JR今治駅から半径2kmの客室数は、2017年の929室(17施設)から2026年には1,524室(24施設)へと、9年間で595室・64%増えた。増加分のほぼすべてにあたる594室は、2021年と2024年に開業した新築4棟によるものである。その一方で、駅1km圏の商業地地価は5年続けて下がり、居住人口は2040年に向けて2割超の減少が見込まれている。本稿では、人口と地価が縮む地方中核都市で積み上がった客室がどの需要に支えられているのかを、曜日別の推定稼働率と予約の入り方、推定成約ADRから読み解く。
本記事における指標の定義
※本記事における指標の定義:ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(184物件月・2026年4〜5月)で誤差中央値は約7.5%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。ブッキングカーブ=チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。データ出典:メトロエンジンリサーチ。
- — 929室→1,524室(+64%):今治駅2km圏の客室は2017年から2026年に595室増え、うち594室は2021年・2024年開業の新築4棟が占める
- — 地価は下落、土地は総投資の約2.7%:駅1km圏の商業地公示地価は中央値7.66万円/㎡(2026年・前年比−0.7%)。150室試算で利回りを左右するのは建設費と単価
- — 火〜木79.8%・土曜82.2%の二こぶ型:今治市の稼働率(推定・2026年6月10日〜9月30日)は平日の海事産業と週末のしまなみ観光の二重需要を映す
- — 今治市の推定成約ADRは7,233円(前年比+2.1%):新築4棟の中央値約7,500円は既存11施設の約1.5倍。9,000〜12,000円帯には施設がない
- — GOP利回り4.1〜5.9%:建設期間のインフレを織り込むと、利回り6%には通年稼働率80%の仮定でADR約10,200円が必要。空白の価格帯を取れるかが分岐点
供給の推移 — 9年で595室増、その594室は新築4棟
まずは供給の時系列を確認したい。メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、JR今治駅(北緯34.0659度・東経132.9976度)から半径2kmに立地し開業年が確認できる施設を各年末時点で数えると、2017年は17施設929室だった。2020年までは18施設935室とほぼ横ばいで推移し、2021年に20施設1,202室、2024年に23施設1,514室、2026年は24施設1,524室となっている。増え方は連続的ではなく、2021年の+267室と2024年の+327室という2つの段差で説明できる形である。
段差の中身は4棟の新築ホテルである。2021年は4月にスーパーホテル今治(146室)、9月にJRクレメントイン今治(121室)が開業し、2024年は3月にしまなみプライムホテル今治(152室)、6月にホテルルートイン今治(175室)が続いた。4棟の合計は594室で、9年間の純増595室とほぼ一致する。いずれも各社の公式発表・報道で開業日と客室数を確認できる。
| 施設名 | 客室数 | 開業日 | 立地 | 特徴(各社発表) |
|---|---|---|---|---|
| スーパーホテル今治 | 146室 | 2021年4月29日 | 駅から約1.0km | 自転車を持ち込める客室を設定 |
| JRクレメントイン今治 | 121室 | 2021年9月16日 | 今治駅前 | サイクルルーム17室 |
| しまなみプライムホテル今治 | 152室 | 2024年3月28日 | 駅から徒歩約5分 | 最上階に展望大浴場・サウナ |
| ホテルルートイン今治 | 175室 | 2024年6月8日 | 今治ICから約3分 | ロードバイク持ち込み可の客室 |
注目したいのは、4棟すべてが宿泊特化型でありながら、サイクリスト向けの客室や大浴場といった観光客を意識した仕様を備えている点だ。業務出張だけを想定した供給ではなく、しまなみ海道の起点という立地を織り込んだ設計といえる。以下の地図に、推定成約ADRの12か月系列がそろう15施設(1,461室、駅2km圏の客室の96%)と、地価公示の商業地4地点を示した。
立地評価 — 駅前の商業地は2022年比8.2%下落、容積率は300〜500%
客室が6割増えた同じ期間に、足元の地価は下がり続けている。国土交通省の地価公示で今治駅から1km以内にある商業地4地点をみると、2026年の価格は5.92万〜10.1万円/㎡で、中央値は7.66万円/㎡(2025年は7.72万円/㎡、前年比−0.7%)だった。4地点とも前年比は−0.1%〜−1.9%とマイナス圏にあり、駅に最も近い常盤町4丁目の地点は2022年の11.0万円/㎡から2026年の10.1万円/㎡へ、4年間で8.2%下がっている。
| 標準地 | 所在 | 駅からの距離 | 容積率 | 2022年(円/㎡) | 2026年(円/㎡) | 前年比 | 2022年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 今治5-4 | 常盤町4丁目2番4外 | 約120m | 500% | 110,000 | 101,000 | −1.9% | −8.2% |
| 今治5-1 | 北日吉町1丁目218番8 | 約520m | 300% | 82,000 | 80,500 | −0.1% | −1.8% |
| 今治5-3 | 北宝来町3丁目1番28 | 約480m | 400% | 77,600 | 72,700 | −1.4% | −6.3% |
| 今治5-2 | 旭町3丁目4番8 | 約800m | 500% | 61,700 | 59,200 | −0.2% | −4.1% |
ただし、地価の下落はホテル開発にとって逆風とは限らない。駅前の商業地は容積率300〜500%が指定されており、後段の試算で示すとおり、150室規模の宿泊特化型では土地代が総投資額に占める割合は3%に満たない。投資の成否を決めるのは地価ではなく建設費と単価であり、土地が安いことは参入のハードルを下げる側に働く。災害リスクや個別地点の規制は本稿では扱っておらず、実際の検討では自治体のハザードマップと都市計画図での確認が欠かせない。
需要の土台 — 居住人口は縮むが、1km圏に従業者1.25万人
次に、宿泊需要の土台となる人口と就業の構造を押さえておく。国土交通省の250mメッシュ別将来推計人口によると、今治駅から半径1kmの居住人口は2020年の12,837人から2040年には9,252人へと27.9%減る見通しで、半径1.5kmに広げても23,366人から17,891人へ23.4%の減少となる。2025年時点の高齢比率は1km圏で40.1%に達している。なお、これは国勢調査ベースの居住人口であり、来訪者や通過人口を示すものではない。
一方で、働く場としての厚みは残っている。総務省・経済産業省の経済センサス(2021年)では、駅1km圏に1,526事業所・従業者12,519人、2km圏では2,546事業所・21,435人が集まる。オフィス系従業者の比率は1km圏で13.4%、2km圏で11.0%にとどまり、事務所街というより製造・物流・商業の現場を抱えた街の構成である。
| 今治駅からの範囲 | 事業所数 | 従業者数 | オフィス系比率 | 居住人口(2020年) | 2040年推計(2020年比) |
|---|---|---|---|---|---|
| 半径1km | 1,526 | 12,519人 | 13.4% | 12,837人 | −27.9% |
| 半径2km(就業)/1.5km(人口) | 2,546 | 21,435人 | 11.0% | 23,366人 | −23.4% |
背景にあるのは海事産業の集積である。今治市の公表資料によれば、市内には造船業14事業所が立地して建造隻数は国内の約18%を占め、市内に本社や拠点を置く造船会社のグループ全体では日本全体の約35%の船舶を建造している。外航船についても、国内の3,663隻の約30%にあたる約1,100隻を市内の船主が保有するとされる(いずれも2021年度実績)。船主・造船所・舶用メーカー・金融機関・検査機関が行き来する商談や工程立ち会いは、域外からの平日宿泊を生む需要源と考えられる。
もう一つの柱がサイクルツーリズムだ。しまなみ海道には国内外から年間約33万人のサイクリストが訪れるとされ、レンタサイクルの貸出は2023年度に127,458台、うち海外からの利用は29,678台と2019年度の23,547台を26%上回った(尾道市資料)。2026年10月25日には隔年開催の国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ2026」が参加定員7,000名程度の規模で予定されている。居住人口が縮む街で客室が増えた理由は、域内人口ではなく域外から来る2種類の需要に求めるのが自然だろう。しまなみ海道を含むナショナルサイクルルート12路線の沿線で宿泊の受け皿がどれだけあるかは、自転車で走る秋、泊まるのはどこかで路線別に比較している。
曜日別の稼働 — 火〜木79.8%と土曜82.2%の二こぶ型
では、2つの需要は実際の稼働にどう表れているのか。今治市全体(対象24〜26施設/客室1,029〜1,053室、主要予約サイト掲載ベース)の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を2026年6月10日〜9月30日の113日間について曜日別に平均すると、火〜木曜が79.0〜80.5%(3曜日平均79.8%)、土曜が82.2%で、平日中盤と土曜の両方に山がある二こぶ型になった。谷は日曜の65.9%と金曜の71.4%、月曜の73.1%である。
| 曜日 | 今治市 稼働率(推定) | 今治市 掲載価格(全プラン平均・税込) | 愛媛県ビジネスホテル 稼働率(推定) | 集計日数 |
|---|---|---|---|---|
| 月曜 | 73.1% | 16,765円 | 76.3% | 16日 |
| 火曜 | 79.7% | 15,264円 | 82.7% | 16日 |
| 水曜 | 80.5% | 15,237円 | 83.2% | 17日 |
| 木曜 | 79.0% | 15,316円 | 83.2% | 16日 |
| 金曜 | 71.4% | 15,525円 | 75.5% | 16日 |
| 土曜 | 82.2% | 21,232円 | 82.5% | 16日 |
| 日曜 | 65.9% | 17,538円 | 68.3% | 16日 |
愛媛県のビジネスホテル(対象48〜50施設/客室5,009〜5,232室)も火〜木曜82.7〜83.2%、土曜82.5%とほぼ同じ形を描く。県全体と比べた今治市の特徴は、土曜が火〜木曜を2.4ポイント上回り、週の最高値になっている点にある。掲載価格(全プラン平均・税込)も火〜木曜の約15,300円に対して土曜は約21,200円と約4割高く、週末の観光需要が単価の面でも効いている。平日は業務、土曜は観光という二重需要が、同じ客室を週の中で使い分けている構図と読める。
駅2km圏に絞って最安掲載価格の動きをみても、同じ傾向が確認できる。主要12施設の最安掲載価格(2名1室・税込)の中央値は、2026年9月の平日が5,600円前後だったのに対し、連休を除く土曜は7,000〜7,900円台だった。さらに10月3日時点の掲載では、サイクリングしまなみ2026の前夜にあたる10月24日(土)の中央値が約18,800円(掲載が確認できた10施設)と、10月平日の約6,000円の約3倍の水準に設定されている。イベント日の単価設計に積極的な施設が多いことは、このエリアの収益機会の大きさを示すものといえる。
予約の入り方 — 平日も土曜も直前2週間で2〜3割を積む
曜日による違いは、予約が入るタイミングにも表れる。今治市の9月の3日程についてLT45からLT1までのブッキングカーブを比べると、9月12日(土)はLT45時点の47.7%からLT14で72.7%、LT1で91.2%へと、早い段階から一定のペースで積み上がった。9月16日(水)はLT45で42.5%、LT14でも57.5%にとどまっていたが、最後の2週間で26.6ポイントを積んでLT1では84.1%に達している。
興味深いのは、同じ水曜でも9月9日(水)はLT45時点ですでに62.6%まで進んでおり、LT1で94.9%と土曜を上回った点である。平日需要は一様ではなく、早くから埋まる日と直前に伸びる日が混在している。業務出張は日程が特定の行事や工程に連動しやすいためと考えられるが、OTAの公開データだけで要因を特定することはできない。運営の視点では、平日であってもLT14以前の進捗が速い日を早めに見つけ、段階的な価格設定に結び付けることで、さらなる収益拡大の余地が生まれるといえる。愛媛県全体の土曜について45日前からの積み上がり方を業態別に比べた分析は、愛媛県・土曜4日のブッキングカーブ比較も参考になる。
単価の現在地 — 今治市7,233円、新築4棟は既存の約1.5倍
単価はどう動いたか。今治市の推定成約ADR(月次の施設中央値、N=30〜32施設)を12か月平均でみると、2024年9月〜2025年8月の7,085円に対し、2025年9月〜2026年8月は7,233円で前年比+2.1%だった。月別では5月・11月・1月が高く、6月が年間の底になる季節性がはっきりしている。道後温泉・松山市街を含めた県内の単価階層については、愛媛県ホテル投資マップが2026年6月単月の断面(今治市は約6,100円)で整理している。
| 市 | 推定成約ADR(2024年9月〜2025年8月) | 同(2025年9月〜2026年8月) | 前年比 | 対象施設数 |
|---|---|---|---|---|
| 松山市 | 9,487円 | 9,963円 | +5.0% | N=85〜90 |
| 今治市 | 7,085円 | 7,233円 | +2.1% | N=31〜32 |
| 新居浜市 | 5,717円 | 5,792円 | +1.3% | N=10〜11 |
| 西条市 | 5,262円 | 5,767円 | +9.6% | N=19〜21 |
県内の工業都市と並べると、今治市は松山市の約1万円には届かないものの、新居浜市・西条市の5,800円前後を約1,400円上回る位置にある。ただし、市全体の数値には島しょ部の施設も含まれるため、駅周辺の実像は別に確かめる必要がある。そこで駅2km圏で12か月の系列がそろう15施設(1,461室)を取り出すと、施設中央値は5,849円(前年5,843円)とほぼ横ばい、客室数で加重した平均は8,002円(前年8,466円)だった。327室の新規供給が通年で加わった局面で、エリアは単価を一部譲りながら客室を埋めてきたと読める。
このポジショニングから読み取れる点は2つある。第一に、2021年以降に開業した新築4棟の12か月平均は約6,300〜8,700円で、中央値は約7,500円と、それ以前に開業した11施設の中央値約5,000円のおよそ1.5倍にあたる。新しさと大浴場・サイクリスト対応といった仕様が、単価の差として表れている。第二に、約8,700円から約12,300円のあいだには施設が1つもない。フルサービス型の上位1施設と宿泊特化型の新築群のあいだにある9,000〜12,000円帯は、現時点で空いている価格帯である。
厚みのある領域
5,000〜7,000円 × 36〜121室
7施設・583室。駅前の既存ビジネスホテルが集まる中心価格帯。
新築が形成した領域
7,000〜8,700円 × 146〜175室
3施設・473室。大浴場・サイクル対応を備えた宿泊特化型。
空いている価格帯
9,000〜12,000円
該当施設なし。週末・イベント日の観光需要を受け止める上位宿泊特化型のアップサイド。
開発シナリオ試算 — 150室の宿泊特化型で利回り4〜6%
ここまでの数値を使い、駅前で150室の宿泊特化型を新築する場合の簡易試算を行う。延床面積は1室あたり26㎡(客室18㎡前後・客室部分比率約7割)として3,900㎡(約1,180坪)、敷地は容積率500%を前提に780㎡とした。土地は駅前最高地点の公示地価10.1万円/㎡を置くと約0.8億円である。建設費は国土交通省 建築着工統計にもとづく2025年のS造の坪単価240.5万円を採用し、約28.4億円とした。GOP率は45%を置いた。インヴィンシブル投資法人が開示する運営91物件のGOP実績は38.9%(2024年12月期)で、宿泊特化型の一般的な目安は50〜60%とされるため、その中間の保守的な水準である。
| 項目 | ケース1:市場並み | ケース2:新築上位並み |
|---|---|---|
| 客室数 | 150室 | 150室 |
| ADR想定 | 7,500円(新築4棟の中央値) | 8,700円(新築群の上限) |
| 稼働率想定 | 75% | 80% |
| 客室売上(年) | 3.08億円 | 3.81億円 |
| GOP(45%) | 1.39億円 | 1.71億円 |
| 総投資額(2025年実績ベース) | 29.2億円 | 29.2億円 |
| GOP利回り(2025年実績ベース) | 4.8% | 5.9% |
| 総投資額(建設期間インフレ織込み) | 33.6億円 | 33.6億円 |
| GOP利回り(同上) | 4.1% | 5.1% |
試算から見えるのは、総投資額約29.2億円のうち土地は約2.7%にすぎず、残りは建設費が占めるという構造である。地価が年1〜2%下がっても投資額はほとんど変わらず、建設費が1割動くほうが利回りへの影響ははるかに大きい。建設費の上昇は新規参入のペースを抑える方向にも働くため、すでに稼働している施設にとっては競合環境が落ち着く要因にもなりうる。
| ケース2の感度 | ベース | ADR −10% | 稼働率 −5pt | 両方 |
|---|---|---|---|---|
| 客室売上(年) | 3.81億円 | 3.43億円 | 3.57億円 | 3.22億円 |
| GOP | 1.71億円 | 1.54億円 | 1.61億円 | 1.45億円 |
| GOP利回り(2025年実績ベース) | 5.9% | 5.3% | 5.5% | 5.0% |
| GOP利回り(インフレ織込み) | 5.1% | 4.6% | 4.8% | 4.3% |
ケース設定を離れて、ADRと稼働率を同時に動かしたのが次の表である。2025年実績ベースの総投資額29.2億円に対し、ADR 7,500円・稼働率75%(通年の仮定値)のケース1が4.8%、ADR 8,700円・稼働率80%(同)のケース2が5.9%にあたる。GOP利回り6%の線を越えるのは、稼働率80%(通年の仮定値)ならADR約8,900円以上、75%なら約9,500円以上で、いずれも現時点で駅2km圏に施設のない9,000〜12,000円帯に入る。
| ADR \ 稼働率(通年の仮定値) | 65% | 70% | 75% | 80% | 85% |
|---|---|---|---|---|---|
| 6,500円 | 3.6% | 3.8% | 4.1% | 4.4% | 4.7% |
| 7,500円 | 4.1% | 4.4% | 4.8% | 5.1% | 5.4% |
| 8,700円 | 4.8% | 5.1% | 5.5% | 5.9% | 6.2% |
| 10,000円 | 5.5% | 5.9% | 6.3% | 6.8% | 7.2% |
| 11,000円 | 6.0% | 6.5% | 7.0% | 7.4% | 7.9% |
建設費とGOP率の組み合わせでみると、構図はさらにはっきりする。ケース2の客室売上3.81億円を固定したまま坪単価を240.5万円から277.9万円に上げると、GOP率45%での利回りは5.9%から5.1%へ下がり、5.9%の水準を取り戻すにはGOP率を約52%まで高める必要がある。建設期間のインフレを織り込んだ総投資額33.6億円で利回り6%に届かせるには、稼働率80%(通年の仮定値)でADR約10,200円が必要となる。空いている価格帯の中位を取りにいく商品設計が、この立地で利回りを確保する前提条件といえる。
| 建設費(坪単価) | 総投資額 | GOP率40% | 45% | 50% | 55% |
|---|---|---|---|---|---|
| 220万円 | 26.7億円 | 5.7% | 6.4% | 7.1% | 7.8% |
| 240.5万円(2025年実績) | 29.2億円 | 5.2% | 5.9% | 6.5% | 7.2% |
| 260万円 | 31.5億円 | 4.8% | 5.5% | 6.1% | 6.7% |
| 277.9万円(インフレ織込み) | 33.6億円 | 4.5% | 5.1% | 5.7% | 6.2% |
| 300万円 | 36.2億円 | 4.2% | 4.7% | 5.3% | 5.8% |
簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。とくに推定成約ADRは税抜相当の推定値で、朝食や付帯売上は含めていない。
投資判断の視点 — 単価帯の設計と週末・イベント日の伸びしろ
ここまでを整理すると、今治駅前の供給+64%を支えてきたのは、人口でも地価でもなく、海事産業の平日需要としまなみ海道の週末需要という2本の柱だった。火〜木曜の稼働率(推定)が約8割、土曜が82.2%という水準は、4棟594室が加わった後の数値であり、需要側に相応の厚みがあったことを示している。
| 論点 | 確認できた事実 | 検討時の着眼点 |
|---|---|---|
| 需要 | 火〜木79.8%・土曜82.2%の二こぶ型 | 日曜65.9%・金曜71.4%の底上げが伸びしろ。連泊やサイクリストの前後泊の取り込みが有効といえる |
| 単価 | 新築4棟の中央値約7,500円、9,000〜12,000円帯は空白 | 上位宿泊特化型の成立余地。土曜とイベント日の単価が平日を大きく上回る点が支えになる |
| 供給 | 2021年と2024年に計594室が開業 | 駅2km圏の加重平均単価は前年比で調整。追加供給の時期と規模は慎重に見極めたい |
| コスト | 土地は総投資の約3%、建設費が大半 | 建設費の変動が利回りを左右。着工時期と構造の選択が鍵になる |
| 長期 | 1km圏の居住人口は2040年に2020年比−27.9% | 域内需要と働き手の確保は縮小前提。域外需要(業務・観光・訪日)への依存度を見込む |
四国・瀬戸内で宿泊特化型を検討するデベロッパーや金融機関にとって、今治は「人口と地価だけを見れば見送り、需要の実測を見れば検討に値する」タイプの都市といえる。次のステップとしては、海事関連の行事日程と平日の予約進捗の対応を確かめること、そして9,000〜12,000円帯で成立する商品仕様を既存の新築群の実績から逆算することが出発点になるだろう。
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事で言及した2026年10月の掲載価格は、調査時点(2026年10月3日)でOTAに公開されている販売価格であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。推定成約ADRの前年比には確定済みの2026年8月までの月のみを用いています。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
客室供給の時系列=メトロエンジンリサーチが把握するOTA掲載施設のうち、JR今治駅(北緯34.0659度・東経132.9976度)から半径2kmに立地し開業年が確認できる24施設(2026年10月3日時点)。推定成約ADR=今治市・松山市・新居浜市・西条市の月次施設中央値(2024年9月〜2026年8月、今治市N=30〜32施設)と、駅2km圏で12か月の系列がそろう15施設(1,461室)の12か月平均。稼働率(推定)=今治市全業態(対象24〜26施設)と愛媛県ビジネスホテル(対象48〜50施設)の2026年6月10日〜9月30日の宿泊日113日。地価=国土交通省 地価公示(商業地・駅1km圏4地点、2022〜2026年)。人口=国土数値情報 250mメッシュ別将来推計人口、就業=経済センサス-活動調査(2021年)。
■ 試算前提
150室・延床3,900㎡(1室26㎡)・敷地780㎡(容積率500%)。土地=駅前最高地点の公示地価10.1万円/㎡、建設費=建築着工統計の2025年S造 坪240.5万円(インフレ織込みは2026〜2028年の上昇を仮定した坪277.9万円)。GOP率45%(インヴィンシブル投資法人の2024年12月期実績38.9%と、宿泊特化型の一般的な目安50〜60%の中間)。ADRは推定成約ADR(税抜相当、朝食・付帯売上を含まない)、稼働率は今治市の推定値(113日平均76.0%)を参考にした通年の仮定値。GOP利回り=GOP÷総投資額で、賃料・固定資産税・保険料・減価償却の控除前。
■ 限界・留意点
供給の時系列は現在の客室数を過去年にも適用しており、増改築による変動を反映しない。稼働率はOTA掲載在庫の消化状況に基づく推定値で施設全体の実稼働率とは異なり、2026年6〜9月の113日間の値のため通年の季節性は含まない。推定成約ADRは上場ホテルREITの開示実績との照合で誤差中央値約7.5%。2026年10月の掲載価格は調査時点の販売価格で、今後変動しうる。試算は取得諸費用・開業準備費・金利を含まない簡易試算で、災害リスクや個別地点の規制は扱っていない。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(今治市 N=28〜32施設、駅2km圏 N=15施設)、推定稼働率(今治市 対象24〜26施設/客室1,029〜1,053室)、ブッキングカーブ、客室供給の時系列(24施設・1,524室)
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示(2022〜2026年)
- 国土交通省 国土数値情報 — 250mメッシュ別将来推計人口
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021年)」
- 国土交通省「建築着工統計調査」
- 今治市「日本最大の海事都市今治とは」
- 尾道市産業部観光課「瀬戸内しまなみ海道の取組みについて」(2024年12月23日)
■ REIT・業界レポート
■ ニュース・プレスリリース
