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札幌・中央区は7年で9,654室増|札幌東武ホテル→フェアフィールド転換のその後

投稿日 : 2026.09.09

北海道

新規開業・供給

札幌・中央区は7年で9,654室増|札幌東武ホテル→フェアフィールド転換のその後

「札幌東武ホテル」で検索してたどり着いた読者に、まず結論から答える。この施設は2020年4月26日に「フェアフィールド・バイ・マリオット札幌」へリブランドオープンし、札幌東武ホテルという名称は現存しない。建物は東武鉄道が保有したままで、運営も東武緑地が続けている。本稿は宿泊予約の案内ではなく、この転換が起きた2019年から現在までの7年間に、札幌市中央区の客室供給と単価がどう動いたのかを実測データで検証する、事業者・投資家向けの供給分析である。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格:OTA上に掲載されている全プランの平均額(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)。素泊まりから食事付きまでを含むため、推定成約ADRより高く出ます。
  • 新規開業の集計基準:OTA掲載が確認できた施設の設立日ベース。OTA掲載は開業の数ヶ月前から出るため、直近の年は今後の掲載反映で件数・客室数が増加します。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(価格・供給)
Key Takeaways
  • 2020年4月26日にフェアフィールド・バイ・マリオット札幌へリブランド。建物は東武鉄道が保有し続け、運営も東武緑地が継続 — 所有を手放さずブランドだけを載せ替えた転換である。
  • — 2019年5月時点の予告24施設・3,411室に対し、実績は91施設・9,654室(約2.8倍)。確認申請ベースの供給見通しは上限ではなく下限として読むべきことを、この商圏が自ら実証した。
  • — 供給が客室ベースで約28%積み増されたにもかかわらず、中央区の推定成約ADRは2019年7月 約11,600円 → 2026年7月 約18,100円へ+56.8%上昇。供給増と単価上昇は両立しうる。
  • — 新規供給の重心はすすきの・大通の南北軸に集中(100室以上46施設・8,641室)。外資系ブランドの本格流入は2024年以降で、2020年のフェアフィールド転換はその先頭にあたる。
  • — 今後の確定パイプラインは3件・542室(確認申請ベース)。2019年の答え合わせを踏まえれば、これも2028年までに積まれる客室の下限値である。

札幌東武ホテルの「その後」 — 名称は変わり、所有者は変わらなかった

札幌東武ホテルは1994年4月26日、札幌市中央区南4条東1丁目に開業した。すすきの交差点と二条市場に挟まれた立地で、約30平方メートルのゆとりある客室を特徴としてきた施設である。東武鉄道は2019年5月にマリオット・インターナショナルとの提携を発表し、当サイトも発表当日にその内容を報じている。同年10月から全館を休館して全面改修に入り、2020年4月26日、フェアフィールド・バイ・マリオットの日本第一号店として営業を再開した。旧称での開業日と同じ日付にあたる。

ここで押さえるべきは、この転換が所有権の移転を伴っていない点である。建物は東武鉄道が保有し続け、運営は同社グループの東武緑地が担う。マリオット側が提供したのはブランドと予約・会員基盤であり、資産を手放さずに国際ブランドの需要チャネルを取り込む枠組みだった。国内の外資系ブランド転換では、所有・運営・ブランドの三者をどう分けるかが論点になるが、この案件は所有と運営を握ったままブランドだけを載せ替えた構図である。

札幌東武ホテル→フェアフィールド・バイ・マリオット札幌 転換前後の比較(所有・運営・開業日)
項目リブランド前現在
名称札幌東武ホテルフェアフィールド・バイ・マリオット札幌
開業1994年4月26日2020年4月26日(リブランドオープン)
客室数254室
所有東武鉄道東武鉄道(継続保有)
運営東武緑地東武緑地
休館期間2019年10月〜2020年4月(全面改修)
所在地札幌市中央区南4条東1丁目(すすきの・二条市場至近)

出典:東武鉄道・東武緑地・マリオット・インターナショナル発表、東武ホテルマネジメント公表資料よりホテルバンク編集部作成

この施設が現在すすきの市場でどの価格帯に立ち、宿泊者からどう評価されているかは、施設単位で掘り下げたリブランド6年の実績で詳述している。本稿はそこから視点を変え、同じ7年間に中央区という商圏そのものがどれだけ厚くなったのかを扱う。

東武グループのマリオット提携は今も4軒 — 拡大ではなく質の入れ替え

2019年の発表時点で、東武グループとマリオット・インターナショナルの提携ホテルは「札幌を含めて4軒になる」と説明されていた。7年後の現在、東武ホテルマネジメントが公表するホテル一覧を確認すると、マリオット系ブランドを冠する施設は依然として4軒である。ブランドの内訳は下表のとおりで、ミッドスケールからラグジュアリーまでを1グループで縦に押さえる構成になっている。

東武グループのマリオット・インターナショナル提携ホテル4軒(2026年9月時点)
施設所在位置づけ
コートヤード・マリオット銀座東武ホテル東京都中央区銀座6-14-10提携の起点となった都心アップスケール
ACホテル・バイ・マリオット東京銀座東京都中央区銀座6-14-7ACブランドの日本第一号
フェアフィールド・バイ・マリオット札幌札幌市中央区南4条東1丁目既存ホテル転換による日本第一号
ザ・リッツ・カールトン日光栃木県日光市中宮祠2020年7月開業のラグジュアリー

出典:東武ホテルマネジメント「ホテル・レストラン一覧」よりホテルバンク編集部作成(2026年9月時点)

軒数が7年間横ばいだという事実は、提携が停滞したことを意味しない。同グループは日光金谷ホテル・中禅寺金谷ホテルといった歴史的資産をグループ内に抱えており、外資ブランドを増やすよりも、既存資産の位置づけを整理する方向に力点を置いてきたと読める。ブランド提携を「軒数の拡大」ではなく「1軒あたりの単価レンジの引き上げ」に使う設計は、保有型の鉄道系事業者にとって現実的な選択肢である。

2019年の「24施設・3,411室」予告はどうなったか — 実績は91施設・9,654室

ここからが本稿の主題である。2019年5月の当サイト記事は、札幌市中央区に177施設・24,034室が存在し、新規開業予定は24施設・3,411室と伝えていた。7年後、この予告に対する実績を答え合わせする。

メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、札幌市中央区では2019年6月以降に91施設・9,654室が新たに開業した。うち100室以上の中大型が46施設・8,641室、200室以上に限っても19施設・4,825室である。予告されていた3,411室に対し、実際に積み上がった客室は約2.8倍にあたる。当時「見えていたパイプライン」は、その後7年で立ち上がる供給の3分の1程度でしかなかったという結果になる。

2019年5月時点の新規開業予告と2019年6月以降の実績供給の対比(札幌市中央区)
項目2019年5月時点の予告2019年6月以降の実績
施設数24施設91施設
客室数3,411室9,654室
うち100室以上46施設・8,641室
うち200室以上19施設・4,825室
1施設あたり平均142室106室

出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、N=91施設)、2019年5月時点の予告は当サイト過去記事より/ホテルバンク編集部作成

ひとつ注意が必要なのは、施設数の解釈である。実績側の1施設あたり平均は106室で、予告時の142室を下回る。これは中大型が減ったからではなく、予告段階では捕捉されにくい小規模施設が実際には多数立ち上がったためだ。客室数ベースで見れば200室以上の大型が全体の半分を占めており、供給の重心はむしろ大型に寄っている。

出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、N=91施設)、ホテルバンク編集部より作成 ※2019年は6月以降。2026年はOTA掲載が開業の数ヶ月前から出る性質上、今後の掲載反映で増加します

年別に見ると、供給の山は2020年(28施設・1,965室)にある。コロナ禍で需要が消えた年に最も多くの客室が開いたことになるが、これは開発の意思決定が2017〜2018年に行われていたためで、着工済み案件は需要環境が変わっても止まらないという構造をそのまま示している。その後2023年に893室まで落ち込み、2024年以降は年1,000室前後で再び安定した。2019年6月以降に開いた9,654室は、現在中央区で追跡している298施設・33,894室の客室ベースで約28%にあたる。この商圏の客室の4室に1室強は、この7年で新しく生まれた在庫である。

供給3割増でも単価は7年で+57% — 中央区の推定成約ADR

供給がこれだけ増えれば単価は下がるのか。答えは逆である。札幌市中央区の推定成約ADRは、2019年7月の約11,600円から2026年7月の約18,100円へと、+56.8%上昇した。同月の掲載価格(全プラン平均・税込)は約27,900円である。直近の前年同月比でも2026年7月は+3.9%と、供給が積み上がった後の年でも上向きを保っている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(対象施設数は各月127〜137施設)

年別に重ねると、季節の形はどの年もほぼ同じである。2月にさっぽろ雪まつりの山、7〜8月に夏需要の山が立ち、4月と11月が谷になる。変わったのは形ではなく水準で、線が年を追うごとに上に平行移動している。2023年7月の約13,400円に対し2026年7月は約18,100円で、3年で+35%である。2月の山も2023年の約10,300円から2026年は約20,600円へと倍増した。需要の増加が供給の増加を上回った局面だったと整理できる。

この上昇局面のなかで、フェアフィールド・バイ・マリオット札幌の直近12ヶ月(2025年8月〜2026年7月)の推定成約ADR平均は約22,900円だった。同期間の中央区エリア中央値(約14,600円)を大きく上回る水準で、254室という規模を持ちながら上位の価格帯を確保できていることになる。国際ブランドの会員基盤を載せた転換が、単価面で機能していることを示す数字である。

なお、業態別に見ると北海道全体では2026年上半期にシティとビジネスで値決めの方向が分かれている。エリア平均の裏側にある業態差は確定月データによる分岐の検証で整理している。

新規供給はどこに落ちたか — すすきの・大通に集中する46施設

7年間の新規供給を地図に落とすと、分布は明確に偏っている。100室以上の46施設は、すすきの交差点から大通、そして札幌駅南口にかけての南北軸に集中しており、円山や中島公園以南への広がりは限定的である。既存の繁華街動線から外れた立地での大型開発は、この期間ほとんど起きていない。

出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、N=46施設・100室以上)

2019年6月以降に札幌市中央区で開業した200室以上の19施設(開業月順)
開業施設客室数
2019年6月ベッセルホテルカンパーナすすきの296室
2019年9月レッドプラネット札幌すすきのセントラル212室
2019年9月ホテルJALシティ札幌 中島公園211室
2020年8月ホテルフォルツァ札幌駅前304室
2020年10月KOKO HOTEL 札幌駅前224室
2020年10月JRイン札幌北2条205室
2021年2月ソラリア西鉄ホテル札幌318室
2021年4月札幌グランベルホテル狸小路218室
2021年9月すすきのグランベルホテル300室
2022年1月OMO3札幌すすきの226室
2022年4月2ND by hotel androoms札幌212室
2022年6月ダイワロイネットホテル札幌中島公園210室
2022年9月相鉄フレッサイン 札幌すすきの200室
2023年2月トラベロッジ札幌すすきの211室
2023年9月ヴィアインプライム札幌大通255室
2024年1月SAPPORO STREAM HOTEL436室
2024年4月ザ・センチュリオンサウナ札幌254室
2024年7月コートヤード・バイ・マリオット札幌321室
2026年7月KOKO HOTEL 札幌すすきの 2nd212室

出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、200室以上・N=19施設)、ホテルバンク編集部より作成

ブランドの顔ぶれを見ると、2019〜2022年は国内チェーンの宿泊特化型が中心で、外資系ブランドが本格的に入ってきたのは2024年以降である。2024年にはSAPPORO STREAM HOTEL(436室)とコートヤード・バイ・マリオット札幌(321室)が同年に立ち上がり、2025年10月にはインターコンチネンタル札幌(149室)が加わった。2020年のフェアフィールド転換は、この外資系ブランド流入の先頭にあたる。既存ホテルのコンバージョンという最も早く実行できる手法で、新築を待たずにブランドを市場に置いた案件だったと位置づけられる。

これから中央区に積まれる客室 — 確認申請ベースで542室

供給の先行きも同じ枠組みで確認しておく。国土交通省の建築物動態統計調査に基づく確認申請ベースでは、札幌市中央区で現時点までに申請が出ている宿泊施設の計画は3件・542室である。

札幌市中央区の宿泊施設 建築確認申請ベース計画一覧(3件・542室)
所在地客室数完成予定着工
中央区北一条西5丁目216室2026年12月2021年10月
中央区南7条西5丁目200室2028年5月2026年5月
中央区南7条西4丁目126室2027年2月2025年6月

出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成 ※調査時点での確認申請ベース。今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照ください

ここで2019年の答え合わせが効いてくる。当時「24施設・3,411室」と見えていたパイプラインが、実際には9,654室にまで膨らんだ。確認申請ベースの数字は常に下限値であるという経験則を、この商圏は自ら実証したことになる。したがって現在の542室も、2028年までに中央区へ積まれる客室の下限と読むべきで、上限ではない。2026年秋以降のパイプラインは札幌の客室供給2026-2029で個別案件まで追っている。

まとめ — 7年間の中央区が示した3つの読み筋

第一に、ブランド転換は所有を手放さずに実行できる。札幌東武ホテルからフェアフィールド・バイ・マリオット札幌への転換は、東武鉄道が資産を保有したまま、運営もグループ内に残したままで完了した。新築を伴わないため実行までの時間も短く、外資系ブランドが市場に入る最初の入口として機能した。

第二に、供給予測は下限値としてしか使えない。2019年時点で見えていた3,411室に対し、実績は9,654室だった。開発は需要が見えてから決まるのではなく、決まった開発は需要環境が変わっても完成する。2020年に最大の供給が落ちた事実が、その非対称性を端的に示している。

第三に、供給増と単価上昇は両立しうる。中央区は客室ベースで約28%の在庫を7年で新たに積みながら、推定成約ADRを+56.8%押し上げた。ただし上昇の中身は季節の山がより高くなったことによる部分が大きく、4月・11月の谷は相対的に伸びが鈍い。ピークをどこまで取り切れるかが、この商圏で単価を伸ばす余地の所在を決めている。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

札幌市中央区の推定成約ADR・掲載価格は、OTA掲載価格を業態別係数で補正した推計値のエリア中央値を月次で集計したもの(2019年7月〜2026年7月・確定月基準)。集計対象施設数はグラフ表示区間(2023年1月〜2026年7月)で各月127〜137施設、遡及区間の最小は2019年7月の110施設。新規開業の施設数・客室数はOTA掲載が確認できた施設の設立日ベース(2019年6月以降・N=91施設)、既存ストックは中央区で追跡中の298施設・33,894室。将来計画は国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請ベース。

■ 試算前提

推定成約ADRは2名1室利用時・1室あたり・税抜相当。前年同月比・増減率は同一基準(確定月基準)の月同士のみで算出し、掲載スナップショット基準の月とは混在させていない。「約2.8倍」は2019年5月時点の予告3,411室に対する実績9,654室の比、「客室ベースで約28%」は9,654室÷33,894室。1施設あたり平均は客室数÷施設数の単純平均。

■ 限界・留意点

(1) ADRは推計値であり各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる(上場ホテルREITの物件別開示との照合で誤差中央値は約7%)。(2) コロナ禍期間(2020年3月〜2022年4月)の推定成約ADRは実勢を過大に見積もる傾向が確認されているため、本稿は同期間の水準を数値として引用せず、単価の比較は2023年以降と2019年の確定値に限定している。(3) 新規開業の集計はOTA掲載の確認を起点とするため、掲載前の施設および掲載のない施設は含まれない。直近年ほど今後の掲載反映で件数・客室数が増加する。(4) 確認申請ベースの計画は調査時点のものであり、以後の申請追加により増加する下限値である。(5) 施設総数と、ADR算出の対象施設数は母数が異なるため直接比較できない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 札幌市中央区の推定成約ADR・掲載価格(2019年7月〜2026年7月)、新規開業(OTA掲載確認ベース、N=91施設)

■ 政府統計・公的データ

  • 国土交通省「建築物動態統計調査」(宿泊施設の建築計画・確認申請ベース)

■ 企業公表資料・報道

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