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群馬の宿泊単価、市町村で3.5倍差 — みなかみ・草津と県都の価格階層2026

投稿日 : 2026.09.16

群馬県

エリア・施設分析

群馬の宿泊単価、市町村で3.5倍差 — みなかみ・草津と県都の価格階層2026

群馬県は草津・伊香保・水上・四万・万座と、全国でも屈指の温泉地の層を持つ。ところが県都・前橋市や高崎市の宿泊単価は、全国のビジネスホテル帯とほぼ同じ水準にとどまる。同じ県内でありながら、市町村をまたぐと単価はどれだけ開くのか。メトロエンジンリサーチの市町村別データ12ヶ月分(2025年9月〜2026年8月)を集計すると、最上位のみなかみ町と最下位の伊勢崎市のあいだには約3.5倍の階層差が存在していた。本稿ではこの階層構造を、価格・供給・需給・口コミの4つの断面から数字で開いていく。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
  • 算出基準(basis):確定月は実測に基づく「実測基準」、調査時点より先の月は現時点の掲載在庫からの「将来推定基準」で算出します。両者は算出根拠が異なるため、基準をまたいだ差分を変化率として読むことはできません。本記事では基準の別を各図表のキャプションに明記し、前年比・推移はすべて同一基準の月どうしで比較しています。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。施設全体の実稼働率とは異なります。
  • 口コミ評価:直近24ヶ月に投稿された宿泊者口コミのカテゴリ別スコア(5点満点)のエリア中央値。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ/ホテルバンク編集部調べ
Key Takeaways
  • — 実測基準12ヶ月平均でみなかみ町¥18,200 対 伊勢崎市¥5,270。同一県内で約3.5倍の価格階層が成立し、温泉地群・高原リゾート群・平野部都市群の3層に分かれる。
  • — 階層の背景は業態構成と規模。旅館538施設は平均19.3室、ビジネスホテル158施設は平均70.6室で、施設数は旅館が3.4倍多いのに客室数はビジネスホテルが上回る二重構造にある。
  • — 需給は価格と逆向き。推定OCCはビジネス85.7〜90.0%が最高、リゾート63.8〜81.0%が最低(2026年5月〜8月の確定月)で、単価上位のリゾート・旅館にこそ販売余地が残る。
  • — 口コミでは嬬恋村の食事4.60が県内トップ。ADR第2層のペンション・オーベルジュ集積エリアが評価で上位を占め、単価と評価は一致していない。
  • — 階層差3.45倍は栃木3.47倍とほぼ同水準で長野・静岡より小さい。違いは上限で、熱海¥24,600・軽井沢¥23,500に対し群馬の最上位は¥18,200。¥20,000超の帯が県内の空白として残る。

県全体のADRは冬に立ち上がる — 12月・1月に年間ピーク

まず群馬県全体の姿から確認する。県内で価格が観測できる約430施設をもとに月次ADRを算出し、年ごとに重ねたものが下のグラフだ。すべて実測基準の月のみを使用している。

浮かび上がるのは、はっきりした冬型の季節性である。2025年は11月に¥13,000、12月に¥13,900と年間ピークを形成し、翌1月も¥13,100と高い水準を維持した。逆に谷は6月で、2026年6月は¥10,600。ピークとボトムの差は約31%に達する。都市部のビジネス市場が平日需要に支えられて年間を通じ平坦なのに対し、群馬は紅葉とスキー・温泉という2つの季節需要が単価を押し上げる構造を持っている。

前年同月比で見ると、伸びが集中しているのも冬だ。2025年11月は前年同月比+14.1%、12月は+19.0%、2026年1月は+13.6%。一方で2026年7月は前年同月比−3.5%、8月は+1.8%と、夏場の伸びは限定的だった。群馬の単価上昇は、冬季の温泉・スノー需要が牽引しているといえる。

群馬県 月次ADR(推定成約単価/実測基準)年別重ね合わせ。N=410〜449施設。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

市町村別ADRは3.5倍差 — みなかみ¥18,200 対 伊勢崎¥5,300

県平均を市町村に分解すると、県内の価格階層がくっきりと現れる。2025年9月〜2026年8月の12ヶ月をすべて実測基準でならした市町村別ADRは以下のとおりだ。

市町村別ADR(2025年9月〜2026年8月の12ヶ月平均・推定成約単価/実測基準・1室2名利用時の1室あたり)。対象は月次で価格を算出できた施設数8以上の12市町村。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

階層は明確に3層に分かれる。第1層は¥16,000〜18,200のみなかみ町・中之条町(四万温泉)・草津町・渋川市(伊香保温泉)。いずれも歴史のある温泉地で、2食付きを標準とする旅館が主体のエリアだ。第2層は¥10,500〜13,700の嬬恋村(万座・鹿沢)・沼田市・長野原町(北軽井沢)・片品村。高原リゾートと山岳エリアで、宿泊施設の性格が第1層とは大きく異なる。そして第3層が¥5,300〜7,500の前橋市・高崎市・太田市・伊勢崎市という平野部の都市群である。

注目したいのは、第1層と第3層の差が3.5倍に達している点だ。県都の高崎市(¥7,350)・前橋市(¥7,470)は、全国のビジネスホテル帯として標準的な水準にある。この2市の12ヶ月の値動きを見ると、最安月と最高月の差はわずか19〜29%にとどまり、季節による振れがほとんどない。県内の宿泊市場は、価格水準においても季節変動においても、事実上まったく別の2つの市場が同居している状態にある。この階層を秋の実勢に絞って4層で整理した内容は、群馬県の宿泊市場2026 — 草津・伊香保・四万みなかみ・前橋高崎の4層で読む秋のADR階層で詳しく扱っている。

同じ温泉地でも季節の振れ幅は異なる — 伊香保1.66倍、草津1.46倍

温泉地どうしを並べても、価格の動き方は一様ではない。下は主要5エリアの12ヶ月推移(すべて実測基準)である。

主要5市町村の月次ADR推移(推定成約単価/実測基準)。N=草津町76〜92、みなかみ町46〜51、渋川市45〜47、嬬恋村19〜24、高崎市27〜33施設。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

渋川市(伊香保温泉)は最安の2026年6月¥12,600から最高の2025年11月¥20,900まで1.66倍に振れる。首都圏から日帰り圏という立地ゆえ、需要の集中する時期と閑散期のコントラストが大きく出る。草津町は¥14,600〜21,300で1.46倍、みなかみ町は¥15,600〜20,400で1.31倍と、より平準化されている。草津は年間を通じた温泉目的の来訪が厚く、みなかみはアウトドア・アクティビティで夏場の需要も確保できているため、いずれも底が高い。

嬬恋村は¥9,500〜16,800と1.77倍の振れ幅を持ちながら、水準としては第2層に位置する。12月・1月にスキー需要で¥16,500超まで上がる一方、6月には¥9,500まで下がる。年間を通じた需要の谷が深いエリアといえる。そして高崎市は¥6,500〜7,800のレンジをほぼ横ばいで推移し、他の4エリアとは完全に異なる挙動を示す。

単価の差は「1施設あたりの規模」の差 — 嬬恋村185施設・平均14室

この階層構造の背景には、供給側の構成そのものの違いがある。施設マスター上で群馬県内に把握できるのは1,617施設。うち市町村を特定できた1,615施設の客室合計は33,552室で、業態別の内訳は次のとおりだ。

表1 群馬県内の業態別 施設数・客室数・平均客室数(2026年9月時点)
業態施設数客室数平均客室数
旅館53810,37319.3室
ペンション2141,6627.8室
ビジネスホテル15811,15770.6室
民宿1561,2428.0室
貸別荘・コテージ1083493.2室
ロッジ・山小屋6971010.3室
キャンプ・グランピング675508.2室
リゾートホテル442,92966.6室
シティホテル151,26884.5室
その他(プチホテル・公共の宿・オーベルジュ等)2463,31213.5室

群馬県内 施設マスター集計(N=1,615施設・33,552室)。OTA未掲載の施設は含まれません。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

旅館が538施設・10,373室で施設数の3分の1を占める一方、平均客室数は19.3室にとどまる。対してビジネスホテルは158施設で11,157室、平均70.6室。施設数では旅館が3.4倍多いのに、客室数ではビジネスホテルがわずかに上回るという逆転が起きている。群馬の宿泊供給は「小規模施設が数多く分散する温泉・高原エリア」と「中規模施設が都市に集約する平野部」という二重構造なのだ。

市町村別に見ると、この構造はさらに際立つ。

表2 市町村別の供給構成と12ヶ月平均ADR(2025年9月〜2026年8月・実測基準)
市町村施設数客室数平均客室数主な業態構成12ヶ月平均ADR
みなかみ町2083,17615.3室旅館85・民宿36・ペンション30¥18,200
中之条町(四万)6385013.5室旅館54・民宿4¥17,700
草津町2063,45116.8室旅館112・ペンション29・民宿15¥17,600
渋川市(伊香保)882,80631.9室旅館62・ビジネス7¥16,700
嬬恋村(万座・鹿沢)1852,64214.3室ペンション54・貸別荘52・旅館22¥13,700
沼田市651,15717.8室旅館24・ペンション14・ビジネス6¥11,600
長野原町(北軽井沢)5782914.5室ペンション15・旅館9・貸別荘9¥11,500
片品村(尾瀬・丸沼)2232,60611.7室ペンション65・民宿57・旅館51¥10,600
前橋市882,99234.0室ビジネス24・旅館22・シティ5¥7,500
高崎市994,51545.6室ビジネス34・旅館18・シティ4¥7,350
太田市472,23347.5室ビジネス20・旅館9¥6,530
伊勢崎市432,13749.7室ビジネス16・旅館1¥5,270

施設数・客室数は施設マスター集計。ADRは2025年9月〜2026年8月の12ヶ月平均(推定成約単価/実測基準)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

嬬恋村は185施設と県内有数の施設数を持ちながら、平均客室数は14.3室、ADRは¥13,700と中位にとどまる。内訳を見れば理由は明快で、ペンション54施設・貸別荘52施設が中心であり、旅館は22施設にすぎない。片品村も223施設と県内最多でありながらペンション65・民宿57という構成で、平均11.7室。両エリアは「小規模・素朴・アクティビティ拠点」というポジションで積み上がってきた市場であり、単価水準はその構成を素直に反映している。

逆に渋川市(伊香保)は88施設で平均31.9室と、温泉地のなかでは突出して1施設あたりの規模が大きい。大型旅館が集積しているエリアであり、これが季節による稼働・単価の振れ幅の大きさにもつながっている。都市部では高崎市45.6室、太田市47.5室、伊勢崎市49.7室と、いずれも中規模のビジネスホテルが中心だ。

円の大きさ=施設数、色=12ヶ月平均ADRの階層。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

推定OCCは業態で15pt以上開く — ビジネス86%、リゾート70%

価格の階層は、需給のバランスにも対応している。群馬県全体の業態別推定OCC(2026年5月〜8月の確定月)を並べると、以下のようになる。

群馬県 業態別 推定OCC(稼働率)。対象施設数は月により変動し、2026年7月時点でビジネス89施設/7,941室、旅館190施設/5,291室、リゾート30施設/2,718室、シティ11施設/1,022室。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

ビジネスホテルは4ヶ月を通じて85〜90%と最も高い水準にある。平日のビジネス需要が年間を通じて安定して積み上がるためで、価格が横ばいなのは需要が薄いからではなく、むしろ稼働がすでに高い水準で埋まっているためだと読める。一方リゾートホテルは6月63.8%、7月70.0%と業態のなかで最も低く、8月に81.0%まで上がって差を詰める。旅館は6月81.5%から8月88.9%へと季節に沿って伸び、シティホテルは71.7〜78.1%のレンジで推移した。

ここで見えてくるのは、群馬において「価格が高いエリア=需給が逼迫しているエリア」とは限らないという事実である。ADRが県内最下位帯の都市部ビジネスホテルが最も高い稼働率を記録し、ADRが上位帯のリゾート業態が最も低い稼働率にとどまる。旅館とリゾートには夏場でも1割強の販売余地が残っており、これは季節をずらした需要の取り込みという観点で成長余地といえる。この販売余地が週のどの曜日に集中しているかは、群馬の曜日別稼働、谷は業態ごとに別の日が業態別に分解している。

口コミが示す各エリアの強み — 嬬恋村の食事評価4.60は県内トップ

次に、宿泊者がどこを評価しているのかを見る。直近24ヶ月に投稿された口コミをエリア別・カテゴリ別に集計し、それぞれの中央値を県中央値と比べたのが下のグラフだ。群馬県全体の中央値は食事4.43(316施設・51,160件)、サービス4.27(453施設・78,828件)、清潔感4.24(372施設・48,716件)、客室4.10(463施設・92,780件)である。

直近24ヶ月の宿泊者口コミ カテゴリ別スコア中央値(5点満点)。破線は群馬県中央値。出典:ホテルバンク編集部調べ

特筆すべきは嬬恋村である。ADRは¥13,700と第2層に位置しながら、食事の中央値は4.60と、本稿で比較した6エリアのなかで最も高い。みなかみ町4.56、草津町4.55がこれに続く。ペンションとオーベルジュが集積するエリアの特性が、そのまま食事評価の高さとして現れている。宿の規模が小さいぶん、料理に手をかけられる構造といえるだろう。同じく片品村・みなかみ町・嬬恋村の小規模宿は、食事カテゴリの全県ランキング上位を占めている。

草津町は食事4.55に加えて立地4.42(78施設・8,381件)が県中央値4.18を大きく上回り、湯畑を中心とした温泉街の徒歩圏という強みが数値に出ている。みなかみ町は清潔感4.47が比較6エリアのなかで最も高く、比較的新しい宿や改装済みの宿が評価されている様子がうかがえる。渋川市(伊香保)は客室4.10・清潔感4.18と県中央値近辺で、大型旅館ならではの安定した評価にまとまっている。

具体的な施設名で見ると、食事カテゴリ(24ヶ月・口コミ25件以上)の上位には片品村の「プチホテル リージェントハウス」(25件・5.00)、中之条町の「御宿 花敷の湯」(47件・4.98)、草津町の「新潟屋旅館」(26件・4.96)、嬬恋村の「ふるさとの宿 花いち」(136件・4.96)、みなかみ町の「やど莞山」(105件・4.94)が並ぶ。サービスカテゴリ(30件以上)では片品村の「リゾート・イン・片品」(70件・5.00)、前橋市の「THE W Relax Garden Resort」(173件・4.97)、沼田市の「numatana glamping resort」(42件・4.95)が上位を占めた。単価の高いエリアに評価が偏っているわけではなく、第2層・第3層のエリアからも高評価施設が多数出ている点は注目に値する。

秋の先行水準と、空いている価格帯

ここまでは確定月の実測基準で見てきた。最後に、これから迎える2026年11月の掲載在庫から算出した将来推定基準の水準を確認する。前述のとおりこの数値は確定月とは算出根拠が異なるため、実測基準の月と差し引きして変化率を語ることはできない。あくまで「秋の時点でどのエリアがどの価格帯に置かれているか」という横並びの構図として読んでほしい。

2026年11月の市町村別ADR(推定成約単価/将来推定基準・2026年9月上旬時点の掲載在庫に基づく推定・1室2名利用時の1室あたり)。対象は算出施設数8以上の12市町村。実測基準の月とは算出根拠が異なるため差分比較はできません。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

11月時点でも階層の並びは概ね維持されている。草津町¥18,900、中之条町¥18,100、みなかみ町¥17,800、渋川市¥16,100が上位を形成し、長野原町¥13,900、沼田市¥11,600、嬬恋村¥10,800と続く。紅葉シーズンが10月下旬から11月上旬にかけて谷川岳・伊香保・赤城の各エリアで訪れ、12月からはスキー需要が片品・みなかみ・嬬恋へ移っていく。この需要の受け渡しが、県北エリアの11月〜1月の単価を押し上げる原動力になる。なお県内最上位帯の草津町については、夏の実勢と新規供給の関係を草津温泉の宿泊単価、2026年夏は前年並みで検証している。

データ全体から浮かぶ成長余地は、大きく2点に整理できる。

1つは、¥20,000〜30,000という価格帯が県内でほとんど埋まっていないことだ。実測基準の12ヶ月平均で最上位のみなかみ町でも¥18,200であり、月次のピークでも¥21,300(草津町・2025年12月)が上限に近い。全国的にはこの帯に上質な小規模旅館・オーベルジュが増えているが、群馬の温泉地は依然として¥15,000〜20,000のレンジに厚く集中している。食事評価が県内トップクラスの嬬恋村・片品村・みなかみ町の小規模宿がこの上のレンジへ踏み出すポテンシャルは、口コミデータが裏付けているといえる。

もう1つは、リゾート業態の閑散期である。6月の推定OCC63.8%(2026年6月・確定月の実測基準/県内リゾート業態の集計)は、夏・冬の需要ピークに挟まれた谷であり、ここを埋める余地が最も大きい。群馬県の2024年の延べ宿泊者数は9,751千人泊で前年比95.1%と減少した一方、外国人延べ宿泊者数は432千人泊・前年比136.6%と大きく伸びている(群馬県「令和6年観光入込客統計調査報告書」)。訪日客は日本人の需要曜日・季節とは異なるパターンで動くため、この層を閑散期に取り込めるかどうかが、県北リゾートの年間RevPARを左右する。

階層差そのものは近県と同水準 — 違いは上限の高さ

ここまで見てきた3.5倍という階層差は、群馬に固有の現象なのだろうか。同じ基準(2025年9月〜2026年8月の12ヶ月・実測基準、月次で価格を算出できた施設が8以上の市町村)で、温泉地と県都を併せ持つ近県を並べたのが下の表である。

表3 近県との市町村別ADR階層の比較(2025年9月〜2026年8月・実測基準)
最上位の市町村最上位ADR最下位ADR階層差対象市町村数
群馬県みなかみ町¥18,200¥5,2703.45倍15
栃木県那須町¥19,900¥5,7303.47倍11
長野県軽井沢町¥23,500¥5,9503.94倍23
静岡県熱海市¥24,600¥6,2103.96倍26

12ヶ月平均ADR(推定成約単価/実測基準・1室2名利用時の1室あたり)。対象は月次で価格を算出できた施設数8以上の市町村。N=群馬15市町村、栃木11市町、長野23市町村、静岡26市町。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

階層差の倍率そのものを見ると、群馬3.45倍は栃木3.47倍とほぼ同じで、長野3.94倍・静岡3.96倍よりむしろ小さい。温泉地と平野部の都市が同居する県では、3〜4倍の階層差はごく標準的な構造だといえる。つまり群馬の3.5倍は、それ自体が異常値なのではない。

差が出ているのは倍率ではなく上限の高さである。最下位帯は4県とも¥5,000台〜6,000台でほぼ揃うのに対し、最上位は静岡(熱海市¥24,600)・長野(軽井沢町¥23,500)が¥23,000超であるのに対し、群馬は¥18,200にとどまる。栃木の那須町¥19,900と比べても下回る。前節で「¥20,000〜30,000の帯が県内でほとんど埋まっていない」と述べたが、近県ではその帯が現に成立していることが、この比較から確認できる。群馬の階層構造は下が低いのではなく、上が伸びきっていない形をしている。

まとめ

群馬県の宿泊市場は、実測基準の12ヶ月平均でみなかみ町¥18,200から伊勢崎市¥5,270まで約3.5倍の階層差を持つ。この差は単なる「温泉地か都市か」ではなく、1施設あたりの客室規模と業態構成の差として供給側に刻まれている。旅館538施設の平均は19.3室、ペンション214施設の平均は7.8室であり、小規模施設が数多く分散するのが県北の構造だ。

需給面では、価格が最も低い都市部ビジネスホテルの推定OCCが85〜90%と最も高く、価格が上位のリゾート業態が63.8〜81.0%と最も低い。価格の高さと需給の逼迫が一致しないこの構図は、単価上位エリアに販売余地が残っていることを意味する。そして口コミデータは、嬬恋村の食事4.60を筆頭に、単価が中位のエリアにこそ高い評価が集まっていることを示した。

紅葉からスキーへと需要が受け渡される秋冬は、群馬が年間で最も強い季節である。この時期の単価は2025年11月に前年同月比+14.1%、12月に+19.0%と伸びており、市場は上向きの局面にある。¥20,000超のレンジと閑散期の6月という2つの空白に、群馬の次の伸びしろがある。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事のうち2026年11月の市町村別ADRは、2026年9月上旬時点でOTA等に公開されている在庫からの推定値であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。また確定月(実測基準)とは算出根拠が異なるため、両者を差し引いて変化率として解釈することはできません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

市町村別の推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月の12ヶ月・実測基準、および2026年11月の将来推定基準)、群馬県内の施設マスター(1,617施設・うち市町村を特定できた1,615施設/33,552室)、業態別の推定OCC(2026年5月〜8月の確定月)、直近24ヶ月に投稿された宿泊者口コミのカテゴリ別スコア。近県比較は栃木県・長野県・静岡県について同一条件で再集計。

■ 試算前提

ADRは各施設が公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用した推定成約単価で、エリア値は対象施設の中央値。12ヶ月平均は実測基準の月のみの単純平均です。市町村別の集計は、月次で価格を算出できた施設が8以上のエリアに限定しています。推定OCCはエリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定)。口コミスコアは5点満点のエリア中央値です。

■ 限界・留意点

ADR・OCCはいずれも推定値であり、各施設の実際の成約価格・稼働・会計数値とは異なります(上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合では誤差中央値約7%)。実測基準と将来推定基準は算出根拠が異なるため、両者を差し引いて変化率として解釈することはできません。OTA等に掲載のない施設は集計に含まれず、施設数の少ないエリアほど中央値は個別施設の影響を受けます。口コミスコアは投稿者の自己選択による偏りを含みます。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 市町村別ADR(推定成約単価)、業態別推定OCC、施設マスター(群馬県内N=1,617施設)
  • ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミのカテゴリ別スコア集計(群馬県内・直近24ヶ月)

■ 政府・自治体統計

■ 参考情報

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