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ホテル→住宅・寮の転用、分岐点ADRは¥3,800〜4,600 — 出口の広さで測る担保価値

投稿日 : 2026.09.03

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投資・開発

ホテル→住宅・寮の転用、分岐点ADRは¥3,800〜4,600 — 出口の広さで測る担保価値

ホテルという資産の値段は、宿泊事業として生む収益で決まる。ではその宿泊需要が想定どおりに続かなかったとき、その建物はいくらで、誰に売れるのか。オフィスや商業施設をホテルに変える「入口」の議論は蓄積されてきたが、逆向きの「出口」——ホテルを共同住宅や寄宿舎(社員寮・学生寮)に戻せるかどうかは、担保評価と売却時の入札参加者の幅を左右するにもかかわらず、定量的に整理されることが少ない。

本稿では、建築基準法上どこまでが可能かという制度の階段を確認したうえで、大阪市・福岡市・札幌市の3市場について「賃料収入がホテル収益を上回る分岐点ADR」を稼働率3水準で算出し、転用後の資産価値がホテルとしての評価を何割カバーするかを試算する。結論を先に述べると、分岐点ADRは寄宿舎への転用で¥3,800〜4,600、共同住宅への転用で¥2,800〜3,700にとどまり、実勢の推定成約ADRはその2.3〜3.5倍にある。逆転用は収益で勝つ話ではなく、下方局面での残余価値と買い手の裾野をどう見積もるかという話である。

既刊記事との線引き

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。都道府県・市区町村単位でのみ用い、個別施設の稼働率は算出していません。
  • NOI:不動産の運営純収益。本稿ではホテルは売上高に対する比率、住宅は満室想定賃料に対する比率として、いずれも簡易試算で置いています(前提は後述)。
  • 分岐点ADR:住宅系用途に転用した場合のNOIと、ホテルとして運営した場合のNOIが一致するADR水準。これを下回るとき、収入面では転用後のほうが有利になります。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース)/総務省「住宅・土地統計調査」「小売物価統計調査」/国土交通省「不動産情報ライブラリ」「建築着工統計」「国土数値情報」/日本不動産研究所「不動産投資家調査」
分岐点ADR(寄宿舎・稼働75%)
¥3,827〜4,594
札幌市〜大阪市
実勢の推定成約ADR(中央値)
¥10,639〜13,540
3市 N=507施設
転用後価値のカバー率
18.9〜31.6%
平常時のホテル評価比
商業地域に立地する施設
92.6%
3市 N=726施設
1室あたり延床面積
26.7㎡
ビジネスホテル中央値 N=470
Key Takeaways
  • — 分岐点ADRは寄宿舎で¥3,827〜4,594、共同住宅で¥2,758〜3,667(稼働率75%の前提・2026年6月の実勢推定稼働率を下回る保守設定)。実勢の推定成約ADRはその2.3〜3.5倍にあり、収入面で転用が勝つ市場は3市に存在しない。
  • — 制度上の階段は出口側のほうが低い。令137条の19第1項第3号によりホテル・共同住宅・寄宿舎は同一グループで、既存不適格の遡及適用が原則として準用されない(法48条は除く)。
  • — 用途地域はボトルネックにならない。3市726施設の92.6%が商業地域に立地し、住宅が建てられない工業専用地域の施設はゼロだった。
  • — 1室あたり延床の中央値26.7㎡(N=470施設)は寄宿舎ならそのまま1住室、共同住宅なら2室統合が前提。工事費は1室¥150〜200万円対¥225〜325万円で1.3〜1.9倍の差。
  • — 転用後価値のカバー率は平常時18.9〜31.6%だが、ホテルNOIが平常時の4割まで落ちた局面では47.3〜79.0%に上がる。転用可能性は取得価格ではなく、下方局面の床として値付けすべきもの。

入口と出口は制度上まったく対称ではない

まず手続きから確認する。建築基準法第87条第1項により、用途変更後の用途が同法別表第一(い)欄に掲げる特殊建築物で、かつその部分の床面積が200㎡を超える場合、用途変更の確認申請が必要になる。ホテル・旅館も共同住宅・寄宿舎も、いずれも別表第一の(2)項に並んで掲げられている。

ここで多くの検討が混乱するのが「類似の用途」である。建築基準法施行令第137条の18は、確認申請を要しない類似用途の組み合わせを列挙しており、第4号に「ホテル、旅館」、第5号に「下宿、寄宿舎」を置く。両者は別の号であり、ホテルから寄宿舎への変更も、共同住宅への変更も、200㎡を超える限り確認申請を免れない。ホテルと寄宿舎は平面が似ているから手続きが軽い、という直感は制度上は成り立たない。

ところが同じ「類似の用途」でも、令第137条の19第1項になると分類が変わる。こちらは法第87条第3項に基づく既存不適格建築物への遡及適用を準用しない範囲を定めるもので、その第3号は「ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎」をひとつの号にまとめている。つまり、ホテルから住宅系への用途変更では、避難・防火に関する現行規定を既存不適格部分にまで遡って適用させる必要が原則として生じない。事務所からホテルへ変える入口側では、この免除は働かない。

ここが入口と出口の非対称の核心である。手続きは同じように発生するが、既存建物にとって最も重い遡及適用のリスクは、出口側のほうが構造的に小さい。ただし同項ただし書により、法第48条(用途地域による建築物の制限)は免除の対象外であり、立地の用途地域で住宅系が建てられるかどうかは別途必ず確認する必要がある。この点は後段で実データにより検証する。

次に、遡及ではなく「用途変更後の用途に新たに適用されることになる規定」を整理する。ここに寄宿舎と共同住宅の難易度の差が現れる。

表1 ホテルから住宅系用途へ変更する際に新たに効く主な規定(条文の適用関係を整理したもの)
論点ホテル(現況)寄宿舎へ変更共同住宅へ変更
用途変更確認申請—200㎡超で必要(法87条1項/令137条の18でホテルとは別の号)
既存不適格の遡及適用—原則として準用されない(令137条の19第1項第3号に同居)。ただし法48条は除く
居室の採光(法28条1項)適用外(客室は令19条3項の表に掲げられていない)寝室に床面積の1/7以上。照明設備で1/10まで緩和可居住のための居室に床面積の1/7以上。同様に1/10まで緩和可
界壁(法30条・令22条の3)適用なし適用なし(寄宿舎は対象外)各戸の界壁に遮音性能(125Hz 25dB/500Hz 40dB/2000Hz 50dB)
防火上主要な間仕切壁(令114条)2項により準耐火構造・小屋裏まで(適用済み)同2項が継続適用(水準は同等)1項の「各戸の界壁」に切り替わる(準耐火構造・小屋裏まで)
廊下の幅(令119条)居室床面積の合計が200㎡超の階で1.2m/1.6m同上(閾値は変わらない)住戸・住室の床面積合計が100㎡超の階で1.2m/1.6m(閾値が下がる)
非常用の照明装置(令126条の4)必要(別表第一(2)項)寝室は除外(同条1項2号)住戸は除外(同条1項1号)
各戸の設備—台所・浴室は共用で足りる賃貸市場・融資条件の実務上、各戸に台所・浴室・便所が要る
出典: e-Gov法令検索「建築基準法」「建築基準法施行令」(2026年8月時点の現行条文)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。採光規定の1/10緩和は令第19条第3項ただし書に基づくもので、令和5年4月1日施行、床面において50ルクス以上の照度を確保する照明設備の設置が条件(国土交通省 令和5年2月7日公表資料)。

表1を読むと、階段の形が見えてくる。寄宿舎への転用では、新たに効くのは実質的に採光規定だけである。防火上主要な間仕切壁はホテル時代から同じ水準が求められており、非常用照明はむしろ不要になる。各戸に水回りを設ける必要もない。

一方、共同住宅への転用では、界壁の遮音性能という物理的にコストのかかる要件が新たに加わる。加えて、法規上の要求ではないものの、賃貸住宅として成立させるには各戸に台所・浴室・便所が要る。給排水と電気容量の再構築が必要になり、工事費の桁が変わる。

なお採光については、2023年(令和5年)4月1日施行の令第19条第3項ただし書により、床面で50ルクス以上を確保する照明設備を設ければ、必要な有効採光面積を床面積の1/7から1/10まで縮小できるようになった。ホテルの客室は窓の面積が小さいことが多いため、この緩和は住宅系転用の可否を実際に左右する。国土交通省の公表資料によれば、確認申請図書に照明設備の設置位置と50ルクス以上を確保する旨を明示することが求められる。

もうひとつ、実務上の入口条件として検査済証の有無がある。用途変更確認申請では既存建物の適法性が前提となるため、検査済証がない場合は、指定確認検査機関等を活用した法適合状況調査(国土交通省ガイドライン)を経る必要がある。この調査に要する期間と費用は、後述の改修費とは別枠で見込んでおく必要がある。

物理条件のスクリーニング — 1室26.7㎡という中央値が意味すること

制度がクリアできても、平面が住宅にならなければ意味がない。メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、延床面積と客室数の双方が登録されている全国のビジネスホテル(客室数15室以上、N=470施設)について、1室あたりの延床面積を集計した。

図1 ビジネスホテルの1室あたり延床面積の分布(全国・N=470施設)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスターの延床面積・客室数がともに登録されている運営中施設。1室あたり8〜200㎡の範囲に限定、N=470施設)。延床面積にはロビー・廊下・バックヤードを含むため、客室の専有面積はこの概ね6割前後にとどまる。

中央値は26.7㎡、四分位は21.3㎡〜34.0㎡である。延床にはロビー・廊下・機械室・従業員区画が含まれるから、客室そのものの面積はこの6割前後、すなわち13〜20㎡程度と読むのが妥当だ。ワンルームとしては成立するが、台所・浴室・便所を各戸に備えた共同住宅の1住戸としては小さい。

したがって共同住宅への転用は、実務上ほぼ必然的に2室を1住戸に統合する操作になる。延床26.7㎡×2=53.4㎡、専有換算で33㎡前後。これは総務省「住宅・土地統計調査」の面積区分でいう「30〜49㎡」帯に相当し、単身・DINKS向けの賃貸市場の主戦場に乗る。図1で青枠に入る35㎡未満の3区分は全体の77.5%を占め、この層は統合前提であれば標準的な1LDK・1DK規模に届く計算になる。逆に寄宿舎への転用であれば、1室をそのまま1住室として使えるため統合は不要である。

次に、3市場の運営中施設について規模と築年で候補を絞り込む。宿泊主体の業態(ビジネス・シティ・リゾート・カプセル・アダルトオンリー)に限定し、工事と管理の規模の経済が働く50室以上、かつ新耐震基準(1981年6月改正の適用が想定される1982年以降の開業)という2条件を置いた。

表2 物理条件による転用候補のスクリーニング(大阪市・福岡市・札幌市、2026年8月時点の運営中施設)
市場運営中の全宿泊施設宿泊主体業態うち50室以上うち1982年以降開業1982年以降が全客室に占める比率
大阪市764施設/79,105室486施設/66,670室341施設/62,708室299施設/53,987室68.2%
福岡市290施設/31,323室199施設/29,163室160施設/28,026室139施設/23,297室74.4%
札幌市217施設/28,694室159施設/27,550室140施設/27,056室115施設/21,879室76.2%
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、2026年8月時点)。市の範囲は行政区単位で集計(大阪市24区・福岡市7区・札幌市10区)。開業年は施設マスターの登録値で、大阪市は764施設中721施設、福岡市290施設中289施設、札幌市217施設中208施設で判明。施設マスターの客室数はOTA公表値と乖離する場合があるため、分布として参照されたい。

3市合計で、宿泊主体業態かつ50室以上かつ1982年以降開業という条件を満たすのは553施設・99,163室。全客室の約7割がこの層にあたる。物理条件だけを見れば、母集団は十分に厚い。

用途地域は制約にならない — 3市726施設の92.6%が商業地域

前段で触れたとおり、用途変更にあたって法第48条(用途地域制限)だけは既存不適格の遡及免除が働かない。転用後の用途が立地の用途地域で建築できるかどうかは、単独で確認する必要がある。

そこで、3市の宿泊主体業態・30室以上の施設730件について、国土交通省 不動産情報ライブラリの都市計画決定情報(用途地域)を施設座標に突き合わせ、立地する用途地域を判定した(判定できたのは726件)。

図2 宿泊施設が立地する用途地域の構成(3市・N=726施設)
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ(都市計画決定情報・用途地域)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。対象は宿泊主体業態かつ客室数30室以上の運営中施設730件のうち、用途地域を判定できた726件(大阪市403・福岡市177・札幌市146)。

結果は明快である。3市726施設の92.6%(672施設)が商業地域に立地している。準工業地域が23施設、住居系用途地域が23施設、近隣商業地域が8施設。そして、住宅の建築が認められない工業専用地域に立つ施設はゼロだった。

商業地域では共同住宅も寄宿舎も建築可能であり、容積率も600%が171件、800%が142件、400%が132件と、住宅用途に必要な水準を大きく上回る。既存不適格になる懸念も小さい。つまり、ホテルの立地に関する限り、住宅系への用途変更は用途地域上のボトルネックを持たない。テーマの入口でしばしば置かれる「住居系用途地域に立つ宿泊施設ほど住宅転用に向く」という仮説は、実データでは成り立たない。都市部のホテルはそもそも住居系にほとんど立っていないからである。

ただし、これは「建てられる」という話にすぎない。商業地域は住宅需要が最も厚い場所とは限らない。転用後に誰が住むのかを、立地の性格で分けて見る必要がある。

図3 大阪・難波を中心とする半径1.5km圏の居住人口(250mメッシュ)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。中心座標は北緯34.6659度・東経135.5011度(大阪市浪速区)。居住人口であり、滞在人口・通過人口ではない。
立地の2類型 — 誰が受け皿になるか

居住人口が厚い立地では、共同住宅への転用が賃貸市場に接続しやすい。就業人口とオフィス系比率が高い立地では、企業の社員寮・単身赴任者向け住宅としての寄宿舎需要が受け皿になる。両者は排他ではないが、想定する賃料水準と募集チャネルが変わる。

表3 3市の代表座標における居住・就業の厚み
指標大阪・難波福岡・博多駅札幌・すすきの
居住人口 2025年推計(半径1.5km)138,025人96,612人84,542人
2040年の増減率+7.5%+1.3%+3.7%
高齢者比率(2025年)15.5%14.6%21.6%
事業所数(半径1km)9,6959,7589,839
従業者数(半径1km)134,031人171,730人130,609人
オフィス系従業者比率15.2%30.4%32.6%
出典: 居住=国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)/就業=総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021年)」、境界は国勢調査2020小地域。3地点とも、対象範囲内の事業所が欠測なく集計されている。

大阪・難波は半径1.5km圏の居住人口が138,025人(2025年推計)と3市で最も厚く、2040年に向けても+7.5%と増加が見込まれる。オフィス系従業者比率は15.2%と低く、商業・飲食・サービスの就業が中心である。共同住宅型の受け皿としては、3市で最も条件がよい。

これに対し福岡・博多駅と札幌・すすきのは、オフィス系従業者比率がそれぞれ30.4%、32.6%と高い。従業者数は博多駅圏が171,730人と3市最大である。企業の社員寮・単身赴任者向け住宅としての寄宿舎型に接続しやすい立地と読める。札幌は高齢者比率21.6%と3市で最も高く、居住人口の年齢構成が異なる点も、想定する入居者像に影響する。なお、商圏の高齢化そのものがホテルの保有出口を縛る構造については、商圏高齢化率がホテル投資の出口を縛るが熱海49.1%・高山38.8%という極端な事例で掘り下げている。

分岐点ADRは¥2,758〜4,594 — 実勢との差は2.3〜3.5倍

ここから収益の比較に入る。まず現在のホテル側の水準を確認する。メトロエンジンリサーチの推定成約ADRを、3市の行政区別に施設数で加重した中央値として月次で再構成した。

図4 3市場の推定成約ADR 月別推移(2025年・2026年の月別重ね合わせ)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。行政区別の推定成約ADRを施設数で加重した中央値。いずれの月も確定基準(history)のデータのみを使用し、調査時点の掲載からの推定値である当月以降の月は含めていない。対象施設数は月あたり大阪市 約505施設(18区)、福岡市 約249施設(6区)、札幌市 約194施設(9区)。

直近12ヶ月(2025年8月〜2026年7月)の平均は、大阪市 ¥12,173、福岡市 ¥14,273、札幌市 ¥14,584。目を引くのは大阪市の推移で、2026年6月は前年同月比 -35.8%、7月は -32.4%と大きく水準を下げている。2025年の国際博覧会に伴う特需の反動が明確に出た形だ。福岡市は2026年7月が前年同月比 +4.8%、札幌市は +3.9%と、それぞれ前年を上回っている。この反動がシティ・ビジネスといった業態別にどう分かれて表れているかは、大阪の推定成約ADR、万博翌年の反動は月を追って深まったが月次で追っている。

大阪市の所有者が、いま出口の検証に動く理由はここにある。ピーク時の収益水準がそのまま続かないことが数字で見えたとき、次に問われるのは「宿泊事業をやめた場合、この建物はいくらになるのか」である。

住宅側の収入は、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の民営借家(共同住宅・非木造、家賃0円を含まない)の1か月当たり家賃を用いる。市区レベルまで公表されている一次統計であり、実際に入居している世帯の家賃であるため、募集賃料より保守的な水準になる。

表4 試算の前提(1室あたり・年額)
項目大阪市福岡市札幌市出典・考え方
推定成約ADR(直近12ヶ月平均)¥12,173¥14,273¥14,584メトロエンジンリサーチ
ホテルNOI率(対売上高)30%インヴィンシブル投資法人「2024年12月期 決算説明資料」(2025年2月26日公表)が開示するMHM運営の国内91物件のGOP比率38.9%(前年同期比+1.6ポイント)から、固定資産税・保険料・FF&E積立相当を控除した保守値
民営家賃 29㎡以下(月額)¥51,910¥46,748¥43,244令和5年住宅・土地統計調査(共同住宅・非木造)
民営家賃 30〜49㎡(月額)¥70,437¥62,806¥52,990同上
賃貸稼働率/NOI率95%/満室想定賃料の75%管理費・修繕費・固定資産税・PM報酬を控除した一般的な水準
寄宿舎の賃料水準29㎡以下帯の85%専用の台所・浴室を持たない代わりに共用設備が付く前提での保守値
共同住宅の住戸構成客室2室=1住戸1室あたり延床26.7㎡×2=53.4㎡、専有換算33㎡前後(図1)
期待利回り:宿泊特化型ホテル4.5%4.7%5.0%日本不動産研究所 第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)
期待利回り:賃貸住宅一棟ワンルーム4.3%4.5%5.0%同上
出典: 各欄記載のとおり。簡易試算であり、実際の投資判断には個別物件の詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。

この前提で、住宅系に転用した場合の1室あたり年間NOIを求め、それと等しいNOIをホテルとして生むADR水準——分岐点ADR——を稼働率3水準で算出した。

図5 分岐点ADRと実勢の推定成約ADR(稼働率75%の前提。2026年6月の実勢推定稼働率83.9〜90.5%に対する保守設定)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省「令和5年住宅・土地統計調査」より試算。実勢ADRは施設別の推定成約ADR(直近12ヶ月平均)の中央値で、大阪市 N=261施設、福岡市 N=136施設、札幌市 N=110施設。
表5 分岐点ADRの感度分析と、それを下回る施設の割合
市場・転用先稼働65%稼働75%稼働85%実勢ADR中央値稼働75%の分岐点を下回る施設
大阪市 → 寄宿舎¥5,300¥4,594¥4,053¥10,6396.5%(N=261)
大阪市 → 共同住宅¥4,231¥3,667¥3,235¥10,6395.4%(N=261)
福岡市 → 寄宿舎¥4,773¥4,137¥3,650¥13,4450.7%(N=136)
福岡市 → 共同住宅¥3,772¥3,269¥2,885¥13,4450.7%(N=136)
札幌市 → 寄宿舎¥4,416¥3,827¥3,377¥13,5400.0%(N=110)
札幌市 → 共同住宅¥3,183¥2,758¥2,434¥13,5400.0%(N=110)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省「令和5年住宅・土地統計調査」より試算。施設別の推定成約ADRは、対象730施設のうち推定値が6ヶ月以上得られた507施設を集計(残る223施設は業態区分または観測月数の条件を満たさず除外)。参考値として、2026年6月の推定稼働率は大阪府83.9%(695施設・109,833室)、福岡県90.5%(614施設・54,368室)、北海道89.3%(1,316施設・92,700室)。

稼働率75%(試算上の前提値。2026年6月の実勢推定稼働率83.9〜90.5%を下回る保守設定)の前提で、寄宿舎への転用の分岐点ADRは大阪市 ¥4,594、福岡市 ¥4,137、札幌市 ¥3,827。共同住宅への転用ではさらに低く、¥2,758〜3,667となる。共同住宅のほうが分岐点が低いのは、客室2室を1住戸に統合するため、1室あたりに換算した賃料収入が目減りするからである。

これに対し、施設別の推定成約ADRの中央値は大阪市 ¥10,639、福岡市 ¥13,445、札幌市 ¥13,540。実勢は分岐点の2.3〜3.5倍の水準にある。分岐点を下回る施設の割合は、大阪市で6.5%、福岡市で0.7%、札幌市では0.0%にとどまる。

稼働率を65%に落としても分岐点は¥3,183〜5,300の範囲にしか動かず、結論は変わらない。現在の市況において、住宅系への逆転用が収入面でホテル運営を上回る市場は3市には存在しない。これは転用という選択肢の価値を否定するものではなく、その価値がどこに宿るのかを特定するための出発点である。

改修費 — 寄宿舎は1室¥150〜200万円、共同住宅は1戸¥450〜650万円

収入の比較に工事費を重ねる。国土交通省「建築着工統計」によれば、2024年の居住専用住宅の工事費予定額は全国で1㎡あたり¥249,428(坪あたり82.5万円)。同じ年の宿泊業用建築物は1㎡あたり¥591,279(坪あたり195.5万円)である。既存躯体を使う転用工事は、内装・設備の作り替えが中心となるため、住宅新築の5〜7割程度の水準に収まるのが一般的な目安になる。

表6 転用工事費の積み上げ(簡易試算)
工事項目寄宿舎(1室あたり)共同住宅(1住戸=客室2室あたり)
内装更新(床・壁・建具・造作)¥70〜90万円¥100〜140万円
採光緩和対応の照明設備・電気工事¥10〜15万円¥15〜25万円
2室統合工事(間仕切撤去・開口・復旧)—¥50〜80万円
台所新設(給排水・排気・電気容量)共用厨房として按分 ¥25〜40万円¥110〜160万円
浴室・洗面・洗濯機置場共用として按分 ¥20〜30万円¥100〜150万円
界壁の遮音改修(法30条・令22条の3)—¥50〜80万円
消防設備・自火報の見直し¥15〜20万円¥15〜25万円
設計・用途変更確認申請(按分)¥10〜15万円¥15〜25万円
合計¥150〜200万円/室¥450〜650万円/戸(¥225〜325万円/室)
出典: 国土交通省「建築着工統計(2024年)」の居住専用住宅 工事費予定額 1㎡あたり¥249,428を新築基準とし、既存躯体活用による低減とホテル内装工事の実勢坪単価を踏まえてメトロエンジンリサーチ&コンサルティングが積み上げた簡易試算。検査済証が存在しない場合の法適合状況調査費用、アスベスト等の事前調査・除去費用、耐震補強費用は含みません。

後段の価値試算では、寄宿舎¥175万円/室、共同住宅¥550万円/戸(=¥275万円/室)を中位値として用いる。共同住宅の1住戸あたり¥550万円は、専有33㎡の新築工事費(33㎡×¥249,428=約¥823万円)の約67%に相当し、水回りを丸ごと新設する工事としては妥当な位置にある。

ここで重要なのは、寄宿舎と共同住宅で工事費が1室あたり1.3〜1.9倍違うという点である。表1で見た制度上の階段——界壁の遮音と各戸の水回り——が、そのまま金額の階段として現れている。

出口の広さは、価格の下支えではなく下方局面の残余価値として効く

収入と工事費が揃ったので、資産価値で比較する。転用後の1室あたり価値を「住宅系NOI÷賃貸住宅の期待利回り − 工事費」として求め、ホテルとしての価値(ホテルNOI÷宿泊特化型ホテルの期待利回り)と対比した。稼働率75%(試算上の前提値。2026年6月の実勢推定稼働率83.9〜90.5%を下回る保守設定)を平常時とする。

表7 1室あたりの資産価値比較(稼働率75%の前提・平常時。2026年6月の実勢推定稼働率83.9〜90.5%に対する保守設定)
市場ホテルNOIホテル価値寄宿舎NOI寄宿舎価値(工事費控除後)カバー率共同住宅価値(同)カバー率
大阪市¥999,708¥22,215,725¥377,256¥7,023,39431.6%¥4,252,74819.1%
福岡市¥1,172,170¥24,939,790¥339,741¥5,799,80223.3%¥3,216,57012.9%
札幌市¥1,197,711¥23,954,220¥314,276¥4,535,51518.9%¥1,780,6457.4%
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省「令和5年住宅・土地統計調査」/日本不動産研究所 第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)より試算。カバー率=転用後価値÷ホテル価値。収益還元による価値であり、土地の更地価格は別途考慮が必要です。

平常時のカバー率は、寄宿舎で18.9〜31.6%、共同住宅で7.4〜19.1%。住宅系への転用は、ホテルとしての評価の2〜3割程度しか支えない。しかもこの数字は収益還元による価値であり、都心商業地では更地としての土地価格が別の下限を形成する点は留意が必要だ。

注目すべきは、期待利回りの差がほとんど効いていないことである。第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)によれば、宿泊特化型ホテルと賃貸住宅一棟ワンルームの期待利回り差は、大阪で0.2ポイント、福岡で0.2ポイント、札幌では0.0ポイント。価値の差はほぼ全額がNOIの差から生じている。転用の巧拙で還元利回りが改善する余地は小さく、勝負はNOIそのものにある。

表7-2 カバー率の2軸感度(大阪市・寄宿舎への転用、稼働率75%の前提・2026年6月の実勢推定稼働率を下回る保守設定)— 縦軸: 民営家賃水準/横軸: 賃貸住宅の期待利回り
民営家賃 29㎡以下4.0%4.3%4.5%4.8%5.0%
−20%(月額 ¥41,528)26.1%23.7%22.3%20.4%19.3%
−10%(月額 ¥46,719)30.3%27.7%26.1%24.0%22.7%
基準(月額 ¥51,910)34.6%31.6%29.9%27.5%26.1%
+10%(月額 ¥57,101)38.8%35.6%33.6%31.0%29.5%
+20%(月額 ¥62,292)43.1%39.5%37.4%34.6%32.9%
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省「令和5年住宅・土地統計調査」/日本不動産研究所 第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)より試算。網掛けは表7と同一の前提(家賃 基準・期待利回り4.3%)。ホテル価値は表7の大阪市 ¥22,215,725 で固定し、工事費 ¥175万円/室を控除したうえでカバー率を算出。

2軸で振っても、平常時のカバー率は19.3%〜43.1%の範囲にとどまる。家賃を2割引き上げ、期待利回りを4.0%まで引き下げるという住宅側に最も有利な組み合わせでも、カバー率は43.1%(ホテル評価の半分未満)にとどまる。前提の置き方を変えても「平常時には2〜4割」という結論は動かない。カバー率を大きく動かす変数は住宅側の前提ではなく、分母であるホテルNOIそのものである。

では、この2〜3割という数字はどう使うべきか。ホテルNOIが平常時から低下していく局面で、カバー率がどう動くかを見ると輪郭がはっきりする。

図6 ホテル収益が低下したときの転用後価値のカバー率(寄宿舎への転用)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省「令和5年住宅・土地統計調査」/日本不動産研究所 第54回 不動産投資家調査(2026年4月現在)より試算。ホテル価値は表7のNOIを各水準に低下させ、同一の期待利回りで還元したもの。転用後価値は工事費控除後で固定。

ホテルNOIが平常時の60%まで低下すると、寄宿舎転用のカバー率は大阪市52.7%、福岡市38.8%、札幌市31.6%まで上昇する。40%まで落ちれば大阪市79.0%、福岡市58.1%、札幌市47.3%。大阪市では、ホテルNOIが平常時の3割まで低下した局面で転用後価値がホテル評価を上回る(105.4%)。

これが「出口の広さ」の正体である。転用可能性は、平常時の売却価格を押し上げるものではない。宿泊需要が構造的に縮小した局面で、評価がゼロに向かって落ちていくのを途中で止める床として働く。ホテル専業でしか値がつかない資産は、需要が半減すれば価値も半減する。住宅系に転用できる資産は、その半減の途中に別の買い手が現れる。

そして買い手の性格が変わることの意味は、価格以上に大きい。宿泊事業者しか買えない物件の入札には、ホテルオペレーターとホテル特化型のファンドしか参加しない。住宅系への転用が現実的な物件には、賃貸住宅デベロッパー、社宅運営会社、学生寮事業者、住宅系の私募ファンドが加わる。担保評価の観点では、処分可能性の議論が「宿泊市場の見通し」から「住宅賃貸市場の見通し」へと分散され、単一市場に対するエクスポージャーが下がる。

制度 出口は遡及リスクが軽い

ホテル・共同住宅・寄宿舎は令137条の19第1項第3号で同一グループにあり、既存不適格の遡及適用が原則として準用されない。200㎡超の確認申請は必要だが、入口側にはないこの免除が出口側の実行可能性を支える。ただし法48条(用途地域)は別途確認が要る。

物理 寄宿舎が現実解

1室あたり延床の中央値26.7㎡は、寄宿舎なら1室=1住室でそのまま使える一方、共同住宅では2室統合が前提になる。界壁の遮音と各戸の水回りが加わり、工事費は1室あたり1.3〜1.9倍に。制度と工事費の両面で、寄宿舎のほうが階段は低い。

投資 保険料として値付けする

平常時のカバー率は2〜3割で、転用可能性が今日の価格を押し上げることはない。値付けすべきはホテルNOIが平常時の4〜6割に低下した局面での床であり、そこでのカバー率は大阪市で52.7〜79.0%に達する。ダウンサイド・シナリオの残余価値として扱うのが妥当である。

投資委員会が確認すべき5項目

以上を踏まえ、取得時のデューデリジェンスおよび既存保有物件の出口検証で確認すべき項目を整理する。特定の施設について転用を推奨するものではなく、資産の性格を評価するための観点である。

表8 出口の広さを評価するチェックリスト
確認項目見るべき内容本稿での該当箇所
1. 検査済証の有無用途変更確認申請の前提。ない場合は法適合状況調査(国土交通省ガイドライン)のルートと、その期間・費用を別枠で見込む制度の章
2. 用途地域法48条は遡及免除の対象外。工業専用地域でなければ住宅系は建築可能。都市部の宿泊施設は92.6%が商業地域に立地しており、この点は通常ボトルネックにならない図2
3. 客室の開口部面積採光有効面積が床面積の1/7、照明設備の設置により1/10を確保できるか。ホテルの客室は窓が小さいことが多く、可否を分ける表1
4. 1室あたり面積と戸境の構造1室25㎡以上なら共同住宅で1対1が視野に入る。それ未満は2室統合が前提。戸境の構造は遮音改修の工事量を左右する図1・表6
5. 転用後NOIとカバー率近傍の面積帯別家賃から住宅系NOIを置き、工事費控除後の価値がホテル評価の何割かを算出。ダウンサイド・シナリオでのカバー率を投資委員会の判断材料にする表7・図6
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。

まとめ

ホテルを住宅に戻せるかという問いに対する答えは、制度・物理・収益の3層で異なる。

制度上は、ホテルから共同住宅・寄宿舎への用途変更は200㎡超で確認申請を要するが、既存不適格の遡及適用は原則として準用されない。オフィスからホテルへ変える入口側では働かないこの免除が、出口側の実行可能性を支えている。新たに効くのは主に採光規定であり、2023年4月施行の1/10緩和がその負担を軽くした。寄宿舎であれば追加の規定はほぼ採光だけで済み、共同住宅では界壁の遮音と各戸の水回りが加わる。

物理条件では、3市の宿泊主体業態のうち50室以上・1982年以降開業という条件を満たすのは553施設・99,163室。1室あたり延床の中央値26.7㎡は、寄宿舎ならそのまま、共同住宅なら2室統合で成立する水準にある。立地の用途地域は92.6%が商業地域で、住宅の建築が認められない工業専用地域の施設はゼロだった。

収益では、分岐点ADRが寄宿舎で¥3,827〜4,594、共同住宅で¥2,758〜3,667。実勢の推定成約ADRはその2.3〜3.5倍にあり、分岐点を下回る施設は大阪市6.5%、福岡市0.7%、札幌市0.0%にとどまる。転用後価値がホテル評価をカバーする割合は平常時で18.9〜31.6%だが、ホテルNOIが平常時の4割まで低下した局面では47.3〜79.0%に達する。

したがって、転用可能性は取得価格を押し上げる材料ではない。金利上昇と2027年4月適用の新リース会計を控えて保有物件の出口検証が進むいま、アセットマネージャーと投資委員会が値付けすべきなのは、宿泊需要が想定を外れた局面で評価の下落を止める床の高さと、そのとき入札に参加しうる買い手の顔ぶれの広さである。物件ごとにこの2つを定量化しておくことが、担保評価のダウンサイドを浅くする最も現実的な方法だと考えられる。その金利水準が新規開発側の採算ラインをどこまで押し上げるかについては、政策金利1.00%とホテル開発が主要8商圏の「成立ADR」を逆算している。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

ホテル側の単価は、大阪市24区・福岡市7区・札幌市10区の行政区別 推定成約ADRを、区ごとの対象施設数で加重した中央値として月次で再構成し、2025年8月〜2026年7月の12ヶ月平均を市の代表値とした(月あたり対象は大阪市 約505施設・福岡市 約249施設・札幌市 約194施設、いずれも確定基準の月のみ)。施設別ADRは同期間に推定値が6ヶ月以上得られた507施設(大阪261・福岡136・札幌110)の中央値。施設数・客室数・開業年・延床面積は施設マスター(OTA掲載確認ベース、2026年8月時点)。住宅側の賃料は総務省「令和5年 住宅・土地統計調査」の民営借家(共同住宅・非木造、家賃0円を含まない)の面積帯別 1か月当たり家賃。期待利回りは日本不動産研究所「第54回 不動産投資家調査」(2026年4月現在)。用途地域は国土交通省 不動産情報ライブラリの都市計画決定情報を施設座標に突き合わせて判定(730件中726件)。条文は e-Gov法令検索の2026年8月時点の現行条文を参照した。

■ 試算前提

ホテルNOI=推定成約ADR×365×稼働率×NOI率30%。稼働率は65%・75%・85%の3水準で振り、75%を平常時の代表値として扱う(2026年6月の実勢推定稼働率は大阪府83.9%・福岡県90.5%・北海道89.3%であり、75%はこれを下回る保守設定)。住宅系NOI=月額家賃×12×賃貸稼働率95%×NOI率75%。寄宿舎は29㎡以下帯の85%の賃料で1室=1住室、共同住宅は30〜49㎡帯の賃料で客室2室=1住戸とした。転用工事費は寄宿舎 ¥175万円/室、共同住宅 ¥550万円/戸(=¥275万円/室)を中位値として控除。資産価値は収益還元(NOI÷期待利回り)で、ホテルは宿泊特化型、住宅系は賃貸住宅一棟ワンルームの期待利回りを用いた。分岐点ADRは、住宅系NOIと等しいNOIをホテルとして生むADR水準として逆算したものである。

■ 限界・留意点

推定成約ADRはOTA掲載価格に業態別係数を適用した推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる(上場ホテルREITの物件別開示との照合で誤差中央値は約7%)。推定稼働率はOTA販売在庫に基づく推定で、都道府県・市区町村単位でのみ用いている。施設マスターの客室数・延床面積はOTA公表値や登記面積と乖離する場合があり、分布として参照されたい。工事費は建築着工統計の新築単価と実勢坪単価からの簡易積み上げで、検査済証がない場合の法適合状況調査費、アスベスト等の事前調査・除去費、耐震補強費、ダウンタイム中の逸失収益、解体・原状回復費は含んでいない。資産価値は収益還元のみによるもので、都心商業地では更地としての土地価格が別の下限を形成する。賃料は既存入居世帯の実績家賃であり、転用後に募集する住戸の想定賃料とは水準・稼働立ち上がりの双方で差が生じうる。本稿は市場の構造を定量化するものであり、特定物件の転用を推奨するものではない。個別の投資判断には物件ごとのフィージビリティ・スタディが必要である。

■ 市場データ

■ 法令

■ 政府統計・公的データ

  • 総務省「令和5年 住宅・土地統計調査」 — 民営借家<専用住宅>の状況 住宅の建て方・延べ面積別 1か月当たり家賃(政府統計コード 0004021532)
  • 総務省「小売物価統計調査(動向編)」 — 主要品目の都市別小売価格・民営家賃(政府統計コード 0003421913)
  • 国土交通省「建築着工統計調査」 — 用途別・都道府県別 床面積および工事費予定額(政府統計コード 0003114490、2024年)
  • 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 都市計画決定情報(用途地域)
  • 国土交通省 国土数値情報 — 250mメッシュ別将来推計人口(R6国政局推計)
  • 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021年)」 — 事業所数・従業者数(境界は国勢調査2020小地域)

■ 業界レポート・REIT開示

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