都市公園は、民有地でも公有地の払い下げでもない「第3の用地」である。公有の自然資産を民間宿泊事業に開く動きは環境省の国立公園ナショナルパーク化2031でも進んでいるが、都市公園は制度の建て付けが大きく異なる。2017年の都市公園法改正で創設された公募設置管理制度(Park-PFI、法第5条の2)は、国土交通省の集計で令和8年3月31日時点に203公園まで広がり、うち131公園ですでに公募対象施設が供用されている。飲食店・売店を想定した制度だが、条文上は宿泊施設を排除していない。
ただしこの制度には、ホテル投資にとって決定的な変数がひとつある。公募設置等計画の認定の有効期間は「二十年を超えないものとする」(法第5条の2第5項)という上限だ。土地を買わないかわりに、事業期間そのものが法律で切られる。本稿では、この20年という数字が、都市公園に建てられるホテルの構造・規模・必要ADRをどこまで規定するのかを、条文・国税庁の耐用年数・建築着工統計・実勢ADRから逆算して定量化する。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本稿の試算で用いるOCCは実測値ではなく、事業計画上の想定値です。
- 単純回収年数:総投資額 ÷ 年間NOI(=年間売上×(GOP率−公園使用料率))。金利・税・残存価値・インフレを考慮しない粗い指標であり、投資判断にはより精緻なキャッシュフロー分析が必要です。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/国土交通省/国税庁/e-Stat
- — Park-PFIの認定の有効期間は最長20年(都市公園法第5条の2第5項)。令和8年3月31日時点で203公園に導入され、うち131公園で公募対象施設が供用されている。
- — RC造は法定耐用年数39年のため、20年時点で建築費の48.7%が未償却で残る。木造・軽量鉄骨造は耐用年数17年以下で20年の内側に償却が収まる。
- — RC造100室を20年で単純回収する必要ADRは¥11,300(通年OCC80%想定)。実勢の推定成約ADRが届くのは東京・神奈川・兵庫・福岡に限られる。
- — 建蔽率の上限は原則2%+公募対象施設10%の計12%。全国115,917公園の80.0%を占める街区公園は平均1,591㎡で、建築面積の上限は191㎡にとどまる。
- — PFI法選定事業なら最長30年(法第5条第4項)。RC造の必要ADRは¥7,500まで下がり、本稿で見た8県すべてが成立圏に入る。
エグゼクティブサマリー — 20年という上限が構造を選ぶ
結論を先に置く。Park-PFIの20年上限は、ホテル投資にとって「立地の制約」ではなく「構造の制約」として効く。国税庁の法定耐用年数で旅館用・ホテル用の鉄筋コンクリート造は39年、木造は17年である。20年で事業期間が切れる枠組みでは、RC造は建築費の48.7%が未償却のまま期間満了を迎えるのに対し、木造・軽量鉄骨造は20年で完全に償却しきる。「低Capex型が公園に向く」という直感は、コストの安さだけでなく償却年数が許可期間の内側に収まるという会計上の適合性に裏づけられている。
そして、この制約には出口がある。同じ都市公園法の第5条第4項は、PFI法に基づく選定事業として行う場合に限り設置管理の期間を最長30年まで認めている。20年枠では東京・神奈川クラスの価格帯でないと成立しないRC造100室が、30年枠では必要ADRが¥7,500水準まで下がる。都市公園にホテルを載せる議論は、Park-PFIかどうかではなくどの許可期間を取りに行くかの設計問題である。
制度を「投資期間」として読む — 3つの特例と、10年更新という実務
Park-PFIは3つの特例をセットで与える制度である。条文単位で整理すると次のようになる。いずれも都市公園法および同法施行令の条文であり、自治体の裁量(条例で定める割合)が挟まる箇所がある点に注意したい。
| 特例 | 通常の設置管理許可 | Park-PFI適用時 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 設置・管理の期間 | 10年(更新も10年以内) | 認定の有効期間は20年以内 | 法第5条第3項/法第5条の2第5項 |
| 建蔽率 | 原則100分の2を参酌して条例で定める割合 | 100分の10を参酌して条例で定める範囲を上乗せ | 法第4条第1項ただし書/施行令第6条第2項/法第5条の9第1項 |
| 占用物件 | 第7条の占用許可要件による | 利便増進施設(自転車駐車場・情報看板等)の占用を技術的基準適合で許可 | 法第5条の9第2項 |
| (参考)PFI法選定事業 | ― | 事業契約期間の範囲内で最長30年 | 法第5条第4項 |
実務上、見落とされやすいのが期間の内部構造である。運用指針(第7版)は「認定の有効期間内であれば、最長20年にわたり設置管理許可が与えられることとなる。ただし、設置管理許可期間は最長10年であることから、その終了前に、認定事業者は設置管理許可の更新申請を行う必要がある」と明記している。つまり20年の許可が一括で下りるのではなく、10年の許可を1回更新して20年に到達する建て付けだ。認定計画に基づく申請には公園管理者が許可を与えなければならないとされているため更新の蓋然性は高いが、ファイナンス上は「10年目に行政行為が一度挟まる」という事実を前提に組成することになる。
もうひとつ、建蔽率の上乗せは重複適用されない。運用指針は「休養施設、運動施設及び公募対象公園施設が設置されている場合、これらの建築物全体での建蔽率は、100分の2を参酌して条例で定める割合に、100分の10を参酌して条例で定める割合が上乗せされた範囲内となる」としている。既存の管理棟・便益施設・体育館がすでに面積を消費していれば、ホテルに配分できる建築面積はその残余だけである。
導入は令和3年度の34公園をピークに年20〜30公園の水準で推移している。指針を公表した年度で分類されており、令和7年度末時点で不調・撤退案件は掲載されていない。国土交通省はこのほか187公園で活用を検討中としている。制度そのものの成り立ちと個別案件の動きについては、Park-PFI制度を活用した公園内ホテル開発の投資機会分析で先に整理している。
203公園はどこにあるか — 東京18・福岡17、6県は導入ゼロ
公表資料から都道府県別に集計すると、203公園は41都道府県に分布し、秋田・新潟・島根・徳島・愛媛・熊本の6県は導入実績がない。上位は東京都18、福岡県17、神奈川県14、愛知県13、大阪府13で、上位5都府県だけで75公園(36.9%)を占める。政令市・特別区が公園管理者となる大都市圏に偏っており、宿泊需要の厚い市場と導入実績が重なる構造になっている。
| 東京都 | 18公園 |
| 福岡県 | 17公園 |
| 神奈川県 | 14公園 |
| 愛知県 | 13公園 |
| 大阪府 | 13公園 |
| 埼玉県 | 9公園 |
| 北海道・兵庫・千葉・沖縄 | 各7公園 |
20年 vs 法定耐用年数 — 構造が決める「期間満了時に残るもの」
ここからが本稿の中心である。国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」の建物区分では、旅館用・ホテル用の法定耐用年数は構造によって15年から39年まで2.6倍の開きがある。一方、Park-PFIの事業期間は構造にかかわらず20年で頭打ちだ。この2つを重ねると、どの構造が20年という器に収まるかが機械的に決まる。
| 構造 | 工事費単価 (円/㎡・2024年) | 建築費 (万円/室) | 法定耐用年数 (旅館・ホテル用) | 20年時点の 償却進捗 | 20年時点の未償却 (万円/室) |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 983,286 | 3,442 | 39年 | 51.3% | 1,677 |
| 鉄筋コンクリート造 | 525,732 | 1,840 | 39年 | 51.3% | 896 |
| 鉄骨造(骨格材4mm超) | 499,219 | 1,747 | 29年 | 69.0% | 542 |
| 鉄骨造(骨格材3mm超4mm以下) | 499,219 | 1,747 | 24年 | 83.3% | 291 |
| 鉄骨造(骨格材3mm以下) | 499,219 | 1,747 | 17年 | 100% | 0 |
| コンクリートブロック造 | 320,757 | 1,123 | 36年 | 55.6% | 499 |
| 木造・合成樹脂造 | 373,198 | 1,306 | 17年 | 100% | 0 |
| 木骨モルタル造 | ― | ― | 15年 | 100% | 0 |
2024年の工事費単価は前年から大きく上昇している。とくにSRC造は着工17棟と母数が小さく、大型・高価格帯の案件が単価を押し上げている点に留意が必要である。構造間の相対比較の材料として読み、絶対値は幅を持って扱いたい。
読み方はこうなる。RC造100室(延床3,500㎡)を建てると建築費は約18.4億円、20年経過時点で約8.96億円が未償却で残る。事業期間が満了して施設を除却する、あるいは公園管理者に譲渡する、あるいは再公募で他社が承継する——いずれのシナリオでも、この8.96億円の帰属をあらかじめ事業契約で決めておかなければ、投資は成り立たない。逆に木造・軽量鉄骨造なら20年で簿価はゼロになり、期間満了時に残るのは「除却するか、再公募に勝って使い続けるか」という選択だけになる。この差が、公園に載る宿泊施設の形を決めている。
建蔽率12%が決める「乗る公園」 — 全国115,917公園のうち8割は物理的に載らない
期間の次は面積である。国土交通省「都市公園データベース」によれば、令和6年度末(令和7年3月31日現在)の都市公園等は全国115,917箇所・131,242.58haである。ところがその内訳は極端に偏っており、街区公園が92,677箇所と全体の80.0%を占める。街区公園の平均面積は1,591㎡で、建蔽率12%を丸ごと使っても建築面積の上限は191㎡にしかならない。
| 種別 | 箇所数 | 構成比 | 面積(ha) | 平均面積(㎡) | 建蔽率12%時の 建築面積上限(㎡) |
|---|---|---|---|---|---|
| 街区公園 | 92,677 | 80.0% | 14,741.7 | 1,591 | 191 |
| 都市緑地 | 9,573 | 8.3% | 17,474.1 | 18,254 | 2,190 |
| 近隣公園 | 5,929 | 5.1% | 10,701.9 | 18,050 | 2,166 |
| 地区公園 | 1,658 | 1.4% | 8,824.1 | 53,221 | 6,387 |
| 総合公園 | 1,411 | 1.2% | 26,724.5 | 189,401 | 22,728 |
| 特殊公園 | 1,409 | 1.2% | 13,624.5 | 96,696 | 11,604 |
| 運動公園 | 849 | 0.7% | 13,309.5 | 156,766 | 18,812 |
| 広域公園 | 221 | 0.2% | 15,354.5 | 694,772 | 83,373 |
| 国営公園 | 17 | 0.0% | 4,343.3 | 2,554,900 | 306,588 |
100室・延床3,500㎡のRC造ホテルは、5階建てなら建築面積700㎡、必要な公園面積は5,833㎡(0.58ha)になる。8階建てまで積めば3,646㎡(0.36ha)で足りる。これを種別に当てはめると、近隣公園(平均1.8ha)以上であれば数字の上では成立するが、街区公園では成立しない。近隣公園以上の種別を単純合計すると約11,500箇所、全体の9.9%である。都市公園の8割は、制度の話に入る前に面積で脱落する。
逆に、街区公園の191㎡でも延床40㎡のコテージなら4〜5棟は載る計算になる。低Capex型が公園に向くと言われるのは、単価が安いからだけではない。1棟あたりの建築面積が小さいため、建蔽率12%という器の中で複数ユニットを配置できるからだ。
さらに、建蔽率の分母から外れる余地もある。都市公園法第4条第1項が対象とするのは建築基準法第2条第1号に規定する「建築物」である。トレーラーハウス等の車両を利用した工作物については、建設省住指発第419号(昭和62年12月1日)および同第170号(平成9年3月31日)以来、随時かつ任意に移動できる状態を保つ限り建築物として取り扱わないとする運用が定着している。車輪を外す、地盤上に固定する、移動用の通路がないといった状態になれば建築物と判断されるため、あくまで運用要件を満たす場合に限られるが、モバイル型のユニットを選ぶことは建蔽率上の意味を持つ。
必要ADRの逆算 — 20年枠なら¥11,300、30年枠なら¥7,500
ここまでの制約を収益側に翻訳する。前提は次のとおり置いた。数値はすべて試算であり、個別案件の事業性を保証するものではない。
・建築費=e-Stat「建築物着工統計」2024年・宿泊業用の構造別工事費単価(円/㎡)
・1室あたり延床=35㎡(宿泊特化型ホテル想定)、コテージは1棟40㎡
・特定公園施設の整備費=建築費の15%を上乗せ(Park-PFIでは公募対象公園施設に加えて周辺の園路・広場等を事業者が建設するため。実際の負担割合は公募設置等指針により案件ごとに異なる)
・GOP率35%(インヴィンシブル投資法人が開示する運営受託物件の実績水準を下回る保守値として設定)
・公園使用料=売上の3%(法第5条の2第2項第4号の使用料。実額は公募設置等指針の最低額と提案額による)
・単純回収年数=総投資額 ÷(年間売上×(GOP率−使用料率))。金利・税・土地代はゼロとして扱う(Park-PFIでは土地取得費が発生しないため)
| 構造 | 総投資 (万円/室) | 10年枠 (通常の設置管理許可) | 20年枠 (Park-PFI認定) | 30年枠 (PFI法選定事業) |
|---|---|---|---|---|
| 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 3,958 | ¥42,356 | ¥21,178 | ¥14,119 |
| 鉄筋コンクリート造 | 2,116 | ¥22,646 | ¥11,323 | ¥7,549 |
| 鉄骨造 | 2,009 | ¥21,504 | ¥10,752 | ¥7,168 |
| 木造・合成樹脂造 | 1,502 | ¥16,076 | ¥8,038 | ¥5,359 |
| コンクリートブロック造 | 1,291 | ¥13,817 | ¥6,908 | ¥4,606 |
この必要ADRを、Park-PFI導入が多い都道府県の実勢ADRと突き合わせる。メトロエンジンリサーチが集計した推定成約ADRの直近12ヶ月平均(2025年8月〜2026年7月)は次のとおりである。
| 都道府県 | Park-PFI 公園数 | 推定成約ADR 12ヶ月平均 | 対象施設数 | 20年枠で成立する構造 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 18 | ¥14,631 | 1,130 | RC造・鉄骨造・木造まで成立(SRC造は不足) |
| 神奈川県 | 14 | ¥14,199 | 573 | RC造・鉄骨造・木造まで成立 |
| 兵庫県 | 7 | ¥13,690 | 544 | RC造・鉄骨造・木造まで成立 |
| 福岡県 | 17 | ¥11,781 | 469 | RC造がほぼ均衡点(¥11,323)、鉄骨造・木造は成立 |
| 大阪府 | 13 | ¥10,724 | 644 | 鉄骨造がほぼ均衡点、木造は成立 |
| 千葉県 | 7 | ¥10,186 | 413 | 木造・CB造が成立圏 |
| 愛知県 | 13 | ¥8,818 | 507 | 木造がほぼ均衡点(¥8,038) |
| 埼玉県 | 9 | ¥8,037 | 216 | 木造が均衡点、CB造は成立 |
読み取れることは明快である。20年枠のPark-PFIでRC造100室を成立させるには、エリアの標準的な施設が¥11,300以上で売れている市場が要る。これは東京・神奈川・兵庫・福岡クラスに限られ、愛知・埼玉のような¥8,000台の市場では木造・軽量構造まで下げないと回収期間の内側に入らない。ところが同じRC造100室も、PFI法選定事業として30年枠を取れれば必要ADRは¥7,500まで下がり、本稿で見た8県すべてが成立圏に入る。都市公園でのホテル開発は、Park-PFIという入り口を選ぶのか、PFI法選定事業として30年の期間を取りに行くのかで、載せられるアセットの階級が一段変わる。
感度分析 — RC造100室が20年に収まる条件は狭い
必要ADRは単一の点推定にすぎない。ADRとOCCを振って単純回収年数がどう動くかを見ると、20年という線の周辺がいかに薄いかがわかる。
| ADR \ OCC(通年想定) | 70% | 75% | 80% | 85% |
|---|---|---|---|---|
| ¥9,000 | 28.8年 | 26.8年 | 25.2年 | 23.7年 |
| ¥10,000 | 25.9年 | 24.2年 | 22.6年 | 21.3年 |
| ¥11,000 | 23.5年 | 22.0年 | 20.6年 | 19.4年 |
| ¥12,000 | 21.6年 | 20.1年 | 18.9年 | 17.8年 |
| ¥14,000 | 18.5年 | 17.3年 | 16.2年 | 15.2年 |
| ¥16,000 | 16.2年 | 15.1年 | 14.2年 | 13.3年 |
¥12,000×OCC80%で18.9年。20年の許可期間に対して余裕は1.1年しかない。回収が終わったところで期間が満了する構図であり、投資家の取り分はほとんど残らない。RC造を20年枠で成立させるには、実際には¥14,000以上の価格帯を狙うか、認定期間終了後の更新・再公募での継続を織り込んだ計画にする必要がある。
参考に、上場ホテルREITの直近実績を置いておく。インヴィンシブル投資法人が公表した2026年7月の月次運営実績は、同法人の国内ホテル101物件ベース(2026年12月期の期初に保有する国内ホテル112物件のうち、アイコニア・ホスピタリティ株式会社およびその子会社が運営する物件)で稼働率86.3%、ADR¥15,100、RevPAR¥13,039である(前年同月比は稼働率+1.9pt、ADR−1.0%、RevPAR+1.2%)。宿泊特化型を中核とするポートフォリオでこの水準ということは、都市部の恵まれた立地であればRC造の20年回収は現実的な射程に入る。ただしこれは既存稼働物件の実績であり、新設・立ち上がり期の想定としてはより保守的に見るのが妥当だろう。
低Capex型の市場現況 — 2026年開業1,315件のうち、ユニット単価で回る業態
もうひとつの成立解が低Capex型である。メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、2026年に開業を確認できた宿泊施設は1,315件、平均26室。このうち公園に載りうる小規模・低層のユニット型は次のような構成になっている。
| 業態 | 開業件数 | 平均ユニット数 | 最大 | 主な集中地域 |
|---|---|---|---|---|
| 貸別荘 | 629 | ― | ― | ― |
| コテージ | 47 | 10.4 | 59 | 長野7・北海道4・沖縄4 |
| ペンション | 13 | 5.4 | 10 | 長野4・静岡3 |
| グランピング | 12 | 7.8 | 28 | 沖縄2ほか分散 |
| ロッジ | 8 | 8.8 | 15 | 長野2・新潟2 |
| (比較)ビジネスホテル 145件/シティホテル 38件/リゾートホテル 60件 | ||||
コテージ・グランピング・ロッジを合わせても67件と件数自体は少ないが、投資構造としての意味は大きい。木造コテージ1棟(延床40㎡)の建設費は特定公園施設整備費を含めて約1,717万円。20年で単純回収するのに必要な1棟あたり単価は、通年稼働を想定した事業計画値でOCC55%なら¥13,400、OCC65%なら¥11,300である。4〜6名で利用する棟貸し型は1棟¥25,000〜¥40,000の価格帯が珍しくないため、稼働率が半分でも回収レンジに入る。RC造ホテルがOCC80%を前提にしないと届かないのと対照的だ。
加えて木造は17年、木骨モルタル造は15年で法定耐用年数が満了する。20年の事業期間の内側で償却が終わり、期間満了時に未償却残高を抱えない。低Capex型の優位は「安い」ことよりも、償却年数・回収年数・許可期間の3つが同じ20年の器に収まることにある。
ファイナンス — 所有権も借地権も持たないことの意味
Park-PFIで事業者が得るのは土地の権利ではない。設置管理許可という行政処分に基づいて公園施設を設け、管理する地位である。ここから3つの実務論点が出てくる。
第一に、担保に供せるのは建物のみである。公募対象公園施設の所有権は事業者に帰属するため建物自体への抵当権設定は観念できるが、敷地は公園管理者(多くは地方公共団体)の所有であり、土地を担保に取ることはできない。通常のホテル開発では土地が担保価値の大宗を占めるため、同じ事業規模でもレバレッジの掛け方が変わる。
第二に、地位の承継には公園管理者の承認が要る。都市公園法第5条の8は、認定計画提出者の一般承継人、および認定公募設置等計画に基づき設置・管理が行われる公募対象公園施設の所有権その他必要な権原を取得した者が、公園管理者の承認を受けて認定の地位を承継できると定める。裏を返せば、担保権の実行によって建物を取得した第三者がそのまま事業を継続できるとは限らず、承認という行政判断が一枚挟まる。プロジェクトファイナンスで組む場合、この承認プロセスをどう事業契約・直接協定に落とすかが実務の焦点になる。
第三に、事業破綻時の措置があらかじめ求められる。運用指針は公募設置等指針に記載することが望ましい事項として「認定事業者による公募対象公園施設の運営が困難となった場合には、法第5条の8の規定による公園管理者の承認により別の民間事業者に事業を承継させる、事業開始時に公募対象公園施設の撤去費に充当するための保証金を預かるなど」を挙げている。撤去費相当の保証金を初期に差し入れる設計であれば、その分は事業開始時のキャッシュアウトとして計上しておく必要がある。
これらは制約であると同時に、裏側の便益と対で見るべきものでもある。土地取得費がゼロ、あるいは土地の賃料負担がなく公園使用料に置き換わるという点は、地価が上がり続ける市場では大きなアップサイドである。この論点は借地でホテルを建てる事業性 — 9市場で上限地代を逆算で扱った事業用定期借地方式と地続きで、そこでは支払可能地代の上限を逆算すると所有方式に対して1.38倍の地価まで成立余地があった。Park-PFIはその延長線上で、土地コストをさらに圧縮するかわりに事業期間と担保構成を差し出すスキームとして位置づけられる。
成立条件のまとめ
条件A 低Capex・短耐用年数型
木造・軽量鉄骨造のコテージ/キャビン。耐用年数17年以下で20年の内側に償却が収まり、1棟40㎡なら街区公園規模でも4〜5棟が載る。OCC55%(通年想定)・1棟¥13,400で20年回収に到達する。全国115,917公園の8割を占める街区公園で唯一現実的な選択肢である。
条件B 高ADR市場×RC造
推定成約ADR¥11,300以上の市場に限る。東京・神奈川・兵庫・福岡が該当し、Park-PFI導入公園数の上位とも重なる。ただし回収完了と期間満了がほぼ同時になるため、更新・再公募での継続を前提にした計画設計が要る。近隣公園以上(全体の約9.9%)が対象。
条件C PFI法選定事業で30年枠
法第5条第4項の30年枠を取りに行く。RC造の必要ADRが¥7,500まで下がり、本稿で見た8県すべてが成立圏に入る。SRC造でも¥14,100となり東京の価格水準に収まる。本格的なホテル規模を都市公園に載せるなら、実質的にこの経路の設計が前提になる。
Park-PFIは「公園に何でも建てられる制度」ではない。むしろ、20年という期間上限と12%という建蔽率が、載せられるアセットの構造・規模・価格帯を強く絞り込む制度である。だからこそ設計余地もはっきりしている。低Capex・短耐用年数型を選んで20年の器にきれいに収めるか、高ADR市場でRC造の回収を20年に押し込むか、PFI法選定事業として30年の期間そのものを取りに行くか。この3つの分岐を最初に決めることが、都市公園という第3の用地に取り組むうえでの出発点になる。
よくある質問
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参考資料・出典一覧
■ データソース
制度・件数は国土交通省「公募設置管理制度(Park-PFI)の活用状況(令和8年3月31日時点)」および「都市公園データベース(令和6年度末)」、条文は都市公園法・同法施行令、法定耐用年数は国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(旅館用・ホテル用)、工事費単価はe-Stat「建築物着工統計」(統計ID: 0003114547、2024年・宿泊業用・全国・全建築主)。都道府県別の推定成約ADRはメトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年8月〜2026年7月の12ヶ月平均、対象施設数は月次中央値)。REIT実績はインヴィンシブル投資法人の公表値。
■ 試算前提
全項目は本文「必要ADRの逆算」節に掲げた。要点は、1室あたり延床35㎡(コテージは1棟40㎡)、特定公園施設の整備費=建築費の15%上乗せ、GOP率35%、公園使用料=売上の3%、償却は定額法。単純回収年数=総投資額÷(年間売上×(GOP率−使用料率))で、金利・税・土地代・残存価値・インフレはゼロとして扱う。OCCはいずれも通年稼働を想定した事業計画値であり、実測値ではない。
■ 限界・留意点
(1) 必要ADR・回収年数は金利・税・残存価値を織り込まない粗い指標であり、個別案件の事業性を保証しない。(2) 工事費単価は着工統計の全国平均で、SRC造は2024年の着工17棟と母数が小さく単価が上振れしやすい。(3) 建蔽率12%は原則2%+10%の目安で、実際の割合は各自治体の条例により異なり、既存施設が消費する面積も控除していない。(4) 建築面積の上限は種別ごとの平均面積に対する機械的試算であり、個別公園の形状・区域区分・都市計画上の制約は反映していない。(5) 推定成約ADRはOTA公開価格に業態別補正を適用した推定値で、実際の成約価格とは異なる。(6) 事業期間・建蔽率の運用は公募設置等指針により案件ごとに異なる。
■ 法令・制度
- 都市公園法(昭和31年法律第79号)|e-Gov法令検索 — 第4条(建蔽率)、第5条第3項・第4項(設置管理許可期間)、第5条の2第5項(認定の有効期間20年)、第5条の8(地位の承継)、第5条の9(特例)
- 国土交通省 都市局「都市公園法運用指針(第7版)」令和6年12月
- 国土交通省 都市局 公園緑地・景観課「公園とみどり:Park-PFI等の活用」 — 「都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン(令和7年5月改正版)」を掲載
- 国土交通省「公募設置管理制度(Park-PFI)の活用状況(令和8年3月31日時点)」 — 203公園、うち供用131公園、検討中187公園
- 建設省住宅局建築指導課長通達「トレーラーハウスに関する建築基準法の取扱いについて」(昭和62年12月1日 住指発第419号)ほか
■ 政府統計
- 国土交通省「都市公園データベース|種別毎の都市公園等整備現況(令和6年度末・令和7年3月31日現在)」 — 全国115,917箇所・131,242.58ha
- e-Stat「建築物着工統計」用途別・構造別/建築物の数、床面積、工事費予定額(統計ID: 0003114547)— 宿泊業用・全国・全建築主・2022〜2024年
- e-Stat「建築物着工統計」用途別、建築主別/建築物の数、床面積、工事費予定額(統計ID: 0003114490)— 宿泊業用・全国、2011〜2024年
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」 — 建物(旅館用・ホテル用)構造別の法定耐用年数
■ REIT・市場データ
- インヴィンシブル投資法人「ポートフォリオの運用実績(2026年7月)に関するお知らせ」(2026年8月25日) — 国内ホテル101物件ベース(アイコニア・ホスピタリティ運営分)の稼働率86.3%/ADR¥15,100/RevPAR¥13,039、前年同月比は稼働率+1.9pt・ADR−1.0%・RevPAR+1.2%
- インヴィンシブル投資法人「ホテル運用実績」 — 物件別・月次の運用実績。国内ホテル合計は集計対象103物件ベースで、上記リリースの101物件ベースとは母集団が異なる
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(都道府県別・2025年8月〜2026年7月)、2026年開業施設データ(OTA掲載確認ベース、N=1,315件)
