クラブラウンジを備えたホテルで、ラウンジを利用できる客室と一般の客室を同じ宿泊日・同じ人数・同じ食事条件で比べると、掲載価格の差は中央値で1泊約1万8,700円、率にして+43.2%だった(2026年11月1日〜12月19日泊・38施設・5,769組の価格ペア)。宿泊者口コミでラウンジへの好意的な言及が多い上位50軒を出発点に、上級客室・会員専用のラウンジがあることを各施設の公式サイトで1軒ずつ確かめ、確認できた40軒だけを母集団にしている。本稿では、この上乗せが業態や地域、販売の組み立て方でどう変わるかを整理し、客室を削ってラウンジを置く投資がクラブ客室何室から成り立つかを3ケースで試算する。
本記事における指標の定義
※本記事における指標の定義:ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
上乗せ額・上乗せ率=同じ施設・同じ宿泊日・2名1室・同じ食事条件(朝食の有無、夕食の有無)で、ラウンジを利用できる客室の最安の掲載価格と、一般客室の最安の掲載価格を対にした差と比率。施設ごとにペアの中央値を取り、その施設値の分布(中央値・四分位)を示す。スイートと3名以上向けの客室は両側から外した。試算で置く稼働率は編集部の前提値であり、推定OCCではない。
- — 上乗せは1泊1万8,700円・+43.2%:専用ラウンジを公式に確認した40軒のうち38施設・5,769組の同一施設ペア(2026年11月1日〜12月19日泊、2名1室・税込の掲載価格)の中央値。四分位は1万2,600〜2万5,200円。
- — 同じ広さどうしでも+38.8%:面積差±10%以内の35施設・4,151組でも上乗せは1万8,000円。1㎡あたりでも+31.7%で、差の大半はラウンジの利用権に付いている。
- — 率より額で決まる:土曜泊と土曜以外の上乗せ額は1万8,900円と1万8,100円でほぼ同じ(N=33施設)。地域別の額は1万5,700〜2万3,200円に収まり、率は東京+35.7%、沖縄+48.4%と開く。
- — 売り方で2倍以上の差:一般客室と同じプランに並べる共通プラン型13軒は+20.3%・7,500円、クラブフロアを独立商品で売る専用プラン型25軒は+46.2%・2万600円。
- — 成立規模はクラブ客室21室から:編集部の前提による試算で、人件費を賄える室数は中央値ケース21室、上位四分位12室、下位四分位98室。60室なら年間+5,640万円、内装投資の回収は1.6〜1.7年。
母集団の確定 — 上位50軒のうち、専用ラウンジを確認できたのは40軒
まず、対象の決め方から述べる。ホテルバンク編集部が宿泊者口コミをNLP解析したところ、直近24か月(2024年10月〜2026年10月)に「クラブラウンジ・エグゼクティブラウンジ」への好意的な言及が10件以上あった施設のうち、言及件数の上位50軒で言及は計8,316件、言及率が5%以上の施設は34軒あった(総口コミ20件以上の施設が対象、2026年10月11日集計)。ただし、この上位50軒をそのまま「クラブラウンジのある宿」と呼ぶことはできない。口コミの「ラウンジ」には、宿泊者全員が使える共用ラウンジやフリードリンクコーナー、ロビーのバーが含まれるからである。
そこで50軒すべてについて公式サイト(一部は運営会社の公式リリース)を開き、上級客室または会員に利用を限ったラウンジの記載があるかを確かめた。記載を確認できたのは40軒で、好意的言及は6,213件と上位50軒の74.7%を占める。残る10軒(2,103件)のうち6軒は、公式サイトにあるのが全宿泊者向けのラウンジやバー、または滞在費に飲食を含む料金体系で、客室による区分が見当たらなかった。4軒は公式サイトで該当の記載までたどり着けなかったため、母集団に数えていない。つまり、口コミ件数だけで拾った上位の4分の1は、本稿が扱う「客室を分けて単価を取るラウンジ」とは性格の違う施設だったことになる。
確認できた40軒を言及件数の順に並べたのが下の表である。京王プラザホテルは本館45階に535㎡・153席のクラブラウンジを置き、好意的言及は407件と最も多かった。沖縄ハーバービューホテルは言及率14.7%、コンラッド東京は11.1%と、口コミ10件に1件以上でラウンジが語られている。40軒の言及率の中央値は5.7%で、5%以上は24軒だった。
| 施設名 | 所在地 | 好意的言及(件) | 言及率 | 公式サイトで確認した専用ラウンジ |
|---|---|---|---|---|
| 京王プラザホテル | 東京都 | 407 | 7.4% | 本館45階「クラブラウンジ」(プレミアグラン宿泊者専用) |
| オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ | 沖縄県 | 327 | 8.6% | クラブラウンジ(クラブルーム・スイート対象) |
| グランドメルキュール沖縄残波岬リゾート | 沖縄県 | 247 | 8.2% | 13階エグゼクティブラウンジ(10〜12階の対象客室)※ |
| 沖縄ハーバービューホテル | 沖縄県 | 240 | 14.7% | クラブラウンジ(クラブフロア宿泊者のみ) |
| ANAインターコンチネンタルホテル東京 | 東京都 | 214 | 9.4% | クラブインターコンチネンタル(ラウンジアクセス付客室) |
| 神戸メリケンパークオリエンタルホテル | 兵庫県 | 210 | 4.6% | エグゼクティブラウンジ(スイート・エグゼクティブルーム専用) |
| センタラグランドホテル大阪 | 大阪府 | 202 | 5.7% | クラブラウンジ「The Club」(クラブフロア宿泊者専用)※ |
| ザ・プリンス パークタワー東京 | 東京都 | 189 | 5.2% | 32階プレミアムクラブラウンジ(クラブフロア専用) |
| ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾート | 沖縄県 | 187 | 8.9% | クラブインターコンチネンタル(ラウンジアクセス付客室) |
| グランドメルキュール八ヶ岳リゾート&スパ | 山梨県 | 165 | 3.9% | エグゼクティブラウンジ(エグゼクティブルーム・スイート) |
| ホテル阪急インターナショナル | 大阪府 | 163 | 9.6% | クラブラウンジ(33・34階クラブフロア専用) |
| 横浜ベイホテル東急 | 神奈川県 | 163 | 4.0% | 25階ベイクラブラウンジ(ベイクラブフロア専用) |
| 琉球ホテル&リゾート 名城ビーチ | 沖縄県 | 158 | 5.8% | プレミアクラブラウンジ(スイート・プレミアクラブルーム専用) |
| 沖縄プリンスホテル オーシャンビューぎのわん | 沖縄県 | 152 | 9.1% | 14階クラブラウンジ(クラブフロア宿泊者専用) |
| ノボテル奈良 | 奈良県 | 152 | 5.8% | エグゼクティブラウンジ(8・9階エグゼクティブルーム・スイート専用) |
| ザ ホテル山楽 金沢 | 石川県 | 151 | 5.6% | 2階プレミアラウンジKANAZAWA(スイート・クラブルーム専用) |
| ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 大阪御堂筋 | 大阪府 | 151 | 4.7% | 25階エグゼクティブラウンジ(エグゼクティブフロア滞在者) |
| コンラッド東京 | 東京都 | 148 | 11.1% | 37階エグゼクティブラウンジ(エグゼクティブフロア宿泊者) |
| 神戸ベイシェラトン ホテル&タワーズ | 兵庫県 | 147 | 7.3% | クラブラウンジ(クラブフロア専用) |
| ヒルトン広島 | 広島県 | 144 | 4.8% | エグゼクティブラウンジ(エグゼクティブルーム・スイート) |
| ANAクラウンプラザホテル広島 | 広島県 | 143 | 10.5% | 最上階クラブラウンジ(クラブフロア) |
| ヒルトン東京 | 東京都 | 133 | 7.2% | 37階エグゼクティブラウンジ(エグゼクティブルーム) |
| グランドプリンスホテル広島 | 広島県 | 131 | 3.8% | クラブラウンジ(18・19階クラブフロア・スイート) |
| ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 東京汐留 | 東京都 | 125 | 4.4% | 38階エグゼクティブラウンジ(エグゼクティブフロアほか) |
| ハイアット リージェンシー 横浜 | 神奈川県 | 124 | 5.1% | リージェンシークラブラウンジ(クラブルーム・スイート専用) |
| ANAクラウンプラザホテル秋田 | 秋田県 | 122 | 10.2% | 6階クラブラウンジ(クラブルーム専用) |
| 琵琶湖ホテル | 滋賀県 | 119 | 5.8% | クラブラウンジ(プレミア・ラグジュアリーフロア専用) |
| グランドプリンスホテル新高輪 | 東京都 | 113 | 3.0% | クラブラウンジ(クラブフロア宿泊者) |
| ホテルグランヴィア京都 | 京都府 | 113 | 3.7% | グランヴィアラウンジ(グランヴィアフロア専用) |
| ロイヤルパークホテル | 東京都 | 110 | 6.0% | エグゼクティブラウンジ(スイート・エグゼクティブフロア専用) |
| フェニックス・シーガイア・オーシャン・タワー | 宮崎県 | 110 | 3.9% | 36階クラブラウンジ(クラブフロア宿泊者) |
| ヒルトン名古屋 | 愛知県 | 109 | 4.0% | 専用ラウンジ(エグゼクティブルーム) |
| グランドニッコー東京 台場 | 東京都 | 109 | 2.8% | エグゼクティブフロア専用ラウンジ(エグゼクティブフロア・スイート) |
| グランドプリンスホテル高輪 | 東京都 | 108 | 4.0% | クラブラウンジ 花雅(クラブフロア専用) |
| ホテルエミオン札幌 | 北海道 | 106 | 3.9% | クラブフロア専用ラウンジ(13・14階クラブフロア) |
| 名古屋プリンスホテル スカイタワー | 愛知県 | 105 | 5.0% | クラブラウンジ(クラブラウンジ付き客室) |
| 第一ホテル東京 | 東京都 | 105 | 5.8% | クラブラウンジ(プルミエールフロア・デラックスタイプ専用) |
| セルリアンタワー東急ホテル | 東京都 | 104 | 5.7% | エグゼクティブフロア・ラウンジ(エグゼクティブフロア専用) |
| 大阪マリオット都ホテル | 大阪府 | 104 | 5.7% | 38階クラブラウンジ(クラブルーム専用) |
| シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル | 千葉県 | 103 | 2.1% | シェラトンクラブラウンジ(クラブ特典付客室) |
立地を地図に落とすと、東京が12軒、沖縄が6軒、大阪が4軒、広島が3軒で、残る15軒は札幌から宮崎まで各地に散らばる。業態では当社区分のシティ系が30軒、リゾート系が10軒だった。円の大きさは好意的言及の件数を表している。
なお、40軒にはヒルトンの4軒(ヒルトン東京830室、ヒルトン名古屋460室、ヒルトン広島420室、コンラッド東京291室)と、ハイアット リージェンシー 横浜(2020年5月開業・315室)が含まれる。客室数と開業年は各社の公表資料による。
出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)
出典: 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」
同一施設比較 — 上乗せは中央値で1泊1万8,700円、率では+43.2%
次に価格である。施設どうしを比べると立地や築年の違いが混ざるため、ここでは同じホテルの中だけで比べた。同じ手順で露天風呂付客室の上乗せを792軒で測った露天風呂付客室の上乗せは1泊約1万円(+23%)— 792軒の同一施設比較と改装回収5.7〜11.1年と並べて読むと、設備ごとの上乗せ水準の違いが見える。メトロエンジンリサーチのデータから、40軒の2026年11月1日〜12月19日泊(49泊分)について、2名1室の掲載価格を客室名ごとに集め、ラウンジを利用できる客室と一般客室を、同じ宿泊日・同じ食事条件で1組ずつ対にしている。客室名からクラブ客室と一般客室を判別して対にできたのは38軒で、ペアは5,769組になった。
結果は、一般客室の最安が中央値4万5,100円、クラブ客室の最安が6万8,100円で、上乗せ額の中央値は1万8,700円(四分位1万2,600〜2万5,200円)、上乗せ率は+43.2%(同+20.7〜+51.3%)だった。2名利用なので、1人あたりに直すと1泊約9,300円である。朝食・ティータイム・カクテルタイムの飲食と専用の滞在空間に、宿泊者がこの水準まで払う価格が実際に並んでいるといえる。
| 比較の方法 | 施設数 | 価格ペア | 上乗せ額(中央値) | 上乗せ率(中央値) | 四分位(率) |
|---|---|---|---|---|---|
| 同じ宿泊日・同じ食事条件(本稿の基準) | 38 | 5,769 | ¥18,700 | +43.2% | +20.7〜+51.3% |
| うち客室面積の差が±10%以内 | 35 | 4,151 | ¥18,000 | +38.8% | +19.7〜+52.0% |
| 同じプラン名で対にできた施設 | 13 | 4,788 | ¥8,500 | +21.6% | +9.7〜+26.6% |
| 1㎡あたり掲載価格(クラブ¥2,071/一般¥1,504) | 36 | — | — | +31.7% | — |
ただし、クラブ客室は高層階や広めの部屋に設定されることが多く、差の一部は部屋そのものの違いかもしれない。そこで面積の差が±10%以内の組み合わせだけに絞ると、35軒・4,151組で上乗せ率は+38.8%、額は1万8,000円とほとんど変わらなかった。1㎡あたりの掲載価格でも、クラブ客室2,071円に対し一般客室1,504円と、施設ごとの比の中央値で+31.7%の開きがある(36軒、対にした客室の面積中央値は32.5㎡と32.0㎡)。上乗せの大半は広さではなく、ラウンジの利用権に付いていると読める。同じ広さどうしで比べると眺望の上乗せが+6.8%にとどまることは眺望客室の上乗せは同じ広さで+6.8%|眺望Capexの許容額と回収年数を業態別に試算で示しており、ラウンジ利用権の+38.8%はその5倍以上の幅になる。
分布を見ると、ひとつの山にはまとまっていない。+45〜60%が10軒で最も多い一方、+20%未満も8軒あり、+60%以上が6軒ある。額では1万〜2万円が13軒、2万〜3万円が11軒で、この2帯に全体の6割強が入る。上乗せの小さい施設と大きい施設がはっきり分かれる理由は、後で見る販売の組み立て方にある。
上乗せは率より額で決まる — 一般客室が高い日も、差額はほぼ動かない
一方で、上乗せを「率」で管理している施設は多くないようだ。一般客室の掲載価格が4.5万円未満の19軒では上乗せ率+44.7%・額1万5,700円、4.5万円以上の19軒では+36.7%・2万3,200円で、単価の高い施設ほど額は増えるが率は下がる(一般客室価格の対数と上乗せ率の相関係数は−0.34)。
同じ施設の中で曜日を比べると、この傾向はさらにはっきりする。土曜泊とそれ以外の両方でペアが取れた33軒では、上乗せ額の中央値が土曜1万8,900円、土曜以外1万8,100円とほぼ同じだった。一般客室の価格が上がる土曜は、率に直すと+29.8%まで下がり、土曜以外の+36.7%を下回る。33軒のうち26軒で土曜のほうが率が低い。繁忙日に一般客室を引き上げても、ラウンジの対価は定額のまま据え置く運用が主流ということになる。
業態別・地域別 — 率は沖縄とリゾート、額は東京が大きい
業態と地域で分けると、率と額で順番が入れ替わる。シティ系28軒は上乗せ率+39.9%・額1万9,600円、リゾート系10軒は+45.2%・1万7,500円だった。地域別では、東京の11軒が額2万3,200円と最も大きいのに対し、率は+35.7%にとどまる。沖縄の6軒は率が+48.4%と高く、額は1万7,800円である。大阪の4軒は+44.3%・2万900円、その他の17軒は+35.0%・1万5,700円だった。
| 区分 | 施設数 | 一般客室の掲載価格(中央値) | 上乗せ額(中央値) | 上乗せ率(中央値) | 四分位(率) |
|---|---|---|---|---|---|
| シティ系 | 28 | ¥47,300 | ¥19,600 | +39.9% | +21.3〜+51.1% |
| リゾート系 | 10 | ¥39,800 | ¥17,500 | +45.2% | +20.7〜+51.0% |
| 東京 | 11 | ¥70,200 | ¥23,200 | +35.7% | +19.1〜+44.6% |
| 大阪 | 4 | ¥55,400 | ¥20,900 | +44.3% | +38.7〜+47.5% |
| 沖縄 | 6 | ¥35,400 | ¥17,800 | +48.4% | +44.2〜+51.0% |
| その他 | 17 | ¥32,100 | ¥15,700 | +35.0% | +20.3〜+61.8% |
背景にあるのは、一般客室の価格水準の違いだろう。東京は一般客室の中央値が7万200円と高く、同じ2万円強の上乗せでも率は小さく出る。沖縄は一般客室が3万5,400円で、滞在時間が長いリゾートではラウンジを朝・昼・夕と使い切れるため、率で5割近い差が受け入れられている。額で見れば地域差は1万5,700〜2万3,200円の幅に収まっており、ラウンジの対価は「1泊1室あたり1.5万〜2.5万円」という全国でほぼ共通の相場を持つと整理できる。
販売設計の2類型 — 共通プラン型は+20%、専用プラン型は+46%
分布が2つに分かれる理由を探ると、売り方の違いに行き着く。38軒のうち13軒は、クラブ客室を一般客室と同じプラン名(早期割引、朝食付きなど)の中の一つの客室タイプとして並べていた。この13軒を同じプラン名どうしで対にすると上乗せは+21.6%・8,500円で、本稿の基準である食事条件ペアで測り直しても+20.3%・7,500円とほぼ一致する。残る25軒は、クラブ客室を「クラブフロア専用プラン」のように独立したプランで売っており、上乗せは+46.2%・2万600円だった。
共通プラン型(13軒)
+20.3%・¥7,500
一般客室と同じプランの中で客室タイプとして選ばせる。比較しやすく、アップセルの入口が広い。
専用プラン型(25軒)
+46.2%・¥20,600
クラブフロアを独立した商品として売る。ラウンジの内容を前面に出し、価格の基準を一般客室から切り離す。
示唆
同じラウンジでも、見せ方で上乗せは2倍以上開く。共通プラン型の施設には、専用プランを併売して単価の天井を試す余地がある。
もちろん、13軒と25軒ではラウンジの内容や規模が違う可能性があり、売り方だけで差が生まれているとは言い切れない。それでも、同じプランの中に並べると一般客室との差が1万円を下回る価格付けになりやすく、独立した商品にすると2万円前後まで開くという傾向は、プラン構成を見直す際の目安になる。
口コミ側 — ラウンジに触れた口コミは総合評価が0.05点高い
ここまでは価格の話だったが、満足度の側からも確かめておきたい。40軒の直近24か月の口コミのうち、総合評価が付いた110,699件を、ラウンジに言及したもの(7,627件)と言及のないもの(103,072件)に分けると、平均は4.45点と4.39点だった。施設ごとに差を取ると中央値は+0.05点で、40軒のうち29軒でラウンジに言及した口コミのほうが高い。ラウンジに触れた口コミの約8割(7,628件中6,091件)は好意的な内容である。
差は小さく、ラウンジを使う客室の宿泊者はもともと単価の高い層であることを踏まえると、「高い料金を払っても評価が下がらない」と読むのが妥当だろう。もう一つ分かったのは、口コミで語られる頻度と上乗せ率が連動しないことである。言及率が5.7%以上の20軒の上乗せ率は+35.8%、5.7%未満の18軒は+45.5%で、相関係数は−0.15にとどまった。口コミに多く書かれるラウンジが高く売れているわけではなく、価格は販売設計で決まっている。口コミの多さは、単価を見直す根拠として使える材料といえる。
保有の側から見る — 40軒のうち6軒はJ-REITの保有物件
投資家にとっては、誰が保有しているかも手がかりになる。40軒を各投資法人の公表資料に基づく保有物件の一覧(2026年10月5日時点)と突き合わせると、6軒が上場ホテルREITの保有物件だった。クラブフロアを持つフルサービス型は変動賃料や運営委託で保有されることが多く、ラウンジによる単価の上積みが賃料に届きやすい。
| 物件名 | 保有法人 | 取得価格 | 客室数 |
|---|---|---|---|
| 沖縄ハーバービューホテル | ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985) | ¥21,562 百万円 | 352 |
| ANAクラウンプラザホテル広島 | 星野リゾート・リート投資法人(3287) | ¥17,784 百万円 | 402 |
| ヒルトン名古屋 | ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985) | ¥15,250 百万円 | 460 |
| オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ | ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985) | ¥14,950 百万円 | 361 |
| シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル(優先出資証券) | インヴィンシブル投資法人(8963) | ¥14,660 百万円 | 1,016 |
| 神戸メリケンパークオリエンタルホテル | ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985) | ¥10,900 百万円 | 323 |
参考までに、40軒のうち推定成約ADRを算出できる30軒の直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の平均は、中央値で3万1,400円(四分位2万600〜3万9,100円、N=30施設)だった。本記事のADRは推定値であり、掲載価格とは基準が異なる。次の試算では、ラウンジに転用する客室の収入をこの水準で置いている。
投資試算 — ラウンジ新設が成り立つクラブ客室数は12室・21室・98室
それでは、上級フロアを新設する場合、クラブ客室が何室あれば見合うのか。ラウンジは客室を削って共用部と人員を置く投資なので、上乗せ額にクラブ客室数と稼働を掛けた増収が、人件費・飲食原価・転用した客室の収入を上回るかどうかが判断の軸になる。前提は次のとおり置いた。面積の前提は公式サイトの開示から組み立てている。横浜ベイホテル東急はベイクラブフロア全61室に対しラウンジ44席(1室あたり0.72席)、京王プラザホテルは153席で535㎡(1席あたり3.5㎡)であり、掛け合わせるとクラブ客室1室あたり約2.5㎡のラウンジ面積になる。
| 項目 | 前提 | 根拠・考え方 |
|---|---|---|
| 実収ベースの上乗せ額 | 掲載の上乗せ額 ÷1.10 ×0.80 | 消費税を除き、割引・会員料金による目減りを2割と仮置き |
| クラブ客室の稼働率 | 70% | 編集部の前提値 |
| 飲食原価 | 1室1泊あたり¥6,000 | 朝食・ティー・カクテルで2名¥5,000、会員特典など無償利用分を2割加算 |
| 運営人員 | 6名・年¥3,000万円 | 7〜21時を常時2名で回す体制、1名あたり年¥500万円 |
| ラウンジ面積 | クラブ客室1室あたり2.5㎡ | 公式開示の席数・面積から算出(上記) |
| 転用する客室の収入 | 推定成約ADR ¥31,400 × 稼働80% × 部門利益率70% | 32㎡の一般客室に換算。ADRは40軒中30軒の中央値 |
| 内装・厨房設備 | 坪200万円(1㎡あたり約¥60.5万円) | 建築着工統計の2025年「ホテル又は旅館」全構造平均(約218万円/坪)をやや下回る水準で仮置き |
上乗せ額は、本稿の分布から下位四分位(掲載1万2,600円)、中央値(1万8,700円)、上位四分位(2万5,200円)の3ケースを置く。実収ベースに直すと9,200円、1万3,600円、1万8,300円である。
| 項目 | A. 下位四分位 | B. 中央値 基準 | C. 上位四分位 |
|---|---|---|---|
| 掲載価格の上乗せ額 | ¥12,600 | ¥18,700 | ¥25,200 |
| 実収ベースの上乗せ額 | ¥9,200 | ¥13,600 | ¥18,300 |
| クラブ客室1室の年間貢献(飲食原価控除後) | ¥81万 | ¥194万 | ¥315万 |
| 転用客室の収入(クラブ客室1室あたり) | ¥50万 | ¥50万 | ¥50万 |
| 差引(クラブ客室1室あたり・年) | ¥31万 | ¥144万 | ¥265万 |
| 人件費を賄えるクラブ客室数 | 98室 | 21室 | 12室 |
| クラブ30室のときの年間収支 | −¥2,080万 | +¥1,320万 | +¥4,940万 |
| クラブ60室のときの年間収支 | −¥1,160万 | +¥5,640万 | +¥1億2,890万 |
| 内装投資(60室・150㎡)2025年実績ベース | ¥9,080万 | ¥9,080万 | ¥9,080万 |
| 同 建設期間のインフレ織込み(年+5%・1.5年) | ¥9,760万 | ¥9,760万 | ¥9,760万 |
| 回収年数(60室) | — | 1.6〜1.7年 | 0.7〜0.8年 |
中央値のケースでは、クラブ客室21室で人件費を賄え、60室なら年間5,640万円のプラスになる。150㎡のラウンジは一般客室4.7室分の面積にあたり、内装投資は2025年実績ベースで9,080万円、建設期間のインフレを年+5%で1.5年分織り込むと9,760万円で、回収は1.6〜1.7年の計算である。なお、工事期間中に客室を止めることで生じる逸失売上を実質Capexに含める考え方は、ホテル改装の逸失売上は工事費の32.6% — 実質Capexは1室300万円→398万円で整理している。上位四分位のケースなら12室から成り立つ。一方、下位四分位のケースでは98室が必要になり、30〜60室の規模では収支がマイナスのまま残る。上乗せ額が実収で1万円を割る価格付けでは、ラウンジは単独の収益装置というより、稼働や会員獲得を支える装置として位置づけることになる。
| 感度(Bケース) | クラブ30室の年間収支 | クラブ60室の年間収支 |
|---|---|---|
| 基準 | +¥1,320万 | +¥5,640万 |
| 上乗せ額 −10% | +¥280万 | +¥3,550万 |
| クラブ客室の稼働 −5pt(65%) | +¥900万 | +¥4,810万 |
| 上乗せ額 −10% かつ 稼働 −5pt | −¥60万 | +¥2,870万 |
| 飲食原価 +20%(¥7,200) | +¥400万 | +¥3,800万 |
| 上乗せ額\クラブ客室の稼働 | 60% | 65% | 70% | 75% | 80% |
|---|---|---|---|---|---|
| 上乗せ額 −20%(実収¥10,880) | −¥1,300万 | −¥1,030万 | −¥770万 | −¥500万 | −¥230万 |
| 上乗せ額 −10%(実収¥12,240) | −¥410万 | −¥60万 | +¥280万 | +¥620万 | +¥960万 |
| 基準(実収¥13,600) | +¥490万 | +¥900万 | +¥1,320万 | +¥1,740万 | +¥2,150万 |
| 上乗せ額 +10%(実収¥14,960) | +¥1,380万 | +¥1,870万 | +¥2,360万 | +¥2,850万 | +¥3,340万 |
| 上乗せ額 +20%(実収¥16,320) | +¥2,270万 | +¥2,840万 | +¥3,400万 | +¥3,970万 | +¥4,530万 |
上乗せ額と稼働を同時に動かして、均衡に近いクラブ30室の収支を並べたのが上の表である。25通りのうち7通りがマイナスになった。上乗せ額を基準どおり確保できれば、稼働が60%まで下がっても+¥490万とプラスを保つ。一方、上乗せ額が1割下がると稼働65%で−¥60万とマイナスに転じ、2割下がると稼働80%でも−¥230万にとどまる。30室前後の規模では、稼働よりも上乗せ額を守れるかどうかが成否を分ける。
感度を見ると、収支を最も動かすのは上乗せ額である。10%下がるだけで30室規模の余裕はほぼなくなる。建設費の上昇は投資額を押し上げる半面、上級フロアの新規供給を抑える方向にも働くため、既にラウンジを持つ施設には追い風になり得る。なお、これは簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。ラウンジの人員を既存の料飲部門と兼務できるか、朝食会場の混雑緩和やスイートの販売にどれだけ寄与するかで、結果は大きく変わる。
運営・投資判断への示唆 — 額の相場、売り方、規模の3点
ここまでを整理すると、検討の順序は3つにまとまる。第一に、上乗せは率ではなく額で考えたい。全国の相場は1泊1室あたり1.5万〜2.5万円で、一般客室が3万円台の施設でも1万5,000円前後が並んでいる。自館の一般客室単価に対する率が高く見えても、額がこの幅に入っていれば市場の水準といえる。
第二に、既にラウンジを持つ施設には、売り方の見直しというアップサイドがある。高い集客力が口コミで実証されている施設でも、クラブ客室を共通プランの一客室タイプとして並べている場合、上乗せは8,000円前後に落ち着きやすい。ここに専用プランを加え、土曜や繁忙日には上乗せ額そのものを段階的に引き上げる設計を組み合わせることで、さらなる収益拡大の機会が生まれる。33軒中26軒で土曜の上乗せ率が下がっている事実は、繁忙日の伸びしろがまだ広く残っていることを示している。
第三に、新設を検討する側は、クラブ客室を20室以上まとめて確保できるかを最初の判断材料にしたい。中央値の上乗せが取れる前提で21室、余裕を見るなら30室以上が目安になる。客室数の少ない施設では、ラウンジを朝食会場やバーと時間帯で兼用し、人員を共通化する設計が有効といえる。
まとめ
口コミでラウンジが好意的に語られる上位50軒のうち、上級客室・会員専用のラウンジを公式に確認できたのは40軒だった。この40軒のうち38軒で同じ施設の中の価格を対にすると、クラブ客室の上乗せは中央値で1泊1万8,700円・+43.2%、同じ広さどうしでも+38.8%である。上乗せは土曜も平日もほぼ同額で、売り方によって+20%台と+46%台に分かれる。投資としては、中央値の上乗せでクラブ客室21室、上位四分位なら12室から人件費を賄える計算になった。2027年度の改装計画で上級フロアを検討する際は、自館で取れる上乗せ額と確保できる客室数を、この分布に当てはめて確かめておきたい。
⚠ 将来日程の掲載価格に関する注意:本記事の上乗せ額・上乗せ率は調査時点でOTAに公開されている掲載価格に基づいており、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。本稿の価格ペアは2026年10月4〜11日に観測した2026年11月1日〜12月19日泊の掲載価格で、調査時点の掲載水準に基づく比較です。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
掲載価格はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計(2026年10月4〜11日に観測した2026年11月1日〜12月19日泊、2名1室・税込、N=38施設・5,769組)。口コミはホテルバンク編集部調べ(NLP解析、2024年10月〜2026年10月)で、言及件数の順位は好意的言及10件以上・総口コミ20件以上の施設が対象。総合評価の比較は直近720日の口コミ(N=110,699件)を対象にしており、言及件数の順位(直近24か月)とは対象期間がわずかに異なる。専用ラウンジの有無は各施設の公式サイトと運営会社の公式リリースを2026年10月11日に確認した。推定成約ADRはN=30施設の2025年10月〜2026年9月平均、J-REITの保有は各投資法人の公表資料(2026年10月5日時点)による。
■ 試算前提
実収ベースの上乗せ額=掲載価格の上乗せ額÷1.10×0.80。クラブ客室の稼働は通年70%(編集部の前提値)、飲食原価は1室1泊6,000円、運営人員は6名・年3,000万円、ラウンジ面積はクラブ客室1室あたり2.5㎡、転用する客室の収入は推定成約ADR 3万1,400円×稼働80%×部門利益率70%(32㎡の一般客室に換算)、内装・厨房設備は坪200万円で置いた。3ケースは上乗せ額の下位四分位・中央値・上位四分位に対応する。年間収支は人件費・飲食原価・転用客室の収入を控除した後の値で、内装投資の償却、金利、租税は含まない。
■ 限界・留意点
掲載価格は調査時点の水準であり、成約価格ではない。宿泊日は2026年11月1日〜12月19日の49泊に限られ、夏季や年末年始の水準は対象外である。価格ペアは客室名からクラブ客室と一般客室を判別できた38軒に限り、スイートと3名以上向けの客室は含まない。母集団は口コミでの好意的言及が多い上位50軒から出発しているため、専用ラウンジを持つ全施設の平均を表すものではない。大阪はN=4と少なく参考値である。共通プラン型と専用プラン型の差には、ラウンジの内容や規模の違いが含まれうる。試算は簡易モデルであり、工事期間中の逸失売上、既存の料飲部門との人員兼務、会員特典による無償利用の比率は施設ごとに異なる。
■ 市場データ
| メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 掲載価格データ(N=38施設・5,769組の同一施設ペア、2026年11月1日〜12月19日泊)、推定成約ADR(N=30施設)、J-REIT保有物件の一覧(2026年10月5日時点) |
| ホテルバンク編集部調べ(NLP解析) — 宿泊者口コミのラウンジ言及(上位50軒 N=8,316件、確認済み40軒 N=6,213件、2024年10月〜2026年10月) |
■ 政府統計・公的データ
| 国土交通省「建築着工統計調査」 |
| e-Stat「建築着工統計調査」統計表一覧 |
■ REIT・事業者の公表資料
| ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)ポートフォリオ |
| インヴィンシブル投資法人(8963)ポートフォリオ |
| 星野リゾート・リート投資法人(3287)ポートフォリオ |
| ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新) |
| 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」 |
■ 各施設の公式サイト・公式リリース(専用ラウンジの確認元、2026年10月11日閲覧)
