三菱地所と三菱地所ホテルズ&リゾーツが2025年3月31日に発表したとおり、横浜ランドマークタワーの52〜67階に603室を構える横浜ロイヤルパークホテルは同日をもって休業し、全館の大規模リニューアル工事に入った。再開業後はマリオット・インターナショナルとフランチャイズ契約を結び、同社のラグジュアリーブランドカテゴリー「ラグジュアリーコレクション」として2028年度に再開業する予定で、「横浜ロイヤルパークホテル」の商号は継承される。1993年の開業から約32年を経た大型シティホテルが、自社ブランドの全館休業改装と外資ブランドへのフランチャイズ転換を同時に進めるという、国内でも規模の大きいリポジショニング案件である。本稿では、立地(国土交通省 不動産情報ライブラリ)、半径1.5km圏の客室ストックと価格帯、新規供給の見通しを整理したうえで、改装投資を客室部門で回収するには推定成約ADRとRevPAR(販売可能客室1室あたりの客室売上=ADR×稼働率)がどこまで上がればよいかを逆算する。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事の客室ストックは、横浜ランドマークタワーから半径1,500m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月27日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。
- — 603室・2028年度再開業 横浜ロイヤルパークホテルは2025年3月31日に全館休業。マリオットとのフランチャイズで「ラグジュアリーコレクション」として再開業予定で、商号は継承される。
- — 400室超×掲載7万円超は0軒 半径1.5km圏で掲載価格7万円超は3軒・692室(稼働中12,090室の5.7%)にとどまり、大型ラグジュアリーの帯は空いている。
- — 西区の推定成約ADR +12.9% 直近12か月(2025年10月〜2026年9月)平均20,200円。神奈川県シティホテル区分は+17.9%と、上位カテゴリーの単価が伸びている。
- — 最上位帯は約2.3倍の1,567室へ 既存692室にコンラッド横浜272室(2027年予定)と再開業の603室(休業時据え置き)が加わる。
- — 必要RevPAR上昇は約9,100円 1室3,000万円・利回り5%の場合。ウェスティン並みADR4.9万円なら+12,830円、ADR−10%と稼働率−5ptが重なると+6,950円まで縮む。
要点 — 603室の再開業先は圏内に400室超の前例がない価格帯
結論から述べると、この案件の論点は「みなとみらいにラグジュアリー需要があるか」ではなく、「600室級の大箱をラグジュアリー価格帯で埋められるか」にある。半径1.5km圏で直近12か月の掲載価格(全プラン平均)が7万円を超えるのはウェスティンホテル横浜(373室)、インターコンチネンタル横浜Pier 8(173室)、ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜(146室)の3軒・計692室で、稼働中客室12,090室の5.7%にとどまる。一方、圏内で400室を超えるシティホテルの掲載価格は5万円台に集まっており、「400室超×ラグジュアリー価格帯」の組み合わせは現時点で圏内に存在しない。再開業後の横浜ロイヤルパークホテルは、その空白に入る最初の大型案件になる。
需要側の追い風ははっきりしている。横浜市西区の推定成約ADR(エリア中央値)は直近12か月平均で20,200円と前年同期比+12.9%、神奈川県のシティホテル区分は+17.9%と、ともに二桁で伸びた。さらに、ランドマークタワー至近の公示地価は2022年からの4年で+63.8%上昇している。ただし、2027年にはコンラッド横浜(272室)の開業も予定され、最上位帯の客室は再開業までに大きく積み上がる見込みだ。後段の試算では、改装投資を1室3,000万円・目標利回り5%と置くと、客室部門だけで必要なRevPAR上昇幅は約9,100円となり、圏内最上位施設並みのADRを実現できればこの水準を上回る。
公表事実 — 全館休業、商号継承、マリオットとのフランチャイズ
まず、発表資料で確認できる事実を整理しておく。報道資料によれば、当ホテルは横浜ランドマークタワーの52階から67階に位置し、客室603室、延床面積約79,100㎡、横浜市内最大級のバンケット機能と8つの飲食施設を備えた「国際級シティホテル」として1993年に開業した。リニューアルの対象は客室・レストラン・スパ・ジム・クラブラウンジ・共用部等で、営業を続けながらの部分改装ではなく、全館を止めて一度に更新する方式が選ばれている。
| 項目 | 公表内容 |
|---|---|
| 休業日 | 2025年3月31日(同日に大規模リニューアル工事着工) |
| 再開業時期 | 2028年度予定 |
| ブランド | マリオット・インターナショナルとフランチャイズ契約を締結し「ラグジュアリーコレクション」として再開業 |
| 名称 | 「横浜ロイヤルパークホテル」の商号を継承(正式名称は今後決定) |
| 所在地 | 横浜市西区みなとみらい2-2-1 横浜ランドマークタワー |
| 規模(休業時) | 客室603室・延床面積約79,100㎡・52〜67階 |
| 改装範囲 | 客室・レストラン・スパ・ジム・クラブラウンジ・共用部等をフルリニューアル |
| 再開業後の客室数 | 公表なし |
この構成で目を引くのは、運営の実務を担ってきた三菱地所ホテルズ&リゾーツの体制を生かしながら、販売網と顧客基盤だけをマリオットのブランドに乗せ替える「フランチャイズ」を選んだ点である。資料はマリオットの会員組織「Marriott Bonvoy」の会員数を約2億2,800万人超と紹介しており、インバウンドや海外法人の送客チャネルを一気に取り込む狙いが読み取れる。加えて商号を残すことで、横浜で32年かけて積み上げた婚礼・宴会・地元法人の顧客との関係も切らずに済む。ブランドの格上げと地域の顧客資産の両方を取りにいく設計といえるだろう。なお、再開業後の客室数は未公表のため、本稿の試算では休業時の603室を仮に据え置いて計算している。
市場動向 — 西区の推定ADRは12か月平均で前年比+12.9%
では、休業前後の2年間で周辺市場はどう動いたのか。下のチャートは、ホテルの所在する横浜市西区の推定成約ADR(エリア中央値)を年ごとに重ねたものである。2026年は1月の15,900円を底に上昇し、9月は23,300円と前年同月の17,500円を大きく上回った。直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の平均は20,200円で、前年同期の17,900円に対して+12.9%となる。
同じ期間の神奈川県シティホテル区分(中央値、N=40〜42施設)は12か月平均15,500円と前年同期比+17.9%で、県全体でも上位カテゴリーの単価が伸びている。稼働の面でも需要は厚い。神奈川県のシティホテル区分の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年5月88.8%、6月84.5%、7月85.5%、8月86.4%、9月85.5%で推移した(対象28施設/客室5,477室、主要予約サイト掲載ベース)。西区全体では2026年9月が85.9%(対象10施設/客室2,284室、主要予約サイト掲載ベース)である。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる点には留意したい。県内シティホテルの単価が直近でどう動いたかは、神奈川県ホテルの推定成約ADR、2026年9月はシティ+15.8%へ反転で月次の内訳を詳しく分析している。
需要の母数も拡大を続けている。横浜市の発表では、2025年の観光入込客数(実人員)は3,915万人、観光消費額は5,077億円で、いずれも2009年の統計算出以来の過去最高を更新した。単価・稼働・来訪者数の3つがそろって上向くなかで、市場の最上位帯に大型の客室群が戻ってくる構図になる。
立地評価 — 商業地域・容積率800%、駅から徒歩圏の超高層
立地を国土交通省 不動産情報ライブラリで確認すると、ランドマークタワーの敷地は商業地域(容積率800%・建蔽率80%)に指定されている。最寄りの公示地価標準地(横浜西5-6、みなとみらい3丁目、地点から約190m)は2026年1月1日時点で1㎡あたり375万円、前年比+10.0%だった。2022年の229万円から4年で+63.8%上昇しており、上昇率は2024年の+19.2%をピークに2年連続+10.0%と、伸びのペースを保ったまま高値圏で推移している。
| 桜木町(JR根岸線) | 2020年 99,038人 → 2023年 141,322人 |
| みなとみらい(みなとみらい21線) | 2020年 53,491人 → 2023年 82,564人 |
交通面では、桜木町駅(JR根岸線)の1日平均乗降客数が2020年の99,038人から2023年には141,322人まで回復し、みなとみらい駅も82,564人まで戻った。半径1km圏には5,802事業所・従業者161,353人が集積し、そのうちオフィス系業種の比率は37.2%に達する。法人の宿泊・会議・宴会需要を地元で取り込める立地であり、居住人口(国勢調査ベース、滞在人口ではない)も半径1.5km圏で2040年に77,270人と2020年比+7.1%の増加が推計されている。
災害リスクについても確認しておきたい。不動産情報ライブラリの照会では、ランドマークタワーの地点は洪水(想定最大規模)・高潮・津波の各浸水想定区域には含まれなかった。ただし、地点から約100m以内に津波浸水想定(想定浸水深1m以上2m未満ほか)と高潮浸水想定の区域が迫っている。客室は高層階にあるものの、宴会場や設備機械室の多くは低層・地下に置かれるのが一般的であるため、改装計画では電気・給排水設備の配置と止水対策を事業継続の観点から確認しておく価値がある。最終的な判断は横浜市のハザードマップで確認されたい。
競合供給 — 1.5km圏の客室ストックは2017年比7割増、2020年代開業が3割
次に、ホテルを取り巻く客室ストックを見ていく。半径1.5km圏の宿泊施設は掲載ベースで77軒・15,942室、このうち直近3か月に販売価格が確認できた稼働中の施設は48軒・12,090室だった。開業年が確認できる施設の客室ストックは2017年の7,610室から2026年には13,209室へと+73.6%増え、とりわけ2019年(アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉2,311室の開業)と2023年(ヒルトン横浜・三井ガーデンホテル横浜みなとみらいプレミアなど)に大きく積み上がった。稼働中の客室のうち2020年代開業の施設が15軒・3,750室を占め、圏内の31.0%にあたる。
| 業態 | 掲載 軒数 | 掲載 客室数 | 稼働中 軒数 | 稼働中 客室数 |
|---|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | 44 | 8,056 | 33 | 6,192 |
| シティホテル | 11 | 3,558 | 8 | 2,855 |
| リゾートホテル | 4 | 2,675 | 3 | 2,632 |
| デラックスホテル | 1 | 173 | 1 | 173 |
| カプセルホテル | 10 | 1,025 | 0 | 0 |
| その他(旅館・団体宿泊所・温浴施設・ホステル) | 7 | 455 | 3 | 238 |
| 合計 | 77 | 15,942 | 48 | 12,090 |
規模別に見ると、201室以上の施設が稼働中22軒・9,120室と圏内稼働客室の75.4%を占め、みなとみらいはもともと大型ホテルが市場を形づくる街である。シティホテル区分の稼働中客室は2,855室で、休業前の横浜ロイヤルパークホテル603室はこれに対して約2割の規模に相当する。再開業はシティ・ラグジュアリー帯の客室構成を大きく塗り替える出来事になる。
投資市場の目線も補足しておく。圏内にはJ-REITが保有するホテルも複数あり、保有関係マスター(2026年10月19日時点)ではインヴィンシブル投資法人(8963)がアパホテル横浜関内(451室、2015年2月取得、取得価格8,350百万円)、ホテルマイステイズ横浜関内(165室、2018年2月取得、5,326百万円)、フレックステイイン桜木町(70室、2019年7月取得、1,425百万円)を保有している。いずれも宿泊特化型で、フルサービス型の大型ホテルは圏内のJ-REIT保有物件には含まれていない。
ポジショニング — 400室超×掲載7万円超のゾーンは空いている
主要な競合施設を客室数と価格の2軸に並べると、再開業後の狙いどころがはっきりする。下の図は、圏内のシティ・ラグジュアリー帯と上位の宿泊特化型について、直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の掲載価格(全プラン平均・税込)を縦軸、客室数を横軸にとったものである。休業前の横浜ロイヤルパークホテル(2024年4月〜2025年3月の12か月平均)も参考として白抜きで示した。
図の右上、つまり「400室を超え、掲載価格が7万円を超える」領域には現在1軒もない。掲載7万円超の3軒はいずれも146〜373室の中規模で、400室を超えるヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル(594室)と横浜ベイホテル東急(480室)は5万円台に位置する。推定成約ADRで見ても、ウェスティンホテル横浜は直近12か月平均で49,000円と、推定値を算出できる施設のうち圏内の最上位にあり、ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル・横浜ベイホテル東急・ヒルトン横浜の3軒は平均31,900円の水準に並ぶ。休業前12か月の横浜ロイヤルパークホテルは推定成約ADR29,900円で、眺望と宴会機能を武器に大型シティホテルの主力価格帯で高い集客力を発揮していた。
密集 埋まっている領域
掲載2万〜4万円台 × 200〜300室
2020年以降に開業した宿泊特化型・上位ビジネスが集中。新規参入での差別化余地は小さい。
WS① 大型ラグジュアリー
掲載7万円超 × 400室超
該当施設なし。再開業後のラグジュアリーコレクションが入る領域で、宴会・MICEを抱える大箱ならではのポジション。
WS② 大型アッパーアップスケール
掲載5万〜6万円台 × 400〜600室
既存の大型シティ2軒が担う帯。再開業後もクラブフロアや宴会パッケージでこの帯の法人需要を取り込める。
このポジションを取りにいく意味は大きい。中規模のラグジュアリーは客室数が少ないぶん、国際会議や大型団体の宿泊を一括で受けにくい。600室級の客室と市内最大級の宴会場を同じ建物に持つ施設がラグジュアリー価格帯に上がれば、パシフィコ横浜を核とするMICE需要の上位層を、宿泊・会議・会食まで一体で受け止められるようになる。パシフィコ横浜の周辺にどれだけの客室が集まっているかは、国際会議場・展示場の1km圏に客室は何室あるかで他の会場と並べて実測している。
新規供給 — 2027年のコンラッド横浜を合わせ最上位帯は倍増へ
再開業までの間に、最上位帯の供給は着実に増える。ヒルトンの会社概要(2026年8月25日更新)によれば、コンラッド横浜(272室)は2027年開業予定で、所在地は横浜市中区北仲通6丁目、JR桜木町駅から徒歩約5分の複合ビルに入る。国土交通省「建築物動態統計調査」にも、同じ北仲通6丁目で272室のホテルを含む地上40階の共同住宅・ホテル複合計画(工事完了予定2027年5月)が登録されている。コンラッド横浜の立地と周辺の価格階層については、コンラッド横浜272室、西区と中区の境に立つ最上位帯が掘り下げている。
| 区分 | 施設 | 客室数 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 既存(掲載7万円超) | ウェスティンホテル横浜/インターコンチネンタル横浜Pier 8/ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜 | 692 | 稼働中 |
| 開業予定 | コンラッド横浜 | 272 | 2027年開業予定 |
| 再開業予定 | 横浜ロイヤルパークホテル(ラグジュアリーコレクション) | 603(休業時) | 2028年度予定 |
| 合計 | 1,567 |
既存3軒の692室に、コンラッド横浜の272室と再開業する603室(休業時の客室数を据え置いた場合)が加わると、最上位帯は1,567室と現在の約2.3倍に膨らむ。同じ価格帯の客室が短期間で倍増する局面では、開業直後の価格設定を高く置きすぎず、ブランドの会員送客と宴会・婚礼のパッケージで稼働の土台を先に固め、そのうえで単価を引き上げる段階的な運用が有効といえる。なお、建築物動態統計は確認申請ベースの集計であり、今後の申請追加で件数・客室数は増加する見込みのため、現時点での確定パイプラインの下限値として参照されたい。
改装投資の採算 — 1室3,000万円・利回り5%なら必要RevPAR上昇は約9,100円
ここからは、オーナー・アセットマネージャー・融資側が最も知りたい採算の目線を、客室部門に絞って逆算する。改装費の総額は公表されていないため、1室あたりの改装投資額を3,000万円・4,500万円・6,000万円の3通りに置き、その投資を客室部門の増分利益で回収する場合に必要なRevPARの上昇幅を求めた。増分の客室売上のうち利益として残る割合は、フランチャイズ関連費用を差し引いた後で45%と仮定している。
| 1室あたり改装投資額(総額) | 目標利回り5% | 目標利回り7% |
|---|---|---|
| 3,000万円(約181億円) | +9,132円 | +12,785円 |
| 4,500万円(約271億円) | +13,699円 | +19,178円 |
| 6,000万円(約362億円) | +18,265円 | +25,571円 |
この必要幅を、市場で観測できる単価の水準と突き合わせたのが次のシナリオ比較である。基準は休業前12か月の推定成約ADR29,900円に通年の稼働率(仮定)80%を掛けたRevPAR約23,900円とした。圏内のアッパーアップスケール3軒並み(シナリオA)では上昇幅は1,600円にとどまるが、圏内最上位のウェスティンホテル横浜並み(シナリオB)に届けばRevPARは約36,800円、上昇幅は約12,800円となる。
| 項目 | 基準(休業前水準) | A. 大型アッパーアップスケール並み | B. 圏内最上位並み 基本ケース | C. 最上位+20% |
|---|---|---|---|---|
| 推定成約ADR | ¥29,900 | ¥31,900 | ¥49,000 | ¥58,800 |
| 通年稼働率(仮定) | 80% | 80% | 75% | 72% |
| RevPAR | ¥23,920 | ¥25,520 | ¥36,750 | ¥42,336 |
| 客室売上(年) | 約52.6億円 | 約56.2億円 | 約80.9億円 | 約93.2億円 |
| 基準比 RevPAR上昇幅 | — | +1,600円 | +12,830円 | +18,416円 |
| 回収できる改装投資の目安(利回り5%) | — | 1室約530万円 | 1室約4,200万円 | 1室約6,050万円 |
読み方は明快だ。シナリオBが実現すれば、客室部門だけで1室約4,200万円・総額約250億円規模の改装投資を利回り5%で説明できる。シナリオAの水準では客室部門の回収余地は小さく、ブランド転換の効果は「単価を最上位帯まで引き上げられるか」にほぼ集約される。一方で、この試算は宴会・婚礼・料飲・スパの増収を含めていない。市内最大級のバンケットと8つの飲食施設を持つ大型ホテルでは非客室部門の売上規模も大きく、MICEの上位需要を取り込めれば、客室部門の必要上昇幅をその分だけ引き下げられる。改装投資の妥当性は、客室と宴会の両面から組み立てるのが実態に近いだろう。
建設費の目線 — 同規模の新築なら全国平均で約468億円
改装投資の水準を考えるうえでは、新築との比較が目安になる。国土交通省 建築着工統計(宿泊業用・全国・全構造)の工事費予定額を床面積で割った坪単価は、2019年の120.3万円から2023年の137.7万円を経て、2024年には195.5万円まで跳ね上がった。神奈川県の2024年は324.1万円と全国を大きく上回るが、着工件数が少なく個別案件の影響を受けやすい値である。
全国平均の2024年坪単価195.5万円を延床約79,100㎡(約23,900坪)に当てはめると、同規模のホテルを新築する場合の建築費は約468億円、1室あたり約7,760万円になる。超高層の複合ビル内でのラグジュアリー仕様は平均を上回るのが通常であり、実際の新築費はさらに高くなりやすい。本稿で置いた1室3,000万〜6,000万円の改装投資は、この新築換算の4〜8割程度に相当する。既存の躯体・眺望・宴会場という代替の難しい資産を生かしたまま、新築に比べて小さな投資と短い工期で最上位帯へ移れる点が、改装+ブランド転換という選択の大きな利点といえる。
感度分析とリスク — ADR−10%とOCC−5ptが重なると上昇幅は約7,000円
基本ケース(シナリオB)が前提どおりに進まなかった場合の振れ幅も確認しておく。最上位帯の客室が短期間で倍増する以上、開業直後に単価や稼働が想定を下回る展開は織り込んでおきたい。
| ケース | 推定成約ADR | 稼働率 | RevPAR | 基準比上昇幅 | 回収できる投資の目安(利回り5%) |
|---|---|---|---|---|---|
| ベース | ¥49,000 | 75% | ¥36,750 | +12,830円 | 1室約4,200万円 |
| ADR −10% | ¥44,100 | 75% | ¥33,075 | +9,155円 | 1室約3,000万円 |
| 稼働率 −5pt | ¥49,000 | 70% | ¥34,300 | +10,380円 | 1室約3,400万円 |
| 両方 | ¥44,100 | 70% | ¥30,870 | +6,950円 | 1室約2,280万円 |
ADRが10%下振れしても、上昇幅は約9,200円と「1室3,000万円・利回り5%」の必要水準をわずかに上回る。ADRと稼働率が同時に下振れした場合は約7,000円まで縮み、客室部門だけでの回収目安は1室約2,280万円に下がる。言い換えれば、再開業初期の数年は宴会・料飲の増収とブランドの会員送客が、客室単価の立ち上がりを支える役割を担うことになる。
| 区分 | 論点 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 市場 | 最上位帯の客室が約2.3倍へ | コンラッド横浜(2027年予定)との開業時期の間隔、価格帯の住み分け |
| 需要 | 大箱をラグジュアリー価格で埋める集客設計 | 会員送客・MICE・婚礼の比率、法人契約の移行 |
| 建設 | 工事費の上昇局面での長期改装 | 工事費の変動条項、2028年度再開業までの工程 |
| ブランド | フランチャイズ関連費用と商号継承 | ブランド基準への適合、自社ブランドで築いた顧客との関係の維持 |
| 災害 | 近接する津波・高潮浸水想定区域 | 低層・地下の設備配置、止水対策 |
大型ホテルのオーナー・AM・地銀への示唆
この案件から引き出せる示唆は、横浜に限らず築30年前後の大型シティホテルを抱えるオーナーに広く当てはまる。第一に、全館休業は売上をいったん止める代わりに、工期を短縮し、再開業時に新しいブランドとして一斉に市場へ出られる。部分改装を重ねると、新旧の客室が混在して価格を上げにくい期間が長引きやすい。第二に、運営は自社グループに残しつつブランドだけを外資に乗せ替えるフランチャイズは、運営ノウハウと地域の顧客資産を手放さずに国際的な送客網を得る手段になる。第三に、立地の地価上昇が続くエリアでは、建て替えよりも既存躯体を生かした改装の方が投資効率で優位に立ちやすい。
融資・投資の審査では、本稿の逆算表のように「改装投資額×目標利回り」から必要なRevPAR上昇幅を出し、それを圏内最上位施設の実勢と並べて確認する手順が有効といえる。必要幅が圏内最上位並みの単価でようやく届く水準なのか、それとも中位の単価でも届くのかによって、計画が背負う価格リスクの大きさは大きく変わる。あわせて、同じ価格帯に入ってくる新規供給の時期と客室数を押さえておけば、開業後の立ち上がり期間の想定も立てやすくなるだろう。
よくある質問
Q. 横浜ロイヤルパークホテルはいつ再開業しますか?
A. 三菱地所・三菱地所ホテルズ&リゾーツの2025年3月31日の発表では、再開業は2028年度の予定です。具体的な日付は公表されていません。
Q. 再開業後のホテル名は変わりますか?
A. マリオット・インターナショナルの「ラグジュアリーコレクション」として再開業しますが、「横浜ロイヤルパークホテル」の商号は継承されます。正式名称は今後決定すると発表されています。
Q. 再開業後の客室数は603室のままですか?
A. 再開業後の客室数は公表されていません。本稿の試算では、休業時の603室を据え置いた場合として計算しています。
Q. みなとみらい周辺のラグジュアリーホテルの価格水準はどのくらいですか?
A. 半径1.5km圏で直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の推定成約ADRを算出できる施設のうち最も高いウェスティンホテル横浜で約49,000円です。掲載価格(全プラン平均・税込)が7万円を超える施設は3軒・692室あります。
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事のチャートに含む2026年10〜12月のADRは、調査時点でOTA等に公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。改装投資の試算は公表資料と仮定に基づく簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
メトロエンジンリサーチ&コンサルティング集計(OTA公開価格から算出した推定成約ADR・掲載価格、OTA掲載在庫ベースの推定稼働率、横浜ランドマークタワーから半径1,500m圏の客室ストック:2026年10月27日時点)、国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・用途地域・浸水想定・駅別乗降客数)、e-Stat 建築着工統計調査、三菱地所・三菱地所ホテルズ&リゾーツ報道資料(2025年3月31日)、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)。
■ 試算前提
再開業後の客室数は休業時の603室を据え置き、通年営業(365日)とした。増分客室売上の利益率は45%(フランチャイズ関連費用控除後)、1室あたり改装投資額は3,000万・4,500万・6,000万円、目標利回りは5%・7%の仮定。基準RevPARは休業前12か月(2024年4月〜2025年3月)の推定成約ADR29,900円×通年稼働率(仮定)80%。シナリオA・B・Cの通年稼働率(80%・75%・72%)もいずれも仮定。
■ 限界・留意点
推定成約ADRは上場ホテルREITの開示実績との照合で誤差中央値約7%の推定値。稼働率はOTA販売在庫の消化状況に基づく推定で、施設全体の実稼働率とは異なる。試算は客室部門のみで、宴会・婚礼・料飲・スパの増収、税金・金利、休業期間中の逸失収益は含まない。改装費総額と再開業後の客室数は未公表。建築物動態統計は確認申請ベースのため、新規供給は現時点の下限値である。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR・掲載価格(横浜市西区N=15〜20施設、神奈川県シティホテルN=40〜42施設、主要13施設)、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)、半径1.5km圏の客室ストック(掲載77軒・稼働中48軒)
■ 公表資料・企業資料
- 三菱地所・三菱地所ホテルズ&リゾーツ「横浜ロイヤルパークホテル 大規模リニューアル工事着工」(2025年3月31日)
- 横浜ロイヤルパークホテル 休業のお知らせ(2024年3月28日)
- ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)
- ヒルトン「コンラッド横浜」開業発表(PR TIMES)
- インヴィンシブル投資法人 ポートフォリオ一覧
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示(横浜西5-6)、用途地域、駅別乗降客数、洪水・高潮・津波浸水想定区域
- e-Stat 国土交通省「建築着工統計調査」(統計表ID 0003114547)
- 国土交通省「建築物動態統計調査」
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)
- 国土交通省 国土数値情報「250mメッシュ別将来推計人口」
- 横浜市「2025年 観光入込客数・観光消費額」記者発表(2026年6月30日)
出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)
