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10月〜2月のマラソン12大会、スタート5km圏の客室を実測 — 金沢13,964室・湘南305室

投稿日 : 2026.09.25

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季節・イベント

10月〜2月のマラソン12大会、スタート5km圏の客室を実測 — 金沢13,964室・湘南305室

2026年10月から2027年2月にかけて、フルマラソンの定員が1万人を超える市民マラソンが全国で12大会開かれる。合計すると185,470人分の出走枠である。遠征ランナーの大半は前日夜に現地入りし、翌朝スタート地点へ向かう「前泊1泊型」で動く。では、そのスタート地点の周囲に客室はどれだけあるのか。本稿では各大会のスタート地点の緯度経度を起点に半径5kmの円を描き、その中でOTA等への掲載が確認できる宿泊施設の数と客室数を実測した。結果は、定員1,000人あたり客室数で大阪マラソン2027の3,182室から湘南国際マラソンの16室まで、約200倍の開きがあった。

本記事における指標の定義

  • 掲載価格:OTA等に公開されている全プランの平均価格(2名1室利用時・1室あたり料金・税込、素泊まりから食事付きまでを含む)。日別の分析はこの掲載価格を用い、エリア値は施設ごとの日別平均をとったうえでの中央値です。
  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 5km圏客室数:各大会のスタート地点を中心とする半径5km圏内に所在し、2026年6〜8月にOTA等への掲載が確認できた施設の客室数合計。客室数が確認できない施設は0室として扱っています。
  • 定員1,000人あたり客室数:5km圏客室数 ÷ フルマラソン定員 × 1,000。供給の密度を大会間で比べるための指標であり、その客室が大会当日に空いていることを示すものではありません。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(宿泊供給・掲載価格)/各大会公式サイト・自治体発表(開催日・定員・発着地)
Key Takeaways
  • — 2026年10月〜2027年2月にフル定員1万人超の大会が12。出走枠の合計は185,470人分。
  • — スタート5km圏の客室数は大阪90,428室から湘南305室まで。定員1,000人あたりに直すと3,182室と16室で、約200倍の開きがある。
  • — 供給が薄い会場ほど受け皿は同心円の外側にある。湘南国際は5km圏305室に対し20km圏で10,254室、青島太平洋は5km圏646室に対し15km圏で6,781室。
  • — 前夜の掲載価格の上振れは市場規模と逆相関。高岡+76.1%・奈良+49.0%・岡山+44.2%に対し、大阪+1.4%・京都+2.6%・福岡−5.6%。
  • — 福岡マラソン前夜(11月7日)の天神5km圏は11月の土曜で最も安い水準にある。13,000人の出走枠は40,364室の市場に吸収されて価格に現れない。

秋から冬へ、5か月で12大会・185,470人分の出走枠

まず対象とする12大会の与件を整理する。いずれもフルマラソンの定員が1万人以上で、開催日・定員・発着地はすべて各大会の公式サイトまたは主催自治体の発表に拠った。推定値や前年実績からの類推は用いていない。

特徴的なのは、発着地が必ずしも「県庁所在地の中心部」ではない点である。富山マラソン2026は高岡市役所前をスタートし、富山市の富岩運河環水公園でフィニッシュする。第21回湘南国際マラソンは西湘バイパス大磯西ICをスタートし、大磯プリンスホテルでフィニッシュする。福岡マラソン2026は天神をスタートし、糸島市志摩初でフィニッシュする。前泊需要を考えるうえで見るべき場所は、大会名に冠された都市の名前ではなく、早朝に数千人から数万人が集まるスタート地点である。

表1 2026年10月〜2027年2月に開催されるフル定員1万人超の市民マラソン
大会 開催日 フル定員 スタート フィニッシュ 前夜
金沢マラソン202610月25日(日)15,000人しいのき迎賓館前石川県西部緑地公園陸上競技場10/24(土)
第11回水戸黄門漫遊マラソン10月25日(日)10,000人南町2丁目交差点茨城県三の丸庁舎正門10/24(土)
富山マラソン202611月1日(日)13,000人高岡市役所前富岩運河環水公園(富山市)10/31(土)
おかやまマラソン202611月8日(日)15,000人岡山県総合グラウンド体育館前JFE晴れの国スタジアム11/7(土)
福岡マラソン202611月8日(日)13,000人天神(福岡市中央区)糸島市志摩初11/7(土)
神戸マラソン202611月15日(日)20,000人神戸市役所前神戸ハーバーランド(神戸ガス燈通り)11/14(土)
第21回湘南国際マラソン12月6日(日)19,500人西湘バイパス大磯西IC大磯プリンスホテル12/5(土)
奈良マラソン202612月13日(日)11,750人ロートフィールド奈良ロートフィールド奈良12/12(土)
青島太平洋マラソン202612月13日(日)10,800人宮崎県総合運動公園宮崎県総合運動公園12/12(土)
京都マラソン20272027年2月21日(日)16,000人たけびしスタジアム京都平安神宮前2/20(土)
熊本城マラソン20272027年2月21日(日)13,000人熊本市中心部(花畑広場周辺)熊本城 二の丸広場2/20(土)
大阪マラソン20272027年2月28日(日)28,420人大阪府庁前大阪城公園2/27(土)

定員はフルマラソン(大阪マラソンは一般ランナー募集人数)。出典:各大会公式サイト・主催自治体発表よりホテルバンク編集部作成

12大会の定員を単純に足すと185,470人になる。すべてのランナーが宿泊するわけではなく、地元参加者の比率は大会によって大きく異なるが、市民マラソンの出走枠は抽選や先着で早期に確定する性質があり、需要の母数そのものは開催の数か月前にはすでに固まっている。宿泊側から見れば、需要量が事前に判明している数少ないイベントということになる。

スタート5km圏の客室を実測する — 90,428室と305室

次に、各スタート地点の緯度経度を中心とする半径5kmの円内にある宿泊施設を抽出し、2026年6〜8月にOTA等への掲載が確認できた施設に限って客室数を合計した。掲載が確認できない施設を除いているのは、現在は販売実態のない施設を供給として数えないためである。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

横軸が対数目盛であることに注意されたい。線形目盛では下位の大会が見えなくなるほど差が開いている。最も密度が高いのは大阪マラソン2027で、定員1,000人あたり3,182室。最も薄いのは第21回湘南国際マラソンの16室で、その差は約200倍にのぼる。

表2 スタート地点半径5km圏の宿泊供給(2026年6〜8月に掲載が確認できた施設)
大会(スタート地点) フル定員 5km圏 施設数 5km圏 客室数 定員1,000人
あたり客室
10km圏 客室数
大阪マラソン2027(大阪府庁前)28,42080790,4283,182111,563
福岡マラソン2026(天神)13,00054040,3643,10542,407
京都マラソン2027(たけびしスタジアム京都)16,0001,33046,7702,92358,354
金沢マラソン2026(しいのき迎賓館前)15,00028313,96493114,623
熊本城マラソン2027(熊本市中心部)13,00011010,06677410,935
神戸マラソン2026(神戸市役所前)20,0009912,91864614,199
おかやまマラソン2026(岡山県総合グラウンド)15,000858,0875398,505
奈良マラソン2026(ロートフィールド奈良)11,7501325,0264285,378
第11回水戸黄門漫遊マラソン(南町2丁目)10,000483,9133915,092
富山マラソン2026(高岡市役所前)13,000222,1221632,713
青島太平洋マラソン2026(宮崎県総合運動公園)10,80033646601,722
第21回湘南国際マラソン(大磯西IC)19,5001305161,881

半径は各大会スタート地点からの直線距離。客室数はメトロエンジンリサーチが追跡する範囲で、2026年6〜8月に掲載が確認できた施設の合計/出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

上位3大会と下位3大会では、宿泊需要の意味合いがまったく違う。大阪マラソン2027のスタート地点である大阪府庁前から5km圏には807施設・90,428室があり、定員28,420人はこの市場にとって数パーセント規模の追加需要にすぎない。京都マラソン2027のスタート地点であるたけびしスタジアム京都は市街地の西端にあたるが、それでも5km圏に1,330施設・46,770室が集まる。

対照的なのが第21回湘南国際マラソンである。スタート地点の西湘バイパス大磯西IC(大磯町国府本郷付近)から5km圏で掲載が確認できた施設は1施設・305室のみだった。定員19,500人に対して、1室あたり64人という計算になる。もちろんランナーが1人1室を使うわけではなく、同伴者との2名利用も多い。それでも、この会場周辺だけで前泊需要を受け止める構造にはなっていないことは明らかである。

青島太平洋マラソン2026も同様で、宮崎県総合運動公園から5km圏は33施設・646室にとどまる。定員1,000人あたり60室である。富山マラソン2026のスタート地点である高岡市役所前も22施設・2,122室で、定員1,000人あたり163室と薄い。ただし富山マラソンは発着が17.5km離れており、フィニッシュ地点の富岩運河環水公園(富山市)から5km圏には、スタート5km圏と重複しない施設がさらに6,201室ある。発着が離れている大会では、宿泊の選択肢は「スタート寄り」と「フィニッシュ寄り」に分かれることになる。

円の大きさはスタート5km圏の客室数。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

受け皿は同心円の外側にある — 距離帯別に客室を積み上げる

それでは供給の薄い会場では前泊が成立しないのかというと、そうではない。半径を広げていくと、どの距離帯で客室が積み上がるかがはっきり見えてくる。供給が薄かった3会場について、5km・10km・15km・20kmの各圏内で掲載が確認できた客室数を累積で集計した。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

第21回湘南国際マラソンは5km圏305室、10km圏1,881室、15km圏3,861室と推移し、20km圏でようやく10,254室に達する。20km圏には平塚市・小田原市・茅ヶ崎市の市街地が入ってくるためだ。つまり湘南国際マラソンの前泊需要は、会場周辺ではなく相模湾沿いの都市群に分散して収まる構造になっている。

青島太平洋マラソン2026は5km圏646室から15km圏6,781室へと一気に増える。この間に入ってくるのが宮崎市中心部である。20km圏では7,635室で、伸びはそこで頭打ちになる。宮崎の前泊需要は市中心部が引き受け、会場周辺の青島エリアは少数の施設が担う形になる。

富山マラソン2026のスタート地点である高岡市役所前は、5km圏2,122室・10km圏2,713室・15km圏3,447室と緩やかに増え、20km圏で10,452室となる。20km圏に射水市や富山市西部が入るためである。北陸新幹線の新高岡駅から富山駅までは在来線と新幹線の双方でつながっており、宿泊地の選択肢は行政区域よりも広く取れる。

大会前夜の掲載価格 — 市場が小さいほど、値は大きく動く

ここまでは供給の話である。次に、その供給がすでに需要を織り込んでいるかどうかを掲載価格で確認する。各大会の前夜(いずれも土曜日)と、同じ月の通常土曜の掲載価格を、同一施設どうしで突き合わせた。基準日から除いたのは、いずれかの大会の前夜にあたる土曜、3連休初日にあたる土曜(10月10日・11月21日)、年末にあたる12月26日である。

なお本稿の執筆時点(2026年9月19日)で、最も近い金沢マラソン2026・第11回水戸黄門漫遊マラソンでも36日先にあたる。12大会すべてが30日以上先の日程であるため、在庫の消化状況や完売の判定は行わず、掲載価格の水準という「供給側がいま提示している条件」に分析を限定している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表3 大会前夜と同月の通常土曜の掲載価格(スタート5km圏・同一施設比較)
大会(前夜) N 前夜 同月の通常土曜 水準差 施設単位の中央値 5%超の上乗せ施設
富山マラソン2026(10/31・高岡)17¥23,900¥13,600+76.1%+36.2%88.2%
奈良マラソン2026(12/12)90¥53,100¥35,600+49.0%+15.9%62.2%
おかやまマラソン2026(11/7)54¥34,600¥24,000+44.2%+36.2%87.0%
神戸マラソン2026(11/14)76¥42,200¥32,900+28.1%+23.4%77.6%
熊本城マラソン2027(2/20)70¥34,400¥27,100+27.2%+14.3%75.7%
金沢マラソン2026(10/24)186¥51,100¥41,100+24.2%+18.9%64.5%
第11回水戸黄門漫遊マラソン(10/24)39¥25,200¥20,900+20.6%+16.1%71.8%
京都マラソン2027(2/20)450¥38,000¥37,000+2.6%±0.0%29.6%
大阪マラソン2027(2/27)481¥27,700¥27,300+1.4%±0.0%20.2%
青島太平洋マラソン2026(12/12)24¥40,500¥40,500±0.0%±0.0%37.5%
福岡マラソン2026(11/7)399¥56,100¥59,500−5.6%±0.0%19.5%

掲載価格(全プラン平均・2名1室・税込)の中央値。「水準差」はエリア全体の中央値どうしの比較、「施設単位の中央値」は同一施設の前夜/通常土曜の比率の中央値。第21回湘南国際マラソンはスタート5km圏に前夜・基準日の双方で価格が観測できた施設がなく集計対象外/出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表の並びは、そのままチャート1の並びの逆になっている。供給が薄い会場ほど前夜価格の上振れが大きく、供給が厚い会場ほど価格が動かない。富山マラソン2026の高岡は+76.1%、奈良マラソン2026は+49.0%、おかやまマラソン2026は+44.2%である。高岡は5km圏が22施設しかないため、17施設のうち15施設が5%超の上乗せをしているという足並みの揃い方になる。

一方で大阪マラソン2027は+1.4%、京都マラソン2027は+2.6%にとどまる。5%を超えて上乗せしている施設の比率も、大阪20.2%・京都29.6%と低い。ただし、この2大会は本稿執筆時点で5か月以上先にあたり、掲載そのものがまだ全施設には行き渡っていない。京都マラソン2027の前夜については、5km圏で掲載が確認できた1,330施設のうち前夜・基準日の双方に価格が出ている施設は6割に満たない。掲載価格が動いていないというより、価格を設計する局面にまだ入っていない施設が多いと読むほうが自然だろう。

その点で興味深いのが熊本城マラソン2027である。同じ2027年2月21日の開催でありながら、熊本市中心部は+27.2%、5%超の上乗せ施設が75.7%と、5か月前の時点ですでに価格に織り込まれている。5km圏110施設・10,066室という市場規模であれば、13,000人の出走枠は無視できない需要になる。

福岡マラソン前夜は、11月の土曜で最も安い

12大会のうち唯一、前夜の掲載価格が通常土曜を下回ったのが福岡マラソン2026である。天神5km圏の前夜(11月7日)の中央値は¥56,100で、基準とした11月28日の¥59,500に対して−5.6%だった。

これが基準日の取り方による偶然でないことを確かめるため、天神5km圏の11月の土曜4日分の掲載価格中央値を並べて確認した。11月7日が¥55,900、11月14日が¥63,900、11月21日が¥58,800、11月28日が¥59,500である(表3は前夜と基準日の双方で価格が観測できた施設に限った同一施設比較であるため、各日単独の中央値である本比較とは水準がわずかに異なる)。マラソン前夜にあたる11月7日は、11月の土曜のなかで最も低い水準にある。同じ検証を岡山県総合グラウンド5km圏で行うと、11月7日が¥34,600、11月14日が¥23,300、11月21日が¥24,700、11月28日が¥22,800となり、前夜が突出して高い。両者の対比は、基準日の選び方ではなく市場規模の違いが結果を決めていることを示している。

天神5km圏には540施設・40,364室がある。福岡マラソンのフル定員13,000人は、仮に全員が2名1室で泊まったとしても6,500室で、この市場の16%程度にあたる。しかも実際には福岡市民・福岡県民の比率が高く、前泊需要はさらに小さくなる。天神という市場にとって、この日の宿泊需要を決めているのはマラソン以外の要因だと考えるほうが整合的である。イベント規模ではなく、エリアの客室在庫の厚みが需給の出方を決めるという構図は、アリーナ商圏を扱ったBプレミア11アリーナ、2km圏の客室数を実測 — 最大103倍差と開幕週末の宿泊需給でも同じ形で観測されている。

「前泊1泊型」という需要の形と、受け入れ側の在庫設計

市民マラソンの遠征需要には、他のイベント需要とはっきり異なる性質が3つある。

第一に、滞在が1泊で完結しやすい。大会は日曜の朝8時台から9時台にスタートし、正午から午後にかけて終了する。多くのランナーは土曜に現地入りして日曜の午後に帰路につく。つまり「土曜1泊」という形に需要が集中する。連泊需要が生まれにくい代わりに、1泊の稼働は確実に立つ。

第二に、チェックアウトが極端に早い。スタート時刻の1〜2時間前には会場に入る必要があるため、宿を出るのは午前5時台から6時台になる。通常の朝食提供時間の前である。逆に言えば、この日の客室は早朝に空くため、清掃のリードタイムを長く取れる。

第三に、需要の総量が数か月前に確定している。今回の12大会はいずれも定員が公表され、多くは抽選または先着で出走者が確定している。他の観光需要と違い、上振れも下振れもしにくい。

出走枠を必要客室数に置き直す — 宿泊率3シナリオと2軸感度

需要の総量が事前に確定しているということは、必要客室数を前もって置いてみることができるということでもある。フル定員に遠征ランナーの宿泊率を掛け、1室あたりの宿泊人数で割れば、その大会が必要とする客室数のおおよその幅が出る。宿泊率は大会ごとの地元参加者比率で大きく変わるため、悲観30%・中位50%・楽観70%の3シナリオを置き、1室あたりは同伴者との2名利用と単独利用が混在する実態を踏まえて1.5人を中位とした。

表4 出走枠から置き直した必要客室数(宿泊率3シナリオ・1室あたり1.5人)
大会(スタート地点)フル定員悲観
宿泊率30%
中位
宿泊率50%
楽観
宿泊率70%
5km圏
客室数
中位の
5km圏比
中位の
20km圏比
大阪マラソン2027(大阪府庁前)28,4205,6849,47313,26390,42810.5%—
京都マラソン2027(たけびしスタジアム京都)16,0003,2005,3337,46746,77011.4%—
福岡マラソン2026(天神)13,0002,6004,3336,06740,36410.7%—
富山マラソン2026(高岡市役所前)13,0002,6004,3336,0672,122204%41.5%
青島太平洋マラソン2026(宮崎県総合運動公園)10,8002,1603,6005,040646557%47.2%
第21回湘南国際マラソン(大磯西IC)19,5003,9006,5009,1003052,131%63.4%

必要客室数=フル定員×宿泊率÷1室あたり1.5人。圏内客室数との比較は当該在庫がすべて空室である前提の単純比較で、他の需要は考慮していない/出典:メトロエンジンリサーチ、各大会公式サイト・主催自治体発表よりホテルバンク編集部作成

供給が厚い3大会では、中位シナリオでも必要客室数は5km圏在庫の10〜12%にとどまる。大阪マラソン2027は9,473室に対し5km圏に90,428室、福岡マラソン2026は4,333室に対し40,364室である。楽観シナリオまで引き上げても15〜16%で、前夜の掲載価格がほとんど動いていないこと(大阪+1.4%・京都+2.6%・福岡−5.6%)と整合する。

対照的に、第21回湘南国際マラソンは中位シナリオの6,500室が5km圏305室の21倍にあたる。青島太平洋マラソン2026は5.6倍、富山マラソン2026(高岡)は2.0倍である。ただし20km圏まで広げると、中位シナリオの必要客室数は湘南で圏内在庫の63.4%、青島で47.1%、高岡で41.5%に収まる。受け皿が外側にあるという先の観察は、必要量の側から見ても同じ結論になる。

もっとも、この比率は宿泊率と1室あたり人数という2つの前提に依存する。最も条件の厳しい湘南国際マラソンについて、両者を振って必要客室数がどの同心円で収まるかを確認した。

表5 第21回湘南国際マラソン(定員19,500人)の必要客室数 — 宿泊率×1室あたり人数の2軸感度
宿泊率\1室あたり人数1.0人1.5人2.0人
30%5,850室
20km圏で充足
3,900室
20km圏で充足
2,925室
15km圏で充足
40%7,800室
20km圏で充足
5,200室
20km圏で充足
3,900室
20km圏で充足
50%9,750室
20km圏で充足
6,500室
20km圏で充足
4,875室
20km圏で充足
60%11,700室
20km圏超で充足
7,800室
20km圏で充足
5,850室
20km圏で充足
70%13,650室
20km圏超で充足
9,100室
20km圏で充足
6,825室
20km圏で充足

セル内は必要客室数と、それを収容できる最小の同心円(スタート5km圏305室/10km圏1,881室/15km圏3,861室/20km圏10,254室)。いずれも在庫がすべて空室である前提の比較/出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

単独利用が中心(1室あたり1.0人)で宿泊率が60%を超えると、必要客室数は20km圏10,254室を上回る。逆に2名利用が中心(2.0人)であれば、宿泊率70%でも6,825室で20km圏に収まる。湘南国際マラソンの前泊需要が現実にどこまで広がるかは、同伴者を伴う参加が多いかどうかで決まるということになる。なお上表はいずれも在庫がすべて空室である前提の比較であり、12月第1土曜という時期に他の需要が先に入っている分は含んでいない。

この3点を踏まえると、受け入れ側の設計は次のように整理できる。供給が薄い会場(定員1,000人あたり客室数が200室を下回る湘南・青島・高岡)では、需要はすでに外側の都市へ流れる構造になっている。会場から10〜20km圏の施設にとっては、この日は「遠征客が届く範囲に入っている」日であり、早朝出発への対応(前日精算、早朝の鍵返却、会場方面への交通案内)が価値を持つ。湘南国際マラソンのスタート地点から20km圏の182施設を集計すると、前夜の掲載価格中央値は¥42,400で通常土曜の¥39,700に対して+6.7%、5%超の上乗せ施設は23.1%にとどまる。20km圏という広い母集団で見れば需要は希釈されるが、同時に、受け皿としての価格競争力はまだ残っているということでもある。

青島太平洋マラソン2026についても同じ集計を行うと、20km圏87施設で前夜¥34,400・通常土曜¥27,200の+26.5%、5%超の上乗せ施設は55.2%だった。5km圏では価格が動いていなかったのに対し、宮崎市中心部を含む20km圏では明確に動いている。会場に近い施設よりも、実際に泊まられている都市部の施設のほうが需要を織り込んでいるという逆転である。

供給が厚い会場(大阪・福岡・京都)では、大会単独で価格を動かす余地は小さい。この場合に効くのは価格ではなく、早朝スタートに合わせた運用の設計である。前夜の掲載価格が通常土曜と変わらないということは、遠征ランナーにとって選択肢が豊富にあるということでもあり、選ばれる理由をつくれる施設に機会が残っている。

イベント需要が行政区域を越えて広がる構図については、秋のマラソン4大会と宿泊需給2026 — 金沢・水戸・富山・神戸、前夜の価格はもう動いているで市区町村単位の価格波及を扱っている。本稿は同じ4大会を含むが、母集団を「スタート地点5km圏」に取り直しているため、市区町村単位で集計した数値とは一致しない。大規模大会が地域全体の客室在庫をどう使うかという視点では、WMG2027関西まで9か月 — 会場50市町村の客室16.5万室を棚卸しするも参考になる。

集計方法と留意点

大会の開催日・定員・発着地は、すべて各大会公式サイトまたは主催自治体の発表に拠っている。熊本城マラソン2027は公式サイトにフィニッシュ地点(熊本城 二の丸広場)の記載はあるがスタート地点の明示がないため、大会のメイン会場である熊本市中心部(花畑広場周辺)を起点として集計した。福岡マラソン2026のスタート地点は福岡県の公式観光サイトの記載(天神)に拠っている。

宿泊供給は、スタート地点の緯度経度を中心とする球面距離で半径を取り、その円内に所在する施設のうち2026年6〜8月にOTA等への掲載が確認できたものに限って客室数を合計している。メトロエンジンリサーチは国内約168,000施設を追跡し、うちOTA上で稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を分析対象としており、OTA未掲載の旅館・民宿・簡易宿所は含まれない。客室数が確認できない施設は0室として扱っているため、実際の客室数はここで示した数値をやや上回る可能性がある。

掲載価格は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)の全プラン平均で、前夜と基準日の双方で価格が観測できた施設のみを対象とする同一施設比較である。11月・12月は基準となる通常土曜が1日(11月28日・12月19日)しか確保できないため、上記のとおり11月については他の土曜との比較で妥当性を確認している。

本稿では稼働率(OCC)を用いていない。当社の推定OCCは販売在庫の消化状況に基づくため、チェックイン日まで1か月以上ある日程では在庫の投入が途中段階にあり、数値が需要を表さないためである。12大会はいずれも執筆時点から36日以上先にあたることから、完売の判定や在庫の進捗に関する断定は行っていない。

⚠ 将来日程の掲載価格に関する注意:本記事の掲載価格は調査時点(2026年9月中旬)でOTA等に公開されている販売価格の平均であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。とくに2027年2月開催の3大会は掲載が始まったばかりの施設も多く、今後のプラン追加や価格改定によって水準が変わる点にご留意ください。

まとめ

2026年10月から2027年2月までの5か月で、フル定員1万人超の市民マラソンが12大会、185,470人分の出走枠が動く。ただしその需要が向かう先は、大会の規模ではなくスタート地点周辺の客室在庫の厚みによって決まる。

定員1,000人あたり客室数で3,000室を超える大阪・福岡・京都では、大会需要は市場に吸収されて価格には現れない。福岡マラソン前夜が11月の土曜で最も安い水準にあるのは、その極端な例である。逆に200室を下回る湘南・青島・高岡では、需要は会場周辺で受け止めきれず、10〜20km圏の都市へ流れる。そして価格が実際に動いているのは、会場に近い少数の施設ではなく、需要が流れ着いた先の市場であることが青島太平洋マラソンの集計から読み取れた。

前泊1泊型という需要の形は、連泊の観光需要とは別の設計を必要とする。早朝チェックアウトへの対応、1泊完結を前提とした料金設計、そして自施設が「会場から何km圏か」という位置づけの把握である。定員が数か月前に確定している需要は、宿泊業にとって数少ない、計画できる需要でもある。

よくある質問(FAQ)

Q. 2026年10月から2027年2月に開かれるフル定員1万人超のマラソンは何大会ですか。

A. 12大会です。金沢マラソン2026・第11回水戸黄門漫遊マラソン(ともに10月25日)から大阪マラソン2027(2027年2月28日)までの5か月間に開催され、フルマラソンの定員を合計すると185,470人分になります。最大は大阪マラソン2027の28,420人、最小は第11回水戸黄門漫遊マラソンの10,000人です。

Q. スタート地点の周辺に客室が最も多い大会と最も少ない大会はどこですか。

A. スタート5km圏の客室数は大阪マラソン2027(大阪府庁前)の807施設・90,428室が最多、第21回湘南国際マラソン(西湘バイパス大磯西IC)の1施設・305室が最少です。フル定員1,000人あたりに直すと大阪3,182室に対し湘南16室で、約200倍の開きがあります。

Q. スタート地点周辺の客室が少ない大会では、遠征ランナーはどこに泊まることになりますか。

A. 同心円の外側です。第21回湘南国際マラソンは5km圏305室に対し10km圏1,881室・15km圏3,861室・20km圏10,254室と積み上がり、平塚市・小田原市・茅ヶ崎市の市街地が受け皿になります。青島太平洋マラソン2026は5km圏646室が15km圏で6,781室(宮崎市中心部)へ、富山マラソン2026の高岡市役所前は5km圏2,122室が20km圏で10,452室(射水市・富山市西部)へ広がります。

Q. 大会前夜の宿泊料金はどれくらい上がりますか。

A. 市場規模と逆相関します。スタート5km圏で同一施設どうしを比べると、富山マラソン2026(高岡)は前夜¥23,900に対し同月の通常土曜¥13,600で+76.1%、奈良マラソン2026は+49.0%、おかやまマラソン2026は+44.2%でした。一方で大阪マラソン2027は+1.4%、京都マラソン2027は+2.6%、福岡マラソン2026は−5.6%です。

Q. なぜ福岡マラソン2026の前夜は、11月の土曜のなかで最も安いのですか。

A. スタート地点である天神の5km圏に540施設・40,364室があり、フル定員13,000人がこの市場に吸収されるためです。天神5km圏の11月の土曜の掲載価格中央値は、11月7日(大会前夜)¥55,900・11月14日¥63,900・11月21日¥58,800・11月28日¥59,500で、前夜が最も低い水準にあります。同じ比較を岡山県総合グラウンド5km圏で行うと11月7日が¥34,600と突出して高く、基準日の選び方ではなく市場規模の違いが結果を決めていることがわかります。

Q. 12大会の出走枠は、客室数に直すとどれくらいの規模になりますか。

A. 宿泊率50%・1室あたり1.5人を中位に置くと、大阪マラソン2027で9,473室、京都マラソン2027で5,333室、第21回湘南国際マラソンで6,500室です。5km圏在庫に対する比率は大阪10.5%・京都11.4%に対し湘南は2,131%で、湘南は20km圏(10,254室)まで広げてはじめて63.4%に収まります。いずれも圏内の客室がすべて空いている前提の単純比較です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

大会の開催日・フル定員・発着地は各大会公式サイトまたは主催自治体の発表(下記一覧)。スタート地点半径5〜20km圏の施設数・客室数(2026年6〜8月に掲載が確認できた施設)、および大会前夜・同月の通常土曜の掲載価格はメトロエンジンリサーチ集計。同社は国内約168,000施設を追跡し、うちOTA等で稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を分析対象としている。

■ 試算前提

圏内客室数は各大会スタート地点の緯度経度を中心とする球面距離で半径を取り、円内に所在し2026年6〜8月に掲載が確認できた施設の客室数を合計した。「定員1,000人あたり客室数」は5km圏客室数÷フルマラソン定員×1,000。掲載価格は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)の全プラン平均で、大会前夜と同月の通常土曜の双方で価格が観測できた施設のみを対象とする同一施設比較(N=17〜481施設)。基準日からは他大会の前夜、3連休初日(10月10日・11月21日)、年末(12月26日)を除いた。表4・表5の必要客室数は「フル定員×宿泊率÷1室あたり人数」で、宿泊率は悲観30%・中位50%・楽観70%、1室あたり人数は中位1.5人を置いている。

■ 限界・留意点

必要客室数の試算は定員ベースの機械的な計算であり、地元参加者比率・同伴者数・実際の宿泊地選択は大会ごとに異なる。圏内客室数との比較は当該在庫がすべて空室である前提の単純比較で、同日の他の宿泊需要は考慮していない。OTA等への掲載が確認できない旅館・民宿・簡易宿所は客室数に含まれず、客室数が確認できない施設は0室として扱っているため、実際の客室数は本稿の数値をやや上回る可能性がある。掲載価格は調査時点(2026年9月中旬)の水準で、12大会はいずれも36日以上先の日程であるためチェックイン日までに変動する。本稿では在庫の消化状況に基づく推定稼働率(OCC)を用いておらず、完売の判定や在庫進捗に関する断定は行っていない。

■ 大会公式サイト・主催自治体発表(開催日・定員・発着地)

■ 宿泊供給・掲載価格

  • メトロエンジンリサーチ — 全国の宿泊施設情報(所在地・客室数)およびOTA等の掲載価格

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