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ディズニー・イマジネーション母港2km圏のホテルは4軒1,667室|東京国際クルーズターミナルの前後泊需要と春の単価

投稿日 : 2026.11.04

東京都

投資・開発

ディズニー・イマジネーション母港2km圏のホテルは4軒1,667室|東京国際クルーズターミナルの前後泊需要と春の単価

オリエンタルランドとオリエンタルランド・クルーズは2026年10月14日(水)、日本で初めてのディズニークルーズ船の船名を「ディズニー・イマジネーション」に決めたと発表した。主な発着拠点は東京国際クルーズターミナル(江東区青海二丁目地先)で、就航は2028年度後半(2029年春)の予定である。発着港に船が着く日は、乗船前日に泊まる「前泊」と下船後に泊まる「後泊」の需要が岸壁の周りに立つ。本稿では、このターミナルから半径2kmと5kmの客室ストックを業態別に数え、江東区の春(3〜4月)の推定成約ADRを確かめたうえで、乗下船の時刻が未発表という前提のもとで前後泊需要の規模を感度分析として置いてみる。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
集計対象(客室ストック)
本記事の客室ストックは、東京国際クルーズターミナルから半径2,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月29日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。
半径5,000m圏も同じ条件で集計した。半径圏の中心は東京国際クルーズターミナルの施設位置(北緯35.6175度・東経139.7712度)に置いている。
2km圏・稼働中
4軒 1,667室
掲載7軒 2,183室
5km圏・稼働中
122軒 31,147室
掲載163軒 35,672室
江東区 2026年4月ADR
¥18,100
前年同月比+9.9%(N=41施設)
就航予定
2029年春
2028年度後半・発表2026年10月14日
Key Takeaways
  • — 4軒1,667室 — ターミナル半径2km圏の稼働中客室(2026年10月時点)。台場のグランドニッコー東京 台場とヒルトン東京お台場の2軒で80%を占める。
  • — 122軒31,147室 — 5km圏の稼働中客室。最も厚いのは3〜4km帯の品川・高輪・大井町・豊洲(42軒13,521室)で、岸壁の徒歩圏は薄く都市の在庫は厚い。
  • — ¥18,100(前年同月比+9.9%) — 江東区の2026年4月の推定成約ADR(N=41施設)。1月の1.5倍で年間ピークにあたり、前後泊はこの単価帯に重なる。
  • — 前泊225〜562室/航海 — 報道値の客室約1,250室と前泊率20〜50%(仮定)による感度分析。2km圏稼働客室の13.5〜33.7%、5km圏の0.7〜1.8%に相当する。
  • — 2km圏の新規供給は未確認 — 2027年以降完成予定の建築計画(確認申請ベース)に江東区・台場・有明の案件はなく、2029年春は既存4軒が一次の受け皿になる。

何が決まったか — 船名、母港、2028年度後半の就航

まずは発表の中身を整理しておきたい。オリエンタルランドは2024年7月9日の取締役会で日本を拠点とするディズニークルーズの展開を決議し、同日にディズニー・エンタプライゼズ・インクとライセンス契約を結んだ。このとき開示された総投資額は約3,300億円、2025年度に造船を始めて2028年度の就航を目指すという計画だった。続く2024年11月29日には東京都と東京港のクルーズ事業に関する連携協定を締結し、東京港を主な発着拠点とする方向が固まった。2026年3月24日には事業会社オリエンタルランド・クルーズの設立(同年4月3日予定)を公表している。

そして2026年10月14日、東京国際クルーズターミナルで開いた発表会で船名が「ディズニー・イマジネーション」に決まった。発表によれば、船内には1,300席を超える劇場、テーマの異なる3つのメインダイニング、約30の飲食施設、キッズ専用エリアと大人限定エリアが置かれる。発着拠点は東京国際クルーズターミナル、就航は2028年度後半(2029年春)を予定し、2029年度に通年稼働する計画である。一方で船の総トン数・客室数・乗客定員については日本向けの公式値を本稿では確認できていないため、報道値として扱う。報道では総トン数約14万トン、全長約340m、客室約1,250室、乗客定員約4,000人、乗組員約1,500人とされ、2022年就航の「ディズニー・ウィッシュ」をベースに一部を日本向けにアレンジする船型と伝えられている。航海日数は2〜4泊程度、予約開始は就航の半年前から、という計画も報じられた。

受け入れる側の岸壁も確認しておく。東京国際クルーズターミナルは2020年9月10日(木)に開業した東京港の客船ターミナルで、岸壁の延長は430m、幅30m、水深は−11.5m、ターミナルビルは鉄骨造4階建て・延床面積約19,000㎡である。東京都港湾局は開業時に「世界最大のクルーズ客船にも対応可能」な施設と位置づけていた。最寄りはゆりかもめの東京国際クルーズターミナル駅で徒歩約8分、臨海副都心の青海地区に立地する。

東京国際クルーズターミナルとディズニークルーズ事業の経緯
日付出来事出典
2020年9月10日東京国際クルーズターミナル開業(岸壁430m・水深−11.5m)東京都港湾局 報道発表
2024年7月9日オリエンタルランドがディズニークルーズ事業の開始を決議、ライセンス契約締結。総投資額約3,300億円、2028年度就航目標同社「新たな事業の開始に関するお知らせ」
2024年11月29日東京都と東京港のクルーズ事業に関する連携協定。主な発着拠点を東京港に乗りものニュース
2026年3月24日オリエンタルランド・クルーズ設立を公表(4月3日設立予定)同社お知らせ
2026年10月14日船名「ディズニー・イマジネーション」を発表。2028年度後半(2029年春)就航予定、2029年度通年稼働トラベルボイス、トラベルWatch

出典:各社公表資料・報道よりホテルバンク編集部作成

ターミナル2km圏は4軒1,667室 — 台場・青海の大型2軒が8割を占める

ここからが本稿の主題である。前後泊の需要は「港がある区」ではなく「乗下船する岸壁」から発生するため、ターミナルの施設位置を中心に半径2kmと5kmで客室ストックを数えた。半径2km圏で主要予約サイトに掲載のある宿泊施設は7軒2,183室(うち第一ホテル東京シーフォートとANAホリデイ・イン東京ベイは同じ建物の旧名・新名で、建物単位では6軒2,051室)、このうち直近3か月に販売価格が確認できた稼働中の施設は4軒1,667室だった。内訳はグランドニッコー東京 台場(882室)とヒルトン東京お台場(453室)の台場2軒で1,335室と、稼働客室の80%を占める。残りは有明側のホテルトラスティ東京ベイサイド(200室)と、天王洲側で2023年2月に閉館した第一ホテル東京シーフォートを改装し、2025年4月にリブランド開業したANAホリデイ・イン東京ベイ(132室)である。

ヒルトン東京お台場はヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)によれば客室453室・宴会場22・料飲施設8を備え、2015年にリブランドで開業した施設である。グランドニッコー東京 台場は1998年開業の882室で、客室は33〜50㎡のツイン・ダブル中心の構成になっている。客室面積が確認できる範囲では、この2軒の計1,335室が30㎡以上の床で構成されており、3〜4名で乗船するファミリー層が前泊に使いやすい間取りといえる。一方でホテルトラスティ東京ベイサイドは14〜27㎡のシングル・ダブル中心で、2名以下の利用に向く。

ターミナル半径2km圏の稼働中4軒と春の単価(2026年3〜4月)
施設客室業態距離開業2026年3月 ADR2026年4月 ADR
グランドニッコー東京 台場882シティホテル878m1998年¥47,750¥47,871
ヒルトン東京お台場453デラックスホテル986m1996年(2015年リブランド)¥45,017※¥49,027※
ホテルトラスティ東京ベイサイド200シティホテル1,898m2008年¥18,158¥20,241
ANAホリデイ・イン東京ベイ132ビジネスホテル1,828m2025年¥37,654¥41,670

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(半径2,000m圏・稼働中4軒、2026年10月時点)。ADRは各施設の推定成約ADR(税抜相当)。※ヒルトン東京お台場はデラックス業態のため推定成約ADRの対象外で、掲載価格(最安プラン水準・2名1室・税込)の月内平均を示す

2km圏の客室ストックは過去10年ほとんど動いていない。2017年時点で6軒2,051室だったものが2026年には5軒1,959室と、軒数・室数ともほぼ横ばいで推移している。2023年に第一ホテル東京シーフォート(132室)が閉館し、2025年に同じ建物がANAホリデイ・イン東京ベイ(132室)として再開業したため、10年間で新築による純増はない。半径5kmまで広げると景色が変わり、稼働中122軒31,147室の在庫がある。2km圏の1,667室は5km圏の5.4%にすぎず、残りの9割超は有明・品川・豊洲・浜松町方面に分散している。

5km圏は122軒31,147室 — 距離帯で見ると3〜4kmの品川・高輪に最大の塊

距離帯ごとに稼働中の客室を並べると、受け皿の重心がどこにあるかが見える。2〜3km帯は15軒5,231室で、有明の相鉄グランドフレッサ 東京ベイ有明(912室)・東京ベイ有明ワシントンホテル(830室)、天王洲・品川シーサイド側のビジネスホテル群が並ぶ。3〜4km帯は42軒13,521室と最も厚く、品川プリンスホテル(2,384室)やグランドプリンスホテル新高輪(908室)など品川・高輪の大型シティホテルと、大井町・豊洲の施設が含まれる。4〜5km帯は61軒10,728室で、浜松町・芝・五反田・大森のビジネスホテルが中心になる。

距離帯別の稼働中客室と業態構成(半径5km圏、2026年10月時点)
距離帯稼働軒数稼働客室ビジネスシティデラックス主な施設(客室数上位)
〜2km(台場・青海)41,6671321,082453グランドニッコー東京 台場(882室)、ヒルトン東京お台場(453室)、ホテルトラスティ東京ベイサイド(200室)、ANAホリデイ・イン東京ベイ(132室)
2〜3km(有明・天王洲・品川シーサイド)155,2312,9702,2450相鉄グランドフレッサ 東京ベイ有明(912室)、東京ベイ有明ワシントンホテル(830室)、ヴィラフォンテーヌグランド東京有明(749室)、東横INN品川港南口天王洲アイル(740室)、ハートンホテル東品川(448室)
3〜4km(品川・高輪・大井町・豊洲)4213,5215,8546,047537品川プリンスホテル(2,384室)、アワーズイン阪急(1,388室)、品川プリンスホテル イーストタワー(919室)、グランドプリンスホテル新高輪(908室)、ラビスタ東京ベイ(582室)
4〜5km(浜松町・芝・五反田・大森)6110,7286,3692,6581,026ザ・プリンス パークタワー東京(603室)、シェラトン都ホテル東京(484室)、東京プリンスホテル(462室)、ホテルマイステイズ五反田駅前(384室)、三井ガーデンホテル汐留イタリア街(372室)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(半径5,000m圏・稼働中122軒31,147室、2026年10月時点)。客室数は業態別の稼働客室

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(半径5,000m圏・稼働中122軒、2026年10月時点)

業態の構成を5km圏全体で見ると、ビジネスホテルが71軒15,325室(稼働客室の49%)、シティホテルが27軒12,032室(39%)、デラックスホテルが7軒2,016室(6%)という配分になる。201室以上の大型施設が48軒22,781室と稼働客室の73%を占めるため、クルーズ会社や旅行会社が客室ブロックをまとめて押さえる運用には向いた市場といえる。5km圏の客室ストックは2019年の117軒28,661室から2026年の131軒31,815室へ3,154室(+11.0%)増えており、2020年代開業の施設が32軒6,204室を占める(開業年が確認できない8軒314室は年次推移に含めていない)。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(半径5,000m圏・各年末時点で開業済みの施設、開業年が確認できる施設のみ、OTA掲載確認ベース、2026年10月時点)

地図で見ると構図はさらに明快である。ターミナルの2km圏は台場・青海・有明西側の埋立地で、宿泊施設は台場の2軒に寄っている。有明の大型ホテル群は2〜3kmの帯に、品川・高輪・浜松町の在庫は運河と湾を挟んだ対岸にある。徒歩で岸壁に向かえるのは実質的に台場の2軒と有明側の数軒で、残りはゆりかもめ・りんかい線、あるいはシャトルバスやタクシーでの移動になる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(稼働中122軒、円の大きさ=客室数)

春の単価 — 江東区の4月ADRは1.8万円、1月の1.5倍の年間ピーク

就航予定の「2029年春」がどの月になるかはまだ分からないが、春休みから新年度にかけての3〜4月は東京の宿泊単価が年間の山を作る時期である。ターミナルが立地する江東区(有明・豊洲・青海を含む)の推定成約ADRを見ると、2026年3月は¥15,400(前年同月比+4.3%)、4月は¥18,100(同+9.9%)だった。4月の水準は1月の¥12,100に対して1.50倍にあたり、2025年も4月(¥16,500)が11月(¥16,500)と並ぶ年間の高値だった。東京都全体の4月は¥17,800(N=1,144施設)で、江東区はほぼ同じ水準にある。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(江東区 N=39〜42施設、東京都 N=1,067〜1,151施設。確定月のみ、2026年10月以降の推定は含まない)

業態別では、江東区のビジネスホテルが2026年4月に¥16,500(N=33施設)、シティホテルが¥20,400(N=7施設)と、どちらも3月から4月にかけて切り上がる形になった。ターミナル2km圏の個別施設も同じ季節性を示す。グランドニッコー東京 台場は2026年3月¥47,800・4月¥47,900で、2025年の同時期(3月¥46,300・4月¥48,200)とほぼ同じ高さを保っている。ホテルトラスティ東京ベイサイドは4月¥20,200と前年同月の¥16,600から+21.7%、ANAホリデイ・イン東京ベイは4月¥41,700で前年同月比+21.0%と、中価格帯の2軒は春の単価を一段引き上げた。ヒルトン東京お台場は掲載価格の最安プラン水準で3月¥45,000・4月¥49,000(2名1室・税込)である。

ここから読めるのは、クルーズの前後泊が「安い空室を埋める」需要ではなく、既に年間ピークにある春の単価帯に上乗せで入ってくる需要だということである。前泊客は乗船日が固定されているため日付をずらせず、価格感応度は通常のレジャー客より低い。2029年春の就航時に2km圏の4軒が受け止める需要は、単価の面では追い風になりやすい。

前後泊需要の考え方 — 乗客定員4,000人の報道値から感度分析

乗下船の時刻と航海日程は未発表である。したがって、ここで示す数字は「どれだけの前後泊が発生しうるか」を仮定ごとに置いた感度分析であり、需要予測ではない。前提は次のとおりとする。客室約1,250室・乗客定員約4,000人は報道値、1航海あたりの乗船客室は船の客室稼働率90%(就航後の通年平均として置く編集部仮定)として1,125室、前泊率(乗船前日に岸壁周辺で泊まる客室の割合)を20%・35%・50%、後泊率(下船後に泊まる割合)を10%・20%・30%の3段階に置く。前泊率は、乗船が午後の場合に首都圏居住者は自宅から直行できる一方、地方や海外からの乗客は前日入りが基本になることを踏まえたレンジである。

前後泊需要の感度分析 — 3シナリオ(1航海あたり)
シナリオ前泊後泊1航海の前後泊前泊÷2km圏稼働客室前泊÷5km圏稼働客室週2回発着の場合の週間室泊(÷2km圏週間供給)
低位(前泊20%・後泊10%)225室112室337室泊13.5%0.7%674室泊(5.8%)
中位(前泊35%・後泊20%)394室225室619室泊23.6%1.3%1,238室泊(10.6%)
高位(前泊50%・後泊30%)562室338室900室泊33.7%1.8%1,800室泊(15.4%)

出典:ホテルバンク編集部試算(客室数・乗客定員は報道値、稼働率・前後泊率は仮定)。2km圏稼働客室1,667室、5km圏31,147室はメトロエンジンリサーチ(2026年10月時点)

出典:ホテルバンク編集部試算(前泊室数と2km圏稼働客室1,667室の比較)

中位シナリオでは1航海あたり前泊394室・後泊225室、合計619室泊が岸壁の周りに立つ。前泊394室は2km圏の稼働客室1,667室の23.6%にあたり、5km圏では1.3%にとどまる。高位シナリオの前泊562室でも2km圏の33.7%、5km圏の1.8%である。航海日数が2〜4泊なら発着は週2回前後になるため、中位で週1,238室泊、2km圏の週間供給(1,667室×7泊)の10.6%に相当する。

この比率をどう読むかが本稿の結論に関わる。5km圏の3万室超で受けると考えれば、ディズニークルーズの前後泊は既存市場に吸収できる規模である。ただし乗客定員約4,000人を客室約1,250室で割ると1室あたり3.2人となり、3〜4名で乗船するファミリーが主な客層になる。2名定員の客室では1家族に2室が必要になるため、前泊率50%・1家族1.5室換算なら必要室数は843室まで膨らむ。2km圏で30㎡以上の床を持つ台場2軒の1,335室は、この層を1室で受けられる数少ない在庫であり、乗船日の前夜に限れば受け皿が台場に集中する構図が見えてくる。前泊と後泊が同じ週末に重なる日程や、春休み・GWの一般需要と重なる日程では、2km圏の4軒は満室に近い状態になりやすく、2〜3km帯の有明と対岸の品川が二次的な受け皿になるだろう。

家族単位で客室を分ける比率まで含めると、前夜に必要な室数は2つの仮定の掛け合わせで決まる。前泊率と1家族あたりの室数を軸に置くと、2km圏の稼働客室1,667室に対する比率は13.5%から50.6%まで広がる。表の右下(前泊率50%・1家族1.5室)が本文の843室にあたり、2km圏の約半分を乗船日前夜だけで使う水準になる。

2軸感度分析 — 前泊率×1家族あたり室数(乗船日前夜の必要室数)
前泊率(前泊室数)1家族1.0室1家族1.25室1家族1.5室
前泊率20%(225室)225室(13.5%)281室(16.9%)337室(20.2%)
前泊率35%(394室)394室(23.6%)492室(29.5%)591室(35.5%)
前泊率50%(562室)562室(33.7%)702室(42.1%)843室(50.6%)

出典:ホテルバンク編集部試算(乗船1,125室・前泊率・1家族あたり室数はいずれも仮定、括弧内は2km圏稼働客室1,667室に対する比率。2km圏の稼働客室はメトロエンジンリサーチ、2026年10月時点)

ホテルバンクでは横浜港の乗下船40万人から前後泊需要を逆算した記事で、発着1回あたり客室216室という目安を置いた。ディズニー・イマジネーションは報道値の乗客定員が約4,000人と、横浜港に発着する船の平均よりかなり大きいため、1航海の前後泊はその2〜3倍の規模になりうる。さらにオリエンタルランド・クルーズの椎葉亮太郎社長は発表会で、東京国際クルーズターミナルを拠点に2〜3泊のショートクルーズを設定すれば日本の平均宿泊数1.7泊に収まると説明している。短い航海は発着回数を増やすため、週単位で見た前後泊の総量は航海日数が短いほど大きくなる。

既存の「クルーズ母港」記事との線引き — 供給の空白ではなく需要源の具体化

ホテルバンクではクルーズ母港の徒歩圏に客室はあるか — 9ターミナル実測で、横浜・神戸・博多・那覇・長崎の9ターミナルについて半径1.5km/3kmの客室を数え、大型船バースほど徒歩圏の宿泊が薄いことを示した。本稿はその分析単位をそのまま東京国際クルーズターミナルに持ち込み、ディズニークルーズという具体的な需要源が決まった港を扱っている点で異なる。9ターミナルの実測では、大型船用の横浜・大黒ふ頭が1.5km圏0室、神戸ポートターミナルが4施設1,315室だった。東京国際クルーズターミナルの2km圏4軒1,667室は、この2つの大型船バースに近い薄さであり、一方で5km圏に3万室超の在庫を持つ点で那覇の若狭バースや横浜の大さん橋に近い。「岸壁の徒歩圏は薄く、都市の在庫は厚い」という東京港の構造は、前泊客をどう岸壁まで運ぶかという送迎設計の話になる。

供給パイプラインの面では、国土交通省の建築計画(確認申請ベース、50室以上)のうち2027年以降に完成予定の東京都内の案件は千代田区・中央区・渋谷区・荒川区に集中しており、江東区・港区台場・有明の住所で該当する案件は調査時点では確認できない。確認申請は開業の1〜2年前に出るのが通常であるため、2029年春の就航に間に合う新規供給が今後追加される可能性はあるものの、現時点の確定パイプラインは下限値として2km圏の4軒1,667室がそのまま受け皿になる前提で考えるのが妥当である。臨港地区の分区条例がホテル立地に与える制約は臨港地区にホテルは建つかで整理している。

まとめ — 2029年春に向けて運営側が準備できること

整理すると、ディズニー・イマジネーションの母港となる東京国際クルーズターミナルは、半径2km圏に稼働中4軒1,667室、5km圏に122軒31,147室の受け皿を持つ。2km圏の在庫は10年間ほぼ横ばいで、台場の大型2軒が8割を占める。江東区の春の推定成約ADRは2026年4月に¥18,100(前年同月比+9.9%)と年間ピークにあり、前後泊需要はこの単価帯に重なって入ってくる。報道値をもとにした感度分析では、1航海あたりの前泊は2km圏稼働客室の13.5〜33.7%、5km圏の0.7〜1.8%に相当する。

台場・有明の運営者にとっては、乗下船時刻と航海日程が公表された時点で、乗船日前夜の3〜4名利用プラン、ターミナルまでの荷物付き送迎、下船後のレイトチェックインといった商品設計を検討したい。品川・浜松町側の施設にとっては、ゆりかもめ・りんかい線でのアクセス案内と、前泊と東京観光を組み合わせた連泊の提案が有効といえる。予約開始は就航の半年前からと報じられており、2028年秋以降に乗船日が確定した顧客から前泊の予約が入り始める計算になる。それまでに岸壁周辺の受け皿がどう変わるかは、本稿の2km圏・5km圏の数字を起点に追っていきたい。

本稿の前提について:船の総トン数・客室数・乗客定員・航海日数は報道値であり、オリエンタルランドの公式発表で確定した数値ではない。感度分析の稼働率・前泊率・後泊率はホテルバンク編集部の仮定であり、需要予測ではない。ADRは確定月(2026年9月まで)の推定成約ADRのみを用い、2026年10月以降の推定値は使用していない。

よくある質問

Q. ディズニー・イマジネーションはいつ、どこから出航しますか。
A. オリエンタルランドの発表では、主な発着拠点は東京国際クルーズターミナル(江東区青海)で、就航は2028年度後半(2029年春)の予定です。2029年度に通年稼働する計画と報じられています。

Q. ターミナルから歩ける範囲にホテルはどれくらいありますか。
A. 半径2km圏で稼働中の施設は4軒1,667室です(2026年10月時点)。グランドニッコー東京 台場(882室)、ヒルトン東京お台場(453室)、ホテルトラスティ東京ベイサイド(200室)、ANAホリデイ・イン東京ベイ(132室)の4軒です。

Q. 春の宿泊単価はどのくらいですか。
A. 江東区の推定成約ADRは2026年3月が¥15,400、4月が¥18,100でした。4月は年間のピークで、1月の約1.5倍の水準です。

あわせて読みたい

参考資料・出典一覧

■ 一次資料・公的資料

■ 報道

■ データソース

メトロエンジンリサーチのOTA公開価格・在庫データ(半径2km・5km圏の客室ストックは2026年10月29日時点、客室数10室以上・レジャーホテル除く)、江東区・東京都の推定成約ADR(2025年1月〜2026年9月の確定月、江東区N=39〜42施設・東京都N=1,067〜1,151施設)、オリエンタルランドの適時開示、東京都港湾局資料、各社報道。

■ 試算前提

船の客室約1,250室・乗客定員約4,000人は報道値。1航海の乗船客室は客室数の90%(仮定)の1,125室、前泊率20%・35%・50%、後泊率10%・20%・30%、1家族あたり室数1.0〜1.5室、発着は週2回(航海2〜4泊の報道からの仮定)。比率の分母は2km圏稼働客室1,667室・5km圏31,147室。

■ 限界・留意点

乗下船の時刻・航海日程と日本向けの船の諸元は未発表で、試算は需要予測ではなく感度分析である。推定成約ADRは最安プラン水準に業態別係数を掛けた推定値(上場ホテルREITの開示実績との誤差中央値約7%)で、デラックス業態のヒルトン東京お台場は掲載価格で代替した。客室ストックはOTA掲載ベースで、団体専用在庫などは含まない。新規供給は確認申請ベースのため、今後申請される案件は反映していない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 半径2km・5km圏の客室ストック(稼働中4軒/122軒、2026年10月時点)、江東区・東京都の推定成約ADR(2025年1月〜2026年9月、確定月)、個別施設の推定成約ADR・掲載価格
  • 国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(東京都内50室以上の建築計画、確認申請ベース)

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

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