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過去のホテル料金を調べる4つの方法 — 都道府県別ADR一覧と2019年からの推移

投稿日 : 2026.09.26

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過去のホテル料金を調べる4つの方法 — 都道府県別ADR一覧と2019年からの推移

「去年の同じ時期、このエリアのホテルはいくらで売れていたのか」——予算策定や投資判断の場面で必ず必要になるこの問いに、即答できる単一のデータベースは存在しない。公的統計は稼働率と延べ宿泊者数を扱うが客室単価(ADR)は公表せず、上場ホテルREITの開示は精緻だが対象は自社保有物件に限られる。本稿では、過去のホテル料金・ADRを遡って調べる主要4手段の守備範囲・更新ラグ・定義差を整理し、あわせて47都道府県の推定成約ADR一覧(2026年8月・前年同月比)と、2019年から2026年までの長期推移を掲載する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価)=各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格(全プラン平均・税込)=素泊まりから食事付きまで全プランを含む公開価格の平均。ADRとは別指標です。
  • OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • — 単価を公表する公的統計は存在しない。観光庁「宿泊旅行統計調査」が扱うのは延べ宿泊者数と稼働率までで、過去の料金は別系統のソースから組み立てる必要がある。
  • — 4系統の使い分け。需要量の長期トレンドは観光庁統計、特定施設の単価実績は上場ホテルREITの月次開示、エリア×業態の横断比較はOTA掲載価格の集計が適している。
  • — 2026年8月の47都道府県は上昇14・下落33。下落幅最大は大阪府の−32.7%(¥13,452→¥9,058)だが、前年の万博反動であり2024年8月の¥9,433とはほぼ同水準である。
  • — 基準年の取り方で符号が反転する。東京都の2026年8月は2019年比+43.7%、前年同月比では−9.2%。沖縄県は¥14,652で全期間の最高値を更新した。
  • — 比較前に揃える4点。税込/税抜、1室あたり/1名あたり、母集団の変動、速報値/確定値。この4点を明示すれば推定値でも意思決定に耐える。

過去のホテル料金を調べる4つの手段

過去の宿泊単価を調べる方法は、大きく4系統に分かれる。それぞれ「誰が」「何を」「どの粒度で」集計しているかが異なるため、まず自分の問いがどの系統で答えられるのかを見極める必要がある。

過去のホテル料金を調べる4つの手段 — 主な公表項目・粒度・遡及範囲
手段主な公表項目粒度遡及範囲
観光庁「宿泊旅行統計調査」延べ宿泊者数・実宿泊者数・客室稼働率・定員稼働率・利用客室数・国籍別外国人延べ宿泊者数全国/47都道府県/施設タイプ6区分・月次2007年〜
自治体・DMOの独自統計観光入込客統計、宿泊税の課税実績、一部自治体は単価帯別の課税件数市区町村・観光圏単位/月次〜年次自治体により大きく異なる
上場ホテルREITの月次開示ADR・OCC・RevPAR・売上高(前年同月比つき)。多くは物件別内訳も開示個別施設/ポートフォリオ単位・月次各投資法人の上場時〜
OTA掲載価格の集計(当社データ)推定成約ADR・掲載価格(全プラン平均)・残室推移全国/都道府県/市区町村/施設・月次および日次2019年7月〜

出典:各公表資料よりホテルバンク編集部作成

無料/有料・速報性で使い分ける — 4手段の実務比較

実務で迷うのは、コストでも網羅性でもなく「いつの数字まで手に入るか」である。2026年9月19日時点の各ソースの到達点を確認しておきたい。

観光庁「宿泊旅行統計調査」は、2026年7月分の第1次速報が2026年8月31日に、2026年6月分の第2次速報が公表済みで、確定値は2025年(令和7年)年間値まで確定している。速報から確定値までは段階的に改定されるため、時系列を組む際は「速報値どうし」「確定値どうし」で揃えないと段差が生じる。なお、同調査はe-Statのデータベース形式API(statsDataId経由)では2016年分までしか整備されておらず、2017年以降はe-Statのファイル提供または観光庁サイトのExcelを取得して自前で整形する必要がある。統計API連携の自動化を設計する際に最初につまずくのがここである。

上場ホテルREITの月次開示は、単価の精度という一点では他を圧倒する。会計上の実績値であり、ADR・OCC・RevPARが前年同月比つきで揃うためだ。ラグも短く、たとえばインヴィンシブル投資法人は2026年7月分の運営状況を2026年8月25日に公表している(国内ホテル101物件ベース、OCC 86.3%、ADR ¥15,100、RevPAR ¥13,039、ADRは前年同月比−1.0%)。ただし対象はあくまで各投資法人の保有物件であり、エリア全体の水準を代表するものではない。対象エリアに保有物件がない投資法人の数値を持ち出しても意味がない点は注意したい。なお、REITが公表する稼働率と当社がOTA在庫ベースで推定する稼働率は分母の定義が異なり、2026年7月実績では最大10.1ポイント離れる。この差を月次着地の先読みにどう使うかは、REIT公表稼働率とOTA推定OCCの差をどう使うかで手順として整理している。

OTA掲載価格の集計は、エリア粒度と速報性を両立できる一方、成約実績そのものではなく推定値である。当社データでは、公開価格に業態別の補正係数を適用した推定成約ADRを、上場ホテルREITが開示する物件別実績と照合して精度を検証しており、2019年7月まで遡及できる。

4手段の実務比較 — 費用・単価データの有無・最新到達月(2026年9月19日時点)
手段費用単価データ最新到達月
(2026年9月19日時点)
向いている問い
観光庁統計無料なし2026年7月
(第1次速報)
需要量・稼働率の長期トレンド、インバウンド構成の変化
自治体・DMO統計無料一部のみ自治体差大市区町村・観光圏レベルの需要、宿泊税導入エリアの単価帯構成
REIT月次開示無料実績値2026年7月特定施設・特定ポートフォリオの単価実績、業態別ベンチマーク
OTA掲載価格の集計有料推定値2026年8月
(確定月)
エリア×業態の単価比較、競合セットの価格推移、将来月の掲載水準

出典:観光庁、各投資法人IR、メトロエンジンリサーチよりホテルバンク編集部作成

2019年からの長期推移 — 主要5エリアの8月ADR

過去の料金を調べる目的の多くは「どの時点と比べるか」の設定にある。コロナ前の2019年を基準に置くのか、需要が回復した2023年を基準に置くのかで、同じ2026年の数字がまったく違って見える。主要5エリアについて、季節要因を排除するため8月単月に固定して推定成約ADRを並べた。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(各年8月、対象施設数N=東京都1,004〜1,193/大阪府561〜653/京都府477〜605/北海道842〜960/沖縄県438〜513)

東京都の8月は2021年の¥6,574を底に、2026年は¥11,810まで回復している。2019年(¥8,216)との比較では+43.7%だが、直前の2025年(¥13,009)比では−9.2%であり、基準年の取り方で符号が反転する典型例といえる。大阪府はさらに極端で、2025年8月の¥13,452は万博開催年の特殊要因を含む水準であり、2026年8月は¥9,058と前年同月比−32.7%となった。これを「大阪の単価が崩れた」と読むのは早計で、2024年8月(¥9,433)と比べればほぼ同水準に戻ったという解釈のほうが実態に近い。

一方、沖縄県は2026年8月に¥14,652と全期間の最高値を更新し、2019年比で+27.5%、前年同月比でも+2.7%と、外部イベントに依存しない積み上げ型の上昇を示している。北海道も2026年8月¥12,230で2019年比+41.0%と堅調である。ただし、これはあくまで円建ての比較である。同じ5エリアを2019年7月と2026年7月の断面で外貨に換算すると、円建て+38.3%に対して米ドル建てでは−7.9%と符号が反転する(日本のホテル、ドル建てでは2019年より7.9%安い)。海外向けの価格説明では、この通貨軸の差も併せて確認しておきたい。なお、2020年3月から2022年4月までの期間は需要環境の特殊性から推定成約ADRが実勢より上振れしやすく、当該期間の数値を基準点に置くことは推奨しない。

季節性を見る — 京都府の月次ADR(3ヶ年重ね)

年単位の比較では見えないのが季節性である。同じエリアでも月によってADRは2倍近く動くため、「前月比」で語ると意味を失う。当社が前年同月比を原則とするのもこのためだ。京都府の月次推移を年別に重ねると、紅葉期の11月と桜期の3〜4月に明確な山が立つ構造が読み取れる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(京都府・推定成約ADR、対象施設数N=562〜607施設。2026年は確定月である8月まで)

2025年11月の¥24,800は、同年6月の¥12,437に対して約2.0倍である。この振れ幅を持つエリアで「前月比+12%」といった議論を行っても、需要の実態はほとんど説明できない。京都府の2026年は1〜5月がいずれも前年同月を上回った一方、6〜8月は前年同月比で下回っており、年内の評価を確定させるには紅葉期の実績を待つ必要がある。

47都道府県ADR一覧(2026年8月・前年同月比)

都道府県別の推定成約ADRを、2026年8月時点の水準が高い順に掲載する。ともに確定月(実績基準)どうしの比較であり、掲載価格ベースの参考値も併記した。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年8月 vs 2025年8月、推定成約ADRベース)

47都道府県別 推定成約ADR一覧(2026年8月・前年同月比)
#都道府県 ADR
2026年8月
ADR
2025年8月
前年同月比掲載価格
(全プラン平均)
N
1静岡県¥16,307¥16,574-1.6%¥36,282867
2大分県¥14,760¥15,387-4.1%¥34,567466
3沖縄県¥14,652¥14,272+2.7%¥31,626513
4神奈川県¥14,478¥15,648-7.5%¥36,032578
5兵庫県¥13,932¥14,348-2.9%¥38,860544
6長野県¥13,678¥13,721-0.3%¥31,140823
7山梨県¥13,610¥14,070-3.3%¥35,897298
8三重県¥13,354¥12,894+3.6%¥30,639355
9群馬県¥13,182¥12,946+1.8%¥32,511429
10京都府¥13,099¥14,305-8.4%¥28,678605
11奈良県¥12,982¥13,672-5.0%¥26,947132
12福井県¥12,700¥13,058-2.7%¥28,674220
13岐阜県¥12,627¥12,941-2.4%¥29,451380
14北海道¥12,230¥12,888-5.1%¥29,585960
15栃木県¥11,900¥12,470-4.6%¥29,711409
16東京都¥11,810¥13,009-9.2%¥21,7991,140
17和歌山県¥11,770¥11,998-1.9%¥27,520220
18青森県¥11,639¥10,606+9.7%¥23,487185
19佐賀県¥11,639¥12,900-9.8%¥29,954157
20石川県¥11,614¥12,730-8.8%¥29,549244
21新潟県¥11,320¥11,864-4.6%¥24,826419
22福岡県¥11,308¥11,548-2.1%¥23,711476
23島根県¥10,942¥11,407-4.1%¥30,446180
24熊本県¥10,834¥11,410-5.0%¥26,401404
25千葉県¥10,778¥11,241-4.1%¥37,452422
26山形県¥10,472¥10,373+1.0%¥27,344290
27広島県¥10,431¥9,993+4.4%¥22,693300
28宮城県¥10,421¥10,599-1.7%¥26,269298
29滋賀県¥10,192¥8,649+17.8%¥28,417157
30鳥取県¥10,078¥10,116-0.4%¥23,453150
31岡山県¥9,736¥9,624+1.2%¥23,295190
32高知県¥9,390¥9,109+3.1%¥22,502120
33秋田県¥9,330¥9,363-0.4%¥22,457173
34大阪府¥9,058¥13,452-32.7%¥15,476653
35香川県¥8,994¥10,627-15.4%¥25,036161
36富山県¥8,876¥8,464+4.9%¥25,482168
37山口県¥8,573¥8,765-2.2%¥21,025198
38愛知県¥8,555¥9,053-5.5%¥19,320505
39長崎県¥8,279¥8,538-3.0%¥20,161258
40岩手県¥8,266¥8,256+0.1%¥21,287253
41埼玉県¥7,984¥8,166-2.2%¥15,956213
42福島県¥7,968¥8,007-0.5%¥22,501444
43徳島県¥7,849¥7,334+7.0%¥18,356141
44愛媛県¥7,378¥7,086+4.1%¥19,640212
45茨城県¥7,042¥7,005+0.5%¥15,940315
46鹿児島県¥6,906¥7,357-6.1%¥17,918320
47宮崎県¥6,674¥6,897-3.2%¥16,608167

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(ADRは推定成約ADR・税抜相当、掲載価格は2名1室利用時の1室あたり料金・税込。Nは推定成約ADRの対象施設数、47都道府県合計N=17,112施設)

全国的には前年同月を下回る県が優勢で、47都道府県のうち上昇は14県、下落は33県だった。上昇幅の最大は滋賀県の+17.8%(¥8,649→¥10,192)、次いで青森県の+9.7%(¥10,606→¥11,639)である。下落幅では大阪府の−32.7%が突出しており、これは前年の万博開催に伴う需要の反動という構造要因で説明できる。大阪府を除くと下落は概ね数%の範囲に収まっており、市場全体の水準が崩れているわけではない。

水準そのものを見ると、静岡県(¥16,307)・大分県(¥14,760)・沖縄県(¥14,652)が上位に並ぶ。8月は温泉・リゾート業態の稼働が高まる月であり、旅館比率の高い県が上位に来る季節的な構造である。同じ一覧を11月や2月で取れば、順位は大きく入れ替わる点に留意されたい。

数字を並べる前に — 統計間の定義差で気をつける4点

複数ソースの数字を1枚の資料に並べる際、次の4点を確認しないと比較が成立しない。実務上、誤った結論のほとんどはここに起因する。

第一に、税の扱いである。上場ホテルREITが開示する成約ADRは消費税抜きで表示されるのが通例だが、OTA上の掲載価格は税込である。本記事の推定成約ADRはREIT開示実績と照合して算出しているため税抜相当だが、同じ記事内で掲載価格(税込)と並べる場合は約10%の定義差が乗る。

第二に、1室あたりか1名あたりかである。OTAの公開価格は2名1室利用時の1室あたり料金で表示されることが多い一方、旅館系のプランでは1名あたり表示も混在する。これを揃えずに平均を取ると、実態の2倍前後のブレが発生する。

第三に、母集団の変動である。これは時系列を扱う際に最も見落とされやすい。たとえば当社の掲載価格系列では、東京都の対象施設数が2025年8月の1,678施設から2026年8月には2,410施設へ増えている。対象が広がれば平均は動くため、母集団が変わった系列で前年同月比を計算すると、単価の変化と収録範囲の変化が混ざる。長期比較では、対象施設数が安定している系列を選ぶか、共通施設に限定して比較するのが定石である。

第四に、速報値と確定値の混在である。観光庁統計は第1次速報・第2次速報・確定値の三段階で改定される。速報値と確定値を同じ折れ線に並べると、実態のない段差が生まれる。同様に、当社データでも実績が確定した過去月と、現時点の掲載水準から推定した当月・将来月は基準が異なるため、両者をまたいだ増減率の計算は避けるべきである。本記事で2026年8月までを扱っているのも、この理由による。改定が実際にどの程度の幅で起きるかは、第1次速報と第2次速報の13ヶ月分を突き合わせた宿泊旅行統計調査とは|速報値は最大3.4%改定されるで実測しており、2025年の年間値は速報段階の前年比−0.8%が確定値では+0.3%へと符号ごと入れ替わっている。

まとめ

過去のホテル料金を調べる作業は、単一の情報源を探すことではなく、問いの粒度に合わせてソースを選び分けることに尽きる。エリアの需要量と稼働率の長期トレンドを見るなら観光庁統計、特定施設の単価実績をベンチマークするならREIT月次開示、エリア×業態の単価を横断比較するならOTA掲載価格の集計、という整理が実務的である。

そのうえで、税込・税抜、1室・1名、母集団の変動、速報・確定の4点を揃える手間を省かないことが、分析の再現性を担保する。逆にいえば、この4点さえ明示しておけば、推定値であっても意思決定に耐える材料になる。予算策定シーズンに向けて、自社の比較基準を一度棚卸ししておく価値は大きい。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADR・掲載価格はメトロエンジンリサーチの月次集計(2019年7月〜2026年8月、2026年8月時点で47都道府県合計N=17,112施設)。公的統計は観光庁「宿泊旅行統計調査」およびe-Stat、REITの実績値はインヴィンシブル投資法人の月次運営状況(2026年7月度・2026年8月25日公表)を参照した。

■ 試算前提

推定成約ADRは、各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した税抜相当の推定値。エリア単位の値は対象施設の中央値。前年同月比はいずれも確定月どうしの比較で、2026年8月を最新の確定月としている。掲載価格(全プラン平均・税込)はADRとは別指標として併記した。

■ 限界・留意点

本記事のADRは推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる(上場ホテルREITが開示する物件別実績91施設・直近3ヶ月間との照合で誤差中央値は約7%)。2020年3月から2022年4月までは需要環境の特殊性から実勢より上振れしやすく、基準点には適さない。対象施設数は年により変動するため、母集団が変わった系列の前年同月比には収録範囲の変化が混ざる点にも留意されたい。

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