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日本の旅館・ホテルは何軒あるか|許可施設9万8,338・旅館ホテル5万2,946・簡易宿所4万4,901【2024年度】

投稿日 : 2026.10.30

指定なし

日本の旅館・ホテルは何軒あるか|許可施設9万8,338・旅館ホテル5万2,946・簡易宿所4万4,901【2024年度】

日本に旅館やホテルは何軒あるのか。この問いへの公式な答えは、厚生労働省が毎年秋に公表する「衛生行政報告例」の年度報にある。2025年10月21日に公表された令和6年度の年度報によると、2025年3月末(令和6年度末)時点の旅館業の営業許可施設は98,338施設で、前年度末から4,863施設(5.2%)増えた。内訳は旅館・ホテル営業52,946施設、簡易宿所営業44,901施設、下宿営業491施設であり、旅館・ホテル営業の客室数は1,780,679室である。本稿では、この統計の定義と1965年からの推移、都道府県別の分布、そして観光庁の宿泊旅行統計調査や予約サイト掲載ベースの施設数と「数が合わない」理由を整理し、運営者・投資家がエリア供給を読むときの使い分けまで示す。

本稿の主データは厚生労働省「衛生行政報告例」(政府統計コード00450027)の令和6年度 年度報で、数値は原表どおりに記載した。比率や1施設あたり客室数など当社で計算した値は、本文中に式を示している。価格・稼働の指標は本稿では扱わないが、ホテルバンクの記事で用いる指標の定義は以下に統一している。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
Key Takeaways
  • — 98,338施設 — 2025年3月末(令和6年度末)の旅館業の営業許可施設数。前年度末比+4,863施設(+5.2%)で、内訳は旅館・ホテル営業52,946、簡易宿所44,901、下宿491。
  • — 客室1,780,679室 — 公表されるのは旅館・ホテル営業のみ。前年度比+0.2%にとどまり、「軒数は増えたが客室はほぼ横ばい」が直近1年の姿。
  • — 簡易宿所比率45.7% — 2014年度末の33.4%から10年で12ポイント上昇。2020→2024年度の施設増加9,179のうち76.8%を簡易宿所が占めた(当社計算)。
  • — 2018年6月15日の統合 — 改正旅館業法で「ホテル営業」「旅館営業」が「旅館・ホテル営業」に一本化。2017年度以前と以降は単純に接続できない。
  • — 許可数≠稼働中の供給 — 許可ベースは休業・季節営業も含むストック。エリアの実効供給は予約サイト掲載ベースの販売観測と併せて読む。

直答 — 2025年3月末の営業許可施設は98,338、客室は178万室

まずは最新年度の数字をそのまま示す。衛生行政報告例は都道府県・保健所設置市・特別区が旅館業法に基づく許可の状況を厚生労働省に報告したもので、各年度末(3月31日)現在のストックを数えている。令和6年度末の旅館業は98,338施設であり、旅館・ホテル営業が52,946施設(前年度比+1,908施設・+3.7%)、簡易宿所営業が44,901施設(+2,992施設・+7.1%)、下宿営業が491施設(−37施設・−7.0%)だった。客室数が公表されるのは旅館・ホテル営業のみで、1,780,679室(前年度1,776,994室から+3,685室)となっている。

ここで押さえておきたいのは、増加の6割強を簡易宿所が占めている点である。旅館業全体の増加4,863施設のうち簡易宿所は2,992施設で、全体に対する簡易宿所の比率は45.7%(=44,901÷98,338)まで上がった。2014年度末の同比率は33.4%(=26,349÷78,898)だったので、10年で12ポイント上昇したことになる。一方で、客室数の増加は+0.2%にとどまっており、「軒数は増えたが客室はほぼ横ばい」というのが直近1年の姿といえる。

表1 旅館業の営業許可施設数・客室数の推移(2019〜2024年度末)
年度末旅館業 計旅館・ホテル営業同 客室数1施設あたり客室簡易宿所営業簡易宿所比率下宿営業
2019年度末88,98351,0041,707,07833.537,30841.9%671
2020年度末89,15950,7031,739,12434.337,84742.4%609
2021年度末89,71550,5231,757,55734.838,59343.0%599
2022年度末90,70550,3211,770,75235.239,81143.9%573
2023年度末93,47551,0381,776,99434.841,90944.8%528
2024年度末98,33852,9461,780,67933.644,90145.7%491

※「旅館業 計」は3区分の合計(当社計算)。「1施設あたり客室」=旅館・ホテル営業の客室数÷施設数、「簡易宿所比率」=簡易宿所営業÷旅館業計(いずれも当社計算)。客室数は旅館・ホテル営業のみ公表。

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(令和6年度 年度報)よりホテルバンク編集部作成

なお、厚生労働省の「旅館業法概要」ページには執筆時点でも令和6年3月末の数字(93,475施設、うち旅館・ホテル営業51,038・簡易宿所41,909)が掲載されているが、これは1年前の年度末値である。令和7年度末(2026年3月末)の数字は、例年どおりなら2026年10月下旬以降の年度報で公表される見込みで、執筆時点(2026年10月24日)では未公表だった。

定義 — 旅館業法の3つの営業種別と2018年6月15日の統合

施設数を読む前に、何を数えているかを確認しておきたい。旅館業法は「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」を旅館業とし、現在は3つの営業種別に分けている。「旅館・ホテル営業」は簡易宿所営業と下宿営業以外のもの、「簡易宿所営業」は宿泊する場所を多数人で共用する構造・設備を主とする施設(ゲストハウス、カプセルホテル、山小屋など)、「下宿営業」は1か月以上の期間を単位として宿泊させるものである。許可は都道府県知事(保健所設置市・特別区ではその長)が出し、営業者は構造設備基準と衛生管理基準を満たす必要がある。

長期推移を読むうえで決定的に重要なのが、2018年6月15日に施行された改正旅館業法(平成29年法律第84号)である。この改正で、それまで別々だった「ホテル営業」(洋式の構造・設備が主)と「旅館営業」(和式の構造・設備が主)の営業種別が「旅館・ホテル営業」に統合された。あわせて施行令の改正で最低客室数(ホテル営業10室、旅館営業5室)が廃止され、1客室の最低床面積は7㎡以上(寝台を置く客室は9㎡以上)に統一されている。衛生行政報告例の付表にも「平成29年度以前の『旅館・ホテル営業』は『ホテル営業』と『旅館営業』を合計した数である」と注記されており、2017年度以前と2018年度以降を単純に接続して「旅館が減った」「ホテルが増えた」と読むことはできない。

もう一点、1996年までは暦年(12月末)の数値で、1997年度以降は年度(3月末)の数値である。グラフでは連続して描いているが、1996年と1997年度の間には3か月の時点差があることを留意しておきたい。

長期推移 — 統合前(〜2017年度)と統合後(2018年度〜)を分けて見る

1965年から2024年度までの60年を一つのグラフにすると、旅館業の構造変化が読み取れる。旅館営業は1980年の83,226施設をピークに2017年度には38,622施設まで減った。ホテル営業は1965年の258施設から2017年度には10,402施設へと一貫して増えている。統合後の「旅館・ホテル営業」は2018年度末の49,502施設を底に、2019年度51,004、2020年度50,703、2021年度50,523、2022年度50,321と横ばいで推移し、2023年度51,038、2024年度52,946と2年連続で増加に転じた。

簡易宿所営業は別の動きをしている。1990年代から2000年代は22,000〜27,000施設の狭いレンジで推移していたが、2014年度の26,349施設を起点に毎年度増え続け、2024年度末には44,901施設と10年で1.7倍になった。下宿営業は1965年の2,333施設から491施設まで減り、旅館業全体の0.5%にすぎない。

図1 旅館業の営業許可施設数の推移(1965年〜2024年度末)

※1996年までは暦年末、1997年度以降は年度末(3月末)の値。2018年6月15日施行の改正旅館業法により「ホテル営業」「旅館営業」は「旅館・ホテル営業」に統合されたため、2017年度以前の2系列と2018年度以降の1系列は接続していない。

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(令和6年度 年度報)よりホテルバンク編集部作成

客室数の推移は施設数と逆の方向を示す。旅館・ホテル営業(統合前はホテル営業+旅館営業)の客室数は1965年の632,518室から増え続け、2024年度末に1,780,679室となった。施設数が1980年のピークから約3万施設減る間に客室は115万室増えており、1施設あたり客室数(=客室数÷施設数、当社計算)は1965年の9.3室、2000年度の21.5室、2010年度の27.7室、2017年度の32.6室、2024年度の33.6室と拡大してきた。小規模な旅館が退出し、客室数の多いホテルが参入するという大型化が半世紀にわたって進んだことを、この一つの指標が物語っている。

図2 旅館・ホテル営業の客室数と1施設あたり客室数(1965年〜2024年度末)

※客室数は旅館・ホテル営業(2017年度以前はホテル営業と旅館営業の合計)。1施設あたり客室数=客室数÷施設数(当社計算)。簡易宿所・下宿の客室数は公表されていない。

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(令和6年度 年度報)よりホテルバンク編集部作成

都道府県別 — 施設数は沖縄・東京・長野、客室数は東京・大阪・北海道

都道府県別に見ると、施設数と客室数のランキングは一致しない。旅館業の施設数(3区分合計、当社計算)が最も多いのは沖縄県の7,612施設で、東京都7,122、長野県7,022、北海道6,357、京都府4,657が続く。一方、旅館・ホテル営業の客室数では東京都212,888室、大阪府128,519室、北海道122,333室、愛知県68,339室、静岡県68,174室の順になる。1施設あたり客室数は大阪府が78.1室、東京都が36.3室であるのに対し、長野県は23.8室で、都市圏のホテル集中と観光地の小規模施設集中という対照がはっきり出ている。

簡易宿所の比率(=簡易宿所営業÷旅館業計、当社計算)が高いのは京都府78.3%(3,647施設)、香川県70.9%、長崎県69.0%、鹿児島県65.6%、長野県62.1%、山梨県61.0%である。京都市内のゲストハウス・町家宿、瀬戸内や離島の小規模宿、山岳地の山小屋など、地域ごとに簡易宿所の中身は異なるものの、「軒数の過半が簡易宿所」という都道府県が10を超えていることは、施設数だけでエリア供給を測ると実態を見誤りうることを示している。分母を旅館・ホテル営業のみに置くか簡易宿所まで含めるかで県の順位がどれほど入れ替わるかは、県別の宿泊供給は分母で入れ替わる — 簡易宿所44,901施設で京都21位→5位で数え直している。

図3 都道府県別 旅館業の営業許可施設数 上位15(2024年度末・区分別)

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(令和6年度 年度報)よりホテルバンク編集部作成

下表は47都道府県の全数である。許可件数・廃止件数は年度中(2024年4月〜2025年3月)のフローで、3年増減は2021年度末からの施設数(3区分合計)の変化を示す。

表2 都道府県別 旅館業の営業許可施設数・客室数・許可/廃止件数(2024年度末・47都道府県)
順位都道府県旅館業 計旅館・ホテル営業同 客室数1施設あたり客室簡易宿所営業簡易宿所比率許可件数(年度中)廃止件数(年度中)3年増減(21→24年度)
1沖縄県7,6123,79967,74717.83,80450.0%52457+1,017
2東京都7,1225,858212,88836.31,25617.6%1,589113+2,202
3長野県7,0222,65663,28023.84,36162.1%452244+418
4北海道6,3572,930122,33341.83,31452.1%525209+546
5京都府4,65795550,07552.43,64778.3%291101+111
6静岡県4,5562,53568,17426.92,01644.2%321102+476
7山梨県3,4121,32527,24320.62,08061.0%25741+452
8千葉県2,7671,23259,04147.91,53355.4%25179+459
9鹿児島県2,48084727,13432.01,62665.6%21361+325
10神奈川県2,4281,30858,66244.81,11646.0%20165+230
11大阪府2,4251,646128,51978.177331.9%15560+89
12兵庫県2,4211,41146,73333.198640.7%15183+219
13栃木県2,3171,39836,55626.191939.7%19337+360
14新潟県2,2151,92643,52422.627912.6%10866-9
15福島県2,1351,38241,16929.865230.5%45101-167
16長崎県2,06563922,81535.71,42569.0%11046+73
17群馬県2,0471,12129,68026.592645.2%10750+114
18大分県1,99399023,59023.899149.7%10096+53
19岐阜県1,9131,06526,69225.183843.8%13329+181
20熊本県1,81696226,96928.085046.8%14564+122
21福岡県1,7161,31564,55049.140023.3%20047+176
22三重県1,5641,27530,01323.528418.2%7783+26
23石川県1,53571529,20140.881953.4%8538+107
24広島県1,48274833,15144.373349.5%12041+162
25和歌山県1,45858816,66528.387059.7%136144+84
26福井県1,42187715,74618.054138.1%7858+52
27愛知県1,3801,22068,33956.015811.4%7551-3
28茨城県1,16587828,72732.726622.8%6030+32
29岡山県1,14572922,17030.441236.0%9612+114
30香川県1,14433213,92641.981170.9%16015+263
31青森県1,05555619,13734.449346.7%4966-89
32滋賀県1,01848615,31931.552751.8%9444+115
33宮城県1,01666333,42350.433533.0%5553+17
34岩手県1,01271320,83629.229228.9%1949-84
35山形県1,00773718,91825.727026.8%2124+3
36愛媛県95041417,66442.753256.0%5635+28
37宮崎県93840915,41837.752856.3%5817+84
38島根県89037310,92129.351057.3%7217+110
39埼玉県84670326,76238.114316.9%4424+28
40高知県83033210,01730.249759.9%4731+40
41秋田県81749715,30230.830737.6%3022+8
42山口県79755217,49931.724130.2%5640+23
43奈良県78941810,42624.937147.0%5253+25
44鳥取県7723249,68229.944858.0%2921+36
45徳島県7214079,43823.231343.4%3656-16
46富山県58637115,21641.021436.5%2126+1
47佐賀県5243299,38928.519437.0%2316+10

※「旅館業 計」=旅館・ホテル営業+簡易宿所営業+下宿営業、「1施設あたり客室」=客室数÷旅館・ホテル営業施設数、「簡易宿所比率」=簡易宿所営業÷旅館業計、「3年増減」=2024年度末の旅館業計−2021年度末の旅館業計(いずれも当社計算)。許可・廃止件数は原表の年度中の件数。

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(令和3年度・令和6年度 年度報、e-Stat)よりホテルバンク編集部作成

「数が合わない」3つの統計 — 許可ベース・調査対象・予約サイト掲載ベース

宿の「数」を語る統計は一つではない。衛生行政報告例の98,338施設と、観光庁「宿泊旅行統計調査」が母集団とする施設数、そして当社が予約サイト掲載から把握する施設数は、いずれも正しいが数えているものが違う。それぞれの定義を並べると次のようになる。

表3 宿の「数」を数える3つの統計の違い(衛生行政報告例・宿泊旅行統計調査・予約サイト掲載ベース)
項目衛生行政報告例(厚生労働省)宿泊旅行統計調査(観光庁)予約サイト掲載ベース(メトロエンジンリサーチ)
数えているもの旅館業法の営業許可を持つ施設(年度末現在のストック)事業所母集団データベース(総務省)を基に観光庁が補正した名簿上の宿泊施設(ホテル・旅館・簡易宿所・会社・団体の宿泊所など)主要予約サイトに掲載され、販売価格が観測できる施設
最新の施設数98,338施設(2025年3月末)。うち旅館・ホテル営業52,946、簡易宿所44,901、下宿491母集団75,665施設、うち調査施設20,812(2026年7月分・第2次速報)国内約168,000施設を追跡し、うち稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を分析対象
客室数旅館・ホテル営業のみ1,780,679室。簡易宿所・下宿は非公表月次で客室稼働率を公表(2026年1月分から客室数20室以上は全数調査)約126万室(稼働確認施設の合計)
休業・季節営業許可が有効なら含む月次調査のため当月の営業実態を反映販売が観測されない施設は含まない
民泊(住宅宿泊事業)含まない(別法の届出制度)含まない本稿の施設数には含まない
更新頻度・公表時期年1回。翌年度10月頃に年度報を公表月次。第1次速報→第2次速報→確定値日次で更新

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」、観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年8月第1次速報・7月第2次速報 報道発表資料)、メトロエンジンリサーチよりホテルバンク編集部作成

差が生まれる理由は三つに整理できる。第一に母集団の違いで、衛生行政報告例は「許可を持っているか」、宿泊旅行統計調査は「事業所として名簿にあるか」、予約サイト掲載ベースは「いま販売しているか」を基準にしている。許可を持ちながら休業している施設、季節営業の山小屋、会員制の保養所などは、前者では数えられ後者では数えられない。第二に時点の違いで、年度末ストック、月次調査、日次観測ではそれぞれ別の瞬間を切り取っている。第三に区分の違いで、宿泊旅行統計調査は旅館・リゾートホテル・ビジネスホテル・シティホテル・簡易宿所・会社・団体の宿泊所という施設タイプを使い、旅館業法の営業種別とは一致しない。観光庁は2026年1月分から調査設計を見直し、層化基準を従業者数から客室数に変更して20室以上を全数調査としているため、前年比の読み方にも留意が必要である。

増えているのは何か — 簡易宿所と小規模施設の寄与、1施設あたり客室数の横ばい

直近5年度の内訳を見ると、増えているのは簡易宿所であることが明確に読み取れる。2020年度末から2024年度末までに旅館業全体は89,159施設から98,338施設へ9,179施設増えたが、そのうち簡易宿所営業は37,847施設から44,901施設へ7,054施設増え、増加分の76.8%(=7,054÷9,179、当社計算)を占めた。旅館・ホテル営業は50,703施設から52,946施設へ2,243施設の増加で、下宿営業は118施設減っている。

年度中のフローも同じ方向を示す。2024年度中の旅館業の営業許可件数は7,720件、営業廃止件数は2,817件で、差し引き4,903件の純増だった(年度末ストックの増加4,863施設とは、許可取消26件などの影響で厳密には一致しない)。都道府県別の許可件数は東京都1,589件、北海道525件、沖縄県524件、長野県452件、静岡県321件、京都府291件が上位であり、東京都は1都で全国の許可件数の20.6%(=1,589÷7,720、当社計算)を占めた。廃止件数が多いのは長野県244件、北海道209件、和歌山県144件、東京都113件で、観光地では参入と退出が同時に進んでいることがうかがえる(許可7,720件・廃止2,817件を客室ベースのネット供給として県別に追った分析は旅館業98,338施設、客室が純減した県は30 — 許可7,720件・廃止2,817件のネット供給を参照)。

3年間(2021年度末→2024年度末)の施設数増減を都道府県別に見ると、東京都が+2,202施設(+44.8%)と突出し、沖縄県+1,017、北海道+546、静岡県+476、千葉県+459、山梨県+452が続く。東京都の増加は旅館・ホテル営業が3,654施設から5,858施設へ増えたことによるもので、客室数の増加(205,327室→212,888室、+7,561室)に対して施設数の増加幅が大きい。1施設あたり客室数が56.2室から36.3室へ下がった計算になり、小規模な宿泊施設の許可取得が都内で進んだことを示している。減少した都道府県は福島県−167、青森県−89、岩手県−84、徳島県−16、新潟県−9、愛知県−3の6県で、いずれも減少幅は1割未満にとどまる。

図4 旅館業の営業許可施設数 3年増減(2021年度末→2024年度末)上位10・下位5

※3区分合計の増減(当社計算)。

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(令和3年度・令和6年度 年度報、e-Stat)よりホテルバンク編集部作成

全国の1施設あたり客室数が2017年度の32.6室から2024年度の33.6室へ1室しか増えていないことも、この文脈で読める。半世紀続いた大型化のトレンドは2010年代後半以降に鈍化し、客室数の少ない旅館・ホテル営業(旧来なら最低客室数の基準で許可を取れなかった規模を含む)と簡易宿所が軒数を押し上げる局面に入っている。旅館営業の減少を衰退の物語として語るのではなく、区分の統合と業態転換、そして小規模施設の参入という構造変化として読むのが、この統計の正しい使い方といえる。

運営者・投資家への含意 — 許可数は稼働中の供給ではない

第一に、衛生行政報告例の施設数・客室数は「許可ベースのストック」であり、競合として実際に販売している供給ではない。休業中の施設、季節営業の施設、会員制や団体専用で一般販売しない施設も含むため、エリアの実効供給を測るには、予約サイト掲載ベースで販売が観測できる施設数・客室数を併せて見る必要がある。逆に、予約サイト掲載ベースの数字は未掲載の旅館・民宿・簡易宿所を含まないため、簡易宿所比率が高い京都・長野・山梨・鹿児島などでは、許可ベースの数字との差が大きくなることを前提に読むのが有効といえる。許可施設と予約サイト掲載施設の差約7万がどの営業種別・都道府県・客室規模で生じているかは、旅館業許可98,338施設 vs OTA掲載27,248 — 差7万の正体を数える2026で分解している。

第二に、年度報の公表は翌年度の10月頃と遅く、直近の供給変化を追うには向かない。足元の新規開業や閉館を把握するには、当社の開業データや国土交通省の建築着工統計・建築物動態統計といった先行指標を組み合わせ、衛生行政報告例は「年に一度、母集団全体の水準を確認する基準値」として位置づけるのが実務的である。

第三に、都道府県単位で見た許可件数と廃止件数の両方が大きいエリア(長野・北海道・東京・和歌山など)は、供給の入れ替わりが活発な市場である。既存施設にとっては新規参入が増える一方で、退出した施設の需要を取り込む機会も生まれる。参入を検討する投資家にとっては、簡易宿所の許可が増えているエリアで旅館・ホテル営業の客室が伸びていないケース(施設数は増えても客室はほぼ横ばいの構図)が、中規模ホテルの空白を示唆する場合がある。施設数と客室数、そして区分別の内訳を三点セットで読むことが、公式統計を投資判断に生かす最短の道になる。

よくある質問

Q. 日本の旅館・ホテルは全国で何軒ありますか?

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、2025年3月末(令和6年度末)時点の旅館業の営業許可施設は98,338施設です。内訳は旅館・ホテル営業52,946施設、簡易宿所営業44,901施設、下宿営業491施設で、旅館・ホテル営業の客室数は1,780,679室です。

Q. 「旅館」と「ホテル」の施設数は別々に分かりますか?

2018年6月15日施行の改正旅館業法で「ホテル営業」と「旅館営業」の営業種別が「旅館・ホテル営業」に統合されたため、2018年度以降の衛生行政報告例では区分されていません。別々に分かるのは2017年度末まで(ホテル営業10,402施設・旅館営業38,622施設)です。

Q. 衛生行政報告例と観光庁の宿泊旅行統計調査で施設数が違うのはなぜですか?

数えている対象が異なります。衛生行政報告例は旅館業法の営業許可を持つ施設の年度末ストック(休業中を含む)で、宿泊旅行統計調査は事業所母集団データベースを基に観光庁が補正した名簿(2026年7月分で75,665施設)から抽出した施設への月次調査です。予約サイト掲載ベースの施設数はさらに別の母集団で、販売が観測できる施設だけを数えます。

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参考資料・出典一覧

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