トップ > インバウンド > シティホテル宿泊の45.9%は訪日客 — 業態別インバウンド比率と旅館の+3.7%

シティホテル宿泊の45.9%は訪日客 — 業態別インバウンド比率と旅館の+3.7%

投稿日 : 2026.08.20

指定なし

インバウンド

シティホテル宿泊の45.9%は訪日客 — 業態別インバウンド比率と旅館の+3.7%

訪日客はどの宿に泊まっているのか。観光庁「宿泊旅行統計調査」の最新公表値を施設タイプ別に分解すると、シティホテルは延べ宿泊者の45.9%が外国人である一方、旅館は11.5%にとどまる。そして全国の外国人延べ宿泊者数が前年同月比-9.0%と減速した2026年5月に、主要5区分のうち実数を伸ばした業態は旅館(+3.7%)とリゾートホテル(+4.7%)の2つだった。本稿では観光庁の公表表から施設タイプ別の内訳を取り出し、さらにメトロエンジンリサーチの実測データ(推定成約ADR・OTA掲載在庫ベースの推定稼働率)を並べて、公式統計と市場実測で「見え方」がどう異なるかを整理する。

本記事における指標の定義

  • 延べ宿泊者数・外国人延べ宿泊者数・客室稼働率(公式):観光庁「宿泊旅行統計調査」の公表値。2026年5月は第2次速報値、2026年6月は第1次速報値、2025年は確定値。施設タイプ(6区分)は同調査の区分(旅館/リゾートホテル/ビジネスホテル/シティホテル/簡易宿所/会社・団体の宿泊所)に従う。
  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。本稿の全国値は都道府県別の中央値を対象施設数で加重平均したものです。
  • 稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。観光庁公表の客室稼働率とは母集団・定義がともに異なるため、単純比較はできません。
  • データ出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」/メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • シティホテルは延べ宿泊者の45.9%が外国人。ビジネスホテル24.8%、簡易宿所23.1%、旅館11.5%で、全国平均は26.7%(2026年5月・第2次速報)。
  • 全国の外国人延べ宿泊者数が前年同月比-9.0%と減速するなか、主要5区分で実数を伸ばしたのは旅館(+3.7%)とリゾートホテル(+4.7%)の2業態のみ。
  • 外国人の泊まる場所は構成比で移動中 — 旅館+1.16pt・リゾートホテル+1.73pt に対し、ビジネスホテルは-3.12pt(業態が判明した外国人延べ宿泊者数に占める割合)。
  • 2026年6月の客室稼働率で前年を上回ったのは旅館だけ(35.3%・前年同月差+0.3pt)。ビジネスホテル70.9%、シティホテル69.1%はいずれも前年割れ。
  • 公式統計と市場実測の差は旅館で45.1pt。分母・母集団・休業日の扱いが異なるため、水準ではなく業態間の順序と方向で突き合わせる。

全国が前年割れするなかで、旅館とリゾートホテルだけが訪日客を増やした

2026年5月の延べ宿泊者数は全国5,429万人泊(前年同月比-3.2%)、うち外国人は1,451万人泊(同-9.0%)だった。全体として前年を下回る局面である。しかし、この数字を施設タイプ別に開いてみると、市場が一律に縮んだわけではないことがわかる。

外国人延べ宿泊者数を業態別に見ると、旅館が88万6,630人泊(前年同月比+3.7%)、リゾートホテルが125万8,320人泊(同+4.7%)と、この2業態だけが実数を伸ばしている。一方でビジネスホテルは582万410人泊(同-18.5%)、シティホテルは380万2,920人泊(同-12.3%)、簡易宿所は60万3,640人泊(同-14.0%)と減少した。つまり、全国合計の-9.0%という数字は、都市型宿泊施設の減少と、旅館・リゾートホテルの増加が打ち消し合った結果である。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報/2025年5月・確定値)よりホテルバンク編集部作成

この分岐を国籍別の動きと重ねると、背景が見えてくる。同じ2026年5月の国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数(客室数20室以上の施設が対象、合計1,276万4,000人泊・前年同月比-6.7%)では、第1位が米国(172万1,740人泊・+1.9%)、第2位が台湾(169万8,370人泊・+12.2%)、第3位が韓国(159万6,820人泊・+5.7%)と上位3市場がいずれもプラスである一方、第4位の中国は112万7,660人泊で前年同月比-53.8%と大きく落ち込んでいる。どの国籍がどの県に落ちているかは首位交代は米国、2位台湾・3位韓国 — 国籍別宿泊の県別受け皿マップ2026で県別に整理している。

公表値から逆算すると、中国の減少幅はおよそ131万人泊であり、同じ集計範囲における外国人全体の減少幅(約92万人泊)を上回る。裏を返せば、中国を除いた国籍合計はおよそ+3.5%と前年を上回っている計算になる。特定市場の一時的な調整局面と、それ以外の市場の緩やかな拡大が同時に進行しており、旅館・リゾートホテルが伸びているのは後者の受け皿になっているためと整合的に読める。台湾市場の安定性については台湾は過去最高圏の安定市場|中国減速下のインバウンド分散戦略でも取り上げている。

シティホテル45.9%、ビジネスホテル24.8% — 業態別の外国人比率

次に、各業態の延べ宿泊者数に占める外国人の割合(外国人比率)を見る。2026年5月時点で最も高いのはシティホテルの45.9%で、宿泊のほぼ半分が訪日客である。次いでビジネスホテル24.8%、簡易宿所23.1%、リゾートホテル18.0%、旅館11.5%、会社・団体の宿泊所1.8%と続く。全国平均は26.7%である。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報/2025年5月・確定値)よりホテルバンク編集部作成

注目すべきは、比率そのものは全業態で前年同月を下回っている点である。シティホテルは47.9%から45.9%へ2.0pt、ビジネスホテルは27.0%から24.8%へ2.2pt、旅館は12.8%から11.5%へ1.3pt低下した。外国人が減り、日本人宿泊者が相対的に戻っているためで、比率だけを見ると全業態が同じ方向を向いている。

そこで、外国人延べ宿泊者数の「業態間の取り合い」を見るために、6区分に分類された外国人延べ宿泊者数の合計(1,238万900人泊)に対する各業態の構成比を計算した。旅館は6.0%から7.2%へ1.16pt、リゾートホテルは8.4%から10.2%へ1.73pt構成比を高めている。逆にビジネスホテルは50.1%から47.0%へ3.12pt低下した。訪日客の「泊まる場所」が、都市型の宿泊特化型から、宿泊以外の体験価値を持つ業態へ少しずつ移動していることを示している。

表1:施設タイプ(6区分)別 延べ宿泊者数・外国人延べ宿泊者数・外国人比率(2026年5月・第2次速報)
施設タイプ 延べ宿泊者数 うち外国人 外国人比率 外国人・前年同月比 外国人構成比(前年差)
旅館7,704,420886,63011.5%+3.7%7.2%(+1.16pt)
リゾートホテル7,003,4801,258,32018.0%+4.7%10.2%(+1.73pt)
ビジネスホテル23,425,7005,820,41024.8%-18.5%47.0%(-3.12pt)
シティホテル8,287,2503,802,92045.9%-12.3%30.7%(+0.27pt)
簡易宿所2,613,470603,64023.1%-14.0%4.9%(-0.05pt)
会社・団体の宿泊所510,7208,9801.8%+7.9%0.1%(+0.01pt)
全国(施設タイプ不詳を含む)54,291,52014,507,49026.7%-9.0%

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年5月・第2次速報、単位:人泊)よりホテルバンク編集部作成

なお、この統計には施設タイプ不詳が含まれる。2026年5月の場合、延べ宿泊者数では6区分の合計4,954万5,040人泊に対して全国合計が5,429万1,520人泊であり、不詳は8.7%。外国人については6区分合計1,238万900人泊に対して全国合計1,450万7,490人泊で、不詳は14.7%を占める。したがって構成比は「業態が判明した分の内訳」として読む必要がある。なお速報値と確定値の間で業態別の数字がどの程度動くかは観光庁2025年確定値61.6% — 速報61.8%からの修正幅を業態別に対比で検証しており、速報段階の値は一定の修正幅を織り込んで読むのが安全である。

6月速報が示す稼働率の分岐 — 旅館だけが前年を上回る

より新しい2026年6月(第1次速報)では、外国人の施設タイプ別内訳はまだ公表されていない。ただし延べ宿泊者数と客室稼働率は業態別に取得できる。2026年6月の延べ宿泊者数は全国4,677万5,820人泊(前年同月比-6.5%)、うち外国人1,251万2,800人泊(同-11.9%)、全体の客室稼働率は56.2%(前年同月差-2.6pt)だった。

業態別の客室稼働率は、ビジネスホテル70.9%(前年同月差-1.9pt)、シティホテル69.1%(同-3.4pt)、リゾートホテル50.4%(同-0.2pt)、旅館35.3%(同+0.3pt)、簡易宿所23.0%(同-5.2pt)、会社・団体の宿泊所27.8%である。前年を上回ったのは旅館のみで、5月時点でも旅館は+3.0pt、リゾートホテルは+4.1ptと稼働を伸ばしていた。延べ宿泊者数でも旅館は6月に625万7,520人泊(前年同月比+12.3%)、リゾートホテルは577万710人泊(同+2.3%)と増加している。

表2:施設タイプ(6区分)別 延べ宿泊者数と客室稼働率(2026年6月・第1次速報、5月値を併記)
施設タイプ 延べ宿泊者数(6月) 前年同月比 客室稼働率(6月) 前年同月差 客室稼働率(5月)
旅館6,257,520+12.3%35.3%+0.3pt41.5%
リゾートホテル5,770,710+2.3%50.4%-0.2pt58.4%
ビジネスホテル20,299,450-15.0%70.9%-1.9pt74.5%
シティホテル7,930,620-6.4%69.1%-3.4pt73.0%
簡易宿所2,168,180-12.7%23.0%-5.2pt29.4%
会社・団体の宿泊所605,280+52.3%27.8%
全国46,775,820-6.5%56.2%-2.6pt61.0%

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年6月・第1次速報/2026年5月・第2次速報、単位:人泊)よりホテルバンク編集部作成

ここで一点、前年比較の読み方に注意が必要である。同調査は統計精度の向上を目的として、令和8年(2026年)1月分調査から層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更している。観光庁自身も、対前年(同月)比・対前年(同月)差にはこの見直しの影響が含まれている可能性がある点に留意するよう明記している。したがって旅館の+12.3%やビジネスホテルの-15.0%といった大きな変化率は、実勢の需要変動に加えて、母集団の捉え方が変わったことによる差分を含みうる。この論点は2026年の稼働率『前年割れ』は本物か──統計の層化基準変更が生む断層の読み方で詳述している。前年比の絶対値ではなく、業態間の相対的な順位と方向性を読むのが安全である。

公式統計と自社実測はなぜ40pt以上ずれるのか

ここからは同じ2026年6月について、メトロエンジンリサーチが観測した市場データを並べる。全国47都道府県のOTA掲載在庫を集計した推定稼働率は、全施設で86.0%(対象21,984施設・1,334,735室)だった。観光庁公表の全体56.2%とは約30pt離れている。この差は、どちらかが誤っているという話ではなく、測っている対象が違うことに由来する。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年6月・第1次速報)/メトロエンジンリサーチ(2026年6月・47都道府県集計)よりホテルバンク編集部作成

差が生じる理由は主に3つある。第1に分母が異なる。観光庁の客室稼働率は施設が保有する全客室数を分母とするのに対し、当社の推定稼働率はOTAに掲載された販売在庫を分母とする。ホテル・旅館は総客室のうち一定割合のみをOTAに配分するのが一般的で、直販・法人契約・旅行会社枠に回した客室は当社の分母に入らない。この配分実態についてはOTA等に出しているのは総客室の何割か — 12,941施設で測る在庫配分率で検証している。

第2に母集団が異なる。観光庁調査は登録された全宿泊施設を母集団とし、OTAに掲載していない小規模旅館や会社・団体の宿泊所も含む。当社がOTA上で稼働を確認できるのは2026年6月時点で21,984施設であり、そもそも網が違う。第3に休業日の扱いが異なる。定休日や長期休館の日も、公式統計では稼働可能日数として分母に算入されるケースがあるのに対し、OTA掲載在庫ベースでは掲載自体が出ないため分母から外れる。

この3点は、いずれも「規模が小さく、OTA依存度が低く、休業日が多い業態」ほど差を大きくする方向に働く。実際、業態別の差は旅館が最大で、公式35.3%に対して当社推定80.4%と45.1pt開く。リゾートホテルは50.4%対82.0%で31.6pt、シティホテルは69.1%対88.0%で18.9pt、ビジネスホテルは70.9%対86.9%で16.0ptと、都市型に近づくほど差は縮まる。差の大きさそのものが、その業態のOTA以外の販売チャネルの厚みや稼働可能日数の構造を映していると読むこともできる。

一方で、両者が一致している点もある。ビジネスホテル・シティホテルの稼働が高く、リゾートホテル・旅館が相対的に緩いという業態間の順序は公式統計と自社実測で完全に一致する。水準は比較できないが、方向は比較できる。ここが実務上の使い分けの分岐点になる。

業態別の推定成約ADR — 旅館¥12,500、ビジネスホテル¥8,000

単価の面でも同じ業態区分で実測値を並べておく。2026年6月の推定成約ADR(全国、都道府県別中央値の施設数加重平均)は、リゾートホテルが約¥14,100(N=1,586施設)、旅館が約¥12,500(N=6,779施設)、シティホテルが約¥11,900(N=1,113施設)、ビジネスホテルが約¥8,000(N=7,402施設)だった。5月はそれぞれ約¥16,800、約¥14,900、約¥13,900、約¥9,200である。

出典:メトロエンジンリサーチよりホテルバンク編集部作成

前年同月比で見ると、5月は旅館+1.1%、リゾートホテル+4.8%、ビジネスホテル+1.8%、シティホテル+0.2%と全業態がプラスだった一方、6月は旅館-5.2%、リゾートホテル-2.9%、ビジネスホテル-3.5%、シティホテル-7.7%と全業態がマイナスに転じている。6月の延べ宿泊者数が-6.5%と落ち込んだことと符合しており、5月と6月では需給の局面が明確に変わった。都道府県×業態のより細かいADR前年比の分布は2026年上期・47都道府県×4業態のADR前年比 — 符号が揃った16県、割れた31県で扱っている。

ここに機会がある。外国人比率が45.9%と最も高いシティホテルは、6月のADR前年比が-7.7%と4業態で最も大きく下げた。訪日客の構成が中国から米国・台湾・韓国へシフトしている局面では、客層に合わせた滞在日数・食事の有無・チェックイン時間帯といった商品設計を組み替えることで、価格を戻す余地が生まれる。逆に旅館は外国人実数を+3.7%伸ばしながらADRは6月に-5.2%であり、増えた需要をまだ単価に反映しきる前の段階にある。需要が先行して単価が追いつく形は、段階的なプライシングを組み立てるうえで最も扱いやすい局面である。

表3:業態別 推定成約ADRと推定稼働率(2026年6月・47都道府県集計)
業態(自社区分) 推定成約ADR(6月) 前年同月比 推定稼働率(6月) 対象施設数 対象客室数
旅館¥12,500-5.2%80.4%5,253136,581
リゾートホテル¥14,100-2.9%82.0%1,346113,464
ビジネスホテル¥8,000-3.5%86.9%6,608778,239
シティホテル¥11,900-7.7%88.0%1,052191,622
カプセルホテル(参考)¥4,40096.0%769,462
全施設86.0%21,9841,334,735

出典:メトロエンジンリサーチ(2026年6月・47都道府県集計)よりホテルバンク編集部作成。ADRのN(推定成約ADRの算定対象施設数)は旅館6,779、リゾートホテル1,586、ビジネスホテル7,402、シティホテル1,113、カプセルホテル95。

カプセルホテルは推定稼働率96.0%(2026年6月・47都道府県集計)と全業態で最も高いが、対象は76施設・9,462室と規模が小さく、また観光庁の「簡易宿所」区分はゲストハウス・ホステル・民宿などを広く含むため、両者は同一の対象ではない。参考値として扱う必要がある。

簡易宿所 — 低価格帯の受け皿としての位置づけ

簡易宿所は2026年5月時点で延べ宿泊者数261万3,470人泊、うち外国人60万3,640人泊で、外国人比率は23.1%とビジネスホテル(24.8%)に近い水準にある。訪日客の受け入れ密度という点では都市型ビジネスホテルと遜色ない業態である。一方で客室稼働率は5月29.4%、6月23.0%と全業態で最も低く、伸びしろの大きさがそのまま数字に出ている。

この業態の供給構造については、2025年確定値をもとにした簡易宿所29.6%が映す低価格帯の成長余地|2025年確定値と供給構造で詳しく分析している。低価格帯の受け皿として構成比を保ちつつ、稼働率には明確な余地が残る、というのが一貫した姿である。1棟貸しや空き家活用といった供給形態の広がりも含め、需要側の裾野が広い分だけ運営設計の自由度が高い領域といえる。

まとめ — 「訪日客はどこに泊まるか」は移動しつつある

2026年5月時点で、訪日客の泊数が最も集中しているのはビジネスホテル(業態が判明した外国人延べ宿泊者数の47.0%)であり、宿泊に占める外国人の密度が最も高いのはシティホテル(45.9%)である。この構図自体は変わっていない。変わったのは、その内訳が動き始めたことだ。全国の外国人延べ宿泊者数が前年同月比-9.0%と減速するなかで、旅館(+3.7%)とリゾートホテル(+4.7%)は実数を伸ばし、業態別の構成比をそれぞれ1.16pt、1.73pt高めている。

この動きは、国籍構成の変化と整合的である。上位市場のうち米国・台湾・韓国がプラスを維持し、中国が大きく調整している局面では(この調整の起点は中国客マイナス60%の衝撃 — 2026年Q1 国籍別訪日客と宿泊市場の地殻変動で追っている)、都市部の宿泊特化型に厚く配分されていた需要の一部が、体験価値を持つ業態へ回る。旅館・リゾートホテルにとっては、稼働率が公式ベースで35.3%・50.4%と余地の大きい水準にとどまっているだけに、増えた需要を単価へ反映していく余白が残されている。

そして、公式統計と自社実測は「水準」ではなく「順序と方向」で突き合わせるべきである。観光庁の客室稼働率は全客室・全施設を分母とするマクロの実態を、OTA掲載在庫ベースの推定稼働率は販売現場での在庫消化スピードを、それぞれ別の角度から測っている。両者を並べたとき、旅館で45.1pt、ビジネスホテルで16.0ptという差の構造そのものが、業態ごとの販売チャネルの厚みを示す情報になる。どちらか一方だけを見て意思決定するより、二つの見え方の距離を理解したうえで読むほうが、市場の輪郭は正確につかめる。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 政府統計・公的データ

■ データソース

公式統計は観光庁「宿泊旅行統計調査」第4表(施設タイプ6区分別 延べ宿泊者数/外国人延べ宿泊者数)、第8表(客室稼働率)、参考第1表(国籍・出身地別)。2026年5月は第2次速報値、2026年6月は第1次速報値、2025年は確定値を用いた。市場実測はメトロエンジンリサーチの推定成約ADR(2026年5月・6月)およびOTA掲載在庫ベースの推定稼働率(2026年6月・47都道府県集計、21,984施設・1,334,735室)。

■ 試算前提

外国人比率=外国人延べ宿泊者数÷延べ宿泊者数。業態別の構成比は、施設タイプが判明した6区分の外国人延べ宿泊者数の合計(2026年5月:1,238万900人泊)を分母とし、施設タイプ不詳を含む全国合計は分母に用いない。全国の推定成約ADRは都道府県別の中央値を対象施設数で加重平均、推定稼働率は都道府県別の値を客室数で加重平均して算出した。前年同月比・前年同月差はいずれも同一定義の前年値との比較である。

■ 限界・留意点

(1) 2026年5月・6月はいずれも速報値であり、確定値との間で業態別の数字は修正されうる。(2) 同調査は令和8年1月分調査から層化基準を従業者数から客室数へ変更しており、対前年比・対前年差にはその影響が含まれうる。(3) 施設タイプ不詳が延べ宿泊者数で8.7%、外国人延べ宿泊者数で14.7%あり、構成比は業態が判明した分の内訳として読む必要がある。(4) 観光庁の客室稼働率は全客室を分母とするのに対し、OTA掲載在庫ベースの推定稼働率は販売在庫を分母とするため、両者の水準は比較できない。(5) カプセルホテルは対象76施設・9,462室と規模が小さく参考値であり、観光庁の「簡易宿所」区分とは対象が一致しない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 推定成約ADR(2026年5月・6月、47都道府県×5業態)、OTA掲載在庫ベースの推定稼働率(2026年6月、21,984施設・1,334,735室)

関連記事