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大学受験の前泊ホテル、京大2km圏2,203室・阪大豊中0室 — 主要10キャンパスの客室ストックと2027年1月の価格

投稿日 : 2026.08.22 更新日 : 2026.09.02

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エリア・施設分析

大学受験の前泊ホテル、京大2km圏2,203室・阪大豊中0室 — 主要10キャンパスの客室ストックと2027年1月の価格

2027年度(令和9年度)の大学入学共通テストは2027年1月16日(土)・17日(日)に実施される。受験生と保護者にとって、この2日間とその後の国公立2次試験期の宿泊先確保は毎年の実務課題である。一方で「キャンパスの近くに泊まる」という前提は、実はほとんどのキャンパスで成立しない。本稿では主要10キャンパスの半径2km/5km圏の客室ストックを実数で棚卸しし、あわせて1月の価格がどう動くかを前年実績と2027年1月の掲載水準の両面から検証する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • 掲載価格:OTA等に公開されている販売価格の全プラン平均(2名1室利用時・1室あたり料金・税込、素泊まり〜食事付きを含む)。日別の推移を見る箇所ではこちらを使用しています。ADRとは基準が異なるため、両者の数値を直接比較しないでください。
  • 客室ストック:メトロエンジンリサーチが追跡する施設のうち、営業中として登録されている施設の登録客室数を、キャンパス中心座標からの直線距離で集計したもの。OTA未掲載の簡易宿所・民宿等は含まれません。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • — 主要10キャンパスの半径2km圏 客室ストックは東大本郷16,314室から阪大豊中の0室まで開く。「キャンパスの近くに泊まる」が成立するのは一部のキャンパスだけである。
  • — 京大吉田は2km圏に139施設あるが客室は2,203室(1施設あたり15.8室)。50室以上は11施設・全体の8%にとどまり、施設数の多さとまとまった客室ストックは一致しない。
  • — 2026年1月の実績では、共通テスト週末に都道府県レベルの価格急騰は観測されない。動かしていたのは曜日で、金曜→土曜の段差は京都府で約¥6,000・大阪府で約¥6,300。
  • — 1月の位置づけは都市で逆転する。京都府はピーク(2025年11月)比-46.8%の谷だが、北海道は直近12ヶ月で5番目に高く、宮城県は2番目に高い。
  • — 2027年1月の掲載水準は前年同月比+4〜+32%。広島(+31.8%)・愛知(+28.9%)・北海道(+28.1%)の伸びが大きく、京都(+6.0%)・兵庫(+4.1%)は穏やか。

まず日程を確定させる — 2027年1月16日・17日

宿泊計画の起点は日程である。推測で動かず、一次情報で押さえておきたい。

2027年度(令和9年度)大学入学者選抜の主要日程(共通テスト・国立大 一般選抜)
区分期日出典
共通テスト 本試験2027年1月16日(土)・17日(日)大学入試センター
共通テスト 追・再試験2027年1月23日(土)・24日(日)大学入試センター
国立大 一般選抜 出願期間2027年1月25日〜2月3日国立大学協会 実施要領
前期日程 個別学力検査2027年2月25日を第1日として実施国立大学協会 実施要領
後期日程 個別学力検査2027年3月12日以降国立大学協会 実施要領

出典:大学入試センター、国立大学協会「国立大学の2027年度入学者選抜についての実施要領」(令和7年6月25日)

共通テストの前泊が発生する夜は1月15日(金)と16日(土)、追・再試験なら1月22日(金)と23日(土)である。前期日程は2月25日を第1日として各大学が実施日を設定するため、実際の試験日は学部によって2月25日〜27日あたりに分かれる。各大学の個別実施日は学生募集要項で確定するので、宿の押さえ方を決める前に志望校の要項で必ず確認してほしい。本稿では日程が全国共通で確定している共通テスト期(1月)を軸に据える。

キャンパス2km圏の客室ストック — 京大2,203室、阪大豊中0室・九大伊都85室

10キャンパスについて、中心座標から半径2kmと5kmの圏内にある営業中施設の数と登録客室数を集計した。結果は極端に割れる。

主要10キャンパスの半径2km/5km圏 客室ストック(営業中施設・N=10キャンパス)
キャンパス 2km 施設 2km 客室 うち50室以上 5km 施設 5km 客室 2km/5km
東京大学 本郷15416,31410566467,91324.0%
北海道大学 札幌599,2554617924,68637.5%
京都大学 吉田1392,203111,34728,2427.8%
大阪大学 吹田212011189113.5%
名古屋大学 東山1771232,4943.1%
東北大学 川内12508911,8890.2%
広島大学 東広島1230151,3911.7%
神戸大学 六甲台2220454,3250.5%
大阪大学 豊中000241,9060.0%
九州大学 伊都1851340620.9%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(キャンパス中心座標からの直線距離、営業中施設のみ、N=10キャンパス)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

まず目を引くのは、阪大豊中キャンパスの2km圏に営業中の宿泊施設が1軒も存在しないことである。九大伊都の2km圏もキャンパス南門至近のグローカルホテル糸島(85室)1施設のみで、5kmまで広げても3施設406室にとどまる。伊都キャンパスは2005年から段階的に移転が進んだ新設地であり、宿泊供給がまだ後から追いついていない。豊中キャンパスは千里丘陵の住宅地で、そもそも宿を建てる用途の土地がほとんどない。この2キャンパスは「近くに泊まる」という選択肢がきわめて限られる。

次に、京大吉田キャンパスの読み方には注意がいる。2km圏に139施設あるのは10キャンパス中2位だが、客室数は2,203室で1施設あたり15.8室しかない。50室以上の施設は11施設、全体の8%にとどまる。京都の左京区・東山区一帯は町家改装型の小規模宿が密集するエリアであり、施設の数はあってもまとまった客室ストックは薄い。3名や4名で1室を確保したい、直前に部屋を追加したい、といった受験特有の要件には向きにくい構成である。「京都大学 受験 ホテル」という検索の答えが結果的に京都駅周辺になるのは、この供給構造の帰結だ。

対照的なのが北大札幌キャンパスである。2km圏に9,255室、うち50室以上が46施設と、圏内だけで大規模施設が揃う。5km圏の客室のうち37.5%が2km圏に収まっており、10キャンパス中で最も「圏内完結度」が高い。キャンパス南端が札幌駅の北口側に接しているという立地がそのまま数字に出ている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

キャンパスと客室ストックの分布

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(円の大きさ=半径5km圏の客室数)

実際に泊まるのは最寄ターミナル — 駅の規模で受け皿を測る

2km圏に客室がないキャンパスでは、受験前泊の実需は最寄ターミナルの周辺に移る。ターミナルの規模は、そのまま朝の交通容量と宿泊供給の厚みを表す指標になる。国土交通省の駅別乗降客数(最新公表年次)で各キャンパスの最寄ターミナルを並べると次のようになる。

各キャンパス最寄ターミナルの1日あたり乗降客数(N=9駅)
キャンパス最寄ターミナル1日あたり乗降客数
大阪大学 豊中・吹田大阪駅(JR西日本)734,838人
名古屋大学 東山名古屋駅(JR東海)397,411人
京都大学 吉田京都駅(JR西日本)329,424人
九州大学 伊都博多駅(JR九州)239,124人
神戸大学 六甲台三ノ宮駅(JR西日本)231,870人
東北大学 川内仙台駅(JR東日本)178,924人
北海道大学 札幌札幌駅(JR北海道)168,030人
大阪大学 豊中(大学最寄)石橋阪大前駅(阪急電鉄)36,184人
広島大学 東広島西条駅(JR西日本)17,782人

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(国土数値情報「駅別乗降客数」)よりホテルバンク編集部作成

阪大豊中の最寄である石橋阪大前駅は1日36,184人と、大阪駅の20分の1の規模である。駅周辺に宿泊供給が積み上がる規模ではない。実際、豊中キャンパス5km圏の1,906室も、その多くは新大阪・江坂方面に散っている。豊中キャンパス受験の前泊先は、梅田・新大阪といった大阪市内ターミナルから当日移動するのが現実解になる。

広島大東広島キャンパスの西条駅は17,782人とさらに小さいが、キャンパス5km圏には15施設1,391室が存在する。地方大学都市では、ターミナルの規模が小さくても大学と工業団地の需要で一定のビジネスホテルストックが形成されているケースがある。単純に駅の大きさだけで判断せず、市域単位の供給を見たほうがよい。乗降客数に対して客室ストックがどれだけ厚いかという視点は、主要43駅の「乗降客あたり客室ストック」で全国のターミナルを横並びに整理している。

1月の価格は「試験日」ではなく「曜日」で動く — 前年同月の日別実績

次に価格である。まず前年の実績、すなわち2026年1月(令和8年度共通テストは1月17日・18日に実施)の日別掲載価格を見る。日別の細かい動きは月次集計では見えないため、前年同月の実績カーブを代替根拠として用いる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(掲載価格・全プラン平均・2名1室・税込、京都府N=1,445〜1,582施設/北海道N=1,219〜1,379/大阪府N=831〜873/宮城県N=365〜411)

2026年の共通テスト前泊にあたる1月16日(金)・17日(土)を、同じ月の他の金曜・土曜と比べると次のようになる。

2026年1月 共通テスト週末と同月の同曜日平均の比較(掲載価格・全プラン平均・2名1室・税込)
都道府県1/16(金)1月の金曜平均差1/17(土)1月の土曜平均差
大阪府¥26,300¥25,000+5.3%¥31,800¥31,300+1.5%
北海道¥34,700¥33,800+2.5%¥39,100¥38,000+2.7%
京都府¥35,500¥35,500±0.0%¥40,900¥41,500-1.4%
宮城県¥24,500¥25,000-2.0%¥30,000¥32,400-7.5%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(掲載価格・全プラン平均・2名1室・税込、2026年1月実績。金曜=1/9・16・23・30、土曜=1/10・17・24・31の平均)

共通テストの週末に、都道府県レベルで価格が跳ね上がるという事実は観測されない。大阪府の金曜が+5.3%とわずかに高い程度で、京都府はほぼ横ばい、宮城県はむしろ他の週末より安い。2026年1月に価格を動かしていた主因は曜日である。金曜から土曜にかけて京都府で約¥6,000、北海道で約¥4,200、大阪府で約¥6,300の段差があり、この曜日効果のほうが試験日要因よりはるかに大きい。

これは受験生側にとっては安心材料である。「共通テスト当日は宿が取れない・高い」という一般的なイメージほど、都市全体の価格水準は動いていない。ただし都道府県平均が動かないことと、志望校の徒歩圏の特定施設が埋まらないことは別の話である。前述のとおり京大吉田や阪大豊中のような供給の薄いキャンパスでは、母数が小さいぶん個別施設は早く埋まる。エリアの平均価格を見て安心せず、狙う立地を先に決めて押さえるという順序が実務的だ。

1月が緩む都市と、緩まない都市 — 京都は11月比マイナス46.8%

もう一段引いて、1月という月が年間のどこに位置するかを見る。京都府の推定成約ADRを年ごとに重ねると、1月が明確な谷であることがわかる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・税抜相当、京都府)

2026年1月の京都府の推定成約ADRは¥13,200で、直近12ヶ月(2025年8月〜2026年7月)のうち下から4番目、ピークの2025年11月(¥24,800)と比べると46.8%低い。紅葉期の半分強の水準である。同じ構図は東京都(ピーク比-26.0%)、大阪府(同-30.9%)でも見られる。観光需要が主導する都市では、1月は年間で最も価格が緩む時期のひとつだ。

一方、北海道は逆の形をしている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・税抜相当、北海道)

北海道の2026年1月は¥10,300で、直近12ヶ月(2025年8月〜2026年7月)中5番目に高い。冬季の観光需要が1月〜2月に厚く乗るため、1月は谷ではない。宮城県も2026年1月は直近12ヶ月で2番目に高い水準(¥10,400)で、最高値の2025年8月(¥10,600)に迫る。北大受験の前泊は、価格面では「安い時期に当たる」わけではないという前提で組み立てたほうがよい。

2027年1月の掲載水準 — 現時点で前年同月比+4〜+32%

ここまでは実績である。では2027年1月はどうか。調査時点でOTAに公開されている販売価格から推定した2027年1月の水準を、2026年1月の実績と並べる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADR・税抜相当。2026年1月は実績ベース、2027年1月は調査時点の掲載に基づく推定。集計施設数は2026年1月N=285〜1,111施設、2027年1月N=203〜924施設)

主要9都道府県の1月 推定成約ADR 前年同月比(2026年1月実績/2027年1月推定)
都道府県(主なキャンパス)2026年1月 実績2027年1月 推定前年同月比
広島県(広島大 東広島)¥7,900¥10,400+31.8%
愛知県(名古屋大 東山)¥8,600¥11,100+28.9%
北海道(北海道大 札幌)¥10,300¥13,200+28.1%
大阪府(大阪大 豊中・吹田)¥9,500¥10,800+13.9%
福岡県(九州大 伊都)¥12,000¥13,300+10.4%
東京都(東京大 本郷)¥13,200¥14,200+7.6%
京都府(京都大 吉田)¥13,200¥14,000+6.0%
宮城県(東北大 川内)¥10,400¥11,000+5.8%
兵庫県(神戸大 六甲台)¥14,600¥15,200+4.1%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

伸び幅が大きいのは広島県、愛知県、北海道である。いずれも2026年1月の水準が相対的に低かった県で、全国的な単価上昇局面のなかで下から追いついてきている構図といえる。逆に京都府(+6.0%)、兵庫県(+4.1%)は伸びが穏やかで、1月に関しては価格の落ち着きが続いている。

キャンパス最寄の市区町村レベルでも見ておく。豊中市の2027年1月は¥9,500(N=3施設)、吹田市は¥8,400(N=8施設)、東広島市は¥9,700(N=9施設)で、いずれも府県平均より低い。ただし集計対象施設が1桁と少ないため、あくまで参考値である。郊外キャンパス周辺の少数施設は、都心ターミナルより単価が低い水準で推移している傾向は読み取れる。

口コミに「受験・遠征」が現れる場所は、キャンパスの周りではない

宿泊者の口コミを自然言語処理で分類し、「受験・遠征」に該当する言及を集計すると、興味深い偏りが出る。この分類は入学試験と競技大会・コンクール遠征の両方を拾う設計だが、上位に並ぶのは大学ではなく競技会場の周辺施設である。

口コミ「受験・遠征」の言及数上位施設(直近24ヶ月・最低言及5件以上・N=6都道府県)
都道府県言及数上位の施設言及件数全口コミ中の比率
東京都東京ドームホテル121件3.23%
兵庫県ホテルヒューイット甲子園63件3.33%
大阪府ホテルニューオータニ大阪61件2.01%
福岡県ヒルトン福岡シーホーク58件3.22%
北海道ホテルエミシア札幌15件0.88%
京都府京都ブライトンホテル5件0.24%

出典:ホテルバンク編集部調べ(宿泊者口コミのNLP解析、直近24ヶ月、最低言及5件以上・positive判定分)

東京は東京ドーム周辺、兵庫は甲子園周辺、福岡はドーム周辺と、いずれも競技会場に隣接する施設が上位を占める。京都府では条件を満たす施設が1件しか抽出されず、言及比率も0.24%と極端に低い。これは京都に受験前泊需要がないという意味ではなく、受験の前泊は口コミに「受験で利用」と書き残されにくいということだと考えられる。1泊のみ、目的を書かずに評価だけ残す、といった行動特性が背景にありそうだ。

運営側の示唆としては、口コミデータから受験需要を検出することは難しいという点が重要である。受験期の需要は口コミには表れにくいので、予約時期・滞在日数・人数構成といった予約データ側から捉えるほうが確実だ。競技大会の遠征需要が口コミで可視化されるのとは、性質が異なる。会場近接立地そのものの価値については、会場近接という立地価値 — イベント・MICE需要で評価される宿を全国・エリア別に集計で全国のエリア別に整理している。

業態別に、受験期に効く条件は何か

供給構造と価格の両面を踏まえると、受験期に選ばれる条件は業態によって異なる。ここは運営側にとっての収益機会でもある。

業態別に見た受験期の訴求条件(編集部整理・定性)
業態受験期に効く条件該当しやすいキャンパス圏
ターミナル型ビジネスホテル早朝の朝食提供またはテイクアウト対応、駅までの徒歩分数の明示、試験会場方面の始発情報の掲示京都駅、梅田・新大阪、博多、名古屋
キャンパス近接の中規模ホテル静音性(上下階の動線・空調音)、机まわりの照明と広さ、遅めのチェックアウト札幌駅北口、本郷・水道橋、東広島市内
シティホテル保護者同伴を想定したトリプル・ツイン+エキストラ、館内で朝食が完結する動線三ノ宮、仙台駅、札幌駅
小規模宿・町家型1棟・1室あたりの定員を明示、複数人での1室利用の可否を先出し京都大 吉田周辺

特に京都のように小規模施設が密集するエリアでは、「何名まで1室で泊まれるか」が受験家族にとっての第一のフィルターになる。2km圏139施設のうち50室以上が11施設しかないという構造は、裏を返せば少人数対応の宿が多いということでもある。定員条件を先に明示しておくことは、そのまま予約獲得のアップサイドにつながる。

札幌のようにキャンパス圏内に大規模施設が揃うエリアでは、静音性と朝の動線が差別化点になる。北海道の1月は年間でも価格が緩まない時期であり、単価を維持したまま受験家族に選ばれる余地がある。北海道内では、大型イベント開催時期に合わせた受験生向けプランを設計した事例も報じられている(参考:リソルホテルズの札幌2施設『受験生応援プラン』販売)。

なお、季節をまたいだ需要の分散という論点は、修学旅行の時期分散圧力とホテル価格高騰のクロスポイントや、平日需要を生む学術集会493件が生む平日需要でも扱っている。都市内の単価差構造については47都道府県の市区町村ADR格差ランキング2026を参照されたい。

まとめ

主要10キャンパスの棚卸しから見えたのは、「キャンパスの近くに泊まる」が成立するのは限られたキャンパスだけだという事実である。北大札幌(2km圏9,255室)と東大本郷(同16,314室)は圏内で完結できるが、阪大豊中は2km圏の客室がゼロ、九大伊都も1施設85室のみ、東北大川内・神戸大六甲台・広島大東広島は数十室規模にとどまる。京大吉田は施設数こそ139あるが、50室以上は11施設しかなく、まとまった客室ストックという意味では薄い。

価格面では、2026年1月の実績を見る限り共通テスト週末に都道府県レベルの急騰は起きていない。価格を動かしているのは曜日である。ただし京都・東京・大阪では1月そのものが年間の谷で、北海道・宮城では逆に1月が高い側にあるという都市差がある。2027年1月の掲載水準は前年同月比で+4〜+32%とばらつきがあり、広島・愛知・北海道の伸びが目立つ。

受験生と保護者にとっての実務的な結論は単純だ。志望校のキャンパスが「圏内完結型」か「ターミナル型」かをまず判別し、後者なら最寄ターミナル側で早めに動く。エリア平均価格が落ち着いていても、供給の薄いキャンパス圏では個別施設の取りやすさは別問題である。運営側にとっては、受験期は口コミに現れにくい静かな需要層であり、定員条件・朝の動線・静音性といった基本条件を先出しすることで取りにいける余地が残っている。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2027年1月の数値は、調査時点(2026年8月)でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。2027年1月は集計対象施設数が2026年1月より2〜3割少なく、今後の掲載追加により水準・構成ともに変わる可能性があります。また、各大学の個別学力検査の実施日は学生募集要項で確定するため、宿泊予約の前に必ず志望校の公式発表をご確認ください。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 試験日程(一次情報)

■ データソース

客室ストックはメトロエンジンリサーチ&コンサルティングが営業中として把握する施設の登録客室数を、各キャンパスの中心座標からの直線距離で半径2km/5kmごとに合算した(N=10キャンパス、調査時点2026年8月)。日別の掲載価格は2026年1月5日〜31日の全プラン平均(2名1室・1室あたり・税込)で、集計施設数は京都府N=1,445〜1,582・北海道N=1,219〜1,379・大阪府N=831〜873・宮城県N=365〜411(日別)。推定成約ADRは都道府県・市区町村を単位とする対象施設の中央値の月次系列(2024年1月〜2027年1月、2026年1月N=285〜1,111施設/2027年1月N=203〜924施設)。乗降客数は国土交通省「国土数値情報(駅別乗降客数)」の最新公表年次の1日あたり乗降合計。口コミは宿泊者投稿のNLP分類(直近24ヶ月・最低言及5件以上)。

■ 試算前提

半径2km/5kmは駅・キャンパスからの徒歩および短距離移動の実用圏を近似する固定半径で、行政界や実際の交通所要時間は考慮していない。「2km/5km」列は5km圏客室数に対する2km圏客室数の比率で、圏内完結度の指標として用いた。曜日比較は2026年1月の金曜(1/9・16・23・30)と土曜(1/10・17・24・31)それぞれの単純平均に対する当日値の乖離率で、同月内の同曜日のみを比較対象とする。2027年1月の水準は調査時点でOTAに公開されている販売価格から推定した値であり、実績ではない。推定成約ADRは各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室・1室あたり・税込)に業態別の補正係数を適用した推定値で、上場ホテルREITの物件別開示実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)による誤差中央値は約7%。

■ 限界・留意点

(1) 客室ストックはOTA掲載が確認できる営業中施設に限られ、OTA未掲載の簡易宿所・民宿・大学関連の宿泊施設は含まれない。地方キャンパス圏では実在の受け皿を過小に見積もる可能性がある。(2) 直線距離による集計のため、川・丘陵・鉄道で分断された立地では実際の移動時間と一致しない。(3) 掲載価格と推定成約ADRは基準が異なる(前者は全プラン平均・税込、後者は補正後の推定成約単価・税抜相当)ため、両者の数値を直接比較していない。(4) 都道府県・市区町村単位の平均が動かないことは、特定施設の空室が確保できることを意味しない。豊中市N=3・吹田市N=8・東広島市N=9のように集計施設が1桁の市区町村の値は参考値である。(5) 2027年1月は集計対象施設数が2026年1月より2〜3割少なく、今後の掲載追加により水準・構成ともに変動する。(6) 口コミの「受験・遠征」分類は入学試験と競技大会・コンクール遠征の両方を含み、両者を分離していない。(7) 各大学の個別学力検査の実施日は学生募集要項で確定するため、本稿の日程は全国共通で確定している共通テスト期を軸としている。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 客室ストック集計(営業中施設、キャンパス中心座標からの直線距離)、掲載価格の日別集計(2026年1月)、推定成約ADRの月次集計(2024年1月〜2027年1月)
  • ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミのNLP解析(直近24ヶ月)

■ 政府統計・公的データ

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