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札幌パークホテル2027年2月閉館、中島公園1km圏1.35万室の供給と建替え後ヒルトン約350室の投資視点

投稿日 : 2026.10.03

北海道

投資・開発

札幌パークホテル2027年2月閉館、中島公園1km圏1.35万室の供給と建替え後ヒルトン約350室の投資視点

札幌市中央区・中島公園の北側で1964年から営業してきた札幌パークホテル(216室)が、建て替え計画の推進のため2027年2月28日で営業を終える。跡地はヒルトンのブランドで約350室規模のホテルに建て替えられる計画で、隣接して札幌市の新MICE施設の整備も進む。本稿では、同ホテルを中心とする半径1km圏の客室供給、2027〜2028年の供給パイプライン、推定成約ADRとOTA掲載在庫ベースの稼働率、地価の推移を重ね合わせ、閉館から新ホテル開業までの期間にエリアの需給がどう動くかを定量化する。

Key Takeaways

  • 札幌パークホテルを中心とする半径1km圏では、2026年8月にOTA販売を確認できた施設が100施設・13,523室。このうち45施設・5,138室(客室ベースで約38%)が2019年以降の開業で、供給の新陳代謝が急速に進んだ。
  • 2027年2月の閉館で216室が抜ける一方、同圏内では建築物動態統計ベースで126室(2027年2月竣工予定)と200室(2028年5月竣工予定)の計画がある。ヒルトン札幌パークホテル(約350室)はヒルトン資料上「開業時期未定」。
  • 中央区の推定成約ADRは2026年1〜8月平均で¥14,800と前年同期比+5.6%。ただし8月は¥16,400と前年同月比-10.5%で、夏場は新規供給の吸収局面に入っている。
  • OTA掲載在庫ベースの稼働率(推定)は2026年7月94.0%・8月92.9%(中央区・約100施設)と高水準。シティホテルはLT45時点で79.9%と、ビジネスホテル(68.0%)より早い段階から在庫が埋まる。
  • 中島公園駅から100mの基準地価は2021年の1㎡あたり61万円から2026年は122万円へ倍増した。再調達コストの上昇は、既存のフルサービス型ホテルと宴会・会議機能の希少性を高める方向に働く。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本記事では「稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)」と表記。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります(掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出ます)。
  • ブッキングカーブ・LT:ブッキングカーブ=チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数(LT0=当日)。本記事ではLT45〜LT1のみを使用。
  • 対象圏域:札幌パークホテル(中央区南10条西3丁目)を中心とする半径1km。2026年8月に15日以上OTA上で販売が確認できた施設(レジャーホテル区分を除く)を集計。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金・税込)。

エグゼクティブサマリー — 216室の閉館と約350室の建替え計画、その間をどう読むか

半径1km圏の供給
13,523室
100施設・2026年8月販売確認
2019年以降開業の比率
約38%
5,138室/45施設
中央区 推定成約ADR
¥14,800
2026年1〜8月平均・前年同期比+5.6%
稼働率(OTA掲載在庫ベース)
94.0%
中央区・2026年7月・102施設
中島公園駅100m 基準地価
122万円
1㎡あたり・2021年比2.0倍

結論から述べると、中島公園周辺は「量の供給は十分に積み上がった一方で、宴会・会議機能を備えたフルサービス型の受け皿は限られる」市場である。半径1km圏の13,523室のうちシティホテル・デラックス区分は15施設・3,524室で、札幌パークホテルの216室はその約6%にあたる。2027年2月の閉館後、同圏内では宿泊特化型を中心に2件・計326室の計画が控えるため、客室数だけを見れば閉館分は2028年までに吸収される計算になる。

しかしながら、札幌市自身が新MICE施設の基本方針で「コンベンション機能を有するホテルが相次いで閉鎖し、宿泊特化型のホテルが増加したことにより、市内のバンケット機能が低下している」と整理しているように、失われるのは客室よりもむしろ宴会・会議の機能である。ヒルトン札幌パークホテルの開業時期はヒルトン資料上「未定」であり、新MICE施設の新築工事は2031年度からの工程が示されている。つまり、2027年3月から新ホテル開業までの数年間は、中島公園エリアのフルサービス需要を既存の周辺ホテルが引き受ける期間になると考えられる。

札幌パークホテル建替えの事実関係 — 1964年開業、2027年2月28日閉館

現ホテルの概要
現ホテル(札幌パークホテル)の概要
名称札幌パークホテル
所在地札幌市中央区南10条西3丁目(中島公園北側)
規模地下3階・地上11階/客室216室
開業1964年7月10日(「札幌ホテル三愛」として開業、1966年5月に現名称)
所有・運営所有:サンケイビル/運営:グランビスタ ホテル&リゾート
営業最終日2027年2月28日(日)
出典:グランビスタ ホテル&リゾート ニュースリリース、リアルエコノミー(2025年6月12日)
建替え後の計画(ヒルトン資料の記載)
建替え後の計画(ヒルトン資料の記載)
名称ヒルトン札幌パークホテル
規模約350室
開業時期未定
位置づけ国内の開業予定ホテル13軒の1つ
道内の運営ホテルニセコビレッジの3軒(計793室)
出典:ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

札幌パークホテルは1972年の札幌冬季オリンピックでIOC本部ホテルを務めた歴史を持ち、中島公園と一体となった景観で長く市民に親しまれてきた。グランビスタ ホテル&リゾートは2025年6月、「建て替え計画の推進のため」2027年2月28日で営業を終了すると発表している。

建替え後のホテルについて、ヒルトンの「会社概要」(2026年8月25日更新)は国内の開業予定13軒の12番目に「ヒルトン札幌パークホテル 約350室」を掲げ、開業時期は「未定」と記載している。同資料の国内運営37軒のうち北海道はニセコビレッジの3軒で、札幌市内の運営ホテルは含まれていない。したがって実現すれば、札幌の都心部に同社のフルサービス型ブランドが入る最初の事例になる。なお、地元報道では隣接する新MICE施設の開業を2030年度以降とする見方が伝えられているが(北海道新聞)、新ホテルについて事業者の公表資料上の開業時期は「未定」であり、本稿の試算では確定した時期を置かない。国内の外資系ブランドの開業計画全体の中での位置づけは、外資15軒2,709室の2026〜2031年開業パイプラインも参考になる。

新MICE施設との関係 — 市と事業者が「それぞれ建設」する枠組みへ

札幌市は2025年9月8日の経済観光委員会で「新MICE施設整備基本方針」を示した。当初は再開発事業の手法で新MICE施設と新ホテルを一体整備する計画だったが、コロナ禍による延期を経て、「一体的な利用に向けた連携を前提に、市と事業者がそれぞれ建設を目指す」形に改めている。整備場所は中島公園駅周辺で、地下鉄駅との地下接続により新千歳空港から屋外を移動せずに到達できる点、すすきのに近接する点が立地の優位性として挙げられた。

新MICE施設整備基本方針の主な記載
項目基本方針の記載
施設総面積約38,400㎡
メインホール/多目的ホール約2,000㎡/約3,200㎡
会議室15室・約3,400㎡
想定規模単館3,000〜5,000人、周辺ホテル連携で5,000人超
事業費(試算)約592億円(建物約487億円・土地約105億円)
年間開催件数/経済波及効果1,220件/約492億円(年)
工程(予定)2029年度 基本設計、2030年度 実施設計、2031年度〜 新築工事
出典:札幌市「新MICE施設整備基本方針」(2025年9月8日 経済観光委員会資料)

ホテル投資の観点で重要なのは、同方針が「パークホテル建替え後の新ホテルとは、新MICE施設と一体的に利用できる施設面の連携や飲食やコンシェルジュなどホテル品質のサービス提供の連携などを予定」と明記している点である。加えて「周辺には大きな会議室を有するホテルが複数存在し、これらと連携することでより大規模な会議が開催可能」とも記しており、MICE需要の波及先は新ホテル1軒に限られない。学会・インセンティブ需要は平日の団体宿泊と宴会を伴うため、中島公園周辺のフルサービス型ホテルにとっては、中長期のアップサイド要因と位置づけられる。

半径1km圏の供給構造 — 100施設・13,523室、2019年以降の開業が約38%

メトロエンジンリサーチが追跡するうち、札幌パークホテルから半径1km以内で2026年8月に15日以上OTA上の販売が確認できた施設は100施設・13,523室である。北側はすすきの・狸小路の宿泊特化型集積、南側は中島公園を囲むシティホテル群という二層構造で、札幌パークホテルから半径500m以内に絞ると、34施設・4,620室のうちシティホテル・デラックス区分が55.5%を占め、1km圏全体(26.1%)の2倍以上に高まる。

半径1km圏の宿泊施設分布(円:客室数規模/濃い青:2019年以降開業)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=100施設)。計画地の位置は街区の概略
圏域の概要
中心:札幌パークホテル(南10条西3丁目)
最寄駅:地下鉄南北線 中島公園駅
供給:100施設・13,523室
シティ・デラックス区分:15施設・3,524室
2019年以降開業:45施設・5,138室
用途地域・地価(中島公園駅前)
中島公園駅前の用途地域・地価
用途地域商業地域
指定容積率600%
基準地価(2026年)122万円/㎡
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(南9条西3丁目の基準地点)
開業時期別の客室数(半径1km圏・現存施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=100施設・13,523室。開業年は当社調べ、2026年8月の販売確認施設)

開業時期別に見ると、1999年以前開業の施設が25施設・4,454室と最大の塊を占める一方、2019〜2022年に2,448室、2023〜2026年に2,690室が加わった。2019年以降の新設は合計5,138室で、現存客室の約38%に達する。コロナ禍を挟みながらも供給の入れ替わりは速く、中島公園周辺では2019年のホテルJALシティ札幌 中島公園(211室)、2022年のダイワロイネットホテル札幌中島公園(210室)、2024年のコートヤード・バイ・マリオット札幌(321室)、2025年のインターコンチネンタル札幌(149室)と、公園に面した立地にブランドホテルの開業が続いた。中央区全体で2019年以降にどれだけ客室が積み上がったかは、札幌・中央区は7年で9,654室増で詳しく分析している。

なお、この集計は2026年8月時点で営業・販売が確認できる施設が対象であり、期間中に閉館した施設は含まれない。したがって「開業時期別の構成」は、現在の供給ストックがいつ積み上がったかを示すものとして読む必要がある。

供給パイプライン — 2027〜2028年に326室、閉館216室を差し引くと+110室

国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請ベースで、札幌市中央区には調査時点で4件のホテル計画が登録されている。このうち半径1km圏に入るのは南7条の2件で、閉館する札幌パークホテルの北約600m、すすきの南側の街区に位置する。

札幌市中央区のホテル計画(確認申請ベース)
所在地(中央区)客室数竣工予定主な事業者半径1km圏
南7条西4丁目126室2027年2月東急不動産圏内
南7条西5丁目200室2028年5月丸紅都市開発ほか圏内
北1条西5丁目216室2026年10月NTT都市開発圏外(大通北側)
北3条西3丁目172室2025年12月ヒューリック圏外(札幌駅南側)
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。※調査時点での確認申請ベース。今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照
半径1km圏の客室供給:開業実績(2016〜2026年)と今後の計画・閉館
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース)/国土交通省「建築物動態統計調査」/ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)。「未定」はヒルトン札幌パークホテル約350室

2027年は札幌パークホテルの閉館(-216室)と南7条西4丁目の計画(126室、2027年2月竣工予定)がほぼ同時期に重なり、2028年には南7条西5丁目の200室が加わる。確認申請ベースの計画だけを積むと、2028年時点の圏内客室は現在比で+110室(+0.8%)の小幅な増加にとどまる。2016〜2026年の11年間で年平均約560室が開業してきたペースと比べると、今後2年間の純増は明確に緩やかである。

ただし、この数字は二つの点で幅を持って読むべきだろう。第一に、確認申請は通常開業の1〜2年前に行われるため、2028年以降の計画は今後追加される可能性が高い。第二に、ヒルトン札幌パークホテル(約350室)が開業すれば圏内の純増は+460室(+3.4%)となるが、その時期は「未定」である。いずれにせよ、閉館から新ホテル開業までの期間は、圏内の供給増加率が過去10年で最も低い水準にとどまる公算が大きい。

段階別シナリオ:半径1km圏の客室純増(計画ベース・現在13,523室)
段階前提純増現在比
2027年3月(閉館直後)閉館-216室、南7条西4丁目126室が予定どおり竣工-90室-0.7%
2028年6月以降上記+南7条西5丁目200室(2028年5月竣工予定)+110室+0.8%
ヒルトン開業後(時期未定)上記+ヒルトン札幌パークホテル約350室+460室+3.4%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/国土交通省「建築物動態統計調査」/ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)。竣工予定は確認申請ベースで、実際の開業時期は前後し得る。今後の申請追加は含まない

段階別に並べると、閉館直後の2027年3月時点では、南7条西4丁目の126室が予定どおり竣工しても圏内の客室は差し引き90室減る。純増に転じるのは南7条西5丁目の200室が加わる2028年半ば以降で、ヒルトン札幌パークホテルが開業して初めて現在比+3%台の増加となる。移行期の前半ほど需給が締まりやすい構図である。

ADR動向 — 2026年1〜8月は前年同期比+5.6%、夏場は供給吸収の局面

札幌市中央区の推定成約ADR(月次・年別重ね合わせ)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(中央区 N=139施設・2026年8月。2026年9月以降の破線は調査時点の掲載水準に基づく推定)

メトロエンジンリサーチのデータによると、札幌市中央区の推定成約ADRは2026年1〜8月の平均で¥14,800となり、前年同期(¥14,000)を5.6%上回った。月別では、さっぽろ雪まつりを含む2月が¥20,600と年間の山を形成し、1月(+30.2%)・3月(+19.2%)の伸びが目立つ。冬季のインバウンド需要が単価を押し上げた構図である。

一方で、夏場の動きは異なる。7月は¥18,100と前年同月比+3.9%を確保したが、8月は¥16,400と前年同月比-10.5%となった。圏内では2026年だけで726室が開業しており、新規供給が夏の需要を分け合う吸収局面に入ったとみられる。調査時点の掲載水準では、2026年10月(前年同月比+10.8%)や2027年2月(同+13.2%)は前年を上回っており、季節の山では単価の上積み余地が引き続き確認できる。

業態別の推定成約ADR 前年同月比(札幌市中央区・2026年1〜8月)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ビジネスホテル N=105施設、シティホテル N=26施設・2026年8月)

業態別では、ビジネスホテル(N=105施設)が1〜8月平均で前年同期比+4.5%、シティホテル(N=26施設)が同+2.5%だった。シティホテルは1〜3月に+16〜29%と大きく伸びたのち、4月以降は前年を下回る月が続いている。2024年のコートヤード・バイ・マリオット札幌、2025年のインターコンチネンタル札幌と、上位価格帯の新規参入が続いたことで、既存のシティホテル群にとっては価格帯の再配置が進んでいる局面と読める。札幌パークホテルの閉館は、この上位価格帯の供給を一時的に減らす方向に働く。

需要の厚み — 稼働率(OTA掲載在庫ベース)は夏季93〜94%、シティホテルは早期に在庫が埋まる

札幌市中央区の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、2026年7〜8月)
札幌市中央区対象施設数対象客室数2026年7月2026年8月
全施設102〜103約14,900室94.0%92.9%
ビジネスホテル62〜63約9,600室94.1%92.8%
シティホテル144,118室94.4%93.4%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)。総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホート(主要予約サイト掲載ベース)

単価の伸びが鈍化した8月も、在庫の消化は高い水準にある。中央区の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年7月が94.0%(対象102施設/客室14,904室)、8月が92.9%(対象103施設/客室14,899室)だった。この指標はOTA上の在庫消化に基づくもので実稼働率より高めに出るが、夏季の中央区で需要そのものが細っている兆候は見られない。8月の単価調整は、需要の減退ではなく新規供給との価格競争の中で稼働を優先した結果と解釈するのが自然である。

ブッキングカーブ:稼働率(OTA掲載在庫ベース)の推移 — 2026年8月宿泊・月間平均(LT45→LT1)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(シティホテル:対象14施設/客室4,118室、ビジネスホテル:対象63施設/客室9,628室。主要予約サイト掲載ベース)

ブッキングカーブで見ると業態差がはっきり表れる。2026年8月宿泊のシティホテル(対象14施設/客室4,118室)はLT45時点で既に79.9%に達し、LT1で93.4%となった。ビジネスホテル(対象63施設/客室9,628室)はLT45時点で68.0%、LT1で92.8%で、直前の積み上がりが大きい。シティホテルの在庫が早い段階で埋まるのは、団体・宴会・会議といった先行予約型の需要を抱えるためと考えられる。札幌パークホテルが担ってきた需要のうち、この先行予約型の部分が閉館後にどの施設へ移るかが、周辺のフルサービス型ホテルにとっての収益機会になる。

REIT開示実績 — 中島公園周辺の保有物件はOCC90%超(2026年7月)

上場ホテルREIT7法人(いちごホテルリート投資法人(3463)、インヴィンシブル投資法人(8963)、日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、森トラストリート投資法人(8961)、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A))のうち、半径1km圏に保有物件があるのはインヴィンシブルの4物件とジャパン・ホテル・リートの2物件(イビススタイルズ札幌・278室、メルキュールホテル札幌・285室)である(当社集計のJ-REIT保有物件一覧・2026年9月21日時点)。月次の物件別実績を開示しているインヴィンシブルの4物件は、いずれもOCC90%(2026年7月実績)を超えた。

インヴィンシブル投資法人 中島公園周辺4物件の実績(2026年7月)
物件(インヴィンシブル投資法人)客室数取得OCCADRRevPAR本記事の推定ADR
ホテルマイステイズプレミア札幌パーク419室2018年8月/¥16,731百万円91.8%¥19,852¥18,230¥19,110
ホテルマイステイズ札幌中島公園86室2019年7月/¥2,118百万円90.9%¥16,469¥14,974¥16,539
ホテルマイステイズ札幌中島公園別館80室2019年7月/¥1,584百万円91.8%¥13,654¥12,536¥13,800
ホテルマイステイズ札幌すすきの104室2019年7月/¥3,059百万円93.9%¥16,495¥15,482¥15,155
出典:インヴィンシブル投資法人 月次運用状況(2026年7月)、当社集計のJ-REIT保有物件一覧(2026年9月21日時点)、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。REIT開示のADRは消費税抜き表示。本記事の推定成約ADRも税抜相当の水準(REIT開示実績との照合で誤差中央値約7%)

同法人の国内ホテル101物件の実績はOCC86.3%(2026年7月)・ADR¥15,100・RevPAR¥13,000(前年同月比でOCC+1.9pt、ADR-1.0%、RevPAR+1.2%)であり、中島公園周辺の4物件はOCCでポートフォリオ平均を上回った。取得価格ベースでは、ホテルマイステイズプレミア札幌パークが1室あたり約4,000万円、2019年取得の3物件が同約2,000〜2,900万円である。後述する地価の上昇を踏まえると、現在の再調達コストはこの水準を大きく上回る可能性が高い。

ポジショニング分析 — 300室超×¥25,000超の上位フルサービス帯は2施設のみ

客室規模 × 推定成約ADR(半径1km圏・2025年9月〜2026年8月平均)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=63施設。客室40室以上で推定成約ADRを6ヶ月以上算出できた施設。青枠=上位フルサービス帯)

半径1km圏で推定成約ADRを算出できた63施設を客室規模と単価で並べると、市場の大部分は「100〜300室×¥10,000〜¥20,000」の宿泊特化型ゾーンに集中している。12ヶ月平均の中央値はビジネスホテル(N=49)が¥12,600、シティホテル(N=13)が¥17,400である。これに対し、300室超かつ¥25,000超の上位フルサービス帯に位置するのは、2024年開業の2施設にとどまる。

密集宿泊特化型ゾーン

100〜300室 × ¥10,000〜¥20,000
ビジネスホテル中心に最も厚い層。2019年以降の新設もこの帯が多い。

WS①上位フルサービス帯

300〜450室 × ¥25,000超
該当は2施設。約350室で計画されるヒルトン札幌パークホテルが入る余地がある帯。

WS②宴会・会議併設型

MICE連携の受け皿
新MICE施設と一体利用を想定したホテルは計画段階。閉館期間中は既存シティホテルが需要の受け皿になる。

ヒルトン札幌パークホテルが約350室で開業すれば、この上位フルサービス帯は3施設に広がる。単価水準の目安としては、同じ帯の2施設の推定成約ADRが12ヶ月平均で¥30,000台であることが参考になるだろう。新MICE施設との連携により平日の団体・宴会需要を取り込めれば、週末と観光シーズンに偏りやすい上位帯の需要構成を平準化できる点も、この帯の成長性として挙げられる。

地価と再調達コスト — 中島公園駅前の基準地価は5年で2.0倍

中島公園・すすきの周辺の地価推移(円/㎡)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・都道府県地価調査)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
中島公園・すすきの周辺の地価(2021年→2026年)
地点(中央区)種別2021年2026年5年間直近前年比
南9条西3丁目(中島公園駅100m・容積率600%)基準地価61.0万円122.0万円2.00倍+17.3%
南12条西1丁目(中島公園駅420m・容積率400%)公示地価37.0万円60.5万円1.64倍+14.2%
南6条西4丁目(すすきの駅200m・容積率800%)公示地価125.0万円216.0万円1.73倍+20.0%
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ。公示地価は各年1月1日、基準地価は各年7月1日時点

中島公園駅から100mの基準地点(南9条西3丁目、商業地域・容積率600%)は、2021年の1㎡あたり61万円から2026年は122万円へと5年で2.0倍になった。直近1年でも+17.3%と上昇が続き、すすきの中心部(南6条西4丁目)の+20.0%に迫る。新MICE施設の整備方針や公園沿いのブランドホテル開業が、エリアの評価を押し上げてきたと考えられる。

地価と建設費がともに上昇する局面では、新規開発のハードルが上がるため、既存ストックの相対的な価値が高まる。札幌市の基本方針でも新MICE施設の事業費は従前計画の設計工事費をもとに約487億円(建物)と試算され、「今後の計画の見直しや物価高騰等の影響により変動する可能性がある」と注記されている。建設コストの上昇は新規供給を抑える方向に働くため、宴会・会議機能を持つ既存のフルサービス型ホテルにとっては、競争環境が緩やかになるアップサイド要因でもある。札幌で既存ホテルを外資ブランドへ転換する場合と新築する場合の1室あたり原価の差は、既存ホテルの外資ブランド転換、1室原価は新築の7分の1が札幌15施設の実測で掘り下げている。

投資判断への示唆 — 閉館期間のフルサービス需要と2030年代のMICE集積

投資判断への示唆(論点別)
論点データが示すこと投資・運営上の示唆
客室供給圏内の計画は2027〜2028年に計326室、閉館216室と相殺して純増+110室過去11年(年平均約560室)より緩やかな供給増で、既存施設の稼働は維持しやすい
宴会・会議機能市の方針が「バンケット機能が低下」と整理、新MICEは2031年度〜新築工事宴会場・会議室を持つ周辺シティホテルに、閉館期間中の団体・宴会需要が集まる可能性
単価中央区ADRは1〜8月+5.6%、8月は-10.5%冬季・イベント期の単価上積みと、夏季の供給吸収局面での稼働確保を組み合わせる運用が有効
上位価格帯300室超×¥25,000超は2施設ヒルトン札幌パークホテル(約350室・開業時期未定)が入れば3施設に。ブランド集積がエリアの価格帯を引き上げる余地
土地・再調達コスト中島公園駅前の基準地価は5年で2.0倍既存ストックの相対価値が上昇。取得・リポジショニング型の投資機会
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/札幌市/国土交通省/ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

以上を整理すると、中島公園周辺の投資ストーリーは二段階で描ける。第一段階は2027年3月から新ホテル開業までの「移行期」で、圏内の客室純増が小さく、フルサービス型の受け皿が一時的に減る。この期間は、宴会・会議機能を持つ既存のシティホテルや、団体を受けられる中規模以上の施設にとって需要の取り込み機会となる。第二段階は新ホテルと新MICE施設が揃う2030年代で、国際会議や学会の誘致によって平日の団体需要が厚みを増す局面である。

もっとも、これらは公表資料と現時点の観測値に基づく見立てであり、新ホテル・新MICE施設の時期と規模は今後の計画次第で変わり得る。確認申請ベースの供給計画も追加される見込みが高いため、移行期の供給見通しは定期的に更新して読むことが望ましい。

よくある質問

Q. 札幌パークホテルはいつ閉館しますか。

A. 運営するグランビスタ ホテル&リゾートの発表によると、営業最終日は2027年2月28日(日)です。建て替え計画の推進が理由とされています。

Q. 建替え後のホテルの規模と開業時期は。

A. ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)では「ヒルトン札幌パークホテル 約350室」、開業時期は「未定」と記載されています。開業時期は確定していません。

Q. 中島公園周辺のホテル客室はどれくらいありますか。

A. 札幌パークホテルを中心とする半径1km圏で、2026年8月にOTA上の販売が確認できたのは100施設・13,523室です(メトロエンジンリサーチ集計)。このうち約38%は2019年以降に開業した施設の客室です。

Q. 新MICE施設はいつ完成しますか。

A. 札幌市の「新MICE施設整備基本方針」(2025年9月)では、2029年度に基本設計、2030年度に実施設計、2031年度から新築工事という工程が示されています。開業時期は今後の事業者選定や設計の進捗によって決まります。

まとめ

札幌パークホテルの閉館は、客室数でみれば半径1km圏の約1.6%にすぎない。しかし、同圏のシティホテル・デラックス区分3,524室の約6%を占め、宴会・会議機能を伴うフルサービス型であるという点で、エリアにとっての意味は客室数以上に大きい。2019年以降に約5,100室が積み上がった宿泊特化型中心の供給構造のなかで、移行期のフルサービス需要をどの施設が引き受けるかが、今後数年の中島公園エリアの収益機会を左右する。

中央区の単価は冬季を中心に前年を上回り、夏季も稼働率(OTA掲載在庫ベース)は93〜94%と底堅い。地価の上昇が新規開発の採算を厳しくする一方で、ヒルトン札幌パークホテルと新MICE施設が揃う2030年代にはブランド集積とMICE需要という二つの追い風が見込める。移行期の需給と長期のアップサイドを分けて評価することが、このエリアの投資判断の出発点になるだろう。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年9月以降のADRは、調査時点(2026年9月下旬)でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。供給計画の件数・客室数も調査時点の確認申請ベースであり、今後の申請追加により増加する見込みです。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(札幌市中央区 N=139施設・月次)、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、中央区の固定コホート約100施設・2026年7〜8月)とブッキングカーブ(LT45〜LT1)、半径1km圏の供給集計(2026年8月に15日以上の販売を確認した100施設・13,523室、レジャーホテル区分を除く)。供給計画は国土交通省「建築物動態統計調査」、地価は国土交通省 不動産情報ライブラリ、REIT実績はインヴィンシブル投資法人の月次開示(2026年7月)、建替え後の計画はヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)による。

■ 試算前提

圏内の客室純増は、札幌パークホテルの閉館(-216室)と確認申請ベースの2件(126室・2027年2月竣工予定、200室・2028年5月竣工予定)を積み上げた値。ヒルトン札幌パークホテル(約350室)は開業時期が「未定」のため時期を置かず別段階として扱った。ADRは業態別の補正係数を用いた推定成約単価(税抜相当)で、エリア値は対象施設の中央値。2026年9月以降の月は調査時点の掲載水準に基づく推定。

■ 限界・留意点

稼働率はOTA上の在庫消化に基づく推定で、施設の実稼働率より高めに出る。確認申請ベースの計画は今後追加される可能性が高く、供給見通しは下限値として読む必要がある。開業時期別の集計は2026年8月時点の現存施設が対象で、期間中に閉館した施設を含まない。新ホテル・新MICE施設の時期と規模は今後の計画次第で変わり得る。

■ 市場データ

■ 政府統計・公的資料

■ 事業者資料・REIT

■ ニュース

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

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