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洞爺湖温泉に全室露天の61室が2027年12月 — 19軒1,419室の棚卸しと推定ADR1.4万円の単価余地

投稿日 : 2026.10.16

北海道

投資・開発

洞爺湖温泉に全室露天の61室が2027年12月 — 19軒1,419室の棚卸しと推定ADR1.4万円の単価余地

北海道・洞爺湖温泉に、全61室すべてに露天風呂とテラスを備えた「別邸 蝦夷富士」が2027年12月に開業する計画が2026年6月に公表された。運営はベルーナ子会社のグランベル北海道で、ベルーナが2023年に取得した「ザ・レイクスイート湖の栖」「洞爺サンパレス リゾート&スパ」に隣接する用地での新築だ。洞爺湖温泉の湖畔2km圏を1軒ずつ棚卸しすると、直近3か月に販売の観測がある現役施設は19軒・1,419室で、61室はその4.3%に当たる。本稿では、この温泉街が大型旅館・ホテルを中心に組み上がっている構造の中で、少室・全室露天型の新規供給がどこに位置づくのかを、客室ストック・推定成約ADRの季節性・推定稼働率・火山ハザード・地価の5つの観点から検証する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。推定成約ADRが算出できるのはビジネス・シティ・リゾート・旅館・カプセルの検証済み業態のみで、ゲストハウス・貸別荘等は掲載価格のみを示す。
  • 掲載価格(全プラン平均):2名1室利用時の1室あたり料金(税込)で、素泊まりから2食付きまで全プランの平均。ADRとは別の指標である。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。
  • ブッキングカーブ/LT:ブッキングカーブ=チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックインまでの日数。本稿のカーブはLT45→1の範囲のみを用いる。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(メトロエンジンリサーチが追跡するうち、稼働が確認できる約27,000施設の公開データを集計)
2km圏 現役施設
19軒
棚卸し後・1,419室
新規供給
+61室
現役ストック比 +4.3%
洞爺湖町 推定ADR
¥13,747
2025年10月〜2026年9月平均・N=13〜15
登別市 推定ADR
¥18,819
同期間平均・N=14〜15
洞爺湖町 推定OCC
92.8%
2026年9月・12施設573室
温泉街の地価
¥30,000
/㎡・登別温泉の約4割
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/国土交通省 不動産情報ライブラリ(2025年地価)
Key Takeaways
  • — 19軒・1,419室 — 洞爺湖温泉2km圏を1軒ずつ棚卸しした現役ストック。別邸 蝦夷富士の61室は+4.3%で、200室超の3館が55%を占める大箱中心の温泉街に入る。
  • — 「20〜80室×推定ADR5万円超」は空白 — 2km圏の上位は湖の栖(¥45,700)・乃の風(¥39,700)。全室露天の61室はその上に積む価格帯を狙う供給と読める。
  • — 推定ADR¥13,747(洞爺湖町・2025年10月〜2026年9月平均、N=13〜15)— 8月¥15,700が山・3月¥11,900が谷で1.32倍。登別市の¥18,819より低く、冬に山がある登別とは季節の形が異なる。
  • — 地価¥30,000/㎡(2025年地価調査)— 登別温泉の42%・定山渓西3丁目の71%。1室あたり土地コストは300万〜450万円で、1室1億円前後の建物投資に比べ小さい。
  • — GOP利回り6.0%(坪250万円・推定ADR8万円・稼働率の前提65%の参考試算)— 採算の分岐は既存最上位帯を超える単価の通年維持。有珠山の火山災害警戒地域として避難確保計画を事業計画に織り込む。

計画の事実関係 — 壮瞥町側の湖畔に61室、既存2館の隣地で2026年4月着工

まずは公表されている事実を整理する。トラベルボイス(2026年6月9日)とネットショップ担当者フォーラム(同6月11日)の報道によれば、「別邸 蝦夷富士」は全61室、最大104㎡超のスイートを含み、全客室に露天風呂と広いテラスを備える。工期は2026年4月から2027年12月下旬までで、開業は2027年12月の予定だ。隣接する「ザ・レイクスイート湖の栖」(80室)と「洞爺サンパレス リゾート&スパ」(324室)は工事中も営業を続ける。名称の「蝦夷富士」は羊蹄山の愛称で、湖と山を望む立地を打ち出している。

ここで押さえておきたいのは行政区の位置である。洞爺湖温泉の温泉街は一般に洞爺湖町として語られるが、国土地理院の地図で既存2館の座標を照合すると、湖の栖とサンパレスはいずれも壮瞥町字洞爺湖温泉に属する(温泉街の中心部、万世閣・湖畔亭・乃の風などの並びは洞爺湖町洞爺湖温泉)。隣地に建つ別邸 蝦夷富士も壮瞥町側に位置する公算が大きく、地価・条例・火山防災の確認先は壮瞥町になる点に留意したい。本稿の棚卸しは行政区をまたいで温泉街の2km圏を一体として扱い、表では施設ごとに町名を併記する。

事業主体の足元も、同社の一次資料で確認しておく。ベルーナの2026年3月期第3四半期決算短信(2026年1月30日)によると、ホテルを含むプロパティ事業の4〜12月累計は売上高37,042百万円(前年同期比+40.6%)、セグメント利益6,482百万円(同+56.5%)で、利益には販売用不動産の売却益1,042百万円が含まれる。売上高に対するセグメント利益の比率は17.5%(売却益を除くと14.7%、いずれも当社計算)になる。同短信は国内リゾート型ホテルについて「すべてのホテルで売上が伸長」し、2025年9月に取得した秋保温泉2館の上乗せ効果もあって増収増益だったと説明している。さらに2025年11月28日の中間期決算説明資料では、国内リゾート型ホテルの客室単価が2024年度通期で37.9千円・稼働率60.7%(2024年4月〜2025年3月の通期)、2025年度第2四半期で43.7千円・67.5%と示され、今後の構想として「ザ・レイクスイート湖の栖アネックス棟の新設」が挙げられていた。別邸 蝦夷富士はこの構想が具体化したものと読める。

別邸 蝦夷富士の計画概要と事業主体の開示指標
項目内容出典
名称/運営別邸 蝦夷富士/グランベル北海道(ベルーナ子会社)トラベルボイス 2026-06-09
客室全61室、最大104㎡超のスイートを含む。全室に露天風呂とテラス同上、ネットショップ担当者フォーラム 2026-06-11
工期/開業2026年4月〜2027年12月下旬/2027年12月開業予定同上
隣接施設ザ・レイクスイート湖の栖(80室)、洞爺サンパレス リゾート&スパ(324室)— 工事中も営業同上
行政区既存2館の座標は壮瞥町字洞爺湖温泉(国土地理院 地図で照合)国土地理院
事業セグメントプロパティ事業 4〜12月累計 売上高37,042百万円(+40.6%)、セグメント利益6,482百万円(+56.5%)ベルーナ 2026年3月期 第3四半期決算短信
国内リゾート型の運営指標客室単価 2024年度通期37.9千円・稼働率60.7%(2024年4月〜2025年3月)/2025年度2Q 43.7千円・67.5%ベルーナ 中間期決算説明資料(2025-11-28)
投資額・客室単価の想定は公表されていない。

2km圏の棚卸し — 現役は19軒1,419室、200室超の3館で55%

供給の全体像を年次でさかのぼると、洞爺湖温泉の2km圏は2012年の16軒1,329室から2019年に19軒1,556室へ増え、2023年以降は25軒1,586室で横ばいに見える。ただし、この系列は開業日と閉館日のマスターをもとに各年末時点の施設を数えたもので、販売実態とは別に動く。そこで本稿では、半径2km内にマスター登録された33件を1件ずつ確認し、直近3か月(2026年7月10日以降の宿泊日)に価格の観測がある施設を現役とみなし、複数名義で登録されている同一施設は1件に統合した。結果は19軒・1,419室で、内訳は洞爺湖町側が17軒1,015室、壮瞥町側(湖の栖・サンパレス)が2軒404室である。61室が加わると1,480室となり、増加率は4.3%だ。

構造を規模帯で見ると、100室以上の5館が1,072室と全体の76%を占め、30〜99室の5館が283室(20%)、30室未満の9軒が64室(5%)と続く。つまり温泉街の客室はサンパレス324室・万世閣246室・湖畔亭205室の200室超3館(計775室・55%)に集中し、湖畔の景観を共有しながら団体・ファミリーを広く受け止める大箱の街として成立してきた。一方で、2019年開業の湖の栖80室は推定ADR¥45,700(12ヶ月平均)、湖畔の東側にある壮瞥温泉の洞爺湖鶴雅リゾート洸の謌(2023年開業・48室、2km圏外)は¥44,200と、少室で単価の高い層がこの数年で立ち上がっている。別邸 蝦夷富士の61室は、この「少室・高単価」の層を厚くする供給と位置づけられる。

事業者の側から見ると、既存2館(404室)と合わせたベルーナ系の客室は465室となり、棚卸し後の2km圏1,480室の31%に相当する。大箱のサンパレスで集客の幅を確保し、湖の栖と別邸で単価を取る3層構成は、同じ湖畔の一画で客層ごとに商品を分ける設計といえる。

洞爺湖温泉 2km圏の客室ストック推移(各年末時点・マスター集計)と棚卸し後の現役ストック
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(開業日・閉館日マスターに基づく各年末時点の集計。2026年の棚卸し値は直近3か月に販売観測のある19施設)
洞爺湖温泉2km圏の現役19軒(客室数・業態・推定ADR)
施設町客室業態掲載価格(全プラン平均)推定ADR(12ヶ月平均)
洞爺サンパレス リゾート&スパ壮瞥町324リゾートホテル—¥16,191
洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス洞爺湖町246リゾートホテル—¥23,733
絶景の湯宿 洞爺 湖畔亭洞爺湖町205旅館—¥18,061
ザ レイクビューTOYA 乃の風リゾート洞爺湖町166リゾートホテル—¥39,695
洞爺観光ホテル洞爺湖町131旅館—¥14,452
ザ・レイクスイート湖の栖壮瞥町80リゾートホテル—¥45,671
洞爺温泉ホテル華美洞爺湖町76旅館—¥13,872
ゆとりろ洞爺湖洞爺湖町58旅館—¥12,542
ホテルグランドトーヤ洞爺湖町39旅館—¥10,000
洞爺湖温泉 北海ホテル洞爺湖町30旅館—¥10,545
源泉の湯宿 洞爺 ごきらく亭洞爺湖町22旅館——
グランヴィレッヂ洞爺 大和旅館アネックス洞爺湖町17旅館—¥7,510
プチホテル恋泉洞爺湖町8ペンション—¥9,564
TOYA Center Village洞爺湖町6その他宿泊——
Guest House HIDE洞爺湖町4ゲストハウス——
THE TOYA洞爺湖町3ゲストハウス——
湖湖洞爺湖町2ゲストハウス——
トヤホーム 廻廊洞爺湖町1貸別荘・一棟貸——
湖畔の宿湖嶋洞爺湖町1貸別荘・一棟貸——
2km圏 合計1,41919軒
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。掲載価格は2026年7〜12月宿泊分の全プラン平均(2名1室・税込)、推定ADRは2025年10月〜2026年9月の月次推定成約ADRの単純平均(12ヶ月そろう施設のみ表示、税抜相当)。N=19施設。

参考までに、2km圏の外側にある壮瞥温泉側の湖畔にも現役の宿が7軒109室ある。中心は洞爺湖鶴雅リゾート洸の謌48室で、その他は33室以下の小規模施設だ。洞爺湖の湖畔全体では、温泉街の大箱と、東側に点在する少室の高単価宿という二層が既に見えている。

壮瞥温泉側(2km圏外)の現役7軒
施設(壮瞥温泉側・2km圏外)町客室業態掲載価格(全プラン平均)推定ADR(12ヶ月平均)
洞爺湖鶴雅リゾート洸の謌壮瞥町48リゾートホテル¥113,265¥44,202
Hotel Sol at Lake Toya壮瞥町33ペンション・小規模ホテル¥25,662—
ペンションおおの壮瞥町11ペンション¥27,102—
温泉旅館 いこい荘壮瞥町10旅館¥19,144—
ATTA Toya – Lake Resort壮瞥町3その他宿泊¥35,812—
ちゃいはな庵壮瞥町3ゲストハウス¥33,480—
洞爺湖別邸 進木庵壮瞥町1貸別荘・一棟貸¥102,202—
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。中心座標(42.553, 140.848)から3km圏で抽出し、直近3か月に販売観測のある施設のみ。N=7施設。

ポジショニング — 大型旅館は推定ADR1.4〜2.4万円、少室型の4万円台の上に空白帯

客室数と推定成約ADRを散布すると、温泉街の構造は二つの塊に分かれる。横軸の右側、100室以上の大型5館のうち4館は推定ADR¥14,500〜¥23,700の帯に並び、乃の風リゾート(166室)だけが¥39,700と上に抜ける。左側の30〜80室帯では、湖の栖(80室)が¥45,700で頭一つ高く、30〜76室の旅館4館は1.0万〜1.4万円台に集まる。壮瞥温泉の鶴雅リゾート洸の謌(48室)は¥44,200で湖の栖と同じ層にいる。

この図で空いているのは「20〜80室 × 推定ADR5万円超」の領域である。現時点でこの帯に入る施設は2km圏に存在しない。別邸 蝦夷富士は61室・全室露天という仕様から、湖の栖の上に積む価格帯を狙う供給と読むのが自然だろう。全室露天風呂付きという商品は、当社が792軒の同一施設比較で測った上乗せが1泊約1万円(+23%)であり(露天風呂付客室の上乗せ分析)、既存の最上位帯に対して「露天付きプレミアム」をそのまま上乗せすれば、5万円台後半から6万円台の推定成約水準が視野に入る。湖の栖の2026年8月の推定ADRは¥57,900、鶴雅リゾート洸の謌は¥49,700で、繁忙月には既存の少室型でも5万〜6万円の水準が成立している。

客室規模 × 推定成約ADR ポジショニングマップ(2km圏の検証済み業態12施設+壮瞥温泉1施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定ADRは2025年10月〜2026年9月の12ヶ月平均・税抜相当、N=13施設)。青破線の枠=現在空白の「少室×高単価」帯。

密集 大型旅館・ホテル帯

131〜324室 × 推定ADR1.4〜2.4万円
4館906室(乃の風を除く)。団体・ファミリー・インバウンドの受け皿で、繁忙期の稼働は高い。

WS① 少室 × 5万円超

20〜80室 × 推定ADR5万円超
2km圏に該当施設なし。全室露天型の61室が入る帯。

既存上位 湖の栖・鶴雅の層

48〜80室 × 4.4〜4.6万円
2019年・2023年開業の2館が形成。繁忙月は5万〜6万円に達する。

季節性 — 洞爺湖町の推定ADRは8月¥15,700が山、3月¥11,900が谷

通年の需要の厚さは単価の季節パターンに表れる。洞爺湖町の推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月の平均で¥13,700(N=13〜15施設)で、月次では2026年8月の¥15,700が山、3月の¥11,900が谷となり、山と谷の比は1.32倍である。比較対象の登別市は同期間平均¥18,800(N=14〜15)で、1月の¥23,200が最も高く、冬に山がある点で洞爺湖と季節の形が異なる。洞爺湖温泉は4月下旬から10月末まで毎晩打ち上がるロングラン花火など夏場の集客装置を持つ一方、登別は冬のインバウンド需要が単価を押し上げている構図だ。

北海道全体の業態別と並べると、リゾートホテルの推定ADRは12ヶ月平均¥16,700、旅館は¥9,700であり、洞爺湖町の¥13,700は道内旅館の水準を上回り、リゾートホテルの水準には届かない位置にある。言い換えれば、温泉街全体の単価は大型旅館の価格帯に引っ張られて中位にあり、少室型が上に抜けるほど、町全体の中央値も上方に動く余地がある。壮瞥町の系列はN=4〜6と施設数が少なく、2025年10月〜2026年1月に3万円台を示す月があるが、集計対象の入れ替わりで振れやすいため参考値にとどめる。

推定成約ADRの月次推移(1〜12月重ね描き)— 洞爺湖町・登別市・北海道業態別
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR・税抜相当。洞爺湖町N=13〜15、登別市N=14〜15、北海道旅館N=241〜297、北海道リゾートN=126〜147。確定月のみ)
推定成約ADRの月次推移(洞爺湖町・登別市・壮瞥町・北海道業態別)
月洞爺湖町N登別市N壮瞥町(参考)N北海道リゾート北海道旅館
2025年10月¥12,34413¥19,60515¥30,2164¥14,064¥9,196
2025年11月¥13,56613¥18,57214¥28,2074¥15,438¥9,419
2025年12月¥14,56213¥20,75414¥31,1704¥18,585¥10,574
2026年1月¥14,10013¥23,24215¥32,6144¥19,096¥10,760
2026年2月¥13,75514¥20,01215¥14,5045¥19,026¥10,023
2026年3月¥11,90215¥17,93315¥13,9925¥16,014¥8,631
2026年4月¥12,24715¥17,14015¥13,2926¥14,612¥8,775
2026年5月¥14,57115¥16,97715¥14,1486¥14,752¥9,292
2026年6月¥14,30815¥17,09215¥14,5266¥15,153¥8,964
2026年7月¥14,41915¥17,71315¥15,6946¥18,064¥9,778
2026年8月¥15,72115¥19,09615¥17,1556¥19,240¥10,862
2026年9月¥13,47015¥17,69015¥13,9666¥16,198¥9,764
12ヶ月平均¥13,74713〜15¥18,81914〜15—4〜6¥16,687¥9,670
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。推定成約ADR(税抜相当)、確定月のみ。2026年10月以降は掲載スナップショットに基づく暫定値のため掲載していない。

推定稼働率 — 洞爺湖町は9月平均92.8%、LT45から当日まで残室が一貫して減る

単価の季節性に対して、在庫の消化はどうか。洞爺湖町のOTA掲載在庫ベースの推定稼働率は、2026年7月が94.6%、8月が95.1%、9月が92.8%だった(対象12施設/客室573室、主要予約サイト掲載ベース)。北海道全体の同月は、リゾートホテルが85.7%(84施設/9,065室)、旅館が88.1%(164施設/7,210室)であり、洞爺湖町は道内の業態平均を上回る水準で9月を終えている。

9月のブッキングカーブをLT45から当日直前まで追うと、洞爺湖町はLT45時点で77.0%、LT30で81.8%、LT14で85.5%、LT1で92.8%と段階的に積み上がる。北海道のリゾートホテルは同じ区間で68.6%→85.7%、旅館は69.5%→88.1%であり、洞爺湖町は出発点が高く、直前の伸び幅が相対的に小さい。早い段階で在庫が埋まる市場は、少室・高単価型にとっては直前値下げに頼らず単価を維持しやすい環境を意味する。なお、ここでの総客室数573室は主要予約サイトに掲載された在庫枠の合計であり、棚卸しの1,419室(施設の総客室数)とは定義が異なる。

2026年9月 ブッキングカーブ(LT45→1・月間平均の推定稼働率)— 洞爺湖町 vs 北海道リゾート/旅館
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(洞爺湖町 12施設/573室、北海道リゾート 93施設/9,733室、北海道旅館 174施設/7,311室。いずれも主要予約サイト掲載ベース。LT45超の点は使用していない)
洞爺湖町と北海道の推定OCC(2026年8月・9月)
月(2026年)洞爺湖町 推定OCC対象施設/客室北海道リゾート北海道旅館北海道 全業態
8月95.1%11/57286.6%86.4%89.6%
9月92.8%12/57385.7%88.1%90.3%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(主要予約サイト掲載ベースの推定値。北海道は8月 リゾート86施設/旅館165施設/全業態671施設、9月 リゾート84施設/旅館164施設/全業態679施設)

立地マップ — 温泉街の並びと壮瞥町境、2km圏の現役19軒

地図上では、温泉街が湖の南岸に沿って東西に約3km延びる帯状の構造になっていることが分かる。円の大きさは客室数で、中心座標(42.566, 140.818)は洞爺湖町洞爺湖温泉の温泉街中心部に置いた。東端の湖の栖・サンパレスは壮瞥町に入り、その先の壮瞥温泉側に鶴雅リゾート洸の謌などの少室型が点在する。別邸 蝦夷富士の計画地は湖の栖・サンパレスの隣地と報じられており、地図ではこの2館の位置が目安になる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設座標・客室数)。濃青=2km圏の現役19軒、薄青=壮瞥温泉側(参考・7軒)。

火山ハザード — 有珠山は噴火警戒レベル1、2000年噴火で温泉街の裏山に火口が開いた活火山

投資判断の前提として、この温泉街が活火山の麓にあるという事実を淡々と記しておく。有珠山は気象庁の常時観測火山で、2026年10月8日時点の噴火予報は「噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)」である。噴火の記録は1663年、1769年、1822年、1853年、1910年、1943〜45年(昭和新山の生成)、1977年、2000年と続き、概ね数十年おきに活動してきた。直近の2000年噴火は3月31日に西山西麓で始まり、4月1日には洞爺湖温泉街の南側に位置する金比羅山中腹でも火口が開いた。熱泥流が温泉街の一部に達し、公営浴場や団地が被災したが、噴火前に1万人を超える住民が避難しており人的被害はなかった。被災した施設の一部は「金比羅火口災害遺構散策路」として保存・公開され、火山と共存する温泉地の学習資源にもなっている。

制度面では、活動火山対策特別措置法に基づく火山災害警戒地域として、有珠山は伊達市・壮瞥町・洞爺湖町の3市町が指定されている(2016年2月22日 内閣府告示第14号)。同法は第6条で、警戒地域内の市町村が地域防災計画に火口周辺や不特定多数の利用する施設を「避難促進施設」として定めることとし、第8条で、定められた施設に避難確保計画の作成・公表、計画に基づく訓練、市町村長への報告を義務づけている。内閣府の避難確保計画作成支援事業では、令和2年度に有珠山(洞爺湖町)の要配慮者利用施設を対象に計画づくりが行われた実績があり、宿泊施設については栗駒山・富士山・口永良部島などで支援事例がある。2000年噴火の際には当時の虻田町と洞爺湖温泉観光協会が宿泊施設向けの指針をまとめ、各部屋へのヘルメット・防じんマスク・避難マップの常備、各館の「有珠山噴火緊急避難誘導要領」の町への提出を求めた経緯もある。

新規開発にとって、これらは参入を妨げる要因というより、計画段階で織り込むべき運営要件である。具体的には、(1) 計画地が壮瞥町・洞爺湖町のどちらの地域防災計画に属し、避難促進施設の指定対象となるか、(2) 火山防災マップ上で計画地が想定火口範囲・噴石・泥流の影響想定区域にどう重なるか、(3) 避難確保計画の作成と年次訓練、客室備品(ヘルメット・マスク・多言語の避難マップ)の整備コスト、(4) 噴火警戒レベル引き上げ時の営業停止と予約キャンセルに備えた資金繰りと保険、の4点を事業計画に明記しておくことが望ましい。宿泊施設の建築制限を条例で定める自治体の整理は災害危険区域と宿の建築制限で、国立公園内(洞爺湖は支笏洞爺国立公園)の許可基準は自然公園法の許可基準と供給実測で扱っている。

有珠山の火山ハザードと制度上の確認項目
確認項目現状出典
噴火警戒レベルレベル1(活火山であることに留意)、常時観測火山。火山活動解説資料(2026年9月分)は10月8日発表気象庁
噴火史1663・1769・1822・1853・1910・1943〜45・1977・2000年気象庁
2000年噴火3月31日 西山西麓で噴火開始、4月1日 金比羅山中腹に火口。熱泥流で温泉街の公営浴場・団地が被災、事前避難により人的被害なし内閣府 有珠山噴火記録
火山災害警戒地域伊達市・壮瞥町・洞爺湖町(2016年2月22日 内閣府告示第14号)内閣府
避難促進施設の義務避難確保計画の作成・公表、訓練の実施、市町村長への報告(活火山法第8条)内閣府
宿泊施設向け指針(2000年)各部屋にヘルメット・防じんマスク・避難マップを常備、避難誘導要領を町へ提出内閣府 有珠山噴火記録(虻田町・洞爺湖温泉観光協会)
出典:気象庁「有珠山」、内閣府「火山災害警戒地域」告示資料、内閣府 有珠山2000年噴火 記録データベース。

地価と1室あたり土地コスト — 温泉街は¥30,000/㎡、登別温泉の4割・定山渓の7割

土地の取得コストは少室型の採算を左右する。国土交通省の不動産情報ライブラリで温泉街の標準地を引くと、洞爺湖温泉44番1(洞爺湖町・商業地域、容積率400%)の2025年都道府県地価調査は¥30,000/㎡(前年比−0.7%)で、2024年の¥30,200/㎡からほぼ横ばいである。登別温泉町76番4(登別市・商業地域、容積率600%)の2025年地価公示は¥71,200/㎡(0.0%)、定山渓温泉西3丁目(札幌市南区・商業地域)の地価調査は¥42,200/㎡(+8.2%)だった。洞爺湖温泉の地価は登別温泉の42%、定山渓西3丁目の71%にとどまり、道内の主要温泉地の中では土地を安く確保しやすい立地だといえる。地価の差と宿泊単価の差がリゾート地でどう結び付くかは、軽井沢の宿泊単価は御代田の3.1倍・地価は3.3倍が同じ視点で比較している。

全室露天風呂・テラス付きという商品は、客室の平面が大きく、低層で敷地を広く使う傾向がある。仮に1室あたりの敷地面積を100㎡と150㎡の2通りで置くと、1室あたりの土地コストは洞爺湖温泉で300万円〜450万円、登別温泉で712万円〜1,068万円、定山渓西3丁目で422万円〜633万円になる。推定ADR5万円台を想定する少室型にとって、1室あたり数百万円の土地コスト差は建物投資(後述の試算で1室1億円前後)に比べれば小さく、土地の安さよりも「客室に露天を置ける湖畔の眺望」を確保できるかどうかが立地の価値を決める。

温泉街の地価(2025年)と1室あたり土地コスト試算(敷地100㎡/150㎡・室)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・都道府県地価調査)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。1室あたり土地コストは当社の仮定計算。
温泉街の標準地価格(2025年)
標準地種別(基準日)価格(円/㎡)前年比用途地域(容積率/建蔽率)周辺の状況
洞爺湖温泉44番1(洞爺湖町)都道府県地価調査(2025年7月1日)30,000-0.7%商業地域(400% / 80%)土産店舗、ホテル等が建ち並ぶ温泉街の商業地域
登別温泉町76番4(登別市)地価公示(2025年1月1日)71,200+0.0%商業地域(600% / 80%)ホテル、土産店等が建ち並ぶ温泉街の商業地域
定山渓温泉西3丁目13番外(札幌市南区)都道府県地価調査(2025年7月1日)42,200+8.2%商業地域(400% / 80%)ホテル、土産品店等が建ち並ぶ温泉街の商業地域
定山渓温泉東3丁目228番13外(札幌市南区)地価公示(2025年1月1日)26,000+6.1%商業地域(400% / 80%)低層の小売店舗等が建ち並ぶ国道沿いの商業地域
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ。地価公示(1月1日基準・国)と都道府県地価調査(7月1日基準・都道府県)は基準日が異なる。

参考試算 — 61室・全室露天型の建設費と必要単価

別邸 蝦夷富士の投資額は公表されていないため、ここでは同規模の全室露天型61室を一般的な前提で置いた参考試算を示す。延床面積は客室のテラスや露天スペース、ロビー・レストラン・温浴の共用部を含めて1室あたり120㎡(計7,320㎡=約2,214坪)、敷地は1室150㎡(9,150㎡)を¥30,000/㎡で取得すると仮定した。建設単価は国土交通省の建築着工統計による2024年のホテル全構造平均195万円/坪を下限に、ラグジュアリー仕様の目安として業界メディアが示す250〜350万円/坪の3ケースを置いた。稼働率は65%(ベルーナの国内リゾート型が2024年度通期で60.7%、2025年度第2四半期で67.5%)、GOP率は30%(インヴィンシブル投資法人が開示する運営91物件の2024年12月期実績38.9%に対し、開業初期の保守値)とし、FF&E・設計監理・開業前費用は含めていない。

結果は次の表のとおりで、建設単価250万円/坪・推定ADR8万円・稼働率(前提)65%のベースケースでは、総投資額58.1億円(1室あたり9,525万円)に対するGOP利回りが6.0%になる。推定ADR6万円では4.5%にとどまり、10万円で7.5%に届く。現在の温泉街の最上位帯(湖の栖の繁忙月¥57,900)を超える単価を通年で取れるかどうかが採算の分岐点であり、裏を返せば、全室露天という商品でこの温泉街に6万〜8万円の推定成約帯を新たに作れれば、既存の少室型にも単価の上方余地が生まれる。2027年12月開業に向けた2026〜27年の建設物価上昇はこの試算に織り込んでいないため、実際の建設費は上振れを見込んでおく必要がある。建設費の上昇が全国の開業パイプラインをどう押し下げているかは、建設費+41%と人材難で消える供給 — 2027-2029年ホテル新規開業マップで扱っている。

61室・全室露天型の総投資額とGOP利回り(3ケース×推定ADR3水準)
ケース建設費土地総投資額1室あたりADR 6万円ADR 8万円ADR 10万円
A 2024年全構造平均(坪195万円)43.2億円2.7億円45.9億円7,528万円5.7%7.6%9.5%
B ラグジュアリー下限(坪250万円)55.4億円2.7億円58.1億円9,525万円4.5%6.0%7.5%
C ラグジュアリー上限(坪350万円)77.5億円2.7億円80.2億円13,155万円3.2%4.3%5.4%
出典:国土交通省 建築着工統計(2024年)、HOTELISM(業態別坪単価の目安)、インヴィンシブル投資法人 決算資料(GOP実績)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。利回り=GOP÷総投資額、稼働率(前提)65%・GOP率30%・61室の仮定計算。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要。

感度分析として、ベースケースから推定ADRを10%、稼働率を5pt下げた場合の利回りを示す。両方が同時に起きても利回りは5.0%で、下振れ幅は1pt程度にとどまる。少室型では固定費に対する客室数の小ささが効くため、単価の維持がそのまま利回りの維持につながる構造である。

ベースケースからの感度分析(推定ADR・稼働率の下振れ)
シナリオ推定ADR稼働率売上高GOP利回り
ベースケース¥80,00065%11.6億円3.5億円6.0%
ADR −10%¥72,00065%10.4億円3.1億円5.4%
稼働率 −5pt¥80,00060%10.7億円3.2億円5.5%
両方¥72,00060%9.6億円2.9億円5.0%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(建設単価250万円/坪、総投資額58.1億円の仮定計算)

投資判断の整理 — 道内のリゾート再生・高単価化を考える投資家への示唆

ここまでを整理すると、洞爺湖温泉は(1) 客室の過半を3館の大箱が占め、(2) 推定ADRは道内旅館の水準を上回るが夏と冬の差が1.32倍あり、(3) 推定稼働率は9月で92.8%と道内業態平均より高く、(4) 地価は主要温泉地の中で低位、(5) 活火山の麓で避難確保の運営要件を伴う、という5つの条件を持つ温泉街である。別邸 蝦夷富士はこの条件下で、少室・全室露天・高単価という商品を温泉街の東端(壮瞥町側)に置き、既存の大箱で集客の幅を保ちながら上位帯を取りにいく設計と読める。

道内でリゾートの再生や高単価化を検討する投資家・地域金融機関にとって、この事例から引き出せる示唆は三つある。第一に、大型旅館が密集する温泉街ほど「少室×高単価」の帯が空いており、既存の集客基盤に相乗りしながら単価だけを上に伸ばす余地がある。第二に、全室露天型は1室あたりの建物投資が1億円前後に達するため、推定成約で6万〜8万円を通年で維持できる眺望と商品力が前提になる。第三に、火山・地価・国立公園といった立地固有の制度要件は、着工前に地域防災計画と自然公園法の許可区分を確認しておけば、資金計画に織り込める性質のものである。2027年12月の開業後は、本稿の棚卸しをもとに2km圏の推定ADRとOCCの変化を追い、少室型の参入が温泉街の中央値をどれだけ押し上げたかを検証したい。

よくある質問

Q. 別邸 蝦夷富士は洞爺湖町に建つのですか。

報道では「洞爺湖温泉」に隣接2館と並んで建つとされています。国土地理院の地図で既存2館の座標を照合すると壮瞥町字洞爺湖温泉に属するため、計画地も壮瞥町側に位置する公算が大きく、行政手続きや防災計画の確認先は壮瞥町になると考えられます。

Q. 61室は洞爺湖温泉の供給にどの程度の影響がありますか。

当社の棚卸しでは2km圏の現役施設は19軒1,419室で、61室は4.3%に当たります。客室数としては小さい一方、現在空白の「少室×推定ADR5万円超」の帯に入る供給で、温泉街の価格帯の上限を押し上げる性格を持つと考えられます。

Q. 火山の近くでホテルを建てる場合に必要な手続きは何ですか。

有珠山は火山災害警戒地域(伊達市・壮瞥町・洞爺湖町)に含まれます。市町村が避難促進施設に指定した宿泊施設は、活動火山対策特別措置法第8条に基づき避難確保計画の作成・公表、訓練、市町村長への報告が義務づけられます。指定の有無は各町の地域防災計画で確認できます。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

客室ストックは洞爺湖温泉の温泉街中心(北緯42.566度・東経140.818度)から半径2km内の登録施設を1件ずつ確認し、直近3か月(2026年7月10日以降の宿泊日)に価格の観測がある施設を現役とした(19軒・1,419室)。推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月の確定月、推定OCCとブッキングカーブは2026年8月・9月の主要予約サイト掲載在庫ベース(LT45→1)。地価は国土交通省 不動産情報ライブラリの地価公示・都道府県地価調査、計画概要は報道2件、事業指標はベルーナの決算短信・決算説明資料による。

■ 試算前提

参考試算は同規模の全室露天型61室を想定し、延床1室120㎡(計7,320㎡)、敷地1室150㎡を¥30,000/㎡で取得、建設単価は坪195万円・250万円・350万円の3ケース、稼働率の前提65%、GOP率30%、利回り=GOP÷総投資額とした。FF&E・設計監理・開業前費用、2026〜27年の建設物価上昇は含めていない。別邸 蝦夷富士の実際の投資額・客室単価は公表されていない。

■ 限界・留意点

推定成約ADR・推定OCCはOTA公開データに基づく推定値で、各施設の実績とは異なる。推定OCCの対象(12施設/573室)は掲載在庫枠の合計で、棚卸しの総客室数1,419室とは定義が異なる。壮瞥町の系列はN=4〜6で振れが大きく参考値。地価公示(1月1日基準)と都道府県地価調査(7月1日基準)は基準日が異なる。計画地の行政区・ハザード区域上の位置は、事業者と壮瞥町・洞爺湖町の公表資料で最終確認が必要である。

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

■ 企業IR・業界レポート

■ ニュース・プレスリリース

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