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ホテル単価が県都を上回る第2都市は5市 — 浜松+29%・松本+20%、16市の供給密度2026

投稿日 : 2026.09.19

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ホテル単価が県都を上回る第2都市は5市 — 浜松+29%・松本+20%、16市の供給密度2026

県内で2番目に大きな都市、いわゆる「第2都市」の宿泊単価は、県庁所在地とどれだけ違うのか。全国12道府県の16市について、直近12か月(2025年9月〜2026年8月)の推定成約ADRと客室ストックを同一条件で並べたところ、県庁所在地を上回った第2都市は5市あった。最大は浜松市の+29.0%、次いで松本市+19.8%、下関市+18.5%。さらに16市のうち6市は、県庁所在地より人口そのものが多い。本稿では単価・供給密度・駅勢の3軸で、県都に隠れていた業務・観光需要の所在をマッピングする。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)で、本稿では直近12か月(2025年9月〜2026年8月)の単純平均を用いています。
  • 客室ストック:直近3か月(2026年6〜8月)に主要予約サイト上で掲載が確認できた施設の客室数合計。掲載が確認できない施設は含みません。
  • 供給密度:人口10万人あたりの客室数。人口は総務省「国勢調査」(令和2年)の市別総人口。
  • 駅乗降客数:国土交通省 不動産情報ライブラリ「駅別乗降客数」の令和5年度(2023年度)値。各市の代表駅について、同一駅名で収録される事業者の値を合算した1日平均。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省「国勢調査」/国土交通省 不動産情報ライブラリ
Key Takeaways
  • — 推定成約ADRの12か月平均(2025年9月〜2026年8月)で県庁所在地を上回った第2都市は16市中5市。最大は浜松市の+29.0%、次いで松本市+19.8%、下関市+18.5%。
  • — 16市合算の供給密度は人口10万人あたり1,068室で、対応する12県庁所在地の1,648室に対し65%。市ごとの幅は588室(豊田市)から2,545室(松本市)まで4.3倍に開く。
  • — 16市のうち6市は県庁所在地より人口が多く、対象12道府県のうち5県で「県庁所在地=県内最大都市」が成立しない。
  • — 単価が県都から大きく割り込まず供給密度が16市中央値(1,011室)を下回るのは倉敷市・浜松市・高崎市・四日市市の4市。業務帯の出店余地として最も読みやすい組み合わせ。
  • — その4市に客室100室を置いた場合の年間客室売上は、中位ケース(稼働75.3%・2025年通年実績)で196.5〜278.9百万円。ADR±20%・稼働60〜80%まで振ると倉敷市で148.0〜296.1百万円のレンジとなる(売上側のみの試算)。

結論 — 第2都市16市の客室は6.8万室、供給密度は県都の65%

対象
16市
12道府県・非県庁所在地
客室ストック合計
68,482室
掲載確認1,178施設
県都を上回る市
5市
推定成約ADR・12か月平均
最大差
+29.0%
浜松市 vs 静岡市
供給密度
1,068室
人口10万人あたり・県都は1,648室

16市を合算すると客室ストックは68,482室、人口は641.0万人で、人口10万人あたり1,068室となる。同じ計算を対応する12の県庁所在地(札幌市・福岡市・名古屋市・神戸市など)に適用すると174,541室・1,059.2万人で1,648室。第2都市の供給密度は県都の約65%にとどまる。県都には出張・会議・インバウンドの宿泊需要が集まりやすく、その分だけ客室も先に積み上がってきた結果である。

ところが単価を見ると、話はそれほど単純ではない。推定成約ADRの12か月平均で県庁所在地を上回った第2都市は、浜松市(¥10,100、静岡市比+29.0%)、松本市(¥13,300、長野市比+19.8%)、下関市(¥9,600、山口市比+18.5%)、沼津市(¥8,600、静岡市比+9.0%)、倉敷市(¥8,500、岡山市比+4.4%)の5市。高崎市(前橋市比−1.6%)と四日市市(津市比−7.2%)もほぼ並んでいる。県都に単価が集中する構図は、少なくとも半分の県では成立していない。

対象都市の選び方 — 県内人口上位3位以内・18万人以上の非県庁所在地

選定は3条件に絞った。第一に県庁所在地でないこと。第二に県内人口で上位3位以内であること。第三に人口18万人以上であること。人口は総務省「国勢調査」(令和2年)の市別総人口を用い、市町村合併後の現行市域で比較している。この基準で16市が残った。

この16市のうち6市は、自県の県庁所在地より人口が多い。浜松市(790,718人/静岡市693,389人)、いわき市(332,931人/福島市282,693人)、郡山市(327,692人/同)、高崎市(372,973人/前橋市332,149人)、四日市市(305,424人/津市274,537人)、下関市(255,051人/山口市193,966人)である。「県庁所在地=県内最大都市」という前提は、対象12道府県のうち5県(静岡県・福島県・群馬県・三重県・山口県)で成り立たない。

なお政令指定都市である浜松市・北九州市、および比較先の静岡市・福岡市・名古屋市・神戸市・岡山市・札幌市については、市区町村別の集計が行政区単位で分かれるため、区別の系列を対象施設数で加重平均して市全体の水準に戻している。以降の数値はすべてこの市全体ベースである。

第2都市と県庁所在地のADR差 — 浜松+29.0%を筆頭に5市が県都超え

第2都市の推定成約ADR:県庁所在地比(12か月平均・2025年9月〜2026年8月)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(対象16市・比較先12市)

プラス側の5市には共通点がある。いずれも県庁所在地が業務需要中心の市場であるのに対し、第2都市側に観光・産業の宿泊需要が重なっている点だ。松本市は上高地・美ヶ原の玄関口であり、対象16市で最多の195施設・6,138室を抱える。下関市は関門海峡の観光と海峡沿いの宿泊施設が単価を押し上げ、倉敷市は美観地区、沼津市は伊豆・箱根方面への結節点という性格を持つ。浜松市は浜名湖のリゾート需要と、輸送用機器・楽器を軸とした製造業の出張需要が同居する。

一方、マイナス幅が大きいのは姫路市(神戸市比−61.8%)、久留米市(福岡市比−53.8%)、北九州市(同−48.8%)、旭川市(札幌市比−43.2%)である。これらは比較先が大都市圏の中枢であり、インバウンドと国際会議需要が集中する市場との比較になるため、差が開くのは構造上自然といえる。むしろ注目したいのは、県都との差が10%以内に収まっている高崎市・四日市市・郡山市の3市で、県内で単価がほぼ二極化していない市場である。

表1 第2都市と県庁所在地の推定成約ADR比較(12か月平均・2025年9月〜2026年8月)
第2都市人口県内順位推定ADR県庁所在地県都ADR
浜松市静岡県790,7181位¥10,146静岡市¥7,868+29.0%
松本市長野県241,1452位¥13,252長野市¥11,058+19.8%
下関市山口県255,0511位¥9,590山口市¥8,093+18.5%
沼津市静岡県189,3863位¥8,574静岡市¥7,868+9.0%
倉敷市岡山県474,5922位¥8,450岡山市¥8,091+4.4%
高崎市群馬県372,9731位¥7,350前橋市¥7,472-1.6%
四日市市三重県305,4241位¥7,148津市¥7,701-7.2%
郡山市福島県327,6922位¥7,458福島市¥8,255-9.7%
いわき市福島県332,9311位¥6,618福島市¥8,255-19.8%
豊田市愛知県422,3302位¥7,562名古屋市¥9,929-23.8%
豊橋市愛知県371,9203位¥7,554名古屋市¥9,929-23.9%
八戸市青森県223,4152位¥6,839青森市¥10,127-32.5%
旭川市北海道329,3062位¥8,605札幌市¥15,146-43.2%
北九州市福岡県939,0292位¥7,672福岡市¥14,993-48.8%
久留米市福岡県303,3163位¥6,922福岡市¥14,993-53.8%
姫路市兵庫県530,4952位¥7,058神戸市¥18,498-61.8%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR、2025年9月〜2026年8月の月次平均)/総務省「国勢調査」(令和2年)

サンプル数の扱いについて補足しておく。対象16市の推定成約ADRは各月の対象施設数が安定しており、系列中央値の60%を下回った月は姫路市・神戸市の2025年11月のみだった。この1か月は集計から除外し、両市は11か月平均で比較している。他の14市・10県都はすべて12か月フルでの平均である。

月次で見る4組 — 差は通年で開いたままか、季節限定か

12か月平均だけでは、県都超えが通年の構造なのか特定シーズンの押し上げなのかが判別できない。県都を上回った5市のうち、代表的な4組について2024年・2025年・2026年の月次推移を重ねた。横軸は1月から12月で、同じ月を年またぎで比較できるようにしてある。

浜松市 vs 静岡市(推定成約ADR・月次)
松本市 vs 長野市(推定成約ADR・月次)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(浜松市 対象施設中央値62施設/静岡市74施設/松本市102施設/長野市75施設)

浜松市は12か月すべてで静岡市を上回っており、差は季節要因ではない。ピークは8月で、2025年8月が¥12,500、2026年8月が¥12,200と、静岡市の同月(それぞれ¥8,400、¥8,500)に対しておよそ1.4〜1.5倍の水準にある。浜名湖周辺のリゾート施設が夏季に単価を持ち上げる一方、冬季でも差が消えないのは、市街地のビジネス系施設の水準自体が静岡市より高いことを示唆している。

松本市も通年で長野市を上回るが、形はやや異なる。8月に¥17,200(2025年)・¥16,000(2026年)へ跳ね上がる山岳リゾート型のカーブが明確で、2月は¥10,300〜10,800まで下がる。長野市は2025年の1〜2月が¥9,000台だったのに対し、2026年は¥12,200・¥10,800へ水準が切り上がっている。両市を通年で見ると、2026年1〜8月の前年同期比は松本市−1.3%に対し長野市+11.8%で、差は縮小の方向にある。長野市側の伸びが効いている格好だ。

下関市 vs 山口市(推定成約ADR・月次)
倉敷市 vs 岡山市(推定成約ADR・月次)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(下関市 対象施設中央値40施設/山口市29施設/倉敷市42施設/岡山市50施設)

下関市は2026年1〜8月の前年同期比が+9.6%と、山口市(−3.1%)に対して伸び方が対照的だ。2026年は1月¥10,200、3月¥10,400と、年初から1万円台を複数月記録している。倉敷市は年間の振れ幅が大きく、8月に¥10,500(2026年)へ達する一方、6月は¥7,000まで下がる。岡山市との差は8月に最も開き、通年では4.4%差にとどまる。倉敷市の県都超えは、繁忙期に厚く乗る観光需要が平均を押し上げた結果という読み方が妥当だろう。

供給密度 — 豊田588室・豊橋644室、人口規模に対して客室が薄い都市

需要規模に対して客室がどれだけ積まれているかを、人口10万人あたり客室数で測る。対象16市を合算した密度は1,068室、市ごとの中央値は1,011室で、対応する12県庁所在地の合算値1,648室を下回る。個別に見ると幅は広く、最も低いのが豊田市の588室、次いで豊橋市644室、久留米市683室。逆に最も高いのは松本市の2,545室で、山岳観光地を抱える市の特性が表れている。

人口10万人あたり客室数:第2都市 vs 県庁所在地

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載確認ベース・2026年6〜8月)/総務省「国勢調査」(令和2年)

県都との比率で見ると、久留米市は福岡市の0.25倍、北九州市0.32倍、豊田市0.37倍、豊橋市0.41倍と、大都市圏に近い第2都市ほど密度が低い。これは通勤・日帰り圏が重なり、宿泊需要が中枢都市へ吸い上げられてきたためと考えられる。一方、高崎市は前橋市の1.24倍、沼津市は静岡市の1.61倍、松本市は長野市の1.73倍で、県都より厚い客室ストックを持つ。

表2 人口10万人あたり客室数と県庁所在地比(掲載確認ベース・2026年6〜8月)
第2都市掲載施設客室数10万人あたり県庁所在地県都の10万人あたり比率
豊田市352,483588名古屋市1,5880.37
豊橋市222,397644名古屋市1,5880.41
久留米市272,072683福岡市2,7130.25
北九州市848,222876福岡市2,7130.32
倉敷市864,205886岡山市1,2020.74
高崎市503,340896前橋市7241.24
四日市市462,822924津市9071.02
浜松市947,708975静岡市9191.06
姫路市695,5501,046神戸市1,1060.95
下関市672,7501,078山口市1,4710.73
八戸市393,0401,361青森市1,6560.82
旭川市1024,7651,447札幌市2,0070.72
郡山市734,8231,472福島市1,5580.94
沼津市872,8071,482静岡市9191.61
いわき市1025,3601,610福島市1,5581.03
松本市1956,1382,545長野市1,4751.73

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載確認ベース・2026年6〜8月、N=1,178施設)/総務省「国勢調査」(令和2年)

駅勢で測り直す — 豊橋は乗降10万人に対し市内2,397室

人口は夜間人口であり、日中の来訪規模とは一致しない。そこで国土交通省 不動産情報ライブラリの「駅別乗降客数」(令和5年度)を使い、各市の代表駅の1日平均乗降客数を需要規模の代理指標として並べた。数値は市全体の客室数を、代表駅の乗降客数1万人で割ったものである。駅周辺だけを切り出した密度ではなく、市全体の客室を駅勢でスケーリングした指標である点に注意されたい。

表3 代表駅の乗降客数1万人あたり客室数(令和5年度)
第2都市代表駅1日平均乗降客数市内客室数乗降1万人あたり客室県都比ADR
豊橋市豊橋・新豊橋100,0402,397240-23.9%
高崎市高崎63,6083,340525-1.6%
姫路市姫路97,0785,550572-61.8%
豊田市豊田市・新豊田41,1882,483603-23.8%
四日市市近鉄四日市・四日市44,0012,822641-7.2%
沼津市沼津37,0072,807759+9.0%
北九州市小倉106,2848,222774-48.8%
浜松市浜松・新浜松82,3277,708936+29.0%
倉敷市倉敷35,2504,2051,193+4.4%
久留米市久留米14,5882,0721,420-53.8%
郡山市郡山32,1744,8231,499-9.7%
下関市下関17,2802,7501,591+18.5%
松本市松本34,1326,1381,798+19.8%
八戸市八戸14,1243,0402,152-32.5%
いわき市いわき9,9985,3605,361-19.8%
旭川市旭川7,0444,7656,765-43.2%

出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ「駅別乗降客数」(令和5年度)/メトロエンジンリサーチ&コンサルティング

鉄道利用が需要の中心となる都市ほど、この指標は小さくなる。豊橋市は乗降客数10万人に対して市内客室2,397室、高崎市は63,608人に対して3,340室で、いずれも鉄道結節点としての通過量が大きい割に客室が積まれていない。逆に旭川市・いわき市は自動車での来訪が主流で、駅の乗降客数が需要規模を代表しないため数値が大きく出る。この指標は鉄道依存度の高い都市に限って読むのが適切である。

なお、駅周辺を半径で切り出した密度分析は駅の乗降客1万人あたり客室数、中央値20室 — 出店余地が残る全国20駅【2026】で扱っており、本稿の市全体ベースの数値とは母集団が異なる。

単価と密度をひとつの面で見る — 左上に空いている領域

供給密度(横軸)× 県都比ADR(縦軸) 円の大きさ=客室数

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省「国勢調査」(令和2年)

縦軸がプラス(県都より単価が高い)かつ横軸が左寄り(人口に対して客室が少ない)の領域には、倉敷市(886室・+4.4%)と浜松市(975室・+29.0%)が位置する。単価が保たれているのに客室ストックが16市中央値の1,011室を下回る組み合わせで、業務帯の客室が積み増されても吸収されうる余地があると読める領域だ。下関市は密度1,078室と中央値をやや上回るが、県都比0.73倍という点では同じ方向性を持つ。

高崎市と四日市市は県都比ADRが−1.6%・−7.2%とほぼ横並びで、密度も896室・924室と中央値を下回る。単価が県都と同水準で供給密度が低いという意味では、上記2市と近い性格を持つ。とりわけ高崎市は上越・北陸新幹線の分岐点で乗降客数63,608人を数え、通過需要の規模に対して客室の積み上がりが緩やかである。

16市の客室ストック分布

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載確認ベース・2026年6〜8月)

円の大きさは客室数、色は県庁所在地比の推定成約ADRを示す。青が県都を上回る5市、淡色がそれ以外である。地理的に見ると、県都超えの5市は静岡県・長野県・山口県・岡山県に分布し、いずれも県庁所在地が内陸または業務中心の性格を持つ県で起きている。

投資示唆 — 3つの読み筋

① 単価維持型・低密度

倉敷市・浜松市・高崎市・四日市市。県都比−7.2%〜+29.0%と単価が県都から大きく割り込まない水準を保ちながら、人口10万人あたり客室数は16市中央値(1,011室)を下回る。業務帯の出店余地として最も読みやすい組み合わせ。

② 中枢都市の受け皿型

久留米市・北九州市・豊田市・豊橋市。県都比密度が0.25〜0.41倍と低い。中枢都市の単価上昇が続く局面では、周辺への需要染み出しを受ける立地として成長余地がある。

③ 季節ピーク厚型

松本市・沼津市・下関市。観光需要が特定月に厚く乗り、8月に単価がピークを付ける。年間平均より繁忙期の収益設計が効きやすい市場。

①に該当する4市は、県庁所在地に対して単価が大きく割り込まない水準を保ちながら、人口規模に対する客室が相対的に少ない。倉敷市は掲載確認86施設・4,205室で人口10万人あたり886室、四日市市は46施設・2,822室で924室。いずれも県都(岡山市1,202室、津市907室)と比べて客室の積み上がりが緩やかで、需要が一定水準で推移するかぎり、新規客室が吸収される余地が残る。四日市市については石油化学コンビナートの定期修繕需要が単価を動かす構造があり、コンビナート定修年2026、四日市の宿単価3月+45.9% — 4拠点の客室ストックで詳しく扱っている。

②のグループは県都比密度が最も低い。久留米市は福岡市の0.25倍、北九州市は0.32倍で、福岡市の推定成約ADRが¥15,000(12か月平均)に達する一方、両市は¥6,900・¥7,700にとどまる。中枢都市の単価が上がるほど、価格を理由に周辺都市へ移る宿泊需要が生まれやすく、その受け皿としてのポテンシャルがある。北九州市の長期滞在市場については「ホテル暮らし 北九州」の実勢は30泊24.6万円も参考になる。

③の3市は月次カーブの形が示すとおり、繁忙月の単価が年間平均を大きく上回る。松本市は8月に¥16,000〜17,200、倉敷市は8月に¥10,500を記録する。年間平均だけで投資判断の前提を置くより、ピーク月の吸収力と閑散月の底値をそれぞれ見積もるほうが実態に近い。

マクロの前提としては、観光庁「宿泊旅行統計調査」による2025年の全国客室稼働率が61.6%、施設タイプ別ではビジネスホテル75.3%・シティホテル74.1%である。第2都市の業務帯はビジネスホテルが主力であり、全国平均としては高稼働圏にある点は押さえておきたい。

①群4市の収益レンジ試算 — 3シナリオとADR×稼働率の感度

ここまでは実勢の観測値である。①「単価維持型・低密度」に分類した4市について、客室100室・業務帯の施設を1棟置いた場合の年間客室売上がどのレンジに収まるかを、実勢ADRと公表統計の稼働率だけを使って試算する。土地・建築費・運営費・金融条件は本稿の対象外であり、利回りや投資判断はここでは扱わない。あくまで売上側のレンジを把握するための目安である。

稼働率の置き方は3段階とした。中位は観光庁「宿泊旅行統計調査」による2025年のビジネスホテル全国平均75.3%、悲観は同調査の全施設タイプ平均61.6%(業務特化型としては下振れのケース)、楽観は中位に5ポイントを上乗せした80.3%である。楽観のみ当社の仮定値で、他の2つは公表値をそのまま用いている。ADRは各市の12か月平均(2025年9月〜2026年8月)を中位とし、悲観−10%・楽観+10%を置いた。

表4 ①群4市の年間客室売上レンジ(客室100室・年間・税抜相当/稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値および当社仮定・通年)
第2都市実勢ADR
12か月平均
県都比悲観(稼働61.6%・2025年通年実績)中位(稼働75.3%・2025年通年実績)楽観(稼働80.3%・仮定値)
ADRRevPAR売上
百万円
ADRRevPAR売上
百万円
ADRRevPAR売上
百万円
倉敷市¥8,450+4.4%¥7,605¥4,685171.0¥8,450¥6,363232.2¥9,295¥7,464272.4
浜松市¥10,146+29.0%¥9,131¥5,625205.3¥10,146¥7,640278.9¥11,161¥8,962327.1
高崎市¥7,350-1.6%¥6,615¥4,075148.7¥7,350¥5,535202.0¥8,085¥6,492237.0
四日市市¥7,148-7.2%¥6,433¥3,963144.6¥7,148¥5,382196.5¥7,863¥6,314230.5

試算:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(実勢ADRは推定成約ADRの12か月平均・2025年9月〜2026年8月)/稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値。売上=ADR×稼働率×100室×365日。

中位ケースの年間客室売上は四日市市の196.5百万円から浜松市の278.9百万円まで、4市で82.4百万円の幅がある。悲観と楽観の間は各市とも概ね1.6倍で、ADRの±10%より稼働率の18.7ポイント差のほうが振れ幅への寄与が大きい。単価が県都を大きく上回る浜松市は、悲観ケース(205.3百万円)でも他3市の中位ケースを上回る点が特徴的である。

次に、4市のうち県都超えかつ密度が最も低い倉敷市を例に、ADRと稼働率を独立に振った2軸の感度を示す。中央のセル(ADR実勢・稼働75%)が中位ケースに最も近い水準である。

表5 倉敷市・客室100室の年間客室売上感度(百万円・税抜相当/稼働率は通年ベースの試算上の仮定値)
ADR(実勢比)稼働60%稼働65%稼働70%稼働75%稼働80%
¥6,760(-20%)148.0160.4172.7185.1197.4
¥7,605(-10%)166.5180.4194.3208.2222.1
¥8,450(+0%)185.1200.5215.9231.3246.7
¥9,295(+10%)203.6220.5237.5254.5271.4
¥10,140(+20%)222.1240.6259.1277.6296.1

試算:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(倉敷市の推定成約ADR実勢¥8,450=2025年9月〜2026年8月の12か月平均を基準)。売上=ADR×稼働率×100室×365日。

レンジは148.0百万円から296.1百万円まで開く。ADRを実勢どおりに置いた行(¥8,450)では、通年ベースの稼働率60%で185.1百万円、80%で246.7百万円と、20ポイントの差が61.6百万円に相当する。一方、稼働率を通年75%に固定してADRを±20%振ると185.1百万円から277.6百万円で、92.5百万円の差となる。倉敷市のように繁忙期に単価が厚く乗る市場では、年間平均だけで一本の前提を置くより、この面のどこに着地するかを幅で押さえるほうが実態に近い。

なお本節の試算は売上側のみを扱っており、原価・運営費・資本費は含まない。実際の事業性は用地取得費、建築費、運営受託条件、金融条件に大きく左右されるため、ここでの数値はそれらを検討する前段の目安として読まれたい。

まとめ

第2都市16市を同一条件で並べた結果、県庁所在地より推定成約ADRが高い市が5市、ほぼ同水準の市が2市あった。合計7市、対象の44%で「県都に単価が集中する」という前提が当てはまらない。さらに16市中6市は県庁所在地より人口が多く、県内の重心は必ずしも県庁所在地にない。

供給密度で見ると、16市合計は人口10万人あたり1,068室で県都12市の1,648室の65%。ただし内訳の幅は588室(豊田市)から2,545室(松本市)まで4.3倍に開いており、一括りにできない。単価が保たれていて密度が低い市(倉敷市・浜松市・高崎市・四日市市)、中枢都市に対して密度が極端に低い市(久留米市・北九州市・豊田市・豊橋市)、季節ピークが厚い市(松本市・沼津市・下関市)という3つの性格に分かれる。

県都だけを見て県内市場を判断すると、この3つの性格のいずれも見落とすことになる。第2都市は「県都の縮小版」ではなく、別の需要構造を持つ市場として扱うのが実態に合っている。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

推定成約ADRは、各施設が主要予約サイト上で公開する最安プラン水準(2名1室・1室あたり・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。市区町村単位では対象施設の中央値を用い、2025年9月〜2026年8月の12か月を単純平均した。政令指定都市(浜松市・北九州市・静岡市・名古屋市・札幌市・福岡市・岡山市・神戸市)は行政区別の系列を対象施設数で加重平均し、市全体の水準に戻している。客室ストックは2026年6〜8月に掲載が確認できた施設の客室数合計(16市計1,178施設・68,482室)。人口は総務省「国勢調査」(令和2年)の市別総人口、駅乗降客数は国土交通省 不動産情報ライブラリ「駅別乗降客数」令和5年度値。

■ 試算前提

表4・表5の収益レンジ試算は、客室100室・業務帯の施設を1棟置いた場合の年間客室売上=ADR×稼働率×100室×365日として算出した(税抜相当・付帯収入を含まない)。稼働率は中位を観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値のビジネスホテル全国平均75.3%、悲観を同調査の全施設タイプ平均61.6%とし、楽観80.3%のみ中位に5ポイントを加えた当社の仮定値である。ADRは各市の12か月平均を中位とし、悲観−10%・楽観+10%(表5では−20%〜+20%)を置いた。供給密度は人口10万人あたり客室数、駅勢指標は市全体の客室数を代表駅の1日平均乗降客数1万人で除した値。

■ 限界・留意点

ADRは推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる(上場ホテルREITの物件別開示との照合91施設・直近3か月で誤差中央値は約7%)。客室ストックは掲載が確認できた施設に限られ、掲載のない施設は含まない。対象施設数が系列中央値の60%を下回った月は集計から除外しており、姫路市・神戸市の2025年11月が該当するため両市のみ11か月平均である。人口は令和2年国勢調査の値で、駅乗降客数は令和5年度値のため、ADRの対象期間とは基準時点が異なる。駅勢指標は市全体の客室数を代表駅でスケーリングしたものであり、駅周辺を半径で切り出した密度ではない。自動車来訪が主流の都市では実需に対して過大に出る。表4・表5は売上側のみの試算で、用地取得費・建築費・運営費・金融条件を含まず、利回りや投資判断を示すものではない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 市区町村別の推定成約ADR(2025年9月〜2026年8月)、掲載確認ベースの客室ストック(2026年6〜8月、N=1,178施設)

■ 政府統計・公的データ

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