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砂川パークホテルはPARK SHIROへ、24室を19室+サ高住18戸に — 事業費27億円の駅前再生を人口と単価で読む

投稿日 : 2026.10.20

北海道

投資・開発

砂川パークホテルはPARK SHIROへ、24室を19室+サ高住18戸に — 事業費27億円の駅前再生を人口と単価で読む

コスメブランドSHIROを展開する株式会社シロが、JR砂川駅徒歩1分の砂川パークホテルを「PARK SHIRO」として2027年1月19日(火)に再開すると2026年4月21日に発表した。1986年に市民の婚礼需要から生まれた24室のホテルは、2025年10月1日から全館休業して改修に入っており、再開後は5タイプ19室の「みんなのホテル」に、サービス付き高齢者向け住宅「みんなのおうち」18戸、サウナ付き温浴、円卓64席のホール、38席のレストラン、セカンドハンドの店を組み合わせた複合施設になる。本稿では、この「客室を減らして住宅を足す」床の分け方を、駅前1.5km圏の人口構造、空知地方の宿泊単価、そして制度面(サ高住の登録基準と用途変更の確認申請)から読み解く。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
  • 客室ストック:メトロエンジンリサーチのホテルマスターに登録された施設の客室数。「稼働が確認できる」とは、主要予約サイト上で直近に販売価格が観測できることを指し、営業の有無そのものを示すものではありません。
  • 居住人口:国土交通省 国土数値情報「250mメッシュ別将来推計人口(令和6年国政局推計)」。国勢調査ベースの居住人口であり、滞在人口・通過人口ではありません。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA価格データ、ホテルマスター)、国土交通省(国土数値情報・不動産情報ライブラリ)、総務省・経済産業省(経済センサス)、株式会社シロ公表資料
客室数
24室 → 19室
−5室・5タイプ
サ高住
18戸
みんなのおうち(2026年4月時点)
事業費
27億円
補助額7.8億円(交付決定概要)
駅前1.5km圏 居住人口
6,048人
2025年。2040年は4,637人(2020年比−30.5%)
65歳以上比率
39.8%
1.5km圏・2025年
再開日
2027年1月19日
2025年10月1日から全館休業

出典:株式会社シロ「PARK SHIRO」発表資料(2026年4月21日)、中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金 交付決定事業概要、国土交通省 国土数値情報よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

Key Takeaways
  • — 24室→19室+サ高住18戸:事業費27億円(補助額7.8億円)で、客室を減らし住宅・サウナ付き温浴・64席ホールに床を回す。2027年1月19日再開予定
  • — 19室の年間宿泊売上は2,600万〜4,900万円(ADR 7,400〜10,100円×稼働50〜70%の仮定)。5室分の減収は7,400円・稼働60%で年約810万円
  • — 月額約3.95万円:18戸が入居率95%なら、この賃料・共益費で5室分の減収を吸収できる(損益分岐の目安で、賃料の予測ではない)
  • — 駅前1.5km圏の居住人口は2040年に4,637人(2020年比−30.5%)。2025年時点で65歳以上が39.8%を占める
  • — 参照単価は滝川市6,046円・岩見沢市7,803円(推定成約ADR、2025年10月〜2026年9月)。半径1.5km圏で価格が観測できたのは休業前のパークホテルのみ

PARK SHIROの構成 — 婚礼のためのホテルが「カルチャー基地」に変わるまで

まずは経緯を整理したい。砂川パークホテルは1986年、「砂川市内で結婚式を挙げられるホテルを」という市民の声を受けて開業した施設で、主要予約サイト上では24室のシティホテルとして販売されてきた。SHIROが砂川市に製造拠点「みんなの工場」を構える過程で2021年6月に始めた「みんなのすながわプロジェクト」では、計16回のワークショップで「パークホテルを再生してほしい」という声が繰り返し上がり、その約1年後の2022年6月にシロがホテルの経営権を取得している。

計画は段階的に姿を変えてきた。2024年3月の最初の告知では「建物はそのまま残し、2027年夏の完成を目指す」とされ、同年4月の説明会を報じた地元業界メディアは、客室数25室は維持したうえで、木造平屋のサ高住を1棟2戸×5棟(10戸)隣接して建てる総事業20億円の構想を伝えていた。ところが2025年6月24日の起工式を経て2026年4月に示された最終形では、客室は5タイプ19室に絞られ、サ高住は18戸へ、事業費は27億円(うち補助額7.8億円)へと膨らんでいる。客室を減らし、住宅と温浴・ホールの比重を上げる方向に計画が動いたことが分かる。

砂川パークホテルからPARK SHIROへの経緯(1986年〜2027年)
時期出来事出典
1986年砂川パークホテル開業(市民出資・婚礼需要)SHIRO公式
2021年6月「みんなのすながわプロジェクト」発足、ワークショップ計16回SHIRO公式・補助事業概要
2022年6月株式会社シロがホテルの経営権を取得PR TIMES(2026年4月21日)
2024年3月リニューアル計画を告知。「建物は残し2027年夏完成を目指す」SHIRO みんなの工場ブログ
2024年4月地域説明会。客室25室維持・サ高住10戸・総事業20億円と報道北海道リアルエコノミー
2025年5月駅前広場北側の市有地の一部をシロが市から購入と報道北海道新聞
2025年6月24日起工式(市長・今井会長が鍬入れ、福永社長があいさつ)砂川市 WEB市長室
2025年10月1日全館休業、改修着手。「工事状況により期間変更の可能性」砂川パークホテル公式
2026年4月21日新名称「PARK SHIRO」、19室・64席ホール・38席レストラン・サウナ付き温浴を発表PR TIMES・SHIRO公式
2026年4月求人情報でサ高住18戸と記載(※2026年4月時点)SHIRO採用ページ
2027年1月19日リニューアルオープン予定PR TIMES

出典:各公表資料よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。客室数24室はメトロエンジンリサーチのホテルマスター登録値(主要予約サイトの掲載値と一致)

施設構成を公表値で並べると、宿泊(19室)、住宅(18戸)、地域利用(64席ホール・38席レストラン・サウナ付き温浴・スタディラウンジ・セカンドハンドの店・駄菓子屋)の三層になる。補助事業の概要には「市内唯一の宴会場」「市内唯一の大型サウナ付き温浴施設」「サ高住の人的リソースはホテルと共用」という記述があり、宿泊と住宅で人員・設備を共有する運営設計が前提になっている点が、この案件を単なる減室改装と分けている。

宿泊と住宅で床を分ける — 19室の宿泊収入と18戸の賃料を感度表で置く

それでは、この床の分け方は収入面でどう見えるのか。賃料・サービス費は未公表のため推定はせず、ここでは公表されている室数・戸数に、地域の単価水準をあてた感度表で示す。宿泊側の単価は三つの参照値を使う。休業前の砂川パークホテル自身の推定成約ADR(2024年10月〜2025年9月の12か月平均7,370円、N=1施設)、北海道のビジネスホテルの12か月平均(2025年10月〜2026年9月、8,954円、対象419〜441施設)、北海道全体の12か月平均(同期間、10,123円、対象865〜960施設)である。これを丸めて7,400円・8,950円・10,100円とした。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR)、株式会社シロ公表の室数より試算。年間宿泊売上=客室数×ADR×稼働率×365日。付帯収入・温浴日帰り・宴会は含まない

19室の年間宿泊売上の感度(ADR×稼働率、付帯収入を除く)
ADR想定稼働50%稼働60%稼働70%参考:24室・稼働60%
7,400円(旧施設実績水準)2,566万円3,079万円3,592万円3,889万円
8,950円(北海道ビジネス水準)3,103万円3,724万円4,345万円4,704万円
10,100円(北海道全体水準)3,502万円4,203万円4,903万円5,309万円

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。19室ベース。稼働率は仮定値

19室で稼働60%なら、年間の宿泊売上は単価7,400円で約3,080万円、10,100円で約4,200万円のレンジになる。同じ単価・稼働で24室を維持した場合との差、すなわち5室分の減収は7,400円ベースで年約810万円である。この数字を住宅側に引き渡すと、18戸が入居率95%で埋まる前提では、月額の賃料・共益費が1戸あたり約39,500円を超えれば5室分の減収を賃料だけで吸収できる計算になる。これは賃料の予測ではなく、公表された室数と戸数だけから導いた損益分岐の目安である。逆にホテル客室そのものを共同住宅や寮に戻した場合に賃料収入が宿泊収益を上回る分岐点ADRは、ホテル→住宅・寮の転用、分岐点ADRは¥3,800〜4,600が札幌を含む3市場で試算している。

サ高住18戸の年間賃料収入の感度(月額賃料×入居率)
月額賃料・共益費(1戸・仮定)入居率90%入居率95%
5万円972万円1,026万円
7万円1,361万円1,436万円
9万円1,750万円1,847万円

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。18戸ベース。食事・介護・生活支援サービス費は含まない仮定値。民間調査ではサ高住の月額費用(家賃・管理費・食費等の合計)の全国中央値は15.3万円(みんなの介護研究所、2026年8月、N=4,945件)

ここで重要なのは金額の大小よりも収入の性質である。宿泊売上は季節と曜日で振れるのに対し、住宅の賃料は年間を通じて平準化される。北海道全体の推定成約ADRは2026年8月の12,230円から4月の7,955円まで、年内で1.5倍の振れ幅を持つ。19室の宿泊に18戸の住宅を重ねる構成は、この振れを緩める効果を床の配分そのものに持たせたものと読める。補助事業概要が掲げる目標値(補助事業に係る従業員数23人→70人、労働生産性795万円→1,336万円/人、2027年度→2030年度)も、温浴・ホール・レストランを含む施設全体で達成を目指す値であり、宿泊単体で評価するものではない。

駅前1.5km圏の人口は2040年に−30.5% — 65歳以上が4割の商圏で住宅を足す意味

背景にあるのは商圏の人口構造である。PARK SHIROの所在地を中心とした半径1.5km圏(80メッシュ)の居住人口は、2020年の6,668人から2025年には6,048人へ減り、2040年には4,637人(2020年比−30.5%)、2070年には2,462人と推計される。2025年時点の年齢構成は65歳以上が2,409人(39.8%)、15〜64歳が3,168人(52.4%)、15歳未満が473人(7.8%)で、市全体(2025年1月1日の住民基本台帳人口15,231人、65歳以上40.4%)とほぼ同じ高齢化の水準にある。

出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・令和6年国政局推計)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。PARK SHIRO所在地を中心とする半径1.5km・80メッシュの合計

メッシュ単位で見ると、人口が集まるのは駅の西側、国道12号沿いから西2〜4条にかけての市街地で、高齢比率は大半のメッシュで32%を超える。地図の濃淡が示すのは、ホテルの客室需要を支える居住人口は細りつつも、住宅需要の中心となる高齢層は駅徒歩圏に厚く残るという二面性である。

半径1.5km圏の居住人口(2020年・250mメッシュ)

出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

同圏の高齢比率(2025年・濃淡=人口規模)

出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

就業側も確認しておく。経済センサス(2021年)に基づく駅周辺1km圏の民営事業所は334か所・従業者2,263人で、うちオフィス系は5.7%にとどまる。平日の出張需要を支える業務集積は限定的で、宿泊需要の柱はむしろ「みんなの工場」(2023年4月開設、年間30万人来場、うち道外25.1%と補助事業概要に記載)に紐づく来訪者と、札幌・旭川のほぼ中間という通過交通の位置になる。補助事業概要が「日帰り主体の観光に宿泊をセットする」と述べているのは、この構造への答えといえる。

空知の宿泊市場と供給 — 滝川市6,046円・岩見沢市7,803円、駅前で価格が観測できる施設は1軒

一方で、再開後の価格水準を考えるには近隣市の単価が参照になる。砂川市は推定成約ADRを算出できる施設が休業前のパークホテル1軒しかなく、市単位の系列は2025年9月で止まっている。隣接する滝川市は3〜5施設、岩見沢市は6〜7施設で系列が続いており、2025年10月〜2026年9月の12か月平均はそれぞれ6,046円、7,803円だった。滝川市は2026年に入って月次でおおむね6,000円前後(4〜5月は5,800〜5,900円台)で推移し、7月には6,592円と前年同月(5,457円)比+20.8%を記録している。施設数が少ないため1施設の価格改定が市の値を動かしやすい点は留意が必要だが、空知の駅前ビジネス帯が上向きで推移してきたことは読み取れる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR・滝川市、対象3〜5施設、確定月のみ)

空知の市別 推定成約ADR(12か月平均)と掲載価格
エリア推定成約ADR 2024/10〜2025/9推定成約ADR 2025/10〜2026/9対象施設数掲載価格(全プラン平均・税込)2025/10〜2026/9
砂川市(休業前パークホテル)7,370円—(2025年9月で系列終了)116,464円
滝川市5,506円6,046円3〜516,471円
岩見沢市7,528円7,803円6〜719,945円
深川市7,995円8,346円117,841円
美唄市11,616円11,527円228,267円
芦別市14,981円14,688円141,223円
北海道ビジネスホテル—8,954円419〜441—
北海道全体—10,123円865〜960—

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。12か月単純平均。対象施設数は月により変動。美唄市・芦別市はリゾート系施設を含むため水準が異なる

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR 12か月平均、2025年10月〜2026年9月。砂川市のみ2024年10月〜2025年9月)

供給側はさらに薄い。メトロエンジンリサーチのホテルマスターに登録された施設を、PARK SHIRO所在地から半径1.5km以内で施設単位に棚卸しすると、宿泊施設は砂川パークホテル(24室)のほか、砂川駅前旅館(20室)、静香荘(16室)、金松ホテル(15室)、田中旅館(15室)、山下旅館(10室)、おさだ旅館(8室)と、2026年4月開業の1室の貸別荘で、合計109室になる。ただし2025年1月以降に主要予約サイトで販売価格が観測できたのは砂川パークホテルだけで、他の施設はいずれも価格の観測がない。つまり、同サイト経由で予約できる駅前の客室は休業前の24室がすべてであり、再開後は19室が砂川市中心部の実質的なオンライン在庫になる。

PARK SHIRO所在地から半径1.5km以内の宿泊施設
施設客室数区分主要予約サイトでの価格観測(2025年1月〜2026年10月)
砂川パークホテル → PARK SHIRO24室 → 19室シティホテル2025年9月まで観測(10月1日から休業)
砂川駅前旅館20室旅館観測なし
静香荘16室旅館観測なし
金松ホテル15室ビジネスホテル観測なし
田中旅館15室旅館観測なし
山下旅館10室旅館観測なし
おさだ旅館8室旅館観測なし
貸別荘(2026年4月開業)1室貸別荘観測なし

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング ホテルマスター(2026年10月14日時点、半径1.5km、大人専用施設を除く)。施設単位で名寄せ済み(重複なし)

加えて、立地の基礎条件を国土交通省の不動産情報ライブラリで確認しておく。所在地は商業地域(容積率400%・建蔽率80%)で、ホテル・住宅・温浴・店舗のいずれも立地できる用途地域である。最寄りの地価調査地点(西2条北5丁目、駅550m)は2022年の10,300円/㎡から2026年の9,800円/㎡へ毎年下がってきたが、下落率は2022年の−2.8%から2024年以降は−1.0%で安定している。JR砂川駅の1日平均乗車人員は2018年1,364人、2019年1,304人、2020年956人、2023年1,142人と、2020年の落ち込みから回復途上にある。計画上の確認事項としては、敷地が石狩川・空知川等の洪水浸水想定区域(想定最大規模で浸水深0.5〜3.0m未満のランク)に含まれ、地形分類上は液状化しやすいとされる区分に入る。高齢者住宅を含む施設では、避難経路と2階以上への垂直避難の設計がこの条件に対応する設備要件になる。ハザードを面積カバー率に換算して推定成約ADRや防災Capexと重ねる見方は、ホテル立地評価の第4軸「災害リスク」を定量化するが全国8商圏を対象に示している。

PARK SHIRO所在地の立地条件(用途地域・地価・駅乗車人員・ハザード)
項目PARK SHIRO所在地(東2条北3丁目)出典
用途地域商業地域(容積率400%・建蔽率80%)国土数値情報 用途地域
地価調査(西2条北5丁目・駅550m)9,800円/㎡(2026年、前年比−1.0%)。2022年10,300円→2026年9,800円国土交通省 都道府県地価調査
JR砂川駅 1日平均乗車人員2018年1,364人/2019年1,304人/2020年956人/2023年1,142人国土数値情報 駅別乗降客数
洪水浸水想定(想定最大規模)石狩川・空知川・パンケ歌志内川の区域に含まれる。浸水深0.5〜3.0m未満国土数値情報 洪水浸水想定区域
地形分類(液状化傾向)液状化しやすい区分国土数値情報 地形分類
土砂災害警戒区域該当なし国土数値情報

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリよりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(2026年10月14日照会)

ホテルの床に住宅を入れる制度面 — サ高住の登録基準と、用途変更の確認申請が要る線

ここまでを整理すると、PARK SHIROは「既存のホテル建物を減室して温浴・ホールに床を回し、住宅は駐車場に新築する」という構成である。この構成は制度面で二つの意味を持つ。

一つはサービス付き高齢者向け住宅の登録基準である。サ高住は国土交通省と厚生労働省が共管する高齢者住まい法の登録制度で、都道府県知事への登録には、各居住部分の床面積が原則25㎡以上(居間・食堂・台所などを共同利用できる十分な面積がある場合は18㎡以上)、台所・水洗便所・収納・洗面・浴室を備えること、バリアフリー構造であること、少なくとも状況把握(安否確認)と生活相談のサービスを提供すること、長期の居住安定が図られた契約で前払金の保全措置を講じることが求められる。SHIROが2024年に示した「全戸が二面採光の角部屋、床・壁・天井に道産トドマツ」という設計は、この面積・設備基準を前提に、ホテル客室とは別の住戸として組まれている。宿泊と住宅は床面積の考え方が根本的に異なるため、ホテル客室をそのまま住戸に転用するより、別棟で住宅をつくる方が登録基準に合わせやすい。

もう一つは建築基準法の用途変更である。2019年6月25日に全面施行された改正建築基準法で、用途変更に伴う建築確認が必要となる規模は、特殊建築物で用途変更部分の床面積200㎡超に引き上げられた(それ以前は100㎡超)。ホテル・旅館は特殊建築物であり、共同住宅や寄宿舎も同じく特殊建築物に含まれるため、ホテルの客室階を住宅に転用する場合は200㎡を超えれば確認申請が必要になり、採光・界壁・避難規定を住宅用途で満たす必要が出る。PARK SHIROでは住宅を新築棟とし、既存のホテル建物側はホテル・飲食・宴会・温浴というホテル系の用途の中で床を組み替えている。確認申請が不要になるわけではないが、住宅用途の規定を既存建物に遡及させずに済む整理であり、地方の駅前ホテルが住宅機能を取り込むときの一つの型として参照できる。200㎡の閾値と2025年4月の4号特例縮小が小規模な宿の改修手続きにどこまで及ぶかは、宿の改修に確認申請が要る条件で整理している。

ただし、この型は敷地に余裕があることが前提になる。PARK SHIROの場合、現駐車場へのサ高住の新築と駅前広場北側の市有地の購入(2025年5月報道)が、新築棟の床を生んでいる。駅前広場を管理する市と整備方針を定めていくという報道は、民間のホテル再生と公共空間の再整備が一体で進む例として位置づけられる。

まとめ — 小さな駅前ホテルの再生を、数字でどう見るか

砂川パークホテルからPARK SHIROへの転換は、24室のホテルを19室にしながら、18戸の住宅、64席のホール、38席のレストラン、サウナ付き温浴を一つの敷地に収める事業費27億円の計画である。駅前1.5km圏の居住人口は2040年に3割減り、65歳以上がすでに4割を占める。空知の駅前ビジネス帯の推定成約ADRは滝川市で6,046円、岩見沢市で7,803円と上向きだが、宿泊売上だけで27億円の床を支える水準ではない。だからこそ、宿泊(19室)・住宅(18戸)・地域利用(ホール・温浴・レストラン)の三層で収入の性質を分散させ、人員と設備を共有する運営設計が選ばれたと読める。

運営者の視点では、次の三点を確認しておきたい。第一に、宿泊売上の感度は単価より稼働率と室数に効く。19室では年間の宿泊売上は2,600万〜4,900万円(稼働50〜70%)のレンジにとどまり、5室分の減収(年約810万円)は月額賃料約4万円の住宅18戸で埋まる規模である。第二に、同サイト経由で予約できる砂川市中心部の客室は再開後の19室のみで、競合在庫の少なさは単価設定の自由度につながる。第三に、ホテルと住宅を同じ建物に入れるか別棟にするかは、サ高住の登録基準(床面積25㎡以上・設備・サービス)と用途変更の確認申請(200㎡超)で判断が分かれる。PARK SHIROは別棟型を選び、市有地の取得で床を確保した。2027年1月の再開後、19室の単価と温浴の日帰り利用がどう推移するかは、同じ条件を抱える地方駅前ホテルにとって具体的な参照値になるだろう。

よくある質問

Q. 砂川パークホテルはいつ再開しますか。

A. 株式会社シロの発表では、2027年1月19日(火)に「PARK SHIRO」として再開する予定です。2025年10月1日から全館休業して改修中で、公式サイトは工事状況により期間が変わる可能性があると案内しています。

Q. PARK SHIROの客室数と施設構成は。

A. 宿泊施設「みんなのホテル」は5タイプ19室です。サービス付き高齢者向け住宅「みんなのおうち」18戸(2026年4月時点の求人情報)、円卓で64席のホール、38席のレストラン、ロウリュ付きサウナを備えた温浴施設、スタディラウンジ、セカンドハンドの店「SECONDHAND HOUSE by SHIRO」、駄菓子屋が併設されます。

Q. サービス付き高齢者向け住宅の登録に必要な基準は。

A. 各住戸の床面積が原則25㎡以上(共用部が十分な場合は18㎡以上)、台所・水洗便所・収納・洗面・浴室の設置、バリアフリー構造、状況把握と生活相談サービスの提供、居住の安定が図られた契約と前払金の保全措置が求められます。登録先は都道府県知事です。

Q. ホテルを住宅に用途変更するとき確認申請は必要ですか。

A. 2019年6月25日施行の改正建築基準法により、特殊建築物の用途変更で確認申請が必要になるのは用途変更部分の床面積が200㎡を超える場合です。200㎡以下でも建築基準法への適合は必要で、具体的な扱いは特定行政庁への確認が必要です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADRと掲載価格はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングのOTA価格データ(確定月のみ、2024年10月〜2026年9月)。半径1.5km圏の宿泊施設はホテルマスター(2026年10月14日時点)。居住人口・用途地域・地価・駅乗車人員・ハザードは国土交通省の国土数値情報と不動産情報ライブラリ、事業所数は経済センサス(2021年)。施設計画・事業費は株式会社シロの公表資料と補助事業の交付決定概要による。

■ 試算前提

年間宿泊売上=客室数(19室、参考24室)×ADR×稼働率×365日。ADRは休業前の自施設実績7,370円、北海道ビジネスホテル8,954円、北海道全体10,123円を丸めた3水準、稼働率50〜70%は仮定値。賃料側は18戸×月額賃料・共益費(5万〜9万円の仮定)×入居率(90%・95%)×12か月。食事・介護・生活支援サービス費、温浴日帰り、宴会・飲食は含まない。

■ 限界・留意点

砂川市の推定成約ADRは休業前のパークホテル1施設(N=1)のみで、滝川市(3〜5施設)・岩見沢市(6〜7施設)も母数が小さく、1施設の価格改定が市の値を動かしうる。推定成約ADRは推定値で、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。賃料・サービス費は未公表のため感度表は仮定値に基づき、株式会社シロの事業計画を示すものではない。サ高住の戸数は2026年4月時点の求人情報の表記。

■ 事業者公表資料・報道

■ 政府統計・公的データ

■ 市場データ

試算に関する注記:本記事の宿泊売上・賃料の数値は、公表された室数・戸数に地域の推定成約ADRと仮定の稼働率・賃料をあてた感度試算であり、株式会社シロの事業計画や会計数値ではありません。実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。推定成約ADRは確定月(2026年9月まで)のみを使用しています。

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