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OTA等に出しているのは総客室の何割か — 12,941施設で測る在庫配分率

投稿日 : 2026.08.10 更新日 : 2026.09.02

指定なし

OTA等に出しているのは総客室の何割か — 12,941施設で測る在庫配分率

ホテルの在庫データは、これまでほぼ一つの問いにしか使われてこなかった。「いつ売り切れたか」である。だが同じデータをひっくり返すと、まったく別の問いに答えられる。その施設は、持っている客室のうち何割をオンライン販売枠に出しているのか——という問いだ。本稿では全国12,941施設・1,110,175室の在庫観測データから「在庫配分率」を算出し、業態・地域・規模でどれだけ設計が異なるかを定量化する。

本記事における指標の定義

  • 在庫配分率:観測期間中にオンライン販売面で同時に確認できた販売可能客室数の最大値 ÷ 施設の総客室数(%)。室ベースで算出し、プラン本数は用いません。オンライン販売枠に割り当てられた客室規模の下限値であり、施設が公式サイト直販・法人契約・旅行会社経由などに配分している比率を逆算するための代理指標です。100%を超える観測値(総客室数マスターとの不整合)は除外しています。
  • LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。LT0=当日。本稿の観測はリードタイム90日以内に限定しています。
  • ADR(平均客室単価):各施設がオンライン販売面で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 客室稼働率:本稿で「実績稼働率」と記す数値は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)です。当社推定値ではありません。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ/観光庁「宿泊旅行統計調査」
Key Takeaways
  • — 全国12,941施設・1,110,175室の在庫観測から算出した在庫配分率の中央値は39.2%。0〜10%帯に11.8%、90〜100%帯に7.7%が入り、「業界標準の配分比率」と呼べる水準は存在しない。
  • — 業態差は18.0pt。旅館41.7%(N=5,126)が最も高く、シティホテル23.7%(N=546)が最も低い。シティホテルは実績稼働率74.1%(2025年年間確定値)を公開枠の外側で積み上げている。
  • — 地域差は都道府県で35.5pt(三重57.1%〜青森21.6%)、市区町村では40.4pt(浜松市中央区57.6%〜長崎市17.2%)。三大都市圏/地方の別とも都市規模とも対応しない。
  • — 「絞っている市場ほど単価が高い」は不成立。推定成約ADRとの順位相関はビジネスホテル−0.248、旅館+0.304、合算−0.094でほぼ無相関。配分率は単価の従属変数ではない。
  • — 客室規模とは安定した負の関係(19室以下50.0%/200室以上29.8%)。連休土曜より通常平日が+10.7pt高く、本稿の値は割当の下限値として読む必要がある。

完売の裏返しにある「配分」という設計変数

残室データを追いかける記事はこの1年で一気に増えた。だが「リードタイム60日で残室ゼロ」という観測が意味を持つのは、そもそもその施設が何室をオンライン販売枠に出していたかが分かっている場合に限られる。総客室180室のうち8室しか出していない施設が売り切れるのと、150室出して売り切れるのとでは、需要の強さの意味がまったく違う。同じ室ベースの在庫観測を需要側から読み解いた分析は東京のビジネスホテル434施設、8月14日の在庫消化を分解するで扱っている。

そこで本稿では、完売判定に使ってきたのと同じ室ベースの在庫観測から、別の量を取り出す。観測期間を通じてオンライン販売面に同時に見えていた販売可能客室数の最大値を、その施設の総客室数で割った比率である。これを在庫配分率と呼ぶ。数値が高いほどオンライン販売枠への傾斜が強く、低いほど直販・法人・旅行会社といった他経路の比重が大きいと読める。

全国12,941施設・総客室1,110,175室を集計した結果、在庫配分率の中央値は39.2%だった。分布は一極集中しておらず、0〜10%帯に11.8%、90〜100%帯にも7.7%が入る。「業界標準の配分比率」のようなものは存在せず、施設ごとに設計が大きく割れているというのが最初の観測である。

分析対象施設
12,941
47都道府県
対象客室数
1,110,175
施設マスター合計
在庫配分率 中央値
39.2%
全業態プール
観測チェックイン日
2日
連休土曜/通常平日

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

業態で割れる配分設計 — 旅館41.7%、シティホテル23.7%

業態別に中央値を取ると、最も高いのが旅館の41.7%(N=5,126)、次いでビジネスホテル39.0%(N=6,182)。逆に最も低いのがシティホテル23.7%(N=546)で、旅館との差は18.0ptに達する。

ここに観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年年間確定値を重ねると、構造の輪郭がはっきりする。シティホテルの実績稼働率は74.1%と業態中でも高い水準にありながら、オンライン販売枠に同時に出ている客室は総客室の4分の1にも満たない。埋まっている客室の相当部分が、オンラインの公開枠を通らずに動いていることになる。宴会・婚礼と結びついた宿泊、法人契約、MICE、旅行会社のブロックといった伝統的な販売経路を厚く持つ業態の特徴が、そのまま在庫の見え方に出ている。

対照的に旅館は、実績稼働率が38.2%(2025年年間確定値/観光庁「宿泊旅行統計調査」)と業態中で最も低い一方、在庫配分率は最も高い。小規模で自社の営業組織を持ちにくい施設が多く、オンライン販売枠に厚く在庫を預ける設計になりやすい。稼働率と配分率が逆向きに並ぶこの構図は、配分率が「売れているかどうか」ではなく「どこで売るか」を映す指標であることを端的に示している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

業態別 在庫配分率と実績稼働率 — 全国12,941施設(観測チェックイン日 2026年9月19日/10月6日、実績稼働率は観光庁2025年年間確定値)
業態分析施設数配分率 中央値第1四分位第3四分位10%未満の割合50%以上の割合実績稼働率(2025年)
旅館5,12641.7%22.9%65.9%7.9%42.6%38.2%
ビジネスホテル6,18239.0%16.7%70.0%14.3%40.7%75.3%
リゾートホテル1,04935.3%18.4%62.5%10.8%35.7%56.9%
シティホテル54623.7%11.7%46.0%20.7%22.2%74.1%
デラックスホテル3817.0%10.8%36.1%21.1%10.5%—

出典:メトロエンジンリサーチ/観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)よりホテルバンク編集部作成

都道府県マップ — ビジネスホテルの配分率は21.6%〜57.1%に広がる

最も施設数が多いビジネスホテル(N=6,182)を都道府県別に集計すると、中央値は最高の三重県57.1%から最低の青森県21.6%まで35.5ptの開きがある。下の地図は各県の中心座標に円を置き、色で配分率帯、大きさで分析施設数を表している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

地図から読めるのは、配分率の高低が都市規模とも三大都市圏/地方の別ともきれいには対応していないことである。三大都市圏でも埼玉県51.5%と愛知県33.5%では18.0ptの差があり、地方でも宮崎県53.0%と青森県21.6%が両極に分かれる。県単位で見た配分率は、市場の大きさよりも、その地域に集まっている施設群がどんな販売経路を主軸に据えてきたかを反映していると考えられる。

高い市場・低い市場 — 都道府県と市区町村

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

ビジネスホテル 在庫配分率が高い10県 — 都道府県別中央値(N=6,182、2026年9月19日/10月6日観測)
都道府県分析施設数配分率 中央値第1四分位第3四分位客室数 中央値推定成約ADR
三重県8257.1%30.0%81.2%108室¥7,031
宮崎県7053.0%21.4%81.2%82室¥6,025
埼玉県11851.5%26.3%78.6%98室¥7,628
群馬県8850.0%20.0%84.7%70室¥6,465
愛媛県8750.0%26.2%81.1%91室¥5,888
奈良県2948.0%21.1%73.3%131室¥8,647
山梨県5948.0%20.0%78.5%63室¥7,900
鳥取県4247.8%23.0%71.7%80室¥5,934
山形県4946.4%15.3%70.4%100室¥6,650
大分県7544.4%19.3%73.7%91室¥6,299
ビジネスホテル 在庫配分率が低い10県 — 都道府県別中央値(N=6,182、2026年9月19日/10月6日観測)
都道府県分析施設数配分率 中央値第1四分位第3四分位客室数 中央値推定成約ADR
石川県9435.5%14.4%70.5%106室¥7,769
福井県3835.1%18.7%71.7%120室¥7,614
岩手県7334.0%14.3%65.0%109室¥6,277
愛知県26933.5%14.7%63.0%128室¥7,837
岐阜県9733.3%19.4%67.9%81室¥7,409
静岡県19733.3%18.1%72.9%102室¥7,135
滋賀県6932.7%15.9%61.7%82室¥7,343
宮城県11930.0%15.4%67.8%120室¥7,572
北海道35729.4%12.9%60.3%98室¥8,858
青森県7221.6%8.8%56.2%112室¥6,930

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

市区町村まで降りると差はさらに開く。分析施設数25以上の45市区(ビジネスホテル)では、最高が浜松市中央区(旧中区エリア)の57.6%(N=28)、最低が長崎市の17.2%(N=30)である。大都市の中心業務地区、たとえば福岡市博多区27.6%(N=119)、大阪市北区26.7%(N=47)、神戸市中央区25.1%(N=37)はいずれも下位に並ぶ。

ここで注意したいのは、配分率が低いことの理由を一つに決めつけられない点である。オンラインの公開データから分かるのは「見えている枠が小さい」という事実だけであり、その背景には少なくとも三つの可能性がある。第一に、公式サイト直販・法人契約・旅行会社経由といったオンライン公開枠以外の経路を主軸に据えた運用。第二に、在庫を一度に全量出さず、チェックインが近づくにつれて小出しに追加していく在庫コントロール。第三に、オンライン販売面への割当(アロットメント)自体を契約上少なく設定しているケースである。オフィス街の施設に低配分率が集まる傾向は、法人需要の厚さと在庫の小出し運用のどちらでも説明できてしまう。残室数が少ないことは「公開枠の中での残数」であって、施設全体が満室であることを意味しない点も併せて押さえておきたい。エリア単位で在庫が実際にどう消化されていくかを追ったお盆T-7の在庫消化、九州6県で31.7pt差と併せて読むと、残室の見え方と配分設計の距離がつかみやすい。

ビジネスホテル 市区町村別 在庫配分率 上位8・下位8 — 分析施設数25以上の45市区(2026年9月19日/10月6日観測)
市区町村分析施設数配分率 中央値
高浜松市中央区/旧中区(静岡県)2857.6%
高大阪市浪速区(大阪府)3956.5%
高松山市(愛媛県)3055.2%
高いわき市(福島県)3355.2%
高新潟市中央区(新潟県)3152.6%
高函館市(北海道)4549.4%
高宮崎市(宮崎県)3045.7%
高鹿児島市(鹿児島県)5144.8%
低京都市下京区(京都府)9428.6%
低広島市中区(広島県)4828.5%
低福岡市博多区(福岡県)11927.6%
低大阪市北区(大阪府)4726.7%
低高松市(香川県)4925.8%
低神戸市中央区(兵庫県)3725.1%
低大阪市淀川区(大阪府)2724.3%
低長崎市(長崎県)3017.2%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

旅館は市場の性格がさらに露骨に出る。伊東市60.0%(N=55)、那須塩原市60.0%(N=37)、伊豆市57.1%(N=43)、湯河原町56.4%(N=44)といった首都圏近郊の温泉地が上位に並び、高山市27.5%(N=74)、富士河口湖町24.6%(N=30)が下位に来る。上位に並ぶ温泉地は個人客の予約を厚く取り込む商圏であり、下位に来るのは訪日個人・団体を含む多経路の集客が伝統的に厚い商圏という対比になっている。

旅館 市区町村別 在庫配分率 上位8・下位8 — 分析施設数25以上(2026年9月19日/10月6日観測)
市区町村分析施設数配分率 中央値
高伊東市(静岡県)5560.0%
高那須塩原市(栃木県)3760.0%
高伊豆市(静岡県)4357.1%
高湯河原町(神奈川県)4456.4%
高白浜町(和歌山県)2755.6%
高伊豆の国市(静岡県)2953.8%
高加賀市(石川県)3851.5%
高由布市(大分県)10250.0%
低鶴岡市(山形県)2833.3%
低松本市(長野県)5032.6%
低南小国町(熊本県)4232.4%
低松江市(島根県)2531.6%
低松山市(愛媛県)3029.0%
低中之条町(群馬県)2727.8%
低高山市(岐阜県)7427.5%
低富士河口湖町(山梨県)3024.6%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

「絞っている市場ほど単価が高い」は成り立たない

当初の仮説は素直なものだった。オンライン公開枠を絞れる施設ほど需要が強く、単価も高いのではないか——。都道府県×業態の中央値を推定成約ADRと突き合わせて検証した結果、この仮説は支持されなかった。

ビジネスホテル47県では順位相関が−0.248と弱い負の関係にとどまり、旅館46県では逆に+0.304の弱い正の関係になる。両者を合算すると−0.094でほぼ無相関である。つまり、配分率と単価水準の間に一貫した方向性は存在しない。

個別に見ても符号は揃わない。ビジネスホテルでは推定成約ADR¥14,500の東京都が37.7%、同じく¥14,500の京都府が36.4%と全国中央値の近辺に位置する一方、¥7,000前後の三重県が57.1%と最上位に来る。旅館では推定成約ADR¥21,600の京都府が40.0%、¥20,300の神奈川県が41.7%と中位で、¥7,200の徳島県が60.0%と上位に立つ。在庫配分率は単価水準の従属変数ではなく、それ自体が独立した経営判断であると読むのが素直だろう。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

規模が小さいほど公開枠は厚い

客室規模で切ると、より安定した関係が現れる。19室以下の施設は在庫配分率の中央値50.0%(N=3,597)に対し、200室以上は29.8%(N=1,416)。規模が大きくなるほど公開枠の比率は下がる。

大規模施設は自社の営業体制、法人契約、旅行会社との年間取引を持ちやすく、在庫を分散させる余地が大きい。逆に小規模施設は営業リソースの制約からオンライン販売枠への依存度が高くなりやすい。ただし100〜199室帯が37.3%と50〜99室帯の33.8%を上回っており、単調な右肩下がりではない。ビジネスホテル単体で見ると100〜199室帯は40.0%で、この規模帯には全国展開型のチェーン施設が多く含まれ、標準化されたチャネル運用が一定の配分率を押し上げている可能性がある。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

需要日で見える顔が変わる — 指標の限界を測る

この指標には構造的な弱点がある。観測できるのは「その時点で見えていた在庫」であり、観測開始(リードタイム90日)より前に売れてしまった分は含まれない。需要が強い日ほど配分率は実際より小さく見えるはずだ。

そこで本稿では、需要の性格が異なる2つのチェックイン日を独立に観測した。ひとつは2026年9月19日(土)——敬老の日を含む3連休の初日である。もうひとつは2026年10月6日(火)——祝日を含まない通常の平日だ。同じ施設群で比べると、平日側の中央値のほうがビジネスホテルで+10.7pt、旅館で+6.3pt、シティホテルで+5.7pt高く出た。全114グループのうち86.0%で平日側が上回っている。

差が最も大きいのはビジネスホテル(連休土曜20.7% → 平日31.4%)で、連休の需要圧が公開枠の見え方をどれだけ縮めるかが数値で確認できる。逆にリゾートホテルは+2.8ptと差が小さく、需要日による在庫の見え方の変化が相対的に穏やかだった。

本稿の主要数値は、この2日のうち施設ごとに大きいほうを採用した推定値である。したがって示している配分率は実際のオンライン販売枠割当の下限値であり、真の割当はこれ以上になる。順位や業態間の比較には十分な安定性があるが、絶対水準は控えめに出ている点に留意されたい。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

配分をどこまで動かせるか — 実務への含意

配分率は、施設が自分で決められる数少ない構造変数のひとつである。ここから読み取れる実務上の論点を3つ整理したい。

1. 自館の位置を業態・商圏の分布の中で確認する。 「うちはオンラインに出しすぎではないか」という感覚論は、同業態・同商圏の第1四分位〜第3四分位と並べれば検証できる。たとえばビジネスホテル全体の第1四分位は16.7%、第3四分位は70.0%で、この幅の中のどこにいるかで議論の出発点が変わる。第3四分位を超えている施設は、公開枠を厚くすることで得ている集客力が手数料負担と釣り合っているかを点検する価値がある。

2. 低配分率はそれ自体が資産になりうる。 シティホテルの中央値23.7%が示すのは、公開枠に頼らずに実績稼働率74.1%(2025年年間確定値/観光庁「宿泊旅行統計調査」)を積み上げている業態が現に存在するということである。法人契約や長期の取引関係は短期では作れないぶん、価格競争に巻き込まれにくい。すでに低い配分率で高い稼働を実現している施設は、その経路の維持・拡張に投資する合理性が高い。販売する客室数そのものを絞る運用と稼働の質の関係については、人手不足で『売る部屋を絞る』時代の稼働の質が別角度から検討している。

3. 高配分率の施設には、経路を増やす伸びしろがある。 小規模施設や地方の旅館で配分率が高いのは、営業リソースの制約という現実的な理由による。ここで重要なのは、公開枠を減らすことが目的ではないという点だ。公式サイト直販の予約導線を整え、リピーター向けの会員施策を持つことで、同じ稼働を維持したまま経路構成を分散させる余地が生まれる。配分率が50%以上の施設はビジネスホテルの40.7%を占めており、この層には直販強化のアップサイドが構造的に残っている。

加えて、配分率は季節・曜日で動かせる変数でもある。本稿の連休土曜と通常平日の比較が示すとおり、需要が強い日ほど公開枠は早く消える。需要日と閑散日で配分そのものを変える運用——強い日は直販・リピーター枠を厚く残し、弱い日は公開枠を広げる——は、多くの施設でまだ手がついていない領域である。

集計方法とデータの範囲

本稿の集計対象は、メトロエンジンリサーチが在庫推移を追跡している国内施設のうち、ビジネスホテル・旅館・リゾートホテル・シティホテル・デラックスホテルの5業態である。対象範囲(在庫追跡の候補となる施設)は34,112施設で、このうち2026年9月19日または10月6日のチェックイン日について実際に在庫データを取得できたのは14,397施設(42%)。さらに観測点が20日未満の施設と、総客室数マスターとの不整合により配分率が100%を超えた施設を除外し、最終的に12,941施設を分析した。

都道府県単位の集計だけでは母集団が上限で切れてしまうため、施設数の多い都道府県はすべて市区町村単位に分割して取得し直し、それでも切れる大都市中心部については配分率帯と並び順を変えた複数条件で取得して重複を除いた。たとえば東京都のビジネスホテルは対象範囲1,532施設・在庫データ取得862施設・分析781施設という内訳になっている。

都道府県×業態別 対象範囲・在庫データ取得・分析対象の内訳(2026年9月19日/10月6日観測)
都道府県業態対象範囲在庫データ取得分析対象取得率
京都府シティホテル87565564%
京都府ビジネスホテル76529226938%
京都府旅館46716814436%
北海道シティホテル109757369%
北海道ビジネスホテル90238435743%
北海道旅館86126224130%
大阪府シティホテル139929166%
大阪府ビジネスホテル96945541947%
大阪府旅館122292824%
愛知県ビジネスホテル53728326953%
愛知県旅館32311810037%
東京都シティホテル17010110059%
東京都ビジネスホテル1,53286278156%
東京都旅館194443223%
沖縄県ビジネスホテル48517917137%
神奈川県シティホテル57424274%
神奈川県ビジネスホテル43819818945%
神奈川県旅館62024620840%
福岡県シティホテル54363467%
福岡県ビジネスホテル48131429465%
福岡県旅館190646134%
静岡県シティホテル44303068%
静岡県ビジネスホテル46121219746%
静岡県旅館98840934741%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

在庫データを取得できるのは対象範囲の42%にとどまる。これはオンライン販売面に当該日程の掲載が出ていない施設、掲載はあっても観測点が確保できなかった施設を含むためで、休館や廃業を意味するものではない。旅館の取得率が36%と低いのは、小規模施設ほど特定日の掲載が断続的になりやすいことによる。

まとめ

全国12,941施設の在庫観測から算出した在庫配分率は、中央値39.2%。業態別では旅館41.7%が最も高く、シティホテル23.7%が最も低い。都道府県では三重県57.1%から青森県21.6%まで35.5ptの幅があり、市区町村まで降りると浜松市中央区(旧中区エリア)57.6%から長崎市17.2%まで40.4ptに広がる。

推定成約ADRとのクロスでは一貫した関係が見つからず、配分率は単価水準から決まる従属変数ではないことが確認された。一方で客室規模とは安定した関係があり、19室以下50.0%に対し200室以上29.8%と、規模が大きいほど公開枠は薄い。

完売のタイミングを追う分析が「需要をどう捌いたか」を語るのに対し、配分率は「そもそもどこで売ると決めたか」を語る。前者は日々の運用で動かす変数だが、後者は年単位の経営設計に属する。同じ在庫データが二つの時間軸の意思決定を映し出しているという点で、この指標にはまだ掘り下げる余地が残っている。

⚠ 将来日程のデータに関する注意:本記事が観測対象とした2026年9月19日・10月6日はいずれも調査時点で未到来の宿泊日です。示している在庫配分率は調査時点までに観測された公開在庫に基づく推定であり、チェックイン日までに在庫の追加放出やキャンセルによる戻りが発生すれば数値は変動します。また観測開始(宿泊日の90日前)より前に販売された分は含まれないため、実際のオンライン販売枠割当の下限値としてお読みください。推定成約ADRについても、上場ホテルREITの開示実績との照合で誤差中央値約7%の推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 国内宿泊施設の室ベース在庫推移(対象範囲34,112施設、在庫データ取得14,397施設、分析12,941施設・総客室1,110,175室、チェックイン日2026年9月19日/10月6日、観測はリードタイム90日以内)
  • メトロエンジンリサーチ — 都道府県×業態別 推定成約ADR(2026年3月〜7月の確定月平均)

■ 政府統計

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