東京建物、世界貿易センタービルディング、アコーホテルズの3社が2024年7月22日に公表した計画によると、アコーの最高級ラグジュアリーブランド「ラッフルズ」は日本初の施設「ラッフルズ東京」を浜松町に開く。建替え中の世界貿易センタービルディング本館・ターミナルの36〜46階に、全室60㎡以上の130室を設け、2028年の開業を予定している。浜松町駅から半径1kmの客室ストックは2017年の6,491室から2026年には8,279室へ27.5%増えたが、130室が加わっても増分は1.6%にとどまる。むしろ効いてくるのは価格帯のほうで、掲載価格10万円以上の帯に限ると既存は4軒・1,376室しかなく、そこに130室が入る計算になる。本稿では1km圏の価格階層、港区の推定成約ADR、地価と浸水想定、建設費と利回りから逆算した必要ADRを順に見て、この130室がどの条件で成り立つかを読み解く。
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本記事の客室ストックは、浜松町駅から半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月27日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。
• 価格帯の分類は、ホテル区分(シティ・デラックス・ビジネス・リゾート)の稼働中44軒・7,704室について、2025年10月〜2026年9月の掲載価格(全プラン平均・2名1室利用時・税込)の月平均で行った。
• 必要ADR=建物・付帯費用・土地持分の合計に目標利回りを掛けた純収益(NOI)を賄うために必要な客室単価(税抜相当)。本稿の試算値であり、本プロジェクトの事業計画や採算を示すものではありません。
• 稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は、OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
- — 130室・全室60㎡以上・2028年:ラッフルズ東京は世界貿易センタービルディング本館・ターミナルの36〜46階に入る計画(2024年7月22日時点)。運営はアコーのマネジメント契約。
- — 量は+1.6%、最上位帯は+9.4%:浜松町駅1km圏の客室ストックは2017年の6,491室から2026年8,279室へ+27.5%。掲載10万円以上の帯は4軒・1,376室にとどまる。
- — 港区の推定成約ADR ¥16,078(2026年9月):前年同月比−6.6%だが、12か月平均は約17,600円で前年比+5.1%。同圏のフェアモント東京は推定成約で約12.3万円(7か月平均)。
- — 必要ADRは中位¥96,200、幅は約4.8万〜18.6万円:総投資約295億円(1室2.27億円)・利回り4.5%・GOP率30%・稼働率80%(通年の前提値)による編集部試算。
- — 成否を分けるのはGOP率:利回り4.5%でGOP率30%→35%なら必要ADRは約9.6万円→約7.7万円。稼働率5ptの差(5〜7%)より振れ幅が大きい。
計画の概要 — 本館・ターミナル36〜46階に130室、2028年開業予定
ラッフルズ東京は、世界貿易センタービルディングの建替えプロジェクト「浜松町二丁目4地区A街区」(東京都港区)に入る。東京建物と世界貿易センタービルディングが開発し、アコーがマネジメント契約に基づいて運営する。外資ブランドが土地・建物を持たずに運営だけを担う形で、オフィス複合タワーの高層部にラグジュアリーホテルを載せる、都心再開発で定番になりつつある組み合わせといえる。
客室は全室60㎡以上の130室で、3つのレストラン、ブランドを象徴する「ロングバー」「ライターズバー」、屋内プール、スパを備える。計画概要には宴会場・会議室とジムも記されている。本館・ターミナル全体は2027年に一部開業し、以降順次開業する計画で、ホテルはその翌年にあたる。なお、以下の数値はいずれも2024年7月22日時点の計画であり、発表資料は今後予告なく変更となる場合があるとしている。
| 項目 | 公表内容(2024年7月時点の計画) |
|---|---|
| ホテル名称 | ラッフルズ東京 |
| 所在地 | 東京都港区浜松町2-4-1 |
| 入居フロア | 世界貿易センタービルディング本館・ターミナルの36階〜46階 |
| 客室数 | 130室(全室60㎡以上) |
| 付帯施設 | レストラン、宴会場・会議室、スパ、ジム、屋内プール他 |
| 開業時期 | 2028年 |
| 開発・運営 | 開発:東京建物・世界貿易センタービルディング/運営:アコー(マネジメント契約) |
| 本館・ターミナル | 2023年着工。2027年に一部開業し、以降順次開業 |
A街区全体の規模は、2017年の計画公表時点で敷地面積2万1,007㎡、延べ床面積28万7,985㎡とされていた。敷地に対する延べ床の倍率は約13.7倍で、用途地域で指定された容積率600%を大きく上回る床が一体開発で確保されている。後段の試算では、この倍率を使って土地の持分を延べ床1㎡あたりに割り付ける。
1km圏の客室ストック — 9年で6,491室から8,279室へ、130室は+1.6%
浜松町駅から半径1kmの宿泊施設を開業年でさかのぼると、2017年末の35軒・6,491室から、2020年には44軒・7,783室まで増えた。訪日需要の拡大期に宿泊特化型の開業が続いた結果で、この3年間だけで1,292室が積み上がっている。その後2021〜2024年は7,700〜7,900室台で横ばいとなり、2025年にフェアモント東京(217室)などが加わって8,241室、2026年は52軒・8,279室である。
ラッフルズ東京の130室は、この2026年ストックに対して+1.6%にすぎない。供給量という物差しでは周辺に与える影響は小さく、論点は量ではなく「どの価格帯に入るか」に移る。直近3か月に販売価格が確認できた稼働中の施設は50軒・8,169室で、規模別では201室以上の大型施設15軒が4,886室と、稼働中客室の約6割を占める。
価格帯で見る1km圏 — 掲載10万円以上は4軒・1,376室
次に、ホテル区分の稼働中44軒・7,704室を、直近12か月の掲載価格(全プラン平均)で5つの帯に分けた。最も厚いのは2.5万〜5万円の帯で18軒・2,129室、1.5万〜2.5万円の帯が15軒・2,058室と続く。5万円以上は11軒・3,517室で、客室数ではストックの45.7%を占める。浜松町・芝公園・汐留にはシティホテルと大型の外資系ホテルが早くから集まっており、価格帯の上側にも厚みがある。
そのうえで10万円以上に絞ると、該当はザ・プリンス パークタワー東京(603室)、コンラッド東京(291室)、メズム東京オートグラフコレクション(265室)、フェアモント東京(217室)の4軒・1,376室になる。ラッフルズ東京の130室はこの帯の客室数を9.4%押し上げる。量の上では小さな追加でも、最上位帯の中で見れば無視できない厚みである。
| 施設 | 客室数 | 開業年 | 掲載価格(12か月平均) |
|---|---|---|---|
| フェアモント東京 | 217室 | 2025年 | ¥199,301 |
| コンラッド東京 | 291室 | 2005年 | ¥173,778 |
| ザ・プリンス パークタワー東京 | 603室 | 2005年 | ¥139,647 |
| メズム東京オートグラフコレクション | 265室 | 2020年 | ¥121,517 |
| ラッフルズ東京(計画) | 130室 | 2028年予定 | — |
この4軒の顔ぶれは、浜松町が外資ブランドの「日本初」を受け止めてきた商圏であることも示している。ヒルトン「会社概要」の沿革によれば、コンラッド・ホテルズ&リゾーツの日本初進出は2005年のコンラッド東京で、フェアモントも2025年7月にフェアモント東京(芝浦・BLUE FRONT SHIBAURA内)で日本初の施設を開いた。ラッフルズ東京が開業すれば、同じ1km圏で約20年のあいだに3つの上位ブランドが日本1号店を構えることになる。しかもフェアモントとラッフルズはともにアコーの上位ブランドであり、500m足らずの距離に同グループの2軒が並ぶ構図になる。
港区の推定成約ADR — 9月は1万6,100円、12か月平均は前年比+5.1%
エリアの標準的な水準を見るため、港区の推定成約ADR(区内施設の中央値)を確認した。2026年9月は約16,100円(N=133施設)で、前年同月の約17,200円(N=127施設)から6.6%低い。6〜8月も前年同月を下回っており、夏から初秋にかけては単価を抑えて稼働を取りにいく局面が続いた。一方で4月は約22,100円と前年同月比+7.6%で、2025年10月〜2026年9月の12か月平均は約17,600円と、その前の12か月(約16,700円)を5.1%上回る。年間で見れば単価の水準そのものは切り上がっている。
| 区 | 2026年9月 | 2025年9月 | 前年同月比 |
|---|---|---|---|
| 港区 | ¥16,078(N=133) | ¥17,210(N=127) | −6.6% |
| 中央区 | ¥17,270(N=152) | ¥17,687(N=151) | −2.4% |
| 千代田区 | ¥14,900(N=80) | ¥15,440(N=84) | −3.5% |
ただし、区の中央値は宿泊特化型を中心とした標準的な施設の水準であり、ラッフルズ東京が狙う最上位帯とは別の市場である。最上位帯の手がかりとしては、同じ1km圏のフェアモント東京の推定成約ADRが、算出できた2025年10月〜2026年9月の7か月で月9.2万〜16.3万円、平均では約12.3万円だった。平均で10万円を超える成約水準にある点は、この商圏の上位需要の厚さを示す材料といえる。
需給の面では、東京都全体の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を価格帯別に並べた。掲載価格10万円以上の施設群は2026年9月に83.6%で、対象施設数が7〜19施設と少ないため月ごとの振れが大きいが、6月は90.7%を記録している。デラックス区分は6〜9月を通じて88〜93%で推移した。
| 区分(東京都) | 対象(2026年9月) | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全施設 | 805施設/104,583室 | 90.5% | 91.1% | 88.2% | 89.8% |
| デラックス | 20施設/3,454室 | 92.9% | 93.1% | 89.0% | 88.3% |
| ラグジュアリー(掲載10万円以上) | 7施設/1,193室 | 90.7% | 88.4% | 79.0% | 83.6% |
立地 — 浜松町の地価公示は4年で4〜5割上昇、商業地域・容積率600%
立地面では、国土交通省の不動産情報ライブラリで計画地点(港区浜松町2-4)の条件を確認した。用途地域は商業地域で、指定容積率600%・建蔽率80%である。駅から240mの地価公示地点(港5-28、浜松町2丁目)は2026年に1㎡あたり275万円で、浜松町1丁目(港5-27)は2022年の172万円から2026年には251万円へ、芝大門2丁目(港5-12)も241万円から359万円へと、4年で4〜5割上昇した。2026年の前年比は3地点とも+16〜17%台で、地価の上昇ペースは加速している。
| 用途地域 | 商業地域 |
| 容積率/建蔽率 | 600%/80% |
| 洪水浸水想定(想定最大規模) | 0.5〜3.0m未満の区域 |
| 地形区分による液状化傾向 | 液状化しやすい区分 |
計画地点は洪水浸水想定区域(想定最大規模)に含まれ、浸水深は0.5〜3.0m未満のランクに区分される。客室は36〜46階にあるため客室そのものへの影響は想定しにくく、評価の焦点は電気・設備室や車寄せといった低層部の浸水対策と、事業継続計画(BCP)の作り込みに置かれるだろう。交通面では、JR浜松町駅の乗降客数が2019年度の1日約32.4万人から2021年度には約19.4万人まで落ちたあと、2023年度には約25.3万人まで戻った。東京モノレールで羽田空港と直結し、新幹線の品川・東京両駅にも近い点は、海外富裕層と国内のビジネス利用をともに取り込みやすい条件である。
必要ADRの試算 — 中位シナリオで1室9.6万円、GOP率で大きく振れる
では、この130室が投資として成り立つにはどの程度の客室単価が要るのか。建物・付帯費用・土地持分を積み上げ、目標利回りから必要ADRを逆算した。前提は3段階に分けている。建築単価は、国土交通省「建築着工統計」の2024年「宿泊業用」全国平均(約196万円/坪)を下限の目安とし、ラグジュアリー仕様を想定して坪250万〜350万円の範囲で置いた。高位シナリオではさらに、建設期間中の物価上昇として2年で約1割を見込んで坪387万円とした(Turner & Townsendは東京の2026年の建設コストインフレ率を6.0%と予測)。付帯費用(FF&E・設計等)は建物費の15%とした。
土地持分は、駅から240mの地価公示(1㎡あたり275万円)をA街区の延べ床倍率約13.7倍で割り、延べ床1㎡あたり約20.1万円として延べ床に掛けた。1室あたり延べ床は、全室60㎡以上の客室に3つのレストラン・2つのバー・宴会場・スパ・屋内プールを加えることを踏まえ、150〜180㎡と置いている(小規模ラグジュアリーで延床を厚く取る例はパレスホテル箱根は69室・2029年秋開業|1室あたり延床186㎡を参照)。既刊「ホテル建設費は1室870万〜7,140万円」の上級型の原単位(1室あたり延床135.8㎡・約7,140万円、2024年RC造ベース)をそのまま130室に当てはめると建物本体は約92.9億円となるが、超高層の高層部に大型客室を載せる本件はそれより一段重い前提で見積もった。
| 項目 | A. 低位 | B. 中位 基準 | C. 高位 |
|---|---|---|---|
| 1室あたり延べ床 | 150㎡ | 160㎡ | 180㎡ |
| 延べ床(130室) | 19,500㎡ | 20,800㎡ | 23,400㎡ |
| 建築単価 | 坪250万円 | 坪350万円 | 坪387万円 |
| 建物費+付帯費用 | 169.6億円 | 253.3億円 | 315.0億円 |
| 土地持分 | 39.1億円 | 41.7億円 | 46.9億円 |
| 総投資額 | 208.7億円 | 295.0億円 | 362.0億円 |
| 1室あたり投資額 | 1.61億円 | 2.27億円 | 2.78億円 |
| 目標NOI利回り | 4.0% | 4.5% | 5.0% |
| GOP率(NOI率) | 35%(25%) | 30%(20%) | 25%(15%) |
| 客室売上比率 | 55% | 55% | 55% |
| 稼働率(前提値) | 80% | 80% | 75% |
| 必要総売上(年) | 33.4億円 | 66.4億円 | 120.7億円 |
| 必要ADR(税抜相当) | ¥48,400 | ¥96,200 | ¥186,500 |
中位シナリオの総投資額は約295億円、1室あたり約2.27億円で、必要ADRは¥96,200になる。低位では¥48,400、高位では¥186,500と、3シナリオの幅は約4倍に開く。開きを生む最大の要因は建築単価より運営の利益率で、ラグジュアリーはレストランやスパの人件費が重く、GOP率(売上高営業総利益率=総売上から各部門の直接費と管理・販売等の非配賦費用を差し引いた営業総利益の比率)が5pt動くだけで必要ADRは大きく変わる。下のグラフは中位シナリオの投資額を固定したまま、目標利回りとGOP率だけを動かした結果である。
GOP率35%なら、利回り5.5%を求めても必要ADRは約9.4万円で、フェアモント東京の推定成約水準(約12.3万円)を下回る。GOP率30%では利回り5.0%で約10.7万円、25%では利回り4.0%でも約11.4万円になる。稼働率を変えた場合、中位シナリオで85%なら約9.1万円、75%なら約10.3万円、70%なら約11.0万円で、稼働率5ptの差は必要ADRで5〜7%程度の差にあたる。単価を上げる力と同時に、料飲とウェルネスの売上を利益に変える運営力が、この130室の採算を左右する構図が読み取れる。
| 稼働率(通年の前提値)\GOP率 | GOP率25% | GOP率30% | GOP率35% |
|---|---|---|---|
| 70% | ¥146,500 | ¥109,900 | ¥87,900 |
| 75% | ¥136,800 | ¥102,600 | ¥82,100 |
| 80% | ¥128,200 | ¥96,200 | ¥76,900 |
| 85% | ¥120,700 | ¥90,500 | ¥72,400 |
表6で縦横の振れ幅を比べると、GOP率を30%から35%へ5pt上げた効果(稼働率80%・通年前提で約9.6万円→約7.7万円、−20%)は、稼働率を80%から85%へ5pt上げた効果(約9.6万円→約9.1万円、−6%)の3倍強にあたる。GOP率25%では稼働率85%(通年前提)でも必要ADRは約12.1万円となり、フェアモント東京の推定成約水準(約12.3万円)とほぼ並ぶ。単価と稼働の積み上げだけでは届きにくく、料飲・スパの利益設計が試算の前提を最も大きく動かす。
成立条件と伸びしろ — 単価・料飲・ブランド送客の3点
単価:10万円帯への定着
中位シナリオの必要ADRは約9.6万円。1km圏の最上位帯は掲載10万円以上の4軒・1,376室で、130室はその9.4%増にとどまる。上位帯の需要の厚みを取り込めれば、必要水準を上回る単価形成が視野に入る。
料飲・ウェルネス:GOP率の伸びしろ
GOP率30%→35%で、利回り4.5%時の必要ADRは約9.6万円から約7.7万円へ下がる。3つのレストランと2つのバー、スパ・屋内プールを宿泊者以外の需要にも開くことが、利益率を押し上げる手段になる。
送客:同グループの上位2ブランドの近接
フェアモント東京とは500m足らずの距離で、ともにアコーの会員プログラムに参加するブランドである。役割の異なる上位ブランドが並ぶことで、海外会員の送客や大型イベント時の受け皿として補完し合う余地がある。
オーナー側の視点では、マネジメント契約で外資ブランドを招く場合、客室単価の上振れはブランドの送客力に、利益率は運営会社の料飲・人件費の設計に依存する。地価が4年で4〜5割上がった商圏で高層部にホテル床を割り当てる判断は、オフィスより高い単価で床を回せるかの比較でもある。超高層の上層部をホテル系の床に充てる判断は、東京駅前の40〜43階にサービスレジデンス184室、2029年でも床の経済性として読み解いている。必要ADRの試算を3つの前提で並べておくことは、その比較の物差しを用意することにほかならない。
まとめ
ラッフルズ東京の130室は、浜松町駅1km圏の客室ストック(8,279室)に対しては1.6%の追加にすぎないが、掲載10万円以上の最上位帯(4軒・1,376室)で見れば9.4%の上積みになる。港区全体の推定成約ADRは2026年9月に約16,100円と前年同月を6.6%下回った一方、12か月平均では前年比+5.1%で、同じ圏内のフェアモント東京は推定成約で約12.3万円の水準にある。建設費と利回りから逆算した必要ADRは中位で約9.6万円、幅としては約4.8万〜18.6万円で、成否を分けるのは単価よりもGOP率である。2027年の本館・ターミナルの順次開業から2028年のホテル開業まで、駅と一体化した再開発で商圏の上位需要がどこまで厚くなるかが、この130室の伸びしろを測る目安になる。
※本稿の数値は調査時点(2026年10月)のものです。開業時期・客室数・施設構成は2024年7月22日時点の公表計画であり、今後変更される可能性があります。必要ADRは公表情報と業界目安に基づく試算で、事業者の計画値ではありません。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
客室ストック・価格帯・推定成約ADR・稼働率はメトロエンジンリサーチのOTA公開価格・在庫データ(浜松町駅から半径1,000m、客室数10室以上、2026年10月27日時点、N=62施設/稼働中50施設)。港区・中央区・千代田区の推定成約ADRは区内施設の中央値(N=80〜152施設)。地価公示・用途地域・洪水浸水想定・液状化傾向は国土交通省 不動産情報ライブラリ、駅別乗降客数は国土数値情報、計画内容は東京建物・世界貿易センタービルディング・アコーホテルズの2024年7月22日公表資料。
■ 試算前提
必要ADR=総投資額×目標NOI利回り÷NOI率×客室売上比率÷(130室×365日×稼働率)。総投資額=1室あたり延べ床(150/160/180㎡)×130室×建築単価(坪250万/350万/387万円)×1.15(FF&E・設計等)+土地持分(地価公示275万円/㎡÷A街区の延べ床倍率約13.7倍×延べ床)。NOI率はGOP率から運営受託報酬・FF&E積立・保険・公租公課として売上の10ptを控除、客室売上比率55%、稼働率は80%(高位75%)を置いた。表5・表6と感度グラフは同じ式で算出している。
■ 限界・留意点
計画内容は2024年7月時点の公表であり変更されうる。必要ADRは公表情報と一般的な目安に基づく編集部試算で、事業者の計画値・採算を示すものではない。土地持分はA街区全体の延べ床倍率で均等に割り付けた概算で、実際の区分・持分の取り決めは反映していない。推定成約ADRはOTA公開価格に業態別係数を適用した推定値、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値で、いずれも施設の実績値とは異なる。最上位帯(掲載10万円以上)は対象施設数が少なく月ごとの振れが大きい。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 浜松町駅1km圏の客室ストック(N=62施設)、掲載価格・推定成約ADR(港区N=133施設ほか)、稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)
■ 公表資料・プレスリリース
- 東京建物・世界貿易センタービルディング・アコーホテルズ「世界貿易センタービルディング建替えプロジェクト アコーホテルズの最高級ラグジュアリーブランド「ラッフルズ」日本初進出決定」(2024年7月22日)
- 世界貿易センタービルディング・鹿島建設・東京モノレール・東日本旅客鉄道「世界貿易センタービルディング建替えプロジェクト 2027年より順次開業へ」(2024年7月22日)
- ニュースイッチ「浜松町二丁目4地区A街区」計画概要報道(2017年9月9日)
- traicy「フェアモント東京、7月1日に開業 予約受付開始」(2025年)
- ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)
■ 政府統計・公的データ
■ 業界レポート
- Turner & Townsend 建設コスト予測(日本、2025〜2028年)
- HOTELISM「ホテル建設費の目安」(業態別坪単価)
出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)
