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カニの宿361軒を口コミで数える2026|10室以下は言及率38%、京丹後の冬ADRは9月の2.3倍

投稿日 : 2026.10.30

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調査

カニの宿361軒を口コミで数える2026|10室以下は言及率38%、京丹後の冬ADRは9月の2.3倍

ズワイガニ漁は例年11月6日に解禁され、2026年は金曜日にあたるため、初物が宿の膳に並ぶ最初の週末は11月7日・8日になる。ホテルバンク編集部が兵庫・京都・福井・鳥取・北海道・新潟・石川・島根の8道府県を対象に直近24か月の宿泊者口コミを集計したところ、夕食の蟹が肯定的に10件以上語られている宿は361軒あり、そのうち135軒では口コミの5本に1本以上が蟹に触れていた。言及率は宿の規模と強く結びついており、10室以下の宿では口コミの37.9%が蟹を語る一方、101室以上では4.0%にとどまる。本稿では、県別・市町村別に「蟹が商品そのものになっている宿」を数え、その集積地で冬の推定成約ADRが9月の何倍に切り替わるのかを、確定月どうしの比較で読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
蟹の言及率について
蟹の言及率=各宿の口コミ総数のうち、夕食の蟹(蟹会席・焼き蟹・蟹すき・蟹の食べ放題など)に肯定的に触れた口コミの割合。言及の頻度を示す値であり、評価点ではない。集計対象は直近24か月(2026年10月時点)の口コミが20件以上あり、蟹への肯定的な言及が10件以上あった宿で、1道府県あたり最大100軒まで取得している。兵庫県は上限の100軒に達しているため、実数はこれより多い(100軒目の言及件数は12件で、10〜11件の宿が集計に入っていない)。出典:ホテルバンク編集部調べ。

Key Takeaways

— 8道府県で蟹が語られる宿は361軒(口コミ164,943件・蟹への言及13,741件)。言及率10%以上が216軒、20%以上が135軒で、20%以上の135軒のうち兵庫56軒・京都44軒・福井22軒の3府県で122軒を占める。

— 言及率の中央値は京都30.0%・兵庫23.6%・福井17.7%に対し、北海道4.2%・島根4.4%・石川5.4%。北海道・石川・島根では蟹が語られる宿の客室数中央値が49〜104室と大きく、蟹は多彩な夕食の一要素として語られている。

— 宿の規模と言及率は逆方向に動く。10室以下の91軒は言及率中央値37.9%で、うち79.1%が20%を超える。11〜30室で18.3%、31〜60室で7.8%、61室以上では4%台に収れんする(客室数の対数と言及率の相関係数 −0.65、N=361)。

— 市町村では香美町が34軒すべてで言及率10%以上(中央値54.1%・客室数中央値7室)、京丹後市は52軒中41軒が20%以上、越前町は11軒中10軒、坂井市は9軒中7軒が20%以上だった。

— 推定成約ADRは、2025年9月に対する2025年11月〜2026年2月の平均が越前町2.88倍・京丹後市2.32倍、兵庫の但馬3市町は1.66〜1.87倍(12〜2月平均)。前シーズン同期間比でも越前町+12.8%・京丹後市+14.4%・香美町+17.6%と、蟹が主題の宿が集まる町ほど冬の単価が伸びている。

解禁日と漁期 — 雄は11月6日から3月20日、香住がには9月から5月まで

まずは日程を整理しておきたい。島根県から富山県にかけての日本海沖で行われるズワイガニ漁は、農林水産省令で3月21日から11月5日までが禁漁期間と定められており、毎年11月6日に一斉解禁となる。福井県水産課の公表資料は「11月6日午前0時」の解禁を明記し、鳥取県も2025年のズワイガニ漁が11月6日に解禁されたと案内している。2026年も同じ制度のもとで11月6日(金)の解禁が見込まれ、初物が宿の夕食に並ぶ最初の週末は11月7日(土)・8日(日)となる。

雄のズワイガニは翌年3月20日まで漁期が続くのに対し、セイコガニ・セコガニ・親ガニと呼ばれる雌は資源保護のために短く、福井県では12月31日で終わる。つまり雄と雌が同時に膳に載るのは11月6日から年末までの約8週間に限られ、この期間が産地の宿にとって最も献立の厚い時期になる。一方で、兵庫県香美町の香住漁港に水揚げされるベニズワイガニ(香住がに)は9月1日に解禁され、翌年5月31日まで漁期がある。但馬の宿が9月から蟹の献立を組み立てられるのはこのためで、11月以降は松葉がにと香住がにが並走する。

ズワイガニ・ベニズワイガニの漁期と主な産地ブランド
区分漁期主な産地ブランド・水揚げ地
ズワイガニ(雄)11月6日〜翌年3月20日越前がに(福井)、加能ガニ(石川)、松葉がに(京都・兵庫・鳥取・島根)。港単位では間人がに(京丹後市)、津居山がに(豊岡市)、柴山がに(香美町)など
ズワイガニ(雌)11月6日〜12月31日(福井県の公表)セイコガニ(福井)、香箱ガニ(石川)、セコガニ・親ガニ(山陰)
ベニズワイガニ9月1日〜翌年5月31日香住がに(兵庫・香住漁港)、境港(鳥取)など

出典:福井県農林水産部水産課「『越前がに』漁の解禁」、鳥取県「とっとりの松葉がに」、休暇村竹野海岸の報道資料(香住がに漁期)、秋田魁新報(2025年11月6日)よりホテルバンク編集部作成。漁期は海域・各県の自主規制により短縮される場合がある

県別の軒数と言及率分布 — 兵庫・京都・福井に135軒中122軒が集まる

では、宿泊者は実際にどこで蟹を語っているのだろうか。8道府県で集計対象となった361軒を県別に並べると、兵庫県が100軒(取得上限)で最も多く、京都府66軒、福井県49軒、北海道44軒、鳥取県38軒、石川県31軒、新潟県20軒、島根県13軒と続く。ただし軒数だけでは産地の実像は見えてこない。各宿の口コミに占める蟹の言及率を4つの帯に分けると、県ごとの性格がはっきり分かれる。なお対象を全国47都道府県に広げた613軒の分布は、カニ解禁2026は11月6日|蟹が口コミで語られる宿は全国613軒、産地の単価は最大3.6倍で整理している。

兵庫県は100軒のうち36軒が言及率40%以上で、20%以上まで広げると56軒にのぼる。京都府は66軒中44軒が20%以上、福井県は49軒中22軒である。これに対し北海道は44軒中34軒が10%未満で、40%以上の宿はない。石川県も31軒中25軒が10%未満、島根県は13軒中9軒が10%未満だった。鳥取県は38軒中22軒が10%未満で、20%以上は4軒にとどまる。中央値で見ると、京都30.0%・兵庫23.6%・福井17.7%・新潟12.8%・鳥取7.8%・石川5.4%・島根4.4%・北海道4.2%という順になる。

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、N=361軒・口コミ164,943件、直近24か月、兵庫県は取得上限100軒)

道府県別 蟹が語られる宿の軒数と言及率(直近24か月)
道府県軒数10%以上20%以上言及率中央値客室数中央値口コミ総数蟹の言及
兵庫100(上限)815623.6%14室28,5093,811
京都66554430.0%12室18,1682,326
福井49332217.7%17室16,4931,862
鳥取381647.8%37室25,7521,660
北海道441034.2%104室42,4192,266
新潟2011312.8%34室7,588438
石川31625.4%49室17,194994
島根13414.4%70室8,820384
合計361216135——164,94313,741

出典:ホテルバンク編集部調べ(直近24か月、口コミ20件以上かつ蟹への肯定的言及10件以上の宿)

この差を生んでいるのは、蟹が「宿の商品そのもの」なのか「夕食の選択肢のひとつ」なのかという違いだろう。北海道で蟹が語られる宿は客室数の中央値が104室、石川県は49室、島根県は70室で、いずれも大型の温泉旅館やリゾートホテルが中心である。たとえば石川県で言及件数が最も多い大江戸温泉物語Premium 山下家(108室)は、口コミ829件のうち161件が「カニづくしバイキング」のように蟹を語っており、言及率19.4%は大型宿としては際立って高い。北海道のイマジン ホテル&リゾート函館(口コミ2,268件・言及364件)やホテルまほろば(2,165件・300件)も、言及件数では但馬・丹後の小宿を大きく上回る。件数で勝負する大型宿と、率で勝負する小宿という二つの型が、同じ「蟹の宿」の中に同居している。

言及率と宿の規模 — 10室以下は37.9%、101室以上は4.0%

その二つの型を規模の軸で切り直すと、関係はきわめて明瞭になる。361軒を客室数で5階級に分けると、10室以下の91軒では蟹の言及率の中央値が37.9%に達し、79.1%の宿が20%を超えていた。11〜30室の115軒では中央値18.3%・20%以上が46.1%、31〜60室の64軒では7.8%・14.1%、61〜100室の46軒では4.4%・2.2%、101室以上の45軒では4.0%で20%を超える宿はなかった。客室数の対数と言及率の相関係数は−0.65で、規模が一桁小さくなるごとに言及率の帯がひとつ上がる構造といえる。

出典:ホテルバンク編集部調べ(N=361軒、客室数はメトロエンジンリサーチの施設マスター)

客室規模別の蟹の言及率(N=361軒)
客室規模軒数言及率中央値言及率20%以上の割合
10室以下9137.9%79.1%
11〜30室11518.3%46.1%
31〜60室647.8%14.1%
61〜100室464.4%2.2%
101室以上454.0%0.0%

出典:ホテルバンク編集部調べ(直近24か月)

逆方向から見ても同じことがいえる。言及率40%以上の65軒は客室数の中央値が9室で、66.2%が10室以下の宿である。20〜40%の70軒は中央値12.5室、10〜20%の81軒は24室、10%未満の145軒は62室と、帯が下がるごとに宿は大きくなる。小さな料理旅館や民宿では、宿泊体験そのものが蟹と同義になっており、口コミの主題が自然と蟹に収れんする。大型宿が蟹を語られにくいという話ではなく、口コミの母数が多様な夕食や温泉・施設に分散するため、率としては薄まると読むのが妥当だろう。

もっとも、数十室規模の宿でも蟹が主題になっている例はある。兵庫県の緑風閣は口コミ485件のうち142件(29.3%)、京都府の佳松苑は504件中145件(28.8%)、夕日ヶ浦温泉 海舟は372件中157件(42.2%)が蟹に触れており、鳥取県の皆生グランドホテル 天水(1,073件・180件・16.8%)や福井県のあわら温泉 清風荘(1,619件・243件・15.0%)も、言及件数では各県の首位にある。件数で見れば大型宿が、率で見れば小宿が上位に立つという構図は、冬の献立を設計するうえで両方の指標を見る必要があることを示している。

市町村で見る集積 — 香美町は34軒すべてが10%以上、京丹後市は52軒中41軒が20%以上

では、蟹が主題になっている宿はどこに固まっているのか。市町村単位で集計すると、軒数では京丹後市が52軒で最も多く、豊岡市48軒、香美町34軒、加賀市22軒、米子市18軒、あわら市14軒と続く。ここでも言及率の分布を重ねると性格が分かれる。香美町は34軒のすべてが10%以上かつ20%以上で、言及率の中央値は54.1%、客室数の中央値は7室、34軒を合計しても301室しかない。香住・柴山・佐津といった漁港沿いの集落に、数室から十数室の料理民宿が連なる構造がそのまま数字に表れている。

京丹後市は52軒中48軒が10%以上、41軒が20%以上で、中央値32.7%・客室数中央値11.5室。夕日ヶ浦・間人・久美浜の民宿と小旅館が中心で、合計客室数は775室にのぼる。越前町は11軒中10軒が20%以上(中央値32.5%)、坂井市(三国)は9軒中7軒が20%以上(中央値30.6%)と、越前海岸と三国港の宿も但馬・丹後と同じ型にある。豊岡市は48軒のうち20%以上が19軒で中央値16.2%とやや薄まるが、これは城崎温泉の中規模旅館(客室数中央値16室)が多く、蟹以外の献立や温泉街の体験が口コミに並ぶためだろう。

対照的に、加賀市は22軒中20%以上が1軒、あわら市は14軒中1軒、米子市は18軒中2軒である。いずれも客室数の中央値が37〜52室の温泉旅館街で、加賀市の22軒は合計1,304室、あわら市の14軒は991室と、京丹後市52軒の775室を上回る客室を抱える。蟹会席は数ある夕食プランのひとつとして販売され、口コミは温泉や館内施設にも分散する。同じ「蟹の産地の温泉地」でも、商品としての蟹の濃度は町ごとに大きく異なる。

市町村別 蟹が語られる宿の集積(集計対象の多い12市町村)
市町村軒数10%以上20%以上言及率中央値客室数中央値合計客室口コミ総数
京丹後市(京都)52484132.7%12室775室7,103
豊岡市(兵庫)48391916.2%16室1,189室13,008
香美町(兵庫)34343454.1%7室301室2,172
加賀市(石川)22516.0%48室1,304室12,261
米子市(鳥取)18625.9%37室836室12,359
あわら市(福井)14417.3%52室991室9,738
宮津市(京都)11538.4%13室502室5,758
越前町(福井)11101032.5%11室119室1,114
三朝町(鳥取)116010.2%40室504室5,792
新温泉町(兵庫)106312.5%30室401室4,485
坂井市(福井)99730.6%13室243室1,155
函館市(北海道)9105.0%151室1,444室11,326

出典:ホテルバンク編集部調べ(集計対象の宿が多い12市町村、直近24か月。兵庫県は取得上限100軒のため豊岡市・香美町・新温泉町の実数はこれより多い可能性がある)

言及率20%以上の宿の位置を地図に落とすと、但馬海岸(香美町・新温泉町・豊岡市竹野)、丹後半島(京丹後市・宮津市)、越前海岸(越前町・坂井市三国)の三つの海岸線に点が連なる。円の大きさは言及率に比例させており、香美町と京丹後市の海岸に大きな円が密集している。

出典:ホテルバンク編集部調べ(言及率20%以上の135軒、円の大きさ=言及率)

言及率の上位20軒を並べると、顔ぶれは香美町と京丹後市にほぼ集中する。首位の香美町の宿は口コミ21件のうち17件(81.0%)が蟹に触れ、京丹後市の宿が73.2%、香美町の民宿が72.7%で続く。上位20軒の客室数は4〜17室で、口コミ母数が20〜81件と小さい宿が多い点には留意が必要だが、「泊まる理由が蟹である」宿がこれだけ連なる地域は他にない。なお母数の大きい宿では、香美町の荒神の宿 三宝(口コミ236件・言及125件・53.0%)や夕凪の丘(198件・95件・48.0%)、京丹後市の久美浜旅館 みなと悠悠(65件・36件・55.4%)が高い言及率を保っている。

蟹の言及率 上位20軒(口コミ20件以上)
順位宿所在地客室数口コミ蟹の言及言及率
1ちいさなお宿 たきろく兵庫・香美町4室21件17件81.0%
2くつろぎの宿 浜や京都・京丹後市10室41件30件73.2%
3民宿 一兵庫・香美町5室55件40件72.7%
4御宿 たつみ兵庫・香美町16室22件16件72.7%
5民宿 かず子京都・京丹後市5室29件21件72.4%
6かめや兵庫・香美町7室35件25件71.4%
7かに楽座 甲羅戯兵庫・香美町17室81件57件70.4%
8小宿 梅乃家兵庫・香美町4室43件30件69.8%
9いまご荘 櫂の詩兵庫・香美町9室39件27件69.2%
10源六兵庫・香美町6室45件31件68.9%
11旬の宿 尾崎屋兵庫・香美町7室34件23件67.6%
12庄屋兵庫・香美町14室40件27件67.5%
13四季の宿 大力京都・京丹後市6室26件17件65.4%
14颯花兵庫・香美町6室20件13件65.0%
15奥の庄京都・京丹後市8室30件19件63.3%
16御宿 矢吉京都・京丹後市10室23件14件60.9%
17海望 三国屋福井・坂井市13室27件16件59.3%
18やすらぎの宿 丸世井兵庫・香美町10室22件13件59.1%
19にしたにや 海華兵庫・香美町10室55件32件58.2%
20民宿 浜乃家京都・宮津市12室21件12件57.1%

出典:ホテルバンク編集部調べ(言及率の高い順、直近24か月、口コミ20件以上かつ蟹への肯定的言及10件以上の宿)

9月と冬の単価 — 越前町は2.88倍、京丹後市は2.32倍、集積地ほど前年からの伸びも大きい

蟹が主題の宿が集まる町では、解禁を境に単価がどれだけ切り替わるのか。メトロエンジンリサーチのデータで、確定値がそろう2025年9月と2025年11月〜2026年2月(兵庫3市町は12〜2月)の推定成約ADRを市町村別に比べると、越前町は9月の¥18,600から冬の平均¥53,500へ2.88倍、京丹後市は¥17,700から¥41,000へ2.32倍に上がっていた。但馬では新温泉町1.87倍、香美町1.74倍、豊岡市1.66倍、三国の坂井市は1.63倍である。一方、あわら市は1.18倍、米子市1.17倍、鳥取市1.02倍と、大型温泉旅館や市街地のビジネスホテルが中央値を占める市では段差が穏やかになる。月単位ではなく解禁初週末の土曜と10月の土曜を直接比べた値差は、カニ解禁2026、初週末の旅館は10月土曜より最大44%高いが4県で検証している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・全業態の中央値、確定月のみ。兵庫3市町は12〜2月平均)

市町村別 推定成約ADR 2025年9月と2025-26年冬の比較
市町村2025年9月2025-26年冬 平均冬÷9月前シーズン 冬÷9月冬の前年同期比N(2026年2月)
豊岡市(兵庫)※¥18,600¥30,8881.66倍1.55倍+2.6%103
香美町(兵庫)※¥23,074¥40,2171.74倍1.41倍+17.6%54
新温泉町(兵庫)※¥13,042¥24,4131.87倍1.80倍+4.7%22
京丹後市(京都)¥17,667¥40,9542.32倍1.72倍+14.4%82
宮津市(京都)¥17,833¥26,5561.49倍1.71倍+9.3%30
越前町(福井)¥18,586¥53,4742.88倍2.52倍+12.8%20
坂井市(福井)¥8,948¥14,6291.63倍1.33倍-2.0%14
あわら市(福井)¥20,925¥24,7331.18倍1.24倍+7.4%22
米子市(鳥取)¥6,679¥7,8211.17倍1.07倍+9.5%45
鳥取市(鳥取)¥7,891¥8,0781.02倍1.05倍-3.5%35

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。冬=11月〜2月の推定成約ADR平均(※兵庫3市町は12〜2月の3か月平均、前シーズンも同じ月で比較)。前シーズン=2024年9月と2024-25年冬。Nは推定成約ADRの算出対象施設数

注目したいのは、倍率の大きさと言及率の集積が同じ方向に並び、しかも前シーズンからの伸びも集積地で大きい点である。香美町の冬の推定成約ADRは前シーズン同期間比+17.6%、京丹後市+14.4%、越前町+12.8%と二桁で伸びた一方、あわら市+7.4%、豊岡市+2.6%、新温泉町+4.7%は一桁、坂井市と鳥取市はわずかに前年を下回った。9月の水準が横ばいか前年を下回るなかで冬だけが伸びているため、倍率そのものも香美町1.41倍→1.74倍、京丹後市1.72倍→2.32倍、越前町2.52倍→2.88倍と拡大している。因果を示すものではないが、宿泊者が蟹を語る密度の高い町ほど、冬の単価が秋から切り離されて動く余地が大きいと読める。

月次で追うと、京丹後市と越前町は11月に入った途端に階層が切り替わり、12月から1月にかけて山を作り、2月にやや下がって3月の漁期末まで高原が続く。2025-26年シーズンは11月の立ち上がりが前年より高く、越前町の12月は約61,800円、京丹後市の1月は約43,600円に達した。9〜10月の水準は両町とも前年とほぼ同じか下回っており、冬の伸びが秋の水準に波及しているわけではない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・全業態の中央値、確定月のみ。京丹後市N=74〜87、越前町N=17〜20)

運営側の示唆 — 蟹期の単価設計と連泊プラン

ここまでを整理すると、蟹が語られる密度は「宿の規模」と「町の性格」でほぼ説明でき、密度の高い町ほど冬の単価が秋から大きく切り離されている。運営者にとっての示唆は三つある。第一に、10室前後の料理宿にとって蟹は商品そのものであり、口コミの7割が蟹を語る宿では献立の内容(雄の蟹1杯の量、焼き・茹で・刺しの組み合わせ、雌がにの有無)がそのまま単価の根拠になる。香美町や京丹後市で冬の中央値が前年から二桁伸びた事実は、こうした宿が単価を献立の厚みに連動させる余地をまだ持っていることを示す。言及率の高さは、値決めの裏付けとして口コミから読み取れる数少ない定量指標といえる。

第二に、客室数の多い温泉旅館では蟹の言及率が数%台にとどまるが、これは蟹プランを強化する伸びしろがあると読める。108室の大江戸温泉物語Premium 山下家が19.4%、40室の海舟が42.2%、24室の緑風閣が29.3%の言及率を保っているように、蟹を「夕食の看板」に据えれば客室数の多い宿でも口コミの主題になりうる。加賀市やあわら市のように客室の母数が大きい温泉地では、蟹会席を上位プランとして明確に階層化し、雄と雌がそろう11月6日から年末までの8週間に照準を合わせた商品設計が有効といえる。

第三に連泊である。雄の漁期は3月20日まで約4か月半あり、京丹後市や越前町の単価は11月から2月まで高原を保つ。小宿は客室数が限られるため、1泊の単価を上げるだけでなく、2泊目に蟹以外の地魚会席や鍋を組み合わせた連泊プランを用意すれば、同じ客室で冬の売上を積み増せる。但馬では9月解禁の香住がにと11月解禁の松葉がにを一つの滞在で食べ比べる構成も組める。公開されているプラン名の集計では、旅館×カニのプラン名507件のうち会席コースが45%、海鮮22%、和牛・ブランド牛15%と、蟹に第二の主菜を添える名付けが一定の比率を占めており、連泊や2泊目の献立を名前で伝える余地は残されている。但馬の宿で11月の予約が実際にいつ動くかは、豊岡市の旅館、勤労感謝3連休は初日95.7%・最終夜85.5%が予約カーブから逆算している。

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※公開プラン名の集計にもとづく傾向で、命名が販売を生む因果を示すものではありません。市場×命名の深掘りは命名ベンチマーク/イベント記事をご参照ください。

まとめ

8道府県で夕食の蟹が肯定的に語られる宿は361軒、うち言及率20%以上は135軒で、その122軒が兵庫・京都・福井に集まる。言及率は宿の規模と逆相関し、10室以下では中央値37.9%、101室以上では4.0%だった。市町村では香美町が34軒すべてで10%以上、京丹後市は52軒中41軒が20%以上と、但馬・丹後・越前の海岸線に「泊まる理由が蟹である」宿が連なる。そうした町では、2025年9月に対する冬の推定成約ADRが越前町2.88倍・京丹後市2.32倍・香美町1.74倍に達し、前シーズン同期間比でも二桁の伸びを示した。11月6日の解禁を前に、蟹の言及率は献立の厚みと単価設計を結びつける指標として、小宿にも大型宿にも使える物差しになるだろう。

※本稿の蟹の言及率は口コミに蟹が登場する頻度であり、評価点や満足度ではない。兵庫県は取得上限の100軒に達しているため、県別・市町村別の軒数は下限値として参照されたい。推定成約ADRはいずれも確定月の値で、将来月の掲載水準は用いていない。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

ホテルバンク編集部による宿泊者口コミのNLP解析(兵庫・京都・福井・鳥取・北海道・新潟・石川・島根の8道府県、直近24か月、361軒・口コミ164,943件)と、メトロエンジンリサーチの市町村別推定成約ADR(2024年9月〜2026年2月の確定月)・施設マスター(客室数・所在地)。漁期は福井県・鳥取県の公表資料と報道による。

■ 試算前提

蟹の言及率=夕食の蟹に肯定的に触れた口コミ件数÷口コミ総数。対象は口コミ20件以上かつ蟹への肯定的言及10件以上の宿で、1道府県あたり最大100軒。冬の推定成約ADRは2025年11月〜2026年2月の月次中央値の単純平均(兵庫3市町は12〜2月の3か月平均)、9月は2025年9月の確定値で、前シーズンも同じ月構成で比較した。

■ 限界・留意点

言及率は登場頻度であり評価点・満足度ではない。兵庫県は取得上限の100軒に達しており、県別・市町村別の軒数は下限値。口コミ母数20〜81件の小規模宿は1件の増減で率が数ポイント動く。推定成約ADRは最安プラン水準に業態別係数を適用した推定値で、個別施設の実際の成約価格とは異なる。言及率と単価の動きの並びは相関であり因果を示さない。

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