国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年(令和7年)年間確定値によれば、外国人延べ宿泊者数は1億7,992万人泊、前年比+9.4%だった。総量は広く報じられたが、その人泊がどの施設タイプに落ちたかはあまり分解されていない。本稿では、旅館・リゾートホテル・ビジネスホテル・シティホテル・簡易宿所・会社団体宿泊所の6区分で外国人延べ宿泊者数を分解し、施設タイプごとの外国人比率と、その伸びしろがどの県にどれだけ残っているかを定量化する。
本記事における指標の定義
- 延べ宿泊者数:観光庁「宿泊旅行統計調査」における、宿泊した人数×泊数(単位:人泊)。本稿の施設タイプ別数値は、特記のない限り全宿泊施設(従業者数や客室数による限定なし)を母集団とする第4表の集計値です。従業者数10人以上の施設に限定した参考表とは母集団が異なるため、他資料の数値と混在させないでください。
- 外国人比率:各施設タイプの延べ宿泊者数に占める外国人延べ宿泊者数の割合。観光庁の集計に基づく実績値です。
- 客室稼働率(観光庁):観光庁が施設タイプ別に公表する客室稼働率。全宿泊施設ベース。
- 稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。観光庁が公表する客室稼働率とは定義・母集団が異なるため、水準の直接比較はできません。
- 外国語クチコミ比率:宿泊者クチコミのうち、日本語以外の言語で書かれたものの割合。言語は国籍ではありません。日本語で投稿する在住外国人や、英語で投稿する日本人が含まれるため、国籍別統計の代替にはなりません。
- データ出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」/ホテルバンク編集部調べ/メトロエンジンリサーチ
- — 2025年の外国人延べ宿泊者数1億7,992万人泊のうち、施設タイプ判明分の79.5%がビジネスホテル(7,837万人泊)とシティホテル(4,929万人泊)に集中している。
- — 外国人比率はシティホテル47.2%に対し旅館12.9%で3.7倍の開き。旅館は延べ全体が前年比-5.1%と縮むなかで外国人人泊のみ+3.0%と伸びた。
- — 宿泊者クチコミの言語構成でも同じ序列が再現され、旅館の県別では観光庁公表値と相関係数0.870(N=43県)で整合する。
- — 旅館の客室稼働率は2026年1〜6月平均38.2%で、前年同期比+2.1pt。都市型2業態が前年水準から落ち着くなかで、宿泊自体が目的の業態が稼働を伸ばした。
- — 旅館の外国人比率がリゾートホテル並みの18.3%に届いた場合、+426万人泊の上積みに相当する(2025年の旅館延べ宿泊者数を固定した機械的試算)。
1億7,992万人泊はどこに落ちたか — 6区分の内訳
2025年の外国人延べ宿泊者数1億7,992万人泊のうち、施設タイプが判明している分は1億6,061万人泊(89.3%)である。残りは統計上「施設タイプ不詳」に分類されるため、以下の構成比はタイプが判明している1億6,061万人泊を分母として算出している。
最大の受け皿はビジネスホテルで、7,837万人泊。判明分の48.8%を占め、シティホテルの4,929万人泊(30.7%)と合わせると、外国人の人泊のおよそ8割がこの2タイプに落ちている。一方、旅館は1,028万人泊で6.4%、リゾートホテルは1,492万人泊で9.3%にとどまる。訪日客の宿泊は、体験としての和風宿泊ではなく、都市部の客室単位で供給される標準化された宿泊に圧倒的に集中している構造が読み取れる。
出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成
| 施設タイプ | 延べ宿泊者数 (万人泊) | うち外国人 (万人泊) | 外国人比率 | 外国人 前年比 | 外国人泊 構成比 | 延べ全体 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 旅館 | 7,945 | 1,028 | 12.9% | +3.0% | 6.4% | -5.1% |
| リゾートホテル | 8,142 | 1,492 | 18.3% | +12.3% | 9.3% | +2.8% |
| ビジネスホテル | 30,634 | 7,837 | 25.6% | +8.6% | 48.8% | -1.3% |
| シティホテル | 10,446 | 4,929 | 47.2% | +7.0% | 30.7% | +0.3% |
| 簡易宿所 | 3,247 | 764 | 23.5% | -13.7% | 4.8% | -13.1% |
| 会社・団体の宿泊所 | 540 | 12 | 2.2% | +5.1% | 0.1% | -10.0% |
| 6区分 計 | 60,953 | 16,061 | 26.4% | — | 100.0% | — |
| 施設タイプ不詳を含む全体 | 66,111 | 17,992 | 27.2% | +9.4% | — | -0.9% |
出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成
外国人比率はシティ47.2%・旅館12.9% — 同じ市場でも3.7倍の開き
構成比ではなく、各タイプの自分の延べ宿泊者数に対する外国人の割合を見ると、順序はさらに明確になる。シティホテルは47.2%と、宿泊のほぼ半分が外国人だ。以下、ビジネスホテル25.6%、簡易宿所23.5%、リゾートホテル18.3%、旅館12.9%、会社・団体の宿泊所2.2%と続く。シティホテルと旅館では3.7倍の開きがある。
前年(2024年)と比べると、この順序は変わらないまま、水準が全体的に切り上がった。シティホテルは44.2%から47.2%へ、ビジネスホテルは23.3%から25.6%へ、旅館は11.9%から12.9%へと、いずれも外国人比率を伸ばしている。旅館の延べ宿泊者数の総量は前年比-5.1%だったが、そのなかで外国人人泊は+3.0%と積み上がった。つまり旅館では、外国人の構成比が上がる方向に宿泊者ミックスが動いている。業態別の訪日客比率がどう推移してきたかは、シティホテル宿泊の45.9%は訪日客 — 業態別インバウンド比率と旅館の+3.7%で前年時点の姿を整理している。
簡易宿所は外国人比率23.5%とリゾートホテルを上回る水準にあり、外国人にとって選択肢として定着している一方で、2025年は延べ全体・外国人ともに前年から縮小した。区分内の施設構成が年ごとに動きやすいカテゴリであり、単年の増減だけで方向性を判断しないほうがよい。
旅館の外国人比率は月次でどう動いたか — 冬と春に山が立つ
旅館の外国人比率を月次で追うと、季節性がはっきり出る。2025年は1月18.1%、4月18.1%が二つの山で、8月は6.9%まで下がる。8月は国内の家族旅行需要が旅館の客室を厚く埋める時期であり、外国人比率は分母の膨張によって相対的に下がる。逆に1月・2月・4月は国内需要が薄く、そこに外国人が入ることで比率が上がる。
2026年は1〜6月の第2次速報が公表済みで、2月19.5%が直近の最高値だ。3年分を重ねると、旅館の外国人比率は2024年→2025年→2026年と、冬から春にかけての山が年を追って高くなっていることが確認できる。県単位で外国人シェアがどの季節に立ち上がるかについては、訪日客比率が「秋に上がる県」は47中6県も参考になる。
出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成
なお2026年1月分の調査から、観光庁は統計精度向上のため層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更している。観光庁自身が、前年同月比には見直しの影響が含まれる可能性があると注意喚起しているため、2026年の数値は水準と構成の把握に用い、前年同月比の増減幅を厳密な実勢変化として扱わないのが安全である。本稿でも2026年は構成比中心に扱う。
クチコミの言語構成でも、同じ順序が再現される
公的統計は速報から確定値まで数か月を要する。そこで、より頻度の高い代理指標として、宿泊者クチコミの言語構成を施設タイプ別に集計した。各タイプでクチコミ数の多い上位施設を抽出し、直近24か月に投稿されたクチコミを言語別に分類したものである。
| 施設タイプ | 対象施設数 | クチコミN | 外国語比率 | 英語 | 中国語 | 韓国語 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 旅館 | 400 | 380,171 | 16.6% | 9.2% | 2.3% | 1.7% |
| リゾートホテル | 400 | 467,635 | 13.2% | 6.1% | 2.8% | 2.3% |
| ビジネスホテル | 400 | 660,600 | 40.8% | 22.0% | 5.6% | 4.9% |
| シティホテル | 400 | 640,736 | 33.3% | 20.3% | 3.7% | 3.7% |
| カプセルホテル | 343 | 119,941 | 31.0% | 16.7% | 3.4% | 3.7% |
出典:ホテルバンク編集部調べ
旅館の外国語クチコミ比率は16.6%(N=380,171件・400施設)で、5タイプ中もっとも低い。ビジネスホテルは40.8%(N=660,600件)、シティホテルは33.3%(N=640,736件)で、公的統計が示す「都市型ホテルに外国人が集中し、旅館は相対的に日本語話者中心」という構造がクチコミ側でも再現された。
出典:ホテルバンク編集部調べ
ここで重要な留保が二つある。第一に、言語は国籍ではない。日本語で投稿する在住外国人や、英語で投稿する日本人が一定数含まれるため、この比率をそのまま国籍別構成比として読むことはできない。第二に、シティホテルとビジネスホテルの序列は、公的統計(シティ47.2% > ビジネス25.6%)とクチコミ言語(ビジネス40.8% > シティ33.3%)で入れ替わる。投稿率は言語圏や施設タイプによって差があるため、タイプ間の絶対水準の比較には向かず、同一タイプ内での地域差や時系列変化を見る用途に適していると考えるべきである。
県別に見ると、公式統計との一致度は相関係数0.87
その「同一タイプ内での地域差」を検証する。旅館だけに絞り、都道府県ごとに外国語クチコミ比率を集計し、観光庁が公表する県別・旅館の外国人比率と突き合わせた。両者が揃う43都道府県で比較したところ、相関係数は0.870(順位相関0.853)となった。
出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」/ホテルバンク編集部調べ
茨城県(観光庁1.0%/クチコミ1.3%)、福井県(2.4%/1.6%)、三重県(2.9%/3.6%)、宮城県(3.5%/3.9%)のように、水準の低い県ほど両指標はよく一致する。乖離が大きいのは和歌山県(29.1%/9.5%)や愛知県(11.6%/2.5%)で、特定の施設群に外国人宿泊が集中している県、あるいは団体を通じた予約が多く個人のクチコミ投稿に結び付きにくい県では差が開く。クチコミ言語は公的統計を置き換えるものではなく、確定値が出るまでの間の方向感を掴む補助線という位置づけになる。
旅館の外国人比率、県別のトップ層と受入余地
県別に旅館の外国人比率を並べると、東京都46.4%、沖縄県43.2%、大阪府37.4%が上位に立つ。この3都府県では旅館の延べ宿泊者数の規模自体が小さく(東京177万人泊、沖縄50万人泊、大阪101万人泊)、都市部の少数の施設が外国人を厚く取り込んでいる構図である。
規模を伴って比率も高いのは、和歌山県(旅館147万人泊・29.1%)、神奈川県(237万人泊・26.3%)、大分県(178万人泊・26.2%)、山梨県(309万人泊・24.1%)、京都府(288万人泊・23.8%)、北海道(636万人泊・22.7%)である。高野山・箱根・別府湯布院・富士五湖・京都・道内温泉地といった、宿泊そのものが目的地になるエリアが並ぶ。
| 都道府県 | 旅館 延べ宿泊者数 (万人泊) | うち外国人 (万人泊) | 旅館の外国人比率 (観光庁) | 旅館の外国語 クチコミ比率 | クチコミN |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 177 | 82 | 46.4% | 49.7% | 15,748 |
| 大阪府 | 101 | 38 | 37.4% | 29.6% | 6,928 |
| 和歌山県 | 147 | 43 | 29.1% | 9.5% | 24,845 |
| 神奈川県 | 237 | 62 | 26.3% | 37.2% | 55,109 |
| 大分県 | 178 | 47 | 26.2% | 28.8% | 29,196 |
| 山梨県 | 309 | 74 | 24.1% | 29.4% | 37,489 |
| 広島県 | 93 | 22 | 23.9% | 32.9% | 16,514 |
| 京都府 | 288 | 68 | 23.8% | 39.9% | 25,282 |
| 北海道 | 636 | 144 | 22.7% | 14.9% | 45,812 |
| 岐阜県 | 227 | 47 | 20.8% | 27.9% | 35,720 |
| 香川県 | 75 | 15 | 19.8% | 10.8% | 11,215 |
| 奈良県 | 55 | 8 | 15.4% | 21.0% | 13,029 |
| 熊本県 | 166 | 23 | 13.9% | 13.6% | 25,508 |
| 愛媛県 | 104 | 14 | 13.5% | 8.3% | 19,580 |
| 愛知県 | 116 | 13 | 11.6% | 2.5% | 13,897 |
| 長野県 | 463 | 52 | 11.2% | 15.6% | 34,852 |
| 青森県 | 103 | 11 | 10.7% | 7.6% | 13,452 |
| 佐賀県 | 73 | 7 | 10.3% | 10.3% | 14,150 |
出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」/ホテルバンク編集部調べ
反対に、旅館の延べ宿泊者数が150万人泊以上ありながら外国人比率が10%未満の県には、まとまった受入余地が残っている。静岡県(旅館433万人泊・8.1%)、新潟県(293万人泊・7.9%)、群馬県(367万人泊・4.3%)、栃木県(328万人泊・4.5%)、福島県(258万人泊・3.0%)、三重県(204万人泊・2.9%)、千葉県(241万人泊・0.8%)などである。いずれも国内需要で客室が回ってきた温泉地・観光地であり、外国人の取り込みはこれから積み上げる領域にあたる。
| 都道府県 | 旅館 延べ宿泊者数 (万人泊) | 旅館の外国人比率 | 旅館の外国語 クチコミ比率 | うち英語 | クチコミN |
|---|---|---|---|---|---|
| 静岡県 | 433 | 8.1% | 5.5% | 2.9% | 51,350 |
| 群馬県 | 367 | 4.3% | 5.9% | 3.6% | 51,331 |
| 栃木県 | 328 | 4.5% | 6.9% | 4.0% | 46,841 |
| 新潟県 | 293 | 7.9% | 6.6% | 3.8% | 24,536 |
| 福島県 | 258 | 3.0% | 2.8% | 1.7% | 35,474 |
| 兵庫県 | 252 | 8.3% | 15.0% | 9.6% | 31,129 |
| 千葉県 | 241 | 0.8% | 2.4% | 1.6% | 20,817 |
| 三重県 | 204 | 2.9% | 3.6% | 1.8% | 27,118 |
| 宮城県 | 191 | 3.5% | 3.9% | 2.1% | 24,885 |
| 山形県 | 172 | 7.3% | 6.6% | 3.6% | 26,075 |
| 石川県 | 166 | 8.7% | 10.3% | 6.2% | 24,886 |
出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」/ホテルバンク編集部調べ
クチコミ側の英語比率を見ると、これらの県はいずれも数%台にとどまる。裏を返せば、多言語での情報発信や外国語対応の受入体制が積み上がるほど、伸びしろがそのまま数字に反映されやすい構造である。
稼働率で見る上積み余地 — 旅館は2026年上期に+2.1pt
観光庁が公表する施設タイプ別の客室稼働率を見ると、2026年1〜6月の平均は旅館38.2%、リゾートホテル55.2%、ビジネスホテル72.1%、シティホテル69.8%、簡易宿所25.3%だった。前年同期と比べると、旅館は+2.1pt、リゾートホテルは+0.9ptと上向いている。都市型のビジネスホテル(-1.3pt)・シティホテル(-2.9pt)が前年の高水準から落ち着くなかで、宿泊そのものを目的とする業態が稼働を伸ばした形である。
出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成
旅館の客室稼働率は業態のなかで水準が低く出るが、これは1泊2食提供や仲居配置を前提とした運営設計上、意図的に稼働の上限を抑えている施設が相当数含まれるためでもある。数字として重要なのは、その水準からさらに2.1pt積み上がったという事実で、外国人比率の上昇(11.9%→12.9%)と方向が一致している。旅館には客室稼働と外国人取り込みの両面で、まだ積み増せる幅が残っている。
足元の需給を当社データで補足すると、2026年6月時点の旅館の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、京都府86.0%、北海道85.1%、岐阜県84.2%、長野県82.2%が高位に並ぶ。同月の全施設平均と比べると旅館が上回るのは京都府・岐阜県・群馬県の3府県で、他県では全施設平均のほうが高い。すなわち、旅館側にはOTA上でまだ販売可能な在庫が残っており、そこが伸びしろの実体である。
| 都道府県 | 旅館の稼働率 (推定) | 全施設の稼働率 (推定) | 差 | 対象施設数 | 対象客室数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 京都府 | 86.0% | 85.8% | +0.2pt | 127 | 2,202 |
| 北海道 | 85.1% | 89.3% | -4.2pt | 257 | 11,437 |
| 岐阜県 | 84.2% | 82.2% | +2.0pt | 178 | 3,928 |
| 長野県 | 82.2% | 85.5% | -3.3pt | 355 | 8,033 |
| 群馬県 | 81.5% | 80.6% | +0.9pt | 230 | 6,160 |
| 神奈川県 | 80.6% | 84.2% | -3.6pt | 212 | 5,389 |
| 大分県 | 79.8% | 82.5% | -2.7pt | 249 | 4,124 |
| 福井県 | 78.9% | 85.0% | -6.1pt | 110 | 2,438 |
| 静岡県 | 77.3% | 81.5% | -4.2pt | 369 | 9,283 |
| 栃木県 | 77.0% | 82.3% | -5.3pt | 169 | 6,569 |
| 和歌山県 | 76.5% | 77.5% | -1.0pt | 84 | 3,284 |
| 石川県 | 75.9% | 79.7% | -3.8pt | 91 | 3,776 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
受入余地を人泊で置き換えると、どれくらいの規模か
旅館の2025年の延べ宿泊者数7,945万人泊に対して、外国人は1,028万人泊(12.9%)だった。仮に旅館の外国人比率がリゾートホテル並みの18.3%に届いたとすると、外国人延べ宿泊者数は1,454万人泊となり、+426万人泊の上積みに相当する。さらに全施設平均の27.2%と同水準まで届いた場合は2,161万人泊で、+1,133万人泊となる。
これはあくまで比率を置き換えた機械的な試算であり、旅館という業態が構造的に国内客との相性が強いことを踏まえれば、そのまま実現する性質のものではない。それでも、+426万人泊という数字は2025年に旅館が積み上げた外国人人泊の増分(前年比+30万人泊)の14年分に相当する規模であり、業態単位で見たときの機会の大きさを示している(地方部の人泊目標との関係は地方インバウンドは客室61.7%・宿泊33.7% — 1.3億人泊目標に年16.5%成長で試算している)。
| 想定する旅館の外国人比率 | 水準の目安 | 旅館の外国人延べ宿泊者数 (万人泊) | 2025年実績からの上積み (万人泊) | 全国外国人人泊 に対する増分 |
|---|---|---|---|---|
| 12.9% | 現状(2025年実績) | 1,025 | — | — |
| 15.0% | +2.1pt | 1,192 | +164 | +0.9% |
| 18.3% | リゾートホテル並み | 1,454 | +426 | +2.4% |
| 23.5% | 簡易宿所並み | 1,867 | +839 | +4.7% |
| 27.2% | 全施設平均並み | 2,161 | +1,133 | +6.3% |
旅館の延べ宿泊者数(2025年・7,945万人泊)を一定と置き、外国人比率だけを動かした感応度である。分母である延べ宿泊者数自体が国内需要の増減で動くため、実勢の到達可能性を示すものではなく、比率1ptの変化が人泊にしてどの程度の規模になるかを把握するための目盛りとして読まれたい。出典:国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成
実務上の含意は明快である。ビジネスホテルとシティホテルはすでに外国人比率が高く、ここからの伸びは訪日客総数の増減に連動しやすい。対して旅館は、外国人比率そのものが低い水準にあるため、訪日客総数が横ばいでも、自施設の取り込み率が動くだけで人泊が伸びる余地がある。県別に見れば、静岡・新潟・群馬・栃木・福島・三重・千葉のように、規模がありながら比率が一桁台の市場がまとまって残っている。
まとめ
2025年の外国人延べ宿泊者数1億7,992万人泊を施設タイプ別に分解すると、ビジネスホテル7,837万人泊とシティホテル4,929万人泊で、タイプ判明分の79.5%を占めた。外国人比率はシティホテル47.2%を頂点に、ビジネスホテル25.6%、簡易宿所23.5%、リゾートホテル18.3%、旅館12.9%と並ぶ。
旅館は総量では前年比-5.1%だったが、外国人人泊は+3.0%、外国人比率は11.9%から12.9%へ上昇し、2026年上期には客室稼働率も前年同期比+2.1ptと積み上がった。宿泊者クチコミの言語構成でも同じ序列が再現され、県別では観光庁の公表値と相関係数0.870で整合する。旅館の外国人比率が一桁台にとどまる大規模市場は複数の県にまとまって残っており、そこが業態単位で見たときのもっとも大きな伸びしろである。
集計方法と留意点:施設タイプ別の延べ宿泊者数は観光庁「宿泊旅行統計調査」第4表(全宿泊施設ベース)に基づく。2025年は年の確定値、2026年1〜6月は第2次速報値である。第4表の延べ宿泊者数合計には「施設タイプ不詳」が含まれるため、6区分の合計(6億953万人泊)は全体(6億6,111万人泊)と一致しない。従業者数10人以上の施設に限定した参考表とは母集団が異なる。2026年1月分の調査から層化基準が従業者数から客室数へ変更されており、2025年以前との前年同月比には見直しの影響が含まれる可能性がある。クチコミの言語構成は、各施設タイプでクチコミ数上位の施設を抽出し、直近24か月の投稿を言語別に集計したもの(ホテルバンク編集部調べ)。旅館の県別集計は各県のクチコミ数上位最大80施設を対象とし、集計クチコミ数1,500件未満の県は除外した。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)はメトロエンジンリサーチによる推定値で、観光庁公表の客室稼働率とは定義・母集団が異なる。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
施設タイプ別の延べ宿泊者数・外国人延べ宿泊者数・客室稼働率は、国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」の公表値(2025年は年の確定値、2026年1〜6月は第2次速報値)。第4表(全宿泊施設ベース)を用い、従業者数10人以上に限定した参考表とは母集団を分けている。宿泊者クチコミの言語構成は、施設タイプごとにクチコミ数上位の施設を抽出し直近24か月の投稿を言語別に集計したもの(施設タイプ別 N=119,941〜660,600件・各400施設前後、旅館の県別 N=1,011〜55,109件)。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は2026年6月・都道府県×旅館カテゴリの集計値。
■ 試算前提
構成比は「施設タイプ不詳」を除いた6区分計1億6,061万人泊を分母とする。受入余地の試算は、2025年の旅館の延べ宿泊者数7,945万人泊を一定と置き、外国人比率のみを他業態の水準(18.3%/23.5%/27.2%)に置き換えた機械的な感応度であり、需要予測ではない。県別の稼働率比較は同一月・同一定義(OTA掲載在庫ベース・推定)の旅館カテゴリと全施設を対にしている。
■ 限界・留意点
2026年1月分の調査から層化基準が従業者数から客室数へ変更されており、2025年以前との前年同月比には見直しの影響が含まれる可能性がある。本稿では2026年は水準と構成の把握に用いている。クチコミ言語は国籍ではなく、投稿率が言語圏・施設タイプで異なるため、タイプ間の絶対水準の比較には向かない。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、観光庁が公表する客室稼働率とは定義・母集団が異なるため、両者の水準を直接比較することはできない。
■ 政府統計
- 国土交通省 観光庁「宿泊旅行統計調査」 — 2025年(令和7年)1〜12月分 年の確定値 集計結果、2026年(令和8年)1〜6月分 第2次速報値 集計結果、推移表
- 観光庁「宿泊旅行統計調査の層化基準の変更について」(PDF) — 2026年1月分調査からの層化基準変更
- 観光庁 報道発表「宿泊旅行統計調査(2026年5月・第2次速報、2026年6月・第1次速報)」
- 観光庁「宿泊旅行統計調査 用語の解説」(PDF)
■ 自社データ
- ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者クチコミの言語別集計(直近24か月、施設タイプ別N=119,941〜660,600件、旅館の県別N=1,011〜55,109件)
- メトロエンジンリサーチ — 稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)、2026年6月、都道府県×旅館カテゴリ
