九州ふっこう応援割の熊本県分は、10月1日(木)〜12月25日(金)の宿泊が対象で、予約受付は9月15日(火)10時に始まる。一方、熊本県内では10市町村が独自の宿泊支援を実施している(トラベルWatch、9月11日)。各市町村の公式ページで宿泊対象期間を確かめると、10月以降の宿泊も対象にしているのは天草市(12月28日宿泊分まで)と水俣市(11月30日宿泊分まで)の2市で、残る8市町村は9月末で終わる。つまり10月の熊本の宿は、ほとんどの地域で「市町村の支援」から「県の応援割」へ切り替わる。
本稿では、その切り替わりの前にある10月の在庫を市町村別に並べる。9月9日(水)時点で宿泊31日前にあたる10月10日(土)の推定OCCは、南小国町96.5%、菊池市95.1%、阿蘇市86.4%に対し、南阿蘇村63.1%、上天草市65.8%、天草市75.6%。9市町村に残る835室のうち574室(68.7%)が南阿蘇村・天草市・上天草市の3市村にあり、10月の受け皿の余地はこの3地域に厚い。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本稿では、総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で構成した固定の施設集合(宿泊日ごとに同じ施設)で算出しています。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
- LT(リードタイム):宿泊日までの日数。本稿のブッキングカーブは宿泊45日前から直近観測日(9月9日)までの範囲のみを使っています。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ
- — 熊本県内で独自の宿泊支援を行う10市町村のうち、10月以降の宿泊も対象は天草市(12月28日宿泊分まで)と水俣市(11月30日宿泊分まで)の2市。残る8市町村は9月末で終わり、10月からは県の九州ふっこう応援割(10月1日〜12月25日宿泊)が支援の中心になる。
- — 2026年10月10日(土)宿泊分の推定OCC(9月9日観測・宿泊31日前)は南小国町96.5%・菊池市95.1%・阿蘇市86.4%に対し、南阿蘇村63.1%・上天草市65.8%・天草市75.6%。熊本県全体は78.1%(358施設/14,007室)。
- — 9市町村の10月10日の残室835室のうち574室(68.7%)が南阿蘇村・天草市・上天草市に集まる。3市村の客室は9市町村合計の41.6%で、客室の比率以上に受け皿が残る。
- — 宿泊45日前(8月26日観測)から31日前までの2週間で、南小国町・阿蘇市と南阿蘇村・上天草市・天草市の推定OCCはいずれも9〜14pt上昇。余地のある地域も同じペースで埋まっており、10月10日時点の差は45日前からあった水準差に近い。
- — 2026年10月宿泊分の推定成約ADRは南小国町¥28,700・南阿蘇村¥27,300で、熊本県全体¥13,800の約2倍。1室2名なら1人あたり約1.4万円前後で、応援割(60%・上限2万円)の上限に届く約3.3万円を下回る。
熊本県内の市町村独自支援は10自治体 — 10月の宿泊も対象は天草市と水俣市
トラベルWatchは9月11日の記事で、熊本県の九州ふっこう応援割の予約開始日とあわせて、県内で実施中の市町村独自の旅行支援を10自治体挙げた。阿蘇地域では阿蘇市・産山村・高森町・南阿蘇村・西原村、県南では水俣市・津奈木町・人吉市、天草地域では天草市・上天草市である。同じ記事は、南小国町と小国町について「予算上限達成で受付終了」と記している。
ただし、両町の受付状況はその後も動いている。南小国町の観光協会は、9月30日まで使える観光商品券について、追加販売により9月11日(金)15時から予約受付を再開したと告知した(売り切れ次第終了)。小国町の観光協会も、限定2,000セットに達して9月5日に一時終了した宿泊専用商品券について、9月9日に受付再開を告知している。発行上限や予算に達し次第終わる制度が多く、最新の受付状況は各公式ページで確認する必要がある。
制度ごとの宿泊対象期間・内容を公式ページと熊本県観光サイトの一覧で確かめ、下表にまとめた。応援割との併用については、公式ページに明記があるのは人吉市(国・県が実施する宿泊助成事業とは併用できない)のみである。9月末で終わる制度は10月1日から始まる県の応援割と宿泊期間が重ならない。10月以降も続く天草市と水俣市については、併用の可否を公式ページで確認できなかったため「未確認」とした。
| 市町村 | 制度名 | 宿泊対象期間 | 支援内容(要旨) | 9月11日時点の状態 | 県の応援割との関係 |
|---|---|---|---|---|---|
| 阿蘇市 | 阿蘇に泊まって支える!熊本応援キャンペーン | 9/7〜9/30 | 1人1泊の宿泊料金(税抜)1万円以上で5,000円、5,000円以上1万円未満で2,000円を割引。市内対象店舗で使える2,000円分クーポン付き。対象宿泊施設への直接予約に限る(OTA等・旅行会社経由は対象外) | 実施中 | 期間が重ならない(県は10/1宿泊分から) |
| 南小国町 | 南小国町観光商品券(阿蘇ふっこう割) | 利用 9/1〜9/30 | 1万円で2万円分の町内観光商品券を購入できる(町外在住者が対象) | 発行上限で受付終了後、9/11 15時から追加販売で予約受付を再開(売り切れ次第終了) | 期間が重ならない |
| 小国町 | 小国町宿泊専用商品券 | 9/7〜9/30 | 1万円分の宿泊専用商品券を5,000円で販売(町内居住者は対象外) | 限定2,000セットに達し一時終了、9/9に受付再開を告知 | 期間が重ならない |
| 産山村 | 阿蘇ふっこう割商品券 | 9/7〜9/29 | 最大1万円分の村内商品券(ツアー宿泊は5,000円分) | 実施中 | 期間が重ならない |
| 高森町 | 阿蘇ふっこう割(宿泊補助) | 9/7〜9/30 | 宿泊費の最大50%を補助(上限1万円) | 実施中 | 期間が重ならない |
| 南阿蘇村 | 観光応援キャンペーン | 9/7〜9/30(一部除外日あり) | 宿泊代の1/2を村内限定商品券で還元(上限5,000円) | 実施中 | 期間が重ならない |
| 西原村 | 旅泊応援キャンペーン | 9/7〜9/30 | 1人1泊最大1万円分の旅泊応援チケット(村内取扱店で利用) | 実施中 | 期間が重ならない |
| 水俣市 | でかくっか水俣キャンペーン | 9/19〜11/30(予算がなくなり次第終了) | 1人1泊最大1万円割引+市内対象店舗で使える1,000円分クーポン | 実施中 | 未確認 |
| 津奈木町 | つなぎ笑顔応援割 | 8/23〜9/29 | 宿泊費4,000円割引など | 実施中 | 期間が重ならない |
| 人吉市 | ひとよし満喫旅プラス | 9/1〜9/30(予算がなくなり次第終了) | 1人1泊最大1万円割引。宿泊料金1万円以上で2,000円分クーポン。宿泊施設へ直接予約 | 実施中 | 国・県が実施する宿泊助成事業とは併用不可(公式に記載) |
| 天草市 | 天草元気旅チャージ券 | 9/11〜12/28(予算がなくなり次第終了) | 地域通貨ポイントを付与。9/11〜9/30は宿泊料金に応じ最大1万円分、10/1以降は1人1泊3,000円分(宿泊料金には使用不可)。3連泊分まで、原則宿泊3日前までに申込 | 実施中 | 未確認 |
| 上天草市 | 上天草泊まって応援!復興宿泊キャンペーン | 9/4〜9/30 | 宿泊料金の1/2を助成(1人あたり上限2万円)。宿泊施設へ直接連絡 | 実施中 | 期間が重ならない |
| 山鹿市・菊池市 | 本稿で参照した2つの一覧(トラベルWatch 9/11、熊本県観光サイト)には掲載なし | ||||
※期間は2026年。水色の行は10月以降の宿泊も対象にしている制度。「期間が重ならない」は、宿泊対象期間が9月末までで、県の応援割(10月1日宿泊分から)と対象日が重ならないことを示す。併用の可否そのものを判断したものではない。
出典:トラベルWatch(2026年9月11日)、熊本県観光サイト「各エリアの宿泊助成情報等の情報」、各市町村・観光協会の公式ページよりホテルバンク編集部作成
表から読み取れるのは、支援の「形」が地域で違うことだ。阿蘇市・高森町・人吉市・上天草市は宿泊料金そのものを割り引く。一方、南小国町・小国町・産山村・南阿蘇村・西原村は商品券やチケットで地域内の消費に還元する形をとる。10月以降も続く天草市の制度は、10月1日からは1人1泊3,000円分のポイントになり、宿泊料金には使えない。県の応援割が宿泊料金を割り引く10月以降、市の支援は滞在中の飲食や土産に回す役割に移る設計といえる。なお上天草市は、10月から1,000円で2,000円分使えるデジタルお食事券を始めると熊本日日新聞が報じている。
市町村別の10月在庫 — 10月10日は南小国町96.5%、南阿蘇村63.1%
次に、10月の土曜2日の在庫を市町村別に比べる。10月3日(土)は応援割の初週の土曜、10月10日(土)は3連休(10月12日がスポーツの日)の初日にあたる。いずれも9月9日の観測で、10月3日は宿泊24日前、10月10日は宿泊31日前の断面である。対象施設が10施設以上の9市町村を並べ、施設数が10未満の高森町・水俣市などはこの比較に含めていない。
市町村別の推定OCC(10月3日=宿泊24日前、10月10日=宿泊31日前、いずれも9月9日観測)。対象 9市町村計 4,210室(10/10)、熊本県全体は358施設/客室14,007(主要予約サイト掲載ベース)。市町村別の施設数・客室数は下表参照
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
| 市町村 | 独自支援の状態 | 10/3(LT24) | 10/10(LT31) | 10/10の残室 | 対象 N施設/客室M |
|---|---|---|---|---|---|
| 南小国町 | 上限到達→9/11に追加販売で受付再開 | 90.1% | 96.5% | 19室 | 10/3: 45施設/578室 10/10: 42施設/537室 |
| 菊池市 | 参照した2一覧に掲載なし | 72.7% | 95.1% | 11室 | 10/3: 12施設/282室 10/10: 11施設/226室 |
| 山鹿市 | 参照した2一覧に掲載なし | 69.6% | 89.0% | 47室 | 23施設/428室 |
| 小国町 | 上限到達→9/9に受付再開を告知 | 61.2% | 88.4% | 14室 | 14施設/121室 |
| 阿蘇市 | 実施中(9月宿泊分) | 82.1% | 86.4% | 111室 | 28施設/814室 |
| 人吉市 | 実施中(9月宿泊分) | 79.9% | 82.3% | 59室 | 16施設/334室 |
| 天草市 | 実施中(12/28宿泊分まで) | 65.6% | 75.6% | 118室 | 31施設/483室 |
| 上天草市 | 実施中(9月宿泊分) | 62.2% | 65.8% | 149室 | 23施設/436室 |
| 南阿蘇村 | 実施中(9月宿泊分) | 49.9% | 63.1% | 307室 | 39施設/831室 |
| 熊本県全体(参考) | — | 74.5% | 78.1% | 3,063室 | 10/3: 360施設/13,899室 10/10: 358施設/14,007室 |
※推定OCCは9月9日観測。対象施設・客室数は主要予約サイト掲載ベースで、宿泊日ごとに集計対象の施設集合が異なる場合は日付別に記載。独自支援の状態は9月11日時点。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
10月10日の上位は、南小国町96.5%(42施設/537室、残19室)、菊池市95.1%(11施設/226室)、山鹿市89.0%(23施設/428室)、小国町88.4%(14施設/121室)、阿蘇市86.4%(28施設/814室)。熊本県全体(358施設/14,007室)の78.1%を上回る。一方、天草市75.6%(31施設/483室)、上天草市65.8%(23施設/436室)、南阿蘇村63.1%(39施設/831室)は県全体を下回り、在庫に余裕がある。
残室の量で見ると、差はさらに明確になる。9市町村の10月10日の残室は計835室で、そのうち南阿蘇村307室・上天草市149室・天草市118室の3市村で574室(68.7%)を占める。3市村の客室は9市町村合計の41.6%なので、客室の比率以上に残室が集まっている。10月3日も同じ傾向で、南阿蘇村に416室、天草市に166室、上天草市に165室が残る。県単位で見た10月の残室の偏りは、九州応援割、6割引の熊本・鹿児島に10月残室の34.9%が集中で7県を並べて実測している。
地図で見る — 支援の状態と10月10日の推定OCC
市町村の位置に、独自支援の状態(色)と10月10日の推定OCC(ラベル)を重ねた。阿蘇地域では、北部の南小国町・小国町・阿蘇市が高く、南部の南阿蘇村に余地がある。天草地域は天草市・上天草市とも県全体を下回る。10月以降も独自支援が続く2市(濃紺)は、県南西部の水俣市と天草地域の天草市で、どちらも海側の地域である。
円の色=独自支援の状態(濃紺:10月以降の宿泊も対象/青:9月の宿泊が対象で実施中/水色:発行上限に達した後に受付再開/灰:参照した一覧に掲載なし)。円の大きさ=対象客室数。ラベル=10月10日の推定OCC(9月9日観測)。対象 9市町村・計227施設/客室4,210(主要予約サイト掲載ベース)。施設数10未満の市町村は位置と支援状態のみ表示。円の位置は各市町村内の宿泊施設の所在地の中央値
出典:メトロエンジンリサーチ、各市町村公式ページ、ホテルバンク編集部より作成
宿泊45日前から31日前までの進み方 — 南小国町・阿蘇市と3市村は2週間で9〜14pt
余地がある地域の在庫が止まっているわけではない。10月10日を宿泊45日前(8月26日観測)から31日前(9月9日観測)まで追うと、南小国町は82.3%→96.5%(+14.2pt)、阿蘇市は73.5%→86.4%(+12.9pt)、天草市は63.8%→75.6%(+11.8pt)、上天草市は54.8%→65.8%(+11.0pt)、南阿蘇村は53.8%→63.1%(+9.3pt)と、2週間でいずれも9〜14pt進んだ。県全体は66.6%→78.1%(+11.5pt)である。図に含めていない4市町村は、山鹿市76.9%→89.0%(+12.1pt)、小国町78.5%→88.4%(+9.9pt)、菊池市88.9%→95.1%(+6.2pt)、人吉市76.6%→82.3%(+5.7pt)で、45日前時点の水準がすでに高かった菊池市(11施設/226室)・人吉市(16施設/334室)は進み幅が小さい。
進み幅に大きな差はない。10月10日時点の差は、ここ2週間の加速の差というより、45日前時点ですでにあった水準の差に近い。そのため、南阿蘇村・上天草市は「予約が入っていない地域」ではなく、「同じペースで埋まりながら、まだ受け皿が残っている地域」と読むのが実態に近い。応援割の予約受付が始まる9月15日以降、この残りがどう動くかが次の注目点になる。
10月10日(土)宿泊分のブッキングカーブ(宿泊45日前→31日前)。対象:南小国町 42施設/客室537、阿蘇市 28施設/客室814、天草市 31施設/客室483、上天草市 23施設/客室436、南阿蘇村 39施設/客室831、熊本県全体 358施設/客室14,007(主要予約サイト掲載ベース)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
9月最終土曜と10月最初の土曜を「宿泊24日前」でそろえて比べる
市町村の支援期間内にある9月26日(土)と、県の応援割の初週にあたる10月3日(土)を、同じ宿泊24日前の時点でそろえて比べた。9月26日は9月2日、10月3日は9月9日の観測で、いずれも応援割の予約受付が始まる前の断面である。
| 市町村 | 9/26(LT24) | 10/3(LT24) | 差 | 9/26 対象 | 10/3 対象 |
|---|---|---|---|---|---|
| 南小国町 | 78.4% | 90.1% | +11.7pt | 44施設/574室 | 45施設/578室 |
| 菊池市 | 90.4% | 72.7% | -17.7pt | 12施設/282室 | 12施設/282室 |
| 山鹿市 | 86.2% | 69.6% | -16.6pt | 23施設/428室 | 23施設/428室 |
| 小国町 | 55.4% | 61.2% | +5.8pt | 14施設/121室 | 14施設/121室 |
| 阿蘇市 | 77.9% | 82.1% | +4.2pt | 28施設/814室 | 28施設/814室 |
| 人吉市 | 81.4% | 79.9% | -1.5pt | 16施設/334室 | 16施設/334室 |
| 天草市 | 60.5% | 65.6% | +5.1pt | 31施設/483室 | 31施設/483室 |
| 上天草市 | 77.8% | 62.2% | -15.6pt | 24施設/437室 | 23施設/436室 |
| 南阿蘇村 | 48.5% | 49.9% | +1.4pt | 39施設/831室 | 39施設/831室 |
| 熊本県全体(参考) | 88.8% | 74.5% | -14.3pt | 357施設/13,859室 | 360施設/13,899室 |
※宿泊24日前時点の推定OCC。9/26は9月2日観測、10/3は9月9日観測。対象 N施設/客室Mは主要予約サイト掲載ベース。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
宿泊24日前時点の推定OCC(9月26日・10月3日)。対象 N施設/客室Mは上表のとおり(主要予約サイト掲載ベース)
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
上天草市は9月26日77.8%に対し10月3日62.2%で、9月のほうが15.6pt先行している。上天草市の9月の制度は宿泊料金の1/2(1人上限2万円)と、表の中でも手厚い。9月1日の予約開始後に9月分の消化が進んだ可能性がある一方、10月初週にはその分だけ受け皿が残っているともいえる。ただし、参照した一覧に独自支援の掲載がない山鹿市(-16.6pt)・菊池市(-17.7pt)でも9月26日が先行しており、差には制度のほかにイベントの日程や曜日の並びも関わるとみられる。市町村の制度だけで差を説明することはできない。
反対に、南小国町は10月3日が11.7pt先行(78.4%→90.1%)している。町の商品券は9月30日までの利用で10月は対象外だが、それでも10月最初の土曜の埋まりが早い。9月の支援に頼らず秋の需要を集めている地域といえる。阿蘇市(+4.2pt)・天草市(+5.1pt)・小国町(+5.8pt)も10月3日のほうが高い。
10月の推定成約ADR — 南小国町は約2.9万円、天草市は約1.0万円
在庫の余地と並べて、価格の水準も確認しておく。10月宿泊分の推定成約ADR(調査時点の掲載水準に基づく推定)は、南小国町¥28,700、南阿蘇村¥27,300、阿蘇市¥21,100が県内の上位で、熊本県全体の¥13,800を大きく上回る。天草市¥10,200・菊池市¥10,900・人吉市¥11,300は県全体を下回る。
2026年10月宿泊分の推定成約ADR(1室あたり・税抜相当、エリア中央値)。調査時点の掲載水準に基づく推定値。N=推定成約ADRの算出対象施設数:南小国町45、南阿蘇村18、阿蘇市25、山鹿市23、小国町20、上天草市20、人吉市22、菊池市14、天草市31、熊本県全体391
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
南阿蘇村は、10月の在庫に余地がありながら、単価の水準は県内でも高い地域である。九州ふっこう応援割の熊本県分は旅行代金の60%を割り引き、宿泊単体・1泊の上限は2万円なので、上限に届くのは1人1泊の旅行代金がおよそ3.3万円のときになる。1室2名の推定成約ADRを1人あたりに直すと、南小国町・南阿蘇村でもおよそ1.4万円前後にとどまる。目安にすぎないが、多くの宿泊が上限の手前で60%の割引をそのまま受けられる価格帯にある。価格の水準が高い地域ほど、利用者の実質負担が大きく下がる。上限の段階ごとの効き方は九州ふっこう応援割が確定 — 熊本・鹿児島60%/5県50%、上限2万円が効く価格帯で整理している。
地域ごとの読み方 — 受け皿が残る3市村と、支援期間外でも早く埋まる南小国町
南阿蘇村(39施設/831室):10月3日の残室は416室、10月10日は307室で、9市町村の中で最も多い。村の観光応援キャンペーンは9月30日で終わり、10月は県の応援割が中心になる。単価の水準が高く、60%割引による実質負担の下がり幅が大きい地域でもある。応援割の予約受付が始まる9月15日以降に、この受け皿がどれだけ使われるかが焦点になる。
上天草市(23施設/436室):9月は宿泊料金の1/2を助成する手厚い制度で、9月26日の在庫が先に進んだ。10月3日は62.2%、10月10日は65.8%で、10月には受け皿の余地がある。10月から始まるデジタルお食事券は、県の応援割で泊まる旅行者の地域消費に広がる可能性がある。
天草市(31施設/483室):10月10日は75.6%(残118室)。市のチャージ券が12月28日宿泊分まで続く、県内でも数少ない地域である。10月以降は1泊3,000円分のポイントで宿泊料金には使えない。そのため、県の応援割との併用の可否(未確認)とは別に、滞在中の消費に回る地域通貨として働く。県の応援割は12月25日宿泊分で区切られており、その前後で実質負担がどう変わるかは九州ふっこう応援割はいつまで?12/25で一旦切れるで試算している。
南小国町(42施設/537室):10月10日の推定OCCは96.5%で、残室は19室。町の観光商品券は9月30日までの利用で、9月11日15時に追加販売で受付を再開したが、10月は対象外である。町の支援がない10月でも埋まりが早く、10月17日(土)も宿泊38日前で91.4%に達している。
人吉市(16施設/334室)・阿蘇市(28施設/814室):10月10日はそれぞれ82.3%、86.4%で、県全体を上回る。どちらも9月の制度は宿泊施設への直接予約が条件で、人吉市は国・県の宿泊助成事業との併用ができないと明記している。10月からは、市の制度に代わって県の応援割が主な支援になる。
水俣市・高森町など施設数10未満の市町村:対象施設が少なく数値が振れやすいため、本稿の在庫比較には含めていない。水俣市の制度は11月30日宿泊分まで続き、10月以降の宿泊も対象になる。
宿・DMO・金融機関にとってのポイント
宿にとっては、9月15日10時の予約受付開始が10月の在庫を動かすきっかけになる。阿蘇市・人吉市・上天草市のように、9月の市町村制度が「宿泊施設への直接予約」を条件にしていた地域では、10月から支援の中心が県の応援割に移る。その前提で、10月分の在庫の出し方と販売経路をそろえておくと、受付開始後の予約の伸びを取り込みやすい。南阿蘇村・上天草市・天草市のように10月に受け皿が残る地域では、応援割の割引が大きく効く価格帯と、連休以外の土曜・平日の在庫が伸びしろになる。
市町村・DMOにとっては、10月以降も独自支援を続ける天草市・水俣市と、9月で区切った町村とで、県の応援割との役割分担が分かれている。天草市が10月以降のポイントを宿泊料金に使えない形にしたように、県の割引が宿泊料金にかかる期間は、市町村の予算を飲食・土産など滞在中の消費に振り向ける設計が考えられる。南小国町・小国町のように発行上限に達して追加販売した町は、需要の強さを示すデータとして次の制度設計に生かせる。
地域の宿を審査する金融機関にとっては、県単位の数字だけでは市町村の差が見えにくい。10月10日の推定OCCは、同じ熊本県内で南小国町96.5%から南阿蘇村63.1%まで33.4pt開いている。応援割の期間中は、市町村別の在庫の推移を月次でモニタリングの材料にすると、地域ごとの回復の進み方を追いやすくなる。
まとめ
熊本県内で市町村独自の宿泊支援を行う10自治体のうち、10月以降の宿泊も対象にしているのは天草市と水俣市の2市で、ほかは9月末で終わる。10月の熊本の宿は、ほとんどの地域で市町村の支援から県の九州ふっこう応援割(10月1日〜12月25日宿泊、9月15日10時予約開始)へ切り替わる。
その切り替わりの前、9月9日時点の10月10日の推定OCCは南小国町96.5%・菊池市95.1%・阿蘇市86.4%と、南阿蘇村63.1%・上天草市65.8%・天草市75.6%に分かれた。9市町村の残室835室の68.7%は南阿蘇村・天草市・上天草市の3市村にあり、10月の受け皿はこの3地域に厚い。宿泊45日前からの2週間では南小国町・阿蘇市と3市村がいずれも9〜14pt進んでおり、3市村も同じペースで埋まりながら余地を残している。南小国町は、町の支援が及ばない10月でも埋まりが早い。市町村の制度と在庫を並べて見ると、県の応援割が効く余地が地域ごとに違うことがわかる。
⚠ 将来日程のデータに関する注意:本記事の推定OCCは9月9日(一部の比較は9月2日)時点の観測、10月の推定成約ADRは調査時点の掲載水準に基づく推定であり、宿泊日に近づくにつれて変動します。九州ふっこう応援割の予約受付(9月15日10時開始)以降、在庫・価格とも動く可能性がある点にご留意ください。市町村の独自支援は予算・発行上限に達し次第終了するものがあるため、最新の受付状況・併用条件は各市町村・観光協会の公式ページでご確認ください。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
市町村別・熊本県全体の宿泊日別ブッキングカーブと推定OCC(10月3日・10月10日・10月17日宿泊分は2026年9月9日観測、9月26日宿泊分は9月2日観測、10月10日宿泊分の起点は8月26日観測)、市町村別の推定成約ADR(2026年10月宿泊分)。市町村の独自支援は、トラベルWatch(9月11日)と熊本県観光サイトの一覧を起点に、各市町村・観光協会の公式ページで宿泊対象期間・内容・受付状況を確認しました(9月11日時点)。
■ 試算前提
推定OCCは、総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で構成した固定の施設集合について、総客室数に対する販売済み客室数の割合として算出し、宿泊日ごとに同じ施設集合で追跡しています。ブッキングカーブは宿泊45日前以降の観測点のみを使用。市町村比較は対象施設10以上の9市町村に限定しました。残室の集中度(68.7%)は、9市町村の10月10日残室835室に対する南阿蘇村・天草市・上天草市の合計574室の割合です。推定成約ADRは最安プラン水準(2名1室・税込)に業態別の補正係数を適用した推定成約単価(税抜相当)のエリア中央値で、1人あたりの目安は1室2名利用として2で割った値です。
■ 限界・留意点
推定OCC・推定成約ADRはいずれも推定値で、各施設の実稼働率・実際の成約価格とは異なります(推定成約ADRは上場ホテルREITの物件別実績との照合で誤差中央値約7%)。10月の値は応援割の予約受付開始(9月15日)前の観測で、宿泊日に近づくにつれて変動します。主要予約サイトに掲載のない施設・在庫は含みません。推定成約ADRの算出対象は市町村により14〜45施設(南阿蘇村は18施設)と少なく、個別施設の影響を受けやすい点にご留意ください。市町村の独自支援は予算・発行上限に達し次第終了するものがあり、天草市・水俣市の制度と応援割との併用可否は公式ページで確認できていません。
■ 出典
- 観光庁「九州ふっこう応援割」(2026年9月11日更新)
- トラベルWatch「熊本県『九州ふっこう応援割』9月15日10時予約開始。市町村独自の旅行支援もまとめてチェック!」(2026年9月11日)
- 熊本県観光サイト「各エリアの宿泊助成情報等の情報」
- 阿蘇市「【阿蘇ふっこう割】阿蘇に泊まって支える!熊本応援キャンペーン」
- youmore南小国「南小国町観光商品券(阿蘇ふっこう割)」
- ASOおぐに観光協会「小国町宿泊専用商品券」
- 産山村「阿蘇ふっこう割商品券」
- 高森町「宿泊補助(阿蘇ふっこう割)」
- 南阿蘇村「阿蘇ふっこう割(2026年9月)」
- 西原村「旅泊応援キャンペーン」
- 津奈木町観光サイト「つなぎ笑顔応援割」
- 人吉温泉観光協会「ひとよし満喫旅プラス」
- 天草市「天草元気旅チャージ券」(2026年9月4日更新)
- 天草四郎観光協会「『上天草泊まって応援!』復興宿泊キャンペーン」
- 熊本日日新聞「上天草市、9月に宿泊費助成キャンペーン 10月からは『デジタルお食事券』」(2026年8月28日)
- メトロエンジンリサーチ — 市町村別ブッキングカーブ・推定OCC(9月2日・9月9日観測)、推定成約ADR(2026年10月宿泊分)
