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コンフォートホテルERA金沢東口107室、2027年1月開業—駅1km圏7,643室に+1.4%、新旧単価差1.56倍

投稿日 : 2026.10.29

石川県

投資・開発

コンフォートホテルERA金沢東口107室、2027年1月開業—駅1km圏7,643室に+1.4%、新旧単価差1.56倍

チョイスホテルズジャパンが2026年10月19日に公表した「コンフォートホテルERA金沢東口」は、石川県金沢市此花町8-8に地上10階・全107室で2027年1月25日に開業する新築ホテルで、予約は公表と同日に始まった。同じ地番では、グリーンズが運営していた「ホテルエコノ金沢駅前」(105室)が2024年5月に建物賃貸借契約の満了で閉館しており、本件は金沢駅東口の既存ホテル用地を建て替えて供給が戻る案件と位置づけられる。本稿では、金沢駅東口から半径1kmの客室ストック(稼働中49軒・7,643室)に対する107室の重み、金沢市の宿泊需要と推定成約ADRの季節性、用途地域と地価、競合のポジショニング、そして建築費ベースの簡易な収支試算を順に読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

本記事の客室ストックは、金沢駅東口(此花町)から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月22日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。

新規供給
107室
地上10階・2027年1月25日開業
駅東口1km圏の稼働中ストック
7,643室
49軒(2026年10月22日時点)
ストックに対する比率
+1.4%
107室 ÷ 7,643室
金沢市ビジネスホテルADR
¥9,000
2025年10月〜2026年9月の12か月平均(推定成約・税抜相当)
金沢市の宿泊客数(2025年)
432.8万人
外国人116.1万人・構成比26.8%
Key Takeaways
  • — 107室・2027年1月25日開業:駅東口1km圏の稼働中49軒・7,643室(2026年10月22日時点)に対して+1.4%。同じ地番で2024年5月に閉館した105室の建替えで、純増は2室にとどまる。
  • — 金沢市の宿泊客数は2025年に432.8万人で過去最多。外国人116.1万人(+38.2%)が構成比26.8%まで伸び、国内客は−6.7%と入れ替わりが進む。
  • — 金沢市ビジネスホテル区分の推定成約ADRは12か月平均¥9,000(2025年10月〜2026年9月)。2025年11月¥12,200と2026年2月¥7,200で1.7倍の季節差がある。
  • — 1km圏ビジネスホテル区分の単価は2018年以降開業¥12,400 vs 2017年以前¥8,000(1.56倍)。新築・中型・地域意匠の本件は新築層に入る条件を備える。
  • — 建築費約26.2億円(1室2,450万円)・稼働率80%(通年仮定)・GOP率40%の試算で、GOP利回り6%に必要なADRは¥12,600。新築層の中央値¥12,400とほぼ重なる。

計画の概要 — 此花町8-8・地上10階・107室、クイーンエコノミーが客室の46%

リリースによると、施設はJR金沢駅兼六園口(東口)から徒歩約4分の此花町8-8に建ち、客室は全107室・全室禁煙で、クイーンエコノミー49室、キングスタンダード32室、ツインスタンダード24室、ユニバーサル2室の4タイプで構成される。全室にソファを備え、2名で滞在しても手狭にならない設えとしている点が、既存の宿泊特化型ブランドに重ねた特徴として打ち出されている。館内にはひがし茶屋街の格子や金沢箔を意匠に取り込んだ「コンフォートライブラリーカフェ」を設け、朝食は加賀れんこんや能登牛のそぼろごはん、めった汁といった地元の献立を組み込む計画である。

「コンフォートホテルERA」はコンフォートホテルの派生ブランドで、ビジネス利用に加えてレジャー層を取り込む設計と説明されており、リリースは本件を「ERAとして2軒目の新築」と表記している。事業主や建物所有者はリリースに記載がなく、本稿でも特定しない。

表1 コンフォートホテルERA金沢東口の計画概要
項目内容
名称コンフォートホテルERA金沢東口
所在地石川県金沢市此花町8-8(JR金沢駅 兼六園口から徒歩約4分)
規模地上10階・全107室(全室禁煙・全室ソファ付き)
客室構成クイーンエコノミー49室/キングスタンダード32室/ツインスタンダード24室/ユニバーサル2室
館内施設コンフォートライブラリーカフェ(宿泊者無料)、朝食ビュッフェ(地元食材)
開業日・予約開始2027年1月25日開業、2026年10月19日予約開始
用途地域(建設地)近隣商業地域(容積率300%・建蔽率80%)

出典:チョイスホテルズジャパン プレスリリース(2026年10月19日)、国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

同じ地番の前史 — 105室のホテルエコノ金沢駅前が2024年5月に閉館、建替え契約は賃借開始2027年1月

此花町8-8は更地からの新規立地ではない。グリーンズ(6547)は2023年11月13日の適時開示で、同社が運営する「ホテルエコノ金沢駅前」(所在地 石川県金沢市此花町8-8、客室数105室、開業日2003年5月12日)を建物賃貸借契約の満了により2024年5月13日チェックアウト後に閉店すると公表し、あわせて「ホテルの建替えに関してオーナーと協議する旨の合意書」を締結したと記している。続く2024年4月12日の開示では、同社が「石川県金沢市の既存店舗の閉店後、建替えによりホテル出店を行う」として、地上10階建てのホテル用土地建物を対象とする定期建物賃貸借予約契約の締結を決議し、賃借開始日を「2027年1月(予定)」としている。相手先は相手先の要請により非公表である。

したがって金沢駅東口のこの区画では、105室が2024年5月にいったん市場から退出し、2027年1月に107室として戻る。ストックの純増は実質2室にとどまり、本件の意味は「客室数の積み増し」ではなく、築20年超の宿泊特化型を、ライブラリーカフェと地域意匠を備えた新築に置き換える「質の更新」にある。建替えに伴う解体費と、現行の容積率で床が減る場合の1室原価への影響については、ホテル建替えの解体費は㎡5.1万〜14.7万円 — 容積30%減で1室原価+12%が実額で試算している。この視点は、次節で見る駅1km圏のストック推移とあわせて読むと輪郭がはっきりする。

金沢駅東口1km圏の客室ストック — 稼働中49軒・7,643室、2023年の8,144室をピークに横ばい

メトロエンジンリサーチの集計では、金沢駅東口(此花町)から半径1km圏に掲載のある宿泊施設は67軒・9,570室で、このうち直近3か月に主要予約サイトで販売価格が確認できた稼働中の施設は49軒・7,643室だった。開業年ベースで累計したストックは2017年の37軒・5,283室から2021年に55軒・8,014室へ急増し、2023年の8,144室をピークに、2024年以降は7,819室で横ばいに入っている。ピークからの減少325室には、建替え前のホテルエコノ金沢駅前(105室)の閉館が含まれる。

この圏域に107室が加わっても、稼働中ストックに対する比率は+1.4%にとどまる。前節のとおり同じ地番から105室が抜けた後の復帰であるため、圏域全体の需給を動かす規模ではなく、むしろ2021年前後に集中した新築群と同じ「新しい側」の供給が1軒増える点に意味がある。

※データに関する注記
本グラフの開業年と2027年の本件以降の供給はOTA掲載確認ベースの集計です。OTA事前掲載は全体の約19%にとどまり、半数以上が開業後の掲載のため、直近以降の月・年は今後の掲載で軒数が増加する可能性があります。確認申請ベースの建築計画パイプライン(国土交通省「建築物動態統計調査」)と併せて参照することを推奨します。
金沢駅東口1km圏 客室ストックの推移(開業年ベース累計・2017〜2026年)と2027年の本件107室
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、N=67施設。2026年10月時点。開業年不明の3軒・464室は年次推移に含まない)
表2 金沢駅東口1km圏の区分別客室ストック(2026年10月22日時点)
区分掲載軒数掲載室数稼働中軒数稼働中室数
ビジネスホテル558,628416,762
シティホテル36683668
カプセルホテル11201120
旅館467119
ホステル242242
デラックスホテル132132
ゲストハウス11300
表3 金沢駅東口1km圏の規模階級別客室ストック(2026年10月22日時点)
規模階級掲載軒数掲載室数稼働中軒数稼働中室数
50室以下2044212262
51〜100室64524319
101〜200室213,036172,518
201室以上205,640164,544

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(2026年10月時点)

区分別に見ると、稼働中7,643室のうちビジネスホテル区分が6,762室(88%)を占め、シティホテル3軒・668室がこれに続く。規模階級では、本件が属する101〜200室クラスが稼働中17軒・2,518室、201室以上が16軒・4,544室で、両クラスで稼働中ストックの92%に達する。金沢駅周辺は、大型のチェーン系宿泊特化型が面で並ぶ市場であり、107室はこの中では中型に位置する。

金沢市の宿泊需要 — 2025年は432.8万人で過去最多、外国人が116.1万人(+38.2%)で構成比26.8%

金沢市が公表した「令和7年(2025年)金沢市観光調査結果報告書」によると、2025年の市内宿泊客数は4,328,157人で前年比+2.2%(+91,743人)と、2019年の3,431,493人を上回る過去最多だった。内訳は国内客3,166,920人(前年比−6.7%)に対し、外国人客1,161,237人(+38.2%)で、宿泊客に占める外国人の割合は26.8%に達した。施設別ではビジネスホテルが3,611,132人(構成比83.4%、前年比+2.5%)と需要の大半を受け止めており、都市ホテルは524,451人(−1.0%)だった。月別では11月が最多、10月が次ぎ、外国人は4月・5月と10月・11月に10万人を超える。

供給側の数字も同じ報告書にある。市内の宿泊施設は488軒・14,468室・収容30,533人で、前年比で施設数+39軒、客室数+65室だが、増加の大半は簡易宿所(+39軒)で、ビジネスホテルの客室数は11,361室(+99室)にとどまる。定員稼働率は全体で39.4%(2024年39.1%)、ビジネスホテル45.4%、都市ホテル55.7%で、11月が48.6%と最も高い。金沢市は2019年4月から宿泊税を課しており、現行の税率は1人1泊の宿泊料金5,000円以上2万円未満が200円、2万円以上が500円である(2024年10月から5,000円未満は免税)。

金沢市 宿泊客数の推移(国内客・外国人客、2017〜2025年)
出典:金沢市「令和7年(2025年)金沢市観光調査結果報告書」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

直近の需給は、メトロエンジンリサーチが集計する金沢市ビジネスホテルのOTA掲載在庫ベースの推定稼働率で確認できる。2026年6月の77.3%から7月79.3%、8月84.6%、9月87.5%と秋に向けて段階的に上がっており、報告書が示す「10月・11月がピーク」という季節性と整合する。

表4 金沢市ビジネスホテルの月別推定稼働率(2026年6〜9月)
宿泊月対象施設数対象客室数稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)
2026年6月547,97877.3%
2026年7月557,99379.3%
2026年8月537,96884.6%
2026年9月547,98587.5%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(金沢市・ビジネスホテル区分、対象施設数・客室数は表中のとおり)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります

予約の積み上がり方も季節で違う。2026年9月の宿泊(対象55施設・8,032室)は、宿泊日の45日前に稼働率59.1%、前日に87.5%まで積み上がった。一方、11月の宿泊(対象56施設・8,208室)は10月21日時点の観測で45日前に72.0%、直近のLT12で87.1%と、同じリードタイムの9月(LT12で75.7%)を上回る水準で進んでいる。11月は紅葉と金沢マラソン(10月下旬)後の観光需要が重なる月で、早い段階から埋まる構造がカーブに表れている。マラソン前泊そのものが45日前の時点で金沢市の稼働をどこまで押し上げるかは、関連記事「金沢マラソン2026の前泊、45日前に金沢市OCC91%(前週土曜比+10.6pt)— 横浜・神戸も同一LTで比較」が、2026年10月の大会前泊を横浜・神戸と同一リードタイムで比べている。

金沢市 ビジネスホテルのブッキングカーブ(稼働率 推定・LT45→LT1)— 2026年9月宿泊 vs 11月宿泊(観測途中)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(金沢市・ビジネスホテル区分、9月 対象55施設/客室8,032、11月 対象56施設/客室8,208、主要予約サイト掲載ベース。11月は2026年10月21日時点の観測途中)

金沢市ビジネスホテルのADR — 12か月平均¥9,000、11月のピークと1〜2月の底で1.7倍の振れ幅

金沢市のビジネスホテル区分の推定成約ADRは、2025年10月〜2026年9月の12か月平均で¥9,000(N=81〜84施設)、その前の12か月(¥8,800)に対して+2.1%だった。全カテゴリでは同期間¥10,400である。季節の振れ幅が大きく、2025年11月の¥12,200をピークに、2026年1月¥7,300、2月¥7,200が底となる。前年同月比で見ると、2026年5月は+8.5%と伸びた一方、6月−6.1%、8月−3.9%と夏場は前年を下回り、9月は+16.1%と再び上向いた。

調査時点の掲載水準に基づく推定では、2026年10月が¥13,700(前年同月比+28.4%)、11月が¥14,200(+16.6%)と秋の単価は前年を大きく上回る水準で推移している。ただし未来月の値はチェックイン日に近づくにつれて変動するため、確定値ではなく現時点の販売姿勢として読むべきである。本件の開業月である1月は年間の底にあたるが、金沢の冬は蟹を目当てにした国内観光と外国人客の比率上昇(2025年1月は外国人比率26.4%)が重なる時期で、開業直後に季節の低い水準から立ち上がり、春(4月¥9,300、5月¥10,500)で単価を取りに行く組み立てになる。

金沢市 ビジネスホテル 推定成約ADRの月次推移(年次重ね描き・2024〜2026年)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(金沢市・ビジネスホテル区分、各月N=79〜85施設。2026年10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定)

立地評価 — 建設地は近隣商業地域・容積率300%、駅前商業地の公示地価は3年で+23%

国土交通省 不動産情報ライブラリの用途地域データで建設地(此花町8-8)を照合すると、近隣商業地域(容積率300%・建蔽率80%)に属する。金沢駅の駅前広場に面した本町(東口側)や広岡(西口側)が商業地域で、此花町は東口駅前の商業地域の一枚外側にあたる。1km圏で稼働中の49軒の立地を同じデータで分類すると、42軒が商業地域、5軒が近隣商業地域で、残りは住居系・準工業地域に散らばる。本件は駅徒歩4分という距離を、容積率の低い分だけ地上10階・107室という中型の規模で受けた形といえる。

地価は上昇が続いている。建設地から約170mの公示地価地点「金沢市本町2丁目571番1外」(商業地)は2026年1月1日時点で1㎡あたり1,230,000円、前年比+9.8%で、2023年の1,000,000円から3年で+23.0%となった。約520mの「広岡1丁目112番外」(商業地)も830,000円・+9.9%と、駅前商業地は二桁近い上昇が2年続く。地価の上昇は取得型の投資には逆風だが、本件のように既存の土地所有者が建て替えて賃貸する枠組みでは、土地の含み益の上に新築ホテルを載せる構図になり、資産価値の更新という面でオーナー側の合理性がある。

金沢駅東口1km圏 稼働中ホテル分布(円:客室数、色:グレード)と用途地域
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(稼働中49軒)/国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域)
建設地の概要
所在地:石川県金沢市此花町8-8
アクセス:JR金沢駅 兼六園口(東口)徒歩約4分
用途地域:近隣商業地域/容積率300%・建蔽率80%
1km圏の稼働中施設:49軒・7,643室(商業地域42軒・近隣商業5軒)
公示地価(金沢市本町2丁目571番1外・商業地、建設地から約170m)
2024年
¥1,040,000/㎡
前年比+4.0%
2025年
¥1,120,000/㎡
前年比+7.7%
2026年
¥1,230,000/㎡
前年比+9.8%
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示、各年1月1日時点)
周辺の就業・居住
半径1km圏の事業所:2,964事業所・従業者35,284人(オフィス系比率20.1%)
半径1.5km圏の居住人口:44,955人(2020年)→ 2040年推計39,014人(-13.2%)
高齢比率(2025年):31.4%
出典:総務省・経済産業省 経済センサス(2021年)/国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)

需要の足元を周辺の就業と居住で補うと、半径1km圏には2,964事業所・従業者35,284人が集積し、オフィス系比率は20.1%である(総務省・経済産業省 経済センサス2021年、境界は国勢調査2020小地域)。県都の駅前として出張需要の受け皿がある一方で、金沢市の宿泊客数の8割超がビジネスホテルに泊まり、その4分の1が外国人であることを踏まえると、駅東口の需要は「平日のビジネス」と「週末・連休の観光」が重なる二層構造で、ERAがレジャー層を取り込む設計を採った背景と一致する。居住人口は半径1.5km圏で44,955人(2020年)、2040年推計で39,014人(-13.2%)と緩やかな減少が見込まれるが、宿泊需要は来訪者が主体であり、下の地図は駅周辺の住宅の分布を示す参考情報として掲げる。なお、ここでの人口は国勢調査に基づく居住人口であり、滞在・通過人口ではない。

建設地周辺 半径1.5km圏の居住人口メッシュ(250mメッシュ、2020年)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)

競合ポジショニング — 101〜200室クラスは稼働中17軒・中央値¥10,300、2018年以降開業の単価は既存の1.56倍

本件と同じ101〜200室クラスで、直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の推定成約ADRが6か月以上算出できた稼働中の施設は17軒で、12か月平均の中央値は¥10,300だった。上位にはSOKI KANAZAWA(130室・2022年開業)の¥22,100、ホテル金沢(165室)、ダイワロイネットホテル金沢MIYABI(177室・2019年)とダイワロイネットホテル金沢駅西口(188室・2020年)が並び、いずれも2018年以降の新築か、改装で客室の質を上げた施設である。

開業年で切ると構図はさらに明瞭になる。1km圏のビジネスホテル区分で、2018年以降に開業した19軒の12か月平均ADRの中央値は¥12,400、2017年以前に開業した22軒は¥8,000で、新しい側が1.56倍の単価を取っている。金沢駅周辺の宿泊市場は、大型のチェーン系宿泊特化型が¥8,000前後の価格帯で面を押さえ、その上に2018年以降の新築群が¥12,400前後の層を形成するという二層構造であり、新築・107室・地域意匠という本件の属性は、後者の層に入る条件をひととおり備えている。金沢市内で推定成約ADR¥15,000超の施設が限られ、上位帯に空白が残る県内の市町別構図は、石川県ホテル投資マップ2026|七尾+34%・小松+42%、金沢は上位帯に空白で整理している。

表5 101〜200室クラス稼働中17軒の推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月)
施設(101〜200室クラス・稼働中)客室数開業年推定成約ADR(12か月平均)
SOKI KANAZAWA1302022¥22,066
ホテル金沢1652008¥15,525
ダイワロイネットホテル金沢MIYABI1772019¥14,065
ダイワロイネットホテル金沢駅西口1882020¥13,780
ホテル・トリフィート金沢1612021¥12,637
ザ・スクエアホテル金沢1862018¥12,447
ホテルフォルツァ金沢1932019¥11,413
エービーホテル 金沢1262015¥10,492
ホテルリソルトリニティ金沢1242008¥10,309
ANAホリデイ・イン金沢スカイ1011973¥10,273
スマイルホテル金沢西口駅前1532021¥8,859
スーパーホテル Premier金沢駅東口1652020¥8,826
KOKO HOTEL 金沢駅前1212018¥8,811
ガーデンホテル金沢1531983¥7,136
金沢セントラルホテル 東館1021995¥6,759
金沢カプセルホテル武蔵町1201971¥6,478
金沢シティホテル1531982¥6,220

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(2025年10月〜2026年9月の月次推定成約ADRの単純平均、N=17施設。開業年はOTA掲載確認ベース)

客室規模 × 推定成約ADR ポジショニングマップ(金沢駅東口1km圏・稼働中46軒、12か月平均)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=46施設。グレードは掲載価格帯に基づく区分。青枠=新築層の価格帯、灰枠=大型チェーン系の密集帯、縦線=本件107室)

密集 大型チェーン系の面

¥8,000前後 × 150〜510室
2017年以前開業の宿泊特化型22軒。会員基盤と規模で平日需要を広く受ける層。

新築層 本件が入る価格帯

¥12,400前後 × 100〜200室
2018年以降開業19軒の中央値。地域意匠とレジャー対応で単価を取る層で、本件107室の着地点。

上位 ライフスタイル・フルサービス

¥22,000以上 × 90〜260室
SOKI KANAZAWA、ホテル日航金沢、ハイアット2館。本件の直接競合ではなく、価格の天井を示す参照点。

REIT保有物件から見た金沢の取引水準 — 駅圏2物件の取得価格は1室2,760万〜5,640万円

金沢駅東口1km圏には、インヴィンシブル投資法人(8963)が保有する「ホテルマイステイズプレミア金沢」(244室、2016年6月取得、取得価格13,761百万円)と「ホテルマイステイズ金沢キャッスル」(206室、2019年7月取得、取得価格5,682百万円)の2物件がある。取得価格を客室数で割ると、それぞれ1室あたり約5,640万円、約2,760万円となる。同法人が開示する2026年8月の物件別運営実績は、プレミア金沢が稼働率91.2%・ADR13,700円・RevPAR12,495円、金沢キャッスルが稼働率92.0%・ADR10,107円・RevPAR9,295円で、いずれも同法人の国内ホテル101物件の稼働率87.3%(2026年8月、前年同月87.8%)を上回る。同101物件のADRは17,887円(前年同月比−3.2%)、RevPARは15,608円(同−3.8%)だった。

1km圏の外では、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)が「雨庵 金沢」(47室、取得価格2,050百万円、1室あたり約4,360万円)を保有する。同法人はポートフォリオ一覧で物件別の取得日を公表していないため、取得年の比較は対象外とする。これらの数字は、次節の建築費ベースの試算(1室あたり約2,450万円)を市場の取引水準に照らす物差しになる。

表6 金沢のREIT保有ホテルの取得価格と2026年8月実績
物件保有REIT客室数取得価格1室あたり2026年8月 稼働率/ADR
ホテルマイステイズプレミア金沢インヴィンシブル投資法人244¥13,761百万円(2016年6月取得)約¥5,640万円91.2%/¥13,700
ホテルマイステイズ金沢キャッスルインヴィンシブル投資法人206¥5,682百万円(2019年7月取得)約¥2,760万円92.0%/¥10,107
雨庵 金沢(1km圏外)ジャパン・ホテル・リート投資法人47¥2,050百万円約¥4,360万円—

出典:各社REIT月次運営データ・ポートフォリオ一覧よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=3物件、保有関係マスター 2026年10月19日時点。REIT開示の成約ADRは消費税抜き表示。本記事の推定成約ADRも税抜相当の水準)

開発シナリオ試算 — 建築費約26億円・1室2,450万円、利回り6%に必要なADRは¥12,600

建物の規模は公表されていないため、宿泊特化型の標準的な水準として1室あたり延床32㎡を置くと、107室で延床約3,424㎡(約1,036坪)となる。建築費は国土交通省 建築着工統計に基づく2025年のホテル建築費(S造240.5万円/坪、RC造202.6万円/坪)を適用すると、S造で約24.9億円、RC造で約21.0億円である(第1段階・2025年実績ベース)。さらにTurner & Townsendが示す日本の建設インフレ見通し(2026年+5.3%)を1年分織り込むと、S造で約26.2億円、1室あたり約2,450万円になる(第2段階)。土地は既存所有者の建替え・賃貸借という枠組みのため、ここでは建物投資のみを分母とする。

収支は、稼働率80%(金沢市ビジネスホテルの推定稼働率が6〜9月に77〜88%、インヴィンシブル投資法人の金沢2物件が8月に91〜92%であることを踏まえた保守的な通年仮定)、GOP率40%(開業初年度の立ち上がりを見込んだ本稿の保守的な仮定)を置いた。ADRを9,000円・11,000円・13,000円の3水準で置くと、売上は2.81〜4.06億円、GOPは1.12〜1.62億円、インフレ織込み後の建築費に対するGOP利回りは4.3〜6.2%となる。逆算すると、利回り5%に必要なADRは¥10,500、6%なら¥12,600、7%なら¥14,700で、6%の水準は1km圏で2018年以降に開業したビジネスホテル区分の中央値¥12,400とほぼ重なる。新築層の単価が取れれば建物投資として成立する位置にあり、新築層の単価¥12,400前後を取れるかどうかが建物投資の回収期間を左右する、というのが試算の示す輪郭である。

表7 開発シナリオ試算(ADR3水準・稼働率80%通年仮定・GOP率40%)
シナリオ(107室・稼働率80%・GOP率40%)年間売上GOP建築費に対するGOP利回り
ADR ¥9,0002.81億円1.12億円4.5%
 同・建築費インフレ織込み後2.81億円1.12億円4.3%
ADR ¥11,0003.44億円1.37億円5.5%
 同・建築費インフレ織込み後3.44億円1.37億円5.2%
ADR ¥13,0004.06億円1.62億円6.5%
 同・建築費インフレ織込み後4.06億円1.62億円6.2%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。建築費は国土交通省 建築着工統計(2025年・S造240.5万円/坪、延床32㎡/室の仮定)、インフレ率はTurner & Townsend「Trends shaping Japan’s construction market in 2026」(2026年+5.3%)。薄色行はインフレ織込み後

表8 1軸感度分析(ベース:ADR¥11,000)
感度分析(ベース:ADR¥11,000・稼働率80%〈通年仮定〉・インフレ織込み後建築費)年間売上GOPGOP利回り
ベースケース3.44億円1.37億円5.2%
ADR −10%3.09億円1.24億円4.7%
OCC −5pt3.22億円1.29億円4.9%
両方2.90億円1.16億円4.4%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算

2軸感度 — ADR¥12,400なら稼働率85%で6.3%、利回りの到達点は単価の側で決まる

表8の1軸感度を、ADRと稼働率(いずれも通年の値)の2軸に広げたのが表9である。GOP率40%とインフレ織込み後の建築費約26.2億円は固定し、ADRと稼働率だけを動かした。GOP利回り6%を超えるのは、ADR¥12,400(1km圏で2018年以降に開業したビジネスホテル区分の中央値)なら通年稼働率85%以上、ADR¥14,000なら通年稼働率75%以上の組み合わせである。ADR¥11,000では通年稼働率90%でも5.9%にとどまり、金沢市ビジネスホテル区分の12か月平均に近いADR¥9,000では通年稼働率90%でも4.8%となる。稼働率を5pt積み増す効果は利回りで0.2〜0.5pt程度にとどまるため、6%の水準に届くかどうかは、稼働率よりも新築層の単価を取れるかどうかで決まる。

表9 2軸感度分析 — 建築費に対するGOP利回り(ADR×稼働率〈通年〉、GOP率40%・建築費約26.2億円)
ADR \ 稼働率(通年)70%75%80%85%90%
ADR ¥9,0003.8%4.0%4.3%4.6%4.8%
ADR ¥10,0004.2%4.5%4.8%5.1%5.4%
ADR ¥11,0004.6%4.9%5.2%5.6%5.9%
ADR ¥12,4005.2%5.5%5.9%6.3%6.6%
ADR ¥14,0005.8%6.3%6.7%7.1%7.5%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(107室・365日、GOP率40%、建築費は延床32㎡/室・S造240.5万円/坪に2026年の建設インフレ+5.3%を織り込んだ約26.2億円。太字=ベースケース、網掛け=6.0%以上)

※本試算は公表情報と業界ベンチマークに基づく簡易試算であり、延床面積・建築費・稼働率・GOP率はいずれも本稿の仮定である。実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。

まとめ — 供給の純増は2室、意味は「新築層の1軒増」と単価更新の機会

本件を数字で整理すると、まず供給面では、金沢駅東口1km圏の稼働中7,643室に対して107室は+1.4%にすぎず、しかも同じ地番から105室が2024年5月に退出した後の復帰であるため、圏域の需給を動かす規模ではない。次に需要面では、金沢市の宿泊客数が2025年に432.8万人と過去最多を更新し、外国人が26.8%まで比率を高めた一方で国内客は−6.7%と入れ替わりが進んでおり、ビジネスホテル区分の推定成約ADRは12か月平均¥9,000、11月¥12,200から1〜2月¥7,200までの振れ幅を持つ季節性の強い市場だった。

そのうえで競合構造を見ると、2017年以前開業の大型チェーン系が¥8,000前後の面を押さえ、2018年以降の新築群が¥12,400前後の層を形成する二層構造にあり、新築・107室・ライブラリーカフェと地域意匠という本件の属性は後者の層に入る条件を備えている。コンフォートホテルは全国で55施設・157,712件の宿泊者口コミ(直近24か月、ホテルバンク編集部調べ)で立地4.34・従業員4.30・清潔感4.22(5点満点)と、駅近の利便性と接客・清潔感で安定した評価を得てきたブランドであり、実際の宿泊者の声でも「受付の方もすごく丁寧な…」「お部屋も広く、お風呂は清潔な…」といった評価が目立つ。ERAはその基盤にレジャー層向けの滞在価値を重ねるブランドで、冬の底から春のピークへ単価を積み上げる開業スケジュールと合わせ、金沢駅東口で新築層の単価を取りにいく機会は十分にあるといえる。

運営・投資の観点で付け加えるなら、金沢の秋(10〜11月)はブッキングカーブが45日前から高い水準で立ち上がる月であり、2027年の最初の繁忙期に向けて、開業から9か月の間に会員基盤と口コミを積み上げておくことが単価の到達点を左右する。建築費の上昇は新規供給を抑える方向にも働くため、2027年以降に金沢駅1km圏で確認できる開業予定が本件のみという現状(OTA掲載確認ベース。掲載は開業の数か月前に始まるため、今後の掲載で増える可能性がある)は、新築層にとっての追い風として読める。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10月以降のADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

客室ストックはメトロエンジンリサーチの宿泊施設データ(金沢駅東口・此花町を中心とする半径1,000m、客室10室以上、レジャーホテルを除く。掲載67軒・9,570室、うち2026年8〜10月に販売価格を確認できた稼働中49軒・7,643室、2026年10月22日時点)。推定成約ADRは金沢市ビジネスホテル区分の月次値(各月N=79〜85施設)と、1km圏の施設別12か月平均(2025年10月〜2026年9月、6か月以上算出できた46軒)。推定稼働率はOTA掲載在庫ベース(金沢市ビジネスホテル区分、53〜56施設)。需要は金沢市「令和7年(2025年)金沢市観光調査結果報告書」、REIT物件はインヴィンシブル投資法人・ジャパン・ホテル・リート投資法人の開示(2026年8月実績・ポートフォリオ一覧)による。

■ 試算前提

延床32㎡/室×107室=約3,424㎡(約1,036坪)、建築費はS造240.5万円/坪(2025年)に建設インフレ+5.3%(2026年)を1年分織り込んだ約26.2億円(1室約2,450万円)。稼働率80%(通年仮定)、GOP率40%、365日販売。土地は既存所有者による建替え・賃貸借の枠組みのため含めず、建物投資のみを分母とする。GOP利回り=ADR×稼働率×107室×365日×GOP率÷建築費。表8・表9の感度は同じ前提でADRと稼働率だけを動かした。

■ 限界・留意点

推定成約ADR・推定稼働率はOTA公開情報からの推定で、各施設の実際の成約価格・稼働率とは異なる。2026年6月の推定稼働率は6月10日以降の21日分の集計。2026年10月以降のADRは調査時点の掲載水準で、確定値ではない。開業年ベースのストック推移はOTA掲載確認ベースで、開業年不明の3軒・464室を含まない。GOP利回りは賃料・運営委託報酬・固定資産税・保険・FF&E積立を控除する前の水準で、NOI利回りや投資判断の指標ではない。REIT物件の取得価格は土地を含む取引価格であり、建物のみを対象とする本稿の試算値(1室約2,450万円)とは前提が異なる。

■ プレスリリース・適時開示

■ 政府統計・公的データ

■ REIT・業界レポート

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 客室ストック(半径1km圏)、推定成約ADR、OTA掲載在庫ベースの推定稼働率、ブッキングカーブ、REIT保有関係マスター(2026年10月19日時点)
  • ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミの集計(コンフォートホテル55施設・157,712件・直近24か月)

出典: 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」

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