三菱地所ホテルズ&リゾーツが2025年5月に公表した函館市大手町の「ザ ロイヤルパークホテル」は、地上11階・約200室、眺望を生かしたレストランと温浴施設を備え、2027年夏の開業を予定する。同社にとって北海道エリア2店舗目となる。函館湾と函館山を間近に臨む大手町は、函館駅とベイエリアのあいだに位置し、半径1km圏に稼働中の宿泊施設が39軒・5,060室ある。本稿では、この約200室がどの価格帯に着地し、既存の客室ストックにどれだけの吸収余地があるのかを、ベイエリア1km圏の客室推移、函館市の月別推定成約ADR、用途地域と災害想定、そして100室あたりの必要ADR感度から読み解く。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事の客室ストックは、函館市大手町(ザ ロイヤルパークホテル 函館 計画地周辺)から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月26日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。 ブッキングカーブと稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)はリードタイム45日以内の観測のみを用い、対象施設数と客室数を都度併記する。
- — 約200室・+4.0%:ザ ロイヤルパークホテル(地上11階・2027年夏予定)の供給は、半径1km圏の稼働中5,060室(39軒)に対し+4.0%。2025年度の延べ宿泊504万人(前年度比+6.7%)の伸びの範囲に収まる規模。
- — WS①に同業1軒:推定成約ADR¥25,000〜40,000×150〜350室の帯は、HOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館(317室・12か月平均¥31,300)だけが占める。
- — 季節差1.72倍:函館市の推定成約ADR(中央値)は2026年8月¥11,000に対し3月¥6,400。上位帯も同じ季節の波を受ける。
- — 必要ADR¥27,400〜31,300:1室あたり開発費¥40百万円・開発利回り6%・NOI率30%の前提で、稼働80%なら¥27,400、70%なら¥31,300。
- — 津波浸水想定5m以上10m未満:大手町の代表点は準工業地域(容積率200%)。主要機能の上層配置と設備の浸水対策が建設費と必要ADRに効く。
計画概要 — 公表されているのは「地上11階・約200室・2027年夏」まで
一次情報はトラベルボイスが2025年5月30日に報じた内容で、三菱地所ホテルズ&リゾーツが函館市大手町に「ザ ロイヤルパークホテル」を2027年夏に開業する計画だと伝えている。建物は地上11階建て、客室は約200室で、見晴らしのよさを生かしたレストランや温浴施設などを備える予定とされる。ブランドはロイヤルパークホテルズの3つのラインのうち「THEシリーズ」に属し、外観は垂直に切り立った岸壁をイメージし、海と山、そして交易拠点としての函館の歴史を体感できるホテルを目指すという。
一方で、番地・延床面積・事業主(土地建物の所有者)・正式な客室数・開業日は現時点で公表されていない。本稿では公表されている「約200室」「2027年夏」という表記のまま扱い、推定による補完は行わない。なお同社の北海道1店舗目は、2021年10月に開業した「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」であり、函館は札幌に続く2店舗目となる。
| 項目 | 公表内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 所在地 | 北海道函館市大手町(函館湾・函館山を間近に臨む) | トラベルボイス 2025-05-30 |
| 規模 | 地上11階建て・約200室 | 同上 |
| 主な施設 | 眺望を生かしたレストラン、温浴施設 | 同上 |
| 開業時期 | 2027年夏(予定) | 同上 |
| 運営・ブランド | 三菱地所ホテルズ&リゾーツ/ロイヤルパークホテルズ「THEシリーズ」 | 同上 |
| 北海道での位置づけ | 2店舗目(1店舗目はザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園・2021年10月開業) | 同上、マイナビニュース 2021-10-02 |
| 未公表事項 | 番地、延床面積、事業主、正式室数、開業日 | — |
函館の宿泊市場 — 延べ宿泊504万人の過去最多と、夏8月¥11,000・冬3月¥6,400の季節差1.7倍
需要側から確認する。函館市が2026年5月29日に公表した推計によると、2025年度に市内を訪れた観光客は前年度比0.6%増の605万8千人で、統計が残る1955年度以降で2年連続の過去最多となった。延べ宿泊客数は6.7%増の504万3千人とこちらも最多を更新し、外国人宿泊客数は約57万9千人(前年度比1.9%増)だった。羽田便の増便とクルーズ船の寄港が寄与したと報じられており、宿泊需要は入込以上に伸びている点が、新規200室を受け止める側の前提になる。
価格側はどうか。メトロエンジンリサーチが集計した函館市の推定成約ADR(全業態・対象施設の中央値、N=80〜88施設)は、2025年10月から2026年9月までの12か月平均で¥8,600、ピークの2026年8月が¥11,000、ボトムの2026年3月が¥6,400と、夏と冬で1.72倍の開きがある。チャートの年次重ね描きを見ると、4月に一段上がって8月に山を作り、10月以降に下がって2〜3月に底を打つ形が3年とも同じで、函館の宿泊価格は観光の季節性にほぼ沿って動いている。2026年は7〜8月が前年を下回り(8月 ¥12,500→¥11,000)、9月はほぼ同水準(¥10,200→¥10,300)だった。北海道全体でも8月は前年比−5.1%、9月は+4.5%であり、夏の山の高さは年によって振れる。2027年夏の開業は、この季節の山の中に初月を置くことになる。
業態別に見ると、計画が想定するレンジがはっきりする。リゾートホテル(N=10)の12か月平均は¥17,800、シティホテル(N=5)は¥13,700、旅館(N=25)は¥10,100、ビジネスホテル(N=47)は¥7,500である。シティホテルは2026年9月に¥17,100と直近12か月の最高値をつけており、サンプルが5施設と薄い点は割り引く必要があるものの、フルサービス型の単価は夏から秋にかけて上向いている。
| 業態 | 12か月平均 | 2026年8月 | 2026年9月 | 直近12か月の最高/最低 | N |
|---|---|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | ¥7,457 | ¥9,710 | ¥9,402 | ¥9,710(2026-08)/¥5,748(2026-02) | 47施設 |
| シティホテル | ¥13,676 | ¥16,723 | ¥17,093 | ¥17,093(2026-09)/¥9,738(2026-03) | 5施設 |
| リゾートホテル | ¥17,754 | ¥20,254 | ¥18,716 | ¥20,254(2026-08)/¥15,370(2026-03) | 10施設 |
| 旅館 | ¥10,081 | ¥11,862 | ¥10,799 | ¥11,862(2026-08)/¥7,991(2026-03) | 25施設 |
稼働の進み方も確認しておく。函館市で総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で構成した固定コホート(2026年9月は72施設/6,795室)では、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は8月86.9%、9月90.4%、10月は25日分の観測で87.0%だった。9月の平均ブッキングカーブを見ると、宿泊日の45日前の時点で70.9%、30日前で77.0%、14日前で83.1%、7日前で86.0%、前日に90.4%へ到達している。45日前にすでに7割が埋まっているのは、函館が計画性の高いレジャー需要を主体とする市場であることを示している。なお、この値はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。
立地分析 — 大手町の代表点は準工業地域・容積率200%、函館駅前の地価は+8.2%
番地が公表されていないため、本節は国土地理院の町丁代表点(北緯41.7693度・東経140.7237度)を大手町の代表点として用いる。国土交通省 不動産情報ライブラリで判定すると、代表点の用途地域は準工業地域(容積率200%・建ぺい率60%)で、同じタイル内には商業地域(400%・80%)と近隣商業地域(300%・80%)が隣接する。準工業地域でホテルは建築可能であり、11階建て・約200室という規模は、1室あたりの延床を40〜50㎡(共用部込み)と仮に置けば延床8,000〜10,000㎡、容積率200%なら敷地4,000〜5,000㎡が必要になる計算である。これは仮定に基づく整合性の確認であって、実際の敷地条件は公表を待つ。
| 用途地域 | 準工業地域 |
| 容積率/建ぺい率 | 200%/60% |
| 隣接する用途地域 | 商業地域(400%)、近隣商業(300%) |
交通面では、JR函館駅の1日平均乗降客数が2019年の5,522人から2020年に3,124人まで下がり、2023年は4,386人と2019年比79%まで戻している。市電十字街電停(本線)は2023年に1,666人で、函館山ロープウェイと元町・ベイエリアを結ぶ結節点にあたる。北海道新幹線の札幌延伸は、国の有識者会議が2025年3月に「2038年度末ごろ」との見通しを示し、当初の2030年度末から8年遅れる。函館の鉄道アクセスは当面、新函館北斗駅での在来線乗り換えが続く前提で計画を見る必要がある。
地価は駅前と大手町側で水準が2倍以上違う。函館駅前の若松町は2025年に¥145,000/㎡(前年比+8.2%)と上昇が加速した一方、大手町に近い末広町の標準地は¥64,000/㎡(+4.9%)、松風町は¥66,000/㎡で横ばいである。駅前の上昇は函館駅前の地価+10.3%、五稜郭は4年据置き|道南226施設11,449室の投資適地で扱ったとおりで、本稿では再説明を最小限にとどめる。大手町は駅前の半分以下の地価水準で海側の眺望を取れる立地であり、約200室の規模感と温浴施設を組み合わせる計画は、用地コストの面では駅前よりも成立させやすい。
災害想定 — 代表点は津波浸水想定5m以上10m未満、設計と運営計画に織り込む論点
| 項目 | 代表点での判定 | 出典・基準 |
|---|---|---|
| 津波浸水想定 | 浸水深 5m以上〜10m未満の区域 | 北海道 津波浸水想定(2023年)、不動産情報ライブラリ |
| 液状化傾向 | 砂州・砂礫州 — やや液状化しやすい | 国土交通省 地形分類に基づく液状化しやすさ |
| 洪水浸水想定 | 該当区域の収録なし | 不動産情報ライブラリ(洪水浸水想定区域) |
| 土砂災害警戒区域 | 該当区域の収録なし | 不動産情報ライブラリ |
海に近い大手町の代表点は、北海道が2023年に公表した津波浸水想定で浸水深5m以上10m未満の区域にかかる。番地が未公表のため敷地そのものの浸水深は断定しないが、ベイエリアの低地という性格上、設計と運営計画で前提にすべき条件である。具体的には、温浴施設やレストランなど来館者が集まる機能を眺望の取れる上層階に置く構成は、公表資料の「見晴らしのよさを生かした」という方針と災害時の垂直避難の両方に合致する。電気室・非常用発電・受水槽を上層に置くか浸水対策を施すか、津波避難ビルとして地域に開放するか、といった判断は建設費に跳ね返るため、次節の必要ADRにも影響する。釧路での試算(釧路駅2km圏のホテル2,752室、99.6%が津波浸水想定区域)では、新築での浸水対策の積み増しを1室あたり48万〜111万円と置いた。
周辺商圏 — 居住人口は1.5km圏で14,412人・2040年に2020年比−33.8%、需要は来訪者に依存する立地
国土交通省 国土数値情報の250mメッシュ別将来推計人口によると、代表点から半径1.5km圏の居住人口は2025年に14,412人、2040年には10,485人(2020年の15,838人比−33.8%、2025年比−27.2%)、65歳以上の比率は44.7%である。半径1km圏の就業人口は経済センサス(2021年)ベースで事業所1,178・従業者10,210人、うちオフィス系は20.5%にとどまる。つまり大手町の宿泊需要は地元の居住・業務需要ではなく、函館駅と空港・港から入ってくる観光客と出張者に依存する立地だと読める。この性格は、前節で見た「45日前に7割が埋まる」計画性の高い予約行動と整合する。地図は居住人口(国勢調査ベース)であり、滞在人口や通過人口ではない。
競合動向 — 1km圏の客室ストックは2017年3,375室から2026年5,059室へ、2019年に一段増
供給側を棚卸しする。代表点から半径1km圏(客室10室以上、レジャーホテルを除く)には54軒・6,381室が掲載され、そのうち直近3か月に販売価格が確認できた稼働中の施設は39軒・5,060室である。開業年が確認できる施設で年次推移(閉館した施設を除く存続施設ベース)を追うと、客室ストックは2017年の35軒・3,375室から2019年に39軒・4,697室へ一段増え、2025年以降は41軒・5,059室で推移している(開業年不明の3軒・208室は不算入)。2019年は317室のシティホテル、277室と261室の宿泊特化型、336室の温浴付き宿泊特化型が相次いで開業した年で、この1年で約1,300室が積み上がった。約200室の追加は稼働中ストックに対して+4.0%、2019年の一段増の6分の1程度の規模にあたる。
| 客室規模 | 掲載 | 稼働中 | 稼働中客室 |
|---|---|---|---|
| 50室以下 | 22軒 | 13軒 | 360室 |
| 51〜100室 | 8軒 | 7軒 | 502室 |
| 101〜200室 | 12軒 | 9軒 | 1,290室 |
| 201室以上 | 12軒 | 10軒 | 2,908室 |
| 業態 | 掲載 | 稼働中 | 稼働中客室 |
|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | 33軒 | 26軒 | 3,211室 |
| シティホテル | 8軒 | 5軒 | 1,093室 |
| リゾートホテル | 4軒 | 4軒 | 642室 |
| ホステル | 1軒 | 1軒 | 65室 |
| ペンション | 4軒 | 2軒 | 33室 |
構成を見ると、稼働中5,060室のうち201室以上の大型が10軒・2,908室(57%)、101〜200室が9軒・1,290室で、計画の約200室はこの2階級の境目に位置する。業態ではビジネスホテルが26軒・3,211室と63%を占め、シティホテルは5軒・1,093室、リゾートホテルは4軒・642室である。開業年代別では2000年代以降の施設が24軒・3,831室と稼働中客室の76%を占め、駅前からベイエリアにかけての客室は比較的新しい。ただしこの開業年にはリブランド時点のものが含まれ、プレミアホテル -CABIN PRESIDENT- 函館(199室、2023年に旧フォーポイントバイシェラトン函館からリブランド)とホテルエノエ函館(136室、2024年に既存ホテルをリブランド)は既存建物の転換である。両施設を除くと2000年代以降は22軒・3,496室(69%)となる。1960〜70年代開業の大型施設も6軒・826室が営業を続けており、函館国際ホテル(1971年開業・435室)のように改装と投資法人による取得を経て上位帯に位置し続ける例もある。
| 開業年代 | 掲載 | 稼働中 | 稼働中客室 |
|---|---|---|---|
| 1960年代 | 1軒 | 1軒 | 135室 |
| 1970年代 | 5軒 | 5軒 | 691室 |
| 1980年代 | 7軒 | 4軒 | 168室 |
| 1990年代 | 10軒 | 3軒 | 155室 |
| 2000年代 | 11軒 | 9軒 | 1,371室 |
| 2010年代 | 9軒 | 7軒 | 1,109室 |
| 2020年代 | 8軒 | 8軒 | 1,351室 |
| 不明 | 3軒 | 2軒 | 80室 |
投資法人の保有状況 — 函館市内はインヴィンシブル2物件・星野リゾート・リート1物件、函館国際ホテルは2024年7月取得
投資用不動産としての函館を見るうえで、上場ホテルREITの保有物件は参照点になる。保有関係マスター(2026年10月19日時点、N=300物件・国内のみ)で函館市内を抽出すると、インヴィンシブル投資法人(8963)が函館国際ホテル(435室、2024年7月取得、取得価格¥16,830百万円)とホテルマイステイズ函館五稜郭(208室、2015年2月取得、¥2,792百万円)の2物件、星野リゾート・リート投資法人(3287)がコンフォートホテル函館(139室、2015年5月取得、¥937百万円)を保有する。函館国際ホテルは計画地の代表点から約70mに位置する直近の大型フルサービス施設で、インヴィンシブルが開示する物件別実績は稼働率91.3%(2026年8月時点・投資法人開示)、ADR¥26,277、RevPAR¥23,998だった。1室あたり取得価格は約¥38.7百万円で、次節の感度分析で置く1室あたり開発費¥35〜45百万円のレンジと重なる。
| 物件 | 保有法人 | 客室数 | 取得年月 | 取得価格 | 1室あたり |
|---|---|---|---|---|---|
| 函館国際ホテル | インヴィンシブル投資法人(8963) | 435室 | 2024年7月 | ¥16,830百万円 | ¥38.7百万円 |
| ホテルマイステイズ函館五稜郭 | インヴィンシブル投資法人(8963) | 208室 | 2015年2月 | ¥2,792百万円 | ¥13.4百万円 |
| コンフォートホテル函館 | 星野リゾート・リート投資法人(3287) | 139室 | 2015年5月 | ¥937百万円 | ¥6.7百万円 |
なお、インヴィンシブル投資法人が2026年9月25日に公表した国内ホテル101物件の2026年8月実績は、稼働率87.3%(2026年8月時点・前年同月比−0.5pt)、ADR¥17,887(同−3.2%)、RevPAR¥15,608(同−3.8%)であり、函館国際ホテルの稼働率91.3%(2026年8月時点)・ADR¥26,277はポートフォリオ全体を上回る。函館のフルサービス型が同法人の中でも相対的に高い単価を取れていることは、計画の価格帯を考えるうえで前向きな材料である。本記事のADRは推定値(REIT開示実績との照合で誤差中央値約7%)であり、REIT開示の成約ADRは消費税抜き表示、本記事の推定成約ADRも税抜相当の水準である。
ポジショニング — 200室級で推定成約ADR¥25,000超はセンチュリーマリーナ1軒、中規模の¥25,000〜40,000帯が空白
稼働中39軒のうち直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の推定成約ADRを集計した33施設を、客室数×ADRの平面に置いたのが次のチャートである(このほかヴィラ・コンコルディア リゾート&スパ〈10室・12か月平均¥26,200〉とOMO5函館by星野リゾート〈245室・同¥8,600〉も推定成約ADRが算出でき、チャートには含めていない)。チャート上の¥25,000以上はHOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館(317室・¥31,300)とラビスタ函館ベイANNEX(74室・¥40,300)の2軒だけで(チャート外のヴィラ・コンコルディアを含めても3軒)、¥12,000〜25,000帯には東急ステイ函館朝市 灯の湯(175室)、ラビスタ函館ベイ(335室)、ラ・ジェント・ステイ函館駅前(261室)、函館国際ホテル(435室)、JRイン函館(215室)、プレミアホテル -CABIN PRESIDENT- 函館(199室)など8軒が並ぶ。残る23軒は¥12,000未満で、宿泊特化型を中心に100〜300室規模に密集する。
密集 埋まっている領域
¥6,000〜12,000 × 100〜300室
¥12,000未満の23軒が密集し、宿泊特化型が中心。2019年以降に開業・リブランドした施設の客室も46%がこの帯に入る。
WS① 中〜大規模 × アッパーミドル
¥25,000〜40,000 × 150〜350室
該当はセンチュリーマリーナ1軒。温浴とレストランを備えた約200室の計画が入るのはこの帯で、現状の同業は1軒にとどまる。
WS② 小規模 × ハイエンド
¥40,000以上 × 100室未満
該当はラビスタ函館ベイANNEX1軒(74室)。眺望と温泉を小規模で高単価に結びつけた例で、計画の上層階客室の参照点になる。
読み方を整理する。WS①に1軒しかないのは需要がないからではなく、2019年の供給の波が宿泊特化型に偏ったからである。センチュリーマリーナが317室という規模で12か月平均¥31,300を維持し、函館国際ホテルが投資法人開示ベースで2026年8月に稼働91.3%・ADR¥26,277を記録していることは、この帯に需要の受け皿がまだあることを示す。計画が「眺望レストランと温浴施設」を掲げる以上、競合するのは¥12,000未満の23軒ではなく、この上位2〜3軒である。
| 施設 | 客室数 | 業態 | 開業年 | 代表点から | 推定成約ADR 12か月平均 | 2026年8月 | 2026年9月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ラビスタ函館ベイANNEX | 74室 | ビジネスホテル | 2023 | 249m | ¥40,281 | ¥49,791 | ¥46,179 |
| HOTEL&SPA センチュリーマリーナ函館 | 317室 | シティホテル | 2019 | 192m | ¥31,285 | ¥41,011 | ¥38,592 |
| fav 函館 | 30室 | ビジネスホテル | 2022 | 286m | ¥24,329 | ¥36,002 | ¥24,951 |
| 東急ステイ函館朝市 灯の湯 | 175室 | ビジネスホテル | 2021 | 325m | ¥20,240 | ¥22,768 | ¥23,829 |
| ラビスタ函館ベイ | 335室 | リゾートホテル | 2008 | 428m | ¥17,736 | ¥18,650 | ¥17,688 |
| ラ・ジェント・ステイ函館駅前 | 261室 | ビジネスホテル | 2019 | 624m | ¥17,494 | ¥20,699 | ¥19,298 |
| 函館国際ホテル | 435室 | シティホテル | 1971 | 70m | ¥17,004 | ¥21,561 | ¥20,489 |
| HAKODATE 男爵倶楽部 HOTEL&RESORTS | 52室 | リゾートホテル | 2007 | 231m | ¥14,828 | ¥19,643 | ¥15,999 |
| JRイン函館 | 215室 | ビジネスホテル | 2020 | 526m | ¥14,169 | ¥17,708 | ¥15,726 |
| プレミアホテル -CABIN PRESIDENT- 函館 | 199室 | シティホテル | 2023(リブランド) | 452m | ¥13,615 | ¥16,723 | ¥17,093 |
必要ADRの感度 — 1室あたり開発費¥40百万円・稼働80%なら¥27,400、70%なら¥31,300
事業主・延床・建設費が未公表のため、ここでは外部ベンチマークだけで「100室あたりに必要な客室売上」を逆算する。前提は、(1) 1室あたり開発費(建物+FF&E、土地を除く)を¥35百万円・¥40百万円・¥45百万円の3水準、(2) 目標とする開発利回り(NOI÷開発費)6%、(3) 客室売上に対するNOI率30%(レストランと温浴施設を持つフルサービス型の保守値)、(4) 年間365日営業、である。開発費の水準は、国土交通省 建築着工統計で全国の宿泊業用建築物の工事費予定額が2022年の138.6万円/坪から2024年の195.5万円/坪へ41%上昇している環境と、前節で見た函館国際ホテルの1室あたり取得価格¥38.7百万円を踏まえて置いた。
| 1室あたり開発費 | 100室の開発費 | 必要NOI(年) | 必要客室売上(年) | 稼働80%の必要ADR | 稼働70%の必要ADR |
|---|---|---|---|---|---|
| ¥35百万円 | ¥35億円 | ¥2.1億円 | ¥7.0億円 | ¥24,000 | ¥27,400 |
| ¥40百万円 | ¥40億円 | ¥2.4億円 | ¥8.0億円 | ¥27,400 | ¥31,300 |
| ¥45百万円 | ¥45億円 | ¥2.7億円 | ¥9.0億円 | ¥30,800 | ¥35,200 |
1室あたり¥40百万円の中位ケースでは、100室あたり年¥8.0億円の客室売上が必要で、稼働80%なら必要ADRは¥27,400、70%なら¥31,300になる。これを市場の実測値と重ねると、センチュリーマリーナの12か月平均¥31,300、函館国際ホテルの8月実績¥26,277(投資法人開示)、ラビスタ函館ベイANNEXの¥40,300がちょうどこのレンジに分布しており、WS①の価格帯は机上の空白ではなく、既存の上位施設が実際に取っている水準だとわかる。一方で函館市全体の中央値は12か月平均で¥8,600、ボトムの3月は¥6,400と8月の58%にとどまり、上位帯も同じ季節の波を受ける。年間平均で¥27,000〜31,000を確保するには、たとえば夏の山で¥40,000前後、冬でも¥20,000台を維持するような価格設計が前提となる。この季節差の扱いは北海道ホテルの改装休館を冬に当てる場合の季節設計(帯広171室・湯の川293室)で詳述した。
感度表の3水準を、開発費と稼働率を同じ方向に組み合わせた3シナリオに読み替えると、必要ADRの幅がより明確になる。楽観(¥35百万円・稼働80%)の¥24,000から悲観(¥45百万円・稼働70%)の¥35,200まで、中位(¥40百万円・稼働75%)は¥29,200である。あわせて、1室あたり開発費を¥40百万円に固定し、推定成約ADRと稼働率の2軸で開発利回り(NOI÷開発費)がどう動くかを示したのが下の表である。ADR¥20,000・稼働60%の3.3%からADR¥36,000・稼働80%の7.9%まで振れ、目標の6%以上に届くのは、ADR¥28,000なら稼働80%、¥32,000なら稼働70%以上、¥36,000なら稼働65%以上の組み合わせである。
| シナリオ | 1室あたり開発費 | 稼働率 | 必要ADR |
|---|---|---|---|
| 楽観 | ¥35百万円 | 80% | ¥24,000 |
| 中位 | ¥40百万円 | 75% | ¥29,200 |
| 悲観 | ¥45百万円 | 70% | ¥35,200 |
| 推定成約ADR | 稼働60% | 稼働65% | 稼働70% | 稼働75% | 稼働80% |
|---|---|---|---|---|---|
| ¥20,000 | 3.3% | 3.6% | 3.8% | 4.1% | 4.4% |
| ¥24,000 | 3.9% | 4.3% | 4.6% | 4.9% | 5.3% |
| ¥28,000 | 4.6% | 5.0% | 5.4% | 5.7% | 6.1% |
| ¥32,000 | 5.3% | 5.7% | 6.1% | 6.6% | 7.0% |
| ¥36,000 | 5.9% | 6.4% | 6.9% | 7.4% | 7.9% |
建設費の上昇は、新規参入を抑える方向にも働く。2019年のような1,300室規模の供給の波が同じ建設費で再現される可能性は低く、2027年夏以降にWS①へ後続の供給が入る余地は限られる。供給抑制は既存上位施設と新規計画の双方にとって価格を維持しやすい環境を意味し、感度表の「稼働70%」ケースが実現しても必要ADRが市場上位の実測値に収まる点は、計画の成立性を支えるアップサイド要因である。
投資判断の整理 — 吸収余地は十分、論点は季節差と津波想定への設計対応
ここまでを整理すると、約200室の供給インパクトは稼働中ストックの+4.0%で、2025年度に延べ宿泊504万人(+6.7%)を記録した需要の伸びの範囲に収まる。価格帯では中〜大規模×¥25,000〜40,000のWS①に同業が1軒しかなく、投資法人開示ベースでも近接する函館国際ホテルが2026年8月に稼働91.3%・ADR¥26,277を実現している。立地面では大手町の地価が駅前の半分以下である一方、津波浸水想定5m以上10m未満の区域にかかる点と、冬に単価が夏の6割に下がる季節差が、設計と収益計画の両面で前提になる。
| リスク要因 | 区分 | 内容と計画への含意 |
|---|---|---|
| 季節差 | 市場 | 函館市の推定成約ADRは8月¥11,000に対し3月¥6,400(1.72倍)。年間平均ADRを確保するには冬の単価設計と連泊・食事付きプランでの下支えが要る |
| 供給 | 市場 | 1km圏の稼働中5,060室に+4.0%。2019年の一段増(約1,300室)の6分の1で、建設費上昇により後続供給は限定的 |
| 災害想定 | 立地 | 代表点は津波浸水想定5m以上10m未満・液状化はやや起こりやすい地形。主要機能の上層配置と設備の浸水対策が建設費を押し上げる方向に働く |
| 交通 | 需要 | 北海道新幹線の札幌延伸は2038年度末ごろの見通し。函館の鉄道アクセスは当面現状のまま。羽田便増便とクルーズ船が足元の需要を支える |
| 制度 | 運営 | 函館市では2026年4月から道・市の宿泊税が導入済み(市内宿泊事業者の案内では1人1泊200〜2,500円の4段階・道税との合算)。価格表示と販売単価への織り込みが開業時から必要 |
| 建設費 | 開発 | 全国の宿泊業用建築物の工事費予定額は2024年に195.5万円/坪(2022年比+41%、建築着工統計)。2027年夏竣工に向けた資材・労務の上昇が1室あたり開発費を¥40百万円超に押し上げる可能性 |
運営者側への示唆としては三つある。第一に、WS①を狙う計画である以上、ベンチマークは市全体の中央値ではなく上位3施設の月別単価であり、開業初年度の夏に¥40,000前後の価格を試せる商品(上層階の眺望客室、温浴と夕食を組み合わせたプラン)を最初から用意しておきたい。第二に、45日前に7割が埋まる市場では早期予約の価格を高めに置き、直前の値下げに頼らないブッキングカーブ設計が有効といえる。第三に、津波想定区域という条件は、上層階へ機能を集約する設計方針と組み合わせれば眺望価値と安全性を同時に訴求できる。計画の公表内容が「見晴らしのよさを生かしたレストランや温浴施設」である点は、この立地の制約と機会の両方を読み込んだ構成だと読める。
よくある質問
Q. ザ ロイヤルパークホテル函館の正式な客室数と開業日は決まっていますか。
A. 2026年10月時点で公表されているのは「約200室」「2027年夏開業予定」までです。番地・延床面積・事業主・正式室数・開業日は未公表のため、本記事でも推定はしていません。
Q. 約200室の追加は函館の需給にどの程度の影響がありますか。
A. 大手町の代表点から半径1km圏で稼働中の客室5,060室に対して+4.0%です。2025年度の延べ宿泊客数は前年度比6.7%増の504万3千人で、需要の伸びの範囲に収まる規模といえます。
Q. 本記事のADRはホテルの実際の売上単価ですか。
A. いいえ。主要予約サイトで公開される最安プラン水準に業態別の補正係数を適用した推定成約単価(税抜相当)で、上場ホテルREITの物件別開示実績との照合で誤差中央値は約7%です。函館国際ホテルの稼働率とADRのみ、インヴィンシブル投資法人の開示値をそのまま引用しています。
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参考資料・出典一覧
■ 計画・一次情報
- 三菱地所ホテルズ&リゾーツ、函館に「ザ ロイヤルパークホテル」を2027年夏に開業(トラベルボイス、2025年5月30日)
- 「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」10月1日開業(マイナビニュース、2021年10月2日)
■ データソース
客室ストックは函館市大手町の町丁代表点から半径1km圏の客室10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、直近3か月に販売価格が確認できた施設を稼働中とした(2026年10月26日時点)。ADRは主要予約サイトの公開価格に業態別の補正係数を適用した推定成約ADR(税抜相当)で、函館市の値は対象施設の中央値(N=80〜88施設/月)。稼働率とブッキングカーブはOTA掲載在庫ベースの推定(72〜89施設)。函館国際ホテルの稼働率・ADRと投資法人のポートフォリオ実績は各投資法人の開示値。
■ 試算前提
必要ADRは、1室あたり開発費(建物+FF&E、土地を除く)¥35百万円・¥40百万円・¥45百万円、開発利回り(NOI÷開発費)6%、客室売上に対するNOI率30%、年365日営業を置いた簡易試算。3シナリオは開発費と稼働率を同方向に組み合わせ、2軸感度表は1室あたり開発費¥40百万円・NOI率30%を固定してADRと稼働率だけを動かした。
■ 限界・留意点
番地・延床面積・事業主・正式室数・開業日は未公表のため、立地の判定は町丁代表点によるもので敷地そのものの条件ではない。推定成約ADRは上場ホテルREITの物件別開示実績との照合で誤差中央値約7%の推定値。試算は土地費・金利・開業費、料飲・温浴の付帯収益を含まない。2026年10月以降の価格は観測途中の値。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 半径1km圏の客室ストック(掲載54軒・稼働中39軒、2026年10月26日時点)、函館市・北海道の推定成約ADR(N=69〜88施設/月)、施設別推定成約ADR(N=33施設)、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、72施設/6,795室)、ブッキングカーブ(89施設/6,823室)
■ 政府統計・公的データ
- 函館市「令和7年度 来函観光入込客数推計」(2026年5月29日公表)
- 函館観光客、過去最多605万人 25年度 羽田便増便やクルーズ船寄与(北海道新聞、2026年5月29日)
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示(函館5-1・5-4・5-10)、用途地域、駅別乗降客数、津波浸水想定(北海道2023年)、地形分類に基づく液状化しやすさ
- 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)
- 国土交通省「建築着工統計調査」(宿泊業用建築物の床面積・工事費予定額)
- 新幹線の札幌延伸時期 カギは難工事続く「渡島トンネル」(北海道新聞)、札幌延伸開業は2038年度末ごろに 国の有識者会議が報告書(鉄道チャンネル、2025年3月)
■ REIT・業界レポート
- インヴィンシブル投資法人「2026年8月 月次運営実績」(2026年9月25日)、同 ポートフォリオ一覧
- 星野リゾート・リート投資法人 ポートフォリオ一覧
- 市内宿泊事業者による宿泊税(2026年4月1日導入)の案内(北海道・函館市の宿泊税を合算した税額区分)
