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稲取温泉 雛のつるし飾りまつり30周年、東伊豆町の1月単価は4月比+37% — 河津・伊東・下田と冬の山を比較

投稿日 : 2026.11.03

静岡県

季節・イベント

稲取温泉 雛のつるし飾りまつり30周年、東伊豆町の1月単価は4月比+37% — 河津・伊東・下田と冬の山を比較

稲取温泉旅館協同組合が中心となって続けてきた伊豆稲取の「雛のつるし飾りまつり」は、2027年に30周年を迎える。報道によれば会期は1月20日から3月31日までの約2か月半で、素盞鳴神社の雛段飾りは例年より1週間長く組まれる予定だ。宿の運営側から見ると、この行事が重なる1〜3月の東伊豆町は、推定成約ADRが4月を上回る「冬型」の月別カーブを描いている。本稿では、30周年の会期を整理したうえで、東伊豆町の月別単価を河津町・伊東市・下田市と並べ、稲取駅2km圏の客室ストックと、長い会期を平日の販売に生かす余地を読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

本記事の客室ストックは、伊豆稲取駅から半径2,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月27日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。

Key Takeaways
  • — 1月¥24,774:東伊豆町の2026年1月の推定成約ADR(N=47施設)は4月(¥18,132)比+36.6%。1〜3月がそろって4月を上回る「冬型」の月別カーブを描く。
  • — 山の月は町ごとにずれる:伊東市・下田市は12月、東伊豆町は1月、河津町は2月に単価の山。1〜3月平均の4月比は河津町+49.2%、東伊豆町+26.2%。
  • — 19軒・661室:伊豆稲取駅2km圏の客室は老舗旅館が中心で10年ほぼ横ばい。会期中も土曜の掲載価格は平日比約2割高く、平日連泊や河津桜との周遊商品に伸びしろがある。

30周年の会期 — 1月20日から3月31日まで、雛段飾りは1週間延長

雛のつるし飾りは、古い着物の端切れで小さな人形を作り、紐でつないで雛壇の脇に吊るす稲取の風習である。稲取温泉旅館協同組合の公式ページによると起源は定かではないが、江戸時代後期にさかのぼる百年以上の歴史があると考えられており、親から子へ受け継がれてきた。まつりはこの風習を観光行事に育てたもので、2026年の第29回は公式ページ上で1月20日から3月31日までの開館(9時〜17時)として案内されていた。

2027年の第30回について、観光経済新聞(2026年10月9日)は会期を1月20日〜3月31日と報じている。目玉の一つである素盞鳴神社の雛段飾りは、本殿へ続く118段の石段に雛人形を並べる野外展示で、記念の年にあわせ例年より1週間長い2月6日〜3月7日の開催になる見込みだ。2月27日には商工会青年部の協力で空き家を活用した「雛フェス」が予定され、主会場の文化公園雛の館では約1万8,000個のつるし飾りを展示し、期間中に約5万人が訪れるという。なお、調査時点(2026年10月下旬)の公式ページには第30回の開催告知はあるものの日付の掲載はなく、以下の日程は報道ベースの予定として扱っている。

2027年 第30回 雛のつるし飾りまつりの主な日程(報道ベース)
項目2027年(第30回・報道ベース)曜日
まつり会期1月20日〜3月31日水〜水
素盞鳴神社 雛段飾り2月6日〜3月7日(例年より1週間延長)土〜日
雛フェス2月27日土
文化公園雛の館の展示約1万8,000個—
期間中の来場(報道値)約5万人—

出典:観光経済新聞(2026年10月9日)、稲取温泉旅館協同組合 公式サイトよりホテルバンク編集部作成

30周年にあわせ、地域おこし協力隊の協力による伊豆稲取駅のつるし飾り展示のリニューアルや、記念品が当たるスタンプラリーも計画されているという。一方で作り手の高齢化が進み、後継者の育成は今後の大きな課題とされている。公式ページには予約制を含む制作体験の受け入れ先が3か所紹介されており、見る行事から「作る」体験へ裾野を広げる素地がすでにある点は、滞在型の商品を考える宿にとっても材料になるだろう。

東伊豆町の月別推定成約ADR — 1〜3月が4月を上回る「冬型」

まずは東伊豆町全体の単価の季節性を確認したい。メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(市区町村内の対象施設の中央値)を見ると、2026年は1月が¥24,800、2月が¥22,900、3月が¥20,900で、4月の¥18,100を3か月とも上回った。1月は4月比+36.6%で、同年8月の¥23,200よりも高く、2025年9月〜2026年9月の13か月で最も高い月になっている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(東伊豆町、推定成約ADR・確定月のみ、N=46〜50施設)

2025年の同じ時期を振り返ると、1〜3月は¥20,600〜¥21,400と4月(¥19,600)をわずかに上回る程度だった。2026年は1月が前年同月比+16.0%、2月が+10.3%と冬の上げ幅が大きく、3月は+1.9%、4月は−7.3%となっている。冬の山が前年よりはっきりした形であり、1〜3月の高さはつるし飾りまつりの会期とも重なる。ただし年末年始の連休や温泉需要の季節性なども同じ時期に重なるため、この単価差を行事だけの効果と読むことはできない。ここでは月別水準の事実として押さえておきたい。

東伊豆町の月別推定成約ADR 2025年・2026年比較
月2025年2026年前年同月比N(2026年)
1月¥21,366¥24,774+16.0%47
2月¥20,786¥22,918+10.3%48
3月¥20,564¥20,947+1.9%49
4月¥19,563¥18,132−7.3%47
8月(参考)¥24,491¥23,228−5.2%48

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・確定月同士の比較)

河津・伊東・下田との並び — 冬の山は町ごとに月がずれる

それでは、隣接する温泉地と比べると東伊豆町の冬型はどう位置づけられるのか。2025年12月〜2026年4月の推定成約ADRを並べると、山の月が町ごとに異なることが分かる。伊東市と下田市は12月が最も高く(それぞれ¥25,000、¥20,500)、東伊豆町は1月、河津町は2月に山を迎えた。河津町は河津桜の見頃が例年2月にあたる町で、2月の¥28,800は4月(¥17,500)の約1.6倍に達している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・確定月、N=東伊豆町47〜49/河津町24〜28/伊東市121〜125/下田市46〜53施設)

1〜3月の平均を4月と比べた「冬の上乗せ幅」で見ると、河津町が+49.2%、東伊豆町が+26.2%、下田市が+15.8%、伊東市が+11.9%となる。東伊豆町は河津町ほど一点に集中せず、1月から3月までなだらかに高い水準を保っている点に特徴がある。会期が約2か月半と長い行事と、2月に見頃を迎える花の名所が隣り合う配置は、エリアとして冬季の来訪動機を複数持っていると言い換えられるだろう。

伊豆4市町の2026年1〜4月 推定成約ADRと冬の山
市町1月2月3月4月1〜3月平均の4月比山の月(12〜4月)
東伊豆町¥24,774¥22,918¥20,947¥18,132+26.2%1月
河津町¥25,678¥28,836¥23,934¥17,522+49.2%2月
伊東市¥23,257¥21,411¥21,137¥19,611+11.9%12月
下田市¥16,210¥15,856¥13,524¥13,122+15.8%12月

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年、推定成約ADR・確定月)

前年同月比でも動きは一様ではない。河津町は1月+38.6%、2月+25.0%、3月+24.9%と冬の3か月がそろって伸び、下田市も1月+27.4%、2月+28.1%と大きく上がった。伊東市は2月の+10.6%を除けば小幅にとどまる。東伊豆町は1〜2月に伸びが集中しており、3月にかけて前年並みへ戻る形だった。4月は東伊豆町・河津町・伊東市がそろって前年を下回っており、冬の伸びが目立つシーズンだったといえる。

稲取温泉の客室ストック — 伊豆稲取駅2km圏に19軒・661室

単価の水準を受け止める器として、稲取の客室ストックも確認しておきたい。当社が把握する範囲では、伊豆稲取駅から半径2km圏に客室数10室以上の宿泊施設が19軒・661室掲載されており、このうち直近3か月に販売価格が確認できた稼働中の施設は14軒・568室である。区分別では旅館が15軒・547室と客室の8割強を占め、50室以下の施設が15軒と小〜中規模の宿が中心となる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年10月時点、円の大きさ=客室数、濃色=稼働中)

伊豆稲取駅2km圏の区分別客室ストック(2026年10月時点)
区分掲載軒数掲載客室数稼働中軒数稼働中客室数
旅館1554710454
リゾートホテル257257
ビジネスホテル146146
民宿111111
合計1966114568

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年10月時点)

開業年代を見ると、1950〜60年代に開業した6軒が307室を担い、2000年代以降の開業は4軒・101室にとどまる(開業年不明の3軒・110室は集計外)。開業年が分かる施設の年次推移では、2017年の14軒・497室に対し2026年は13軒・498室と、この10年で客室数はほぼ横ばいだった。新規供給が限られ、海沿いの老舗旅館が客室の中核を担う構造のため、繁忙月の単価は既存施設の販売の工夫によって形づくられる部分が大きいと考えられる。県全体で新規供給がどこに積み上がっているかは、静岡県に2026年開業67施設 — 伊豆・熱海に積み上がる小箱供給で整理している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(伊豆稲取駅2km圏・掲載ベース、開業年不明3軒・110室を除く)

会期の長さを平日の販売に生かす余地

約2か月半という会期は、週末に集中しがちな需要を平日へ広げる機会にもなる。2km圏の稼働中14軒について、2026年の第29回会期(1月20日〜3月31日)の掲載価格(全プラン平均・2名1室・税込)を曜日別に集計すると、月〜木曜の平均を100とした場合、土曜は119.7、金曜と日曜はそれぞれ105前後だった。比較として5月中旬〜7月上旬(5月11日〜7月10日)を同じ方法で見ると土曜は116.1で、会期中も平日と土曜の価格差はおおむね2割前後と、閑散期と大きくは変わらない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(伊豆稲取駅2km圏の稼働中14施設、掲載価格・全プラン平均、月〜木曜平均=100)

土曜との差が約2割ある平日は、行事と組み合わせた商品を置く余白と読める。たとえば素盞鳴神社の雛段飾りは屋外の展示で、例年の公開は10時〜15時(雨天中止)と日中に限られる。平日に1泊して日中に神社と雛の館を巡り、翌日に制作体験へ参加する流れなら、行事の時間割に合った連泊商品になる。2月6日の雛段飾り初日と2月27日の雛フェスはいずれも土曜にあたるため、その前後の木・金曜や日曜泊に体験や特典を寄せる設計も考えられるだろう。

加えて、河津町の単価の山が2月にある点も活用したい。東伊豆町の宿にとっては、つるし飾りと河津桜を1回の旅程で回る2泊商品が、2月の平日を埋める選択肢になる。河津桜まつりの2027年の会期は調査時点で公式発表を確認できていないため、例年2月の見頃を前提に、日程確定後に商品を組み替える前提で準備しておくとよい。冬の在庫をいつ頃から公開するかの目安は、冬商戦の販売開始タイミングを13県で測った分析も参考になる。行事の主体である旅館協同組合や観光協会と連携し、平日来訪者向けの共通特典や周遊の仕掛けをエリアで共有できれば、個々の宿の工夫を超えた伸びしろも見えてくる。

宿向け:このテーマに効くプラン名のヒント

静岡県の旅館で「雛・ひな・つるし・温泉」を含む公開プラン名(N=532)に多い訴求要素 ——

温泉露天 98%会席コース 23%海鮮 21%2食付 21%季節催事 10%貸切風呂 10%

実際の名前の例(匿名化):

  • 【グループ割|海鮮会席】お得に温泉&海鮮三昧・女将監修のお料理コース【2食付90分飲み放題】
  • 【平日限定】直前割|海を望む温泉とフレンチ懐石の贅沢ステイ

※公開プラン名の集計にもとづく傾向であり、命名が販売を生む因果を示すものではない。季節催事を名前に入れたプランは1割にとどまり、行事名を冠した平日プランには打ち出しの余地があると読める。伊豆・熱海の旅館で埋まりやすいプランの名付け方は、静岡県・伊豆熱海の旅館プラン名の比較で実例とともに掘り下げている。

データの読み方に関する注意:本記事の推定成約ADRは確定月(2026年9月まで)の値のみを用いており、2027年1〜3月の単価見通しは含まない。2027年の会期・行事日程は調査時点の報道ベースであり、正式な日程は稲取温泉旅館協同組合・東伊豆町観光協会の発表を確認されたい。曜日別の掲載価格は過去の会期中に観測された販売価格の集計で、施設の実際の成約価格とは異なる。

まとめ

30周年を迎える稲取の雛のつるし飾りまつりは、2027年1月20日から3月31日まで(報道ベース)の長い会期を持つ。東伊豆町の推定成約ADRは2026年に1月¥24,800・2月¥22,900・3月¥20,900と4月の¥18,100を上回り、1月は8月をも上回る冬型だった。周辺では伊東・下田が12月、河津が2月に山を迎え、冬の需要の山が町ごとにずれて並んでいる。稲取駅2km圏の客室は19軒・661室(稼働中14軒・568室)と老舗旅館が中心で、この10年ほぼ横ばいである。会期中も平日と土曜の掲載価格には約2割の差があり、行事の時間割に合わせた平日連泊や河津桜との周遊商品は、記念の年をエリアの冬季需要の厚みにつなげる伸びしろといえるだろう。

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参考資料・出典一覧

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