旅行者はどこで情報を集めているのか。宿泊施設の運営者やマーケティング担当者にとって、この問いは広告費の配分、直販サイトの優先度、OTA等との在庫配分を決める前提になる。観光庁が公表した「インバウンド消費動向調査」2025年年次報告書(A1全国調査・有効回答数30,005)を読むと、訪日客が出発前に役に立ったと答えた情報源はSNSが43.3%、動画サイトが39.6%で、宿泊施設ホームページ(11.1%)と宿泊予約サイト(10.5%)はほぼ同じ水準に並んでいた。本稿では、この一次調査の公表値を全国籍・20市場・滞在中の3つの軸で横断し、国内旅行者側の公表資料の有無を確認したうえで、宿が押さえるべき情報経路の設計に落とし込む。
本記事における指標の定義
- 選択率(%):観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年年次報告書の設問「出発前に役に立った旅行情報源」「日本滞在中に役に立った旅行情報」に対する複数回答の選択率。各国籍・地域の数値は同報告書の国籍・地域別ページ(上位10位まで掲載)から転記したもので、本稿での推計・補完は行っていない。
- 調査の範囲:2025年(暦年)の訪日外国人のうち一般客(クルーズ客を除く)を対象とするA1全国調査。有効回答数は年間30,005(四半期ごとに約7,500)。数値はウェイトバック集計後の値である。
- 年の表記:本稿に登場する数値はすべて調査年を併記する。観光庁の値は2025年、国内旅行者に関する参照記事の値は2024年、業界団体・事業者の公表事例は各発表日の年である。
- 当社データ:本稿は公的統計と公表資料の整理が主題であり、メトロエンジンリサーチの価格・在庫推計値(ADR・OCC)は使用していない。
- — SNS 43.3%・動画サイト 39.6%:訪日客が出発前に役に立ったと答えた情報源は、この2項目だけが4割前後に達した(観光庁 2025年年次報告書・複数回答・N=30,005)。
- — 宿泊施設ホームページ 11.1%と宿泊予約サイト 10.5%の差は0.6ポイント。全国籍では、宿の自社サイトは予約サイトと同じ重みで参照されている。
- — 20市場中12市場でSNS・動画が上位2位を占める一方、英国(41.5%)とドイツ(43.3%)は自国の親族・知人が1位で、英国は宿泊施設ホームページが32.6%で3位に入る。
- — 滞在中も宿泊施設の情報は38.0%で4位。交通手段 65.9%・飲食店 56.0%に続き、20市場すべてで上位6位以内に入った(2025年)。
- — 国内旅行者は公的統計に情報源設問が無く、訪日客の値と同じ軸では比べられない。年と出典を分けて読む必要がある。
出発前の情報源 — SNS43.3%・動画39.6%、宿のホームページと予約サイトは11%前後で並ぶ
まずは全国籍・地域の集計である。観光庁の2025年年次報告書 図表5-1「出発前に役に立った旅行情報源」では、SNSが43.3%、動画サイトが39.6%と、この2つだけが4割前後に達した。3位の個人のブログ(23.9%)、4位の自国の親族・知人(19.9%)がそれに続き、ここまでがほぼ2割以上の水準である。日本政府観光局ホームページは12.2%、旅行会社ホームページは11.8%、宿泊施設ホームページは11.1%、口コミサイトは11.0%、宿泊予約サイトは10.5%と、公式・予約系の情報源は10〜12%の帯に密集している。同じ調査の消費額側(宿泊費が費目別で最大)は訪日客は減っても宿泊費は最大費目 — 4-6月期2.5兆円と実勢ADRの距離で扱っており、本稿は情報源の軸に絞る。
この並びから読めるのは2点ある。第一に、旅行前の「発見」はSNSと動画が担い、公式サイトや予約サイトはその後の「確認・予約」の段階で参照される構造になっていることだ。第二に、宿泊施設ホームページ(11.1%)と宿泊予約サイト(10.5%)の差は0.6ポイントしかなく、少なくとも「役に立った情報源」としては、宿の自社サイトは予約サイトと同じ重みで見られていることである。旅行ガイドブック(8.1%)やテレビ番組(5.0%)は1桁台にとどまり、紙・放送媒体の役割は限定的といえる。
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」図表5-1よりホテルバンク編集部作成(全国籍・地域、複数回答、A1全国調査 有効回答数 N=30,005)
国籍・地域別の上位情報源 — SNS・動画型の12市場と、親族知人・ガイドブック型の欧州
全国籍の平均は、市場ごとの違いを平均してしまう。そこで同報告書の国籍・地域別ページ(各国の◆旅行出発前◆列、上位10位まで掲載)から、20市場の上位9位までを転記し、情報源ごとに並べたのが次のヒートマップである。
一目で分かるのは、ベトナムを除く東アジア・東南アジアの市場でSNSと動画サイトが1位・2位を独占していることだ。韓国(SNS 47.1%・動画 43.8%)、台湾(動画 45.5%・SNS 42.7%)、香港(動画 48.8%・SNS 40.8%)、中国(SNS 49.4%・動画 24.4%)、タイ(動画 44.9%・SNS 44.1%)、シンガポール(動画 49.7%・SNS 38.5%)、マレーシア(SNS 43.5%・動画 43.4%)、インドネシア(SNS 49.1%・動画 44.0%)、フィリピン(SNS 45.2%・動画 38.1%)に、イタリア・カナダ・オーストラリアを加えた12市場で、この2項目が上位2位を占めた。韓国は個人のブログが42.9%で3位に入り、SNS・動画・ブログの3つが4割を超える唯一の市場である。中国については、SNSに加えて生成AIで旅程を組む旅行者が9割超に達したとする民間調査もあり、その内容は中国人訪日客の9割以上がAI活用:旅行計画は「検索」から「AI設計」へで紹介している。
一方で、英国とドイツは構造が異なる。英国は自国の親族・知人が41.5%で1位、SNS 33.2%、宿泊施設ホームページ 32.6%、旅行ガイドブック 31.7%、日本政府観光局ホームページ 30.9%と、2位から5位までが30〜33%の狭い帯に並ぶ。ドイツも自国の親族・知人(43.3%)が1位で、旅行ガイドブック(32.6%)が4位、宿泊施設ホームページ(27.6%)が5位に入る。フランス(親族・知人 38.3%で2位、ガイドブック 24.9%で4位)、スペイン(親族・知人 38.8%で2位)、米国(親族・知人 35.6%で2位)も、人づての情報が動画・SNSと同程度に効く市場である。ロシアは口コミサイトが40.3%で2位、宿泊予約サイトが34.1%で5位と、評価・予約系サイトへの依存が20市場で最も高い。
| 国籍・地域 | SNS | 動画 | ブログ | 自国の親族知人 | 日本在住親族知人 | 口コミサイト | ガイドブック | JNTO HP | 宿泊施設HP | 宿泊予約サイト | 旅行会社HP |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 韓国 | 47.1 | 43.8 | 42.9 | 9.1 | 6.9 | 7.5 | – | – | 7.8 | 15.4 | 8.7 |
| 台湾 | 42.7 | 45.5 | 29.0 | 17.7 | 10.0 | – | – | 17.1 | 11.2 | – | 16.1 |
| 香港 | 40.8 | 48.8 | 15.4 | 12.8 | – | – | – | 16.2 | 11.2 | 10.2 | 9.3 |
| 中国 | 49.4 | 24.4 | 14.8 | 15.0 | 12.5 | – | – | 7.9 | 7.3 | – | 9.8 |
| タイ | 44.1 | 44.9 | 13.8 | 17.8 | 12.1 | 11.0 | – | 17.4 | – | 12.7 | 14.4 |
| シンガポール | 38.5 | 49.7 | 14.1 | 30.0 | – | 20.3 | 8.8 | 14.3 | 16.1 | – | – |
| マレーシア | 43.5 | 43.4 | 13.4 | 21.6 | 11.9 | 12.8 | – | 12.4 | – | – | 15.1 |
| インドネシア | 49.1 | 44.0 | – | 30.4 | 23.1 | – | 12.5 | 15.7 | 15.5 | – | 15.6 |
| フィリピン | 45.2 | 38.1 | 18.0 | 27.0 | 23.8 | 11.9 | – | 10.0 | 10.4 | – | 9.6 |
| ベトナム | 29.2 | 21.3 | – | 24.2 | 24.9 | – | 9.7 | 12.4 | 9.1 | – | 18.3 |
| インド | 24.1 | 30.1 | – | 26.9 | 24.7 | – | 16.7 | 18.4 | 15.1 | – | 17.2 |
| 英国 | 33.2 | 29.7 | – | 41.5 | 24.5 | 26.8 | 31.7 | 30.9 | 32.6 | – | – |
| ドイツ | 36.4 | 36.2 | – | 43.3 | – | 23.3 | 32.6 | 27.1 | 27.6 | 21.1 | – |
| フランス | 41.6 | 36.9 | – | 38.3 | 24.4 | 23.3 | 24.9 | 24.8 | 19.8 | – | – |
| イタリア | 43.9 | 45.5 | 21.8 | 28.0 | 17.4 | 24.0 | 29.8 | 26.9 | 16.0 | – | – |
| スペイン | 38.1 | 46.4 | 27.0 | 38.8 | – | – | 26.5 | 29.3 | 24.1 | – | 25.1 |
| ロシア | 32.2 | 47.8 | 37.0 | 37.5 | – | 40.3 | – | 25.5 | – | 34.1 | 22.9 |
| 米国 | 35.4 | 43.0 | – | 35.6 | 21.6 | 18.6 | 14.7 | 16.5 | 16.1 | – | – |
| カナダ | 40.6 | 45.4 | 19.8 | 32.6 | 21.0 | 19.8 | – | 12.6 | 9.8 | – | – |
| オーストラリア | 38.4 | 43.9 | 17.3 | 36.0 | 15.6 | 22.9 | – | 14.7 | 19.6 | – | 15.1 |
数値は各国籍・地域の「出発前に役に立った旅行情報源」選択率(%・複数回答・2025年)。太字は各市場の上位3位。「–」は当該市場の上位9位に入らなかった項目で、ゼロを意味しない(報告書の国籍・地域別ページは上位10位まで掲載。10位の項目名は本稿では扱っていない)。
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」国籍・地域別ページ(◆旅行出発前◆)よりホテルバンク編集部作成
情報源の「型」を1位の項目だけで切ると、20市場のうち動画サイトが1位の市場が11、SNSが1位の市場が7、自国の親族・知人が1位の市場が2(英国・ドイツ)となる。次のグラフは各市場の1位情報源とその選択率を並べたもので、中国のSNS 49.4%とシンガポールの動画 49.7%が最も高く、ベトナム(SNS 29.2%)とインド(動画 30.1%)は1位でも3割前後にとどまり、情報源が分散している。
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」国籍・地域別ページよりホテルバンク編集部作成(各市場の1位情報源とその選択率・複数回答)
滞在中に役に立った情報 — 宿泊施設は38.0%で4位、20市場すべてで上位6位以内
出発前の情報源とは別に、同報告書は「日本滞在中に役に立った旅行情報」(図表5-2)も集計している。2025年は交通手段が65.9%で最も多く、飲食店が56.0%、観光施設が39.1%、宿泊施設が38.0%、買物場所が33.8%と続いた。無料Wi-Fi(15.3%)やATM(9.2%)、クレジットカード利用可能店舗(7.9%)といったインフラ系の情報は1〜2割にとどまる。
宿泊施設の情報が滞在中にも4位で参照されている点は、宿側にとって見逃せない。出発前に宿を決めている旅行者が多いはずなのに、滞在中にも38.0%が宿泊施設の情報を「役に立った」と答えている。これは、周遊中の次の宿の手配や、同行者への共有、アクセス・設備の再確認といった場面で、宿の情報が日本国内にいる旅行者に再び引かれていることを示す。国籍・地域別に見ると、台湾(47.9%・3位)、マレーシア(47.0%・4位)、中国(45.1%・3位)、香港(43.6%・4位)、タイ(43.2%・4位)、スペイン(42.2%・5位)、オーストラリア(40.9%・4位)で4割を超え、全20市場で上位6位以内に入っていた。
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」図表5-2よりホテルバンク編集部作成(全国籍・地域、複数回答、A1全国調査 有効回答数 N=30,005)
| 国籍・地域 | 「宿泊施設」の順位 | 選択率 | 1位の情報 | 1位の選択率 |
|---|---|---|---|---|
| 韓国 | 3位 | 31.9% | 飲食店 | 56.5% |
| 台湾 | 3位 | 47.9% | 交通手段 | 66.3% |
| 香港 | 4位 | 43.6% | 交通手段 | 66.6% |
| 中国 | 3位 | 45.1% | 交通手段 | 68.0% |
| タイ | 4位 | 43.2% | 交通手段 | 67.1% |
| シンガポール | 4位 | 36.6% | 交通手段 | 72.1% |
| マレーシア | 4位 | 47.0% | 交通手段 | 71.7% |
| インドネシア | 5位 | 36.6% | 交通手段 | 76.1% |
| フィリピン | 4位 | 37.6% | 交通手段 | 68.9% |
| ベトナム | 5位 | 19.4% | 交通手段 | 52.7% |
| インド | 5位 | 24.1% | 交通手段 | 66.0% |
| 英国 | 5位 | 31.5% | 交通手段 | 79.5% |
| ドイツ | 5位 | 28.6% | 交通手段 | 78.2% |
| フランス | 6位 | 27.6% | 交通手段 | 80.8% |
| イタリア | 5位 | 30.3% | 交通手段 | 77.2% |
| スペイン | 5位 | 42.2% | 交通手段 | 84.0% |
| ロシア | 6位 | 38.2% | 交通手段 | 87.6% |
| 米国 | 5位 | 25.7% | 交通手段 | 74.1% |
| カナダ | 5位 | 30.1% | 交通手段 | 71.5% |
| オーストラリア | 4位 | 40.9% | 交通手段 | 74.7% |
「日本滞在中に役に立った旅行情報」(複数回答・2025年)のうち「宿泊施設」の順位と選択率。全20市場で上位6位以内に入る。
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」国籍・地域別ページ(◆旅行出発後◆)よりホテルバンク編集部作成
滞在中の情報は、出発前と違ってSNS・動画といった「媒体」ではなく「内容」で問われている。それでも、交通手段と飲食店が常に1位・2位を占めるという事実は、宿が自社サイトやSNSで発信すべき内容の優先順位を示している。宿そのものの魅力に加えて、最寄り駅からの経路と周辺の飲食店情報を日本滞在中の旅行者が探しているなら、その情報を自社の経路に置くことが、滞在中に宿の情報を参照する38.0%に届く近道になる。
国内旅行者の情報収集 — 公的統計に情報源設問は無く、民間調査の公表資料で確認できる範囲
では、日本人の国内旅行についても同じ横断ができるだろうか。結論から言えば、本稿執筆時点で確認できた公表資料の範囲では、訪日客の図表5-1と直接比較できる「情報源の選択率」は公的統計に存在しない。観光庁「旅行・観光消費動向調査」は旅行回数・宿泊数・消費額を把握する調査で、情報源に関する設問を持たない。株式会社リクルートの調査研究機関が2026年7月16日に公表した「観光国内宿泊旅行調査2026」(有効回答数1万5,548件、2025年度の国内宿泊旅行が対象)も、公開された結果資料は旅行実施率・旅行回数・費用・訪問先評価が中心で、情報収集源の集計は含まれていない。公益財団法人日本交通公社の「旅行年報2025」については、情報源設問の公表値をウェブ上で確認できなかったため、本稿では引用しない。
国内側で参照できるのは民間の調査である。ホテルバンクが2024年9月に取り上げた国内旅行の情報収集と予約方法(2024年・アイリッジ調査)では、20代・40代・60代の男女約200名を対象に、旅行計画時の情報収集は幅広い年代で「ネット検索」が主流であり、20代女性に限ってはSNS(Instagram、次いでYouTube・TikTok)の利用が際立つという結果が示されていた。ただしこれは2024年の少数サンプル調査であり、2025年の訪日客30,005件の集計と同じ土俵で比べることはできない。参考として、海外OTA大手グループが2025年5月に公表した「Traveler Value Index 2025」(日本を含む11市場・1万1,000人以上)では、旅行のインスピレーションを得るためにSNSを使う人が61%で、2022年調査の35%から増えたとされている。これは日本単独の値ではなく、同社の調査設計に基づく世界11市場の値である。
国内旅行者の情報源について確定的に語れる公的な数値が無い以上、宿側は「訪日客はSNS・動画が4割、国内客は年代で分かれる」という2つの別々の観察を、年と出典を分けたまま併記する姿勢が必要である。本稿が国内側の数値を訪日側の図表と同じグラフに載せていないのは、そのためだ。
宿への含意 — 宿泊施設HP11.1%と予約サイト10.5%が並ぶ事実をどう使うか
ここからが本稿の核である。宿泊施設ホームページ(11.1%)と宿泊予約サイト(10.5%)がほぼ並んでいるという2025年の事実は、直販とOTA等の経路設計を考える宿にとって、2つの意味を持つ。
直販サイトは「役に立った」と答えられる水準にある
訪日客が出発前に宿泊予約サイトを「役に立った」と答える割合と、宿泊施設ホームページを「役に立った」と答える割合が同じなら、自社サイトに投資する根拠は十分にある。ホテルバンクが2026年8月に試算したOTA手数料は1泊877〜2,193円 — 全国ADRで割り戻す直販シフトの分岐点では、手数料率を全国の推定成約ADRに当てると1泊あたり877〜2,193円の幅になることを示した。この金額は、自社サイトを多言語化し、SNSからの導線を整備する費用の原資になる。もっとも、直販比率を上げる前に見るべきものがあることも脱OTAの前に在庫配分を見る — OTA手数料削減の4経路と1室あたり年9.5万円の感度試算で整理したとおりで、情報経路の設計は在庫配分と切り離せない。
市場によって「宿のHP」と「予約サイト」の重みは逆転する
全国籍では並んでいる2項目も、市場ごとに見ると重みが逆転する。韓国は宿泊予約サイトが15.4%(4位)で宿泊施設ホームページ 7.8%(7位)の約2倍、ロシアも宿泊予約サイト 34.1%(5位)が高い。これに対して英国は宿泊施設ホームページが32.6%(3位)で、宿泊予約サイトは上位9位に入らない。ドイツ(HP 27.6%・5位)、スペイン(HP 24.1%・8位)、フランス(HP 19.8%・8位)、オーストラリア(HP 19.6%・5位)、米国(HP 16.1%・7位)も宿泊施設ホームページが上位に入る市場である。欧米豪の旅行者を狙う宿ほど、自社サイトの英語ページとSNSからの導線が直接の予約経路になりやすく、東アジアの旅行者を狙う宿ほど予約サイト上の情報の充実と、SNS・動画・ブログからの発見が入口になる。
| 国籍・地域 | 宿泊施設ホームページ | 宿泊予約サイト | 旅行会社ホームページ |
|---|---|---|---|
| 韓国 | 7.8%(7位) | 15.4%(4位) | 8.7%(6位) |
| 台湾 | 11.2%(7位) | 上位9位外 | 16.1%(6位) |
| 香港 | 11.2%(6位) | 10.2%(7位) | 9.3%(8位) |
| 中国 | 7.3%(9位) | 上位9位外 | 9.8%(7位) |
| タイ | 上位9位外 | 12.7%(7位) | 14.4%(5位) |
| シンガポール | 16.1%(5位) | 上位9位外 | 上位9位外 |
| 米国 | 16.1%(7位) | 上位9位外 | 上位9位外 |
| オーストラリア | 19.6%(5位) | 上位9位外 | 15.1%(8位) |
| 英国 | 32.6%(3位) | 上位9位外 | 上位9位外 |
| ドイツ | 27.6%(5位) | 21.1%(9位) | 上位9位外 |
「出発前に役に立った旅行情報源」(複数回答・2025年)のうち宿の予約経路に関わる3項目。「上位9位外」は当該市場で選択率が上位9位に入らなかったことを示し、ゼロではない。
出典:観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年年次報告書」国籍・地域別ページよりホテルバンク編集部作成
欧米豪の需要がどの県で伸びているかは欧米豪の宿泊が伸びた県2026上半期で、2026年の訪日客数の進捗はインバウンド2026予測で確認できる。情報経路の設計は、どの市場の旅行者が自分の地域に来ているかと組み合わせて初めて意味を持つ。
SNS・動画で見つけられる宿の条件 — 公表事例4件
SNS 43.3%・動画サイト 39.6%という数字は、宿が「見つけられる側」に回るための条件を考える出発点になる。ここでは、2025〜2026年に公表された資料・事例を出典付きで4件挙げる。いずれも各発表主体の公表内容であり、本稿で効果を検証したものではない。
| 公表主体・時期 | 内容 | 宿が参照できる点 |
|---|---|---|
| 日本政府観光局(JNTO) 2026年7月 | 「効果的な発信を行うためのInstagram活用ガイドライン」第9版を公開。フォロワー以外に届く発見タブ・リール、「保存」が強い関心を示す行動であること、位置情報とタグ付け、UGC(ユーザー生成コンテンツ)活用、2026年時点ではクリエイターのクレジット表記と「共同投稿」での発信を推奨。 | 公式アカウントの投稿に位置情報・タグを付け、フォロワー外の「発見」経路を設計する。UGCを使う際の表記ルールの基準。 |
| 一般社団法人 日本ホテル協会 2025年2月3日 | インバウンド向け公式Instagramを開始。228の会員ホテルとその周辺のアトラクションを撮影したショート動画を季節やテーマに合わせて掲載・更新。 | 個社では撮影・多言語の手が回らない場合に、業界団体の共同アカウントで動画の露出を得る経路。 |
| 株式会社レアル(京都・Rinn) 2025年10月29日 | 京都市内で73棟403室(2025年10月時点、開業予定含む)を運営する同社の公式Instagramがフォロワー1万人を突破。2025年11月1〜30日に、宿泊者がフォローとストーリーズ投稿を行うと市内交通の1日乗車券を提供する記念キャンペーンを実施。 | 宿泊中の旅行者が自ら投稿する動機(滞在中に使える特典)を設計し、宿泊者の投稿を次の旅行者の「発見」につなげる構造。 |
| TikTok Japan 2026年5月13日 | 動画内の場所タグから宿泊・体験の予約ページへ移動できる「TikTok GO」の日本展開を発表(2025年から運用)。2026年4月時点で6社をはじめとする国内外の予約事業者と提携し7万以上の宿泊・体験サービスを掲載。同社発表では直近6か月の日本での予約数が前期比270%増、機能を使うクリエイター数が半年前比130%以上増。海外の利用者にはタイ・インドネシア・米国・マレーシアなどのユーザーが含まれるとする。 | 動画サイト39.6%の層が「発見から予約まで」をアプリ内で完結し始めている。掲載先の予約事業者に自館の在庫があるか、動画で場所タグが付く状態かを確認する。増加率は同社公表値で絶対数は非公開。 |
出典:各公表資料(参考資料・出典一覧を参照)よりホテルバンク編集部作成
4件に共通するのは、宿が自分で発信する量よりも、「他者の投稿に宿が写り込み、場所タグやアカウントタグで辿れる状態」を作ることに重心が置かれている点である。SNS 43.3%・動画 39.6%の旅行者は宿の公式アカウントを探しているのではなく、行きたい場所の動画を見ている。その動画から宿に辿り着ける経路(位置情報、タグ、予約事業者への掲載)があるかどうかが、見つけられる宿と見つけられない宿を分ける。発信者のフォロワー規模別に費用対効果を検証したTikTok/Instagram動画×宿泊需要 — マイクロインフルエンサーROI実証分析も、この経路設計の参考になる。口コミサイト(全国籍 11.0%、ロシア 40.3%、オーストラリア 22.9%、シンガポール 20.3%)の重みが高い市場では、口コミ件数の積み上げも入口になる。口コミ件数が営業年数ではなく別の要因で決まることは口コミ件数は年数では増えない — 1,643施設で見る件数・単価・在庫消化で扱った。
初回とリピーターで情報源は違うのか — 報告書の2つの表を並べて読む
「旅行 情報 収集 リピート」という検索が一定数ある以上、来訪回数と情報源の関係にも触れておきたい。ただし、2025年年次報告書には、来訪回数別に情報源をクロス集計した表は掲載されていない。本稿で言えるのは、同報告書の図表1-5「来訪回数」と、国籍・地域別の情報源ランキングを別々に読んだ結果にとどまる。
図表1-5によれば、2025年の訪日客(全目的)のうち日本への来訪が「1回目」は35.1%で最も多く、国籍・地域別ではスペインで1回目が8割超、香港では「10回目以上」が約4割と、市場によって初回とリピーターの比率が大きく異なる。これを情報源ランキングと並べると、初回比率が高い欧州市場(スペイン・英国・ドイツ・フランス)では自国の親族・知人や旅行ガイドブックが上位に入り、リピーター比率が高い香港・韓国・台湾ではSNS・動画・個人のブログが上位を占める、という対応が見える。もっとも、これは2つの表を並べた読み方であって、同じ回答者の中で初回とリピーターを分けた結果ではない。来訪回数別の情報源を論じるには、観光庁が公開する個票集計表か、来訪回数をクロス軸に持つ別の調査が必要である。
まとめ
観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年年次報告書(有効回答数30,005)を情報源の軸で読むと、訪日客の出発前の情報収集はSNS 43.3%・動画サイト 39.6%が担い、宿泊施設ホームページ(11.1%)と宿泊予約サイト(10.5%)は同じ重みで参照されていた。20市場に分けると、東アジア・東南アジアの9市場にイタリア・カナダ・オーストラリアを加えた12市場はSNS・動画が上位2位を独占し、英国・ドイツは自国の親族・知人が1位で宿泊施設ホームページやガイドブックが上位に入る。滞在中は交通手段 65.9%、飲食店 56.0%に続いて宿泊施設の情報が38.0%で参照され、20市場すべてで上位6位以内だった。
宿にとっての含意は3つに整理できる。第一に、自社サイトは訪日客に「役に立った」と答えられる水準にあり、OTA手数料の原資を直販経路の整備に回す根拠がある。第二に、狙う市場によって宿泊施設ホームページと予約サイトの重みは逆転するため、欧米豪向けは自社サイトとSNS導線、東アジア向けは予約サイト上の情報とSNS・動画・ブログからの発見を厚くする。第三に、SNS・動画で見つけられる宿の条件は、自ら発信する量ではなく、他者の投稿から宿へ辿れる経路(位置情報・タグ・予約事業者への掲載)を持つことにある。国内旅行者については公的統計に情報源設問が無いため、年と出典を分けたまま民間調査の参照にとどめた。
よくある質問
Q. 訪日客は旅行前にどこで情報を集めているのですか?
観光庁「インバウンド消費動向調査」2025年年次報告書(A1全国調査・有効回答数30,005)では、出発前に役に立った情報源はSNS 43.3%、動画サイト 39.6%、個人のブログ 23.9%、自国の親族・知人 19.9%の順です。宿泊施設ホームページは11.1%、宿泊予約サイトは10.5%で、両者はほぼ同水準です。
Q. 国によって情報源は違いますか?
違います。2025年の国籍・地域別の集計では、韓国・台湾・香港・中国とベトナムを除く東南アジア各国はSNSと動画サイトが1位・2位を占める一方、英国とドイツは「自国の親族・知人」が1位で、旅行ガイドブックや宿泊施設ホームページが上位に入ります。ロシアは口コミサイトが2位(40.3%)です。
Q. 宿泊施設はSNSや動画でどう見つけてもらえばよいですか?
日本政府観光局(JNTO)が2026年7月に公開した「Instagram活用ガイドライン 第9版」は、フォロワー以外に届く発見タブ・リール、保存行動、位置情報とタグ付け、クリエイターとの共同投稿(UGC)を発信の要点として挙げています。本稿では日本ホテル協会・京都の宿泊事業者・ショート動画プラットフォームの公表事例も紹介しています。
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参考資料・出典一覧
- 観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析 2025年年次報告書」 — 図表5-1・図表5-2・図表1-5、国籍・地域別ページ(A1全国調査 有効回答数30,005)
- 日本政府観光局(JNTO)「効果的な発信を行うためのInstagram活用ガイドライン」第9版(2026年7月)
- 一般社団法人 日本ホテル協会「日本ホテル協会がインバウンド向け公式インスタグラムを開始!」(2025年2月3日)
- 株式会社レアル「【Rinn】Instagramフォロワー1万人突破記念キャンペーン開催」(2025年10月29日、財経新聞掲載)
- TikTok Japan ニュースルーム「TikTok GO」日本展開(2026年5月13日)
- トラベルボイス「世界11市場の消費者調査、旅行計画でのSNSの影響力が拡大」(Traveler Value Index 2025、2025年5月27日)
- 株式会社リクルート 調査研究機関「観光国内宿泊旅行調査2026」(2026年7月16日、有効回答数1万5,548件) — 情報源設問の公表値が無いことの確認に使用
- 観光庁「旅行・観光消費動向調査」 — 情報源設問を持たない調査であることの確認に使用
- ホテルバンク「国内旅行の情報収集と予約方法:アプリ利用が進む若年層の動向」(2024年9月、アイリッジ調査)
