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大地の芸術祭2027、前回会期の十日町市ADRは+5.6%〜−3.7% — 31施設445室と湯沢町への宿泊流出

投稿日 : 2026.10.29

新潟県

季節・イベント

大地の芸術祭2027、前回会期の十日町市ADRは+5.6%〜−3.7% — 31施設445室と湯沢町への宿泊流出

十日町市が公表した「大地の芸術祭 第10回展(仮称)に向けた意向調査票」によると、次回の大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレは令和9年(2027年)の夏から秋にかけて開催される見込みで、詳細は調整中とされている。前回の第9回展は2024年7月13日から11月10日まで、火・水曜を定休(お盆期間を除く)とした89日間の会期で、実行委員会が公表した延べ入込客数は545,931人だった。ところが、メトロエンジンリサーチの推定成約ADRで十日町市(対象17〜18施設)の会期年を見ると、芸術祭の無かった2025年の同月に対して7月+5.6%、8月+1.8%、9月−3.7%、10月−1.8%と、月次の単価には大きな山が立っていない。本稿では、89日間・54万人の会期が月次ADRに現れにくい理由を、(a) 客室ストックの小ささ、(b) 越後湯沢など周辺市町への宿泊流出、(c) 小規模宿の価格運用の3つの仮説に分けて、データで言える範囲を整理する。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

補足:本稿のリードタイム(LT)はチェックイン日までの日数で、ブッキングカーブはLT45以内の観測点のみを用いる。推定OCC(稼働率)は「対象N施設/客室M(主要予約サイト掲載ベース)」を併記する。前回会期(2024年)の日別推定OCCは固定母集団による集計の対象期間外のため扱わない。

Key Takeaways
  • — 延べ545,931人・89日間:第9回展(2024年)は1日あたり入館者6,091人、来場者の69.4%が宿泊を伴う旅行だった。第10回展は2027年夏〜秋の開催見込み(詳細調整中)。
  • — 7月+5.6%・9月−3.7%:十日町市の推定成約ADR(対象17〜18施設)は、会期年の2024年を芸術祭の無い2025年同月と比べても、会期全体を通した山にならなかった。
  • — 38施設653室:開催エリアの十日町市・津南町で価格を観測できた客室は1日の来場規模の1割程度で、十日町市31施設のうち28施設が20室以下。
  • — 宿泊者の40%強が域外:宿泊先は湯沢町17.1%・南魚沼市12.0%など。周辺2市町には189施設6,055室があり、9月も県相対で単価が強かった。
  • — 2026年8月¥18,800:芸術祭の無い年に会期年の8月を10.3%上回った。2027年は秋の会期後半と、火・水曜を挟む連泊に単価を乗せる余地がある。

第10回展の概要と前回第9回展の実績 — 89日間で延べ54.6万人、宿泊率69.4%

まずは主催者の公表値で前回展の規模を押さえておきたい。大地の芸術祭実行委員会(十日町市文化観光課)が2024年12月2日付で公表した報道資料によると、第9回展の延べ入込客数は545,931人で、145日間開催だった2022年の第8回展(574,138人)に対して95.1%にあたる。会期が89日間に短縮された一方で、1日あたりの入館者数は6,091人と、前回の3,935人から155%に増えた。2025年5月に公表された総括報告書では、入込数が第7回展(2018年、51日間)の548,380人と同等であること、外国人入込数が94,907人に達したことも示されている。

大地の芸術祭 第7回〜第10回展の会期と延べ入込客数
回会期日数延べ入込客数1日あたり
第7回展(2018年)7月29日〜9月17日51日548,380人—
第8回展(2022年)4月29日〜11月13日(分散開催)145日574,138人3,935人
第9回展(2024年)7月13日〜11月10日(火・水定休、お盆除く)89日545,931人6,091人
第10回展(2027年・仮称)令和9年夏〜秋(詳細調整中)———

出典:大地の芸術祭実行委員会「報道資料」(2024年12月2日)、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024 総括報告書」(2025年5月)、十日町市「第10回展(仮称)に向けた意向調査票」よりホテルバンク編集部作成。第8回展の会期は総括報告書の記載に基づく

宿泊面で見逃せないのが、総括報告書に載った来場者アンケート(総回答数1,836人)の結果である。今回の旅行が「宿泊」と答えた来場者は69.4%で、前回展の36.1%から大きく伸びた。月別の入込も会期を通じて平準化しており、7月13日からの13日間で69,323人(1日あたり5,333人)、8月が156,459人(同6,258人)、9月が123,407人(同5,609人)、10月が130,677人(同6,223人)、11月10日までの8日間が62,217人(同7,777人)と、むしろ会期終盤に向けて日あたりの来場が厚くなっていた。つまり宿泊需要は夏だけでなく秋にも同じ厚みで存在していたことになる。

経済効果の面でも、新潟県の分析ツールで推計した県内への経済波及効果は総合効果97億9,300万円(前回展82億6,200万円)で、うち来場者支出に由来する部分が93億200万円を占める。報告書は「来訪者の支出において、宿泊客の消費額が大きな割合を占めている」と記しており、宿泊が芸術祭の経済効果の中心にあることは主催者自身の整理でも明らかといえる。

会期年の十日町市ADRは山にならなかった — 2023→2024→2025の3点比較

それでは、宿泊需要が厚かったはずの会期年に、十日町市の推定成約ADRはどう動いたのか。メトロエンジンリサーチの市区町村別データ(十日町市、対象17〜19施設)で2023年・2024年・2025年の同月を並べると、会期年の2024年は7月¥14,200・8月¥17,000・9月¥14,100・10月¥14,400だった。芸術祭が無い2025年は7月¥13,500・8月¥16,700・9月¥14,700・10月¥14,600で、2024年との差は7月+5.6%、8月+1.8%、9月−3.7%、10月−1.8%にとどまる。前年の2023年(7月¥12,900・8月¥15,600・9月¥14,000・10月¥15,900)と比べても、7月+10.7%、8月+8.8%、9月+0.8%、10月−9.5%と、会期の前半で上がり後半で下がる形で、会期全体を通した山にはなっていない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成 — 十日町市・推定成約ADR(対象17〜19施設)。2026年は確定月(9月まで)のみ

十日町市の推定成約ADR(中央値)— 2023〜2026年の7〜10月
月2023年2024年(会期年)2025年2024/20252024/20232026年(確定月)
7月¥12,857¥14,232¥13,473+5.6%+10.7%¥12,658
8月¥15,635¥17,017¥16,722+1.8%+8.8%¥18,776
9月¥13,996¥14,112¥14,656-3.7%+0.8%¥16,218
10月¥15,900¥14,385¥14,644-1.8%-9.5%(未確定)
7〜10月平均¥14,597¥14,936¥14,874+0.4%+2.3%—

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成 — 十日町市の推定成約ADR(中央値)。対象施設数は2023年17〜19施設、2024年17施設、2025年18施設、2026年18〜19施設。2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定のため比較から除外

ただし、新潟県全体との相対で見ると会期前半には小さなプレミアムが確認できる。新潟県の推定成約ADR(対象408〜425施設)は2024年7月¥9,000・8月¥11,300で、2025年同月(¥9,300・¥11,900)に対して−2.9%・−5.0%と下がっていた。県全体が下がる中で十日町市が+5.6%・+1.8%だったことから、県に対する相対差は7月+8.5pt、8月+6.8ptとなる。一方で9月は−3.6pt、10月は+0.4ptで、会期後半には相対的な上乗せも消えている。来場者が秋にも同じ厚みで来ていたことを踏まえると、価格に反映されたのは会期の前半だけだったと読める。

加えて、芸術祭の無い2026年の実績が示唆的である。2026年8月の十日町市ADRは¥18,800(対象18施設)で、会期年の2024年8月¥17,000を10.3%上回り、9月も¥16,200と2024年9月を14.9%上回った。市場は2024年の会期中よりも高い単価を2026年に受け入れており、会期年の価格が需要の上限を示していたわけではないことが分かる。参考までに津南町は対象5施設と薄く、2024年8月¥16,600に対して2025年8月¥19,300と動きも大きいため、本稿では参考値にとどめる。

仮説(a) 客室ストックの小ささ — 越後妻有2市町で38施設653室、1日6,091人の来場に対して

最初の仮説は、そもそも価格を動かせる客室が少ない、というものである。メトロエンジンリサーチが追跡する施設のうち、直近3か月(2026年7月23日〜10月21日)に販売価格を観測できた施設を数えると、十日町市は31施設445室、津南町は7施設208室で、芸術祭の開催エリアである越後妻有2市町を合わせても38施設653室にとどまる。十日町市の31施設のうち28施設が20室以下で、客室数の中央値は10室である。最大規模の1施設(155室)が市内客室の35%を占め、津南町では146室の1施設が町内客室の70%を占める構造になっている。

越後妻有2市町と周辺市町の施設数・客室数(直近3か月に価格を観測できた施設)
市町施設数客室数客室数の中央値20室以下の施設最大施設の客室数
十日町市31445室10室28施設155室(市内の35%)
津南町7208室12室6施設146室(町内の70%)
湯沢町1174,095室14室81施設1,216室
南魚沼市721,960室15室51施設634室

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成 — 直近3か月(2026年7月23日〜10月21日)に2名1室の販売価格を観測できた施設。OTA未掲載の旅館・民宿・簡易宿所は含まない

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

この653室という数字を前回展の来場規模と並べると、1日あたり入館者6,091人に対して開催エリアの客室はその1割程度しかない。宿泊率69.4%、宿泊先の56.8%が十日町市・津南町(後述)という総括報告書の比率をそのまま当てはめても、開催エリア内の宿泊需要は1日あたり数千人規模になり、653室では物理的に受け切れない。需要が供給を大きく超える局面では、単価は需要の総量ではなく、各施設が「どこまで上げるか」の運用で決まることになる。

その運用の土台となる現在の予約進捗を、芸術祭の無い2026年8月のブッキングカーブで確認しておきたい。メトロエンジンリサーチの固定母集団(十日町市:対象14施設/客室315室、湯沢町:対象20施設/客室2,265室、南魚沼市:対象18施設/客室377室、いずれも主要予約サイト掲載ベース)で8月の宿泊日を平均すると、十日町市はLT45の時点で推定OCC72.0%(2026年8月宿泊日の平均)、LT14で77.2%、LT1で89.6%に達していた。湯沢町はLT45で65.9%、LT1で81.4%、南魚沼市はLT45で52.1%、LT1で86.8%である。十日町市は芸術祭が無い年の8月でも45日前に7割が埋まっており、会期年に「売る部屋を増やす」余地はほぼ無かったと考えてよい。新潟県の旅館が連休の土曜だけ45日前から先に埋まる構造は、新潟の10月三連休のブッキングカーブ分析でも確認している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成 — 2026年8月の宿泊日を平均したブッキングカーブ(LT45〜1)。稼働率はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります

仮説(b) 湯沢町・南魚沼市への宿泊流出 — 宿泊者の40%強が開催エリア外に泊まった

2つ目の仮説は、受け切れなかった需要が周辺市町に流れた、というものである。これは主催者のアンケートに直接の裏付けがある。総括報告書の宿泊先地域(回答数1,263人)は十日町市46.9%、湯沢町17.1%、南魚沼市12.0%、津南町9.9%、魚沼市2.1%、その他県内10.4%、新潟県外1.7%で、報告書自身が「宿泊者の40%強が越後妻有地域外に宿泊する結果となった」「交通の利便性から湯沢町に宿泊する人が多く、越後湯沢駅がオフィシャルツアーの発着場所ということも要因として大きい」と記している。

第9回展来場者の宿泊先地域(回答数1,263人)
宿泊先地域構成比位置づけ
十日町市46.9%開催エリア
津南町9.9%開催エリア
湯沢町17.1%周辺(越後湯沢駅・ツアー発着)
南魚沼市12.0%周辺
魚沼市2.1%周辺
その他県内10.4%—
新潟県外1.7%—

出典:大地の芸術祭実行委員会「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024 総括報告書」(2025年5月)来場者アンケート(回答数1,263人)よりホテルバンク編集部作成

では、流出先の単価は会期年に動いたのか。同じ推定成約ADRで湯沢町(対象33〜38施設)と南魚沼市(対象23〜28施設)の2024年を2025年と比べると、湯沢町は7月+4.6%、8月−3.8%、9月+4.1%、10月−0.7%、南魚沼市は7月+1.6%、8月+3.3%、9月+14.7%、10月+0.2%だった。新潟県全体が7月−2.9%、8月−5.0%、9月−0.1%、10月−2.2%と前年を下回っていたのに対し、県との相対差は湯沢町が7月+7.5pt・9月+4.2pt、南魚沼市が8月+8.3pt・9月+14.8ptと、十日町市の相対差が消えた9月に周辺2市町の相対差が残っている点は目を引く。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成 — 推定成約ADRの2024年/2025年同月比。対象施設数:十日町市17〜18、湯沢町33〜38、南魚沼市23〜28、新潟県408〜425

もっとも、この相対差を芸術祭だけに帰すことはできない。湯沢町・南魚沼市は夏のフジロックや秋の紅葉など芸術祭と無関係の需要も抱えており、本稿のデータは「流出が起きていた」というアンケートの事実と「周辺市町の単価が会期年に県平均より強かった」という価格の事実が整合している、というところまでである。いえるのは、開催エリアの653室に対し湯沢町・南魚沼市には189施設6,055室と9倍以上の客室があり、需要の受け皿として機能する規模が周辺にあった、ということだろう(越後湯沢を含む県内各エリアの客室規模と単価の階層は、新潟県ホテル投資マップで整理している)。

仮説(c) 小規模宿の価格運用 — 会期年と翌年の差が±3%以内の施設が17施設中7施設

3つ目は、小規模な宿が会期に関わらず価格を据え置いている、という仮説である。十日町市で2024年と2025年の7〜10月すべてに推定成約ADRが得られた17施設について、会期4か月の平均単価を年ごとに比べると、2024年/2025年の変化率の中央値は+1.8%で、±3%以内に収まった施設が7施設、2024年のほうが3%超高かった施設が5施設、3%超低かった施設が5施設と、三つに割れた。会期年に単価を上げた施設と据え置いた施設が同数程度あり、市全体の中央値としては打ち消し合った形になる。

同じ17施設で、2024年7〜10月の月別単価のばらつき(変動係数)を見ると中央値は6.5%で、変動係数が5%以下に収まる施設が4施設あった。対照的に、最大規模の155室のリゾート施設は変動係数17.6%と月ごとに価格を大きく動かしており、繁閑に応じて単価を変える運用が読み取れる。客室数で加重した17施設の平均単価は2024年¥17,500、2025年¥17,900と、中央値とは逆に会期年のほうがわずかに低く、規模の大きい施設ほど会期年に価格を抑えめに置いていたことも分かる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成 — 十日町市17施設の2024年7〜10月平均推定成約ADRの2025年同期間比(施設別の分布)

曜日の構造も見ておきたい。前回会期と同じ日付範囲(7月13日〜11月10日)で十日町市の掲載価格(全プラン平均・税込、2名1室)を曜日別に平均すると、2024年は土曜¥59,600、日曜¥52,400、金曜¥50,900、木曜¥50,200、月曜¥47,000、水曜¥41,400、火曜¥40,300だった(対象26施設)。2025年(対象28施設)も順序はほぼ同じで、会期年に最も上がったのは木曜の+5.7%、次いで土曜+2.3%・日曜+2.0%である。芸術祭が火・水曜を定休としていたこととも重なり、会期年でも火・水曜の宿泊は土曜の7割弱の水準にとどまっていた。

十日町市の曜日別掲載価格 — 会期年2024年と2025年(各年7月13日〜11月10日)
曜日2024年(会期年)2025年差
月曜¥47,025¥46,618+0.9%
火曜¥40,334¥39,608+1.8%
水曜¥41,437¥41,066+0.9%
木曜¥50,159¥47,448+5.7%
金曜¥50,916¥50,047+1.7%
土曜¥59,562¥58,243+2.3%
日曜¥52,353¥51,306+2.0%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成 — 十日町市の掲載価格(全プラン平均・税込・2名1室)。期間は各年7月13日〜11月10日、対象は2024年26施設・2025年28施設。推定成約ADRとは水準が異なる

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

どの仮説が当てはまるか — データで言える範囲の整理

ここまでを整理すると、3つの仮説は排他的ではなく、重なって月次ADRの山を小さくしていたと考えるのが自然である。(a) は施設数・客室数という事実で裏付けられ、(b) は主催者アンケートという一次情報と周辺市町の価格の動きが整合し、(c) は施設別の価格分布から会期年に価格を動かした施設と据え置いた施設が同数程度あることが確認できた。一方で、どの要因がどれだけ効いたかの寄与度や、周辺市町の単価上昇が芸術祭によるものかどうかは、本稿のデータでは断定できない。

3つの仮説と整合するデータ・言えないこと
仮説整合するデータ言えないこと
(a) 客室ストックの小ささ開催2市町で38施設653室(直近3か月に価格観測)。2026年8月は十日町市でLT45時点の推定OCC72.0%(対象14施設/客室315室)前回会期中の日別稼働(固定母集団の対象期間外)
(b) 周辺市町への流出宿泊先の40%強が開催エリア外(湯沢町17.1%・南魚沼市12.0%)。9月の県相対差が十日町市−3.6ptに対し湯沢町+4.2pt・南魚沼市+14.8pt周辺市町の単価上昇が芸術祭由来かどうか(他イベントと分離できない)
(c) 小規模宿の価格運用17施設の会期年/翌年差は中央値+1.8%、±3%以内が7施設。月別のばらつきは中央値6.5%据え置きの理由(人員・料理原価・常連比率など)

出典:メトロエンジンリサーチ、大地の芸術祭実行委員会「総括報告書」よりホテルバンク編集部作成

2027年に向けて — 単価と連泊に乗せる余地はどこにあるか

第10回展まで残り1年弱で、客室ストックを大きく増やすことは現実的ではない。だからこそ、前回展のデータから読み取れる余地は「量」ではなく「単価」と「泊数」の側にある。第一に、会期前半には県相対で+7〜9ptのプレミアムが実際に成立しており、市場は会期の需要を単価として受け入れていた。これが9〜10月に消えていた一方で、10月の入込は130,677人(1日あたり6,223人)と8月に迫り、会期最終8日間は1日あたり7,777人と会期中で最も厚かった。秋の会期後半に前半と同じ水準の単価を置くことは、来場の厚みから見て無理のない設定といえる。

第二に、2026年8月のADR¥18,800は会期年の8月を10.3%上回っており、芸術祭が無くても市場が受け入れる単価の天井は2024年より上がっている。2027年の会期は、この2026年の水準を出発点に会期分を上乗せする設計が可能になる。第三に、曜日の構造である。火・水曜は会期年でも土曜の7割弱の水準で、芸術祭が定休日としていた曜日でもある。会期中は火・水曜に作品を見られない分、月曜泊・木曜泊を起点にした「定休日を挟む連泊」を前提に価格とプランを組めば、平日の単価を落とさずに泊数を伸ばす余地がある。総括報告書も「大地の芸術祭目的の宿泊者には特典を付与するなど、まずは地域内の宿を選んでもらえるような工夫が必要」と、地域内宿泊の促進を次回展の論点に挙げている。長い会期を平日の底上げで取るという考え方は、83日間の会期を持つARTE TOKYOの都内ホテル需要分析とも共通する。

そして第四に、インバウンドである。外国人入込数は94,907人と前回展の約3倍に増え、報告書は「越後妻有地域内の宿泊施設において、インバウンドの対応準備が整っていない状況が見受けられる」と率直に記している。裏を返せば、多言語での予約導線や2食付きプランの説明を整えるだけで取り込める需要が、開催エリアの653室に対して十分に大きいということでもある。会期年に単価を据え置いた施設にとっては、2027年は前回展の実績という根拠をもって、会期前半だけでなく秋まで通した段階的な価格設定へ移る好機だろう。

よくある質問

Q. 大地の芸術祭 第10回展はいつ開催されますか。

A. 十日町市が公表した「第10回展(仮称)に向けた意向調査票」では、令和9年(2027年)の夏から秋にかけての開催とされ、詳細は調整中です。前回の第9回展は2024年7月13日〜11月10日の89日間でした。確定した会期は主催者の公式発表をご確認ください。

Q. 前回展の来場者数はどのくらいでしたか。

A. 大地の芸術祭実行委員会の公表値で延べ入込客数は545,931人、1日あたりの入館者数は6,091人です。外国人入込数は94,907人、来場者アンケートでは69.4%が宿泊を伴う旅行でした。

Q. 会期中に十日町市のホテル・旅館の料金はどれくらい上がりましたか。

A. メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(十日町市、対象17〜18施設)では、2024年の会期年は芸術祭の無い2025年の同月に対して7月+5.6%、8月+1.8%、9月−3.7%、10月−1.8%でした。新潟県全体との相対では会期前半に+7〜9ptの上乗せが見られましたが、9〜10月には相対差も消えています。

関連記事

新潟県の宿泊市場については、新潟県のシティ・ビジネスホテルの2026年夏の推定成約ADR、季節で掲載施設が出入りする構造を扱った掲載数の振れと閑散月のADR、冬の湯沢・魚沼エリアの価格を整理したリフト券とスキー宿1泊の合算もあわせてご覧いただきたい。

参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチの市区町村別・都道府県別の推定成約ADR(十日町市・津南町・湯沢町・南魚沼市・新潟県、2023年5月〜2026年9月の確定月)、直近3か月(2026年7月23日〜10月21日)に2名1室の販売価格を観測できた施設の施設数・客室数、2026年8月宿泊日の固定母集団ブッキングカーブ(LT45以内)、会期期間の曜日別掲載価格。来場者数・宿泊率・宿泊先構成は大地の芸術祭実行委員会の報道資料(2024年12月2日)と総括報告書(2025年5月)による。

■ 試算前提

ADRはOTA公開の最安プラン水準(2名1室・1室あたり・税込)に業態別の補正係数を適用した推定成約単価(税抜相当)のエリア中央値。会期年の効果は、2024年と芸術祭の無い2025年の同月比、および新潟県全体の同月比との差(pt)で見た。曜日別の比較だけは掲載価格(全プラン平均・税込・2名1室)を用いており、推定成約ADRとは水準が異なる。

■ 限界・留意点

いずれも推定値であり、各施設の実際の成約価格とは異なる。OTA未掲載の旅館・民宿・簡易宿所は施設数・客室数に含まない。前回会期(2024年)の日別推定OCCは固定母集団の対象期間外のため扱っていない。周辺市町の単価の動きはフジロックや紅葉など他の需要と分離できず、芸術祭の寄与度は断定できない。津南町は対象施設が少ないため参考値にとどめた。

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