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名古屋・錦のホテルを中央日本土地建物が取得 — 1km圏67施設1.28万室、中区ADRは平常月9,600円

投稿日 : 2026.10.24

愛知県

投資・開発

名古屋・錦のホテルを中央日本土地建物が取得 — 1km圏67施設1.28万室、中区ADRは平常月9,600円

日経不動産マーケット情報が2026年10月13日に報じた「中央日本土地建物は、名古屋市中区錦のホテルを取得した」という一文は、名古屋都心の既存ホテルに国内の総合デベロッパーがどのような価格目線で向き合っているかを測る起点になる。同社の発表や物件の特定は現時点で確認できていないため、本稿は個別物件の評価に踏み込まず、錦・栄という街区の条件——公示地価・基準地価と容積率、半径1km圏の客室ストック、就業22万人と居住5.8万人という需要の土台、そしてアジア競技大会のあった9月を外して読んだ中区の推定成約ADR——を積み上げ、直近のREIT・事業会社の取得事例と並べて、取得後に付く評価の幅を定量化する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率を引く箇所はその旨を明記します。
  • LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。早期完売LT=残室数が初めて0室に到達したリードタイム(値が大きいほど早く完売)。
  • 掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載価格・在庫の集計)、国土交通省 不動産情報ライブラリ、国土数値情報、総務省・経済産業省 経済センサス、観光庁、各社開示資料。
Key Takeaways
  • — 67施設・12,797室:錦三丁目1km圏の価格観測ベースの客室ストック。1.2km圏74施設の69.9%が平常月の推定成約ADR1万円未満に集中し、1.5万円以上は7施設・1,744室(12.0%)にとどまる。
  • — ¥9,599:中区の推定成約ADR(2025年10月〜2026年8月の平常月平均、N=86〜92施設)。アジア競技大会のあった2026年9月の¥16,927(前年同月比+79.0%)は特殊要因として評価の基準から外す。
  • — 1室3,225〜3,385万円:栄駅前240室(2025年3月・鑑定の還元利回り4.0%)と名古屋駅エリア130室(2026年3月)の取得価格。名古屋都心の宿泊特化型の価格目線になっている。
  • — GOP利回り3.9%:200室・総額64億円の取得モデルで平常月ADR9,500円×稼働80%の場合。鑑定NOI利回り4.7%に届くにはADR11,000円×稼働85%か12,500円×75%が要る。
  • — 22.2万人:1km圏の従業者数(経済センサス2021)。2026年8月の愛知県ビジネスホテルは月〜木の推定稼働率85.1%が金・土の82.6%を上回り、出張需要が底を固める。

エグゼクティブサマリー — 錦1km圏は価格観測ベースで67施設・1.28万室、単価は1万円未満に7割が集中

錦三丁目 半径1km圏の客室ストック
12,797室
直近3か月に価格観測のある67施設(登録ベースは91施設・16,570室)
中区 推定成約ADR(平常月)
¥9,599
2025年10月〜2026年8月の11か月平均。9月を含む12か月平均は¥10,210(N=86〜92施設)
2026年9月の中区ADR(大会月)
¥16,927
前年同月¥9,457比 +79.0%(N=87施設)。本稿では特殊要因として外す
基準地価 2026(錦3-24-20)
895万円/㎡
前年比+3.2%・指定容積率1,300%。公示 錦3-9-14は215万円/㎡(+4.4%)
半径1km圏の就業
22.2万人
13,009事業所、オフィス系34.5%(経済センサス2021)。居住は1.5km圏5.8万人
直近取得事例の1室あたり価格
3,225〜3,385万円
栄駅前240室(2025年3月)・名古屋駅エリア130室(2026年3月)。各社開示・発表ベース

結論を先に置く。第一に、錦三丁目を中心とする半径1km圏の客室ストックは、価格観測のある施設で数えて67施設・12,797室であり、その69.9%が平常月の推定成約ADR1万円未満の帯に入る。価格帯の分布は厚みが一方向に偏っていて、1.5万円以上の帯は7施設・1,744室にとどまる。第二に、需要の土台は就業側が担う。半径1km圏に22.2万人の従業者が集まり、8月の愛知県ビジネスホテルは月〜木の推定稼働率が85.1%と金・土の82.6%を上回った(対象171施設/客室25,703室・主要予約サイト掲載ベース)。第三に、価格目線は1室あたり3,200万円台が直近の基準になっている。栄駅前の240室が7,740百万円(還元利回り4.0%)、名古屋駅エリアの130室が44億円で取引され、いずれも1室3,200〜3,400万円に収まった。中区の平常月ADR¥9,600・稼働80%という前提では、この価格でGOP利回りが4%前後にとどまる計算になり、取得側の成長シナリオは稼働の上積みよりも単価の引き上げに置かれるはずだ。以下、街区条件、需要の質、単価、取得事例の順に根拠を示す。

取引の事実 — 確認できたのは買主と所在地のみ、国内デベロッパーが既存ホテルを買う文脈

まず確認できた事実の範囲を明示しておく。日経不動産マーケット情報は2026年10月13日付で「【売買】名古屋・錦のホテルを取得、中央日土地」と報じ、本文冒頭で「中央日本土地建物は、名古屋市中区錦のホテルを取得した」と記している。本稿が確認できたのはこの見出しとリード1文であり、記事本文は会員限定のため、ホテル名・客室数・延床面積・竣工年・売主・取得価格・取得日・運営者はいずれも公表されていない。中央日本土地建物の公式ニュースリリース一覧(2026年5月〜9月分の10件を確認)にも該当する発表は見当たらなかった。したがって本稿は物件を特定せず、室数や価格を推定で置くこともしない。

一方で、名古屋・錦のホテルが売買の対象になるのは今回が初めてではない。同じ媒体は2026年4月21日に「KTキャピタル(名古屋市)は、名古屋市中区錦にある宿泊特化型ホテルを取得した」と報じている(こちらも詳細は会員限定で、物件は公表されていない)。地主株式会社は2026年6月26日、名古屋市中区の580㎡の土地を取得総額20億円以上で取得し、国内上場会社がその上にホテルを開発する定期借地スキームを公表した。栄駅徒歩圏と記されたこの土地は、取得額を面積で割ると1㎡あたり約345万円以上になる。そして2025年3月にはOneリート投資法人が栄駅徒歩1分の「コンフォートイン名古屋栄駅前」(240室)を7,740百万円で取得し、2026年3月にはエスコンジャパンリート投資法人が名古屋駅エリアの「コンパスホテル名古屋」(130室)を44億円で取得した。買い手は私募ファンド、地場の投資会社、底地専業の上場会社、オフィス主体のREIT、そして総合デベロッパーへと広がっており、錦・栄の既存ホテルは複数の買い手層が同時に値付けをする資産になっている。

名古屋都心のホテル関連取引(2025年3月〜2026年10月の公表事例)
公表日取得者対象客室数価格1室あたり確認した根拠
2026-10-13中央日本土地建物名古屋市中区錦のホテル非公表非公表—日経不動産マーケット情報(見出し・リードのみ)
2026-06-26地主株式会社中区・栄駅徒歩圏の土地580㎡(ホテル開発予定地の底地)—20億円以上土地345万円/㎡以上同社ニュースリリース
2026-04-21KTキャピタル中区錦の宿泊特化型ホテル非公表非公表—日経不動産マーケット情報(リードのみ)
2026-03-04エスコンジャパンリート投資法人コンパスホテル名古屋(名古屋駅エリア・2019年竣工)130室44億円3,385万円JLL発表
2025-03-07Oneリート投資法人コンフォートイン名古屋栄駅前(錦三丁目16番30号・2014年3月竣工)240室7,740百万円(鑑定8,310百万円)3,225万円同投資法人の開示資料
出典: 各社開示資料・発表、日経不動産マーケット情報(公開部分)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。1室あたりは価格÷客室数の単純計算

街区条件 — 錦は丁目で地価が4倍違い、容積率700〜1,300%の商業地域に客室が載る

錦は一丁目から三丁目まで東西に約1kmの帯で、地価は東へ行くほど高い。国土交通省の2026年地価公示(1月1日時点)で、歓楽街の中にある錦3-9-14は215万円/㎡(前年比+4.4%)、伏見寄りの錦2-19-1は495万円/㎡(+2.1%)、錦1-6-17は186万円/㎡(+6.3%)である。2026年の基準地価(7月1日時点)では栄駅から110mの錦3-24-20が895万円/㎡(+3.2%、指定容積率1,300%)、久屋大通駅前の錦3-5-30が437万円/㎡(+2.8%)と、同じ三丁目の中でも駅前と内側で4倍の差がつく。上昇率は2024年の二桁(錦3-9-14で+13.8%)から2025年・2026年は+2〜6%へ落ち着いたが、水準は切り下がっていない。地主株式会社が取得した栄駅徒歩圏580㎡の底地が345万円/㎡以上という価格も、この地価の並びと整合する。

公示地価の推移 — 錦3-9-14(歓楽街の内側・商業地域700%)
2023年
174万円/㎡
—
2024年
198万円/㎡
前年比+13.8%
2025年
206万円/㎡
前年比+4.0%
2026年
215万円/㎡
前年比+4.4%
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示 名古屋中5-28、各年1月1日時点)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
錦三丁目から半径750m以内の商業地の地価(2026年地価公示・都道府県地価調査)
区分所在2026年価格/㎡前年比指定容積率最寄駅・距離周辺の利用状況
公示地価錦3-9-14215万円+4.4%700(%)久屋大通 340m中高層飲食店舗ビルが建ち並ぶ歓楽街の商業地域
公示地価錦2-11-31208万円+5.6%700(%)伏見 330m店舗兼事務所ビル、ホテル等が建ち並ぶ商業地域
公示地価錦2-19-1495万円+2.1%1,000(%)伏見 280m高層の店舗、事務所ビルが建ち並ぶ高度商業地域
公示地価丸の内2-18-22368万円+3.7%900(%)丸の内 0m中高層事務所等が多い国道沿いの商業地域
公示地価栄2-4-12281万円+3.3%1,000(%)伏見 390m店舗付事務所ビル、ホテル等が建ち並ぶ商業地域
公示地価栄2-6-17205万円+5.1%700(%)伏見 500m中高層事務所、マンション等が混在する地域
公示地価錦1-6-17186万円+6.3%700(%)伏見 260m中高層の店舗、事務所ビルが建ち並ぶ商業地域
公示地価栄3-5-11,210万円+3.4%-1,300(%)栄 0m大規模な百貨店、店舗ビルが多い都心の商業地域
公示地価栄3-13-20396万円+3.9%700(%)矢場町 320m中高層の店舗ビル等が多い繁華な商業地域
公示地価栄1-11-4148万円+6.5%900(%)伏見 150m中高層の店舗事務所ビルが建ち並ぶ商業地域
基準地価錦2-19-1500万円+2.0%1,000(%)伏見 280m高層の店舗、事務所ビルが建ち並ぶ高度商業地域
基準地価錦3-24-20895万円+3.2%1,300(%)栄 110m中高層の百貨店、店舗兼事務所ビル等が建ち並ぶ都心の商業地域
基準地価錦3-5-30437万円+2.8%1,000(%)久屋大通 1m中高層の銀行、店舗兼事務所ビルが建ち並ぶ都心の商業地域
基準地価錦1-3-28195万円+5.4%700(%)丸の内 350m中高層の店舗、事務所ビルの中に高層マンション等が混在する地域
基準地価錦1-2-11310万円+5.4%900(%)丸の内 320m中高層の事務所ビルが連たんする商業地域
出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ(2026年地価公示・2026年都道府県地価調査、錦三丁目から半径750m以内の商業地点)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

用途地域は一様である。半径1.2km圏で50室以上のホテル99施設の所在を都市計画の用途地域図に重ねると、すべてが商業地域に入り、指定容積率は700%が35施設、1,000%が30施設、900%が16施設、1,300%が7施設、500〜600%が9施設、400%が2施設だった。ホテルは容積消化型の用途であり、錦では容積率が最低でも400%、多くは700%以上の敷地に立っている。取得後の選択肢を容積の観点で整理すると、①現状の運営継続(賃貸借・運営委託の見直し)、②客室改装による単価の引き上げ、③建替えの3つになる。③は敷地面積と現況の消化容積が公表されていない以上、本稿では試算しない。代わりに、同規模の宿泊特化型を錦で新築した場合の再調達原価を後段で示し、既存ホテルの取得価格と比べる。

錦三丁目 半径1km圏のホテル分布(円=客室数、色=平常月の推定成約ADR帯)と地価の公示・基準地点
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(50室以上のホテル・カプセル100施設、2026年6〜8月の推定成約ADR)、国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価)。地図タイルの帰属表示は地図内に表示

需要の質 — 就業22万人・オフィス系35%が平日を埋め、居住5.8万人が夜の街を支える

錦の宿泊需要は、昼は伏見・丸の内のオフィス、夜は錦三丁目の飲食街、週末は栄の商業集積という3つの時間帯で構成される。総務省・経済産業省の経済センサス(2021年活動調査、国勢調査2020の小地域で集計)によれば、錦三丁目から半径1kmに13,009事業所・従業者221,561人が集まり、うちオフィス系の従業者は76,448人(34.5%)である。この就業の厚みは宿泊の曜日パターンに直接現れる。2026年8月の愛知県ビジネスホテルの推定稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、対象171施設/客室25,703室・主要予約サイト掲載ベース)は月〜木が85.1%、金・土が82.6%、日曜が73.5%で、平日が週末を上回る。シティホテルは月〜木81.2%・金土82.4%・日曜72.1%と平日と週末がほぼ並ぶ。宿泊特化型の収益は出張需要で底が固まり、週末のレジャー需要が上乗せになる構造だ。9月の曜日別の形は愛知のビジネスホテル、9月は木曜92.5%・日曜84.8%で平日型の谷まで追っている。

居住人口は補助線になる。国土交通省の国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)によれば、半径1.5km圏の居住人口は2020年55,456人、2025年58,005人で、2040年は56,142人(2020年比+1.2%、2025年比−3.2%)と横ばい圏にとどまる。生産年齢人口比率は73.7%、高齢者比率は19.0%で、全国平均より若い構成である。居住者自身は宿泊客にならないが、都心居住の厚みは飲食・小売の夜間営業を支え、ホテルの周辺環境の質を規定する。なお、この数値は国勢調査ベースの居住人口であり、滞在人口や通過人口とは異なる。

半径1.5km圏の居住人口(250mメッシュ・2020年)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。地図タイルの帰属表示は地図内に表示
半径1km圏の就業(経済センサス2021)
事業所数13,009
従業者数221,561人
うちオフィス系76,448人(34.5%)
出典: 総務省・経済産業省 経済センサス-活動調査(2021)、境界=国勢調査2020小地域
愛知県ビジネスホテル 曜日別の推定稼働率(2026年8月)
月〜木(17日)85.1%
金・土(9日)82.6%
日曜(5日)73.5%
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(対象171施設/客室25,703室・主要予約サイト掲載ベース、LT1時点の観測)
観光庁 客室稼働率(愛知県・2025年平均)
全施設69.1%
ビジネスホテル75.4%
シティホテル72.5%
出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査」推移表(2025年確定値)

マクロの稼働は観光庁の公式統計で補う。愛知県の客室稼働率(宿泊旅行統計調査・2025年確定値)は全施設で69.1%、ビジネスホテル75.4%、シティホテル72.5%だった。2026年1〜7月の速報値はビジネスホテル70.4%、シティホテル68.8%と前年の同期間を下回って見えるが、同調査は2026年1月分から抽出設計が従業者数ベースから客室数ベースに変わっており、前年との単純比較には向かない。外国人の延べ宿泊者数は2025年に4,859,630人泊(前年比+24.4%)、県全体の延べ宿泊者数に占める比率は18.3%から21.4%へ上がった。名古屋の需要は国内出張が主軸である一方、インバウンド比率が2割に乗ったことで、週末・連休の単価に上向きの余地が生まれている。

愛知県 客室稼働率の年次重ね合わせ(観光庁・ビジネスホテル)
出典: 観光庁「宿泊旅行統計調査」推移表(2024年・2025年は確定値、2026年1〜7月は速報値。2026年1月分から抽出設計が客室数ベースに変更)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

単価 — 中区の平常月ADRは9,600円、9月の1万6,900円は大会月として外して読む

価格は大会月を外して読む必要がある。名古屋市中区の推定成約ADR(全区分・中央値)は2025年10月から2026年9月までの12か月平均で¥10,200だが、アジア競技大会(9月19日〜10月4日)を含む2026年9月の¥16,900(前年同月¥9,457比+79.0%、N=87施設)を除いた11か月平均は¥9,599に下がる。2026年8月は¥8,810で前年同月比-11.0%、1〜8月の平均は¥9,453で前年同期間の¥9,127から+3.6%と、大会前の名古屋はおおむね横ばい圏で推移していた。区分別に見ると、ビジネスホテル区分の中区は12か月平均¥10,100・9月を除くと¥9,484(N=74〜78施設)、シティホテル区分は12か月平均¥29,600・9月を除くと¥27,500(N=9〜10施設)である。名古屋駅側の中村区は12か月平均¥11,100・9月除き¥10,500で、中区より1,000円ほど高い。

9月の動きは一過性だが、名古屋都心が大規模イベント時にどれだけ単価を吸収できるかを示す実測値として記録に値する。愛知県全体の推定稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、対象328施設/客室33,635室・主要予約サイト掲載ベース)は9月1〜14日の平均83.7%から、開会式前日の9月18日以降は平均96.4%へ上がり、9月20日には99.9%に達した。同日のOTA平均掲載価格は¥77,300で、9月前半の日別中央値(1万5,300円前後)の5倍に達している。半径1.2km圏の50室以上のホテル74施設で2026年9月と2025年9月の推定成約ADRを比べると、前年同月比の中央値は+76%だった。個別には+200%を超えた宿泊特化型もあれば、法人契約の比率が高いと見られる施設は一桁の変化にとどまっており、短期のイベント需要をどこまで価格に転換できるかは施設の販売チャネルの構成で大きく分かれる。大会期間中の県内の完売状況と閉会週末の受け皿は、アジア大会の名古屋・愛知ホテル、9/20は96%が完売が日別に整理している。

名古屋市中区 推定成約ADRの年次重ね合わせ(全区分・中央値)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=86〜92施設。2026年10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定・破線)
愛知県 2026年9月の日別 推定稼働率とOTA平均掲載価格(LT1時点)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(対象328施設/客室33,635室・主要予約サイト掲載ベース、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値)

ポジショニング — 74施設の7割がADR1万円未満、1.5万〜5万円の帯に空きがある

半径1.2km圏の50室以上のホテル・カプセルのうち、2026年6〜8月の推定成約ADRが10か月以上観測できた74施設・14,496室を客室数×ADRの平面に置くと、中央値は¥8,768で、52施設・10,139室(69.9%)が1万円未満に集中する。1万〜1.5万円が15施設・2,613室(18.0%)、1.5万〜2.5万円が4施設・979室、2.5万〜5万円が2施設・615室、5万円以上は1施設・150室で、1.5万円以上を合計しても7施設・1,744室(12.0%)にとどまる。2026年7月31日に開業したコンラッド名古屋(170室)は観測月数が10か月に満たないため集計から外したが、2026年8月の推定成約ADRは約9万8,500円で、5万円以上の帯の厚みを増す存在になる。

客室規模 × 推定成約ADR ポジショニングマップ(2026年6〜8月平均、円の大きさ=客室数)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=74施設・14,496室、錦三丁目から半径1.2km・50室以上・観測10か月以上) ■青ゾーン=WS① ■紺ゾーン=WS②

密集 埋まっている領域

ADR1万円未満 × 100〜400室
52施設・10,139室。宿泊特化型が集中し、平日は出張需要で埋まる。参入は価格以外の差別化が前提。

WS① 1.5万〜2.5万円 × 150〜250室

4施設・979室のみ。改装型アッパーミッドの受け皿が薄く、既存の宿泊特化型を改装して単価を1.5万円台へ上げる余地がある。

WS② 2.5万〜5万円 × 150〜250室

2施設・615室。シティホテル区分の中区ADRは平常月¥27,500で、この帯は供給が少ないまま単価が形成されている。

半径1.2km圏 推定成約ADR上位12施設(2026年6〜8月平均と9月)
施設(推定成約ADR上位12)客室数区分開業ADR 2026年6〜8月ADR 2026年9月
TIAD,AUTOGRAPH COLLECTION(マリオットグループ)150シティホテル2023年¥62,990¥65,355
ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋246シティホテル2024年¥31,371¥51,888
名古屋観光ホテル369シティホテル1936年¥25,821¥57,033
ニッコースタイル名古屋191ビジネスホテル2020年¥24,544¥42,866
コートヤード・バイ・マリオット名古屋360シティホテル2022年¥23,974¥24,459
ドーミーインPREMIUM名古屋栄212ビジネスホテル2015年¥16,810¥23,947
ホテルJALシティ名古屋 錦216ビジネスホテル2019年¥16,433¥15,097
ホテルフォルツァ名古屋栄195ビジネスホテル2021年¥14,385¥20,794
西鉄ホテル クルーム名古屋242ビジネスホテル2019年¥14,061¥16,234
ABホテル 名古屋栄130ビジネスホテル2013年¥13,327¥19,630
BASE LAYER HOTEL 名古屋錦188ビジネスホテル2025年¥12,895¥28,553
ダイワロイネットホテル名古屋伏見233ビジネスホテル2019年¥12,578¥21,454
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR=最安プラン水準×業態別係数、税抜相当。上位12施設は単価帯の厚みを示すための参照であり、施設の優劣を示すものではない)

価格帯の空きが「埋まり方」の差によるものかどうかも確かめた。大会の影響がない2026年8月17日〜30日の14日間について、中区の施設別残室データ(OTA公開枠が総客室の30%以上の施設に限定、中区336施設のうち観測のある93施設・条件を満たす64施設)を半径1.2km圏に絞ると52施設・9,690室が残り、14日のうち残室が0室に到達した日数の比率は中央値93.0%、13日以上で完売を観測した施設が29施設(56%)だった。横軸にADR、縦軸に完売日数比率を取ると点は上辺に張り付き、1万円未満の施設も2万円台の施設も同じように埋まっている。つまり錦1km圏では客室の消化は価格帯を問わず進んでおり、空いているのは「量」ではなく「価格帯」である。既存ホテルの取得後に成長余地を探すなら、稼働の上積みより単価側に伸びしろがある、というのがこの散布図の読みだ。

推定成約ADR × OTA公開枠の完売日数比率(2026年8月17〜30日・14日間、施設は匿名)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=52施設/客室9,690室、OTA公開枠が総客室の30%以上の施設のみ。完売=各宿泊日の観測で残室0室に到達)

イベント時の吸収力も参考値として示す。アジア競技大会の開幕週(9月19日〜25日、7日間)について同じ条件で中区の施設別残室を集計すると、条件を満たす39施設(観測のある93施設、中区336施設)のうち、半径1.2km圏の上位10施設は7日すべてで残室0室を観測し、ほとんどが宿泊日の45日以上前から完売していた。宿泊特化型の150〜280室クラスがイベントの1か月半前には枠を売り切っていたことになり、これは錦・栄の宿泊特化型が持つ集客力の実証でもある。

アジア競技大会開幕週(2026年9月19〜25日)に早期完売を観測した上位10施設
施設(開幕週に早期完売を観測した上位10)客室数早期完売の時期完売観測日数
アパホテル〈名古屋栄東〉150宿泊日の45日以上前から完売7/7日
プリンセスガーデンホテル197宿泊日の45日以上前から完売7/7日
グランドベース大須15宿泊日の45日以上前から完売7/7日
スマイルホテル名古屋栄142宿泊日の45日以上前から完売7/7日
西鉄ホテル クルーム名古屋242宿泊日の45日以上前から完売7/7日
KOKO HOTEL 名古屋栄204宿泊日の45日以上前から完売7/7日
ホテルセントメイン名古屋136宿泊日の45日以上前から完売7/7日
ザ タワーホテルナゴヤ15宿泊日の45日以上前から完売7/7日
ドーミーインPREMIUM名古屋栄212宿泊日の45日以上前から完売7/7日
名鉄イン名古屋錦280宿泊日の45日以上前から完売7/7日
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年9月19〜25日、OTA公開枠が総客室の30%以上の39施設を集計対象、観測のある93施設/中区336施設。残室はOTA公開枠ベースで、施設全体の満室を意味しない)

供給 — 2km圏の客室は2012年比+64%、2026年は521室が加わり2027年は145室が見えている

供給の履歴は価格帯の偏りを説明する。錦三丁目から半径2kmの客室ストックは、開業日と閉館日で各年末の稼働施設を数える方法で2012年の115施設・18,048室から2019年の168施設・27,166室へ増え、2026年は188施設・29,608室(2012年比+64%、2019年比+9%)になった(開業日・閉館日ベースの各年末時点の概算値として示す)。増加分の大半は2017〜2019年に開業した宿泊特化型で、1万円未満の帯が厚いのはこの時期の供給の帰結である。2026年に半径1.2km圏で開業したのは4月のナインアワーズ名古屋栄(184室)、7月のコンラッド名古屋(170室)、10月のELE Hotel 名古屋栄駅前(142室)、7月のマンガアートホテル名古屋丸の内(25室)の計521室で、2027年はBASE LAYER HOTEL UNION NAGOYA SAKAE(86室・1月)とFAV LUX 名古屋丸の内(59室・4月)の145室がOTA掲載で確認できる。OTA掲載は開業の数か月前から出るため、2027年以降の件数は今後の掲載で増える可能性がある。ザ・ランドマーク名古屋栄(錦3-25-1、延床約109,700㎡、2026年3月竣工)の上層階にコンラッド名古屋(170室)が開業したほかは、錦周辺で新たな大型ホテル計画は確認できなかった。供給の増勢は2019年までに一巡し、2026〜2027年は年150〜520室規模の追加にとどまる、というのが現時点のパイプラインである。

錦三丁目 半径2km圏の客室ストック推移(各年末時点の稼働施設・概算)
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、開業日・閉館日による各年末時点の概算)

取得事例と価格目線 — 1室3,200万円台、還元利回り4.0%が名古屋都心の基準

価格目線は公表された取得事例から組み立てる。Oneリート投資法人が2025年3月に取得したコンフォートイン名古屋栄駅前(錦三丁目16番30号、240室、2014年3月竣工、鉄骨造13階、延床5,186.54㎡、土地654.70㎡、商業地域・容積率800%)は取得価格7,740百万円に対し鑑定評価額8,310百万円で、日本不動産研究所の鑑定は直接還元法の還元利回り4.0%、DCF法の割引率3.8%・最終還元利回り4.1%を採用している。賃料は運営会社グリーンズとのGOP連動の変動賃料で、1室あたり取得価格は3,225万円、延床1㎡あたり149万円になる。2026年3月にエスコンジャパンリート投資法人が取得したコンパスホテル名古屋(名古屋駅エリア、130室、2019年竣工)は44億円で、1室3,385万円だった。上場ホテルREITの保有物件に目を移すと、半径1.2km圏ではヒルトン名古屋(ジャパン・ホテル・リート投資法人、取得価格15,250百万円、460室)、ホテルマイステイズ名古屋栄(インヴィンシブル投資法人、2014年7月取得、2,958百万円、260室)、ホテルマイステイズ名古屋錦(同、2019年7月取得、5,197百万円、169室)、the b 名古屋(星野リゾート・リート投資法人、2017年11月取得、4,500百万円、219室)の4物件が各投資法人の開示資料(2026年10月12日時点の集計)で確認できる。宿泊特化型の1室あたり取得価格は2014年の1,140万円から2017年の2,050万円、2019年の3,080万円、2025年の3,225万円、2026年の3,385万円へと階段状に切り上がってきた。築年や立地が異なるため単純な時系列ではないが、名古屋都心の宿泊特化型に付く価格が1室3,200〜3,400万円の帯で形成されていることは読み取れる。鑑定評価額と取得価格の関係や還元利回りの分布については、ホテルREIT鑑定評価額、取得価格の1.25倍 — 298物件の還元利回り分布が全国298物件を横断して整理している。

名古屋都心 宿泊特化型の取得事例と1室あたり取得価格
物件取得時期客室数取得価格1室あたり取得者
ホテルマイステイズ名古屋栄2014年7月2602,958百万円11.4百万円インヴィンシブル投資法人(8963)
the b 名古屋2017年11月2194,500百万円20.5百万円星野リゾート・リート投資法人(3287)
ホテルマイステイズ名古屋錦2019年7月1695,197百万円30.8百万円インヴィンシブル投資法人(8963)
コンフォートイン名古屋栄駅前2025年3月2407,740百万円32.2百万円Oneリート投資法人(3290)
コンパスホテル名古屋(名古屋駅エリア)2026年3月1304,400百万円33.8百万円エスコンジャパンリート投資法人
出典: 各投資法人の開示資料・発表、各投資法人の開示資料の集計(2026年10月12日時点)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。1室あたりは取得価格÷客室数
名古屋都心 宿泊特化型の1室あたり取得価格(公表事例)
出典: 各投資法人の開示資料・発表よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
新築した場合の再調達原価(200室・延床4,320㎡の宿泊特化型モデル)
敷地650㎡の地価前提土地総額1室あたり
錦3丁目・歓楽街側(公示 錦3-9-14)14.0億円48.7億円24.4百万円
錦2丁目・伏見側(公示 錦2-19-1)32.2億円66.9億円33.5百万円
栄駅前(調査 錦3-24-20)58.2億円92.9億円46.5百万円
出典: 建築費240.5万円/坪と上昇率(2026年+5.3%・2027年+5.0%)は本稿の仮定(参考:国土交通省 建築着工統計 2024年 宿泊業用・鉄骨造165.0万円/坪、Turner & Townsend 国際建設市場調査2026)、不動産情報ライブラリ(地価)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。建築費は2025年水準31.4億円を2027年着工で34.7億円に織り込み

再調達原価と比べると、取得価格の意味が見える。コンフォートイン名古屋栄駅前と同じ1室21.6㎡の延床効率で200室(延床4,320㎡・約1,307坪)の宿泊特化型を新築する場合、建築費を本稿の仮定として240.5万円/坪(参考:国土交通省 建築着工統計の宿泊業用・鉄骨造は2024年で165.0万円/坪)と置くと31.4億円、建設コストの上昇を2026年+5.3%、2027年+5.0%と仮定した2027年着工では34.7億円になる(Turner & Townsendは2026年の国内主要都市の建設コスト上昇率を5.6〜6.2%と見込む)。敷地650㎡の土地代は錦三丁目の歓楽街側(215万円/㎡)で14.0億円、錦二丁目の伏見側(495万円/㎡)で32.2億円、栄駅前(895万円/㎡)で58.2億円と幅があり、1室あたりの再調達原価は24.4百万円から46.5百万円まで開く。直近の取引価格3,200万円台は、錦の内側で新築する場合の原価を上回り、伏見側・栄駅前で新築する場合の原価を下回る位置にある。既存ホテルを買う側から見れば、地価の高い駅前街区ほど「新築より既存取得が有利」という構図が明確で、2025〜2026年に栄駅前・名古屋駅エリアで既存ホテルの取引が続いた背景もここにある。

この価格でどれだけの収益が要るかを、200室・1室3,200万円(総額64億円)の取得モデルで試算する。客室売上はADR×稼働率×365日×200室、GOP率は45%を仮定した(インヴィンシブル投資法人が有価証券報告書〔2024年6月期〕で物件別に開示するGOP比率は中央値で約46%であり、本稿の仮定として45%を置いた。本稿のGOPは客室売上に対する比率で、料飲・その他収入は含めていない)。中区ビジネス区分の平常月ADR9,500円・稼働80%ではGOP利回りが3.9%にとどまり、コンフォートイン名古屋栄駅前の鑑定NOI利回り4.7%(取得価格ベース)に届くにはADR11,000円×稼働85%、またはADR12,500円×稼働75%以上が要る。稼働率は観光庁統計の愛知県ビジネスホテル75.4%(2025年)とOTA掲載在庫ベースの推定82.5%(2026年8月)の間にあり、上積みの余地は数ポイントしかない。取得側のアップサイドは単価に置かざるを得ず、錦の既存ホテルを買う投資家が改装・リブランド・販売チャネルの再設計をセットで考える理由はこの表に尽きる。

取得モデル(200室・総額64億円・GOP率45%)のADR×稼働率感応度:売上/GOP/GOP利回り
推定成約ADR\稼働率75%80%85%
9,500円(中区ビジネス区分の平常月水準)売上5.2億円/GOP2.3億円/3.7%売上5.5億円/GOP2.5億円/3.9%売上5.9億円/GOP2.7億円/4.1%
11,000円(+16%)売上6.0億円/GOP2.7億円/4.2%売上6.4億円/GOP2.9億円/4.5%売上6.8億円/GOP3.1億円/4.8%
12,500円(+32%)売上6.8億円/GOP3.1億円/4.8%売上7.3億円/GOP3.3億円/5.1%売上7.8億円/GOP3.5億円/5.5%
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(200室・取得総額64億円・GOP率45%の仮定。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です)

投資判断の整理 — 平常月単価×稼働の上限を前提に、単価側の伸びしろで値付けする

投資判断の整理(論点別の現状と評価への含意)
項目現状の読み評価への含意
需要の土台1km圏就業22.2万人、平日稼働が週末を上回る。インバウンド比率は21.4%(2025年)出張需要で底が固い。単価の上振れは週末・連休・イベントで取る
単価中区平常月ADR ¥9,599、ビジネス区分¥9,484。1〜8月は前年比+3.6%大会月の¥16,927を基準にしない。取得時の前提は平常月で置く
供給2km圏29,608室、2026年+521室、2027年は145室が確認済み(掲載ベースの下限)2019年までの増勢は一巡。中期の供給圧力は限定的
価格帯の空き1.5万円以上は74施設中7施設・1,744室(12.0%)改装型アッパーミッドの受け皿が薄い。単価側に成長余地
地価・再調達原価錦3丁目内側215万円/㎡〜栄駅前895万円/㎡。新築原価は1室2,440〜4,650万円駅前街区ほど既存取得が新築より有利
価格目線1室3,225〜3,385万円、還元利回り4.0%(2025〜2026年の公表事例)平常月ADR・稼働80%ではGOP利回り4%前後。単価+16〜32%が目標レンジ
制度名古屋市は宿泊税の導入を検討中(2026年3月の市税制研究会報告書に章立て、時期・税額は未定)導入時は1人1泊数百円規模の価格転嫁の設計が要る
出典: メトロエンジンリサーチ&コンサルティング

名古屋都心の既存ホテルに付く評価は、2025〜2026年の公表事例が示す1室3,200万円台・還元利回り4.0%を基準に、平常月のADRと稼働の上限で収益を見積もり、単価側の伸びしろにどれだけの確度を置くかで決まる。今回の中央日本土地建物の取得は物件が特定されていないため、この枠組みに当てはめた個別の評価はできない。それでも、国内の総合デベロッパーが錦の既存ホテルに参入したという事実は、オフィス・商業の集積に宿泊を組み合わせて街区単位で価値を上げる動きが名古屋でも始まったことを示している。錦・栄で既存ホテルを保有するオーナーにとっては、保有物件の価格帯がどこに位置し、1.5万円以上の帯へ移行する余地があるかを確かめる好機といえる。

運営者・オーナーへの示唆

錦・栄で宿泊特化型を運営する事業者に向けて、本稿のデータから3点を提案したい。第一に、平日の出張需要で埋まる構造は強みであり、月〜木の稼働85%は価格を一段上げても維持できる水準と読める。同じ区分のADRが1万円前後に密集しているため、客室の改装や朝食・ラウンジの再設計で1.5万円の帯に移る施設は、競合の少ない価格帯を取りに行ける。第二に、9月の実測が示したように、イベント時の単価吸収力は販売チャネルの構成で大きく分かれる。法人契約の比率が高い施設でも、イベント日程に合わせて一般販売枠を確保しておくだけで上振れを取り込める。第三に、保有物件を売る側に回る場合、1室3,200万円台という直近の価格目線は「平常月ADR×稼働80%でGOP利回り4%」の裏返しであり、改装による単価実績を1年分作ってから売却に出すほうが、買い手の成長シナリオを数字で裏づけられる。いずれも断定ではなく、本稿の集計から読める方向性として提示する。

よくある質問

Q. 中央日本土地建物が取得した錦のホテルはどこですか?
A. 公表されていません。日経不動産マーケット情報の2026年10月13日の報道で確認できるのは「名古屋市中区錦のホテルを取得した」という点までで、ホテル名・客室数・取得価格・売主・運営者は本稿執筆時点で確認できていません。同社の公式ニュースリリースにも該当する発表はありません。
Q. 名古屋市中区のホテル単価はいくらが平常水準ですか?
A. 推定成約ADR(全区分・中央値)は2025年10月〜2026年8月の11か月平均で¥9,599、ビジネスホテル区分は¥9,484です。アジア競技大会のあった2026年9月は¥16,900(前年同月比+79.0%)でしたが、特殊要因として評価の基準にはしていません。
Q. 名古屋都心の宿泊特化型ホテルはいくらで取引されていますか?
A. 公表事例では、栄駅前の240室が7,740百万円(2025年3月、1室3,225万円、鑑定の還元利回り4.0%)、名古屋駅エリアの130室が44億円(2026年3月、1室3,385万円)です。本稿の試算では、この価格で平常月ADR×稼働80%を置くとGOP利回りは4%前後になります。

集計方法と前提

■ データソース

  • 推定成約ADR:メトロエンジンリサーチ&コンサルティングが集計するOTA掲載価格(2名1室・税込)の最安プラン水準に業態別係数を適用した推定値(税抜相当)。エリア値は対象施設の中央値、Nは各月の対象施設数。
  • 客室ストック:錦三丁目付近(北緯35.1700・東経136.9030)からの距離で施設を抽出し、2026年7〜9月に価格観測のある施設を「価格観測ベース」として集計。半径2kmの推移は開業日・閉館日ベースの概算。
  • 稼働率:OTA掲載在庫ベースの推定値(総客室の30%以上を掲載する施設の固定コホート、LT1時点)。長期の稼働は観光庁「宿泊旅行統計調査」推移表の客室稼働率を使用。
  • 地価・用途地域:国土交通省 不動産情報ライブラリ(2024〜2026年地価公示、2026年都道府県地価調査、用途地域)。就業:総務省・経済産業省 経済センサス-活動調査(2021)。居住:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)。
  • 取引事例:各投資法人の開示資料、JLL・地主株式会社の発表、各投資法人の開示資料の集計(2026年10月12日時点)。

■ 試算前提

  • 取得モデル:200室・1室3,200万円(総額64億円)、客室売上=ADR×稼働率×365日×200室、GOP率45%(客室売上比。料飲・その他収入を含まない)。
  • 再調達原価:延床4,320㎡(1室21.6㎡)、建築費は本稿の仮定240.5万円/坪に2026年+5.3%・2027年+5.0%(仮定)を乗じた2027年着工水準、土地は敷地650㎡×各地点の2026年地価。設計料・諸経費・金利は含まない。
  • 再調達原価と取得価格の比較は築年・設備水準の差を補正していない。

■ 限界・留意点

  • 推定成約ADRはモデル推定値で、REIT開示実績との照合で誤差中央値は約7%。個別施設の会計上の単価とは異なる。
  • OTA掲載在庫ベースの稼働率は掲載外の客室を消化済みとして扱うため、実稼働率より高めに出る。施設別の残室は公開枠内の残数であり、施設全体の満室を意味しない。
  • 2026年10〜12月のADRは調査時点の掲載水準に基づく推定で、チェックイン日に近づくにつれて変動する。
  • 観光庁統計は2026年1月分から抽出設計が変更されており、2025年以前との比較には注意が要る。
  • 中央日本土地建物の取得物件は特定できていないため、個別物件の評価は行っていない。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年10〜12月のADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の価格調整で下落する可能性がある点にご留意ください。

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参考資料・出典一覧

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

■ REIT・企業開示・業界レポート

■ ニュース・報道

出典: ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)

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