トップ > 投資・開発 > コンテナホテル141拠点5,615室の投資構造 — 北関東ADR6,300円・稼働75%で利回り試算

コンテナホテル141拠点5,615室の投資構造 — 北関東ADR6,300円・稼働75%で利回り試算

投稿日 : 2026.09.24

栃木県

茨城県

群馬県

投資・開発

コンテナホテル141拠点5,615室の投資構造 — 北関東ADR6,300円・稼働75%で利回り試算

国道・県道沿いの駐車場付き敷地に、13㎡のコンテナモジュールを1台1室で並べる。この「運び出せる客室」は、平時はビジネスホテルとして稼働し、災害時には車両で被災地へ運ばれて仮設の宿泊所や診療スペースになる。デベロップの公表によると、2026年9月現在、「HOTEL R9 The Yard」は全国141拠点・5,615室が開業しており、自治体などとの災害協定は201件にのぼる。本稿では、このアセットタイプを土地の貸し手、竣工済み物件の買い手、工業団地を抱える自治体の目線から整理する。拠点が集まる北関東3県について、立地の地価・用途地域、推定成約ADR、稼働率を集計し、1室あたりの投資額から回収年数と利回りのレンジを試算した。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。本稿では、同じ算式を移設型客室の施設群(北関東3県の対象施設)に当てはめ、施設ごとの月次値の中央値と四分位範囲で示す。個別施設の値は掲載しない。
  • NOI:客室売上から運営費、地代、固定資産税・保険・修繕積立を差し引いた純収益(本稿の試算上の定義)。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ、国土交通省 不動産情報ライブラリ、デベロップ公表資料
Key Takeaways
  • 141拠点・5,615室(2026年9月現在・デベロップ公表)のうち、北関東3県に49拠点・1,897室(33.8%)が集まる。
  • — 北関東44施設の推定成約ADRは中央値¥6,300(2025年9月〜2026年8月の12か月平均)で、県のビジネスホテル水準(¥6,500〜6,700)と同じ価格帯にある。
  • — 稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年5〜8月に中央値75%前後で推移し、4月は80.8%だった(対象47〜48施設)。
  • — 1室あたり総投資800万円ならNOI利回り7.8%・単純回収12.9年。ADR−10%・稼働率−5ptの組み合わせでも6.1%を保つ(本稿の仮定による試算)。
  • — 金属造ホテル用の法定耐用年数は骨格材の肉厚で17年/24年/29年。事業用定期借地の満了時に客室を移設できる点が、出口の選択肢を広げる。

要点:141拠点のうち3分の1が北関東、単価は県のビジネスホテル水準に並ぶ

開業拠点・客室
141 / 5,615
2026年9月現在(デベロップ公表)
災害協定
201件
自治体・国の機関など
北関東3県の集積
33.8%
49拠点・1,897室(客室ベース)
推定成約ADR 中央値
¥6,300
北関東44施設・12か月平均
稼働率(推定)中央値
74.7〜80.8%
2026年4〜8月・47〜48施設

拠点の配置には明確な重心がある。茨城・栃木・群馬の3県で49拠点・1,897室、全客室の33.8%を占め、千葉を加えると2,340室(41.7%)になる。1拠点あたりの客室数は平均39.8室。北関東の対象施設(12か月分の推定値がそろう44施設・1,646室)について推定成約ADRの12か月平均をとると、中央値は¥6,300、四分位範囲は¥5,900〜¥6,600だった。同じ期間の県別ビジネスホテルは栃木¥6,600、茨城¥6,700、群馬¥6,500である。13㎡の独立客室と客室前の駐車場という商品で、エリアの標準的なビジネスホテルと同じ価格帯を取れていることになる。

稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、2026年4月が中央値80.8%、5〜8月は74.7〜75.0%で推移した。この水準を前提に1室あたりの投資額を600万〜1,000万円の3通りで置くと、NOI利回りは6.2〜10.4%、単純回収年数は9.6〜16.1年となる(前提はすべて本稿の仮定。後段で詳述)。

移設型客室の制度整理 — 建築物か、何年で償却するか

投資判断の前に、「コンテナだから建物ではない」という通説を切り分けておきたい。国土交通省は、コンテナを継続的に使用し、随時かつ任意に移動できない形で設置する場合は、その形態と使用の実態から建築基準法第2条第1号の建築物に該当するとの見解を示している(平成16年12月6日付け国住指第2174号「コンテナを利用した建築物の取扱いについて」、平成26年12月26日付け国住安第5号)。建築物に当たれば、建築確認を受けたうえで設置する必要がある。基礎に定着させて客室として使う以上、宿泊施設の計画は建築物として組み立てるのが前提になる。個別の判断は所在地の特定行政庁が行う。

税務の区分は、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認できる。金属造の旅館用・ホテル用の建物は、骨格材の肉厚によって3段階に分かれる。4mm超は29年、3mm超4mm以下は24年、3mm以下は17年である。鉄筋コンクリート造のホテル用(木造内装部分30%以下)は39年、木造は17年だ。どの区分が当てはまるかはモジュールの仕様次第であり、本稿では特定の区分を前提にしない。区分によって、800万円の1室あたり投資に対する年間の減価償却費は約28万円(29年)から約47万円(17年)まで開く。

固定資産税も同様に、家屋として課税されるかどうかは設置形態と基礎への定着性などをもとに自治体が判断する。Web上で見かける「コンテナは車両扱いなので固定資産税がかからない」という説明は、設置の仕方によって結論が変わるため、事業計画では所在自治体への事前確認を前提にしたい。家屋として課税された場合の1室あたりの税額と利回りへの影響は、ホテルの固定資産税は1室あたり年16万〜24万円で試算している。

旅館用・ホテル用建物の法定耐用年数(構造・骨格材肉厚別)
出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
移設型客室の制度論点と投資計画での扱い
論点 根拠・一次情報 投資計画での扱い
建築基準法上の位置づけ 継続使用で随時かつ任意に移動できない設置は建築物(国住指第2174号) 建築確認を前提に工程を組む。判断は特定行政庁
法定耐用年数 金属造・ホテル用は肉厚別に29年/24年/17年 モジュール仕様書で肉厚を確認してから償却年数を置く
固定資産税 家屋認定は設置形態などをもとに自治体が判断 「非課税」を前提にせず、所在自治体へ事前照会
土地の権利 事業用定期借地権は存続期間10年以上50年未満(借地借家法第23条) 借地期間満了時に客室を移設できる点を出口設計に組み込む
出典:国土交通省、国税庁、借地借家法よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

最後の行が、このアセットタイプの特徴を最もよく表している。在来工法の建物は、借地期間が償却年数より短いと期間満了時に取り壊すことになり、残った簿価が回収しにくい。移設型の客室は、期間満了時に別の敷地へ運び出して使い続ける選択肢がある。土地の貸し手にとっては、更地で返ってくる見通しを立てやすい。

拠点の県別分布 — 27府県に展開、関東5県で客室の43.9%

デベロップが公表している「レスキューホテルの所在地と拠点数」(2026年9月現在)によると、開業済みの141拠点は27府県に広がる。客室数が多いのは茨城(18拠点・756室)、栃木(19拠点・690室)、群馬(12拠点・451室)、千葉(11拠点・443室)、福岡(8拠点・355室)、岐阜(8拠点・290室)の順だ。埼玉を含む関東5県の合計は63拠点・2,467室で、全客室の43.9%にあたる。開発中の案件は福岡と熊本に各1拠点あり、合計すると143拠点・5,711室となる。

県別の開業済み客室数(上位12県+その他15府県)
出典:株式会社デベロップ「拠点と災害協定締結数」(2026年9月現在)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

2026年に入ってからも開業は続いている。1月24日に富山県魚津市、2月5日に兵庫県丹波市(56室)、3月17日に千葉県茂原市の2拠点目となる茂原六ツ野(67室)、5月13日に岐阜県本巣市(43室)が開業した。本巣は東海環状自動車道・大野神戸ICから車で約5分の県道沿いで、開業前日に本巣市などと災害協定を結んでいる。工業団地や幹線道路に近い敷地を選び、開業と自治体との協定をセットで進める展開が各地で見られる。

移設型客室の拠点分布(円の大きさ=客室数、北関東中心に表示)
出典:メトロエンジンリサーチ(位置を把握する142施設。開業予定を含む場合がある)

立地の地価と用途地域 — 準工業・住居系の幹線沿い、地価中央値は3.3万円/㎡

北関東3県の50施設について、施設の座標が含まれる用途地域と、最寄りの地価公示・地価調査地点を国土交通省の不動産情報ライブラリで照合した。用途地域は準工業地域が12施設で最も多く、準住居地域・第2種住居地域・第1種住居地域が各8施設、商業地域3施設、近隣商業地域2施設と続く。用途地域の指定を確認できなかった地点は9施設で、その多くは線引きのない都市計画区域(非線引都市計画区域)にある。ホテル・旅館は、用途地域の種別によって建てられる地域と建てられない地域があり、第1種住居地域では床面積の上限も付く。用途地域の指定がない区域でも、建蔽率などの制限が別に定められていることがある。候補地ごとに都市計画図で確認してほしい。市街化区域の外で開業する場合の開発許可・農地転用の手続きについては、2026年新規開業の61%は市街化区域の外で詳しく整理している。

北関東3県の施設敷地の用途地域(N=50施設)
施設敷地の用途地域 施設数 構成比 地主・自治体の目線での読み方
準工業地域 12 24% 工場・物流施設と混在する幹線沿い。出張需要の近さ
準住居地域 8 16% 道路沿道の利便を想定した地域。ロードサイド店舗と並ぶ
第2種住居地域 8 16% 住宅地の外縁部。駐車場付きの低層計画と相性がよい
第1種住居地域 8 16% 床面積の制限内に収まる規模の計画
商業地域・近隣商業地域 5 10% 市街地寄りの立地
用途地域の指定を確認できず 9 18% 非線引都市計画区域などの郊外部
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=50施設)

地価の水準も確認しておく。施設から1km以内に地価公示・地価調査地点がある46施設について、最寄り地点の価格(2026年)の中央値は1㎡あたり3万2,700円、四分位範囲は2万6,500〜4万200円だった。前年比が取れた45地点では、上昇26、横ばい10、下落9で、中央値は+0.5%である。地価が1㎡3万円台の郊外で、客室と駐車場をセットにした低層の計画を置くという組み合わせだ。たとえば1室あたりの敷地を70㎡と置くと、土地の価格は約229万円になる。後段の試算で置いた年12万円の地代は、その約5%に相当する。

立地市の推定成約ADR — 宇都宮7,300円、県のビジネスホテル水準は6,500〜6,700円

次に、拠点がある市の価格水準を見る。栃木県で拠点がある12市について、推定成約ADRの12か月平均(2025年9月〜2026年8月)を、全カテゴリとビジネスホテルに分けて並べた。全カテゴリでは宇都宮市¥7,300(N=49〜51施設)、矢板市¥7,300(N=5〜7)、佐野市¥7,000(N=15〜17)、鹿沼市¥6,600(N=4〜5)、小山市¥6,300(N=17〜19)、真岡市¥5,900(N=11)、足利市¥5,800(N=12〜13)となる。日光市と那須塩原市は温泉・リゾートを含むため全カテゴリの値が高い。ビジネスホテルに絞ると、それぞれ¥10,000、¥6,400の水準になる。栃木県内の市町別の価格階層は、栃木のホテル単価、市町で3.6倍差が掘り下げている。

栃木県の拠点所在市の推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月の12か月平均)
拠点数 ADR 全カテゴリ N ADR ビジネスホテル N
宇都宮市 1 ¥7,300 49〜51 ¥7,136 40〜42
矢板市 1 ¥7,257 5〜7 ¥6,880 4
佐野市 1 ¥6,991 15〜17 ¥7,327 9
栃木市 1 ¥6,854 9〜10 ¥6,531 4〜5
鹿沼市 3 ¥6,592 4〜5 ¥6,586 4
小山市 3 ¥6,296 17〜19 ¥6,458 14〜15
真岡市 3 ¥5,891 11 ¥6,018 8
足利市 2 ¥5,787 12〜13 ¥5,638 10〜11
大田原市 1 ¥5,726 8〜9 ¥5,113 5
さくら市 1 ¥7,780 7〜9 ¥6,150 3
那須塩原市 1 ¥13,845 63〜70 ¥6,386 15〜16
日光市 1 ¥17,948 112〜123 ¥10,036 9〜11
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。推定成約ADR(税抜相当)の2025年9月〜2026年8月の月次値を12か月平均。Nは各月の対象施設数の範囲。N5未満の市は参考値。拠点数はデベロップ公表の栃木19拠点と一致

移設型客室の施設群そのものの価格も確認する。北関東3県で12か月分の推定値がそろう44施設(1,646室)について、各月の中央値を県のビジネスホテルと重ねたのが次の図である。施設群の月次中央値は¥5,400〜¥7,000のレンジで動き、12か月の平均は¥6,300だった。2025年11月・2026年5月・8月の山と、2026年1月・6月の谷という季節の形は、3県のビジネスホテルとほぼ同じ動きになっている。県別にみると、栃木18施設の中央値は¥6,200、茨城14施設は¥6,400、群馬12施設は¥6,200である。

推定成約ADRの月次推移:移設型客室の施設群(中央値)と県別ビジネスホテル
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(施設群N=44施設・1,646室/ビジネスホテル:栃木N=135〜140、茨城N=181〜188、群馬N=99〜104施設)

県のビジネスホテル側も伸びている。12か月平均の前年比は、栃木+1.8%、茨城+3.3%、群馬+3.4%だった。周辺の相場が上がる局面では、同じ価格帯に並ぶ移設型客室にも値付けを引き上げる余地が生まれる。後段の感度分析でADRを上下に振っているのはそのためだ。なお、デベロップはレスキューホテルとして出動する際の料金を「1室1日7,000円〜(税抜・標準仕様)」と公表している。平時の推定成約ADRとほぼ同じ水準である。

稼働率 — 4月80.8%、5〜8月は75%前後で安定

稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、北関東3県の施設群について2026年4月から集計できる(対象47〜48施設/客室1,774〜1,839室、主要予約サイト掲載ベース)。施設ごとの月次値の中央値は、4月が80.8%(四分位範囲76.3〜84.0%)、5月74.8%、6月74.9%、7月75.0%、8月74.7%(同69.4〜77.8%)だった。客室数で加重した値も73.6〜80.4%で、中央値との差は小さい。観光の繁閑より、工場・物流・建設などの平日出張需要が底を支える立地の特徴が数字に出ている。

稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定):施設ごとの月次値の中央値と四分位範囲
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(対象47〜48施設/客室1,774〜1,839室、主要予約サイト掲載ベース。観測カバレッジ80%以上の月のみ集計)

この稼働率は、OTA上で販売される在庫の消化状況にもとづく推定値で、施設全体の実稼働率とは異なる。法人契約や直販の比率が高い施設では、OTAに出す在庫の量によって推定値が振れやすい。試算では、稼働率を75%に置いたうえで±5ptの感度を確認する。

1室あたりの回収試算 — 800万円なら利回り7.8%、回収12.9年

ここからは、1室を投資の単位として試算する。1室あたりの開発費は公表されていない。デベロップは在来工法に比べて開発コストを4割削減できると説明しているが、比較の基準となる金額は示していない。そこで本稿では、1室あたりの総投資額(モジュール・基礎・外構・設備・開業費を含む)を600万円、800万円、1,000万円の3通りの仮定で置いた。国土交通省の建築着工統計をもとにした集計では、2022年から2024年にかけてホテルの坪単価は約4割上昇しており、投資額の置き方は建設時期によっても変わる。

1室あたり試算の前提(すべて本稿の仮定)
前提(すべて本稿の仮定) 置いた値 根拠
ADR ¥6,300 北関東44施設の推定成約ADR中央値(12か月平均)
稼働率 75% 2026年5〜8月の施設群中央値(74.7〜75.0%)
GOP率 50% 宿泊特化型として保守的に置いた水準(運営費控除後・本稿の仮定)
地代(事業用定期借地) 年12万円/室 40室なら月40万円。1室70㎡・地価3.3万円/㎡の約5%
固定資産税・保険・修繕積立 年12万円/室 家屋課税の有無で変わるため固定額で保守的に計上
1室あたり総投資額 600万/800万/1,000万円 公表値なし。3通りで幅を見る
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ADR・稼働率)。GOP率・地代・固定費・投資額はホテルバンク編集部が置いた仮定

この前提で、1室あたりの年間客室売上は172.5万円、GOPは86.2万円、地代と固定費を差し引いたNOIは62.2万円になる。建設費は2段階で見た。まず現在の水準で置いた投資額(Stage 1)、次に建設期間中の資材・労務費の上昇として年+5%を1年分織り込んだ投資額(Stage 2)である。モジュールを工場で製作し現地では据え付け中心となるため、建設期間を1年以内と置いた。在来工法より工期が短いぶん、建設費上昇の影響を受ける期間も短くなる。

1室あたりの収支と回収年数(総投資額3通り・Stage 1/Stage 2)
1室あたり A. 600万円 B. 800万円 C. 1,000万円
年間客室売上 172.5万円 172.5万円 172.5万円
GOP(50%) 86.2万円 86.2万円 86.2万円
NOI(地代・固定費控除後) 62.2万円 62.2万円 62.2万円
NOI利回り(Stage 1) 10.4% 7.8% 6.2%
単純回収年数(Stage 1) 9.6年 12.9年 16.1年
投資額(Stage 2・+5%) 630万円 840万円 1,050万円
NOI利回り(Stage 2) 9.9% 7.4% 5.9%
単純回収年数(Stage 2) 10.1年 13.5年 16.9年
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(簡易試算。借入・税効果・移設費用は含まない)
NOI利回りの感度分析(1室あたり総投資額別、Stage 1)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(前提は本文の表のとおり)
NOI利回りのシナリオ別感度(Stage 1)
シナリオ 年間NOI/室 A. 600万円 B. 800万円 C. 1,000万円
ベース(ADR¥6,300・稼働率75%=2026年5〜8月の施設群中央値) 62.2万円 10.4% 7.8% 6.2%
ADR −10% 53.6万円 8.9% 6.7% 5.4%
稼働率 −5pt 56.5万円 9.4% 7.1% 5.6%
ADR −10%・稼働率 −5pt 48.4万円 8.1% 6.1% 4.8%
稼働率 +5pt(4月水準に近い80%) 68.0万円 11.3% 8.5% 6.8%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

ADRと稼働率を同時に動かした場合の幅も見ておく。800万円の計画(Stage 1)について、ADRを±10%、稼働率を65〜85%の範囲で5段階ずつ振ると、NOI利回りは5.4%から10.4%の間に分布する。稼働率が2026年4月並みの80%に届けば、ADRが1割下がっても7.3%を確保できる。一方、稼働率65%・ADR−10%の組み合わせでは5.4%まで下がるため、取得時には出張需要の厚さを立地ごとに確かめておきたい。

ADR×稼働率の2軸感度:NOI利回り(総投資800万円/室・Stage 1)
ADR \ 稼働率 65% 70% 75% 80% 85%
¥5,670(−10%) 5.4% 6.1% 6.7% 7.3% 8.0%
¥5,985(−5%) 5.9% 6.6% 7.2% 7.9% 8.6%
¥6,300(ベース) 6.3% 7.1% 7.8% 8.5% 9.2%
¥6,615(+5%) 6.8% 7.6% 8.3% 9.1% 9.8%
¥6,930(+10%) 7.3% 8.1% 8.9% 9.6% 10.4%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(GOP率50%、地代・固定費 年24万円/室は本文の前提と同じ。網掛けがベースケース)

ADRを1割下げ、稼働率を5pt下げる厳しめのケースでも、800万円の計画でNOI利回りは6.1%を保つ。逆に、4月の稼働率に近い80%で回れば8.5%まで上がる。回収年数を償却年数と並べると、800万円の計画の回収12.9年は、金属造・ホテル用の24年(肉厚3mm超4mm以下)や29年(4mm超)の内側に収まる。事業用定期借地を20年で組む場合、回収を終えたあとの数年間の収益と、期間満了時に客室を移設して使い続ける価値が、上乗せの収益源になる。移設時の輸送費・基礎工事費は本試算に含めていないため、実際の計画では別途見積もってほしい。

土地の貸し手

年12万円/室の地代の場合
40室で年480万円。事業用定期借地の期間満了時は客室を運び出す計画を立てやすく、土地の次の用途を選びやすい。

竣工済み物件の買い手

NOI利回り6〜10%のレンジ
1室あたり取得単価で利回りが大きく動く。取得前に肉厚区分と家屋課税の扱いを確認すると試算の精度が上がる。

工業団地を抱える自治体

平日出張需要の受け皿+災害協定
稼働率75%前後(2026年5〜8月・推定)の宿泊インフラに、災害時の仮設宿泊所としての機能が加わる。

竣工時売却という出口 — 1室あたり780万〜1,040万円の還元価格レンジ

移設型客室には、開発と保有を分ける取引の実例がある。LIFULL Investment(旧LIFULL Social Funding)は、2020年1月に栃木県矢板市の「HOTEL R9 The Yard 矢板」(49室)、2025年1月31日に福島県矢吹町の「HOTEL R9 The Yard 矢吹」(46室)を、いずれも竣工時に取得した。開発はデベロップが担い、取得後はデベロップにサブリースして同社が運営する。取得価格と利回りはどちらも公表されていない。

開発者の目線では、竣工時に売却すれば開発資金を早く回収して次の拠点に振り向けられる。買い手の目線では、稼働前の立ち上がりリスクをサブリースで抑えながら、地域の宿泊インフラに投資できる。参考として、前述のNOI(1室62.2万円)を還元利回りで割り戻すと、1室あたりの価格は還元利回り6%で1,037万円、7%で889万円、8%で778万円となる。売却価格と総投資額の差が開発者の利益、還元利回りが買い手の利回りに対応する。なお、実際のサブリース取引では、買い手が受け取るのは運営NOIではなく賃料であり、還元利回りの水準も取引ごとに異なる。以下の数値は取引事例ではなく、本稿の仮定にもとづく目安である。

還元利回り別の1室あたり価格(竣工時売却の目安)
還元利回り(仮定) 1室あたり価格 40室換算 総投資800万円/室との差
6.0% 1,037万円 4億1,500万円 +237万円/室
7.0% 889万円 3億5,600万円 +89万円/室
8.0% 778万円 3億1,100万円 −22万円/室
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(NOI 1室62.2万円を還元。取引事例ではない)

総投資800万円の計画なら、還元利回り7%台までの売却で開発利益が残る。還元利回りの水準を左右するのは、立地の出張需要の厚さ、借地期間の残り、そして移設できる資産であることを買い手がどう評価するかだ。借地期間の残りが短くなっても、客室を別の敷地で使い続けられるなら、建物価値の目減りを在来工法よりも緩やかに見積もる余地がある。

災害協定という非財務価値 — 201件、千葉34・茨城19・埼玉17

デベロップが公表している災害協定は201件(2026年9月現在)ある。都道府県別の件数は千葉34、茨城19、埼玉17、群馬15、栃木11、鹿児島10、岐阜9、福岡9と、拠点が集まる関東で厚い。群馬県とは2025年3月19日に協定を結んでおり、同社は都道府県レベルで初めての協定と発表した。国土交通省関東地方整備局とも協定がある。

出動の実績としては、新型コロナウイルス感染症への対応が中心である。2020年4月の長崎のクルーズ船対応を皮切りに、三鷹市のPCR検査センター、千代田区のPCR検査体制の強化、都内の民間病院のPCR検査施設、東京都内と千葉県の臨時医療施設の付帯施設として出動し、2022年1月には栃木県のオミクロン株対応として臨時医療施設に126台を提供した。平時には、各地の総合防災訓練に客室を持ち込んでいる。

投資の目線では、協定そのものは直接の収益を生まない。一方で、協定を通じた自治体とのつながりは、用地の情報や公有地の活用の相談につながる接点になりうる。地域の防災計画のなかに位置づけられた宿泊施設になることは、長く保有する資産としての評価を支える材料にもなる。災害時に客室を運び出している期間は平時の客室売上が止まるため、出動時の料金設定(公表値は1室1日7,000円〜・税抜)とあわせて収支を確認しておきたい。

まとめ

コンテナモジュールを1台1室で並べる移設型客室は、2026年9月現在141拠点・5,615室が開業しており、客室の3分の1が北関東3県に集まる。立地は準工業地域や住居系用途地域の幹線沿いが中心で、最寄りの地価の中央値は1㎡3万2,700円である。北関東の施設群の推定成約ADRは中央値¥6,300で、県のビジネスホテル(¥6,500〜6,700)と同じ価格帯にある。稼働率(推定)は2026年5〜8月に75%前後で推移した。

この単価と稼働率を前提にすると、1室あたり総投資800万円の計画でNOI利回りは7.8%、回収は12.9年となり、ADR−10%・稼働率−5ptのケースでも6.1%を保つ。事業用定期借地との組み合わせでは、期間満了時に客室を移設できることが土地の貸し手にとっての選択肢を広げ、竣工時売却では開発と保有を分けた取引の実例もある。検討にあたっては、骨格材の肉厚による耐用年数区分、家屋課税の扱い、移設時の費用の3点を早めに確定させると、試算の精度を高められる。

試算に関する注意:本稿の投資試算は、調査時点(2026年9月)までに観測した推定成約ADR・稼働率と、本稿が置いた仮定にもとづく簡易試算です。開発費・地代・固定費・還元利回りはいずれも公表値ではありません。借入条件、税効果、移設費用、災害出動期間中の収支は含んでいません。実際の投資判断には、個別の敷地と仕様にもとづく詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADRと稼働率は、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが主要予約サイトの掲載価格・在庫を観測して算出した推定値です。対象は北関東3県(栃木・茨城・群馬)の移設型客室の施設群で、ADRは12か月分の推定値がそろう44施設・1,646室(2025年9月〜2026年8月)、稼働率は観測カバレッジ80%以上の47〜48施設(2026年4〜8月)。拠点数・客室数・災害協定数はデベロップ公表値(2026年9月現在)、用途地域と地価は国土交通省 不動産情報ライブラリ(50施設。地価は1km以内に地点がある46施設)によります。

■ 試算前提

1室あたりADR¥6,300・稼働率75%(2026年5〜8月の施設群中央値)・GOP率50%・地代 年12万円・固定資産税等 年12万円を置き、総投資額を600万/800万/1,000万円の3通り(Stage 2は建設費+5%)としました。NOI利回り=NOI÷総投資額、単純回収年数=総投資額÷NOI、1室あたり価格=NOI÷還元利回り(6〜8%)。2軸感度はADR±10%・稼働率65〜85%で計算しています。いずれも本稿の仮定で、公表値ではありません。

■ 限界・留意点

推定成約ADR・稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値で、法人契約や直販の比率が高い施設では実績と乖離することがあります。借入条件、税効果、減価償却、移設費用、災害出動期間中の収支は試算に含めていません。耐用年数の区分と家屋課税の扱いは、モジュールの仕様と所在自治体の判断によって変わります。個別施設の値は掲載していません。

■ 市場データ

■ 政府・公的資料

■ 事業者公表資料・プレスリリース

■ 業界資料






関連記事