株式会社ロイヤルホテルが2025年12月18日に公表した資料によると、京阪電鉄不動産とセキスイハイム東海を事業主とする地上7階建て・134室(予定)のホテルが、沖縄県国頭郡今帰仁村渡喜仁西浜原で2028年7月末頃に竣工し、同年10月末頃に開業する予定である。正式名称は未公表で、資料は「中長期の滞在に対応した客室設備」と「白砂のビーチに面するロケーション」を掲げている。本稿では、この単一案件を国土交通省の不動産情報ライブラリ(用途地域・地価・津波浸水想定)で立地評価し、敷地から半径5km圏の客室ストック、今帰仁村の推定成約ADRと稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を重ねて、134室が成立する単価と稼働の条件を試算する。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事の客室ストックは、今帰仁村渡喜仁西浜原から半径5,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月25日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。 ブッキングカーブ=チェックイン日に向けた主要予約サイト残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックインまでの日数。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
- — 2028年10月末頃開業・134室:京阪電鉄不動産とセキスイハイム東海が事業主、ロイヤルホテル運営の地上7階。5km圏の稼働客室339室に対し+40%で、圏内最大(既存最大は84室)。
- — 用途地域なし・地価2.6万円/㎡:今帰仁村は全域が都市計画区域外。字仲宗根の県地価調査基準地は25,800円/㎡(2026年・+3.2%)で、土地は総投資の数%規模。
- — 推定成約ADR¥40,400(今帰仁村・2026年9月・N=21)は一棟貸し・ヴィラ型が押し上げた中央値。134室の参照値は北部大型リゾートの通常月2.4万〜3.6万円帯。
- — 稼働率79.3%(2026年9月・OTA掲載在庫ベース推定)はLT45の33.0%から直前に46pt積み上がる。お盆・SWはほぼ満室で、論点は閑散期の平日。
- — 総投資71.8億円の仮定で利回り6%には通年OCC75%でADR約3.9万円が必要(利回り5%なら約3.3万円)。中長期滞在仕様が閑散期を埋める収益設計の核になる。
案件概要 — 北部では珍しい100室超の都市型ブランド運営、ビーチ正面の7階建て
公表資料の要点は五つにまとまる。所在地は今帰仁村渡喜仁西浜原、事業主は京阪電鉄不動産とセキスイハイム東海、運営はロイヤルホテル(沖縄県内では那覇・北谷に続く3軒目)、規模は地上7階・134室(予定)、工程は2028年7月末頃竣工・同年10月末頃開業(予定)である。アクセスは沖縄自動車道の許田ICから車で約30分と記されている。延床面積と敷地面積は公表されていないため、後段の試算で用いる面積はすべて本稿の仮定である。
渡喜仁は本部半島の北岸、今帰仁城跡の東側に位置する字で、村の中心集落である仲宗根に隣接する。国土地理院の地名検索による字渡喜仁の代表地点(北緯26.6888度・東経127.9844度)を中心に置くと、直線距離で今帰仁城跡まで約1.3km、古宇利大橋の南詰まで約3.4km、ジャングリア沖縄(名護市・今帰仁村にまたがる旧ゴルフ場跡地)まで約6km、沖縄美ら海水族館まで約10.6km、許田IC付近まで約16.5kmとなる。ここまでを整理すると、北部の主要観光資源の中間点にビーチ正面で立つという立地であり、村内には100室を超える宿泊施設がまだ無い。
| 今帰仁城跡(世界遺産構成資産) | 約1.3km |
| 古宇利大橋(南詰) | 約3.4km |
| ジャングリア沖縄 | 約6km |
| 沖縄美ら海水族館 | 約10.6km |
| 許田IC付近 | 約16.5km(車で約30分・資料値) |
| 都市計画区域 | 指定なし(村全域) |
| 用途地域 | なし |
| 農業振興地域 | 指定あり(農用地区域1,065.4ha) |
| 観光地形成促進地域 | 対象 |
立地評価(国交省データ) — 用途地域のない白地、地価は2.6万円/㎡、海岸帯は津波1〜5m
まずは規制の前提から確認する。不動産情報ライブラリの用途地域データ(都市計画決定GISデータ)を敷地周辺のタイルで照会すると、該当する用途地域ポリゴンは存在しない。これは沖縄県の統計資料「地域指定等(令和4年度)」で今帰仁村に都市計画区域の指定が無いことと整合する。隣接する本部町は本部都市計画区域(非線引き、用途地域の面積は0.0ha)、名護市は名護都市計画区域で797.8haの用途地域を持つのに対し、今帰仁村は村全域が都市計画区域外である。したがって容積率・建蔽率・高さなどの集団規定は用途地域による制限を受けず、7階建てという階数は条例や景観施策との調整の中で決まる。一方で、都市計画区域外でも1ha以上の開発行為は都市計画法第29条第2項の許可対象であり、村は農業振興地域の指定を受けているため、敷地が農用地区域に含まれる場合は除外手続きが前提になる。都市計画区域外の開発許可や農地転用が開業までの時間に与える影響は、2026年新規開業の61%は市街化区域の外 — 開発許可・農地転用で変わる開業までの時間で全国の新規開業を分解している。
地価の水準は県地価調査から読める。村内に地価公示の標準地は無く、敷地から約1kmの字仲宗根に県地価調査の基準地が2地点ある。2026年(令和8年)の価格は仲宗根原177番が25,800円/㎡(前年比+3.2%、2025年は25,000円/㎡)、仲宗根原182番1が16,800円/㎡(同+5.0%、2025年は16,000円/㎡)である。いずれも用途区分は「その他」で、最寄りはバス停の仲宗根停。恩納村や北谷町のリゾート地と比べれば一桁低い地価水準であり、事業費の中で土地が占める比率は小さい。ただし海岸正面の宿泊用地は基準地の価格をそのまま適用できないため、後段では「土地1.0ha×25,800円/㎡=約2.6億円」を仮定として置き、感度の中で扱う。
災害リスクは津波が中心である。沖縄県が2016年に設定した津波浸水想定(最大クラス)を不動産情報ライブラリの3×3タイルで取得すると、字渡喜仁の代表地点そのものは浸水想定区域の外側にある。ただし代表地点から0.5km以内の海岸帯には0.01〜0.3mから5〜10mまでの浸水深帯が連なり、1〜2m帯と2〜5m帯が主体を占める。5km圏で稼働中の13軒のうち2軒(リゾートホテル・ベル・パライソ84室、ホテルオーシャンズ今帰仁20室)は1〜2m帯のポリゴン内に位置する。計画地は「ビーチに面する」とされるため、建物の配置と1階用途(駐車場・ロビーを高床にするか、客室を2階以上に置くか)が設計上の論点になる。洪水と高潮の浸水想定は当該タイルにデータが収録されておらず、土砂災害警戒区域は敷地周辺の3×3タイル内に19区画が登録されているが、代表地点と13軒の稼働施設はいずれも区域外である。液状化傾向は「岩石台地・液状化しにくい」に分類される。
| 項目 | データ | 敷地周辺の判定 | 示唆 |
|---|---|---|---|
| 用途地域 | 都市計画決定GISデータ | 該当ポリゴンなし(都市計画区域外) | 集団規定の用途地域制限なし。1ha以上は開発許可対象 |
| 地価(県地価調査2026年) | 字仲宗根 2基準地 | 25,800円/㎡(+3.2%)/16,800円/㎡(+5.0%) | 土地比率は事業費の数%規模 |
| 津波浸水想定(2016年) | 沖縄県設定・最大クラス | 代表点は区域外。0.5km内の海岸帯に1〜5m帯 | 1階用途・避難動線・BCP投資を設計に織り込む |
| 洪水・高潮 | 想定最大規模 | 当該タイルに収録データなし | 指定河川が無く洪水想定の対象外 |
| 土砂災害警戒区域 | 県指定(2012年以降) | 3×3タイルに19区画、代表点は区域外 | 敷地境界での個別確認が必要 |
| 液状化傾向 | 液状化傾向図 | 岩石台地・液状化しにくい | 基礎コストの上振れ要因は限定的 |
5km圏の客室ストック — 掲載21軒512室・稼働13軒339室、84室を超える施設はまだ無い
半径5km圏には客室数10室以上の宿泊施設が21軒・512室掲載され、直近3か月に販売価格を確認できた稼働施設は13軒・339室である。業態別に見ると稼働客室の76%(257室)がリゾートホテル区分で、貸別荘が44室、ゲストハウスとホステルが各11室、ビジネスホテル区分が16室と続く。規模別では51〜100室の施設が1軒(84室)あるだけで、残る12軒はすべて50室以下にとどまる。134室の計画は圏内で最大の施設となり、稼働客室に対して+40%、掲載客室に対して+26%の供給増に相当する。
開業年代で見ると、2020年代に開業した施設が9軒・218室と最も多く、その大半は古宇利島・屋我地島のヴィラ・コンドミニアム型である。1980年代開業の2軒(95室)がホテル型の中核で、2010年代が5軒・92室。つまり圏内の供給増は小規模な一棟貸し・プール付きヴィラが牽引してきたのであって、100室規模のフルサービス型が加わるのは初めてになる。
| 業態 | 掲載 | 稼働 |
|---|---|---|
| リゾートホテル | 9軒 / 295室 | 8軒 / 257室 |
| ゲストハウス | 5軒 / 72室 | 1軒 / 11室 |
| ビジネスホテル | 2軒 / 53室 | 1軒 / 16室 |
| 貸別荘 | 2軒 / 44室 | 2軒 / 44室 |
| キャンプ場 | 1軒 / 21室 | 0軒 / 0室 |
| その他 | 1軒 / 16室 | 0軒 / 0室 |
| ホステル | 1軒 / 11室 | 1軒 / 11室 |
| 稼働施設(5km圏・13軒) | 客室 | 業態 | 開業年 | 距離 | 推定成約ADR(2026年9月) | 掲載価格(全プラン平均・税込) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| リゾートホテル・ベル・パライソ | 84 | リゾートホテル | 1989 | 0.9km | ¥8,833 | ¥21,944 |
| リットホテル今帰仁 | 37 | リゾートホテル | 2025 | 2.0km | ¥12,321 | ¥38,478 |
| BATON SUITE 沖縄古宇利島 | 35 | リゾートホテル | 2025 | 3.8km | ¥57,462 | ¥113,794 |
| プライベートコンド古宇利島byコルディオスマートリゾート | 30 | リゾートホテル | 2021 | 3.4km | ¥24,011 | ¥46,493 |
| 古宇利島ロテルズ | 23 | 貸別荘 | 2018 | 3.4km | — | ¥29,026 |
| One Suite THE GRAND | 22 | リゾートホテル | 2021 | 3.8km | ¥68,530 | ¥166,368 |
| アーマンスイートヴィラヴィラ 済井出 | 21 | 貸別荘 | 2017 | 4.3km | — | ¥88,267 |
| ホテルオーシャンズ 今帰仁 | 20 | リゾートホテル | 2015 | 1.4km | ¥5,460 | ¥20,549 |
| ララマーレ古宇利 | 16 | ビジネスホテル | 2020 | 3.2km | ¥21,546 | ¥34,676 |
| プールヴィラ屋我地島 by コルディオプレミアム | 15 | リゾートホテル | 2024 | 4.1km | ¥41,660 | ¥78,351 |
| プールヴィラ 古宇利島byコルディオスマートリゾート | 14 | リゾートホテル | 2021 | 3.4km | ¥53,137 | ¥93,741 |
| 夢有民牧場 | 11 | ゲストハウス | 1980 | 2.6km | — | — |
| ヤンバルプールコンド屋我地 by COLDIO | 11 | ホステル | 2026 | 4.4km | — | ¥34,772 |
価格水準 — 今帰仁村の推定成約ADRは4.0万円、ただし中央値を押し上げるのは一棟貸し・ヴィラ型
メトロエンジンリサーチのデータによると、今帰仁村の推定成約ADRは2026年9月に¥40,400(N=21施設)で前年同月比+7.9%、ピークの8月は¥48,900(同+4.6%)、7月は¥43,400(同+13.3%)だった。1〜9月の平均は2025年の¥34,500から2026年は¥36,200へ+4.7%と、水準を切り上げながら夏の山が高くなっている。隣接市町村と並べると、同じ9月で恩納村¥21,900(N=44、+9.2%)、本部町¥15,000(N=22、+14.3%)、名護市¥11,400(N=25、+16.2%)であり、今帰仁村は北部4市町村で最も高い。
ただし、この中央値をそのまま134室ホテルの想定単価にはできない。今帰仁村で推定成約ADRの算出対象になる施設は「リゾートホテル」区分が中心だが、その中身はプール付きヴィラやコンドミニアム型の小規模施設が多く、1室あたりの価格が実質的に1棟あたりの価格になっている。5km圏の稼働施設を個別に見ると、同じ9月でヴィラ・コンド型(One Suite THE GRAND、BATON SUITE、プールヴィラ古宇利島など)は4万〜7万円台に分布し、客室数20〜84室のホテル型(リゾートホテル・ベル・パライソ、リットホテル今帰仁、ホテルオーシャンズ今帰仁)は5千〜1.2万円台である。村の中央値4.0万円は両者の間に落ちる値で、ホテル業態に限れば水準はもう一段低い。
この構図を客室規模と単価の平面に置くと、134室計画が入る場所がはっきりする。横軸に客室数、縦軸に2026年9月の推定成約ADRを取ると、圏内の施設は「35室以下×4万〜7万円のヴィラ・コンド型」と「20〜84室×5千〜1.2万円のホテル型」の二つの塊に分かれ、50室超かつ2万〜4万円台の領域には1軒も存在しない。北部で大型のブランドリゾートが実際に成約している水準を参照すると、同じ9月のオリオンホテル モトブ リゾート&スパは¥36,400、オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパは¥33,300、ヒルトン沖縄瀬底リゾートは¥27,800、アラマハイナコンドホテルは¥28,000、カヌチャベイホテル&ヴィラズは¥23,800であり、8月はいずれも3.3万〜5.3万円へ上がる。134室の都市型ブランド運営が目指す価格帯は、この北部大型リゾートの帯(通常月2.4万〜3.6万円、夏3.3万〜5.3万円)と重なると見るのが自然である。
集積① ヴィラ・コンド型
14〜35室 × 4万〜7万円
古宇利島・屋我地島に2020年代の供給が集中。1棟・1室の単価が高く、グループ・長期滞在の受け皿。
集積② ホテル型(既存)
20〜84室 × 5千〜1.2万円
1980〜2010年代開業の中核施設。夏季の稼働は高く、価格は抑えめに運用。
空白域 大型ブランド帯
100室超 × 2.5万〜4.5万円
圏内に該当施設なし。北部大型リゾートの成約帯と重なり、134室計画の想定レンジになる。
需要 — 沖縄の入域観光客1,094万人、今帰仁村の9月稼働率は79.3%でLT45から46pt積み上がる
背景にあるのは沖縄全体の需要拡大である。沖縄県観光政策課の確定版によると、2025年度(令和7年度)の入域観光客数は1,093万5,300人で前年度比+9.9%、2018年度の記録を9.3%上回る過去最高となった。内訳は国内客799万4,400人(+4.3%)、外国客294万900人(+28.3%)で、外国客は航空路線の新規就航・増便とクルーズ船寄港の増加により2018年度の98.0%の水準に戻っている。北部では沖縄美ら海水族館が2024年8月に累計入館者6,000万人を達成し年間約300万人規模で推移、2025年7月25日に開業したジャングリア沖縄は開業1年の来場者が約100万人と公表された。古宇利島は圏内に2020年代の宿泊供給を呼び込んだ観光地であり、計画地はこれら三つの需要地の中間に位置する。ジャングリア開業後の北部リゾート市場の動きは、ジャングリア沖縄10ヶ月後の北部リゾート市場 — オフィシャル4ホテル+新規3開業の投資インパクトで詳しく分析している。
宿泊の消化状況を主要予約サイトの在庫から見ると、今帰仁村の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年8月に82.8%(対象33施設/客室361室、主要予約サイト掲載ベース)、9月に79.3%(対象29施設/客室356室)だった。同じ9月の本部町は88.3%(対象46施設/客室877室)、名護市は83.3%(対象35施設/客室2,064室)、沖縄県全体は86.7%(対象708施設/客室36,220室)である。今帰仁村の数値が周辺より低めに出るのは、対象施設に一棟貸しが多く、1室単位の在庫が最後まで残りやすいためと読める。ブッキングカーブを重ねると、今帰仁村はLT45時点で33.0%(対象54施設/客室407室の月間平均コホート)と4エリアで最も低い出発点から、LT1で79.3%まで46ptを積み上げる。本部町はLT45で62.8%、名護市は65.3%、沖縄県全体は64.5%から出発しており、今帰仁村は「直前に埋まる」市場であることが確認できる。
公的統計で季節性を確認しておく。観光庁「宿泊旅行統計調査」による沖縄県のリゾートホテル客室稼働率は、2025年が1月57.1%・8月75.0%・10月74.7%・12月55.0%で年間の山谷は約20pt、2026年は1月57.6%・4月68.9%・7月69.5%(速報)と前年並みの軌道にある。全国のリゾートホテル(2026年7月59.0%)に対し沖縄は10pt高く、最も低い冬場でも5割台半ばを保つのが沖縄リゾートの特徴である。後段の試算でOCC65〜80%の幅を置くのは、この公的統計の水準と、主要予約サイト在庫ベースの推定値(北部3市町で79〜88%)の間を取ったものである。
ピーク日の消化も見ておく。お盆(2026年8月13〜16日)の今帰仁村では、主要予約サイトで在庫を確認できた70施設のうち公開枠が総客室の30%以上の66施設(473室)を集計すると、63施設が4日間すべてで残室0を観測した。客室数20室以上の7施設(251室)は全施設が4日間とも残室0で、残室が出たのは客室6室の小規模施設1軒にとどまる。シルバーウィーク(9月19〜22日)も63施設(433室)のうち60施設が4日間すべてで残室0だった。連休のピーク需要は既存の供給を使い切っており、134室の追加はこの時期に限れば吸収余地が大きい。論点は閑散期の平日であり、だからこそ「中長期滞在対応」という客室仕様が意味を持つ。
「中長期の滞在に対応した客室設備」の意味 — 北部ではコンド型・ヴィラ型に長期滞在の言及が集まる
メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが集計した宿泊者口コミ(直近24か月、2024年11月〜2026年10月)を意味解析し、「長期滞在・連泊」に関する肯定的な言及の件数と口コミ全体に占める比率を北部3市町村で抽出した。今帰仁村ではOne Suite THE GRAND(33件・8.2%、N=402件)とOne Suite THE TERRACE(33件・13.7%、N=241件)、わんそーれおきなわ古宇利島(25件・20.8%、N=120件)が上位で、いずれもキッチンやリビングを備えたコンド・ヴィラ型である。本部町ではアラマハイナコンドホテル(79件・7.6%、N=1,036件)とオリオンホテル モトブ リゾート&スパ(72件・8.7%、N=830件)、名護市ではオリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ(208件・5.5%、N=3,792件)、ザ・ブセナテラス(106件・8.3%、N=1,279件)、カヌチャベイホテル&ヴィラズ(95件・9.1%、N=1,049件)が続く。
ここから読めるのは二つである。第一に、北部の大型リゾートは口コミの3〜9%が連泊・長期滞在に触れており、滞在型需要が既に存在する。第二に、言及比率が最も高いのは今帰仁村のコンド・ヴィラ型(13〜21%)で、キッチン付き客室が「数日の拠点」として選ばれている。134室の計画が「中長期の滞在に対応した客室設備」を掲げるのは、この二つの需要を一つの建物で受ける構えと読める。ヴィラ型が吸収しているファミリー・グループの連泊需要を、ホテル型のサービス水準で取り込めれば、閑散期平日の稼働を支える柱になる。
| 市町村 | 施設 | 長期滞在の肯定的言及 | 口コミに占める比率 | 分析口コミ数 |
|---|---|---|---|---|
| 今帰仁村 | One Suite THE GRAND | 33件 | 8.21% | N=402 |
| One Suite THE TERRACE | 33件 | 13.69% | N=241 | |
| わんそーれおきなわ古宇利島 | 25件 | 20.83% | N=120 | |
| BATON SUITE 沖縄古宇利島 | 21件 | 8.54% | N=246 | |
| ララマーレ古宇利 | 19件 | 6.51% | N=292 | |
| 本部町 | アラマハイナコンドホテル | 79件 | 7.63% | N=1,036 |
| オリオンホテル モトブ リゾート&スパ | 72件 | 8.67% | N=830 | |
| ヒルトン沖縄瀬底リゾート | 42件 | 3.47% | N=1,211 | |
| ホテルモトブリゾート | 42件 | 4.95% | N=849 | |
| ホテルマハイナ ウェルネスリゾートオキナワ | 32件 | 5.06% | N=632 | |
| 名護市 | オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ | 208件 | 5.49% | N=3,792 |
| ザ・ブセナテラス | 106件 | 8.29% | N=1,279 | |
| カヌチャベイホテル&ヴィラズ | 95件 | 9.06% | N=1,049 | |
| TWIN-LINE HOTEL YANBARU OKINAWA JAPAN | 56件 | 4.41% | N=1,269 | |
| ホテルピースアイランド名護 | 52件 | 10.02% | N=519 |
事業性試算 — 延床9,380㎡の仮定で総投資72億円、利回り6%にはOCC75%でADR3.9万円が要る
延床面積は公表されていないため、134室×1室あたり延床70㎡=9,380㎡を本稿の仮定とする(中長期滞在対応の客室を35〜40㎡、客室部分比率を55〜60%と想定した水準)。建設単価は二段階で置く。第一段階は国土交通省「建築着工統計」の沖縄県・宿泊業用建築物の2024年実績で、140棟・81,119㎡・工事費予定額4,242,498万円から1㎡あたり約52.3万円(坪172.9万円)となる。全国の同年実績は約59.1万円/㎡(坪195.5万円)で、沖縄は全国を1割強下回る。第二段階は竣工までの資材・労務のインフレを織り込んだ水準で、2025年+5.6%、2026年+6.0%、2027年+5.0%の複利(×1.175)を仮定し約61.5万円/㎡(坪203万円)とする。2026年の上昇率はターナー&タウンゼンドの国際建設市場調査2026が東京・福岡で6.0%としている値を、2027年は同調査が「低下に転じる見通し」とすることから5.0%を仮定した。
この前提で建設費は第一段階49.1億円、第二段階57.7億円となる。設計監理・FF&E・開業費を建設費の20%、土地を1.0ha×25,800円/㎡=約2.6億円と仮定すると、総投資は61.4億円(1室約4,590万円)から71.8億円(1室約5,360万円)の幅になる。参照値として、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)が名護市で保有するオリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ(361室、2005年2月竣工)の取得価格は14,950百万円で1室あたり約4,141万円である(同投資法人はポートフォリオ一覧で物件別の取得日を公表していない。2026年10月19日時点で当社確認)。新築の第二段階が既存大型リゾートの取得単価を3割上回る構図は、建設費の上昇局面に特有のものである。
| 項目 | 第一段階(2024年沖縄実績単価) | 第二段階(竣工時インフレ織込み)基準 |
|---|---|---|
| 建設単価(仮定) | 52.3万円/㎡(坪172.9万円) | 61.5万円/㎡(坪203万円) |
| 建設費(延床9,380㎡) | 49.1億円 | 57.7億円 |
| 設計監理・FF&E・開業費(建設費の20%) | 9.8億円 | 11.5億円 |
| 土地(1.0ha×25,800円/㎡の仮定) | 2.6億円 | 2.6億円 |
| 総投資 | 61.4億円 | 71.8億円 |
| 1室あたり | 約4,586万円 | 約5,356万円 |
| 利回り6%に必要なGOP | 3.7億円 | 4.3億円 |
| GOP率30%で必要な売上 | 12.3億円 | 14.4億円 |
| 必要RevPAR(売上÷134室÷365日) | ¥25,100 | ¥29,300 |
| OCC75%(通年平均の仮定)時の必要ADR | ¥33,500 | ¥39,100 |
GOP率は30%を置いた。リロホテルソリューションズが示すリゾートホテルの目安は20〜40%、インヴィンシブル投資法人が開示する運営91物件のGOP実績は38.9%(2024年12月期)で、後者は稼働が安定した既存物件の値であることから、開業初期の保守値として中位の30%を採用している。売上は客室・料飲を含む総売上として扱い、RevPARは「総売上を客室数と日数で割った値」として読む。この整理で第二段階・利回り6%の必要RevPARは約2.9万円、OCC75%(通年平均の仮定)なら必要ADRは約3.9万円、OCC70%なら約4.2万円になる。前段で見た北部大型リゾートの成約帯(通常月2.4万〜3.6万円、夏3.3万〜5.3万円)を年間で平均すると3万円前後と見込まれ、利回り6%は「夏の単価を通年で薄く延ばす」運用、つまり中長期滞在で閑散期の平日を埋める運用が前提になる。利回り5%ならOCC75%でADR約3.3万円と、北部大型リゾートの通年水準に近づく。
| 必要ADR(第二段階・総投資71.8億円・GOP率30%) | OCC65% | OCC70% | OCC75% | OCC80% |
|---|---|---|---|---|
| 利回り5%(GOP 3.6億円) | ¥37,600 | ¥34,900 | ¥32,600 | ¥30,600 |
| 利回り6%(GOP 4.3億円) | ¥45,200 | ¥41,900 | ¥39,100 | ¥36,700 |
| 利回り7%(GOP 5.0億円) | ¥52,700 | ¥48,900 | ¥45,700 | ¥42,800 |
リスク要因と時間軸 — 2027年2月の宿泊税、津波想定への設計対応、2028年の供給環境
制度面では沖縄県の宿泊税が先に動く。県の宿泊税は2027年2月1日施行予定で税率は定率2%(1人1泊の上限2,000円)、市町村が併課する場合は県0.8%+市町村1.2%となり、本部町・恩納村・北谷町・石垣市・宮古島市が1.2%(上限1,200円)の併課を予定している。今帰仁村はこの併課予定の市町村には含まれておらず、現時点では県税2%のみが適用される見通しである。ADR3.9万円(2名1室)の宿泊に対する県税は1人あたり数百円の規模で、価格決定への影響は限定的だが、開業時点では既に税込表示の実務が定着している前提で準備することになる。
災害面では、前段の津波浸水想定への設計対応が投資額に跳ねる。恩納村〜名護湾のリゾート客室を対象にした別稿では浸水想定区域内の施設のBCP投資を1室10万〜28万円と試算しており、134室に当てはめると約1,300万〜3,800万円、総投資の0.2〜0.5%に相当する。計画地の代表点は区域外にあるが、海岸帯の1〜5m帯に接するため、電気室・非常用電源・厨房の上階配置と避難動線は初期設計で織り込むのが合理的である。
| リスク | 水準 | 内容 | 対応の方向 |
|---|---|---|---|
| 市場(単価) | 中 | 必要ADR3.9万円(OCC75%・利回り6%)は北部大型リゾートの夏の帯。通年では2.4万〜3.6万円が実勢 | 中長期滞在プランで閑散期平日の稼働を確保し、利回り5〜6%のレンジで設計 |
| 市場(供給) | 低〜中 | 5km圏の稼働客室339室に+40%。ただし既存は50室以下が中心で、ピーク日はほぼ消化済み | 既存ホテル型との価格帯の重複は小さく、ヴィラ型とは滞在スタイルで差別化 |
| 制度 | 低 | 県宿泊税2%(2027年2月施行予定)。今帰仁村は併課予定の市町村に含まれていない | 税込表示・徴収実務を開業前に整備 |
| 建設 | 中 | 2024年沖縄実績52.3万円/㎡から竣工時61.5万円/㎡への上振れを仮定。離島物流の影響も | 第二段階の単価で資金計画を組み、工期の前倒し余地を確保 |
| 災害 | 中 | 海岸帯に津波1〜5m帯。代表点は区域外、液状化しにくい、土砂警戒区域外 | 1階用途・重要設備の上階配置、BCP投資1室10万〜28万円を計上 |
時間軸では、2026年10月時点から竣工の2028年7月末まで約21か月、開業の10月末まで約24か月である。開業時期の2028年10月は沖縄リゾートの客室稼働率が年間でも高い月(2025年10月は74.7%)に当たり、立ち上がりには追い風となる。一方、開業直後に迎える12月〜1月は公的統計で55〜58%まで下がる閑散期であり、開業半年で「中長期滞在」の商品が実際に平日を埋めるかどうかが、この案件の成立条件を最初に試す場面になる。
まとめ
今帰仁村渡喜仁西浜原の134室計画は、都市計画区域の指定がなく用途地域の制限を受けない白地に、県地価調査で2.6万円/㎡前後の土地を使って建つ、北部では初めての100室超・都市型ブランド運営のリゾートである。半径5km圏の稼働客室339室に対して+40%の供給だが、既存は50室以下のヴィラ・コンド型とホテル型に二極化しており、「100室超×2.5万〜4.5万円」の帯は空白になっている。今帰仁村の推定成約ADR4.0万円(2026年9月、N=21)は一棟貸し・ヴィラ型が押し上げた中央値であり、134室ホテルの参照値は北部大型リゾートの成約帯(通常月2.4万〜3.6万円、夏3.3万〜5.3万円)に置くのが妥当である。
総投資72億円(延床9,380㎡・61.5万円/㎡・付帯20%・土地2.6億円の仮定)、GOP率30%で利回り6%を得るには、OCC75%でADR約3.9万円が必要になる。利回り5%ならADR約3.3万円で北部大型リゾートの通年水準に近づく。ピーク日の需要は既に既存供給を使い切っており、成立条件は閑散期平日の稼働に収斂する。だからこそ「中長期の滞在に対応した客室設備」は仕様の一項目ではなく、この立地で134室を回すための収益設計そのものと読むべきである。立地面では、津波浸水想定の海岸帯に接する設計対応(1室10万〜28万円)と、都市計画区域外ゆえに条例・景観施策との調整で決まる建物計画が、2028年7月末の竣工に向けた実務上の論点になる。
よくある質問
Q. 今帰仁村の新ホテルはいつ開業しますか。
A. 株式会社ロイヤルホテルの公表資料では、2028年7月末頃に竣工し、2028年10月末頃に開業する予定とされています。正式名称や予約開始日は決定次第公表されるとしています。
Q. 客室数と建物の規模はどのくらいですか。
A. 地上7階建て・134室(予定)です。延床面積と敷地面積は公表されていないため、本稿の試算では1室あたり延床70㎡(計9,380㎡)を仮定しています。
Q. 周辺にはどのくらいの宿泊施設がありますか。
A. 計画地から半径5km圏には客室数10室以上の施設が21軒・512室掲載され、直近3か月に販売価格を確認できた稼働施設は13軒・339室です(2026年10月25日時点)。最大は84室で、100室を超える施設はまだありません。
Q. 津波のリスクはありますか。
A. 沖縄県が2016年に設定した津波浸水想定では、字渡喜仁の代表地点は浸水想定区域の外側ですが、0.5km以内の海岸帯には1〜5mの浸水深帯が連なっています。ビーチに面する計画のため、1階の用途や重要設備の配置が設計上の論点になります。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
案件情報は株式会社ロイヤルホテルの公表資料(2025年12月18日)。半径5km圏の客室ストック、推定成約ADR、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)、ブッキングカーブ、ピーク日の残室観測、口コミの長期滞在言及はメトロエンジンリサーチ集計(2026年10月25日時点)。立地評価は国土交通省 不動産情報ライブラリ、需要は沖縄県入域観光客統計と観光庁「宿泊旅行統計調査」、建設単価は建築着工統計(沖縄県・宿泊業用・2024年)による。
■ 試算前提
延床9,380㎡(134室×1室あたり70㎡)、建設単価は52.3万円/㎡(2024年沖縄実績)と61.5万円/㎡(2025〜2027年の上昇率を複利×1.175で織込み)の2段階、設計監理・FF&E・開業費は建設費の20%、土地は1.0ha×25,800円/㎡、GOP率30%、利回り=GOP÷総投資。必要RevPARは総売上÷134室÷365日、OCCは通年平均の仮定値(65〜80%)として置いた。
■ 限界・留意点
延床・敷地面積・土地取得価格・運営契約の条件は未公表で、試算の面積と費用はすべて本稿の仮定である。推定成約ADRはOTA公開価格からの推定値で各施設の実際の成約価格とは異なり、稼働率はOTA販売在庫ベースの推定で施設全体の実稼働率ではない。GOPで利回りを測る簡易試算で、公租公課・FF&E積立・運営委託料等は控除していない。実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要。
■ 一次情報(案件)
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 半径5km圏の客室ストック(掲載21軒512室・稼働13軒339室、2026年10月25日時点)、推定成約ADR(今帰仁村N=17〜21施設ほか)、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)、ブッキングカーブ、ピーク日の残室観測
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(NLP解析)— 宿泊者口コミの長期滞在に関する言及(直近24か月、北部3市町村)
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 用途地域(都市計画決定GIS)、都道府県地価調査(2025・2026年)、津波浸水想定区域(沖縄県設定・2016年)、土砂災害警戒区域、液状化傾向図
- 沖縄県 統計資料「地域指定等」(令和4年度・都市計画区域・用途地域・農業振興地域)
- 沖縄県文化観光スポーツ部観光政策課「令和7年度 沖縄県入域観光客統計概況(確定版)」(2026年6月)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」推移表(都道府県別・宿泊施設タイプ別 客室稼働率)
- e-Stat 国土交通省「建築着工統計調査」(統計表ID: 0003114490、宿泊業用建築物・沖縄県・全国)
- 国土地理院 地名検索(字渡喜仁ほか各地点の座標)
- 沖縄県「宿泊税について」(2027年2月1日施行予定・税率2%・上限2,000円)
■ REIT・業界レポート
- ジャパン・ホテル・リート投資法人 ポートフォリオ一覧(オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ 取得価格14,950百万円・361室)
- インヴィンシブル投資法人 運営ホテル実績(GOP率38.9%、2024年12月期)
- リロホテルソリューションズ「ホテルのGOPとは」(リゾートホテル20〜40%の目安)
- ターナー&タウンゼンド「国際建設市場調査2026」(日本の2026年建設コスト上昇率・2027年見通し)
- archi-book「2025年版 建築着工統計 構造別坪単価」(ホテル又は旅館 RC造202.6万円/坪)
■ ニュース・プレスリリース
- 共同通信「来場100万人、目標未達 ジャングリア沖縄開業1年」(熊本日日新聞掲載、2026年7月)
- 琉球新報「入館者数6000万人を突破! 沖縄美ら海水族館」(2024年8月)
- ジャパンエンターテイメント「ジャングリア沖縄 2025年7月25日開業」(PR TIMES・琉球新報転載)
- 訪日ラボ「2025年〜2026年に宿泊税を導入・改定した自治体まとめ」(2026年6月1日)
出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)
