にあたり、圏内の主力規模帯に収まる大きさである。カテゴリ別では、ビジネスホテルが稼働82軒13,292室、シティホテルが16軒4,579室、デラックスが2軒352室で、ビジネスホテルが客室の3分の2を担う構造である。
2026年の開業7軒1,115室と2025年の5軒624室 — 旗艦級とライフスタイル型が同じ1kmに並ぶ
2026年に1km圏で開業した客室10室以上の宿は7軒1,115室である。ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの(223室)、ハイアット セントリック 札幌(216室)、KOKO HOTEL 札幌すすきの 2nd(212室)、リージョニアbyクインテッサ 札幌駅前(175室)、ランドーホテル札幌ヘリテージ(125室)・プレステージ(118室)、Rakuten STAY 札幌中島公園(46室)という構成で、200室超の3軒が全体の6割を占める。前年2025年は5軒624室で、ホリデイ・イン&スイーツ札幌大通公園(195室)や暖雪 札幌(136室)などが加わっていた。2年で12軒1,739室という供給は、稼働客室の約8.7%に相当する。
ハイアット セントリック 札幌は日本ハイアットの報道資料(2026年4月)で開業予定10軒のひとつとして「2026年・216室」と記載され、2026年10月3日に開業した。日本ハイアットは同資料時点で国内9ブランド22ホテル(計5,066室)を運営しており、札幌には2029年にパーク ハイアット 札幌(157室)も計画されている。すすきの1km圏に国際ブランドの上位セグメントが入ることは、圏内の単価分布の上端を押し広げる意味を持つ。
| 開業年 | 施設名 | 客室数 | 区分 | 中心からの距離 |
|---|---|---|---|---|
| 2026 | ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの | 223 | ビジネスホテル | 94m |
| 2026 | ハイアットセントリック札幌 | 216 | デラックスホテル | 882m |
| 2026 | KOKO HOTEL 札幌すすきの 2nd | 212 | ビジネスホテル | 314m |
| 2026 | リージョニアbyクインテッサ 札幌駅前 | 175 | ビジネスホテル | 972m |
| 2026 | ランドーホテル札幌ヘリテージ | 125 | ホステル | 499m |
| 2026 | ランドーホテル札幌プレステージ | 118 | ホステル | 357m |
| 2026 | Rakuten STAY 札幌中島公園 | 46 | ホステル | 762m |
| 2025 | ホリデイ・イン&スイーツ札幌大通公園 | 195 | ビジネスホテル | 330m |
| 2025 | 札幌ファンゲートホテル | 139 | ビジネスホテル | 369m |
| 2025 | 暖雪 札幌 | 136 | デラックスホテル | 934m |
| 2025 | FAV LUX 札幌すすきの | 84 | ビジネスホテル | 265m |
| 2025 | リブマックスホステルズ札幌すすきの | 70 | ビジネスホテル | 346m |
圏内稼働: 120軒19,980室(掲載164軒25,541室)
最寄駅: 地下鉄南北線すすきの駅、市電資生館小学校前
| 50室以下 | 13軒 456室 |
| 51〜100室 | 21軒 1,395室 |
| 101〜200室 | 52軒 7,793室 |
| 201室以上 | 34軒 10,336室 |
| ビジネスホテル | 82軒 13,292室 |
| シティホテル | 16軒 4,579室 |
| カプセルホテル | 2軒 437室 |
| ホステル | 13軒 746室 |
| デラックスホテル | 2軒 352室 |
| リゾートホテル | 1軒 294室 |
| 旅館 | 1軒 182室 |
| ドミトリー | 2軒 57室 |
| その他 | 1軒 41室 |
改装転用の1室原価 — 新築2,067〜3,274万円/室との比較枠組み
なぜ新築ではなく転用なのか。建築費の水準がその答えの大半を説明する。国土交通省「建築着工統計調査」に基づくアーキブックの集計では、2025年のホテル建築費はS造240.5万円/坪、RC造202.6万円/坪、全構造平均195.2万円/坪であり、2024年の全構造平均195.5万円/坪(建築着工統計・宿泊業用)から高止まりしている(2025年分は工事費予定額に消費税を含むものと含まないものが混在するため、前年との比較には注意が必要と同サイトは注記する)。宿泊特化型の目安としてホテル投資メディアHOTELISMが示すビジネスホテル100〜150万円/坪(2023年時点)と比べると、わずか2年で水準が切り上がったことがわかる。
1室あたりに換算するには延床面積が要る。ホリデイ・イン エクスプレスの延床は公表されていないため、本稿は仮定レンジで置く。参考になるのは同じ中央区南7条の建築計画で、南7条西4丁目の126室は延床7,730.59㎡(1室あたり約61㎡)、南7条西5丁目の200室は延床8,554.54㎡(1室あたり約43㎡)と確認申請に記載されている。宿泊特化型の転用案件はこれより小さく収まる可能性が高いため、1室あたり延床35〜45㎡を仮定する。新築なら1室あたり建築費は2,067〜3,274万円(土地別)となる計算である。
改装転用の費用については、国内で公表された新築比の統計がない。そこで本稿は、既存の構造体・外装・基幹設備を活かす前提で新築費の40〜60%という仮定レンジを置き、1室あたり827〜1,964万円とする。この数字はホリデイ・イン エクスプレスの実際の投資額ではなく、同じすすきので223室の既存建物をホテルに転用する場合の枠組みである。札幌の既存ホテルをブランド転換した場合の1室原価は、既存ホテルの外資ブランド転換、1室原価は新築の7分の1 — 札幌15施設の実測ADRで15施設の実測値から試算している。工期の差も見逃せない。IHGの発表が2026年4月、開業が7月で、発表時点で改修は既に進んでいた。新築で2〜3年を要する開業までの期間が大幅に短縮され、2026年という需要の強い年に売上を立てられたことが、原価差と同じくらい大きい。
| 項目 | 新築(仮定) | 改装転用(仮定) | 根拠・出典 |
|---|---|---|---|
| 建築費/坪 | 195.2〜240.5万円 | 新築の40〜60%(仮定) | アーキブック「ホテルの建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2026年版】」(建築着工統計調査ベース) |
| 1室あたり延床 | 35〜45㎡(仮定) | 既存建物の間取りに依存 | 南7条西4・西5の建築計画(1室約61㎡・約43㎡)を参考に宿泊特化型を想定 |
| 1室あたり建築・改修費 | 2,067〜3,274万円 | 827〜1,964万円 | 本稿試算(土地・建物取得費を含まない) |
| 開業までの期間 | 2〜3年(設計・確認申請・施工) | 1年前後(本件は発表から開業まで約3か月、発表時に改修進行中) | IHG報道資料 2026-04-27、PR TIMES開業告知 |
| 供給抑制効果 | 建築費高止まりで新築は選別される | 既存ストック内での入れ替えが主流に | IHG「2026年の国内開業はすべてリブランド案件」 |
投資の採算に落とすと、器の原価は建物の取得費と合わせて考える必要がある。圏内でJ-REITが保有する7物件の取得価格を客室数で割ると、1室あたり1,198万〜4,575万円の幅があり(取得時期は2015〜2023年)、これが「すすきので既存ホテルを建物ごと買う」ときの一つの参照水準になる。この取得費レンジと改修費レンジを組み合わせた試算は、後段の投資判断サマリーで示す。
朝食込み中価格帯のポジション — ビジネス82軒の中央値¥16,400に重なる
価格の位置取りを見る。1km圏で稼働するビジネス・シティ・デラックス・リゾートの99施設について、2026年7〜9月の推定成約ADR(月次中央値の3か月中央値)を客室数と組み合わせて散布図に置いた。ビジネスホテル82軒の中央値は¥16,400、シティホテル16軒の中央値は¥20,100である。ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきのの月別の推定成約ADRは8月¥15,200・9月¥18,100・10月¥14,700と月ごとの振れが大きく(開業月の7月は15日間で¥22,400)、散布図に置いた9月の値¥18,100はビジネスホテル中央値をやや上回る位置にある。朝食込みの価格でこの水準に入っているため、素泊まり基準の同価格帯より実質的な提供価値は厚い。
価格帯ごとの客室分布を見ると、ビジネスホテルは推定成約ADR1.5万〜2.1万円の帯に36軒6,854室が集まり、圏内ビジネスホテル客室の51.6%を占める。ここが最も厚い中価格帯で、2026年開業のKOKO HOTEL 札幌すすきの 2nd(¥16,400)やリージョニアbyクインテッサ 札幌駅前(¥18,700)も同じ帯に入った。一方、2.5万円以上の帯はビジネス6軒957室・シティ3軒1,194室と薄く、デラックス区分のハイアット セントリック 札幌(216室、10月の掲載価格・全プラン平均は¥88,100)はこの上端に単独で位置する。中価格帯の厚みと上位帯の薄さが、すすきの市場の現在の形である。
| 推定成約ADR帯 | ビジネス 軒数 | ビジネス 客室 | シティ 軒数 | シティ 客室 |
|---|---|---|---|---|
| 1.2万円未満 | 8 | 1,087 | 0 | 0 |
| 1.2〜1.5万円 | 21 | 2,638 | 1 | 109 |
| 1.5〜1.8万円 | 18 | 3,246 | 4 | 867 |
| 1.8〜2.1万円 | 18 | 3,608 | 4 | 944 |
| 2.1〜2.5万円 | 11 | 1,756 | 4 | 1,465 |
| 2.5万円以上 | 6 | 957 | 3 | 1,194 |
密集 — 1.2万〜2.1万円 × 100〜300室
ビジネスホテルの主戦場。朝食込み・会員施策・立地で差をつける領域で、2026年の開業組もここに入った。
厚みが薄い — 2.1万〜2.5万円 × 150〜250室
ビジネスとシティの境目。ライフスタイル型の付加価値(料飲・ラウンジ)で中価格帯から半歩上げる余地がある。
上端 — 2.5万円超 × 200室前後
デラックス区分はハイアット セントリック 札幌と暖雪 札幌の2軒。2029年のパーク ハイアット 札幌(157室)まで上位帯の供給は限られる。
中央区の推定成約ADR — 9月¥16,100(+7.2%)、2月は年間ピークの¥20,600
札幌市中央区の推定成約ADR(全区分・中央値)を月別に重ねると、季節の形がはっきり出る。2026年は2月が¥20,600で年間の頂点、4月が¥8,600で底となり、その差は2.4倍に達する。夏は7月¥18,100・8月¥16,400・9月¥16,100と高原状に推移し、9月は前年同月比+7.2%(N=140)だった。8月は前年同月比-10.5%と前年を下回ったが、2025年8月が¥18,300と突出していた反動であり、2024年8月と比べれば依然高い水準にある。
区分別では、2026年2月のビジネスホテルが¥20,300、シティホテルが¥29,400で、雪まつりの月は両区分とも前後の月の1.4〜1.8倍まで単価が上がる。9月はビジネス¥15,900・シティ¥19,000である。先行きとして、調査時点の掲載水準から推定した2027年2月は¥22,800(前年同月比+10.3%、N=129)、11月は¥11,300(前年同月比-10.6%)と、冬の山と秋の谷の形が来季も続く見通しである。2027さっぽろ雪まつり(第77回)は2027年2月4日〜11日の会期が旅行会社の案内で示されており、札幌市も陸上自衛隊に大雪像制作の支援を要請している。
需給 — 9月は推定OCC92.7%、11月はLT14時点で77.1%と8.8pt低い立ち上がり
供給が増えた直後の需給を、中央区の推定OCCとブッキングカーブで確かめる。2026年8月の推定OCCは92.9%(対象103施設/客室14,899、主要予約サイト掲載ベース)、9月は92.7%(対象103施設/客室14,907)、10月は24日までで90.7%(対象112施設/客室15,997)である。ビジネスホテルとシティホテルの差はいずれの月も1pt以内で、区分による需給の偏りは見られない。
ブッキングカーブをLT45から宿泊日前日まで描くと、9月(対象107施設/客室15,278)はLT45で72.7%、LT14で85.9%、前日で92.7%と直線的に積み上がった。進行中の11月(対象117施設/客室17,511)はLT45で64.5%、LT14で77.1%と、同じリードタイムで9月より8.2〜8.8pt低い位置を走っている。11月は推定成約ADRでも秋の谷にあたり、単価を-10.6%下げた掲載水準でこの進捗である。ただし札幌の秋は直前予約の比率が高く、9月のカーブもLT14から前日までで約7pt積み上がった。11月の最終着地は、この直前需要が例年どおり入るかで決まる。
| 区分 | 2026年8月 | 2026年9月 | 2026年10月(24日まで) |
|---|---|---|---|
| 全区分 | 92.9%(103施設/14,899室) | 92.7%(103施設/14,907室) | 90.7%(112施設/15,997室) |
| ビジネスホテル | 92.8%(62施設/9,614室) | 93.1%(63施設/9,665室) | 91.0%(67施設/10,435室) |
| シティホテル | 93.4%(14施設/4,118室) | 92.9%(14施設/4,118室) | 91.5%(14施設/4,118室) |
REITの開示実績とも整合する。インヴィンシブル投資法人が公表した2026年8月の物件別実績では、1km圏内のホテルマイステイズプレミア札幌パーク(419室)が稼働率92.0%・ADR19,659円、ホテルマイステイズ札幌すすきの(104室)が稼働率94.8%・ADR15,164円だった。本稿の中央区推定OCC92.9%(8月)と同じ水準であり、推定成約ADRについても両施設の7〜9月中央値は17,900円・14,000円で、開示値に対して8〜9%低い位置にあり、推定値として概ね整合する。
次の供給 — 2027年2月126室・2028年5月200室の計画と、2027年8月の575室退出
2026年の開業組が吸収されるかを左右するのは、次に控える供給と退出である。国土交通省「建築物動態統計調査」に基づく当社の建築計画データでは、1km圏内に2件の計画が確認できる。南7条西4丁目の10階建て126室(延床7,730.59㎡、2025年6月着工・2027年2月完了予定、建築主は東急不動産)と、南7条西5丁目の11階建て200室(延床8,554.54㎡、2026年5月着工・2028年5月完了予定、建築主は丸紅都市開発・長谷工コーポレーション・相互住宅)である。いずれもブランドは未公表で、本稿では「計画」として扱う。確認申請ベースの件数は調査時点の下限値であり、今後の申請追加で増える見込みである。
退出も大きい。東急と東急ホテルズ&リゾーツは2026年6月30日、札幌東急REIホテル(575室、1980年6月開業)を定期建物賃貸借契約の終了に伴い2027年8月31日で営業終了すると発表した。後継テナント兼オペレーターは東急リゾーツ&ステイで、改修を経て2028年に同社運営のホテルとしてリブランド開業する予定である。圏内の稼働客室の約2.9%にあたる575室が約1年間市場から外れ、その後に改装転用の形で戻ってくる。ホリデイ・イン エクスプレスと同じ「既存の器を改修して再投入する」動きが、圏内最大級の規模で続くことになる。
| 時期 | 案件 | 客室数 | 性質 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年7月 | ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの | 223 | 改装転用・開業済 | IHG報道資料/PR TIMES |
| 2026年10月 | ハイアット セントリック 札幌(北1条西5・複合ビル) | 216 | 新築・開業済 | 日本ハイアット「報道資料 2026年4月」 |
| 2027年2月(完了予定) | 南7条西4丁目 10階建て(建築主:東急不動産) | 126 | 新築・計画(ブランド未公表) | 国土交通省「建築物動態統計調査」 |
| 2027年8月31日 | 札幌東急REIホテル 営業終了 | 575 | 退出(2028年にリブランド開業予定) | 東急・東急ホテルズ&リゾーツ 2026-06-30 |
| 2028年5月(完了予定) | 南7条西5丁目 11階建て(建築主:丸紅都市開発ほか) | 200 | 新築・計画(ブランド未公表) | 国土交通省「建築物動態統計調査」 |
| 2029年(予定) | パーク ハイアット 札幌 | 157 | 新築・計画 | 日本ハイアット「報道資料 2026年4月」 |
J-REIT保有7物件の取得価格 — 1室1,198万〜4,575万円、器の値段の参照点
圏内でJ-REITが保有する物件は、当社の保有関係マスター(2026年10月19日時点)で7物件・1,566室が確認できる。インヴィンシブル投資法人のホテルマイステイズプレミア札幌パーク(419室・取得価格16,731百万円)とホテルマイステイズ札幌すすきの(104室・3,059百万円)、ジャパン・ホテル・リート投資法人のラ・ジェント・ステイ札幌大通(219室・10,020百万円)・イビススタイルズ札幌(278室・6,797百万円)・メルキュール札幌(285室・6,000百万円)、いちごホテルリート投資法人のTHE KNOT SAPPORO(140室・4,900百万円)・ネストホテル札幌大通(121室・1,450百万円)である。ジャパン・ホテル・リートはポートフォリオ一覧で物件別の取得日を公表していないため、取得時期の比較は残る2法人の5物件が対象になる。
| 投資法人 | 物件名 | 客室数 | 取得価格 | 1室あたり | 取得時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| インヴィンシブル投資法人 | ホテルマイステイズプレミア札幌パーク | 419 | 16,731百万円 | 3,993万円 | 2018年8月 |
| インヴィンシブル投資法人 | ホテルマイステイズ札幌すすきの | 104 | 3,059百万円 | 2,941万円 | 2019年7月 |
| ジャパン・ホテル・リート投資法人 | ラ・ジェント・ステイ札幌大通 | 219 | 10,020百万円 | 4,575万円 | — |
| ジャパン・ホテル・リート投資法人 | イビススタイルズ札幌 | 278 | 6,797百万円 | 2,445万円 | — |
| ジャパン・ホテル・リート投資法人 | メルキュール札幌 | 285 | 6,000百万円 | 2,105万円 | — |
| いちごホテルリート投資法人 | THE KNOT SAPPORO | 140 | 4,900百万円 | 3,500万円 | 2023年8月 |
| いちごホテルリート投資法人 | ネストホテル札幌大通 | 121 | 1,450百万円 | 1,198万円 | 2015年11月 |
1室あたりの取得価格は1,198万円から4,575万円まで4倍近い幅があり、築年・グレード・取得時期によって器の値段が大きく変わることを示している。2023年8月取得のTHE KNOT SAPPORO(1室3,500万円)は、2010年代後半取得のマイステイズ2物件(1室2,900万〜4,000万円)と同じ帯にあり、すすきの・大通の中規模ホテルは1室3,000万〜4,000万円が近年の取引水準と読める。この帯を前提に、223室の転用を採算に落としてみる。
投資判断サマリー — 223室転用の利回りは仮定で3.0〜9.3%、取得費が最大の変数
ここまでの数字を一つの枠組みに束ねる。すすきので223室の既存建物をホテルに転用する場合を、中央区ビジネスホテルの推定成約ADR(7〜9月中央値¥16,400)と推定OCC(90%台)を起点に、保守・中位・強気の3シナリオで置いた。GOP率は本稿の仮定として40〜50%とした。取得費は前節のREIT取引水準、改修費は本稿の転用仮定レンジを用いている。いずれも本稿の仮定であり、ホリデイ・イン エクスプレスの実際の投資額・運営数値ではない。
| 項目 | 保守 | 中位 | 強気 |
|---|---|---|---|
| ADR(推定成約・税抜相当) | ¥15,000 | ¥16,500 | ¥18,000 |
| 通年OCC(仮定) | 80% | 85% | 88% |
| 年間客室売上 | 9.8億円 | 11.4億円 | 12.9億円 |
| GOP率 | 40% | 45% | 50% |
| GOP | 3.9億円 | 5.1億円 | 6.4億円 |
| 建物取得費(1室) | 4,000万円 | 3,000万円 | 2,200万円 |
| 改修費(1室) | 1,900万円 | 1,400万円 | 900万円 |
| 総投資額 | 132億円 | 98億円 | 69億円 |
| GOPベース利回り | 3.0% | 5.2% | 9.3% |
中位シナリオ(ADR¥16,500・通年OCC85%・GOP率45%、総投資98億円)の利回りは5.2%で、ここからADRが10%下がると4.7%、OCCが5pt下がると4.9%、両方が重なると4.4%になる。感度を見ると、運営側の変動よりも取得費の違いのほうが利回りを大きく動かす。保守と強気の総投資額の差は約62億円で、その内訳は1室あたり取得費4,000万円と2,200万円の差による約40億円と、改修費1,900万円と900万円の差による約22億円である。改装転用の採算は、運営の巧拙より「器をいくらで手に入れたか」で先に決まる、というのがこの枠組みの示す結論である。
| シナリオ | 年間客室売上 | GOP | 利回り |
|---|---|---|---|
| ベース | 11.4億円 | 5.1億円 | 5.2% |
| ADR −10% | 10.3億円 | 4.6億円 | 4.7% |
| OCC −5pt | 10.7億円 | 4.8億円 | 4.9% |
| 両方 | 9.7億円 | 4.4億円 | 4.4% |
| 通年OCC \ ADR | ¥14,500 | ¥15,500 | ¥16,500 | ¥17,500 | ¥18,500 |
|---|---|---|---|---|---|
| 77% | 4.2% | 4.5% | 4.7% | 5.0% | 5.3% |
| 81% | 4.4% | 4.7% | 5.0% | 5.3% | 5.6% |
| 85% | 4.6% | 4.9% | 5.2% | 5.6% | 5.9% |
| 89% | 4.8% | 5.1% | 5.5% | 5.8% | 6.1% |
| 93% | 5.0% | 5.4% | 5.7% | 6.1% | 6.4% |
総投資額を中位の98億円に固定してADRと通年OCCを同時に動かすと、利回りは4.2%(ADR¥14,500・OCC77%)から6.4%(ADR¥18,500・OCC93%)の範囲に収まり、幅は約2.3ptにとどまる。取得費と改修費を保守ケース(総投資132億円)に置いた3.0%、強気ケース(69億円)の9.3%との開きはこれより大きく、ここでも利回りを先に決めるのは運営指標より器の取得単価である。
リスク要因は三つに整理できる。第一に供給で、2027年2月の126室・2028年5月の200室の計画に加え、2028年に575室がリブランドで戻ってくる。第二に季節で、中央区は2月と4月の推定成約ADRが2.4倍開く市場であり、11月の予約進捗は9月より約9pt遅い。通年のRevPARは冬の山をどれだけ取れるかに依存する。第三に建築費で、新築の坪単価が高止まりするほど転用の相対優位は保たれるが、改修費そのものも同じ資材・労務コストの影響を受ける。いずれも成長余地と裏表の関係にあり、朝食込み中価格帯という位置取りは、季節変動を直前需要で埋めやすい点で札幌の市場構造に合っている。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要である。
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10月以降の推定成約ADRと11月のブッキングカーブは、調査時点(2026年10月24日)でOTAに公開されている販売価格・在庫に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。
よくある質問
Q. ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきのはいつ開業し、何室ですか?
2026年7月17日に開業した全223室のホテルです。IHGホテルズ&リゾーツが運営受託契約で運営し、所有は三菱商事都市開発・東京建物・サンケイビルを含むコンソーシアムです。既存建物の大規模改修による転用で、国内2軒目・北海道初のホリデイ・イン エクスプレスにあたります。
Q. すすきの1km圏では2026年にどれだけホテルが増えましたか?
客室10室以上の宿が7軒1,115室開業しました。ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの(223室)、ハイアット セントリック 札幌(216室)、KOKO HOTEL 札幌すすきの 2nd(212室)などで、圏内の稼働客室約2万室の5.6%に相当します。開業年が確認できる施設ベースの純増は579室です。
Q. 札幌市中央区のホテル単価はいくらですか?
メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(税抜相当・中央値)で2026年9月は16,100円、前年同月比+7.2%です。2月は20,600円と年間の頂点で、4月の8,600円との差は2.4倍あります。
Q. 改装転用は新築よりどれくらい安いのですか?
国内では新築比の公表統計がないため、本稿は新築費の40〜60%という仮定レンジで置いています。2025年のホテル建築費(建築着工統計ベース)は全構造平均195.2万円/坪、S造240.5万円/坪で、1室あたり延床35〜45㎡を仮定すると新築の1室建築費は約2,100万〜3,300万円、転用なら約830万〜1,960万円になります。
Q. 今後すすきの周辺で予定されている供給は?
建築計画データでは南7条西4丁目に126室(2027年2月完了予定)、南7条西5丁目に200室(2028年5月完了予定)の計画があり、いずれもブランドは未公表です。札幌東急REIホテル(575室)は2027年8月31日に営業を終了し、2028年にリブランド開業する予定です。2029年にはパーク ハイアット 札幌(157室)も計画されています。
まとめ
すすきの1km圏の客室ストックは10年で+44.9%の2.1万室に達し、2026年は7軒1,115室が開業した。それでも中央区の推定成約ADRは9月に前年同月比+7.2%、推定OCCは90%台を保ち、開業ラッシュは現時点で単価を崩していない。ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきのは、建築費が高止まりする局面で既存建物の改装転用を選び、発表から約3か月で開業にこぎつけた。価格はビジネスホテル82軒の中央値に重なる中価格帯に朝食込みで入り、最も厚い需要層を正面から取る位置取りである。次の焦点は、2027年2月と2028年5月に完了予定の計画326室、2027年8月に営業を終える575室の退出とその後のリブランド復帰を、冬のピークと秋の谷を持つ市場がどう吸収するかにある。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが収集する主要予約サイトの公開価格・在庫データ(すすきの交差点付近を中心とする半径1km圏の客室ストック、札幌市中央区の推定成約ADR・推定OCC・ブッキングカーブ)、各J-REITのIR資料、IHG・日本ハイアット・東急の一次発表、国土交通省の建築統計。
■ 試算前提
223室転用の採算は、ADR¥15,000〜18,000・通年OCC80〜88%・GOP率40〜50%(いずれも本稿の仮定)、1室あたり建物取得費2,200万〜4,000万円(圏内J-REIT取得価格の水準)、改修費900万〜1,900万円(新築費の40〜60%仮定)で置いた。年間客室売上は223室×365日×ADR×OCCで算出し、利回りは総投資額に対するGOPの比率である。
■ 限界・留意点
推定成約ADR・推定OCCはOTA上で販売される在庫の価格と消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実績とは一致しない。2026年10月以降の値は調査時点(2026年10月24日)の掲載水準による。採算シナリオはホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきのの実際の投資額・運営数値ではなく、税金・保険・FF&E積立・ブランドフィー等は控除していない。
■ 一次情報(開業・計画)
- IHG Hotels & Resorts「IHG signs second Holiday Inn Express in Japan」(2026年4月27日)
- PR TIMES「ホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの」開業告知(IHG・ANA・ホテルズグループジャパン)
- PR TIMES「ハイアット セントリック 札幌」10月3日開業(NTT都市開発ホテルマネジメント)
- 東急株式会社・東急ホテルズ&リゾーツ「札幌東急REIホテルは2027年8月31日をもって営業終了いたします」(2026年6月30日)
- 札幌市「陸上自衛隊に『2027さっぽろ雪まつり(第77回)』への支援要請を行いました」(2026年8月25日)
- 阪急交通社 さっぽろ雪まつり特集(2027年2月4日〜11日の会期案内)
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 半径1km圏の客室ストック(掲載164軒/稼働120軒)、推定成約ADR(中央区 N=月次119〜140施設、個別施設 N=99施設)、推定OCC・ブッキングカーブ(中央区 対象103〜117施設)、新規開業(OTA掲載確認ベース)
- 札幌市「2025年度札幌の観光動向に関する調査結果」(2026年8月21日)— 来札観光客数約1,604万7千人、外国人宿泊者数約248万8千人(前年度比+14.1%)
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(建築計画:南7条西4丁目126室、南7条西5丁目200室)
- アーキブック「ホテルの建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2026年版】」(国土交通省「建築着工統計調査」に基づく、2025年:S造240.5万円/坪・RC造202.6万円/坪・全構造195.2万円/坪)
- HOTELISM「ホテル開業にかかる建設費について」(2023年12月27日、ビジネスホテル100〜150万円/坪)
■ REIT・業界レポート
- インヴィンシブル投資法人「2026年8月 月次運営実績」(物件別稼働率・ADR、国内ホテル101物件)
- ジャパン・ホテル・リート投資法人、いちごホテルリート投資法人、インヴィンシブル投資法人 各ポートフォリオ一覧(取得価格・客室数)
出典: 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」
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