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天文館1km圏で2026年に+225室|増築74室・移転新築151室、鹿児島の再投資とADR6,715円

投稿日 : 2026.10.18

鹿児島県

投資・開発

天文館1km圏で2026年に+225室|増築74室・移転新築151室、鹿児島の再投資とADR6,715円

アパホテル〈鹿児島天文館〉が2026年9月17日に新築棟「ANNEX」(74室)を開業し、西棟・東棟と合わせて3棟280室の体制になった。その半年前の3月10日には、山之口町で営業していたホテルグランセレッソ鹿児島が船津町へ新築移転し、151室の「ホテルグランセレッソ鹿児島天文館」として開業している。どちらも鹿児島で営業を続けてきた事業者が、天文館通電停から1kmの同じ商圏に客室を積み増した案件だ。本稿は、この「既存事業者の再投資」を需要の厚みを示すシグナルとして読み、1km圏の客室ストック推移、鹿児島市の推定成約ADR、連休時の在庫消化、就業人口、用途地域・地価・災害想定の順に、九州の地方中核都市で増築や建替えを検討するオーナー・地銀・開発担当が押さえるべき数字を整理する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)で、N=対象施設数を併記する。確定月(2026年9月まで)と先行月(2026年10月以降、調査時点の掲載水準に基づく推定)は同列に比較しない。
  • 掲載価格:OTA等に公開されている全プランの平均(2名1室・1室あたり・税込)。本稿ではADRと区別して表記する。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本稿の推定OCCは「稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)」で、対象施設数と客室数を併記する。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。
  • LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。早期完売LT=残室数が初めて0室に到達したリードタイム(値が大きいほど早く完売)。本稿は宿泊日の45日以内の観測のみを使い、45日より前の完売は「45日以上前から完売」として45日に丸めて集計する。
  • 客室ストック:天文館通電停(北緯31.5905度・東経130.5553度)を中心とする半径1km圏の、開業日・閉館日ベースの年次集計。2026年の値は、9月開業のANNEX(74室)を含めて一次資料と施設単位で照合した2026年10月時点の値を併記する。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA公開価格・在庫データ)、国土交通省 不動産情報ライブラリ、国土数値情報、総務省・経済産業省 経済センサス、各社プレスリリース。
Key Takeaways
  • — +225室 — 2026年に天文館通電停1km圏で増えた客室は、アパホテル〈鹿児島天文館〉ANNEXの増築74室と、ホテルグランセレッソ鹿児島天文館の移転新築151室。どちらも鹿児島で営業を続けてきた事業者による再投資である。
  • — 約6,400室・70施設 — 2026年10月時点の1km圏ストック(一次資料との照合値)。年次集計では2016年4,955室から2026年5,993室へ10年で+20.9%伸びた。
  • — 推定成約ADR 6,715円 — 鹿児島市・全業態の12か月平均(2025年9月〜2026年8月、N=71〜73)。供給が増えた2026年1〜9月も前年同期比−0.8%とほぼ横ばい。
  • — 連休の2〜3週間前に残室0 — シルバーウィーク(2026年9月19〜23日)は5,500〜6,500円の大型ビジネスホテルから先に埋まり、6,000〜7,500円帯(12施設1,657室)の室数加重の早期完売LTは9.0日だった。
  • — 建物投資利回り5.4% — ADR6,715円、2026年9月のシティ区分の稼働水準、GOP率50%(仮定)、建設費約1,844万円/室の簡易試算(土地別)。建設費の上昇を2年分織り込むと4.9%。

エグゼクティブサマリー — 2026年は「新規参入」ではなく「既存事業者の積み増し」で+225室

2026年の新規客室(1km圏)
+225室
増築74室+移転新築151室
1km圏の客室ストック
約6,400室
70施設・ANNEX加算後の照合値
10年間の客室増加率
+20.9%
2016年4,955室→2026年5,993室
鹿児島市 推定成約ADR
¥6,715
全業態・12か月平均(N=71〜73)
シティ区分 推定OCC
81.1%
2026年9月・16施設1,931室
1km圏の就業人口
42,450人
事業所4,747・オフィス系20.5%

結論から述べると、天文館1km圏の2026年は、外部から新しいブランドが入ってきた年ではなく、すでに鹿児島で稼いでいた事業者が同じ商圏に客室を足した年だった。アパホテルは2016年開業の西棟80室、2021年開業の東棟126室に続く3棟目として74室を増築し、グリーンホスピタリティーマネジメントが運営するグランセレッソは、2025年3月に閉館した山之口町の旧館から約600m東の船津町へ移って151室で再出発した。二つを合わせた+225室は、1km圏の客室ストック(約6,400室)の3.5%に相当する。

この積み増しを支える需要側の数字は三つある。第一に、鹿児島市の推定成約ADRは2025年9月〜2026年8月の12か月平均で6,715円(全業態、N=71〜73)、2026年1〜9月の平均は前年同期比−0.8%と、供給が増えた年でもほぼ横ばいを保っている。第二に、シルバーウィーク(9月19〜23日)にはシティ区分の推定OCCが9月20日に99.9%、21日に99.4%まで上がり、5,500〜6,500円の大型ビジネスホテルは連休の2〜3週間前に残室が0になっていた。第三に、1km圏には従業者42,450人の業務集積と約2.5万人の居住人口があり、平日は出張、週末と夜間は繁華街の需要が重なる。再投資の型が「増築」と「移転新築」のどちらであっても、この三つが成立しているかを先に確かめるのが、天文館で客室を足す判断の起点になる。

2026年に天文館1km圏で動いた案件 — 増築74室と移転新築151室、純増は+225室

まずは案件を一つずつ、新築・増築・移転・改称のどれに当たるかを一次資料で確かめた。改称やリブランドは客室の純増を伴わないため、純増を出すにはこの判定が欠かせない。2026年に1km圏で客室が実際に増えたのは、次の2件である。

2026年に天文館1km圏で客室が増えた案件の概要
案件区分客室数所在地事業主・運営時期
アパホテル〈鹿児島天文館〉ANNEX(新築棟)増築(既存2棟に3棟目を追加)74室
3棟計280室
鹿児島市千日町13-4アパホテル(株式会社SWANとのフランチャイズ契約)2026年9月17日開業
ホテルグランセレッソ鹿児島天文館移転新築(山之口町の旧館から約600m東へ)151室
13タイプ・延床4,259㎡
鹿児島市船津町5-22事業主:鹿児島アークシティ株式会社/運営:株式会社グリーンホスピタリティーマネジメント2026年3月10日開業
参考:2025年に同じ1km圏で動いた案件
ホテルオリエンタルエクスプレス鹿児島天文館既存建物の再稼働(旧ホテルグランセレッソ鹿児島の13階建て建物、165室)165室鹿児島市山之口町2-1—2025年4月営業開始
変なホテルプレミア鹿児島 天文館新築90室鹿児島市(天文館)—2025年7月開業

出典:アパホテル株式会社 プレスリリース(2026年9月17日)、株式会社グリーンホスピタリティーマネジメント プレスリリース(2025年10月31日・2026年3月10日)、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース)

純増の計算は、案件の型によって答えが変わる。増築であるANNEXの74室は、そのまま商圏の純増である。一方の移転新築は、事業者単位では旧館165室が閉じて新館151室が開いた形なので、グランセレッソとしての客室は−14室になる。移転新築それ自体は市全体の客室を増やさない、という点はここで明記しておきたい。ただし今回は、旧館の建物が2025年4月から別ブランド(ホテルオリエンタルエクスプレス鹿児島天文館、165室)として営業を続けているため、商圏から165室が消えたわけではない。結果として、天文館1km圏の2026年の純増は74室+151室=+225室と読める。

なお、ANNEXの内訳はスタンダードルーム44室、コージールーム16室、隣室をつないで最大4名で使えるS-Sコネクトルーム6組12室、1階のアジョイニングルーム1組2室で、全室禁煙だった。コネクトルームの比率が16%と高いのは、家族・グループ需要を同じ棟で取る設計と読める。グランセレッソ天文館は13階に桜島を望む展望大浴場、14階に60席のレストランを置き、郷土料理中心の朝食ブッフェを提供する。どちらも「同じ商圏で、すでに売れている型を足す」再投資であり、価格帯を大きく変えてはいない。ダイワロイネットホテル鹿児島天文館 PREMIER(217室、2022年開業)の改装については公式発表で内容と日付を確認できなかったため、2026年の案件表には含めていない。

1km圏の客室ストック推移 — 2012年4,707室から2026年5,993室、中央駅1km圏との差は3,200室

次に、天文館通電停を中心とする1km圏と、鹿児島中央駅を中心とする1km圏の客室ストックを2012年から並べた。開業日・閉館日ベースの年次集計で、天文館1km圏は2012年の41施設4,707室から2026年の58施設5,993室へ+27.3%、直近10年(2016年4,955室→2026年5,993室)では+20.9%伸びている。中央駅1km圏は2012〜2017年に20施設2,542室で動きがなく、2024年にアパホテル〈鹿児島中央駅前西口〉(156室)とホテルノイル鹿児島中央駅(93室)が加わって2026年は34施設2,804室(+10.3%)になった。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(開業日・閉館日ベースの年次集計。天文館通電停 北緯31.5905度・東経130.5553度、鹿児島中央駅 北緯31.5839度・東経130.5422度、各半径1km)

天文館側の階段状の増加は、2019年のユニゾインエクスプレス鹿児島天文館(295室)、2020年のKOKO HOTEL 鹿児島天文館(295室)、2022年のダイワロイネットホテル鹿児島天文館 PREMIER(217室)、2025年の変なホテルプレミア鹿児島 天文館(90室)などが作っている。2021年に一度5,262室へ下がっているのは、コロナ禍での閉館・休業が年次集計に反映されたためで、2022年から2025年まで毎年積み上がった(2026年の値はANNEX未反映)。中央駅側は2026年11月にスマイルホテル鹿児島中央駅前(101室)の開業が掲載ベースで確認できるが、これはOTA掲載確認ベースの先行情報であり、今後の掲載で件数が増える可能性がある。

年次系列の2026年の値(5,993室)は、9月開業のANNEX(74室)が加わる前の集計である。施設単位で一次資料と照合し、ANNEXの74室を加えた2026年10月時点の天文館1km圏は70施設・約6,400室(ゲストハウス等の小規模施設を含む)、50室以上の施設に限ると43施設・5,970室になる。本稿のKPIにはこの照合値を使い、推移のグラフは系列の一貫性を優先して年次集計のままにしている。

鹿児島市の推定成約ADR — 12か月平均6,715円、供給+225室の年に単価は横ばいを維持

再投資が需要の厚みを示すというなら、客室が増えた年に単価が崩れていないかを確かめる必要がある。鹿児島市の推定成約ADR(全業態、確定月)は2025年9月〜2026年8月の12か月平均で6,715円(N=71〜73)、ビジネス区分は6,426円(N=58〜59)、シティ区分は9,482円(N=8〜9)だった。月次では2月の7,340円と11月の7,137円が山、6月の6,096円が谷で、年間の振れ幅は約1,250円にとどまる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(鹿児島市・全業態・推定成約ADR・確定月のみ。N=70〜74施設/月)

鹿児島市の推定成約ADRと前年同月比(2026年・確定月)
2026年全業態 ADR前年同月比Nビジネス ADR前年同月比N
1月¥6,950+6.4%71¥6,796+11.9%58
2月¥7,340+9.7%72¥6,870+5.1%58
3月(グランセレッソ天文館 開業)¥6,709+0.4%73¥6,442−2.1%58
4月¥6,374−1.9%73¥6,204−1.3%58
5月¥7,044−1.5%73¥6,798−1.5%58
6月¥6,096−2.8%73¥5,760−3.6%58
7月¥6,380−4.6%73¥5,959−4.9%58
8月¥6,788−15.6%73¥6,459−17.1%58
9月(ANNEX 開業)¥6,895+5.8%73¥6,670+6.9%58
1〜9月平均¥6,731−0.8%—¥6,440−1.2%—

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(鹿児島市・推定成約ADR・確定月。前年同月比は2025年同月の確定値との比較)

読み方として重要なのは、グランセレッソ天文館の151室が入った3〜5月は全業態の単価が前年の±2%圏に収まり、6月も−2.8%にとどまっていたことだ。7月と8月の落ち込みは、2025年8月が8,042円という高い山だった反動に、令和8年熊本地震で九州新幹線の一部区間が運休し、9月18日に52日ぶりに全線再開するまで鹿児島へのアクセスが細った期間が重なったものと読める。実際、新幹線が戻った9月は全業態で+5.8%、ビジネス区分で+6.9%と前年を上回り、ANNEXの74室が加わった月に単価は切り上がった。1〜9月の平均で見れば全業態−0.8%、ビジネス−1.2%であり、+225室の供給を単価をほぼ維持したまま吸収した年、と整理できる。

先行月に目を向けると、10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定で8,200〜8,800円が並ぶ。ただしこれは確定月とは基準が異なる先行スナップショットであり、九州ふっこう応援割の対象期間(2027年2月末宿泊分まで)で需要が前倒しされている局面でもあるため、本稿では確定月との比較には使わない。新幹線全線復旧後の10月の掲載価格が鹿児島市(+15.3%)と霧島市(−5.2%)で分かれた実測は、鹿児島10月の掲載価格+15.3%・霧島-5.2% — 新幹線全線復旧後の九州、宿泊はどこが上がったか(掲載価格ベース・2026年9月時点)で扱っている。

ADR×早期完売の散布図 — 5,500〜6,500円の大型施設は連休の2〜3週間前に残室0

新棟が入る価格帯が実際にどう埋まるかを、過去の確定日で確かめる。対象はシルバーウィークの5連休(2026年9月19〜23日宿泊)で、鹿児島市の施設のうちOTA公開枠が総客室の30%以上ある70施設(市内の在庫データがある94施設から絞り込み。市内の対象施設は225)に、天文館1km圏・30室以上・直近12か月のADRがあるという条件を重ねて27施設を抽出した。横軸は各施設の推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月の確定月平均)、縦軸は5日間の平均早期完売LT(宿泊日の45日より前の完売は45日に丸めた値)、円の大きさは客室数である。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(鹿児島市・2026年9月19〜23日宿泊・OTA公開枠30%以上の施設のみ・N=27施設。主要予約サイト掲載ベース)

推定成約ADR帯別の施設数・客室数と平均早期完売LT(2026年9月19〜23日宿泊・N=27施設)
推定成約ADR帯施設数客室数平均早期完売LT(単純)同(室数加重)
6,000円未満555615.6日17.2日
6,000〜7,500円(ANNEX・グランセレッソ天文館が入る帯)121,6576.8日9.0日
7,500〜9,000円43814.2日2.6日
9,000円以上696110.3日12.0日

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(同上。早期完売LTは5日間の宿泊日ごとの値を45日で丸めて平均)

散布図から読めるのは、価格帯ごとに「決まる時期」が違うことだ。6,000〜7,500円帯は12施設1,657室と最も厚く、室数加重の平均早期完売LTは9.0日だが、その中でも、帯の下端付近(6,000円前後)の大型施設は早い。ホテルサンデイズ鹿児島(351室、ADR約6,300円)は5日間平均で22.4日前、かごしまプラザホテル天文館(220室、約5,500円)は18.4日前、アパホテル〈鹿児島天文館〉の既存2棟(206室、約6,100円)は9.8日前に残室0へ到達し、9月21日は宿泊日の45日以上前から完売していた。ANNEXの74室はまさにこの、連休前に大箱から先に埋まる帯に入る。既存棟が連休で早期に満室になる実績があるからこそ、同じ敷地に3棟目を足す判断が成り立つ。

一方、同じ帯の上端に位置するグランセレッソ天文館(151室、開業後7か月の平均で7,459円)は平均4.2日前、一つ上の7,500〜9,000円帯のホテルオリエンタルエクスプレス鹿児島天文館(165室、約9,000円)は0.6日前と、連休直前まで販売を続けて埋める型だった。これは価格を保ったまま直前需要を取れる余力があることを示しており、開業初年度の151室が5連休をほぼ使い切った点は、移転新築の立ち上がりとして十分に速い。また9,000円以上の帯でも、ダイワロイネットホテル鹿児島天文館 PREMIER(217室、約15,600円)が18.2日前、SHIROYAMA HOTEL kagoshima(355室、約27,400円)が16.2日前に残室0となっており、上位価格帯の大型施設にも連休需要は届いている。

連休の需給をエリア全体で見ると、鹿児島県シティ区分の推定OCC(対象16施設・1,931室、主要予約サイト掲載ベース)は9月18日の79.5%から19日95.4%、20日99.9%、21日99.4%、22日92.7%へ上がり、23日に73.4%へ戻った。9月の月間平均は81.1%で、全業態(301施設・11,313室)の71.4%を10ポイント近く上回る。天文館の再投資が増築と移転新築に向かった背景には、このシティ区分の埋まり方がある。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(鹿児島県・2026年9月・稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定。シティ区分16施設1,931室、全業態301施設11,313室。主要予約サイト掲載ベース)

就業4.2万人の業務地としての厚みと、繁華街立地の夜間需要

再投資を支える平日需要の裏付けとして、天文館通電停から1km圏の就業人口を経済センサスで確認した。圏内の事業所は4,747、従業者は42,450人、うちオフィス系(情報通信・金融・不動産・専門サービス等)が8,699人で20.5%を占める。鹿児島市のビジネス区分ADRが6,426円(N=58〜59)と全業態より約300円低いのは、この業務需要を平日に安定して取り込む施設が多いことの表れで、ANNEXの増築もこの層を主な対象にしている。電停1km圏の就業人口で商圏の厚みを測る同じ見方は、アパホテル熊本下通265室、水道町1km圏6,475室に+4.1% — 中央区ADRと就業4.6万人の商圏でも用いている。一方、シティ区分の9,482円(N=8〜9)は、週末と夜間に繁華街立地と桜島ビューで単価を上げる型であり、展望大浴場を13階に置いたグランセレッソ天文館はこちら側に寄せた設計といえる。

天文館通電停 半径1km圏の就業・居住人口
指標(天文館通電停 半径1km)値出典
事業所数4,747総務省・経済産業省 経済センサス-活動調査(2021年)、境界は国勢調査2020 小地域
従業者数42,450人
オフィス系従業者比率20.5%(8,699人)
居住人口(2025年)25,247人国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)
高齢比率(65歳以上、2025年)28.1%
2040年の居住人口変化−6.8%(2020年比、23,688人)/2025年比 −6.2%

居住人口は2020年の25,412人から2040年に23,688人へ6.8%減る推計(2025年の25,247人比では6.2%減)で、高齢比率は28.1%と全国平均をやや下回る。宿泊需要の主役は居住者ではなく来訪者なので、この減少がホテルの売上に直結するわけではないが、飲食・物販の夜間集客が繁華街の魅力を支えている以上、商圏人口の推移は中長期の前提として押さえておきたい。下の地図は250mメッシュの居住人口(国勢調査ベースであり、滞在人口・通過人口ではない)を示したもので、電停の東側と甲突川沿いに人口が厚く、西側の鹿児島中央駅方向へ連続している。

出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)

立地分析 — 千日町・船津町は商業地域・容積率500%、電停至近の地価は4年連続上昇、浸水想定0.5〜3.0m

最後に、増築と移転新築の2地点を国土交通省 不動産情報ライブラリの用途地域・地価公示・災害想定で確認した。ANNEXの千日町13-4、グランセレッソ天文館の船津町5-22とも商業地域で容積率500%・建蔽率80%である。電停至近の東千石町・中町の標準地は容積率700%の区域にあり、両案件はその一段外側の500%区域で客室を積み増した。

地価公示は、天文館通電停から69mの東千石町13-34外(鹿児島5-16)が2026年に118万円/㎡(前年比+1.7%)で、2022年の113万円から4年で+4.4%となった。船津町4-20外(鹿児島5-3)は32万2,000円/㎡(+2.5%)で2022年の30万4,000円から+5.9%、山之口町11-25(鹿児島5-21)は36万8,000円/㎡(+3.7%)と、2022年比では船津町の上昇率が5地点で最も高い。2023〜2024年に下落していた地点も2025年以降は揃って上向いており、再投資の意思決定が地価の底打ちと重なっていたことが分かる。

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・商業地)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

天文館周辺の地価公示(商業地・2026年)と容積率
標準地電停からの距離2026年 公示価格前年比2022→2026年容積率
東千石町13-34外(鹿児島5-16)69m¥1,180,000/㎡+1.7%+4.4%700%
中町5-29(鹿児島5-7)180m¥631,000/㎡+1.0%+1.9%700%
山之口町11-25(鹿児島5-21)200m¥368,000/㎡+3.7%+2.8%500%
東千石町5-8(鹿児島5-20)291m¥375,000/㎡+1.4%+4.2%500%
船津町4-20外(鹿児島5-3)366m¥322,000/㎡+2.5%+5.9%500%

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示 2022〜2026年・商業地)

災害想定は三つを確認した。甲突川の洪水浸水想定(想定最大規模)では、千日町・船津町の両地点とも浸水深0.5m以上3.0m未満の区域に含まれる。1階にフロントや機械室を置く場合は止水板や受電設備の上階配置が検討事項になる。津波浸水想定区域には両地点とも含まれない。火山については、桜島が活動火山対策特別措置法に基づく火山災害警戒地域の対象火山であり、鹿児島市は同法第4条に基づく桜島火山防災協議会(2016年8月10日設置)の構成市である。降灰は日常的に空調フィルターや外壁清掃のコストとして織り込む必要があり、鹿児島市は噴火警戒レベルに応じた大量軽石火山灰対応計画を2026年7月に改めて示している。いずれも天文館での営業を長年続けてきた事業者が織り込み済みの条件であり、新規参入者が最初に確認すべき項目として挙げておく。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(天文館通電停 半径1km・30室以上の施設。円の大きさ=客室数、色=推定成約ADR帯)

投資判断の整理 — 増築型と移転新築型、どちらの再投資が成り立つか

ここまでの数字を、天文館で増築や建替えを検討する事業者の視点で整理する。増築型(ANNEX)は、既存棟の予約実績と運営体制をそのまま使えるため、客室あたりの立ち上がりコストが小さく、容積率500%の商業地域でも敷地に余力があれば同一敷地での選択肢になる。移転新築型(グランセレッソ天文館)は、旧館の建物を手放す代わりに展望大浴場や客室タイプ構成を一から設計でき、7,500円前後の単価で開業初年度から連休をほぼ使い切る立ち上がりを見せた。どちらも「鹿児島で売れている型を同じ商圏で足す」点は共通で、実績のある価格帯に客室を積み増す投資である。

1室あたりの簡易収支試算(建物投資ベース・土地別)
項目ベースケースADR +785円ADR +1,785円
推定成約ADR(前提)¥6,715¥7,500¥8,500
推定OCC(前提:シティ区分 2026年9月)81.1%81.1%81.1%
RevPAR¥5,446¥6,082¥6,894
年間客室売上(1室あたり)199万円222万円252万円
GOP(GOP率50%と仮定)99万円111万円126万円
建設費(RC造 坪202.6万円×約9.1坪/室、2025年実績)1,844万円1,844万円1,844万円
建物投資利回り(土地別・2025年実績ベース)5.4%6.0%6.8%
建設費(2年分の上昇 年+5%を織込み)2,033万円2,033万円2,033万円
建物投資利回り(インフレ織込み後)4.9%5.5%6.2%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ADR・OCC)、国土交通省「建築着工統計」をもとにしたアーキブック集計(坪単価)、インヴィンシブル投資法人 運営実績開示(GOP率の参照値)。1室あたり延床30㎡(約9.1坪)を仮定した簡易試算

簡易試算では、鹿児島市の推定成約ADR6,715円とシティ区分の推定OCC81.1%(2026年9月・16施設1,931室)を前提に、1室あたりの年間客室売上は約199万円、GOP率50%で約99万円となる。建設費はRC造の2025年実績である坪202.6万円(国土交通省 建築着工統計をもとにしたアーキブック集計)に1室あたり約9.1坪を掛けた約1,840万円とし、建物のみの投資利回りは5.4%、建設期間中の年+5%の上昇を2年分織り込むと4.9%になる。GOP率50%は、インヴィンシブル投資法人が開示する運営91物件のGOP率38.9%(2024年12月期)より高い水準なので、既存棟の運営体制を共有できる増築型でなければ達成しにくい前提である。

感度を見ると、ADRが785円上がるごとに利回りは約0.6ポイント改善する。6,000円前後の大箱が連休前に埋まる実績と、9月の前年同月比+5.8%を考えれば、ベースケースから7,500円へ寄せる余地は現実的な範囲にある。逆に、建設費の上昇は新規参入側の供給を抑える方向に働くため、既存事業者にとっては競争環境が急には変わらないという意味でのアップサイド要因でもある。なお本試算は土地を含まない建物投資ベースの簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要である。

感度分析 — ADRと稼働水準の2軸で見た建物投資利回り

上の試算はADRだけを動かしているため、稼働水準も同時に動かした場合の利回りを並べた。縦軸は年間を通じた稼働水準の仮定、横軸は推定成約ADRで、GOP率50%・建設費約1,844万円/室(2025年実績ベース・土地別)は上の表と同じ前提である。

建物投資利回りの2軸感度(GOP率50%・建設費1,844万円/室・土地別)
稼働水準(通年の仮定)\推定成約ADR¥6,000¥6,715¥7,500¥8,500
70%4.2%4.7%5.2%5.9%
75%4.5%5.0%5.6%6.3%
81.1%(ベース)4.8%5.4%6.0%6.8%
85%5.0%5.6%6.3%7.2%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ADR・稼働水準のベース値)をもとにした簡易試算。利回り=ADR×稼働水準×365日×GOP率50%÷建設費。6,000円は2026年6月の月次水準(6,096円)に近い下振れケース

ベースケースの81.1%は連休を含む2026年9月の単月値なので、通年の稼働水準が75%なら同じADRでも利回りは5.0%、70%なら4.7%まで下がる。ADRが6月の水準に近い6,000円で稼働水準も70%にとどまる場合は4.2%で、利回りを6%台に乗せるにはADR7,500円と稼働水準81%以上、またはADR8,500円と75%以上の組み合わせが要る。また、GOP率をインヴィンシブル投資法人の運営91物件の実績38.9%(2024年12月期)に置くと、ベースケースの利回りは4.2%になる。

再投資の主なリスク要因と評価
リスク要因内容評価
市場(供給)2026年に+225室、2026年11月に中央駅側でスマイルホテル鹿児島中央駅前101室(掲載確認ベース)。1〜9月のADRは−0.8%で吸収できている低〜中
制度(需要の前倒し)九州ふっこう応援割(鹿児島は最大60%割引、2027年2月末宿泊分まで)の終了後に需要が平準化する可能性。10〜12月の先行月は掲載水準が高い中
建設(コスト)RC造坪単価は2022年から2025年にかけて上昇が続き、年+5%前後の上昇見通し。増築型は既存インフラの共有で単価を抑えやすい中
災害(浸水・降灰)甲突川の想定最大規模で浸水深0.5〜3.0m、桜島の降灰は恒常的な維持費。津波浸水想定区域外低〜中

総じて、天文館1km圏の2026年は、需要の厚みを最もよく知る既存事業者が、容積率と地価の底打ちという立地条件が揃ったタイミングで客室を足した年だった。これから同じ商圏で増築・建替えを検討する事業者にとっての示唆は三つある。第一に、自館の価格帯が連休の何日前に埋まるかを室数ベースで把握し、その帯に足すこと。第二に、単価の季節振幅が約1,250円と小さい市場なので、ADRの上積みはプラン構成や客室タイプ(コネクトルーム・大浴場)で作ること。第三に、浸水と降灰を設計段階で織り込み、1階用途と設備配置を決めることである。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事で先行月(2026年10月以降)として触れた水準は調査時点でOTA等に公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動する。確定月の推定成約ADRとは基準が異なるため、同列に比較しないこと。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが収集するOTA公開価格・在庫データ(鹿児島市の推定成約ADR:全業態N=70〜74施設/月、鹿児島県シティ区分の推定稼働:16施設1,931室・2026年9月、連休の在庫消化:N=27施設・2026年9月19〜23日宿泊)、開業日・閉館日ベースの客室ストック年次集計(天文館通電停・鹿児島中央駅の各半径1km)、国土交通省 不動産情報ライブラリ・国土数値情報、経済センサス、各社プレスリリース。

■ 試算前提

1室あたりの簡易試算は、推定成約ADR6,715円(2025年9月〜2026年8月の12か月平均)、2026年9月のシティ区分の稼働水準81.1%、GOP率50%(仮定)、建設費はRC造の坪202.6万円×約9.1坪(1室あたり延床30㎡)=約1,844万円を前提とした。インフレ織込みケースは建設費を年+5%で2年分引き上げている。利回りは土地を含まない建物投資ベース。

■ 限界・留意点

ADR・稼働水準はOTA公開データに基づく推定値で、各施設の会計数値ではない。稼働水準のベース値は連休を含む単月の値であり、通年の実績ではないため、2軸の感度表とあわせて読む必要がある。GOP率50%は試算上の仮定で、上場REITの開示実績(38.9%)より高い。土地取得費、FF&E、開業準備費、金利は含めていない。先行月の水準は掲載価格に基づくもので、確定月とは同列に比較しない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(鹿児島市 全業態N=70〜74・ビジネスN=55〜59・シティN=8〜9/月)、エリア客室供給時系列(半径1km)、推定OCC(鹿児島県シティ区分16施設1,931室・全業態301施設11,313室)、在庫消化ランキング(鹿児島市70施設・OTA公開枠30%以上)、個別施設ADR(27施設)

■ 政府統計・公的データ

■ REIT・業界レポート

■ ニュース・プレスリリース

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