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旧吉野小学校が定員約150名の宿に、2027年4月 — 奥村組と吉野町の廃校再生と町内単価2.0万円

投稿日 : 2026.10.18

奈良県

投資・開発

旧吉野小学校が定員約150名の宿に、2027年4月 — 奥村組と吉野町の廃校再生と町内単価2.0万円

奥村組が2026年10月6日に公表した「YOSHISHO(よししょう)」は、奈良県吉野町が2022年3月に閉校した旧吉野小学校を、総定員約150名・客室7タイプの複合型宿泊施設へ改修する計画で、2027年4月のプレオープンと同年8月のグランドオープンを予定している。校舎を1967〜68年に施工したゼネコンが、約60年後に自らその校舎を宿に変える、施工者自身が再生に入る案件である。本稿では、吉野町の公募資料と奥村組の提案資料から確定した事実を年表に整理したうえで、町内の推定成約ADR(12か月平均¥20,000、N=6〜8施設)と桜期の季節性、定員150名という規模の読み方、そして国土交通省の地理空間データで確認した立地条件(用途地域・浸水想定・土砂災害・地価・駅距離)を順に検証する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格=主要予約サイトに公開されている販売価格の全プラン平均(2名1室利用時・1室あたり・税込)。本文で「掲載価格」と記す箇所は推定成約ADRとは別の水準であり、両者を混ぜて比較しない。
  • OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本稿のブッキングカーブは「稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)」で、OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • ブッキングカーブ・LT=チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数で、本稿はLT45〜LT1の範囲のみを用いる。
  • 施設数・客室数=主要予約サイト掲載ベース。メトロエンジンリサーチが追跡するうち、稼働が確認できる約27,000施設を分析対象としており、予約サイト未掲載の宿は含まれない。
  • データ出典=メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(価格・在庫)、国土交通省 不動産情報ライブラリ・国土数値情報(立地)、吉野町・奥村組公表資料(計画)。調査時点は2026年10月10日。
YOSHISHO 総定員
約150名
客室7タイプ・2027年4月プレオープン
吉野町 推定成約ADR
¥20,000
2025年10月〜2026年9月平均(N=6〜8施設)
既存校舎 延床
5,368㎡
敷地18,601㎡・1967〜68年RC造
初期投資(奥村組)
約27億円
町の住民説明会資料。地代257万円/年
町内の宿泊供給
14施設135室
直近3か月に価格観測(主要予約サイト掲載ベース)
Key Takeaways
  • — 事業方式は「建物無償・土地有償」の22年契約:校舎と屋内運動場は使用貸借(無償)、敷地全体に事業用定期借地権(2025年11月20日〜2047年11月)。提案賃料は年257万円で、町が求めた最低価格256.8万円とほぼ同額。改修費は事業者負担で、町側の支出は検査済証対応の0.84億円を上限とする。
  • — 町内単価は¥20,000で奈良市の約1.6倍:吉野町の推定成約ADRは12か月平均¥20,000(N=6〜8施設)、奈良市¥12,700(N=58〜61)、奈良県¥13,200(N=131〜136)。桜期の2026年4月は¥22,300で前年同月比+5.7%。
  • — 定員150名は町内供給の半分超に相当:直近3か月に販売価格を観測できる町内の宿は14施設135室(主要予約サイト掲載ベース)で、最大でも41室。2名利用換算で約270名の受け皿に対し、150名を一度に受ける規模の施設は主要予約サイト掲載ベースでは町内にない。
  • — 営業支出1.28億円を外部需要で賄う定員稼働は26%:1人泊あたり宿泊6,500円+飲食2,500円の基準ケースで年14,200人泊。奥村組の2024年提案は年間稼働率51.5%(2024年10月の提案時想定・通年)・利用者24,616人を想定し、4〜5月は100%、1〜2月は19%と季節差が大きい。
  • — 立地は市街化区域・準工業地域(建蔽60%・容積200%):吉野神宮駅から約350m、大和上市駅から約600m。想定最大規模の洪水浸水想定区域(紀の川水系、浸水深3.0〜5.0m未満)に含まれ、土砂災害警戒区域の外側。半径1.5km圏の居住人口は2020年2,171人から2040年に1,144人(−47.3%)へ減る推計で、外部需要を呼び込む設計が前提になる。

計画の事実整理 — 公募から開業までの年表と、確定している数字

まず、吉野町が公表している公募資料と奥村組の提案資料、2026年10月の開業発表から、確定している事実を整理する。旧吉野小学校は奈良県吉野郡吉野町大字上市2298(地番2152-1ほか)、吉野川の左岸に面した敷地18,601㎡で、校舎は1967年12月〜1968年6月に建った鉄筋コンクリート造の分棟型(普通教室棟3階2,130㎡、特別教室棟2階1,383㎡、管理棟576㎡、玄関棟188㎡、渡り廊下棟72㎡、屋内運動場1,019㎡)である。延床は屋内運動場を含めて5,368㎡、耐震補強は1995年・1999年・2010年に実施済みだが、建築基準法第7条第5項の検査済証がないため、転用には同法第12条第5項に基づく調査報告が条件となった。

公募は2024年3月25日に公募型プロポーザルとして始まり、4月5日の事業者説明会には6事業者が参加したものの、7月12日の提案締切までに提出したのは奥村組奈良支店の1グループだった。選定委員会(委員長・阪南大学 櫻井靖久准教授ほか5名)は提案を180点満点中123.8点、価格点20点と評価し、2024年9月19日に優先交渉権者を決定している。講評は「周辺に競合する施設もなく」「既存施設を余すことなく使用する計画」「リーズナブルな価格設定での通年利用」を評価点に挙げた。

旧吉野小学校 跡地利活用事業の年表(2022年3月〜2047年11月)
時期出来事出典
2022年3月吉野町立吉野小学校が閉校。同月、町が「吉野小学校・吉野北小学校学校跡地利活用方針」を策定(民間提案による利活用、校舎は売却せず貸付)吉野町 住民説明会資料(2024年10月19日)
2023年3月28日第1回事業者選定委員会(募集要項・選定基準の審議)吉野町 審査講評
2024年3月25日公募型プロポーザル開始。4月5日の説明会に6事業者が参加、質問は2回で計49件吉野町 募集要項・経緯資料
2024年7月12日事業提案書の提出締切。提出は1グループ(奥村組奈良支店)吉野町 事業者選定結果
2024年9月25日優先交渉権者を公表。提案賃料は年257万円吉野町 事業者選定結果
2024年10月4日基本協定を締結(PFI法第15条第3項に準じて公表)吉野町「基本協定書の締結について」
2024年11月〜2025年11月建築基準法第12条第5項報告(遵法性調査)と用途変更の設計。町の負担は0.84億円を上限吉野町「今後の予定について」/奥村組 概要説明資料
2025年11月20日事業用定期借地権契約と建物使用貸借契約を締結(期間は2047年11月まで約22年)。以後、改修工事に着手奥村組 ニュースリリース(2025年11月21日)
2026年10月6日施設名「YOSHISHO」と開業時期を発表。総定員約150名・客室7タイプ、食堂「まるたキッチン」約70席、温浴「桶湯 -OKU-」、ギャラリー、講義室、家庭科室のシェアキッチン奥村組 プレスリリース(PR TIMES)/R.E.port
2027年4月/8月プレオープン/グランドオープン(施設・サービスは段階的に拡充)同上
2046年10月/2047年11月施設閉所(予定)/土地返還・契約満了(予定)。新築の温浴棟は解体して返還奥村組 概要説明資料(2024年10月19日)
出典:吉野町「旧吉野小学校学校跡地利活用事業」公表資料、株式会社奥村組 概要説明資料(2024年10月19日)・ニュースリリース(2025年11月21日)・プレスリリース(2026年10月6日)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

事業方式を整理すると、校舎と屋内運動場は民法上の使用貸借(無償)、グラウンドを含む敷地全体には借地借家法第23条の事業用定期借地権が設定され、地代は年257万円である。町が募集要項で示した最低価格は「民間施設を新築する場合」で年256.8万円(令和4年度)だったから、提案賃料はこれにほぼ沿う。初期投資は町の住民説明会資料に「奥村組 約27億円」と記され、延床5,368㎡(約1,624坪)で割ると坪166万円に相当する。ただしこの額には新築の温浴棟や外構、什器が含まれるため、既存校舎の改修単価としてそのまま読むことはできない。国土交通省の建築着工統計による2024年のホテル新築坪単価(全構造平均195万円)に近い水準の投資を、既存躯体を活かしながら行う案件といえる。

一方で、報道と公表資料から確定できないことも明記しておきたい。客室数そのもの(7タイプ・定員約150名のみ)、運営会社の名称(提案資料では奥村組の直接運営、一部業務委託)、改修工事の契約額、プレオープン時に開く機能の範囲は、2026年10月時点で公表されていない。本稿の試算はいずれも「定員150名」を起点にした仮定であり、客室数が判明した時点で読み替える必要がある。

吉野町の単価 — 12か月平均¥20,000、桜の4月は¥22,300

次に、YOSHISHOが参入する吉野町の価格水準を推定成約ADRで確認する。吉野町の推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月の12か月平均で¥20,000(N=6〜8施設)、同じ期間の奈良市は¥12,700(N=58〜61施設)、奈良県全体は¥13,200(N=131〜136施設)だった。吉野町が奈良市の約1.6倍という関係は、町内の供給が吉野山の旅館(夕朝食付が標準)に偏り、主要予約サイト掲載ベースではビジネスホテルがない構成を反映している。母数が1桁の町であることは、この数字の読み方そのものに影響する。月次の値は1施設の掲載変更で動きうるため、本稿では必ずNを併記し、個別月の上下よりも水準と季節のかたちを見る。吉野町を含む奈良県内の市町村別の単価分布と宿泊日数は、奈良のホテル単価、市町村別は吉野町2.0万円・奈良市1.3万円で全体像を整理している。

月別に見ると、確定月の最高は2025年12月の¥23,900(N=8)、最低は2026年6月の¥15,200(N=8)で、振れ幅は約1.6倍にとどまる。桜の4月は2026年が¥22,300(N=8)、2025年が¥21,100(N=8)で前年同月比+5.7%と、確定月どうしの比較では着実に上がっている。紅葉と年末にあたる11〜12月も4月と並ぶ高さで、吉野山の需要が春だけに偏らないことが分かる。

吉野町 推定成約ADRの月別推移(年次重ね合わせ・2024年10月〜2027年3月)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(吉野町、N=5〜9施設/月。2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定で、点線で表示)
吉野町・奈良市・奈良県の推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月の平均と4月の前年同月比)
エリア12か月平均
(2025年10月〜2026年9月)
対象施設数 N2026年4月2025年4月4月の前年同月比
吉野町¥19,9916〜8¥22,282¥21,084+5.7%
奈良市¥12,72658〜61¥14,764¥14,610+1.1%
奈良県¥13,181131〜136¥14,807¥14,319+3.4%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR・税抜相当。前年同月比は確定月どうしの比較)

町のADRがエリア中央値であるのに対し、桜期の価格のかたちは施設ごとの掲載価格(全プラン平均・税込、推定成約ADRとは別の水準)でより鮮明に見える。直近3か月に販売価格を観測できた町内14施設のうち、2026年4月と9月の両方で掲載価格がある施設を並べると、吉野山の主な旅館は4月が9月の1.1〜1.4倍で、桜の1か月に年間の需要が集中する構造が確かめられる。

吉野町内13施設の掲載価格 — 2026年4月と9月の比較
施設(所在)客室数業態掲載価格 2026年4月掲載価格 2026年9月4月/9月
竹林院群芳園(吉野山)41室旅館¥99,266¥73,7561.35倍
芳雲館(吉野山)25室旅館¥71,279¥53,7231.33倍
吉野荘 湯川屋(吉野山)14室旅館¥78,633¥70,4241.12倍
美吉野 桜庵(吉野山)10室民宿¥31,888¥26,6441.20倍
吉野館(吉野山)10室旅館¥33,896¥25,9201.31倍
元湯 宮滝温泉 まつや(宮滝)8室旅館¥32,599¥37,1060.88倍
太鼓判 花夢花夢(吉野山)8室旅館¥32,320¥30,3711.06倍
吉野温泉元湯(吉野山)6室旅館¥43,560¥45,6730.95倍
民宿 楽(吉野山)4室民宿¥26,398¥20,3601.30倍
宿坊宝塔寺蓮(上市)4室ゲストハウス¥24,050¥23,6251.02倍
結ほんまち屋敷(上市)1室ゲストハウス¥19,710¥32,4960.61倍
時乃家 奈良吉野(丹治)1室一棟貸¥44,080¥52,5010.84倍
呉福(上市)1室一棟貸¥17,716¥18,2270.97倍
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載価格=全プラン平均・2名1室・税込。推定成約ADRとは異なる。客室数は登録値)

予約の進み方は、吉野町単独では固定母集団が小さすぎるため、奈良県の旅館カテゴリ(主要予約サイトに総客室の3割以上を掲載する施設で構成した固定母集団)でLT45〜LT1の推移を見る。GW初日の5月2日(対象26施設/686室)はLT45で64%、LT14で85%、LT1で90%、お盆の8月14日(45施設/1,006室)はLT45で61%からLT1で97%へ、通常の土曜である6月13日(40施設/964室)でもLT1には89%に達している。3連休初日の10月10日(46施設/1,088室)はLT45の時点で87%と、45日前にはすでに公開在庫の大半が消化されていた。奈良の旅館は「直前に埋まる」よりも「連休は1か月半前に決まり、通常週末は直前に伸びる」二段構えで、研修・合宿という平日需要を持つYOSHISHOにとっては、週末の観光需要と干渉しにくい余地があると読める。

奈良県・旅館カテゴリのブッキングカーブ(稼働率・OTA掲載在庫ベース推定、LT45→LT1)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(奈良県・旅館。対象施設数/客室数は凡例に記載、主要予約サイト掲載ベース。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値で施設全体の実稼働率とは異なる)

吉野山の施設単位では、芳雲館(25室)の2026年9月19日(3連休初日)宿泊分がLT45の公開残室17室からLT14で5室、LT5で0室へと段階的に消化され、10月10日分も14室から同じ形で埋まった。これに対し桜の4月11日(土)宿泊分は、観測できた範囲で公開残室が1室以下にとどまり、同じ週末の竹林院群芳園(41室)も最大7室であった。桜期の公開枠が小さい理由は、OTA以外のチャネル(公式サイト・旅行会社・団体)が中心である可能性、チェックインが近づくにつれ小出しに追加する在庫コントロールの可能性、アロットメント自体を少なく設定している可能性のいずれとも判別できないが、少なくとも桜の週末は主要予約サイトの公開在庫で取り切れない需要が町内に存在することは確かで、150名規模の受け皿が開く意味はここにある。

芳雲館(吉野山・25室)の公開残室推移 — 2026年9月19日・10月10日宿泊分(LT45→LT1)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(主要予約サイトの公開残室数・室ベース。観測のない日は直前の値で補間)

定員150名の読み方 — 団体・合宿・研修・教育旅行と、定員稼働×1人単価の3水準

YOSHISHOの「約150名」は、客室数ではなく定員で示されている点が既存の宿と異なる。町内で直近3か月に販売価格を観測できる14施設の総客室は135室で、最大の竹林院群芳園でも41室、2名利用で換算すれば町全体で約270名が一度に泊まれる計算になる。150名を1棟で受ける規模の施設は主要予約サイト掲載ベースでは町内になく、修学旅行や大学の合宿、企業研修のように「1団体で100名前後」を一度に動かす需要層に初めて門戸が開く。奥村組自身、2024年の提案資料で「毎年100名以上の新入社員」の研修先として自社利用を明記し、普通教室棟に約140名、受付棟に約20名の宿泊室を置く構成(当時の最大収容164名)を示していた。

同じ提案資料には単年度の収支想定も載っている。年間稼働率51.5%(2024年10月の提案時想定・通年)・利用者24,616人を前提に、宿泊部門の収益は室料3,428万円、飲食5,729万円、付帯施設1,374万円の計1億531万円、営業支出は1億2,801万円で、自社研修費の内部化(3,645万円)を加味した差額ベースでは年1,375万円のプラスとした。月別の想定稼働率は4月・5月が100%、7月が95.9%、6月が73.9%で、1月18.8%・2月18.9%・11月20.8%が底である。春は桜、5月と7月は新入社員研修の時期と重なり、閑散期を研修以外の需要でどう埋めるかが運営の伸びしろになる。

定員150名の売上シナリオ3水準と奥村組2024年提案の比較
水準定員稼働年間人泊宿泊単価/人泊飲食単価/人泊室料収入飲食収入合計
A(保守)35%19,162¥4,500¥2,00086.2百万円38.3百万円124.6百万円
B(基準)50%27,375¥6,500¥2,500177.9百万円68.4百万円246.4百万円
C(上振れ)60%32,850¥9,000¥3,000295.6百万円98.5百万円394.2百万円
参考:奥村組 2024年提案51.5%(年間稼働率)24,616人(利用者)部屋貸 6,000〜16,000円/室(企業・個人)34.3百万円57.3百万円105.3百万円(付帯含む)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(定員150名×365日。単価は税抜相当の仮定値)、株式会社奥村組 概要説明資料(2024年10月19日)

試算の前提は次のとおりである。定員150名×365日=54,750人泊を上限に、定員稼働を35%・50%・60%、1人泊あたりの宿泊単価を4,500円・6,500円・9,000円(素泊まり相当・税抜相当)、飲食単価を2,000円・2,500円・3,000円と置いた。宿泊単価の根拠は、町内の推定成約ADR¥20,000が2名1室の料金で1人あたり約¥10,000に相当すること、奥村組の提案した部屋貸料金(シングル型6,000円・ツイン型12,000円・ファミリー型16,000円、学生は3,600〜12,000円)を定員で割ると1人2,000〜4,000円(1名利用のシングル型で6,000円)になることの2点で、A〜Cはこの両端の間に置いている。飲食単価は提案資料の町民・一般価格(朝食750円・昼食750円・夕食1,000円)に喫茶とバーの利用を上乗せした。

この前提で、提案資料の営業支出1億2,801万円を外部需要の売上だけで賄うのに必要な定員稼働は、A水準で36%、B水準で26%、C水準で19%になる。すなわち、1人泊9,000円(宿泊6,500円+飲食2,500円)の基準ケースなら年14,223人泊、週平均で約274人泊を確保すれば自社研修に頼らずに営業支出をカバーできる。修学旅行1校(120名×2泊)で240人泊、大学の合宿1件(40名×3泊)で120人泊だから、月に修学旅行2〜3校と合宿5件程度が目安となる。なお、初期投資約27億円の回収は上記の営業収支とは別の論点で、奥村組は提案で「収益だけに依存しない継続性の高い事業」と位置づけている。自社研修費の内部化、防災拠点、地域交流という複合的な価値を一体で評価する設計であり、宿泊単体の利回りで読む案件ではない。

定員150名の売上シナリオ(室料+飲食、年間・百万円)と、営業支出1.28億円を賄う定員稼働
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(前提は本文のとおり。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要)

感度分析 — 定員稼働と1人泊あたり売上を別々に動かす

A〜Cの3水準は定員稼働と単価を同時に動かしているため、2つの軸を切り離した感度表も示す。縦軸は定員稼働(20〜60%)、横軸は1人泊あたりの売上(宿泊+飲食、6,500円=A水準、9,000円=B水準、12,000円=C水準)で、各マスは年間売上(百万円)である。25通りのうち、提案資料の営業支出1億2,801万円を上回るのは色を付けた19通りで、1人泊6,500円なら定員稼働40%(142.4百万円)から、12,000円なら20%(131.4百万円)から届く。定員稼働が10ポイント動くと1人泊9,000円の列で年49.3百万円、1人泊の売上が1,500円動くと定員稼働50%の行で年41.1百万円の差になり、団体の件数を積むことと、食事・体験を組み合わせて1人あたりの売上を上げることが、ほぼ同じ重さで効く構造である。

定員稼働×1人泊あたり売上の年間売上(百万円、室料+飲食。色付きは営業支出1億2,801万円以上)
定員稼働(年間人泊)1人泊 ¥6,500¥7,500¥9,000¥10,500¥12,000
20%(10,950人泊)71.282.198.6115.0131.4
30%(16,425人泊)106.8123.2147.8172.5197.1
40%(21,900人泊)142.4164.3197.1230.0262.8
50%(27,375人泊)177.9205.3246.4287.4328.5
60%(32,850人泊)213.5246.4295.7344.9394.2
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(定員150名×365日=54,750人泊。単価は税抜相当の仮定値。営業支出は株式会社奥村組 概要説明資料〔2024年10月19日〕の単年度想定)

既存 吉野山の旅館(2食付・1万円超/人)

町内の推定成約ADRは2名1室で約2万円。桜と紅葉の週末に需要が集中し、公開枠は早期に絞られる。

空白① 1人1万円未満の団体枠

100名規模を一度に受ける客室は町内にない。修学旅行・合宿・研修は平日主体で、週末の観光需要と干渉しにくい。

空白② 閑散期(1〜2月・11月)の平日

提案資料の想定稼働は19〜21%。ワーケーション、林業・製材の産業研修、災害訓練など、季節に依らない需要の積み上げ余地がある。

立地を地理空間データで確認する — 市街化区域・準工業地域、駅徒歩圏、浸水想定、地価

校舎の位置は、吉野町の公告に記された「大字上市2298」を国土地理院の地理院地図(住所検索)で照合し、北緯34.3923度・東経135.8511度を得た。この座標を国土交通省 不動産情報ライブラリの各レイヤーに当てて立地条件を確認したのが下表である。敷地は都市計画区域内の市街化区域にあり、用途地域は準工業地域(建蔽率60%・容積率200%)で防火地域の指定はない。準工業地域はホテル・旅館の立地が認められる用途地域で、町の募集要項の記載とも一致する。県立吉野川津風呂自然公園の普通地域に含まれるため、一定規模を超える工作物の新築・増築には県への届出が要り、奥村組は新設する温浴棟について「外観を大きく変えず、色彩や高さに配慮する」と提案している。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設位置・客室数は登録値)、国土交通省 国土数値情報(駅別乗降客数)
★ 旧吉野小学校(YOSHISHO予定地) 駅 近鉄吉野線の駅
1 竹林院群芳園(41室)
2 芳雲館(25室)
3 吉野荘 湯川屋(14室)
4 美吉野 桜庵(10室)
5 吉野館(10室)
6 元湯 宮滝温泉 まつや(8室)
7 太鼓判 花夢花夢(8室)
8 吉野温泉元湯(6室)
9 民宿 楽(4室)
10 宿坊宝塔寺蓮(4室)
11 宝塔寺(2室)
12 結ほんまち屋敷(1室)
13 時乃家 奈良吉野(1室)
14 呉福(1室)
旧吉野小学校敷地の立地条件(国土交通省の地理空間データによる確認結果)
項目確認結果読み方
区域区分都市計画区域内・市街化区域開発許可の手続は市街化調整区域より軽く、用途変更の確認申請が中心になる
用途地域準工業地域(建蔽率60%・容積率200%)、防火地域の指定なしホテル・旅館の立地可。敷地18,601㎡に対し既存延床5,368㎡で、容積率には余裕がある
自然公園県立吉野川津風呂自然公園 普通地域一定規模以上の工作物の新築・増改築は届出。温浴棟の新設が該当
洪水浸水想定(想定最大規模)紀の川水系の浸水想定区域内。浸水深ランク3(3.0m以上5.0m未満=2階部分が浸水)校舎は3階建て。提案資料は非常用発電機・防災井戸・備蓄を計画し、災害時は宿泊室を避難者に開放するとしている。避難計画は垂直避難を前提に県・町のハザードマップで再確認したい
土砂災害警戒区域敷地は区域外。最寄りの土石流警戒区域(飯貝)まで約80m敷地北側の山裾に警戒区域が連なる。グラウンド側(吉野川側)は離れている
液状化傾向(地形分類)谷底低地(傾斜1/100未満)・やや液状化しやすい既存躯体の転用で新たな杭工事は限定的だが、温浴棟の新築部分では地盤調査が要る
都市計画道路敷地東側に都市計画道路 吉野下市線(支線1)が接する桜期の渋滞対策と工事車両動線は提案資料でも論点。駐車場は旧プール跡に計画
最寄り駅(近鉄吉野線)吉野神宮駅 約350m、大和上市駅 約600m(直線距離)近鉄吉野線で大阪方面と直結。駅乗降客数は2023年で大和上市315人/日、吉野神宮264人/日
地価(公示・基準地)上市151番5(近隣商業)31,100円/㎡、丹治157番1外(準工業)16,800円/㎡、飯貝489番1(第一種住居)15,700円/㎡(いずれも2026年)5年間で毎年−3%前後。準工業・住宅地の水準で敷地18,601㎡を評価すると約3.1億円で、地代257万円/年はその0.8%にあたる
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(都市計画決定GIS、用途地域、洪水浸水想定区域〔国土数値情報A31a〕、土砂災害警戒区域〔A33〕、地形分類〔液状化傾向〕、地価公示・都道府県地価調査、駅別乗降客数〔S12〕)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。駅距離は座標からの直線距離
近鉄吉野線 2駅の1日平均乗降客数(2011〜2023年度)
出典:国土交通省 国土数値情報(駅別乗降客数データ)
吉野町の地価公示・基準地価(円/㎡、2021〜2026年)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示=1月1日時点、都道府県地価調査=前年7月1日時点)

駅の乗降客数は、2駅とも2011年度の年間平均(大和上市766人/日、吉野神宮677人/日)から2023年度には315人・264人へと半分以下になっている。鉄道利用の観光客は吉野駅(終点、ロープウェイ連絡)へ直行する比率が高く、上市・吉野神宮の2駅は生活利用が中心のためである。YOSHISHOにとって駅距離は「団体がバスで入る前提の立地にあって、個人客にも鉄道の選択肢がある」程度の位置づけで読むのが現実的だろう。地価は近隣商業地の上市151番5で2021年の36,400円/㎡から2026年に31,100円/㎡(5年で−14.6%)、準工業地域の基準地(丹治157番1外)は19,800円から16,800円(−15.2%)と、町全体で年3%前後の下落が続いている。建物を無償で借り、土地のみ地代を払う本件の方式は、地価の下落局面で事業者側の固定費を抑え、町側には維持管理費(令和4年度の実績は募集要項の資料4に記載)の削減をもたらす。

周辺の居住人口は、国土交通省の250mメッシュ将来推計人口で確認できる。校舎から半径1.5km圏の居住人口は2020年で2,171人、2025年推計1,881人、2040年推計1,144人(2020年比-47.3%)で、2025年時点の高齢者比率は52.3%にのぼる。半径3km圏に広げても7,299人から4,551人(-37.6%)、高齢者比率43.2%である。これは国勢調査に基づく居住人口であり、観光客や通勤者を含む滞在人口ではない。町の募集要項も人口を約6,280人(令和5年4月)、観光入込客数を年間110万人程度と記しており、この施設の需要は居住人口ではなく、町外から来る観光・研修・合宿の人の流れで組み立てる以外にない。町が募集要項で「観光客の利用を含めた検討」を求め、奥村組が「人がかよう」をコンセプトに置いたのは、この人口構造を前提にした判断といえる。

出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。居住人口(国勢調査ベース)であり滞在人口ではない
出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。色=2025年推計の高齢者比率、濃淡=人口規模

就業人口のデータ(総務省・経済産業省 経済センサス)では、半径1km圏に196事業所・従業者1,108人があり、オフィス系の比率は8.9%にとどまる。製材所や木材関連の事業所が多い吉野川沿いの産業集積で、奥村組が提案に掲げた「林業・製材業のHUB」という機能は、この就業構造に接続している。研修施設としての需要は社内に持ち、地域の産業と結ぶプログラムを外部に開く、という二層の設計である。

校舎を宿に変えるために要る手続き — 用途変更・旅館業許可・消防の要点

廃校を宿泊施設に転用する際の手続きは、本件の公募資料と提案資料が実務の順序をそのまま示している。第一に建築基準法である。学校からホテル・旅館への変更は用途変更にあたり、2019年6月の法改正後も200㎡を超える特殊建築物には確認申請が必要で、本件は普通教室棟だけで2,130㎡ある。さらに検査済証がない既存建築物のため、国土交通省のガイドライン(2014年7月)に沿った指定確認検査機関による法適合調査を行い、第12条第5項の報告を奈良県に提出することが募集要項の条件になった。奥村組はこの調査と用途変更設計に2024年11月から2025年11月までの1年を充て、町は0.84億円を上限に費用を負担している。公募を準備する自治体にとって、検査済証の有無と、それを誰の費用で補うかを募集要項の段階で決めておくことが、応募者を確保する前提条件になる。廃校を宿泊アセットに変える際の改修費と到達単価を全国の転用事例から3類型に分けた見取り図は、廃校ホテル転用投資マップ2026が示している。

廃校の宿泊転用に関わる法令・手続と本件での位置づけ
法令・手続本件での位置づけ一般的な要点
建築基準法(用途変更)学校→ホテル・旅館。検査済証がないため第12条第5項報告と法適合調査を先行(2024年11月〜2025年11月)200㎡超の特殊建築物は確認申請。耐火・排煙・非常用照明・内装制限は宿泊用途の基準で再適合
旅館業法奈良県(保健所)の旅館・ホテル営業許可。客室7タイプ・定員約150名2018年改正で旅館・ホテル営業に一本化し最低客室数の規制は撤廃。構造設備基準は都道府県条例
消防法消防法施行令別表第一(5)項イ(旅館・ホテル)として消防用設備を整備。消防同意を経て用途変更自動火災報知設備・誘導灯は面積にかかわらず必要。防火管理者の選任、避難経路の確保
公衆浴場法温浴棟「桶湯 -OKU-」を新築し、地域住民にも開放一般公衆浴場以外(その他の公衆浴場)として県の許可。水質・換気の基準は条例
食品衛生法食堂「まるたキッチン」約70席、朝昼夕の提供飲食店営業許可。シェアキッチン(家庭科室)の利用形態は保健所と事前協議
自然公園条例県立吉野川津風呂自然公園 普通地域の届出(温浴棟)一定規模以上の工作物の新築・増改築が対象。景観への配慮を求められる
大気汚染防止法(石綿)旧プールの解体でアスベスト建材の適切な撤去を計画2022年4月以降、一定規模の解体・改修は事前調査結果の報告が義務。1960年代校舎は対象になりやすい
上下水道上水は腐食のため再引込みが条件(口径75mmなら給水分担金559万円)、下水は公共下水道へ接続学校のインフラは宿泊用途の給湯・浴場負荷に合わないことが多く、初期費用に織り込む
出典:吉野町 募集要項(令和6年5月9日修正)、株式会社奥村組 概要説明資料(2024年10月19日)、関係法令よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。個別案件の適用は所管行政庁への事前相談が必要

第二に旅館業法と消防法である。2018年の法改正で旅館営業とホテル営業は「旅館・ホテル営業」に一本化され、最低客室数の規制もなくなったため、教室を仕切った多様な客室タイプを1つの許可で扱いやすくなった。消防法上は旅館・ホテルが(5)項イに分類され、自動火災報知設備と誘導灯は規模にかかわらず必要で、宿泊棟の避難経路は宿泊用途の基準で見直す必要がある場合が多い。第三に、本件に固有の論点として公衆浴場法(温浴棟)、食品衛生法(食堂・シェアキッチン)、自然公園条例(届出)、そして旧プール解体時の石綿対応がある。1960年代の校舎であれば石綿含有建材の事前調査は避けて通れず、改装前の石綿調査で整理した費用レンジを初期投資に織り込むことになる。

自治体・事業者・金融機関への示唆 — 吉野モデルから読み取れる設計要件

ここまでを整理すると、本件の設計には公民連携の案件として参照しやすい要素が4つある。第一に、建物は無償・土地は有償という切り分けで、町は維持管理費の負担から離れつつ地代と固定資産税相当の収入を得、事業者は改修費を自己負担する代わりに22年の事業期間を確保した。第二に、検査済証の欠如という既存校舎に共通する論点を、町が費用上限(0.84億円)を示して先に解いたこと。第三に、提案の評価軸が賃料(20点)より事業内容(180点)に置かれ、ドクターヘリの離着陸場や避難所機能の維持が条件化されていたこと。第四に、事業者が「収益だけに依存しない」ことを明示し、自社研修の内部化と防災拠点の価値を事業の基盤に組み込んだことである。

金融機関や地域ファンドの視点では、町内の推定成約ADR¥20,000(N=6〜8施設)が示すように、吉野町は奈良県内でも単価の高い市町村でありながら供給が小規模旅館に限られ、100名規模の団体を受ける施設が存在しなかった。定員150名の施設が1人1万円未満の価格帯で入ることは、既存旅館と価格帯が重ならず、桜期の超過需要と平日の研修需要を同時に取り込める構図を作る。一方、半径1.5km圏の居住人口が2040年に-47.3%となる推計と、想定最大規模で3〜5m未満の浸水深が示される立地は、需要を町外に求める設計と、垂直避難を前提にした防災計画を同時に要求する。本稿の試算では、1人泊9,000円の基準ケースで定員稼働26%が営業支出の目安であり、修学旅行・合宿・研修の予約を年間を通じて平準化できるかどうかが、2027年8月のグランドオープン以降の評価軸になるだろう。

よくある質問

Q. YOSHISHOはいつ開業し、どのような施設ですか?

奥村組の発表(2026年10月6日)では、2027年4月にプレオープン、2027年8月にグランドオープンの予定です。旧吉野小学校(2022年3月閉校)を改修し、総定員約150名・客室7タイプの宿泊室、約70席の食堂「まるたキッチン」、桶をテーマにした温浴施設「桶湯 -OKU-」、ギャラリー、多目的講義室、家庭科室を活用したシェアキッチン、ラウンジ・ジム・ランドリーを備えます。中央の広場を回廊「YOSHISHOリング」でつなぐ構成です。

Q. 事業方式と契約期間はどうなっていますか?

校舎と屋内運動場は建物使用貸借(無償)、敷地全体は事業用定期借地権(有償)で、2025年11月20日の契約から2047年11月までの約22年間です。地代は年257万円で、改修費は事業者負担、町は検査済証の取得対応に0.84億円を上限に支出します。初期投資は町の住民説明会資料で約27億円とされています。

Q. 吉野町のホテル・旅館の単価はどの程度ですか?

メトロエンジンリサーチの推定成約ADRは、2025年10月〜2026年9月の12か月平均で吉野町が¥20,000(N=6〜8施設)、奈良市が¥12,700、奈良県が¥13,200です。桜期の2026年4月は吉野町¥22,300で、前年同月比+5.7%でした。町内は吉野山の旅館が中心で母数が1桁のため、月次の値は施設数を併記して読む必要があります。

Q. 廃校を宿泊施設に転用する場合、どの手続きが必要ですか?

建築基準法の用途変更(200㎡超の特殊建築物は確認申請。検査済証がなければ第12条第5項の報告と法適合調査)、旅館業法の旅館・ホテル営業許可、消防法の消防用設備(旅館・ホテルは自動火災報知設備・誘導灯が必須)と消防同意が中心です。本件ではこれに公衆浴場法(温浴棟)、食品衛生法(食堂)、自然公園条例の届出、旧プール解体時の石綿対応が加わります。

Q. 立地の災害リスクはどう確認すればよいですか?

国土交通省 不動産情報ライブラリで座標を当てると、本件敷地は紀の川水系の想定最大規模の洪水浸水想定区域内(浸水深3.0m以上5.0m未満のランク)で、土砂災害警戒区域の外側、地形分類は谷底低地(やや液状化しやすい)です。校舎は3階建てで、提案資料は非常用発電機・防災井戸・備蓄を備えた避難所機能を計画しています。最終的には奈良県・吉野町のハザードマップと地域防災計画で確認してください。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10月以降の推定成約ADRは、調査時点(2026年10月10日)で主要予約サイトに公開されている販売価格から推定した水準であり、チェックイン日に近づくにつれて変動する。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下落する可能性に留意されたい。確定月と先行月をまたいだ前年同月比は本稿では示していない。定員150名の売上シナリオは前提を明示した簡易試算であり、客室数・運営形態が公表された時点で読み替える必要がある。実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要である。

参考資料・出典一覧

■ データソース

価格・在庫はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングが主要予約サイトの公開情報から集計した(推定成約ADR:吉野町N=6〜8施設、奈良市N=58〜61施設、奈良県N=131〜136施設、2025年10月〜2026年9月。ブッキングカーブ:奈良県・旅館の固定母集団26〜46施設、LT45〜LT1)。計画の事実は吉野町の公募資料と奥村組の公表資料、立地条件は国土交通省 不動産情報ライブラリ・国土数値情報による。調査時点は2026年10月10日。

■ 試算前提

定員150名×365日=54,750人泊を上限に、定員稼働35%・50%・60%、1人泊あたりの宿泊単価4,500円・6,500円・9,000円、飲食単価2,000円・2,500円・3,000円(いずれも税抜相当の仮定値)を置いた。必要な定員稼働は、奥村組の2024年提案資料に記載された営業支出1億2,801万円を室料と飲食の売上で割り戻した値である。感度表は定員稼働20〜60%と1人泊あたり売上6,500〜12,000円の25通り。

■ 限界・留意点

客室数・運営形態・料金体系は2026年10月時点で公表されておらず、試算は定員を起点にした簡易計算である。初期投資の回収、減価償却、付帯施設の収入、自社研修による内部利用は含めていない。吉野町の推定成約ADRは対象が1桁の施設数で、1施設の掲載変更で月次の値が動きうる。推定成約ADRとブッキングカーブはいずれも推定値で、各施設の実績とは異なる。浸水想定・地価・将来推計人口は調査時点の公表データに基づく。

■ 計画の一次資料

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(吉野町N=5〜9施設、奈良市N=50〜63施設、奈良県N=94〜142施設/月)、掲載価格、ブッキングカーブ(奈良県・旅館、固定母集団26〜46施設)、施設別公開残室、町内の登録施設(32施設328室、うち直近3か月に価格観測14施設135室)

■ 政府統計・公的データ

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