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クルーズ船寄港回数ランキング2025|1位博多・横浜209回、上位10港の5km圏客室数

投稿日 : 2026.09.25

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エリア・施設分析

クルーズ船寄港回数ランキング2025|1位博多・横浜209回、上位10港の5km圏客室数

国土交通省が2026年2月20日に公表した「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」によると、2025年に日本の港湾へ寄港したクルーズ船は3,117回に達した。これはコロナ前のピークだった2018年の2,930回を上回る、過去最多の水準である。港湾別の第1位は博多港と横浜港がともに209回、第3位は那覇港205回、第4位は長崎港198回、第5位は神戸港142回。では、これらの港に船が着いたとき、旅客を受け止める客室はどれだけ用意されているのか。本稿では上位10港の代表バースを基点に半径5km圏の客室数を実測し、寄港1回あたりの客室ストックという物差しで10港を並べ直す。

本記事における指標の定義

  • 寄港回数:国土交通省港湾局が港湾管理者からの聞き取りをもとに集計した2025年の速報値。船内で1泊以上するクルーズ船を対象とし、日帰りクルーズは対象外。港湾法上の港湾に加え、沖に停泊して乗客が通船で上陸した場合や漁港への寄港も含む。速報値のため今後変動する可能性がある。
  • 客室ストック:各港の代表バースを中心とする半径5km圏に立地し、直近3か月(2026年6〜8月)に主要予約サイト上で掲載が確認できた施設の客室数合計。掲載が確認できない施設は含みません。寄港回数は港全体(複数ふ頭を含む)の集計値であるのに対し、客室ストックは代表バース1点を基点とした円内の集計であり、両者の空間的な単位は完全には一致しません。
  • 寄港1回あたり客室ストック:上記の客室ストックを2025年の寄港回数で割った値。港の客室供給の厚みを寄港頻度に対して正規化した指標で、当社が本稿のために設定したものです。
  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)で、本稿では各港の所在市区町村について月次値を単純平均しています。
  • データ出典:国土交通省「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」/メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
  • — 2025年のクルーズ船寄港回数は3,117回(外国船社2,352回・日本船社765回)で、2018年のピーク2,930回の約106%。訪日クルーズ旅客は176.7万人で2017年ピークの約70%。
  • — 港湾別は博多港・横浜港がともに209回で同率1位、以下 那覇205・長崎198・神戸142・石垣130・鹿児島129・佐世保128・広島106・清水105。上位10港で1,561回=全体の50.1%を占める。
  • — 上位10港の半径5km圏の客室ストックは1,610施設・131,345室。寄港1回あたりに換算すると清水港10.6室から博多港200.2室まで約19倍の開きがある(10港平均84.1室)。
  • — 日本船社の発着港となっている横浜港・神戸港は、圏内客室の88.9%・86.8%が100室以上の施設に集中し、1施設平均も154.8室・127.7室と大きい。団体ブロックを受けやすい構成が整っている。
  • — 2026年1〜8月の推定成約ADRは博多区が約14,300円で10都市中最高、最低の鹿児島市(約6,700円)との差は2.1倍。前年同期比の伸びは那覇市+15.9%・博多区+12.8%・石垣市+9.7%が上位。
2025年 寄港回数
3,117回
前年比 約1.3倍・2018年比106%
訪日クルーズ旅客
176.7万人
前年比 約1.2倍
上位10港の寄港シェア
50.1%
1,561回 / 3,117回
上位10港 5km圏の客室
131,345室
1,610施設(掲載確認ベース)
寄港1回あたり客室
10.6〜200.2室
清水港〜博多港・10港平均84.1室

出典:国土交通省「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」(2026年2月20日公表)、メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(客室ストックは2026年6〜8月に掲載を確認できた1,610施設・131,345室)

寄港3,117回は2018年ピークの106% — 旅客は回復途上で伸びしろが残る

2025年の寄港回数3,117回の内訳は、外国船社が運航するクルーズ船2,352回、日本船社が運航するクルーズ船765回である。外国船社分は前年比約1.2倍で、コロナ前のピークだった2017年(2,013回)の約117%に達した。日本船社分は前年比約1.4倍だが、2018年の1,017回に対しては約75%の水準で、こちらはまだ回復の途上にある。

一方、訪日クルーズ旅客数は176.7万人。前年比では約1.2倍だが、2017年のピーク252.9万人に対しては約70%であり、寄港回数の回復よりも旅客数の回復が遅れている。この差が何を意味するかというと、1隻あたりの旅客規模が小さい船の寄港が増えているということだ。国土交通省の資料では、コロナ前に多数を占めていたカジュアルクラスに対し、コロナ後はプレミアム・ラグジュアリー・エクスペディションクラスの小型船の寄港が増加し、地方港への寄港も増えていると整理されている。2025年のクラス別内訳はカジュアル1,377回、高価格帯3クラス合計975回であった。

政府が2025年に向けて掲げていた目標は、訪日クルーズ旅客250万人・外国クルーズ船の寄港回数2,000回超・外国クルーズ船が寄港する港湾数100港である。寄港回数は2,352回で目標を上回ったが、旅客数176.7万人と港湾数93港はまだ余地が残る。つまり寄港の「回数」は先に戻り、「人数」と「裾野の広がり」が後から追いついてくる局面にある。宿泊側から見れば、寄港が増えている港で旅客数がこれから伸びるという順序で需要が動くことになる。

出典:国土交通省「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」よりホテルバンク編集部作成

港湾別ランキング上位10港 — 第1位は博多港と横浜港の209回

港湾別の寄港回数(外国船社・日本船社の合計)は、博多港と横浜港がともに209回で同率1位となった。博多港は前年も1位(204回)で、連続して首位を維持している。横浜港は前年4位(146回)から63回増で、上位10港のなかで最大の増加幅である。第3位の那覇港は205回(前年2位・175回)、第4位の長崎港は198回(前年3位・160回)、第5位の神戸港は142回(前年7位・95回)と続く。

注目したいのは、船社の国籍で見たときに順位が入れ替わる点だ。外国船社のクルーズ船だけで数えると、第1位は長崎港194回、第2位が博多港191回、第3位が那覇港187回となり、横浜港は105回で第7位に下がる。逆に日本船社のクルーズ船だけで数えると、第1位は横浜港104回、第3位が神戸港43回である。横浜港の209回という数字は、外国船の通過寄港と日本船の発着(乗下船)の両方を厚く持っていることの結果であり、長崎港の198回とは需要の性格がまったく違う。

表1 2025年 クルーズ船寄港回数 上位10港(国土交通省速報値・外国船社/日本船社別内訳と2024年比)
順位港湾所在2025年 寄港回数うち外国船社うち日本船社2024年増減
1博多港福岡県福岡市20919118204(1位)+5
1横浜港神奈川県横浜市209105104146(4位)+63
3那覇港沖縄県那覇市20518718175(2位)+30
4長崎港長崎県長崎市1981944160(3位)+38
5神戸港兵庫県神戸市142994395(7位)+47
6石垣港沖縄県石垣市1301219120(5位)+10
7鹿児島港鹿児島県鹿児島市1291227105(6位)+24
8佐世保港長崎県佐世保市128122672(10位)+56
9広島港広島県広島市1061006——
10清水港静岡県静岡市10599687(9位)+18
—上位10港 計—1,5611,340221——
—全国計—3,1172,3527652,472+645

出典:国土交通省「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」よりホテルバンク編集部作成。「うち日本船社」は総数から外国船社分を差し引いた差分(博多・横浜・那覇・神戸は同資料の日本船社別集計と一致)。広島港は2024年の上位10港圏外のため増減欄なし。

上位10港の合計は1,561回で、全国3,117回の50.1%を占める。裏返せば残りの半分は10港以外に分散しており、外国クルーズ船が寄港した港湾は93港に及ぶ。上位集中と裾野の拡大が同時に進んでいるのが2025年の特徴だ。

上位10港の半径5km圏にある客室を実測する

次に、それぞれの港に船が着いたとき、旅客や乗員が徒歩・短距離移動で到達できる範囲にどれだけの客室があるかを見る。各港の代表的なクルーズバースを中心点として半径5km圏を切り出し、直近3か月に主要予約サイト上で掲載が確認できた施設の客室数を合計した。10港合計で1,610施設・131,345室である。なお、乗下船客が歩いて到達できる範囲に絞った半径1,500m圏の実測はクルーズ母港の徒歩圏の客室供給で扱っており、本稿の5km圏はタクシー・シャトルでの移動を含む現実的な受け皿の範囲として設定している。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(円の大きさは半径5km圏の客室数)

表2 上位10港の代表バースから半径5km圏の宿泊施設数・客室数と寄港1回あたり客室ストック(2026年6〜8月に掲載を確認できた施設)
港湾寄港回数5km圏 施設数5km圏 客室数1施設平均100室以上の客室数同 構成比寄港1回あたり客室
博多港20954741,83776.5室33,86280.9%200.2室
那覇港20531923,72374.4室17,37673.2%115.7室
横浜港20912719,660154.8室17,48188.9%94.1室
神戸港14210313,150127.7室11,41986.8%92.6室
広島港1061048,54982.2室7,02182.1%80.7室
鹿児島港129929,14899.4室6,81374.5%70.9室
長崎港1981287,45658.2室5,28470.9%37.7室
石垣港1301434,68532.8室2,09044.6%36.0室
佐世保港128302,02467.5室1,29163.8%15.8室
清水港105171,11365.5室65358.7%10.6室
10港 計1,5611,610131,34581.6室103,29078.6%84.1室

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(半径5km圏・直近3か月に掲載が確認できた1,610施設)

客室ストックの絶対量では博多港の41,837室が圧倒的で、第2位の那覇港23,723室の1.8倍にあたる。博多港の圏内には福岡市博多区・中央区の中心市街地がまるごと入るため、天神・博多駅周辺の宿泊集積がそのまま受け皿になる構図だ。圏内最大の施設はヒルトン福岡シーホーク(客室1,052室・ヒルトン公表値)で、1施設だけで1隻の乗客規模に近い客室を持つ。

対照的に、清水港の圏内は17施設・1,113室、佐世保港は30施設・2,024室とコンパクトである。両港ともJR駅前の徒歩圏に宿泊施設がまとまっており、施設数が少ないぶん1施設あたりの重みが大きい。清水港では東横INN静岡清水駅前(246室)、佐世保港では東横INN佐世保駅前(272室)が圏内最大規模で、いずれも駅前立地で乗下船客の動線に乗りやすい位置にある。

出典:国土交通省「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

寄港1回あたり客室ストックは10.6室〜200.2室 — 約19倍の開き

客室数の絶対量は都市規模に引っ張られるため、寄港頻度で正規化してみる。客室ストックを2025年の寄港回数で割った「寄港1回あたり客室ストック」は、博多港の200.2室が最も厚く、以下 那覇港115.7室、横浜港94.1室、神戸港92.6室、広島港80.7室、鹿児島港70.9室と続く。10港平均は84.1室である。

下位に並ぶのは清水港10.6室、佐世保港15.8室、石垣港36.0室、長崎港37.7室。最も厚い博多港と最も薄い清水港の差は約19倍に開く。ここで重要なのは、この数字の低さがそのまま「受け皿が回っていない」ことを意味しないという点だ。外国クルーズ船の通過寄港は、朝入港して夕方出港する日帰り上陸が基本であり、そもそも宿泊が発生しにくい。清水港99回・佐世保港122回・長崎港194回という外国船の寄港回数は、現時点では主に上陸ツアーと市内消費として地域に落ちている。

言い換えれば、この4港は「寄港はすでに十分にある港」であり、そのうちごく一部でも宿泊に転換できれば宿泊需要が動く構造を持っている。寄港1回あたり客室ストックが薄い港ほど、1泊分の需要が客室需給に与えるインパクトは大きい。逆に博多港・那覇港のように厚い港は、団体規模の前後泊やクルー(乗員)の宿泊まで受け止められる余力があるといえる。

出典:国土交通省「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

客室の粒度 — 発着港では100室以上の施設に客室が集中する

もうひとつ、客室の「量」だけでなく「粒度」を見ておきたい。クルーズの前後泊や乗員の宿泊は、1施設あたり数十室単位のブロックで動くことが多いため、小規模施設が多数ある構成よりも、大型施設が数棟ある構成のほうが受けやすい。

1施設あたりの平均客室数は、横浜港154.8室・神戸港127.7室・鹿児島港99.4室の順で大きい。100室以上の施設に客室がどれだけ集中しているかを見ると、横浜港88.9%、神戸港86.8%、広島港82.1%、博多港80.9%が上位である。横浜港圏内で最大の施設はアパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉の2,311室で、単独で大規模なブロックを受けられる規模を持つ。神戸港圏内では神戸ポートピアホテル(737室)が最大だ。

一方、石垣港の1施設平均は32.8室、100室以上の施設への集中度は44.6%で、10港のなかで最も小口分散型の構成である。石垣島は民宿・小規模ホテル・コンドミニアムを含む多様な宿泊形態が発達しており、圏内143施設という施設数は横浜港(127施設)より多い。この構成は個人客の受け皿としては層が厚い一方で、団体ブロックの受け止め方は大型施設中心の港とは違う設計になる。石垣港圏内の最大規模施設はANAインターコンチネンタル石垣リゾート(458室)である。沖縄県全体の客室規模の分布は沖縄のホテル客室数ランキングで整理している。

受け皿余力が厚い港

博多港200.2室・那覇港115.7室。中心市街地の宿泊集積がそのまま圏内に入り、団体前後泊と乗員宿泊の双方を受け止められる。大型施設の構成比も7〜8割。

発着港型の構成

横浜港・神戸港。日本船社の寄港が104回・43回と多く、圏内客室の88.9%・86.8%が100室以上の施設。乗下船に伴うブロック需要に噛み合う粒度。

宿泊化の伸びしろが大きい港

清水港10.6室・佐世保港15.8室・長崎港37.7室。外国船の寄港はすでに99〜194回。通過寄港の一部が宿泊に転換すれば客室需給への波及が大きい。

寄港都市の宿泊単価水準 — 博多区が約14,300円で最高、最低との差は2.1倍

次に、上位10港が所在する市区町村の推定成約ADRを並べる。港の所在区(博多港=福岡市博多区、横浜港=横浜市中区、神戸港=神戸市中央区、広島港=広島市南区、清水港=静岡市清水区)を単位とし、2025年1〜8月と2026年1〜8月を同一期間で比較した。

2026年1〜8月の水準が最も高いのは博多区の約14,300円である。次いで石垣市約11,900円、横浜市中区約11,500円、神戸市中央区約11,200円、那覇市約10,600円が続く。最も低い鹿児島市は約6,700円で、博多区との差は2.1倍。前年同期比の伸びは那覇市+15.9%、博多区+12.8%、石垣市+9.7%の順で、いずれもインバウンド需要の厚い都市が上位に並ぶ。

ここで留意したいのは、この単価差はクルーズ寄港の有無によって説明されるものではないということだ。博多区や那覇市の単価水準は、航空便による訪日需要・国内出張需要・イベント需要が重なって形成されている。クルーズ寄港はそのうえに乗る需要であり、月次の単価水準からクルーズ寄港だけを取り出すことはできない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(対象施設数は各市区町村17〜150施設、月次中央値の期間平均)

月次単価から寄港日の効果は分離できない — 長崎市の12か月推移で確認する

外国クルーズ船の寄港回数が全国1位(194回)の長崎市について、月次の推定成約ADRを2024年・2025年・2026年で重ねてみる。もしクルーズ寄港が月次単価に見える形で効くのであれば、寄港の多い季節に単価のピークが立つはずである。

実際の形はそうなっていない。長崎市の単価が最も高くなるのは2月と10〜11月で、2月のピーク(2024年 約12,600円、2025年 約11,400円)は長崎ランタンフェスティバルの開催期にあたる。10〜11月は全国的な秋の観光繁忙期だ。つまり長崎市の月次単価の形は、国内のイベント・観光季節性でほぼ説明できてしまう。寄港が194回あっても、月次という粒度では寄港日の価格効果は他の要因に埋もれてしまう。

これは当然の帰結でもある。外国クルーズ船の通過寄港は日帰り上陸が基本で、1隻の寄港が生む宿泊は乗員の一部や個人手配の前後泊に限られる。月間の客室需給に対して、その量は月次中央値を動かすほどの規模にならない。寄港日の価格効果を論じるには日次の在庫・価格データと港湾管理者が公表する寄港スケジュールを突き合わせる必要があり、月次データでの断定は避けるべきである。本稿では、月次では見えないという事実の確認までにとどめる。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(長崎市・対象62〜64施設の月次中央値。2026年9月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定値のため図示していません)

母港化・発着港化した港では前後泊需要が構造的に発生する

クルーズ寄港が宿泊需要に直結するのは、その港が「発着港(ターンアラウンドポート)」として使われる場合である。通過寄港では乗客は船で寝るため陸上の客室は動かないが、発着港では乗船前・下船後に陸上での宿泊が発生する。遠方から来る旅客であれば、乗船前泊はほぼ必然になる。

国土交通省の資料が明示しているのは、この構造が数字として現れている点だ。日本発のクルーズによる訪日クルーズ旅客数、すなわち主に航空機で来日して日本発クルーズを利用する外国人旅客は、2025年に過去最高の18.1万人(コロナ前ピークの約2倍)まで増加した。この18.1万人は定義上、日本の港で乗船した旅客であり、その多くが乗船地または近隣での宿泊を伴う。横浜港の乗下船人数から前後泊需要を逆算した試算はクルーズ発着1回あたりの客室需要にまとめている。

日本船社の寄港回数が多い港が、そのまま発着港の分布を示している。2025年の日本船社別では第1位が横浜港104回、第2位がベラビスタマリーナ95回、第3位が神戸港43回、以下 厳島32回、小豆島28回、那覇港・博多港が各18回、名古屋港16回である。横浜港の209回という総数のうち半分が日本船社分であるという構成は、他の上位港には見られない。

先行きも同じ方向を向いている。郵船クルーズの「飛鳥III」は2026年6〜10月に横浜・神戸・博多発の31クルーズ、2026年10月〜2027年4月には横浜・東京・名古屋・神戸・博多発の36クルーズを設定している。商船三井クルーズの「MITSUI OCEAN FUJI」も2026年7〜12月に27クルーズを設定し、博多発着の2〜4泊の短期日程を複数含む。発着港として使われる港の顔ぶれは、横浜・神戸・博多・東京・名古屋に集まる。

この5港のうち上位10港に入る横浜・神戸・博多は、いずれも100室以上の施設への客室集中度が80%を超え、1施設平均も76.5〜154.8室と大きい。発着港として求められる「まとまった客室ブロックを一度に押さえられる」条件を、すでに満たしている港ということになる。前後泊需要を取りに行くうえでは、この粒度が実務的な強みになる。

2026年は寄港の裾野がさらに広がる見通し

2025年に外国クルーズ船が寄港した港湾は93港で、2019年の67港の約1.4倍にあたる。うち初寄港の港湾は9港であった。上位10港以外の「その他」が外国船だけで1,012回を占めており、寄港は全国に分散している。港湾の後背地にホテルを建てられるかどうかは分区条例の設計に左右されるため、臨港地区の分区条例も併せて確認しておきたい。

2026年に向けては、地方港で過去最高の寄港予定が相次いで公表されている。東北地方では2026年3月末時点の集計で、福島を除く5県8港に計134回の寄港が予定され、過去最高を更新する見通しとされる。青森港は2025年の過去最多41隻を上回る46隻の寄港予定(うち初寄港9隻)が公表された。岩手県では2026年度に県内の港へ過去最多となる29回の寄港が予定されている。

こうした港はいずれも寄港1回あたり客室ストックという物差しでは薄い側に入るが、寄港回数そのものが伸びている局面にある。寄港が増える段階で受け皿の設計(送客動線、団体対応、乗員向けプラン、周辺観光との連携)を先に整えておけるかどうかが、寄港を宿泊に変える余地を決める。数字の上で最も伸びしろが大きいのは、寄港がすでに多く客室ストックが相対的にコンパクトな港である。

まとめ — 寄港の多さと客室の厚みは別の地図を描く

2025年のクルーズ船寄港回数3,117回は過去最多で、港湾別では博多港と横浜港が209回で並んだ。しかし寄港回数の地図と、客室ストックの地図は重ならない。寄港1回あたり客室ストックで並べ直すと、博多港200.2室から清水港10.6室まで約19倍の差が開き、順位も大きく入れ替わる。

この差の読み方は二通りある。厚い港(博多・那覇・横浜・神戸)は、団体前後泊と乗員宿泊まで受け止められる受け皿余力を持つ港である。薄い港(清水・佐世保・石垣・長崎)は、寄港回数がすでに十分に積み上がっており、そのうち一部を宿泊に転換できたときの客室需給へのインパクトが大きい港である。いずれも否定的な意味ではなく、取りに行く需要の種類が違うということだ。

そして、寄港を宿泊に変える最も確実な経路は発着港化である。日本発クルーズを利用した訪日クルーズ旅客が2025年に過去最高の18.1万人まで伸び、2026年以降も横浜・神戸・博多・東京・名古屋発の日本船クルーズが多数設定されている。この5港に立地する宿泊施設にとっては、客室ブロックを押さえやすい大型構成という既存の強みが、そのまま前後泊需要の受け皿として効いてくる局面にある。

よくある質問(FAQ)

Q. 2025年にクルーズ船の寄港回数が最も多かった港はどこですか。

A. 国土交通省の2025年速報値では、博多港と横浜港がともに209回で同率1位です。以下、那覇港205回、長崎港198回、神戸港142回、石垣港130回、鹿児島港129回、佐世保港128回、広島港106回、清水港105回と続きます。外国船社のクルーズ船だけで数えると第1位は長崎港194回、日本船社のクルーズ船だけなら第1位は横浜港104回となり、順位が入れ替わります。

Q. 2025年の訪日クルーズ旅客数はどれくらいですか。

A. 176.7万人で、前年比約1.2倍です。2017年のピーク252.9万人に対しては約70%の水準で、寄港回数(2018年ピークの約106%)より回復が遅れています。このうち日本発のクルーズを利用した旅客は過去最高の18.1万人でした。

Q. 寄港回数が多い港ほど、周辺のホテル客室も多いのですか。

A. 必ずしも一致しません。代表バースから半径5km圏の客室数を寄港回数で割ると、博多港200.2室に対し清水港10.6室、佐世保港15.8室と約19倍の開きがあります。長崎港は外国船の寄港回数が全国1位(194回)ですが、寄港1回あたり客室ストックは37.7室で10港中7位です。

Q. クルーズ船の寄港は宿泊需要につながりますか。

A. 寄港の性格によって変わります。日帰り上陸が基本の通過寄港では乗客は船内で宿泊するため陸上の客室需要は限定的です。一方、乗船・下船が行われる発着港(ターンアラウンドポート)では前後泊が発生します。2026年以降は横浜・神戸・博多・東京・名古屋発の日本船クルーズが多数設定されており、これらの港では前後泊需要が構造的に生じます。

Q. 寄港日にホテルの料金は上がるのですか。

A. 本稿で用いた月次の推定成約ADRでは、寄港日単独の価格効果を分離できませんでした。外国船の寄港回数が全国1位の長崎市でも、月次単価のピークは2月(ランタンフェスティバル期)と10〜11月で、国内のイベント・観光季節性で説明できる形になっています。寄港日の価格効果を検証するには、日次の在庫・価格データと各港湾管理者が公表する寄港スケジュールを突き合わせる必要があります。

集計方法と出典

寄港回数・訪日クルーズ旅客数・港湾別順位・クラス別内訳・寄港港湾数は、国土交通省「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」(2026年2月20日公表)および同報道発表の別紙に記載された値をそのまま用いた。同資料は港湾管理者からの聞き取りによる速報値であり、今後変動する可能性がある。船内で1泊以上するクルーズ船を対象とし、日帰りクルーズは含まない。港湾法上の港湾に加え、沖に停泊して乗客が通船で上陸した場合や漁港への寄港も寄港回数に含まれる。訪日クルーズ旅客数は出入国在留管理庁の集計による外国人入国者数(乗員を除く概数)で、1回のクルーズで複数港に寄港した旅客も1人の入国として計上されている。表1の「うち日本船社」欄は総数から外国船社分を差し引いた差分であり、同資料が日本船社別の集計値を公表している博多・横浜・那覇・神戸の4港では差分と公表値が一致することを確認した。

客室ストックは、各港の代表的なクルーズバースを中心点とする半径5km圏に立地し、直近3か月(2026年6〜8月)に主要予約サイト上で掲載が確認できた施設の客室数を合計した(10港計1,610施設・131,345室)。中心点として用いたバースは、博多港=中央ふ頭(博多港国際ターミナル)、横浜港=大さん橋国際客船ターミナル、那覇港=若狭バース、長崎港=松が枝国際観光船ふ頭、神戸港=神戸ポートターミナル、石垣港=南ぬ浜町(国際クルーズバース)、鹿児島港=マリンポートかごしま、佐世保港=三浦地区、広島港=宇品(広島港国際ターミナル)、清水港=日の出ふ頭である。寄港回数は港全体(複数ふ頭を含む)の集計値であるのに対し、客室ストックは代表バース1点を基点とした円内の集計であるため、両者の空間的な単位は完全には一致しない。複数のふ頭を持つ港では、実際に着岸するふ頭によって圏内の客室構成は変わる。

推定成約ADRは、各施設が主要予約サイト上で公開する最安プラン水準(2名1室・1室あたり・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)で、市区町村単位では対象施設の中央値を用いた。比較は2025年1〜8月と2026年1〜8月の各8か月を単純平均し、確定月(実績ベース)のみを対象とした。対象施設数は市区町村により17〜150施設で、静岡市清水区(17施設)・広島市南区(24施設)・佐世保市(34〜37施設)はサンプルが小さいため、水準の解釈には幅を持たせて読む必要がある。図5の長崎市の月次推移は2026年8月までを確定月として図示し、2026年9月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定値のため図示していない。

各港の圏内最大規模施設として言及した施設の客室数はメトロエンジンリサーチの集計値であり、ヒルトン福岡シーホークについてはヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)記載の1,052室を用いた。2026年以降の日本船クルーズの設定は各船社の公表資料、地方港の2026年寄港予定は各港湾管理者・報道各社の公表値に基づく。

データの取扱いについて:本稿の寄港回数は国土交通省が公表した2025年速報値であり、港湾管理者からの聞き取りに基づくため今後変動する可能性があります。客室ストックは主要予約サイト上で掲載が確認できた施設の集計であり、掲載のない施設は含みません。推定成約ADRは推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。「寄港1回あたり客室ストック」は本稿のために設定した指標で、業界の標準指標ではありません。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

寄港回数・訪日クルーズ旅客数・港湾別順位・クラス別内訳は国土交通省「訪日クルーズ旅客数及びクルーズ船の寄港回数(2025年速報値)」(2026年2月20日公表)および同報道発表の別紙。半径5km圏の客室ストック(10港計1,610施設・131,345室)と市区町村別の推定成約ADR(2024年1月〜2026年8月の確定月)はメトロエンジンリサーチ集計。ヒルトン福岡シーホークの客室数はヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)。

■ 試算前提

客室ストックは各港の代表的なクルーズバース1点を中心とする半径5km圏に立地し、直近3か月(2026年6〜8月)に主要予約サイト上で掲載が確認できた施設の客室数合計。「寄港1回あたり客室ストック」は当該客室ストックを2025年の寄港回数で割った値で、本稿のために設定した指標。推定成約ADRは各施設が公開する最安プラン水準(2名1室・1室あたり・税込)に業態別の補正係数を適用した推定成約単価(税抜相当)で、市区町村単位では対象施設の中央値を用い、2025年1〜8月と2026年1〜8月の各8か月を単純平均して比較した。対象施設数は市区町村により17〜150施設。

■ 限界・留意点

寄港回数は港湾管理者からの聞き取りによる速報値で今後変動する可能性がある。寄港回数は港全体(複数ふ頭を含む)の集計値である一方、客室ストックは代表バース1点を基点とした円内の集計であり、両者の空間的な単位は完全には一致しない。掲載が確認できない施設は客室ストックに含まれない。推定成約ADRは推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。静岡市清水区(17施設)・広島市南区(24施設)・佐世保市(34〜37施設)はサンプルが小さく、水準の解釈には幅を持たせる必要がある。月次の単価データから寄港日単独の価格効果を分離することはできない。

■ 政府統計・公的データ

■ 船社公表資料

■ 報道

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 半径5km圏の客室ストック(10港計1,610施設・131,345室、2026年6〜8月に掲載が確認できた施設)、市区町村別の推定成約ADR(2024年1月〜2026年8月・確定月)

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

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