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パレスホテル箱根は69室・2029年秋開業|1室あたり延床186㎡、仙石原2km圏1,391室の+5.0%

投稿日 : 2026.10.22

神奈川県

投資・開発

パレスホテル箱根は69室・2029年秋開業|1室あたり延床186㎡、仙石原2km圏1,391室の+5.0%

株式会社パレスホテル、九州電力株式会社、株式会社クラフティアの3社は2026年10月14日、神奈川県箱根町仙石原1245で「パレスホテル箱根」の建設に着手したと発表した。前日13日に起工式を執り行い、全69室・延床12,850㎡・敷地17,450㎡の山岳リゾートホテルを2029年秋に開業する計画である。本稿では、公表された建物諸元を1室あたりの床・敷地に換算し、同じ箱根町内で12月に開業を控える126室計画や、仙石原2km圏の既存ストック、箱根町の推定成約ADRの季節性、国土交通省の立地データと照らし合わせて、69室がどの位置に収まるのかを読み解く。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
  • 既存ストック(客室数):対象座標から半径2km圏に所在する宿泊施設のうち、2026年7〜10月に主要予約サイトで販売価格の観測がある施設を「稼働中」として施設単位で棚卸しした客室数の合計。休業中・掲載のない施設は含みません。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(国内約27,000施設の稼働確認ベース)、国土交通省 不動産情報ライブラリ、国土数値情報、神奈川県入込観光客調査、気象庁
計画客室数
69室
スイート6・ヴィラ5棟を含む/2029年秋
1室あたり延床
186㎡
延床12,850㎡÷69室/敷地253㎡/室
仙石原2km圏の既存ストック
1,391室
64施設・稼働確認ベース/69室は+5.0%
箱根町 推定成約ADR
¥26,500
2025年10月〜2026年9月平均・N=170〜187施設
仙石原の基準地価
+10.2%
2026年地価調査・住宅地 23,800円/㎡
Key Takeaways
  • — 69室・延床12,850㎡・2029年秋開業。1室あたり延床186㎡は、2026年12月開業の小涌谷126室計画(187㎡)とほぼ同水準で、強羅の71室計画(93㎡)の2倍。
  • — 仙石原2km圏の稼働中ストックは64施設・1,391室で、69室は+5.0%。箱根町全体(394施設・7,186室)に対しては+1.0%にとどまる。
  • — 箱根町の推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月平均¥26,500(N=170〜187施設、前年同期比+3.6%)。リゾートホテルは¥34,000、旅館は¥25,700。
  • — 推定成約6万円以上の帯は箱根町で21施設・404室、10万円超はゼロ。126室計画と合わせた195室が加わると、同帯は2029年秋に約600室(約1.5倍)になる計算。
  • — 計画地は第2種低層住居専用地域(容積率80%)で延床÷敷地は73.6%。土砂災害・洪水の各区域外、近傍基準地価は2026年+10.2%(5年で+24.6%)。投資額は非公表のため利回りは算出しない。

計画概要 — 1960年開業のホテル跡地を、国立公園内で建て替える

発表資料によると、パレスホテル箱根の計画地は富士箱根伊豆国立公園内の仙石原1245で、1960年に「箱根観光ホテル」として開業し、2018年1月に建物の老朽化を理由に営業を終えた旧パレスホテル箱根の跡地にあたる。約12年の空白を経ての再開業であり、客室は全69室、面積は57〜250㎡(露天風呂テラス付きの客室を含めると69〜271㎡)で、うちスイート6室・ヴィラ5棟を含む。建物は地上4階・地下1階のRC造一部SRC造、設計は三菱地所設計、内装はTara Bernerd & Partners、施工は鹿島建設が担い、所有者は箱根仙石原特定目的会社(TMK)である。館内にはスパ・プール・フィットネスのウェルネス施設と、オールデイダイニング・ラウンジバー・スペシャリティレストランの3つの料飲施設を設ける。

事業は3社で推進する。パレスホテル東京やZentis Osakaを運営する株式会社パレスホテルがブランドとホスピタリティの知見を持ち込み、九電グループの九州電力はまちづくりと国立公園での事業経験を、同じく九電グループのクラフティア(2025年10月に九電工から社名変更)は国立公園内のプロジェクト経験を提供するとしている。投資額は公表されていないため、本稿では推定を行わない。

パレスホテル箱根 計画概要
項目内容項目内容
所在地神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1245(富士箱根伊豆国立公園内)客室数69室(スイート6室・ヴィラ5棟を含む)
客室面積57〜250㎡(露天風呂テラス付き含め69〜271㎡)延床面積12,850㎡(約3,887坪)
敷地面積17,450㎡階数・構造地上4階・地下1階、RC造一部SRC造
設計/内装三菱地所設計/Tara Bernerd & Partners施工鹿島建設
所有者箱根仙石原特定目的会社開業予定2029年秋(2026年10月13日起工)
出典:株式会社パレスホテル プレスリリース(PR TIMES、2026年10月14日)

1室あたり延床186㎡ — 小涌谷の126室計画とほぼ同じ「床の厚み」

公表値を1室あたりに換算すると、延床面積は186.2㎡/室、敷地は252.9㎡/室になる。この数字は単独では評価しにくいので、同じ箱根町内で供給が確定している高価格帯の2計画と並べてみたい。ひとつは小涌谷に2026年12月15日開業予定の「HOTEL THE MITSUI HAKONE」(126室、三井不動産リゾートマネジメント運営、マリオットのラグジュアリーコレクション提携)で、国土交通省「建築物動態統計調査」の届出では延床23,600㎡・地上3階と記録されており、1室あたり延床は187.3㎡と算出できる。もうひとつは同統計に載る強羅の71室計画(延床6,590㎡・5階、2026年4月末完成予定)で、1室あたりは92.8㎡である。

すなわちパレスホテル箱根の床の厚みは、箱根で最上級帯をうたう126室計画と1㎡差で並び、中規模の71室計画のほぼ2倍にあたる。客室面積の下限が57㎡(三井は48㎡)、料飲3店とスパ・プールを備える構成を考えれば、延床の半分近くが客室以外の共用部・バックヤードに充てられる設計と読める。一方、敷地の広さは三井が約135,500㎡(約14ha)と桁違いで、1室あたり1,075㎡に達するのに対し、パレスは253㎡/室である。17,450㎡の敷地に69室を低層4階で収める点は、「広大な森に点在させる」型ではなく「限られた国立公園内の跡地で床を厚く使う」型といえる。

箱根町内の新規計画 3件 — 1室あたり延床面積(㎡/室)
出典:株式会社パレスホテル プレスリリース、国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。強羅71室計画は届出上の数値で施設名は非公表

箱根町の推定成約ADRは12か月平均2万6,500円 — 8月と11月に山、6月に谷

価格水準を確認する。メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの推定成約ADR(検証済み5業態の施設中央値)で見ると、箱根町の2025年10月〜2026年9月の12か月平均は¥26,500(対象N=170〜187施設)で、前年同期間の¥25,600から+3.6%の水準にある。月別では2025年8月の¥29,200と同11月の¥28,900が山、2026年6月の¥22,700が谷で、山と谷の比は約1.3倍になる。直近の2026年8月は¥28,200(前年同月比-3.4%)、9月は¥25,900(同+4.7%)だった。

業態別に切ると性格の差がはっきりする。リゾートホテル(N=27〜29施設)の12か月平均は¥34,000、旅館(N=138〜155施設)は¥25,700で、町全体の中央値は旅館の厚い層に引っ張られている。2026年10〜12月については調査時点の掲載水準に基づく推定値で、11月が¥30,600と紅葉期の山をすでに織り込んでいる。箱根を含む神奈川県内の価格階層と秋に開く単価差については、神奈川ホテル市場2026 — 箱根・みなとみらい・湘南・業務帯の4層と秋に開く単価差も参考になる。

箱根町 推定成約ADRの季節性(2024年・2025年・2026年、月別オーバーレイ)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR・施設中央値、N=170〜193施設/月)。2026年10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定(破線)

高価格帯の厚み — 推定成約6万円以上は箱根町で21施設・404室、10万円超はゼロ

69室が狙う価格帯にどれだけの先行事例があるかを、箱根町の施設単位で棚卸しした。直近12か月のうち6か月以上の推定成約ADRが得られた188施設・5,822室を帯別に並べると、中央値は¥26,400で、最も厚いのは2.5〜4万円帯の54施設・2,301室である。4〜6万円帯は28施設・1,008室、6〜10万円帯は21施設・404室と、単価が上がるほど1施設あたりの客室数が小さくなり、6万円以上の平均は約19室/施設にとどまる。推定成約で10万円を超える施設は現時点で確認できない。

この分布に69室を重ねると、仮に6万円以上の帯で販売する場合、同帯の客室数404室に対して+17%の規模になる。小規模旅館が支えてきた帯に、スイートとヴィラを備えた69室のホテルが加わる構図であり、箱根の高価格帯が「少室数の旅館」中心から「中規模のホテル」へ広がる転換点と位置づけられる。先行する126室計画と合わせれば、この帯の受け皿は2029年までに大きく厚みを増す。

箱根町 推定成約ADR帯別の施設数・客室数(N=188施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2025年10月〜2026年9月、6か月以上の推定値がある施設)
仙石原2km圏 客室数 × 推定成約ADR(稼働中・推定値あり N=30施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。縦の破線=パレスホテル箱根の69室

仙石原2km圏に絞ると、推定成約ADR6万円以上はTHE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原(20室)、金乃竹 仙石原(11室)、星野リゾート 界 仙石原(16室)の3施設・47室、4〜6万円帯は箱根湯宿 然、箱根 星のあかり、箱根翡翠、仙郷楼、レジーナリゾート箱根仙石原の5施設・86室である。いずれも露天風呂付客室や料理、滞在スタイルの提案で固定客を獲得してきた施設で、圏内に高単価の需要がすでに存在することを示す。69室はこの8施設・133室の帯に、客室面積と共用部の規模で差別化しながら加わることになる。

仙石原2km圏 推定成約ADR4万円以上の8施設
施設客室数推定成約ADR(12か月平均)開業年
金乃竹 仙石原11室¥95,1002005年
星野リゾート 界 仙石原16室¥66,4002018年
THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原20室¥60,1002016年
箱根湯宿 然9室¥55,7002014年
箱根翡翠8室¥49,9002008年
レジーナリゾート箱根仙石原22室¥48,8002018年
箱根 星のあかり14室¥43,7001968年
仙郷楼33室¥41,1001870年
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR、2025年10月〜2026年9月の確定月平均・各施設6か月以上)。開業年はメトロエンジンリサーチ&コンサルティング調べ

立地評価 — 低層住居専用地域の容積率80%に対し延床は敷地の73.6%

国土交通省 不動産情報ライブラリの区域データを計画地の座標で照合すると、仙石原1245の地点は都市計画区域内の第2種低層住居専用地域(指定容積率80%・建蔽率40%)に区分される。公表の延床12,850㎡を敷地17,450㎡で割った容積消化率は73.6%で、指定容積率の範囲に収まる水準である。ただし本稿の照合は国の区域データを座標で突合した目安であり、建築条件の確定情報は箱根町の都市計画図および許可内容で確認する必要がある。

地価は上昇局面にある。計画地から約210mの地価調査基準地「箱根町仙石原字六郎兵衛1246番718」(住宅地・925㎡)は、2021年の19,100円/㎡から2026年には23,800円/㎡へ5年で+24.6%上昇し、変動率は2021年の−0.5%から2024年+3.6%、2025年+7.5%、2026年+10.2%と年を追うごとに加速している。基準地の属性では最寄り駅は箱根登山鉄道の強羅駅で道路距離約7.5kmとされ、鉄道アクセスより車・バス前提の立地である。

仙石原 基準地価の推移(地価調査・住宅地、円/㎡と前年比)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(都道府県地価調査、基準地「仙石原字六郎兵衛1246番718」、各年7月1日時点)
用途地域・建築規制(計画地)
区域区分都市計画区域
用途地域第2種低層住居専用地域
容積率/建蔽率80%/40%
公表延床÷敷地73.6%
自然災害・火山(計画地座標での照合)
土砂災害警戒区域区域外(最寄り区域「高原沢」まで約200m)
洪水浸水想定区域(想定最大)区域外(早川の想定区域まで約420m)
地形分類による液状化傾向液状化しにくい
箱根山 噴火警戒レベルレベル1(活火山であることに留意)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域・土砂災害警戒区域・洪水浸水想定区域・地形分類)、気象庁「箱根山の火山活動解説資料(令和8年9月)」

自然条件については、国土交通省の区域データで計画地は土砂災害警戒区域と洪水浸水想定区域のいずれにも含まれず、地形分類からみた液状化傾向も「しにくい」に分類される。火山については、気象庁が2026年10月に公表した「箱根山の火山活動解説資料(令和8年9月)」で、地震活動は低調に経過し火山活動は概ね静穏、噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)の予報事項に変更はないとされている。大涌谷周辺では最大400mの噴気が続いており、箱根で宿泊事業を営む上で常に併記されるべき前提条件である。

仙石原2km圏の宿泊施設分布(★=パレスホテル箱根 計画地、番号=下表、円の大きさ=客室数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(稼働確認ベース、2026年10月)
仙石原2km圏の主要宿泊施設(地図番号対応)
No.施設客室数推定成約ADR
1金乃竹 仙石原11室¥95,100
2星野リゾート 界 仙石原16室¥66,400
3THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原20室¥60,100
4箱根湯宿 然9室¥55,700
5箱根翡翠8室¥49,900
6レジーナリゾート箱根仙石原22室¥48,800
7箱根 星のあかり14室¥43,700
8仙郷楼33室¥41,100
9TAOYA箱根77室¥34,600
10箱根仙石原プリンスホテル100室¥29,500
11ススキの原 一の湯67室¥27,900
12ホテル森の風箱根仙石原44室¥26,700
13箱根風雅24室¥26,300
14リブマックスリゾート箱根芦ノ湖26室¥25,500
15ホテルグリーンプラザ箱根123室¥21,800
16EN RESORT Re’Cove Hakone (ENリゾート リ・カーヴ箱根)122室¥19,600
17ホテルハーヴェスト箱根甲子園151室¥18,700
18ダイヤモンド箱根ソサエティ46室¥13,400
19ホテル花月園62室¥10,200
20LIME RESORT HAKONE28室—
21Rakuten STAY 箱根すすき草原20室—
22Fun Space 芦ノ湖キャンプ村 レイクサイドヴィラ36室—
23箱根高原ホテル62室—
地図の番号は推定成約ADRの高い順。対象は2km圏で稼働中の施設のうち客室数20室以上または推定成約ADR4万円以上の23施設。推定値のない施設は「—」

周辺の居住人口は1,742人 — 滞在需要は圏外から来る立地

国土交通省 国土数値情報の250mメッシュ将来推計人口で計画地から半径2km圏(51メッシュ)を集計すると、居住人口は2020年の1,877人から2025年に1,742人、2040年には1,395人(2020年比−25.7%)へ減少し、65歳以上の比率は2025年時点で36.8%に達している。これは国勢調査ベースの居住人口であり、滞在・通過人口ではない。仙石原のホテル需要は圏内の住民ではなく、首都圏と海外から訪れる滞在客が形成している。

その需要側の指標として、神奈川県「令和7年入込観光客調査」によれば2025年の箱根町の入込観光客数は2,112.2万人(前年比+4.0%・+81万人)、宿泊客数は414.8万人で、宿泊・日帰りともに前年を上回った。報道によれば宿泊客の伸びは+4.1%で、外国人宿泊者が前年比+27.6%と増加を牽引した。県全体の宿泊客数2,127万人(+5.2%)とあわせ、2029年の開業時点まで需要基盤が拡大を続けるかが、69室の立ち上がりを左右する。

計画地 半径2km圏の居住人口メッシュ(250m、2020年国勢調査ベース)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)

需給シナリオ — 2km圏に+5.0%、箱根町全体に+1.0%の供給

供給側を整理する。計画地から半径2km圏で2026年7〜10月に販売価格の観測がある稼働中の施設は64施設・1,391室で、69室はこれに対し+5.0%にあたる。箱根町全体では稼働中394施設・7,186室に対して+1.0%である。圏外では小涌谷の126室が2026年12月に開業し、強羅の71室計画も2026年に完成予定で、箱根町には2029年までに本計画を含め合計266室の新規供給が段階的に加わる。建築物動態統計調査は確認申請ベースのため、この266室は現時点で届出が確認できる計画の下限値であり、今後の申請追加で増える可能性がある。価格帯を考えれば、69室が直接向き合うのは町全体の中央値ではなく、6万円以上の21施設・404室と4〜6万円の28施設・1,008室の帯であり、ここに126室と69室が加わることで、少室数の旅館が中心だった帯に初めてホテル型の規模が入る。先行する126室が箱根のどの価格階層に入るかは、箱根の秋冬に積み上がる高単価供給 — 126室が入る価格階層を読むで整理している。

需要側に大きな構造変化がなければ、小涌谷の126室と本計画の69室を合わせた195室が6万円以上の帯に加わることで、2029年秋の同帯の客室数は2026年の404室から約1.5倍の600室前後へ増える計算になる(強羅の71室計画は価格帯が公表されていないため含めていない)。供給が増える局面では、差別化の軸が「露天風呂付客室の有無」から「共用部の体験(スパ・プール・料飲3店)とブランドの顧客基盤」に移るとみられ、1室あたり186㎡という床の厚みはその方向性と整合的である。開業まで3年あることから、先行する126室計画の2027〜2028年の価格と稼働の推移が、69室の価格設定を見る上で最も直接的な参照点になるだろう。

参考試算 — 69室の年間客室売上(ADR×通年稼働率)
参考試算(年間客室売上の規模感)通年稼働率60%通年稼働率70%通年稼働率80%
ADR ¥60,000(箱根町6万円帯の下限)¥9.1億¥10.6億¥12.1億
ADR ¥80,000(2km圏上位帯の水準)¥12.1億¥14.1億¥16.1億
ADR ¥100,000(箱根町で現時点では該当なしの帯)¥15.1億¥17.6億¥20.1億
69室×365日=25,185室夜に稼働率とADRを乗じた客室売上のみの簡易試算(料飲・スパ収入を含まない)。投資額が非公表のため利回りは算出しない。ADRの参照帯はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの箱根町推定成約ADR分布による

箱根・小田原のJ-REIT保有物件 — 1室あたり取得価格は2,580万〜4,360万円

投資家の目線で箱根周辺の既存取引水準を確認しておく。上場ホテルREIT7法人の保有物件のうち、箱根町および隣接する小田原市に所在するのは3物件である。ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)の「箱根強羅温泉 季の湯 雪月花」(158室)は取得価格4,070百万円で1室あたり約2,580万円、星野リゾート・リート投資法人(3287)の「界 箱根」(34室、2013年7月取得)は950百万円で約2,790万円、森トラストリート投資法人(8961)の「ヒルトン小田原リゾート&スパ」(163室、固定賃料)は7,100百万円で約4,360万円である。ジャパン・ホテル・リートと森トラストリートはポートフォリオ一覧で物件別の取得日を公表していないため取得時期の比較は行わない。いずれも建設費が上昇する前の取得であり、現在の新築計画の水準を直接示すものではないが、箱根の宿泊施設が機関投資家の保有対象として実績を持つ市場であることは確認できる。強羅の高級宿に付いた1室3.9億円の鑑定とREITのTK出資・優先出資の構造は、箱根強羅の高級宿に1室3.9億円の鑑定 — REITのTK出資・優先出資と2028年の184室で詳しく分析している。

箱根・小田原のJ-REIT保有ホテル 1室あたり取得価格
REIT物件客室数取得価格1室あたり
ジャパン・ホテル・リート投資法人箱根強羅温泉 季の湯 雪月花(箱根町)158室¥4,070百万円約¥25.8百万円
星野リゾート・リート投資法人界 箱根(箱根町)34室¥950百万円約¥27.9百万円
森トラストリート投資法人ヒルトン小田原リゾート&スパ(小田原市)163室¥7,100百万円約¥43.6百万円
出典:各投資法人ポートフォリオ一覧よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(N=3物件、2026年10月12日時点)

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

まとめ

床の厚みは最上級帯と同水準

1室あたり延床186㎡は、12月開業の126室計画(187㎡)と並び、強羅の71室計画(93㎡)の2倍。共用部に厚く床を割く構成である。

高価格帯は「少室数の旅館」から広がる

箱根町で推定成約6万円以上は21施設・404室、10万円超はゼロ。69室はこの帯の客室数を2割近く押し上げる規模で、ホテル型の受け皿が加わる。

立地条件は区域外・地価は加速

土砂災害・洪水の各区域外、液状化しにくい地形。基準地価は2026年+10.2%と5年で+24.6%。火山はレベル1が継続している。

パレスホテル箱根は、投資額を公表しないまま起工した計画であるため、本稿は利回りに踏み込まず、公表諸元と市場データから位置づけを描いた。仙石原2km圏の既存1,391室に対する+5.0%という供給規模は限定的である一方、価格帯で見れば箱根の高価格帯の構造を変えうる規模であり、2026年12月の126室開業後の推移と合わせて、2029年秋までの箱根の単価形成を追う価値がある。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10〜12月のADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定値であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下落する可能性がある点にご留意ください。

よくある質問

Q. パレスホテル箱根の開業はいつですか。
A. 2029年秋の開業予定です。2026年10月13日に起工式が行われ、建設工事が始まっています。

Q. 前身のホテルはどのような施設でしたか。
A. 1960年に箱根観光ホテルとして開業し、パレスホテル箱根として営業したのち、建物の老朽化を理由に2018年1月に営業を終了しました。新計画は同じ仙石原1245の跡地で建て替えるものです。

Q. 投資額や宿泊料金は公表されていますか。
A. いずれも2026年10月14日の発表時点では公表されていません。本記事の価格帯はあくまで箱根町の既存施設の推定成約ADR分布を参照したものです。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

計画諸元は株式会社パレスホテルおよび三井不動産リゾートマネジメントのプレスリリース、箱根町内の他計画は国土交通省「建築物動態統計調査」の届出値。価格はメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月、箱根町N=170〜193施設/月)と、2026年7〜10月に販売価格の観測がある施設の客室ストック棚卸し。立地・地価・災害区域は国土交通省 不動産情報ライブラリ、人口は国土数値情報250mメッシュ、需要は神奈川県「令和7年入込観光客調査」、火山は気象庁の解説資料による。

■ 試算前提

1室あたり延床・敷地は公表値を客室数で除した単純比。年間客室売上の参考試算は69室×365日=25,185室夜に、通年稼働率60/70/80%(試算上の想定値・実測ではない)とADR6万/8万/10万円を乗じたもので、料飲・スパ収入と費用は含まない。2029年秋の6万円以上帯の客室数(約600室)は、2026年の404室に126室計画と本計画の69室を単純加算した値で、既存施設の増減・価格帯移動は考慮していない。

■ 限界・留意点

推定成約ADRは掲載価格に業態別補正を適用した推定値で、個別施設の実際の成約価格とは異なる。2026年10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく暫定値。パレスホテル箱根の投資額・宿泊料金は未公表で、本稿の価格帯は既存施設の分布を参照した仮置きにすぎない。用途地域・災害区域は座標照合による目安で、建築条件の確定には箱根町の都市計画図と許可内容の確認が必要。建築物動態統計は確認申請ベースのため、新規供給266室は現時点で把握できる下限値。

■ 計画・プレスリリース

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(箱根町 N=170〜193施設/月)、施設単位の客室ストック棚卸し(2km圏64施設、箱根町394施設)
  • 各投資法人ポートフォリオ一覧(ジャパン・ホテル・リート投資法人、星野リゾート・リート投資法人、森トラストリート投資法人)

■ 政府統計・公的データ

■ ニュース

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