トップ > 業界トレンド > 宿泊業の退出2025年267件、新規開業は1施設23.7室 — 施設数と客室数のねじれ

宿泊業の退出2025年267件、新規開業は1施設23.7室 — 施設数と客室数のねじれ

投稿日 : 2026.09.09

指定なし

宿泊業の退出2025年267件、新規開業は1施設23.7室 — 施設数と客室数のねじれ

宿泊事業者が市場から出ていく経路は一つではない。2025年に発生した「宿泊業」の倒産は89件、休廃業・解散は178件で、合計267件が退出した(帝国データバンク調べ)。一方で新規開業は続いており、施設数だけを見れば供給は増えている。ところが客室数ベースで積み上げ直すと、まったく違う絵が出てくる。本稿では公的統計と開業データを突き合わせ、「施設数は保たれても客室数の増え方は緩やか」という構造を数字で分解する。

本記事における用語・データの定義

  • 倒産:負債1,000万円以上の法的整理(帝国データバンクの集計定義)。東京商工リサーチは法的整理に加えて私的整理も倒産に含める。
  • 休廃業・解散:倒産以外の事由で事業活動を停止した企業、および商業登記上の解散。倒産とは母集団も判定方法も異なり、両者を足し合わせた数値は調査主体ごとに定義が違う。
  • 営業廃止件数:旅館業法に基づく営業許可の廃止届出件数(施設ベース・年度中)。企業ベースの倒産・休廃業とは単位が異なる。
  • 新規開業(OTA掲載確認ベース)メトロエンジンリサーチが追跡する国内の宿泊施設のうち、OTA上で稼働が確認できた施設の設立日をもとに集計した年次開業数。国内所在の施設のみを対象とし、OTA未掲載の宿泊施設は含まない。
  • データ出典:厚生労働省「衛生行政報告例」、帝国データバンク、東京商工リサーチ、国土交通省「建築物動態統計調査」、メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • — 2025年の宿泊業の退出は267件(倒産89件+休廃業・解散178件、帝国データバンク)。企業ベースの数字で、施設ベースの営業廃止2,817件とは母集団が異なる。
  • — 新規開業は2019年の1施設41.5室から2025年23.7室へ42.9%縮小。施設数の減少は16.0%にとどまる一方、客室数は52.0%減った。
  • — 2026年開業は1〜9室帯が件数の69.7%・客室数の5.6%、100室以上が件数8.7%・客室数66.0%。客室供給は大型案件の本数だけで決まる。
  • — 全国ストックでも2021→2024年度で施設数+4.8%に対し客室数+1.4%。件数と客室数は別の指標として読む必要がある。

退出の3経路 — 倒産・休廃業/解散・譲渡は同じものではない

宿泊施設が「なくなった」ように見える事象は、少なくとも三つの異なる経路に分かれる。第一が倒産で、これは法的整理(破産・民事再生など)を伴う。第二が休廃業・解散で、債務整理を経ずに事業を止める、あるいは登記上解散する形をとる。第三が譲渡・リブランドで、これは事業体としては消えても、建物と客室は別の運営者のもとで市場に残り続ける。

三つ目が重要である。譲渡やリブランドは統計上「退出」として数えられることがあるが、客室ストックとしては失われていない。つまり企業数の減少と客室数の減少は、そもそも同じ尺度で語れない。以下の整理を先に置いておく。

退出の3経路と客室ストックへの影響 — 倒産・休廃業/解散・譲渡の定義比較
経路定義・集計主体客室ストックへの影響
倒産負債1,000万円以上の法的整理(帝国データバンク)/法的整理+私的整理(東京商工リサーチ)スポンサー再生なら客室は残存。清算なら消失
休廃業・解散倒産以外で事業活動を停止した企業+商業登記解散建物が残れば再稼働・用途転換の余地あり
譲渡・リブランドM&A・事業承継。上記いずれの統計にも計上されないことが多い客室はそのまま維持。運営者だけが交代
営業廃止(旅館業法)保健所への営業許可廃止届(施設ベース・厚生労働省)許可上の消滅。建物の除却とは一致しない

出典:各調査主体の公表定義よりホテルバンク編集部作成

2025年の退出は267件 — ただし調査主体で数字の向きが逆になる

帝国データバンクが2026年2月6日に公表した「宿泊業」の倒産・休廃業解散動向(2025年)によれば、2025年の宿泊業の倒産は89件で、前年の78件を11件(14.1%)上回り2年連続の増加となった。これに休廃業・解散178件を加えた267件が、年間の退出件数である。地域別では三大都市圏を除く「地方」での発生が75.3%を占め、コロナ禍前の2019年(77.2%)に近い水準まで戻っている。

同社は倒産要因の内訳にも触れており、要因に「老朽化」「修繕」「故障」が含まれるケースの割合は、2006〜2010年の6.0%から2021〜2025年には14.6%へと上昇している。つまり足元の退出は、需要環境よりも建物・設備の更新サイクルに強く紐づいている。装置産業である宿泊業では5〜10年間隔のリノベーションが前提となるため、この更新タイミングで所有・運営が入れ替わるのは自然な現象でもある。

出典:帝国データバンク「『宿泊業』の倒産・休廃業解散動向(2025年)」(2026年2月6日公表)よりホテルバンク編集部作成

ここで注意が必要なのは、全産業の休廃業・解散の総数が、調査主体によって向きすら異なることである。帝国データバンクは2025年を67,949件とし前年(69,019件)から1.6%の減少としている。一方、東京商工リサーチは2025年を67,210件、前年比7.2%の増加としている。総数の水準はほぼ同じでも、増減の符号が逆になる。東京商工リサーチは2024年に解散判定へ公告情報を取り入れる形で調査手法を一部見直しており、この種の定義変更が年次比較に効いてくる。したがって「休廃業が増えた/減った」と一言で語るのではなく、どの調査主体のどの定義かを明示して読む必要がある。

企業ベースの統計とは別に、施設ベースの数字も見ておきたい。厚生労働省「衛生行政報告例」(令和6年度、2025年10月21日公表)によると、2024年度中の旅館・ホテル営業の営業廃止件数は2,817件、営業許可件数は7,720件だった。企業ベースの267件と施設ベースの2,817件は10倍以上の開きがあるが、これは母集団が違うためで、矛盾ではない。1社が複数施設を持つケース、個人事業として営まれるケース、そして許可の承継・構造変更に伴う再許可などが、施設ベースの件数を押し上げる。許可と廃止の差分を都道府県別に積み上げると客室が純減した県も見えてくる点は、旅館業98,338施設、客室が純減した県は30で詳しく分解している。

新規開業は1施設41.5室から23.7室へ — 件数より先に規模が縮んだ

それでは供給側はどう動いているか。メトロエンジンリサーチが追跡する国内施設のうち、OTA上で稼働が確認できた施設の設立年をもとに集計すると、新規開業の件数と客室数は次のように推移している。

新規開業の施設数・客室数・1施設あたり客室数の推移(2019〜2026年、OTA掲載確認ベース、国内所在施設のみ)
開業年施設数客室数1施設あたり100室以上の施設数
2019年2,07786,29541.5室294
2020年2,25979,11035.0室
2021年1,82159,12632.5室222
2022年1,68549,48229.4室
2023年2,01843,75821.7室136
2024年1,98339,07019.7室110
2025年1,74441,39323.7室137
2026年(捕捉進行中)1,42036,81825.9室124

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、国内所在施設のみ。N=2019年2,077施設/86,295室、2025年1,744施設/41,393室、2026年1,420施設/36,818室・捕捉進行中)

施設数は2019年の2,077から2025年の1,744へ、率にして16.0%の減少にとどまる。ところが客室数は86,295室から41,393室へと52.0%減っている。1施設あたりの規模は41.5室から23.7室へ、42.9%小さくなった。件数の減り方と客室の減り方が3倍以上ずれている。これが本稿の芯にあたる「ねじれ」である。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、国内所在施設のみ。N=2019年2,077施設/86,295室、2025年1,744施設/41,393室)

ねじれの正体は業態構成にある。2026年の開業を業態別に見ると、施設数の上位は貸別荘680施設、ビジネスホテル188施設、ホステル106施設、リゾートホテル83施設と続く。ところが客室数で並べ替えると、ビジネスホテル19,235室、リゾートホテル6,924室、シティホテル4,851室で全体の84.2%を占め、施設数首位の貸別荘は680施設あっても1,111室(1施設あたり1.6室)にとどまる。件数のランキングと客室数のランキングが、ほぼ別物になっている(業態別の内訳をレベニューマネジメントの観点から読み解いたものとして2026年の新規開業1,242件・33,749室も参考になる)。

2026年開業の業態別 施設数・客室数・客室シェア(N=1,420施設/36,818室、捕捉進行中)
業態(2026年開業)施設数客室数1施設あたり客室シェア
ビジネスホテル18819,235102.3室52.2%
リゾートホテル836,92483.4室18.8%
シティホテル424,851115.5室13.2%
ホステル1061,98118.7室5.4%
貸別荘6801,1111.6室3.0%
旅館4973114.9室2.0%
コテージ646249.8室1.7%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、2026年・N=1,420施設/36,818室、捕捉進行中)

規模帯で分解する — 施設数の7割が客室の6%、100室以上の1割が客室の3分の2

業態よりもさらに直接的なのが規模帯である。開業を客室数のレンジで4分割し、施設数シェアと客室数シェアを並べると、ねじれは一目で分かる。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、2026年は捕捉進行中。N=2019年2,077施設/2024年1,983施設/2026年1,420施設)

規模帯別の施設数シェアと客室数シェア(2019/2024/2026年、N=2,077/1,983/1,420施設)
規模帯2019 施設数/客室数シェア2024 施設数/客室数シェア2026 施設数/客室数シェア
1〜9室53.2% / 4.0%76.4% / 8.3%69.7% / 5.6%
10〜29室20.2% / 8.2%10.3% / 8.6%11.3% / 7.3%
30〜99室12.4% / 17.3%7.7% / 22.4%10.3% / 21.1%
100室以上14.2% / 70.5%5.5% / 60.7%8.7% / 66.0%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、国内所在施設のみ。N=2019年2,077施設/86,295室、2024年1,983施設/39,070室、2026年1,420施設/36,818室・捕捉進行中)

2026年の開業では、1〜9室の小規模施設が件数の69.7%を占めるのに対し、客室数では5.6%にすぎない。逆に100室以上は件数で8.7%(124施設)でありながら、客室数の66.0%(24,315室)を供給している。つまり客室ストックの増減はほぼ100室以上の大型案件の本数だけで決まっており、この本数は2019年の294件から2024年の110件まで縮小したのち、2025年137件・2026年124件(進行中)へと持ち直している。件数ベースの開業統計を眺めていても、この動きはまったく見えない。なお小規模帯がここまで件数を押し上げている制度的な背景については、1室から旅館業許可は2018年施行済みが経緯を整理している。

なお2026年の1施設あたり客室数(25.9室)が2024年(19.7室)を上回っているのは、小規模帯の掲載が遅れて出てくることによる見かけ上の押し上げを含む。次節の注記のとおり、この数値は今後の捕捉で下方に動く可能性がある。

全国ストックで見ても同じ — 施設数+4.8%に対し客室数+1.4%

ここまでは開業フローの話である。ストック側でも同じ方向のねじれが確認できる。厚生労働省「衛生行政報告例」の旅館・ホテル営業を見ると、2021年度末の50,523施設・1,757,557室に対し、2024年度末は52,946施設・1,782,232室となっている。施設数は+2,423施設(+4.8%)、客室数は+24,675室(+1.4%)で、伸び率に3倍以上の差がある。1施設あたり客室数は34.8室から33.7室へと1.1室縮んだ。

出典:厚生労働省「衛生行政報告例」(e-Stat)よりホテルバンク編集部作成。施設数・客室数が同一表で得られる年度を抜粋

より長い目盛りで見ると、旅館・ホテル営業の施設数は2012年度の54,540施設から2017年度の49,024施設まで一貫して減少し、その後2024年度の52,946施設まで戻している。一方で客室数は2012年度1,555,961室から2024年度1,782,232室へ、この間に一度も大きく落ち込むことなく14.5%増えた。施設が減っていた時期にも客室は増えていた。つまり「施設数の増減=供給量の増減」という読み替えは、この10年以上にわたって成り立っていない。

2024年度中の許認可の動きも参考になる。旅館・ホテル営業の営業許可は7,720件、営業廃止は2,817件で、許可が廃止の2.7倍にのぼる。ただし営業許可には、承継や施設の構造変更に伴う再許可も含まれ得るため、純粋な新規参入件数ではない。実際、施設数の純増は前年度比+1,908施設(51,038→52,946)にとどまる。許可件数と純増の差分こそが、建物と客室を維持したまま担い手が入れ替わっている領域にあたる。

2026年データの取り扱いについて:新規開業の集計はOTA掲載の確認をもとにしており、掲載は開業の数か月前から出始めるため、直近以降の月は今後の掲載反映で件数・客室数とも増加する見込みです。2026年の月別内訳では1〜7月が月155〜241施設で推移する一方、9月21施設・11月7施設と急減しますが、これは供給が細るのではなく観測が追いついていないことを示します。年間値(1,420施設・36,818室)は現時点での下限値として参照してください。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、国内所在施設のみ。N=2026年1,420施設/36,818室・捕捉進行中)

引き受け側の読み方 — どの規模帯のストックが動いているか

ここまでの数字を、ストックを引き受ける側(投資家・運営チェーン・地域の事業承継者)の視点で並べ直す。

第一に、動いているストックの中心は中小規模である。企業ベースの退出267件のうち、地方での発生が75.3%を占めることは前述したとおりで、これは客室数の少ない旅館・小規模ホテルが母数の中心にあることを示す。同時に、新規開業側で1〜9室帯が件数の約7割を占めているということは、同じ規模帯で新旧の入れ替わりが並行して起きているという意味でもある。退出した建物がそのまま失われるのではなく、別の担い手・別の業態で再び市場に出てくる余地がここにある。

第二に、客室ストックの増減を左右するのは100室以上の案件本数である。2026年の開業では124施設が24,315室を供給し、これが年間客室数の66.0%にあたる。逆に言えば、この帯の案件が年に数十件動くだけで、全国の客室供給は数千室単位で変わる。国土交通省「建築物動態統計調査」に基づく計画ベースのパイプライン(30室以上)を見ると、2026年24件・4,940室、2027年20件・3,891室、2028年9件・1,473室が確認できる。ただし確認申請は通常開業の1〜2年前に行われるため、2028年以降の件数は今後の申請追加で増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として読むべき数値である。

第三に、更新投資のタイミングが担い手交代のトリガーになっている。倒産要因に「老朽化」「修繕」「故障」が含まれる割合は2021〜2025年で14.6%と、2006〜2010年の6.0%から2.4倍に上がっている。5〜10年間隔のリノベーションが必要な装置産業において、この更新投資をどの主体が負担するかが所有・運営構造の分岐点になる。逆に見れば、リノベーション資金を用意できる引き受け手にとっては、立地と建物の骨格が既にある物件を、新築より短いリードタイムで市場に戻せる局面ということでもある。地域の名物料理や固有の集客資源を持つ施設が、スポンサーのもとで再生に至るケースは実際に存在すると帝国データバンクも指摘している。

第四に、業態転換の余地がある。2026年の開業で貸別荘が680施設と件数首位である一方、旅館は49施設にとどまる。この非対称は、既存の旅館建物が改修を経て別の業態として市場に戻る流れが働いていることと整合的である。同じ土地・同じ建物でも、客室構成と運営方式を組み替えれば異なる需要層に届く。ストックの入れ替わりを「同一業態での置き換え」と見るか「業態間の再配置」と見るかで、取得候補の見え方は大きく変わる。

まとめ — 件数と客室数は別々に読む

本稿で確認した数字を整理する。2025年の宿泊業の退出は倒産89件と休廃業・解散178件の計267件(帝国データバンク)。全産業の休廃業・解散は調査主体によって2025年の増減の符号すら逆になるため、必ず定義と主体を確認して読む必要がある。施設ベースでは2024年度中に営業廃止2,817件、営業許可7,720件が動いている(厚生労働省)。

供給側では、新規開業の施設数が2019年から2025年に16.0%減にとどまる一方、客室数は52.0%減となり、1施設あたりは41.5室から23.7室へ縮んだ。2026年の開業でも、1〜9室帯が件数の69.7%を占めながら客室数では5.6%、100室以上が件数の8.7%で客室数の66.0%という構成である。全国ストックでも2021年度末から2024年度末にかけて施設数+4.8%に対し客室数+1.4%と、同じ方向のねじれが出ている。

したがって、市場の供給圧を測るには件数ではなく客室数ベースの積み上げが必要であり、退出の議論も企業ベースと施設ベースを分けて扱う必要がある。そして退出した施設の建物と立地は多くの場合そのまま残る。数字が示しているのは供給の縮小ではなく、担い手と規模構成の入れ替わりである。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 退出動向(民間調査)

■ 政府統計

■ 市場データ

関連記事