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シティホテルとは|法律・統計・OTAの3つの定義と、1軒176室・推定成約ADR1.3万円の業態構造

投稿日 : 2026.10.06

指定なし

シティホテルとは|法律・統計・OTAの3つの定義と、1軒176室・推定成約ADR1.3万円の業態構造

シティホテルとは、都市部に立地し、宿泊に加えてレストラン・宴会場・バーなどを館内に備えるフルサービス型のホテルを指す業界慣行上の呼称である。ただし旅館業法に「シティホテル」という区分は存在せず、法律上は旅館もホテルも「旅館・ホテル営業」という一つの営業種別に含まれる。公的統計では観光庁「宿泊旅行統計調査」が施設タイプの一つとして定義しており、OTA等の予約サイトは各社独自の掲載カテゴリで区分する。つまり「シティホテル」の定義は法律・統計・OTAの3層で異なる。本稿はこの3層を切り分けたうえで、主要OTA掲載施設を母集団に、シティ/ビジネス/リゾート/旅館の掲載軒数・客室規模・推定成約ADR・稼働率・口コミの構造を全国と主要6都道府県で比較する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。本稿では「推定成約ADR」と表記する。
  • 掲載価格:OTA上の全プラン平均(2名1室利用時の1室あたり料金・税込)。推定成約ADRとは別の指標であり、本稿では「掲載価格(全プラン平均・税込)」と明記した箇所のみで用いる。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率とは定義・母集団が異なるため、両者の水準を直接比較しない。
  • 母集団:メトロエンジンリサーチが追跡する、主要OTAに掲載され稼働が確認できる国内約27,000施設。本稿の「掲載軒数」は2026年8月宿泊分の価格掲載が確認できた施設数、「分析対象施設」は当社施設データの業態区分で2026年8月の推定成約ADRを算出できた国内施設(客室数・口コミと照合可能な施設)を指す。掲載軒数とは業態の分類基準が異なるため、旅館では分析対象施設数が掲載軒数を上回る。OTA未掲載の旅館・民宿・簡易宿所は含まない。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(OTA価格・在庫データ)、ホテルバンク編集部調べ(口コミ)、観光庁「宿泊旅行統計調査」、e-Gov法令検索「旅館業法」
Key Takeaways
  • — 定義は3層:旅館業法に「シティホテル」の区分はなく、観光庁統計は施設の自計申告(2026年1月調査分から客室数で層化)、OTAは各社の掲載カテゴリで決まる。
  • — 1軒175.9室:シティホテルの掲載軒数は1,402軒と4業態で最少だが、1軒あたり客室数はビジネスホテル(109.1室)の約1.6倍で、客室の62.1%が200室以上の施設に集まる(2026年8月)。
  • — 推定成約ADR ¥12,959:ビジネスホテル¥8,586の1.51倍。掲載価格(全プラン平均・税込)で見た1.7倍より差は縮む(全国・施設中央値)。
  • — 稼働率86.2%:2026年8月の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は4業態が85.3〜86.2%に並び、業態間の差は1pt未満にとどまる。
  • — 都道府県差が業態差を上回る:シティホテルの推定成約ADRは41都道府県で栃木県¥7,057〜東京都¥21,265と約3.0倍の幅があり、業態間の倍率1.51倍より大きい。

「シティホテル」の定義は3層に分かれる — 法律・統計・OTA

まず押さえるべきは、「シティホテル」という言葉がどの制度に根拠を持つかである。結論から言えば、法律には根拠がなく、統計には定義があり、OTAには各社の分類がある。三つは互いに整合するよう設計されていないため、同じ施設が統計上は「ビジネスホテル」、OTA上は「シティホテル」として扱われることは珍しくない。

表1 「シティホテル」の定義の3層(法律・統計・OTA)
層根拠「シティホテル」の扱い区分の決まり方
法律旅館業法 第2条区分なし。「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3種別のみ都道府県知事等の営業許可(構造設備基準)
統計観光庁「宿泊旅行統計調査」ホテルのうち「リゾートホテル、ビジネスホテル以外の都市部に立地するもの」自計申告(施設が自ら回答)。2026年1月調査分から層化基準が従業者数→客室数に変更
OTA各予約サイトの掲載カテゴリサイトごとに「シティホテル」等の区分を付与。当社は主要OTAの区分を施設単位で統合施設側の申告と各サイトの分類基準の組み合わせ

出典:e-Gov法令検索「旅館業法」、観光庁「宿泊旅行統計調査の概要」、メトロエンジンリサーチよりホテルバンク編集部作成

第1層:旅館業法には「シティホテル」も「ホテル」の区分もない。旅館業法第2条は「旅館業」を「旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業」と定義し、「旅館・ホテル営業」を「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のもの」と規定する。2018年6月15日施行の改正で、それまで分かれていた「ホテル営業」(洋式・10室以上)と「旅館営業」(和式・5室以上)が統合され、最低客室数の要件も撤廃された。条文にはシティホテル・ビジネスホテル・リゾートホテルのいずれの語も登場しない。したがって「シティホテル」は営業許可の種別ではなく、許可上は旅館も高級ホテルも同じ「旅館・ホテル営業」である。3区分の許可要件と改正経緯は旅館業法の3区分と2018・2023年改正の解説で整理している。

第2層:観光庁の統計は「ホテル」を3つに分け、施設が自ら選ぶ。観光庁「宿泊旅行統計調査」は施設タイプを旅館・リゾートホテル・ビジネスホテル・シティホテル・簡易宿所・会社団体の宿泊所の6区分とし、ホテルについて「リゾートホテル=行楽地や保養地に建てられた、主に観光客を対象とするもの」「ビジネスホテル=主に出張ビジネスマンを対象とするもの」「シティホテル=リゾートホテル、ビジネスホテル以外の都市部に立地するもの」と定義する。調査方法は「自計申告」であり、どのタイプで回答するかは施設側の判断に委ねられる。シティホテルは定義上「残余」のカテゴリであるため、都市部の宿泊特化型がシティホテルとして回答することも、フルサービス型がビジネスホテルとして回答することも制度上は排除されない。

加えて、同調査は2026年1月調査分から調査対象施設の層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更した。従来は従業者数10人以上が悉皆調査、5〜9人が3分の1抽出、0〜4人が9分の1抽出であったが、新基準では客室数20室以上の事業所が悉皆調査、1〜19室が標本調査(都道府県ごとに抽出率を設定)となる。層は客室数1〜9室・10〜19室・20〜39室・40〜99室・100〜199室・200室以上の6区分で、統計表上の表章は1〜19室を束ねた5区分である。観光庁は変更理由として、様々な社会変化に伴い従業者数と延べ宿泊者数の相関が以前より希薄になったことを挙げ、前年同月比には「見直しの影響が含まれている可能性がある点に留意」と注記している。この変更の意味は観光庁の宿泊統計の層化基準変更(従業者数→客室数)をデータで読み解くで詳述した。

第3層:OTAの掲載カテゴリは施設の申告と各サイトの分類基準で決まる。予約サイトは施設を「シティホテル」「ビジネスホテル」「リゾートホテル」「旅館」などのカテゴリに割り当てるが、基準はサイトごとに異なり、法律にも統計にも紐づかない。本稿で以下に示す数値は、メトロエンジンリサーチが主要OTAの掲載カテゴリを施設単位で統合した区分に基づく。読者が自社の位置づけを確認する際は、統計上の申告区分とOTA上の掲載区分が一致しているかを一度確かめておくと、後述の単価・稼働率のベンチマークを正しく当てはめられる。宿泊者向けの選び方の観点はシティホテルとは?ビジネスホテルとの違いと料金相場に譲り、本稿は業態の構造に徹する。

規模の構造 — シティホテルは1軒176室、客室の62%が200室以上の施設に集中

次に、OTA区分ベースで4業態の規模を比べる。2026年8月宿泊分の価格掲載が確認できた施設数(掲載軒数)は、ビジネスホテル7,969軒、旅館6,599軒、リゾートホテル1,858軒、シティホテル1,402軒である。軒数ではシティホテルは4業態で最も少ないが、客室数で見ると様相が変わる。分析対象施設(2026年8月の推定成約ADRを算出でき、客室数と照合できた施設)で集計すると、シティホテルは1,151施設・202,445室で1軒あたり平均175.9室(中央値132室)。ビジネスホテルの109.1室(中央値89室)、リゾートホテルの76.6室(中央値39室)、旅館の23.6室(中央値14室)と比べ、1軒あたりの規模が最も大きい業態である。

表2 業態別の掲載軒数・客室規模・推定成約ADR・掲載価格(全国・2026年8月)
業態掲載軒数
(2026年8月)
分析対象
施設数
総客室数1軒あたり
平均客室数
客室数
中央値
推定成約ADR
中央値
掲載価格
(全プラン平均・税込)
シティホテル1,4021,151202,445175.9132¥12,959¥26,975
ビジネスホテル7,9697,761845,778109.189¥8,586¥15,875
リゾートホテル1,8581,724131,85176.639¥19,969¥51,196
旅館6,5997,175168,72923.614¥15,988¥35,109

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(全国・2026年8月宿泊分。掲載軒数と掲載価格は価格掲載ベース、分析対象施設数以降は推定成約ADRを算出できた施設ベースで、1軒あたり平均客室数・客室数中央値はそのうち客室数を確認できた施設で算出(ビジネスホテルは7,750施設)。推定成約ADRは施設中央値・税抜相当、掲載価格は2名1室・税込)

この規模差を、観光庁が2026年1月調査分から採用した客室数の表章区分(1〜19室・20〜39室・40〜99室・100〜199室・200室以上)に当てはめると、統計の設計変更が業態ごとに何を意味するかが見えてくる。シティホテルは施設数の31.1%、客室数の62.1%が200室以上の施設に属し、100室以上まで広げると施設数の63.2%・客室数の88.2%を占める。ビジネスホテルは100〜199室が施設数の31.0%と最大の層で、200室以上と合わせて客室数の76.7%をカバーする。一方で旅館は1〜19室が64.0%、20〜39室が20.8%と小規模層に厚く、200室以上は0.3%にとどまる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(分析対象施設 N=シティ1,151・ビジネス7,761・リゾート1,724・旅館7,175、2026年8月)

新しい層化基準では20室以上が悉皆調査となるため、当社の分析対象施設で見るとシティホテルの97.2%、ビジネスホテルの90.3%、リゾートホテルの70.8%が悉皆層に入る。旅館は36.0%にとどまり、残る64.0%(1〜19室)が標本調査の対象となる。つまり2026年以降の統計において、シティホテルとビジネスホテルはほぼ全数が毎月の調査票の対象となる業態であり、標本設計の変更が集計値に及ぼす影響は小規模旅館・簡易宿所の側に集中する。都道府県別のシティホテル稼働率を読む際にも、この「ほぼ悉皆」という前提は押さえておきたい。

単価の構造 — 推定成約ADRはシティ¥13,000、ビジネスの1.51倍

単価は「掲載価格」ではなく「推定成約ADR」で比べる。掲載価格の全プラン平均はシティホテルで¥27,000、ビジネスホテルで¥15,900と1.7倍の差があるが、売れ残った高価格帯プランや食事付きプランが平均を押し上げるため、成約水準はこれより低い。REIT開示実績と照合した推定成約ADR(施設中央値・税抜相当)では、全国のシティホテルは¥13,000、ビジネスホテルは¥8,600で、倍率は1.51倍に縮む。リゾートホテル¥20,000、旅館¥16,000は食事付きが標準の業態であるため、素泊まり・朝食付き中心のシティホテルとは商品構成そのものが異なる点に留意したい。掲載価格と成約ADRの差の読み方はホテルのADRとは — 掲載価格との差と2026年の業態別水準で整理している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(全国・2026年8月確定月。推定成約ADRは施設中央値・税抜相当、N=シティ1,151・ビジネス7,761・リゾート1,724・旅館7,175)

主要6都道府県に分解すると、業態の差より立地の差が大きく効くことが確認できる。東京都のシティホテルは推定成約ADR¥21,300(N=109)で全国中央値の1.6倍、1軒あたり平均客室数は305.4室(N=118)と全国平均の1.7倍に達する。大阪府はシティホテル¥13,100(N=97)と6都道府県で最も低い水準にあるが、平均255.5室(N=98)と東京に次ぐ大型施設が多い。京都府はシティホテル¥19,700(N=59)に対し旅館が¥19,700(N=202)と並ぶ。旅館とシティホテルの推定成約ADRが±5%以内で並ぶ都道府県は、両業態とも算出対象10施設以上の41都道府県のうち青森県・長野県・滋賀県・京都府の4府県あるが、両業態とも¥19,000を超える水準で並ぶのは京都府だけである。沖縄県はリゾートホテル¥22,300(N=282)が主役で、シティホテルはN=15と母数が小さい。

表3 主要6都道府県の業態別 推定成約ADRと1軒あたり平均客室数(2026年8月)
都道府県シティ
推定成約ADR (N)
シティ
平均客室数 (N)
ビジネス
推定成約ADR (N)
ビジネス
平均客室数 (N)
リゾート
推定成約ADR (N)
旅館
推定成約ADR (N)
東京都¥21,265 (109)305.4 (118)¥11,554 (915)134.4 (989)¥18,885 (21)¥11,878 (56)
大阪府¥13,078 (97)255.5 (98)¥8,772 (503)146.4 (556)¥19,697 (7)¥11,326 (36)
京都府¥19,662 (59)175.3 (64)¥9,993 (325)96.5 (364)¥18,260 (14)¥19,682 (202)
福岡県¥18,479 (41)183.8 (42)¥10,837 (341)127.4 (356)¥22,355 (14)¥12,152 (74)
北海道¥17,801 (75)212.0 (76)¥11,328 (438)105.9 (448)¥19,240 (147)¥10,862 (293)
沖縄県¥20,654 (15)212.5 (15)¥9,734 (196)85.5 (207)¥22,291 (282)¥10,984 (17)
全国(施設中央値)¥12,959 (1,151)175.9 (1,151)¥8,586 (7,761)109.1 (7,750)¥19,969 (1,724)¥15,988 (7,175)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年8月確定月。都道府県の推定成約ADRはエリア中央値・税抜相当で括弧内Nは算出対象施設数、平均客室数の括弧内Nは客室数と照合できた分析対象施設数。全国行は施設中央値)

単価と消化率 — 業態間の稼働率差は1pt未満、差は都道府県で生まれる

単価が高い業態は在庫の消化が遅いのか。直近確定月である2026年8月の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を業態別に室数加重で集計すると、シティホテル86.2%(対象416施設/客室77,497室、稼働率を算出できた20都道府県)、リゾートホテル86.1%(902施設/71,083室、27道府県)、ビジネスホテル85.7%(3,650施設/443,196室、47都道府県)、旅館85.3%(3,798施設/105,504室、46都道府県)で、全業態85.6%(12,447施設/770,573室、いずれも主要予約サイト掲載ベース)と業態間の差は1pt未満に収まる。8月は全業態にとって繁忙月であり、単価の高低が消化速度の差として現れにくい月でもある。

業態ではなく都道府県で見ると、差は明瞭になる。北海道はシティホテル91.4%(35施設/8,550室)・ビジネスホテル90.9%(215施設/25,537室)と6都道府県で最も高く、福岡県もビジネスホテル90.6%(173施設/22,306室)・シティホテル88.9%(22施設/3,158室)と続く。東京都はビジネスホテル88.8%(529施設/77,776室)に対しシティホテル87.2%(53施設/17,248室)で、推定成約ADRが1.8倍高いシティホテルがビジネスホテルとほぼ同じ消化率を実現している。大阪府はシティホテル83.6%(35施設/8,016室)がビジネスホテル80.1%(282施設/47,378室)を上回り、京都府もシティホテル82.7%(34施設/4,948室)がビジネスホテル81.6%(185施設/18,949室)と旅館82.5%(101施設/1,941室)をわずかに上回る。「単価は高いが消化は速い」位置にあるのが北海道・福岡のシティホテル、「単価は高く消化も同水準」が東京・大阪・京都のシティホテルという整理になる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年8月。横軸は推定成約ADR(エリア中央値・税抜相当)、縦軸は稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)、円の大きさは対象客室数。沖縄県のシティホテル・旅館、大阪府・京都府のリゾートホテルは在庫観測対象が少なく稼働率を算出できないため除外)

公的統計の側も同じ構図を示す。観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年年間確定値では、客室稼働率は全体61.6%に対しビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、リゾートホテル56.9%、旅館38.2%、簡易宿所29.6%で、都市型の2業態が並んで高い。都道府県別では東京都がシティホテル77.2%・ビジネスホテル81.5%、大阪府が79.4%・82.9%、京都府が77.5%・77.4%、福岡県が72.4%・77.8%、北海道が74.5%・76.1%、沖縄県が68.2%・77.2%である。当社のOTA掲載在庫ベースの推定稼働率は2026年8月単月・OTA販売在庫の消化状況という別の定義で測っているため水準は直接比較しないが、「シティとビジネスが並び、都道府県間の差が業態間の差より大きい」という構造は両者に共通する。速報値と確定値の改定幅は観光庁2025年確定値61.6% — 速報からの修正幅を業態別に対比で扱っている。

口コミの構造 — 平均スコアは旅館4.23・シティ4.00、1施設あたり件数はシティが最多

最後に、宿泊者口コミの業態別プロファイルを添える。ホテルバンク編集部が集計した分析対象施設の累計口コミ(総合評価5点満点)を施設単位で平均すると、旅館4.23(N=6,570施設)、リゾートホテル4.11(N=1,536施設)、シティホテル4.00(N=1,109施設)、ビジネスホテル3.83(N=7,340施設)の順である。一方、1施設あたりの累計口コミ件数の中央値はシティホテルが4,078件と最も多く、ビジネスホテル1,767件、リゾートホテル1,034件、旅館593件と続く。施設規模が大きいシティホテルほど口コミの母数が厚く、評価が安定しやすい構造にある。

出典:ホテルバンク編集部調べ(分析対象施設の累計口コミ・総合評価5点満点の施設平均。N=旅館6,570・リゾート1,536・シティ1,109・ビジネス7,340施設)

都道府県別に見ると、シティホテルの施設平均スコアは沖縄県4.27(N=13)、京都府4.26(N=60)、東京都4.23(N=112)、大阪府4.07(N=92)、福岡県4.04(N=40)、北海道3.93(N=75)で、1施設あたり累計口コミ件数の中央値は東京都9,285件、北海道6,538件、大阪府6,161件と大都市ほど厚い。旅館は京都府で4.43(N=207)と6府県中の最高値を示し、単価でも京都の旅館がシティホテルと並んでいた事実と整合する。業態別の評価軸を細かく見る場合は、客室・朝食・立地などカテゴリ別スコアを扱った口コミ客室評価の分位と推定成約ADRの関係が参考になる。

都道府県と集計条件で見た業態構造 — 単価の幅は業態差より都道府県差が大きい

ここまでの全国値と主要6都道府県の比較を、47都道府県に広げて確かめる。都道府県ごとの推定成約ADR(エリア中央値)を業態別に並べると、シティホテルは算出対象10施設以上の41都道府県で中央値¥10,730、最小の栃木県¥7,057から最大の東京都¥21,265まで約3.0倍の幅がある。全国の施設中央値で見たシティ÷ビジネスの倍率1.51倍より、同じ業態の都道府県間の差の方が大きい。都道府県ごとにシティ÷ビジネスの倍率を取ると、41都道府県のすべてでシティがビジネスを上回るが、その幅は栃木県1.02倍から沖縄県2.12倍まで開き、中央値は1.36倍である。旅館の推定成約ADRがシティを上回る都道府県は41のうち29にのぼり、食事付きが標準の旅館が素泊まり・朝食付き中心のシティを単価で上回る県が多数派である。

表4 都道府県単位で見た業態別の推定成約ADRと稼働率の分布(2026年8月)
業態推定成約ADR
対象都道府県数
第1四分位中央値第3四分位最小〜最大稼働率
対象都道府県数
稼働率 第1〜第3四分位
(中央値)
シティホテル41¥8,747¥10,730¥13,706栃木県¥7,057〜東京都¥21,265982.6〜88.1%(86.4%)
ビジネスホテル47¥7,081¥7,900¥8,847愛媛県¥6,196〜東京都¥11,5544682.7〜89.2%(85.8%)
リゾートホテル35¥15,967¥18,885¥22,524茨城県¥8,998〜広島県¥28,9641580.1〜89.8%(87.2%)
旅館47¥11,873¥14,521¥17,414宮崎県¥7,196〜神奈川県¥22,6464582.7〜87.6%(85.0%)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年8月。推定成約ADRは都道府県ごとのエリア中央値・税抜相当を業態別に並べた分布で、算出対象10施設以上の都道府県に限る。稼働率はOTA掲載在庫ベース・推定で、対象20施設以上の都道府県に限る。四分位は都道府県単位の値の分位であり、表2の全国の施設中央値とは集計単位が異なる)

稼働率(2026年8月・OTA掲載在庫ベース・推定)でも同じ構図になる。都道府県単位の第1〜第3四分位の幅はシティホテル5.5pt、ビジネスホテル6.5pt、リゾートホテル9.7pt、旅館4.9ptで、全国で見た業態間の差(1pt未満)を大きく上回る。業態名を手がかりにベンチマークを選ぶ場合も、比較の単位は都道府県(またはそれより細かいエリア)にそろえる方が実態に近い。

本稿の「分析対象施設」は、推定成約ADRを算出でき、客室数と口コミの両方を照合できた施設に限っている。この条件を外し、価格観測の日数で母集団を広げても、シティホテルの1軒あたり平均客室数は175.9〜187.7室、ビジネスホテルとの推定成約ADRの倍率は1.51〜1.55倍の範囲に収まる(表5)。「1軒あたりの規模が最も大きく、単価はビジネスの1.5倍前後」というシティホテルの位置づけは、母集団の取り方に左右されない。

表5 集計条件を変えた場合のシティホテルの規模・単価(全国・2026年8月)
集計条件シティ
施設数
シティ 1軒あたり
平均客室数
シティ
推定成約ADR中央値
ビジネス
推定成約ADR中央値
シティ÷
ビジネス
本稿(推定成約ADRを算出でき、客室数・口コミと照合できた施設)1,151175.9¥12,959¥8,5861.51倍
過去の販売実績に基づく推定値がある施設(口コミ照合なし)1,125176.9¥12,832¥8,4721.51倍
2026年8月に20日以上の価格観測がある施設1,386187.7¥13,593¥8,7721.55倍
1日以上の価格観測がある施設(最も広い条件)1,449186.7¥13,608¥8,7531.55倍

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(全国・2026年8月。推定成約ADRは施設中央値・税抜相当。平均客室数は客室数を確認できた施設で算出。本稿以外の3条件は口コミとの照合を条件としない)

まとめ — 「シティホテル」を使うときに揃えておく3つの前提

第一に、法律上の区分ではないため、営業許可・条例・税制の文脈で「シティホテル」を根拠に議論することはできない。旅館業法上は旅館もホテルも「旅館・ホテル営業」である。第二に、統計上の区分は施設の自計申告であり、2026年1月調査分から客室数ベースの層化に移行した。20室以上が悉皆調査となる新設計のもとでは、シティホテル(分析対象の97.2%が20室以上)とビジネスホテルはほぼ全数が調査対象となり、前年同月比の読み替えには観光庁自身が注記する「見直しの影響」を織り込む必要がある。第三に、OTA区分で見たシティホテルは1軒あたり175.9室・推定成約ADR¥13,000・稼働率86.2%(2026年8月・OTA掲載在庫ベース推定)という、大型・中単価・高消化の業態であり、その姿は東京(¥21,300・305.4室)と大阪(¥13,100・255.5室)のように都道府県で大きく異なる。自社の業態区分を統計とOTAの両方で確認したうえで、都道府県単位のベンチマークと突き合わせることが、業態名を実務に活かす出発点となる。

よくある質問

Q. シティホテルに法律上の定義はありますか?

ありません。旅館業法第2条が定める営業種別は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3つで、2018年6月の改正以降はホテルと旅館の区別も法律上は存在しません。「シティホテル」は観光庁の統計と予約サイトの分類で用いられる慣行上の呼称です。

Q. 観光庁の統計ではシティホテルはどう定義されていますか?

「宿泊旅行統計調査」は、ホテルのうち「リゾートホテル、ビジネスホテル以外の都市部に立地するもの」をシティホテルと定義しています。どのタイプで回答するかは施設の自計申告です。なお同調査は2026年1月調査分から層化基準を従業者数から客室数に変更し、客室数20室以上の施設を悉皆調査としています。

Q. シティホテルとビジネスホテルの単価差はどのくらいですか?

2026年8月の全国の推定成約ADR(施設中央値・税抜相当)はシティホテル約¥13,000、ビジネスホテル約¥8,600で1.51倍です。掲載価格(全プラン平均・税込)ではシティ約¥27,000、ビジネス約¥15,900と1.7倍に開きますが、成約水準ではその差は縮みます。

Q. シティホテルは稼働率が低いのですか?

そうとは言えません。2026年8月の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、シティホテル86.2%、ビジネスホテル85.7%、リゾートホテル86.1%、旅館85.3%と業態間の差は1pt未満です。観光庁の2025年確定値でもシティホテル74.1%とビジネスホテル75.3%は並んでおり、差は業態よりも都道府県の間で生まれています。

Q. シティホテルの単価は都道府県でどのくらい違いますか?

2026年8月の推定成約ADR(エリア中央値・税抜相当)で見ると、算出対象10施設以上の41都道府県で、最小の栃木県¥7,057から最大の東京都¥21,265まで約3.0倍の幅があります。全国の施設中央値で見たシティとビジネスの倍率1.51倍より大きく、単価は業態よりも立地で大きく変わります。

集計方法と出典

本稿の数値は、メトロエンジンリサーチが追跡する、主要OTAに掲載され稼働が確認できる国内約27,000施設を母集団とし、主要OTAの掲載カテゴリを施設単位で統合した業態区分(シティホテル・ビジネスホテル・リゾートホテル・旅館)で集計した。「掲載軒数」と「掲載価格(全プラン平均・税込)」は2026年8月宿泊分の価格掲載が確認できた施設の集計値。「分析対象施設」は同月の推定成約ADR(最安プラン水準×業態別補正係数、2つのOTAのアンサンブル、REIT開示実績との照合で誤差中央値約7%、税抜相当)を算出でき、当社施設データの客室数および累計口コミと照合できた施設で、全国の推定成約ADRは施設中央値、都道府県の推定成約ADRはエリア中央値を用いた。客室数区分(1〜19室・20〜39室・40〜99室・100〜199室・200室以上)は観光庁「宿泊旅行統計調査」の2026年1月調査分からの表章区分に合わせた。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年8月の日次推定値の月平均を都道府県×業態で算出し、全国値は稼働率を算出できた都道府県の客室数加重平均である。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。口コミは主要予約サイトに投稿された宿泊者口コミの累計件数と総合評価(5点満点)を施設単位で集計したもので、投稿元サイトは特定しない(ホテルバンク編集部調べ)。観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率は2025年年間確定値(第8表)を引用した。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチが追跡する主要OTA掲載施設の価格・在庫データ(2026年8月宿泊分、シティ・ビジネス・リゾート・旅館の4業態、47都道府県)、ホテルバンク編集部調べの宿泊者口コミ(累計件数・総合評価)、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)第8表、同「調査の概要」と層化基準見直しのQ&A、e-Gov法令検索「旅館業法」。

■ 試算前提

推定成約ADRは最安プラン水準に業態別補正係数を適用した税抜相当の推定値(REIT開示実績との照合で誤差中央値約7%)で、全国は施設中央値、都道府県はエリア中央値。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年8月の日次推定値の月平均を都道府県×業態で算出し、全国値は算出できた都道府県(シティ20・リゾート27・旅館46・ビジネス47)の客室数加重平均。客室数区分は観光庁の2026年1月調査分からの表章区分に合わせた。表4は推定成約ADRが算出対象10施設以上、稼働率が対象20施設以上の都道府県に限る。

■ 限界・留意点

母集団は主要OTA掲載施設で、OTA未掲載の施設は含まない。業態はOTAの掲載カテゴリを施設単位で統合した区分で、観光庁統計の自計申告区分とは一致しない場合がある。推定成約ADR・稼働率は推定値であり、施設の実際の成約価格・実稼働率とは異なる。観光庁の客室稼働率とは定義・母集団が異なるため水準を直接比較しない。8月は全業態の繁忙月であり、業態間の稼働率差が通年で1pt未満であることを示すものではない。シティホテルの分析対象施設数は集計条件により1,125〜1,449施設の幅がある(表5)。

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