東横インが公式サイトの新規オープン一覧で「東横INN京都長岡京」を2027年1月オープン予定と案内し、福知山市では国道9号沿いでスーパーホテルが2027年春の開業を目指していると報じられている。京都府内でも観光の京都市とは需要の質が異なる2つの業務都市に、宿泊特化型あわせて326室が入る計算になる。ただし受け止める側の厚みは大きく違い、長岡京市で直近3か月に販売掲載を確認できた宿泊施設は1施設・16室、福知山市は12施設・698室だった。本稿では、この2市の新規供給を既存ストック比・就業人口・推定成約ADRの3つの物差しで読み解く。
なお、京丹後・宮津・舞鶴の観光と業務を扱った「海の京都は2つの市場」や、京都市内の個別開業を取り上げた記事とは対象を分けている。ここで扱うのは、長岡京・福知山という京都市外の業務都市に入る宿泊特化型の新規供給に限る。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。本稿では確定済みの月(2025年9月〜2026年8月)のみを用いる。
- OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。本稿では宿泊前日(リードタイム1日)時点の値のみを用い、対象施設数・客室数(主要予約サイト掲載ベース)を併記する。
- 客室ストック:メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、2026年7〜9月に主要予約サイトで販売掲載を確認できた宿泊施設の客室数。レジャーホテルは除き、名称変更をまたぐ同一施設は1施設として数えた。予約サイトに掲載のない旅館・簡易宿所は含まない。
- 従業者数・居住人口:従業者数・事業所数は総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査(2021年)」の小地域集計を半径で合算した値。居住人口は国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)で、滞在・通過人口ではない。
- 曜日別の掲載価格指数:2名1室の掲載最安値(税込)を施設ごとに月〜木曜平均=100として指数化し、施設間で単純平均した値(宿泊日2026年6月1日〜28日)。掲載価格でありADRではない。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
- — 16室→199室:長岡京市で販売掲載を確認できた客室は1施設・16室。東横INN京都長岡京(183室、2027年1月オープン予定)が加わると既存の11.4倍の受け皿になる。
- — 従業者1万人あたり8.0室→100.0室:就業19,905人のJR長岡京駅1km圏は、開業後に茨木駅(84.4室)と高槻駅(135.0室)のあいだの水準に並ぶ。
- — 福知山市698室に143室(+20.5%):スーパーホテルは駅前ではなく国道9号沿いの土師宮町。建設地2km圏の1万人あたり客室は186.6室から328.5室へ厚みを増す。
- — 推定成約ADR 約5,700円・振れ幅1.14倍:福知山市の12か月平均(2025年9月〜2026年8月・N=8〜11施設)。下京区の約15,600円・2.18倍とは対照的な業務市場。
- — 年間客室売上 約1.7〜2.6億円:143室規模・推定成約ADRの実績幅×稼働の前提60〜80%の試算。単価より稼働の前提の差が効き、平日需要の取り込みが事業性の軸になる。
326室の重みは2市で別物 — 長岡京は既存の11.4倍、福知山は+20.5%
まずは全体像を押さえておきたい。2市で動いている案件は3つあり、うち2つが新築、1つが既存ホテルのブランド転換にあたる。開業時期と客室数の出所を含めて整理すると、次のとおりになる。
| 案件 | 所在地・立地 | 客室数 | 開業時期(出所) | ストックへの影響 |
|---|---|---|---|---|
| 東横INN京都長岡京(新築) | 長岡京市開田2丁目。阪急長岡天神駅 東口から徒歩約6分、JR長岡京駅 西口から徒歩約9分 | 183室(メトロエンジンリサーチの新規開業データ上の計画値) | 2027年1月オープン予定(東横イン公式「新規オープンホテル」、2026年10月5日確認) | 市内16室 → 199室 |
| スーパーホテル 福知山(新築) | 福知山市土師宮町2丁目・国道9号沿い。福知山駅から直線で約2.4km | 143室(同上の計画値) | 2027年春(京都新聞 2025年9月13日) | 市内698室 → 841室(+20.5%) |
| アパホテル〈京都福知山駅前〉(ブランド転換) | 福知山市駅南町3丁目。JR福知山駅 南口から徒歩1分 | 91室 | 2026年5月1日開業(アパグループ発表) | 既存91室の転換で客室数は同じ |
3件を並べると、供給の意味合いは案件ごとに異なる。東横INN京都長岡京は客室の少ない街に初めてまとまった受け皿ができる新築で、福知山のスーパーホテルは駅前に集まる既存ストックとは別の場所、国道9号沿いに建つ。地域メディアは2026年1月時点で東横INN京都長岡京の開業を2027年2月と伝えていたが、公式サイトの現在の表記は2027年1月になっている。
一方のアパホテル〈京都福知山駅前〉は、地元の株式会社R・INNがフランチャイズ契約を結び、自社の91室を転換して2026年5月に開業した。駅南口から徒歩1分の立地に全国ブランドの看板と予約基盤が加わり、地元事業者が自らの建物で全国チェーンの拠点を持つ形といえる。客室数は変わらないため、本稿のストック集計では1施設・91室として数え、福知山市の新規供給は143室として扱う。
長岡京 — 就業2万人の駅前に客室16室、183室で高槻・茨木の水準へ
長岡京市は京都市と大阪府北部のあいだに位置する製造業の街で、JR長岡京駅の周辺には電子部品や電機の本社・製作所が集まっている。経済センサスを半径で集計すると、同駅1km圏の従業者は19,905人、事業所は1,388を数え、オフィス系の比率は10.2%だった。働く人の多くは工場や研究開発の現場に通っているとみられ、出張や工事・保守の来訪といった業務需要の土台は厚い。
一方で、その足元で販売掲載を確認できた客室は1施設・16室だった。従業者1万人あたりに直すと8.0室で、同じ京阪間の業務都市であるJR茨木駅1km圏の84.4室、JR高槻駅1km圏の135.0室と比べて1桁小さい。就業の規模に対して、宿泊の受け皿がこれから整っていく段階の街といえる。就業規模と客室数の比で郊外の業務都市を読む方法は、多摩地区を扱った立川・八王子・町田のホテル37軒4,160室でも用いている。
ここに東横INN京都長岡京の183室が加わると、駅1km圏のストックは199室、従業者1万人あたり100.0室になる。茨木と高槻のあいだに収まる水準であり、既存の11.4倍という数字の印象とは違って、近隣の業務都市なみの受け皿が整う規模と読める。
| 駅1km圏 | 従業者 | 事業所 | オフィス系比率 | 客室ストック | 従業者1万人あたり客室 |
|---|---|---|---|---|---|
| 長岡京駅(現状) | 19,905人 | 1,388 | 10.2% | 16室(1施設) | 8.0室 |
| 長岡京駅(東横INN京都長岡京の開業後) | 19,905人 | 1,388 | 10.2% | 199室(2施設) | 100.0室 |
| JR茨木駅(大阪府) | 21,564人 | 1,989 | 16.9% | 182室(2施設) | 84.4室 |
| JR高槻駅(大阪府) | 29,855人 | 2,508 | 12.1% | 403室(6施設) | 135.0室 |
| 草津駅(滋賀県) | 19,791人 | 1,517 | 17.6% | 738室(8施設) | 372.9室 |
| 福知山駅 | 11,303人 | 1,334 | 11.6% | 485室(8施設) | 429.1室 |
| 京都駅(参考) | 50,103人 | 2,860 | 11.3% | 17,075室(225施設) | 3,408室 |
居住人口の面でも、建設地から1.5km圏には2025年時点で60,735人が暮らしている。2040年の推計は56,749人と2020年比で7.7%減る見通しだが、2025年時点の生産年齢人口の比率は59.7%と働く世代の厚みがある。帰省や冠婚葬祭、通院の付き添いといった住民起点の宿泊も、これまでは市外で受け止められてきたと考えられる。
立地の評価は地価にも表れている。建設地に近い長岡京市開田1丁目(近隣商業地域・容積率300%)の公示地価は、2026年に1㎡あたり39.5万円と前年比7.9%上昇した。同じ地点の基準地価(7月1日時点)も40.7万円で7.1%の上昇を示しており、駅徒歩圏のまとまった敷地は取得競争が強まる局面にある。宿泊特化型が成り立つ客室数を1棟で確保できるかどうかが、開発側の分かれ目になるだろう。
京都駅まで約10分 — 京都市内が埋まる木〜土曜の受け皿になる
長岡京のもう一つの顔が、京都市内への近さになる。JR長岡京駅から京都駅までは約10分で、阪急長岡天神駅からは烏丸・京都河原町へ乗り換えなしで出られる。その京都市内では、観光の閑散期にあたる6〜8月でも週の後半に客室が埋まりやすい。下京区のビジネスホテルを曜日別に見ると、稼働率(掲載在庫ベース・推定)は木曜88.0%(2026年6月10日〜8月7日の56日・N=67〜70施設/客室7,891〜8,119室、主要予約サイト掲載ベース)、金曜87.2%、土曜87.1%まで上がっていた。月曜の74.3%、日曜の74.4%とは13ポイント前後の開きがある。京都府全体のビジネスホテル(2026年5〜7月・N=272〜293施設)でも木曜が金曜と並ぶ水準まで上がる点は、京都の曜日別稼働、木曜が金曜に並ぶで詳しく分析している。
単価の季節差も大きい。下京区の推定成約ADRは、紅葉期の2025年11月に約23,900円(N=157施設、前年同月比+9.3%)、桜の2026年4月に約22,300円(N=167施設、同+1.4%)まで上がり、2026年2月の約10,900円(N=160施設)の2倍を超えた。加えて、土曜の掲載最安値は平日の1.47倍(ビジネスホテル77施設、2026年6月)に達する。観光ピークや週末に京都市内で宿を取りにくい層にとって、電車で約10分の宿泊特化型は現実的な選択肢になる。
なお、長岡京市は価格掲載のある施設がごく少なく、市の単価は特定施設の値になってしまうため、本稿では数値として示さない。平日は地元の業務需要、週の後半と観光ピークは京都市内からの流入という、2本の柱を持てる立地と整理しておきたい。
福知山 — 通年5,000円台後半・曜日差の小さい業務市場
福知山に目を移すと、市場の姿は長岡京と対照的になる。福知山市で販売掲載を確認できたのは12施設・698室で、うち8施設・485室が福知山駅1km圏、10施設・627室が2km圏に集まっていた。北近畿の交通の結節点として、駅前にはすでに100室前後のビジネスホテルが複数並んでいる。
| 施設(駅から近い順) | 業態 | 客室数 | 福知山駅からの直線距離 |
|---|---|---|---|
| ビジネスホテル松代屋 | 旅館 | 15室 | 約120m |
| アパホテル〈京都福知山駅前〉 | ビジネス | 91室 | 約160m |
| ノースフロントホステル | ホステル | 14室 | 約260m |
| ホテルサンルート福知山 | ビジネス | 102室 | 約300m |
| 福知山アークホテル | ビジネス | 107室 | 約320m |
| ニコニコカプセルホテル | カプセル | 36室 | 約480m |
| 福知山ビジネスホテル セイワホテル | ビジネス | 32室 | 約560m |
| ホテルつかさ 福知山 | ビジネス | 88室 | 約730m |
| 旭旅館 | 旅館 | 24室 | 約1.9km |
| 福知山サンホテル | ビジネス | 118室 | 約2.0km |
| ホテルロイヤルヒル福知山&スパ | シティ | 70室 | 約3.1km |
| ほか1施設 | 貸別荘ほか | 1室 | 約7km |
| 合計(12施設) | 698室 | 駅1km圏485室/2km圏627室 |
単価は通年でほとんど動かない。福知山市の推定成約ADRは2025年9月〜2026年8月の12か月平均で約5,700円(N=8〜11施設)、前年同期比は+1.4%だった。月別の最高は2026年8月の約6,200円、最低は2025年9月の約5,500円で、振れ幅は1.14倍に収まる。これに対して同じ期間の下京区は約15,600円(N=157〜168施設、前年同期比+5.5%)と福知山の約2.7倍にあたり、月別の振れ幅も2.18倍に広がった。
曜日で見ても同じ傾向が出る。2026年6月の掲載最安値を月〜木曜=100で指数化すると、福知山市(8施設)の土曜は98.7、金曜は99.5とほぼ横ばいだった。下京区のビジネスホテル(77施設)の土曜147.3、舞鶴市(14施設)の土曜106.2とは形がはっきり違う。週末に観光客が上乗せされる市場というより、出張・工事・保守といった業務需要が1週間を通して支える市場と読める。福知山市単独の稼働率(推定)は継続して観測できる施設が5施設と少なく推定値が安定しないため、ここでは曜日別の掲載価格で需要の形を確かめた。
国道9号沿いの143室 — 駅前と同規模の就業が集まる東側に受け皿ができる
この市場に入るスーパーホテルの立地は、駅前ではなく国道9号沿いの土師宮町になる。当社データ上の位置は福知山駅から直線で約2.4km東にあたり、その先には長田野工業団地が広がる。福知山市の計画資料によれば、同団地の総就業者数は6,310人(平成28年度)にのぼり、京都新聞も今回の進出を出張需要の取り込みと伝えている。
就業の分布を半径で測ると、福知山駅1km圏の従業者が11,303人なのに対し、建設地の2km圏にも10,077人が働いている。ところが客室ストックは、駅1km圏の485室に対して建設地2km圏は2施設・188室だった。従業者1万人あたりでは429.1室と186.6室で、東側は駅前の4割強の密度になる。143室が加わると建設地2km圏は331室、1万人あたり328.5室となり、駅前の約77%まで近づく計算になる。
市全体で見た新規供給の重みは、既存698室に対して20.5%増にあたる。建設地は圏外になるが、駅2km圏の627室と比べても22.8%に相当する規模といえる。もっとも、駅前の既存ストックと正面から重なる配置ではない。車で動く出張者や工業団地への来訪者という、駅前とは動線の違う需要を取り込む位置にあり、市場全体の受け皿を広げる供給と捉えられる。
土地の値段にも駅前と郊外で階段がある。福知山駅から約220mの末広町1丁目(商業地域)の公示地価は2026年に1㎡あたり9.8万円(前年比−0.3%)、建設地から約800mの前田新町(準住居地域)は5.35万円(同0.0%)で、長岡京市開田1丁目の39.5万円とは4〜7倍の開きがある。単価が5,000円台後半の市場でも、土地コストを抑えられる国道沿いであれば宿泊特化型の事業を組み立てやすい、という見方ができる。
北近畿の単価階層 — 福知山・綾部・舞鶴は5,700〜6,300円の帯に並ぶ
福知山の単価水準を、北近畿と京阪間の都市のなかに置いてみる。12か月平均の推定成約ADRは、福知山市が約5,700円、綾部市が約5,800円(N=4施設・参考値)、舞鶴市が約6,300円(N=17〜18施設、前年同期比−0.5%)で、3市は5,700〜6,300円の狭い帯に並んだ。京阪間の高槻市は約10,700円(N=7施設、同+8.4%)、京都市南区は約14,100円(N=54〜56施設、同+5.4%)であり、北近畿の業務都市は高槻の5〜6割、下京区の4割前後という階層になる。
| 市区 | 推定成約ADR(12か月平均) | 前年同期比 | 月別の振れ幅(最高÷最低) | 対象施設数 |
|---|---|---|---|---|
| 福知山市 | 5,697円 | +1.4% | 1.14倍 | N=8〜11 |
| 綾部市(参考値) | 5,778円 | 0.0% | 1.07倍 | N=4 |
| 舞鶴市 | 6,251円 | −0.5% | 1.23倍 | N=17〜18 |
| 高槻市(大阪府) | 10,688円 | +8.4% | 1.22倍 | N=7 |
| 茨木市(大阪府・参考値) | 11,024円 | +5.1% | 1.39倍 | N=3 |
| 京都市南区 | 14,099円 | +5.4% | 2.20倍 | N=54〜56 |
| 京都市下京区 | 15,606円 | +5.5% | 2.18倍 | N=157〜168 |
この階層から読み取れるのは、北近畿では季節や曜日で単価を伸ばす余地が小さいぶん、稼働を安定させる平日需要の厚みが事業の軸になるという点だろう。土地代と運営コストを抑えた宿泊特化型は、この単価帯と相性がよい業態といえる。舞鶴市で土曜の掲載価格が平日比106.2まで上がっているように、港や観光の要素が加わる街では週末の上乗せも生まれている。
143室の事業規模 — 単価帯と稼働の前提で年間客室売上の幅を見る
この単価帯で143室規模の宿泊特化型がどの程度の客室売上になるかを、福知山市の推定成約ADRの実績幅と稼働の前提を組み合わせて試算しておく。年間の販売可能客室は143室×365日=52,195室泊で、中位として12か月平均の5,697円と稼働の前提70%を置くと、年間客室売上は約2.08億円になる。ADRの月別最低(5,460円)と稼働の前提60%の組み合わせでは約1.71億円、月別最高(6,208円)と80%では約2.59億円で、上下の幅は約0.9億円に収まる。
| シナリオ | 推定成約ADR | 稼働率(前提) | 販売可能客室1室あたり売上 | 年間客室売上 |
|---|---|---|---|---|
| 慎重 | 5,460円(月別最低) | 60% | 3,276円 | 1.71億円 |
| 中位 | 5,697円(12か月平均) | 70% | 3,988円 | 2.08億円 |
| 強気 | 6,208円(月別最高) | 80% | 4,966円 | 2.59億円 |
2軸で見ると、単価が月別の振れ幅(1.14倍)の範囲で動く影響よりも、稼働の前提が10ポイント動く影響のほうが大きい。中位の5,697円で稼働の前提を60%から80%へ動かすと約1.78億円から約2.38億円まで0.6億円の差が開くのに対し、稼働の前提70%のまま単価を月別最低から最高まで動かした差は約0.27億円にとどまる。曜日・季節で単価を伸ばしにくい市場では、平日の業務需要をどれだけ安定して取り込めるかが事業性を左右するという本稿の見立てと整合する。
| 推定成約ADR \ 稼働率(前提) | 60% | 65% | 70% | 75% | 80% |
|---|---|---|---|---|---|
| 5,460円(月別最低・2025年9月) | 1.71億円 | 1.85億円 | 1.99億円 | 2.14億円 | 2.28億円 |
| 5,600円 | 1.75億円 | 1.90億円 | 2.05億円 | 2.19億円 | 2.34億円 |
| 5,697円(12か月平均) | 1.78億円 | 1.93億円 | 2.08億円 | 2.23億円 | 2.38億円 |
| 5,900円 | 1.85億円 | 2.00億円 | 2.16億円 | 2.31億円 | 2.46億円 |
| 6,208円(月別最高・2026年8月) | 1.94億円 | 2.11億円 | 2.27億円 | 2.43億円 | 2.59億円 |
2市の対比 — 同じ「業務都市」でも投資の読み方は逆になる
ここまでを整理すると、長岡京は「就業と京都市内の需要に対して客室が薄い街」、福知山は「客室がそろい、単価が通年で安定している街」と位置づけられる。新規供給の評価軸も、前者は需要に対する充足度、後者は既存ストックとの住み分けに置くのが適切だろう。
| 項目 | 長岡京市 | 福知山市 |
|---|---|---|
| 需要の質 | 製造業の業務需要+京都市内の週後半・観光ピークの受け皿 | 平日主体の業務需要(土曜の掲載価格指数98.7) |
| 既存の客室ストック | 1施設・16室 | 12施設・698室(駅1km圏に485室) |
| 新規供給 | 183室(東横INN京都長岡京・2027年1月オープン予定) | 143室(スーパーホテル・2027年春と報道)。別に駅前91室がブランド転換 |
| 新規供給の比率 | 既存の11.4倍 | 既存比+20.5% |
| 従業者 | 駅1km圏 19,905人 | 駅1km圏 11,303人/建設地2km圏 10,077人 |
| 従業者1万人あたり客室 | 8.0室 → 100.0室 | 駅1km圏 429.1室/建設地2km圏 186.6室 → 328.5室 |
| 単価の目安(推定成約ADR) | 市の数値は示さない(掲載施設がごく少ない)。参考:高槻市 約10,700円、下京区 約15,600円 | 約5,700円(月別の振れ幅1.14倍) |
| 立地タイプ | 駅徒歩圏(阪急 約6分・JR 約9分) | 国道9号沿い(駅から直線約2.4km) |
| 地価(公示・2026年) | 39.5万円/㎡(前年比+7.9%) | 駅前 9.8万円/㎡(同−0.3%)、国道側 5.35万円/㎡(同0.0%) |
| 居住人口の2040年推計(2020年比) | 建設地1.5km圏 −7.7% | 駅2km圏 −5.1% |
立場別の示唆 — 就業あたり客室数を共通の物差しにする
2市の事例は、京都府や北近畿で宿泊特化型を検討する関係者にとって、案件を比べる際の物差しを与えてくれる。立場ごとに、活用の方向性を提案として挙げておきたい。
デベロッパー・土地オーナー(建貸し)
長岡京のように就業に対して客室が薄い駅前は、地価が上がる局面でも1棟で市場を形づくれる余地がある。福知山のように既存ストックがそろう街では、土地コストの低さを生かし、駅前と動線が重ならない就業集積の近くを選ぶ発想が有効といえる。候補地の比較には、半径内の従業者1万人あたり客室数を使いたい。地域金融機関
既存ストック比だけを見ると、長岡京の11.4倍は大きく、福知山の+20.5%は小さく映る。しかし就業あたりの密度に直すと、長岡京は開業後も近隣都市並みの100.0室で、福知山の東側は開業後に駅前の約77%へ近づく。審査では両方の指標を並べて確認すると、案件の位置づけを捉えやすくなる。FC加盟を検討する事業者
アパホテル〈京都福知山駅前〉は、地元オーナーが既存の91室を生かして全国ブランドに転換した例になる。客室を増やさずに販路と認知を広げる選択肢であり、単価が安定した業務市場で稼働の底上げをねらう方向性として参考になる。既存ホテルのオーナー
全国チェーンの開業は、街そのものが宿泊地として検索・比較される機会を増やす。曜日差の小さい福知山では連泊・長期滞在や週末向けの商品づくりに、長岡京では京都市内のピーク日に合わせた価格設定に、それぞれ収益機会が見込める。まとめ
長岡京と福知山に入る宿泊特化型は、合計326室という同じ規模感でも、街にとっての意味がまったく違っていた。長岡京では、従業者19,905人の駅前で16室だった受け皿が199室になり、高槻・茨木と同じ水準に並ぶ。福知山では、既存698室・推定成約ADR約5,700円の安定した業務市場に、駅前とは別の就業集積へ向けた143室が加わる。
どちらの計画も、京都市内の単価や稼働に依存しない業務需要を土台にしている点が共通している。京都府内の供給を読む際は、京都市の観光需要だけでなく、市外の就業集積と客室ストックの比を一つずつ確かめていく視点が役に立つだろう。開業後は、長岡京で京都市内のピーク日にどこまで流入が生まれるか、福知山で東側の平日需要がどの程度の稼働に結びつくかが、次の検証ポイントになる。
開業計画に関する注意:本記事の開業時期・客室数は調査時点(2026年10月5日)の各社公式サイト、発表、報道、および当社の新規開業データに基づく。計画は今後変更される場合があり、開業前の施設の客室数は確定値ではない。簡易な比較であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要になる。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
客室ストックはメトロエンジンリサーチ&コンサルティングが2026年7〜9月に主要予約サイトで販売掲載を確認した施設(レジャーホテルを除き、名称変更をまたぐ同一施設は1施設として集計)。推定成約ADRは市区別の確定月(2025年9月〜2026年8月)、稼働率は京都市下京区ビジネスホテルの宿泊前日時点の推定値。従業者・事業所は経済センサス-活動調査(2021年)、居住人口は国土数値情報、地価は不動産情報ライブラリ。新規開業の客室数は当社新規開業データの計画値、開業時期は各社公式サイト・発表・報道による。
■ 試算前提
従業者1万人あたり客室数=駅(または建設地)から半径1km・2km内の客室ストック÷同じ半径内の従業者×1万。開業後の値は既存ストックに計画客室数を単純加算し、既存施設の退出や客室数の変更は織り込まない。年間客室売上は143室×365日×推定成約ADR×稼働率(前提)で、稼働率は60〜80%の前提値。付帯収入・運営費・建設費は含まない。
■ 限界・留意点
客室ストックは予約サイトに掲載のある施設に限られ、掲載のない旅館・簡易宿所は含まない。従業者(2021年)と客室ストック(2026年)は時点が異なる。長岡京市は価格掲載のある施設がごく少ないため単価を示さず、福知山市は継続観測できる施設が少ないため稼働率の推定値を示していない。開業前の施設の客室数・開業時期は計画値で、今後変わる可能性がある。売上試算は事業規模の目安であり、特定施設の計画や投資判断を示すものではない。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(市区別・確定月)、客室ストック(2026年7〜9月掲載確認ベース)、曜日別の掲載価格指数、稼働率(掲載在庫ベース・推定)、新規開業データ
■ 政府統計・公的データ
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年、e-Stat)
- 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示・都道府県地価調査・用途地域
- 福知山市「長田野工業団地利活用増進計画」(平成30年6月)
■ 各社公式・プレスリリース
- 東横イン公式サイト「新規オープンホテル」(2026年10月5日確認)
- アパグループ「アパホテル〈福知山駅前〉FC契約」に関するリリース(PR TIMES、2026年2月3日)
- アパグループ「アパホテル〈京都福知山駅前〉披露式典開催」(PR TIMES、2026年5月13日)
■ ニュース
