修学旅行の時期は、秋に強く偏っている。公益財団法人日本修学旅行協会が2024年度実施分を集計した高等学校調査では、国内修学旅行1,054件のうち10月〜12月が679件(64.4%)を占めた。一方で、この需要は主要予約サイトを経由せずに相対契約で動くため、通常のブッキングカーブには現れにくい。本稿では、秋の平日にどれだけの受け入れ余力が残っているかを推定OCCで定量化し、どのカテゴリが大人数・低単価の団体需要の受け皿になり得るかを、京都・沖縄・広島・東京の実測値から読み解く。
本記事における指標の定義
- OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。主要予約サイト上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。対象は総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で構成した固定集団で、各記述に対象施設数・客室数を併記しています。
- LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。LT0=当日。本記事のブッキングカーブはLT45以内の観測点のみを用いています。
- ADR(平均客室単価):各施設が主要予約サイト上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ
- — 10〜12月に64.4%:高校の国内修学旅行1,054件のうち679件が秋から年末に集中する(2024年度・日本修学旅行協会)。秋の山を形成しているのは主に国公立校である。
- — 広島は1校で0.44pt:2026年10月のLT42時点で広島県の平日推定OCCは62.2%。200名・67室の団体1校が県全体の平日推定OCCを押し上げる幅は、東京(0.06pt)の約7倍に当たる。
- — 受け皿はビジネスホテル:京都府のビジネスホテルは197施設19,758室(平均100室)、旅館は平均19〜25室にとどまる。京都市は修学旅行の宿泊税免除を維持し、1〜3月使用分の交通補助で閑散期への誘導も進める。
修学旅行の時期は10〜12月に64% — 高校1,054件の月別分布
日本修学旅行協会が全国4,774校から3,200校を抽出し、1,076校(回答率33.6%)の回答を得た2024年度調査によると、国内で修学旅行を実施したのは961校(89.3%)だった。実施時期を月別に集計すると、10月が238件、12月が230件、11月が211件と、この3ヶ月に679件が集中する。全1,054件に対して64.4%である。10月・11月の2ヶ月だけでも449件(42.6%)を占める。
この偏りは前年度も同様で、2023年度は全1,149件のうち10〜12月が764件(66.5%)だった。注目したいのは設置者別の差である。2024年度の10月は国公立164件に対し私立74件と国公立が2.2倍だが、2月は国公立24件・私立43件、3月は国公立9件・私立49件と逆転する。私立は年度末に分散させる傾向があり、秋のピークを形成しているのは主に国公立校だと読める。
出典:公益財団法人日本修学旅行協会「2024年度実施の国内修学旅行の実態とまとめ(高等学校)速報版」よりホテルバンク編集部作成(N=1,054件)
行き先は関西・沖縄・首都圏に集中する。都道府県別の旅行先上位は大阪290件(13.3%)、沖縄273件(12.5%)、京都230件(10.6%)、東京220件(10.1%)、千葉187件(8.6%)、北海道132件(6.1%)、兵庫123件(5.6%)、広島112件(5.1%)、奈良102件(4.7%)の順(総件数2,179件、滞在時間に関係なく訪問先を1件として計上)。重点を置いた活動では歴史学習666件が最多で、平和学習387件、自然・環境・科学学習310件が続く。広島・沖縄の集客を支えているのが平和学習であることが、この構成から確認できる。
受け入れ側の実数を最も細かく公表しているのは沖縄県だ。同県観光政策課の「修学旅行入込状況調査」によると、令和6年(暦年)の入込実績は2,049校・351,937人で、前年比+118校(+6.1%)、+10,557人(+3.1%)。令和元年比では校数85.4%、人数86.0%の水準まで戻っている。校種別では高校が1,371校(66.9%)・264,193人(75.1%)、中学校が643校(31.4%)・85,736人(24.4%)で、両者で人数の99.4%を占める。月別入込は5〜6月および10〜12月に集中し、11月が校数・人数ともに最多。発地は大阪府が最も多く、東京都が続く。
| 指標 | 令和6年 | 令和5年 | 令和元年 |
|---|---|---|---|
| 受入校数 | 2,049校 | 1,931校 | 2,398校 |
| 受入人数 | 351,937人 | 341,380人 | 409,011人 |
| 対前年増減比(人数) | +3.1% | +48.9% | ▲4.7% |
| 高校の人数構成比 | 75.1% | — | — |
出典:沖縄県観光政策課「令和6年(暦年)修学旅行入込状況調査結果について」よりホテルバンク編集部作成。同調査は取扱旅行会社からの提供資料の集計であり全数調査ではない。
京都市の誘致策と宿泊税免除 — 2026年度の制度を整理する
受け入れ側の制度環境は、2026年に京都市で大きく動いた。ひとつは宿泊税の税率改定、もうひとつは修学旅行生向けの交通費補助である。両者は方向が逆に見えるが、団体にとっては組み合わせて効く。
まず宿泊税だ。京都市は令和8年(2026年)3月1日の宿泊分から税率を見直した。改定後の税率は、宿泊料金6,000円未満が200円、6,000円以上20,000円未満が400円、20,000円以上50,000円未満が1,000円、50,000円以上100,000円未満が4,000円、100,000円以上が10,000円である。中価格帯以上の引き上げ幅が大きい設計となっている。
そのうえで、修学旅行は引き続き課税免除である。京都市の案内によれば、免除対象は学校教育法第1条に規定する学校のうち大学を除くもの(幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校)の修学旅行生とその引率者。引率者には生徒の引率を行う学校関係者のほか、心身に障害のある生徒等を介助する看護師や保護者が含まれる一方、旅行業者の添乗員やカメラマンは対象外とされる。適用には「修学旅行等であることの証明書」を宿泊施設へ提出することが必要だ。学習指導要領における学校行事と認められ、学年全体で実施される行事(林間学校など)も対象となるが、部活動の合宿は対象外である。
つまり、通常の宿泊客が負担する税額が上がる局面でも、修学旅行の実質価格は据え置かれる。1泊あたりの価格差は数百円規模だが、200名・2泊の団体なら税額ベースで十数万円の差になる。団体を持つ施設にとっては、この非課税が価格交渉上の余白として使える。宿泊税を実勢単価に対する実効税率で捉える見方は、宿泊税の実効税率、那須町1.05%・盛岡市3.65%で整理している。
交通面では、京都修学旅行1dayチケット(通常版800円、市バス・地下鉄全線および京都バス・京阪バス・西日本JRバスの一部路線で利用可)に加え、京阪電車拡大版を対象とした補助事業が動いている。京都観光推進協議会が実施する補助は、京都府外に所在する学校が実施し京都市内に1泊以上する修学旅行を対象に、児童・生徒1人あたり1,100円を補助するもの。対象は令和9年1月1日から3月31日までに使用するチケットで、申請期間は令和8年5月1日から令和9年2月26日まで、予算上限に達した時点で受付終了となる。
ここで読み取るべきは、補助の対象期間が1〜3月に設定されている点である。宿泊事業者から見れば、これは秋のピークではなく閑散期に団体を誘導する設計だ。秋の10〜11月は観光需要と重なるため団体の価格メリットが出にくく、逆に1〜3月は受け入れ余力が大きい。制度が示す誘致機会は、秋と冬で性格が異なると整理できる。
秋の平日に残る受け入れ余力 — 京都・沖縄・広島・東京の推定OCC
ここからは自社の推定OCCで、秋の平日にどれだけの余力が残っているかを見る。まず直近の実績月(2026年6月1日〜9月19日)で、チェックイン曜日別に推定OCCを集計した。週末はチェックインが金曜・土曜の日、平日はそれ以外と定義している。
| エリア | 対象施設/客室 | 平日 推定OCC | 週末 推定OCC | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 京都府 | 566施設/31,989室 | 79.3% | 85.3% | 6.0pt |
| 沖縄県 | 708施設/36,220室 | 85.7% | 89.1% | 3.4pt |
| 広島県 | 215施設/14,797室 | 83.4% | 87.1% | 3.7pt |
| 東京都 | 805施設/104,583室 | 89.2% | 91.7% | 2.5pt |
2026年6月1日〜9月19日チェックイン分(平日79日・週末32日)。対象は主要予約サイト掲載ベース。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
京都の曜日差が6.0ptと最も大きく、東京は2.5ptにとどまる。市場規模が大きく法人需要の厚い東京は曜日で崩れにくく、観光需要の比重が高い京都は週末に寄る。これが夏場の基準線である。
次に、修学旅行の最盛期である10月について、同じリードタイム(LT42、宿泊日の42日前)で揃えた先行状況を見る。観測日は宿泊日によって異なるが、予約進捗の比較としては同一条件になる。
2026年10月の各宿泊日をLT42(宿泊日の42日前)時点で比較。平日21日・週末10日。対象は主要予約サイト掲載ベース(京都府781施設33,433室/沖縄県926施設37,239室/広島県275施設15,381室/東京都870施設107,102室)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
10月のLT42時点では、京都が平日75.4%・週末78.9%(差3.5pt)、沖縄が平日70.1%・週末75.5%(差5.4pt)、広島が平日62.2%・週末70.1%(差7.9pt)、東京が平日65.5%・週末68.0%(差2.5pt)となった。広島の曜日差が7.9ptと最も広く、平日の残室率は37.8%ある。実績月の広島が平日83.4%まで積み上がっていたことを踏まえると、この差の大部分はLT42以降に埋まっていく分だが、裏を返せば42日前の時点で平日には団体が入る物理的な余白が残っていることになる。広島で45日前から直前にかけて推定OCCがどう積み上がるかは、広島のブッキングカーブ定点分析が業態別に追っている。
ここで重要な留保がある。修学旅行は旅行会社を介した相対契約で動くため、主要予約サイトの在庫としては現れないケースが多い。したがって本稿の推定OCCは、団体で既に押さえられた客室を「残室」として数えている可能性がある。つまり示している数字は、あくまで主要予約サイト上から見える余力であり、実際の空室はこれより小さい。逆に言えば、この見える余力の大きさは、そのエリアがまだ個人需要で埋まりきっていないことの指標として読める。
受け皿はどのカテゴリか — 10月のカテゴリ別進捗と客室量
修学旅行の需要特性は、大人数・和室や大部屋の利用・1人あたり低単価の3点に集約される。この3条件に対して、どのカテゴリが受け皿になり得るかを、2026年10月のLT45時点のカテゴリ別進捗と客室量から検証する。
2026年10月の月間平均カーブ、LT45時点。対象は主要予約サイト掲載ベース。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
| エリア | カテゴリ | 施設数 | 客室数 | 1施設平均 | LT45 推定OCC |
|---|---|---|---|---|---|
| 京都府 | ビジネス | 197 | 19,758 | 100室 | 77.3% |
| 京都府 | シティ | 36 | 5,050 | 140室 | 83.4% |
| 京都府 | 旅館 | 118 | 2,186 | 19室 | 65.1% |
| 沖縄県 | ビジネス | 138 | 12,908 | 94室 | 67.4% |
| 沖縄県 | リゾート | 199 | 16,794 | 84室 | 78.6% |
| 広島県 | ビジネス | 96 | 11,138 | 116室 | 61.3% |
| 広島県 | シティ | 16 | 1,799 | 112室 | 79.1% |
| 広島県 | 旅館 | 45 | 1,111 | 25室 | 71.3% |
| 東京都 | ビジネス | 552 | 80,109 | 145室 | 61.5% |
| 東京都 | シティ | 54 | 17,294 | 320室 | 77.5% |
2026年10月の月間平均、LT45時点。対象は主要予約サイト掲載ベース。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
和室・大部屋という条件から真っ先に想起されるのは旅館だが、客室量の制約が大きい。京都府の旅館は118施設で2,186室、1施設平均19室である。1学年200名を3名1室で収容すると67室が必要で、京都の旅館の平均規模では1校を1軒で受けきれない。実際には複数軒への分宿か、より規模の大きいカテゴリとの併用が前提になる。広島の旅館も45施設1,111室(平均25室)と構図は同じだ。
一方、客室量で受け皿になり得るのはビジネスホテルである。京都府197施設19,758室(平均100室)、東京都552施設80,109室(平均145室)と規模が桁違いで、かつLT45時点の進捗は京都77.3%、東京61.5%、広島61.3%、沖縄67.4%と、シティやリゾートより低い水準にある。特に東京と広島のビジネスホテルは、45日前の段階で4割近い掲載在庫が残っている。同じ秋の教育旅行期について、平日の掲載価格が週末に対してどの水準に置かれているかは、秋の教育旅行ピーク10〜11月|平日の価格フロアを5エリアで読むで業態別に分析している。
マクロの構造も同じ方向を示す。観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年・年間値(確定値)によると、全国の客室稼働率は61.6%(前年比+2.0pt)で、施設タイプ別ではビジネスホテル75.3%、シティホテル74.1%、リゾートホテル56.9%、旅館38.2%、簡易宿所29.6%。旅館と簡易宿所には通年で大きな受け入れ余力があるが、1施設あたりの客室量が小さいため、大人数団体を単独で受けるにはネットワーク化が前提になる。ここに、複数軒での共同受注や地域の教育旅行受入協議会といった打ち手の余地がある。
団体受け入れの収益性 — 1人1泊1.1万〜1.7万円をどう評価するか
次に収益性である。日本修学旅行協会の2024年度調査によると、高校の国内修学旅行の旅行費用は1人あたり総額114,623円。内訳は交通費53,244円(47.6%)、宿泊費34,398円(30.8%)、体験活動費10,586円(9.5%)、その他13,629円(12.2%)。宿泊費は2019年度の30,412円から2024年度の34,398円へ5年で+13.1%上昇している。なお同協会は総額と各内訳をそれぞれ別に集計・平均しているため、内訳の合計(111,857円)は総額と一致せず、上記の構成比は内訳合計に対する比率である。
この宿泊費は旅行全体の泊数分の合計額である。2泊3日なら1人1泊あたり約17,200円、3泊4日なら約11,500円となる。ここから旅行会社の手配手数料と2食分の食事原価が差し引かれるため、施設の受取水準はこれより低い。それでも、1室3名利用に換算すると1室1泊あたりの売上は2泊前提で約51,600円、3泊前提で約34,400円となり、単純な室単価としては小さくない。
| 前提 | 1人1泊 | 1室3名換算 | 1室4名換算 |
|---|---|---|---|
| 2泊3日(宿泊費34,398円/人) | 約17,200円 | 約51,600円 | 約68,800円 |
| 3泊4日(同上) | 約11,500円 | 約34,400円 | 約45,900円 |
| 参考:2026年10月の推定成約ADR | — | 京都市下京区 約22,700円/中京区 約23,500円/広島市中区 約13,800円/那覇市 約10,400円 | |
団体側の金額は旅行会社の手配手数料・食事原価を含む学校側の支払ベース。参考ADRは調査時点の掲載水準に基づく推定(下京区N=163施設・中京区N=109施設・広島市中区N=62施設・那覇市N=144施設)。出典:公益財団法人日本修学旅行協会/メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
学校側の支払額のうち、どれだけが施設の受取になるかは手配条件で変わる。そこで、旅行会社の手配手数料などを差し引いた施設側の受取割合(以下、受取率)を試算上の仮定として60%・70%・80%の3水準に置き、1室1泊あたりの受取額(食事込み)を並べた。受取率が10pt動くと、2泊3日・1室3名で約5,200円、3泊4日・1室3名で約3,400円、1室1泊の受取額が動く。1室の収容人数を3名から4名に増やす効果は、受取率を20pt引き上げるのと同等以上の大きさになる。
| 泊数・1室人数 | 受取率60% | 受取率70% | 受取率80% |
|---|---|---|---|
| 2泊3日・1室3名 | 約31,000円 | 約36,100円 | 約41,300円 |
| 2泊3日・1室4名 | 約41,300円 | 約48,200円 | 約55,000円 |
| 3泊4日・1室3名 | 約20,600円 | 約24,100円 | 約27,500円 |
| 3泊4日・1室4名 | 約27,500円 | 約32,100円 | 約36,700円 |
1室1泊あたりの施設受取額(食事込み)の試算。宿泊費34,398円/人(2024年度・高校・国内修学旅行)を泊数で割った1人1泊額×1室人数×受取率。受取率は試算上の仮定であり、実際の手数料率・食事原価は契約により異なる。出典:公益財団法人日本修学旅行協会よりホテルバンク編集部作成
次に、団体1校が平日の稼働をどれだけ動かすかを見る。2026年10月のLT42時点で、平日の残室は京都府が約8,200室/日(33,433室・平日推定OCC75.4%)、沖縄県が約11,100室/日(37,239室・70.1%)、広島県が約5,800室/日(15,381室・62.2%)、東京都が約36,900室/日(107,102室・65.5%)である。推定OCCを1pt動かすのに必要な客室数は、京都334室、沖縄372室、広島154室、東京1,071室となる。
200名の団体を3名1室で収容すると67室。これをエリア全体の推定OCCに換算すると、広島では1校で0.44pt、京都で0.20pt、沖縄で0.18pt、東京で0.06ptの押し上げに相当する。1pt動かすのに必要な校数で表すと、広島2.3校、京都5.0校、沖縄5.6校、東京16.0校である。
200名・1室3名(67室)の団体を単位とした換算。2026年10月・LT42時点の平日推定OCCと対象客室数から算出。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
市場規模の小さい広島では、団体2〜3校で県全体の平日稼働が1pt動く。広島県の高校修学旅行の行き先件数は112件(2024年度・構成比5.1%)で、平和学習を軸に安定した需要がある。ここに秋の平日の受け入れ余力が37.8%残っていることを重ねると、団体のボリュームが市場全体の稼働に効く構造だと読める。逆に東京は16校で1ptであり、団体は個々の施設の平日を埋める手段ではあっても、市場全体の需給を動かす要因にはなりにくい。
沖縄は性格がやや異なる。県の調査では令和6年の受入が351,937人で、11月が校数・人数ともに最多。一方で当社の推定OCCは実績月で平日85.7%と4エリア中で最も高く、10月のLT42時点でも平日70.1%まで積み上がっている。リゾートホテル199施設16,794室という受け皿の厚さと、5〜6月および10〜12月という明確な2つの山を持つ需要構造が噛み合っている。
まとめ — 秋の平日と冬の閑散期、2つの誘致機会
本稿で確認できたのは次の4点である。第一に、高校の国内修学旅行は10〜12月に64.4%が集中し、10月238件・12月230件・11月211件という明確な秋の山を形成している。第二に、京都市では2026年3月に宿泊税の中価格帯以上が引き上げられた一方、修学旅行生と引率者の課税免除は維持されており、団体の相対的な価格競争力は保たれている。第三に、2026年10月のLT42時点で平日に残る掲載在庫は広島37.8%、東京34.5%、沖縄29.9%、京都24.6%で、市場規模の小さいエリアほど団体が稼働に効く。第四に、客室量で団体の受け皿になり得るのはビジネスホテルであり、旅館は1施設平均19〜25室のため複数軒での連携が前提となる。
制度面の示唆も明確だ。京都市の1dayチケット補助が令和9年1〜3月の使用分を対象としているように、誘致の焦点は秋のピークから冬の閑散期へ広がりつつある。秋は観光需要と重なるため団体の単価メリットが出にくいが、1〜3月は受け入れ余力が大きく、補助と組み合わせれば学校側の総費用も抑えられる。2泊3日で1人1泊約17,200円、3泊4日で約11,500円という宿泊費水準は、閑散期の平日を埋める手段として十分に検討に値する。
秋の10〜11月については、42日前の段階で平日に余白が残っている以上、直前期の個人需要だけに依存しない選択肢として団体枠を持つ意味がある。特に広島のように1校の影響度が大きいエリアでは、受け入れ体制の整備が市場全体の底上げにつながる伸びしろを持っている。
⚠ 将来日程のデータに関する注意:本記事の2026年10月の推定OCCおよび推定成約ADRは、調査時点で主要予約サイトに公開されている在庫・販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。また、修学旅行をはじめとする団体需要は旅行会社を介した相対契約で動くことが多く、主要予約サイトの在庫には反映されない場合があります。本記事の推定OCCは、あくまで主要予約サイト上から観測できる在庫消化状況を示すものです。
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参考資料・出典一覧
■ 修学旅行統計
- 公益財団法人日本修学旅行協会「2024年度実施の国内修学旅行の実態とまとめ(高等学校)<速報版>」
- 公益財団法人日本修学旅行協会 教育旅行年報「データブック」
- 沖縄県「修学旅行入込状況調査」
- 沖縄県観光政策課「令和6年(暦年)修学旅行入込状況調査結果について」(令和7年12月公表)
■ 制度・自治体施策
- 京都市「令和8年3月1日からの宿泊税の見直しが正式決定」
- 京都市「よくある質問:宿泊される方向け(課税免除について)」
- 京都市交通局「京都修学旅行1dayチケット(修学旅行用)」
- きょうと修学旅行ナビ「京都修学旅行1dayチケット補助事業について」(京都観光推進協議会)
■ 政府統計
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ — 推定OCC(主要予約サイト掲載在庫ベース)、ブッキングカーブ、推定成約ADR
