
グランドプリンスホテル新高輪(東京都港区高輪3丁目・906室)は、2026年9月現在も営業を続けている。西武ホールディングスは2025年7月に「2026年度中の営業終了」を公表したが、2026年5月14日に方針を改め、2027年4月以降も客室・宴会場「飛天」・レストランの営業を継続すると発表した。営業終了の時期は未定である。同年6月に示された見直し後の再開発スケジュールでは、2029年度に解体工事、2030年度に新築工事に着手し、2035年度の完成・開業を目指す。本稿では、この事実関係を一次情報で整理したうえで、品川駅・高輪ゲートウェイ駅から半径1.5km圏の客室ストックのうち新高輪の906室がどれだけの比重を占めるか、同じ価格帯の代替供給が何室あるか、そして抜ける客室と入る客室がどの順番で入れ替わるのかを、メトロエンジンリサーチのデータで確認する。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- 掲載価格:2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均(素泊まり〜食事付きを含む)。本稿の「価格帯」は各施設の掲載価格の12ヶ月平均(2025年9月〜2026年8月)で区分しています。
- 客室ストック:直近3ヶ月(2026年6月下旬〜9月下旬)に主要予約サイトで販売価格が観測された施設の客室数合計(主要予約サイト掲載ベース)。大人専用施設・貸別荘・一棟貸し等は除外しています。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
- — 2027年4月以降も営業継続・終了時期は未定。西武HDは2025年7月の「2026年度中の営業終了」方針を2026年5月14日に改め、見直し後の工程は2029年度解体着工・2035年度完成開業。
- — 品川駅・高輪ゲートウェイ駅1.5km圏の客室ストック46施設・12,283室のうち、新高輪906室は7.4%。掲載価格¥50,000以上の上位帯2,997室に限ると30.2%を占める最大施設。
- — 上位帯では2025年にJWマリオット・ホテル東京(約200室)が開業、ANAホリデイ・イン東京ベイ(132室)がリブランド。跡地ホテル開業まで5〜6年程度の空白が生じうる。
新高輪はいつまで営業するのか — 公表と報道の時系列
「新高輪はいつまで泊まれるのか」という問いに対する現時点の答えは、「2027年4月以降も営業。終了時期は未定」である。まず、これまでに公表・報道された内容を日付順に並べておく。
| 時期 | 発信元 | 内容 |
|---|---|---|
| 1982年4月 | — | 「新高輪プリンスホテル」として開業。設計は建築家の村野藤吾。地下3階・地上15階・塔屋3層、延べ約7万4,710㎡、客室数906室 |
| 2025年7月 | 西武HD公表/日本経済新聞・建設通信新聞 | ホテル・宴会場の営業を2026年度中に終了し、営業終了後に解体工事へ着手する方針。跡地には地下4階・地上31階・延べ26万8,000㎡の複合施設(事務所・商業・ホテル・住宅・MICE)を2028年度着工、2032年度竣工で計画 |
| 2026年5月14日 | 西武HD「中期経営計画の進捗」公表/日本経済新聞 | 2027年4月以降も営業を継続。客室、宴会場「飛天」、レストランの営業を続け、営業終了時期は未定。再開発計画そのものは維持し、建設費の高騰などを踏まえて計画を精査する |
| 2026年6月 | 西武HD補足資料(6月15日)/建通新聞・日本経済新聞 | 高輪B-1地区開発のスケジュールを見直し。2028年度中の事業承認、2029年度に解体工事着工、2030年度に新築工事着工、2035年度に完成・開業を目指す(当初比で完成が3年後ろ倒し) |
出典:西武ホールディングス公表資料、日本経済新聞(2025年7月・2026年5月・2026年6月)、建設通信新聞(2025年7月22日)、建通新聞(2026年6月18日)よりホテルバンク編集部作成
スケジュール見直しの理由について、西武HDは建築費の高騰に加え、ゼネコンの施工キャパシティの需給が逼迫している中でコストの適正性を確保するためと説明している。つまり、当初の「2026年度中の営業終了」はすでに有効な日程ではなく、公表されている工程表の上では、2029年度の解体着工までがホテルとして営業しうる期間の目安になる。日本経済新聞は2026年6月の報道で、遅くとも2029年度中には営業を終える見通しと伝えている。ただし、西武HD自身は具体的な営業終了日を公表していない。
実際の販売状況も、この「営業継続」を裏づけている。メトロエンジンリサーチが2026年9月25日時点で観測した主要予約サイトの掲載では、同ホテルは2027年8月31日宿泊分まで販売価格を公開していた。予約受付の期間は各サイトの販売カレンダーに依存するため、これが営業終了日を示すものではない点には注意したい。
なお、跡地の新しい複合施設にはホテル用途が含まれるものの、客室数・ブランド・グレードは公表されていない。したがって「新高輪がいつ、どのような形で再開業するか」は現時点では確定できず、本稿でも断定はしない。
品川・高輪ゲートウェイ1.5km圏の客室ストックは46施設・1万2,283室
それでは、新高輪の906室は周辺市場のなかでどの程度の大きさなのか。品川駅と高輪ゲートウェイ駅それぞれから半径1.5kmの範囲(2つの円の合併範囲)で、直近3ヶ月に販売価格が観測された宿泊施設を集計した。対象は46施設・1万2,283室(主要予約サイト掲載ベース)である。
2駅合算の圏内では、新高輪は全客室の7.4%にあたる。駅ごとに見ると、品川駅1.5km圏(37施設・1万1,236室)では8.1%、高輪ゲートウェイ駅1.5km圏(29施設・8,917室)では10.2%となる。新高輪は品川駅から約500m、高輪ゲートウェイ駅から約670mの位置にあり、両駅の商圏が重なる地点に立っていることが分かる。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=46施設・主要予約サイト掲載ベース)。円の大きさは客室数、濃紺は上位価格帯、破線は各駅から半径1.5km
業態別の内訳は次のとおりである。ビジネスホテルが施設数の過半を占める一方、客室数ではシティホテルが最も多い。新高輪は10施設・5,974室のシティホテル群の一角で、そのうち約15%を占める。
| 業態 | 施設数 | 客室数 | 構成比(客室) |
|---|---|---|---|
| シティホテル(新高輪を含む) | 10 | 5,974 | 48.6% |
| ビジネスホテル | 26 | 5,437 | 44.3% |
| デラックスホテル | 2 | 537 | 4.4% |
| カプセルホテル | 2 | 238 | 1.9% |
| ゲストハウス・ホステル等 | 4 | 70 | 0.6% |
| 旅館 | 2 | 27 | 0.2% |
| 合計 | 46 | 12,283 | 100.0% |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=46施設・12,283室、主要予約サイト掲載ベース)。新高輪の客室数は公表値906室で計上
ここで押さえておきたいのは、圏内の客室の約半分がシティホテルという構成である。品川駅前には大規模なシティホテルが集積しており、新高輪はその中でも宴会・MICE機能を併せ持つ大箱として位置づけられてきた。客室数だけで見れば全体の7%台だが、同じ価格帯に絞るとその比重は大きく変わる。
価格帯で見ると、上位帯2,997室の30.2%を新高輪が占める
次に、圏内46施設を掲載価格の12ヶ月平均(2025年9月〜2026年8月、2名1室・税込)で5つの価格帯に分けた。新高輪の掲載価格12ヶ月平均は約¥63,500で、「¥50,000〜99,999」の帯に入る。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=46施設・12,283室)。価格帯は各施設の掲載価格12ヶ月平均(2名1室・税込・全プラン平均)で区分
掲載価格¥50,000以上を「上位帯」とすると、圏内の上位帯は10施設・2,997室で、新高輪はその30.2%を占める単独で最大の施設である。全体に占める7.4%と比べて、同じ価格帯の中では約4倍の比重を持つ。言い換えれば、新高輪が営業を終えたとき、上位帯の客室は2,997室から2,091室へと約3割減る計算になる。
一方で、上位帯にはすでに厚みのある代替供給が存在する。新高輪を除く上位帯9施設・2,091室の内訳は以下のとおりである。
| 施設名(上位帯・新高輪を除く) | 客室数 | 価格帯 | 品川駅から |
|---|---|---|---|
| シェラトン都ホテル東京 | 484 | ¥50,000〜99,999 | 約1.5km |
| グランドプリンスホテル高輪 | 376 | ¥50,000〜99,999 | 約0.5km |
| ザ・プリンス さくらタワー東京 | 288 | ¥100,000以上 | 約0.4km |
| 東京マリオットホテル | 249 | ¥50,000〜99,999 | 約0.8km |
| ストリングスホテル東京インターコンチネンタル | 203 | ¥100,000以上 | 約0.2km |
| JWマリオット・ホテル東京(2025年10月開業) | 200 | ¥100,000以上 | 約0.8km |
| プルマン東京田町 | 143 | ¥50,000〜99,999 | 約2.1km |
| ANAホリデイ・イン東京ベイ(2025年4月リブランド開業) | 132 | ¥50,000〜99,999 | 約1.2km |
| 高輪 花香路 | 16 | ¥100,000以上 | 約0.5km |
| 合計(9施設) | 2,091 |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(主要予約サイト掲載ベース)。距離は品川駅からの直線距離。プルマン東京田町は高輪ゲートウェイ駅から約1.4kmで圏内
注目したいのは、上位帯の顔ぶれが2025年に2つ入れ替わっている点だ。1つは高輪ゲートウェイ駅前の「THE LINKPILLAR 1 SOUTH」23〜30階に開業したJWマリオット・ホテル東京(約200室)で、上位帯に純増で約200室が加わった。もう1つは天王洲の第一ホテル東京シーフォートが2025年4月にANAホリデイ・イン東京ベイ(132室)へリブランド開業したケースで、客室数は変わらないものの、国際ブランドの上位帯ホテルとして再出発している。新高輪が抜ける前に、上位帯の受け皿がすでに一部入れ替わり始めていると読める。
加えて、同じ西武・プリンスホテルズの系列では、グランドプリンスホテル高輪(376室)とザ・プリンス さくらタワー東京(288室)が隣接地で営業を続ける。2施設で664室あり、高輪エリアのプリンスホテル群としての上位帯の客室は、新高輪の営業終了後も一定規模で残ることになる。
港区のADRは直近12ヶ月で前年同期比+7.1%
客室の入れ替えが価格にどう響くかを考える前提として、港区全体の価格水準を確認しておく。メトロエンジンリサーチによると、港区の推定成約ADR(エリア中央値)は2025年9月〜2026年8月の12ヶ月平均で約¥17,700、前年同期(約¥16,500)比+7.1%だった。月別では、2025年秋に前年同月比+14〜+19%と強い伸びを示した後、2026年6〜8月はそれぞれ-4.0%、-5.3%、-8.4%と前年を下回った。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(港区・全カテゴリ、推定成約ADRのエリア中央値、N=114〜133施設/月)。2026年9月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定
調査時点(2026年9月下旬)の掲載水準に基づく推定では、2026年10月が約¥23,800(前年同月比+21.2%)、11月が約¥22,300(+11.7%)、12月が約¥20,800(+8.4%)と、秋から年末にかけては再び前年を上回る水準で推移している。掲載価格(全プラン平均・税込)で見ても、2026年10月は約¥40,800と前年同月の約¥34,900を上回る。23区の他の区と並べた秋の価格の動きは、東京23区・秋フォワード価格ランキング2026も参考になる。
| 月 | 港区 ADR | 前年同月比 | 掲載価格 | 港区シティホテル ADR | N(全/シティ) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年9月 | ¥17,210 | +18.4% | ¥29,336 | ¥36,271 | 127/23 |
| 2025年10月 | ¥19,598 | +19.3% | ¥34,869 | ¥48,034 | 128/24 |
| 2025年11月 | ¥19,921 | +14.4% | ¥35,708 | ¥40,691 | 121/23 |
| 2025年12月 | ¥19,189 | +13.8% | ¥32,485 | ¥39,809 | 121/23 |
| 2026年1月 | ¥15,218 | +5.5% | ¥25,858 | ¥36,566 | 130/24 |
| 2026年2月 | ¥16,480 | +5.4% | ¥28,616 | ¥38,339 | 132/23 |
| 2026年3月 | ¥19,553 | +6.0% | ¥32,846 | ¥36,384 | 132/23 |
| 2026年4月 | ¥22,114 | +7.6% | ¥35,240 | ¥38,434 | 133/23 |
| 2026年5月 | ¥18,680 | +10.4% | ¥32,672 | ¥33,849 | 132/23 |
| 2026年6月 | ¥15,000 | -4.0% | ¥27,536 | ¥27,270 | 131/23 |
| 2026年7月 | ¥15,138 | -5.3% | ¥27,701 | ¥27,272 | 132/23 |
| 2026年8月 | ¥13,888 | -8.4% | ¥25,959 | ¥29,052 | 133/24 |
| 2026年9月※ | ¥16,428 | -4.5% | ¥29,924 | ¥28,573 | 128/23 |
| 2026年10月※ | ¥23,751 | +21.2% | ¥40,783 | ¥46,417 | 127/23 |
| 2026年11月※ | ¥22,260 | +11.7% | ¥39,696 | ¥39,465 | 125/23 |
| 2026年12月※ | ¥20,793 | +8.4% | ¥36,693 | ¥32,182 | 123/22 |
| 2027年1月※ | ¥16,106 | +5.8% | ¥31,373 | ¥28,389 | 114/21 |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。ADRは推定成約ADR(税抜相当)のエリア中央値、掲載価格は2名1室・税込・全プラン平均のエリア中央値。※は調査時点(2026年9月下旬)の掲載水準に基づく推定で、今後変動する
港区のシティホテルに限った推定成約ADRは、2025年9月〜2026年8月の12ヶ月平均で約¥36,000と、前年同期とほぼ同水準(-0.3%)だった。新高輪自身の推定成約ADRは同じ12ヶ月の平均で約¥33,500で、港区全体の中央値(約¥17,700)の約1.9倍、港区シティホテルの中央値とほぼ同じ価格帯に位置する。つまり新高輪は、港区のシティホテル市場の「標準的な水準」を担ってきた大箱だといえる。
この価格帯の客室がまとまって入れ替わることの意味は、2つの方向から考えられる。1つは、同価格帯の既存施設や2025年に開業した上位帯ホテルにとって需要の受け皿が広がる可能性である。もう1つは、2029年度の解体着工から2035年度の完成までの約6年間、団体・宴会付きの大口宿泊を一度に受けられる大箱が圏内で1つ減ることで、周辺施設の宴会・MICE関連の需要取り込みの機会が生まれうる点だ。いずれも現時点のデータで確定できる因果ではなく、今後の推移を観察すべき論点として挙げておく。
抜ける906室と入る客室 — 高輪・品川の供給入替えタイムライン
それでは、新高輪の客室が抜けるまでの間に、圏内にはどれだけの客室が入ってくるのか。メトロエンジンリサーチの新規開業データ(OTA掲載確認ベース)と、国土交通省「建築物動態統計調査」の建築計画、各社の公表情報を時系列に並べた。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース)/国土交通省「建築物動態統計調査」/西武ホールディングス・京浜急行電鉄公表資料。客室数未公表の計画は0で表示
| 時期 | 案件 | 客室 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2024年8月 | ナインアワーズ品川駅 for men(カプセル) | +70 | OTA掲載確認 |
| 2025年4月 | ANAホリデイ・イン東京ベイ(旧第一ホテル東京シーフォートのリブランド) | ±0(132室) | 運営会社公表 |
| 2025年10月 | JWマリオット・ホテル東京(高輪ゲートウェイ駅前) | +200 | 建築計画・OTA掲載確認 |
| 2029年度(予定) | 品川駅西口地区A地区(京急・トヨタ、地上29階)ホテル部分 | 未公表 | 京浜急行電鉄公表 |
| 2029年度までに(時期未定) | グランドプリンスホテル新高輪 営業終了・解体着工 | -906 | 西武HD公表・報道 |
| 2035年度(予定) | 高輪B-1地区(新高輪跡地)複合施設 ホテル部分 | 未公表 | 西武HD公表 |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース)/国土交通省「建築物動態統計調査」/各社公表資料。※建築計画は調査時点での確認申請ベース。今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照
2024年以降、圏内には2施設・270室の新規供給がすでに入っており、加えて132室がリブランドで国際ブランドの上位帯ホテルに生まれ変わった。これに対して抜けるのは新高輪の906室で、2029年度までのいずれかの時点になる。新規供給だけで差し引くと約640室の純減だが、上位帯に限ればJWマリオット・ホテル東京の約200室が先行して受け皿の一部を担う形である。
その先では、品川駅西口地区A地区(旧シナガワグース跡地、京浜急行電鉄とトヨタ自動車の計画、地上29階・延べ約31万㎡)が2029年度の開業を目指しており、用途にホテルが含まれる。新高輪の営業終了時期とA地区の開業時期が同じ2029年度前後に重なる可能性がある点は、品川駅前の供給入替えを考えるうえで押さえておきたい。ただしA地区のホテルの客室数・ブランドは公表されていないため、本稿では客室数を計上していない。
跡地の高輪B-1地区は2035年度の完成・開業を目指す。つまり、公表スケジュールどおりに進んだ場合、新高輪の営業終了から跡地のホテルが開業するまでに少なくとも5〜6年程度の空白期間が生じうる。この期間の上位帯の需要は、既存のシティホテル・デラックスホテル群と、A地区を含む新規供給に分散することになるだろう。23区全体で新規供給が既存ストックに対してどの程度の規模になるかは、東京23区ホテル供給圧2026で区別に整理している。
高輪の地価は10年で約2.1倍 — 跡地利用の3つのシナリオ
最後に、跡地利用の経済合理性を地価の面から確認する。品川駅高輪口から約200mの公示地価地点「港5-4」(港区高輪3丁目・商業地域・容積率600%)は、2026年1月1日時点で1㎡あたり775万円、前年比+18.3%だった。2016年の371万円から10年で約2.1倍(+108.9%)となっている。
出典:国土交通省「地価公示」(標準地 港5-4、港区高輪3丁目)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
この地点は品川駅前の商業地であり、新高輪の敷地そのものの評価額を示すものではない。それでも、高輪エリアの地価が2020年代に入って上昇ピッチを速めていることは読み取れる。高輪エリアの他の公示地価地点も、2026年の前年比は住宅地・商業地とも+14.8〜+21.5%の範囲に並ぶ。
加えて、建物の規模は大きく変わる。現在の新高輪は延べ約7万4,710㎡だが、跡地の計画は延べ約26万8,000㎡(高輪B-1地区のうち新高輪のある西側約3.0ha。国民生活センター・品川税務署のある東側約0.9haは公園になる)で、延床面積は約3.6倍になる。既存ホテルを建て替える際の解体費や容積の扱いについては、ホテル建替えの解体費は㎡5.1万〜14.7万円で詳しく分析している。地価の上昇と床面積の拡大を合わせると、跡地をどう使うかにはいくつかの可能性が考えられる。
シナリオA:ホテル+MICEを核とする複合
計画用途にホテルとMICEが明記されていることから、宴会・会議機能を引き継ぐ形で、ホテルとMICE施設が一体となる構成が考えられる。品川駅の広域交通結節点としての性格と整合する。
シナリオB:客室数を絞った上位帯ホテル
延床の多くを事務所・住宅に充て、ホテルは客室数を抑えた上位帯で構成する可能性もある。周辺で2025年に開業した上位帯ホテルのように、高層階の少室数型も選択肢になりうる。
シナリオC:段階的な整備と工程の再調整
建設費の動向を踏まえ、スケジュールはすでに2度見直されている。事業承認(2028年度)の段階で、用途構成や工期が再度調整される可能性も残る。
いずれのシナリオも、公表情報と地価の動きから考えられる「可能性」であり、西武HDが決定した内容ではない。ホテル部分の客室数・グレードは今後の基本設計や事業承認の過程で具体化するとみられる。
よくある質問
Q. グランドプリンスホテル新高輪はいつまで営業しますか?
A. 西武ホールディングスは2026年5月14日、2027年4月以降も営業を継続すると発表しており、営業終了時期は未定です。公表されている再開発スケジュールでは2029年度に解体工事に着手する予定で、それまでに営業を終える見通しと報じられています。
Q. 宴会場「飛天」はいつまで使えますか?
A. 2026年5月の発表では、客室とあわせて「飛天」などの宴会場、レストランの営業も継続するとされています。個別の予約可否は同ホテルに確認するのが確実です。
Q. 新高輪は建て替え後に再開業しますか?
A. 跡地の複合施設(2035年度完成・開業予定)にはホテル用途が含まれますが、客室数・ブランド・名称は公表されていません。現時点で「新高輪」としての再開業を確定できる情報はありません。
Q. 周辺の客室数はどれくらい減りますか?
A. 品川駅・高輪ゲートウェイ駅の1.5km圏では、客室ストック1万2,283室のうち新高輪は7.4%にあたります。掲載価格¥50,000以上の上位帯に限ると2,997室の30.2%を占めます。
まとめ
グランドプリンスホテル新高輪は、当初の「2026年度中の営業終了」から方針が改められ、2027年4月以降も営業を続けている。公表スケジュールでは2029年度の解体着工、2035年度の跡地複合施設の完成・開業が予定され、営業終了日はまだ示されていない。
品川駅・高輪ゲートウェイ駅1.5km圏で見ると、新高輪の906室は全体の7.4%だが、上位帯では30.2%を占める最大の施設である。一方、2025年にはJWマリオット・ホテル東京(約200室)の開業と、ANAホリデイ・イン東京ベイ(132室)へのリブランドで上位帯の顔ぶれが入れ替わり、2029年度には品川駅西口A地区の開業も予定される。新高輪の営業終了は、高輪・品川エリアで進む再開発のなかで、大箱のシティホテルから新しい複合施設へと客室が入れ替わっていく過程の一部と捉えられる。港区のADRが秋以降に再び前年を上回る水準で推移していることも踏まえ、今後は営業終了日の公表と、A地区・B-1地区のホテル部分の客室計画が次の注目点になるだろう。
将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年9月以降のADR・掲載価格は、調査時点(2026年9月下旬)でOTA等に公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点の価格が直前の価格調整で上下する可能性がある点にご留意ください。※印の月の前年同月比は、調査時点の掲載水準に基づく推定値と、確定済みの前年同月の推定成約ADRとを比べたもので、算出の基準が異なります。同じ基準で比べられる掲載価格では、2026年10月は前年同月比約+17%です。
集計方法
客室ストックは、品川駅(北緯35.6285度・東経139.7388度)と高輪ゲートウェイ駅(北緯35.6355度・東経139.7407度)からそれぞれ半径1.5kmの範囲にある宿泊施設のうち、2026年6月25日〜9月25日の宿泊日に主要予約サイトで販売価格が観測された46施設を対象とした(同一建物でブランドが切り替わった施設は現行ブランドの1施設として計上)(メトロエンジンリサーチが追跡するうち、稼働が確認できる約27,000施設の一部)。主要予約サイトで販売価格が観測されない施設は含まれないため、実際の客室総数はこれより多い可能性がある。価格帯は各施設の掲載価格(2名1室・税込・全プラン平均)の2025年9月〜2026年8月平均で区分した。港区のADRは推定成約ADRのエリア中央値で、月ごとの対象施設数(N)を表に併記した。
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参考資料・出典一覧
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 客室ストック(N=46施設・12,283室)、掲載価格、推定成約ADR(港区 N=114〜133施設/月)、新規開業データ(OTA掲載確認ベース)
■ 公表資料・報道
- 西武ホールディングス ニュースリリース(「西武グループ中期経営計画(2024〜2026年度)および資本コストや株価を意識した経営の進捗について」2026年5月14日、同補足資料 2026年6月15日)
- 西武HD、グランドプリンスホテル新高輪の営業終了 26年度中に(日本経済新聞、2025年7月)
- 【西武HDのグランドプリンス新高輪】26年度に営業終了・解体着手(建設通信新聞、2025年7月22日)
- グランドプリンスホテル新高輪、27年4月以降も営業 再開発を精査(日本経済新聞、2026年5月14日)
- グランドプリンスホテル新高輪の再開発、35年度完成へ 3年遅れ(日本経済新聞、2026年6月)
- 西武HD 新築着工は30年度に見直し 高輪B-1地区開発(建通新聞、2026年6月18日)
- (仮称)品川駅西口地区A地区新築計画の事業化決定について(京浜急行電鉄、2024年3月22日)
- 「ANAホリデイ・イン東京ベイ」、4月開業 旧第一ホテルをリブランド(TRAICY、2025年1月)
- 「JWマリオット・ホテル東京」高輪ゲートウェイ駅前に開業(ファッションプレス)
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省「地価公示」令和8年(東京都財務局 公表ページ)
- 地価公示 標準地 港5-4(港区高輪3丁目)の年次推移
- 国土交通省「建築物動態統計調査」
