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世帯の宿泊料支出は月6,204円・前年比+10.0%(2026年8月)— 1〜8月+23.1%を単価と頻度に分ける

投稿日 : 2026.11.01

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世帯の宿泊料支出は月6,204円・前年比+10.0%(2026年8月)— 1〜8月+23.1%を単価と頻度に分ける

総務省統計局が10月上旬に公表した「家計調査」(家計収支編)によると、二人以上の世帯が2026年8月に支払った宿泊料は1世帯あたり月6,204円で、前年同月(5,641円)から+10.0%となった。1〜8月の累計では29,605円と前年同期の24,056円を+23.1%上回り、2026年は年初から一度も前年割れの月がない。一方で、観光庁「宿泊旅行統計調査」の日本人延べ宿泊者数は同じ1〜8月に−3.6%と減っており、「泊まる人は減っているのに、世帯の宿泊支出は増えている」という一見ねじれた構図になっている。本稿では、この統計の読み方を確認したうえで、支出の伸びを宿泊料CPIで単価と頻度・構成に分け、観光庁統計と方向が異なる月の事実とその理由を母集団の違いから整理する。あわせて、都道府県庁所在市等52市の年平均の分布と、冬場(11〜1月)の前年水準、次回の公表日を示す。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本稿で使う統計の定義
• 宿泊料支出=総務省「家計調査」家計収支編・二人以上の世帯・品目分類(2025年改定)「9.4.1 宿泊料」の1世帯あたり1か月の支出額(円)。全国・二人以上の世帯を対象とし、宿泊しなかった世帯を含めた平均である。パック旅行費(9.4.2)は別品目で、宿泊料には含まれない。
• 宿泊料CPI=総務省「消費者物価指数」(2020年基準)の中分類品目「宿泊料」全国指数。
• 日本人延べ宿泊者数=観光庁「宿泊旅行統計調査」の日本人延べ宿泊者数(2026年1〜7月は第2次速報、8月は第1次速報)。
• 本稿の「単価要因」「頻度・構成要因」の分解は、名目の前年比を宿泊料CPIの前年比で除した推計値であり、泊数そのものの統計ではない。
Key Takeaways
  • — 月6,204円・+10.0% — 二人以上の世帯の2026年8月の宿泊料支出(前年同月5,641円)。1〜8月累計は29,605円で前年同期比+23.1%
  • — 単価要因は+3.8% — 宿泊料CPIで実質化すると+18.6%が残り、伸びの大半は頻度・同行人数・グレード構成の側にあると推計される
  • — 3か月移動平均は+33.6%→+16.1% — 3月をピークに伸び率は縮小。8月はCPIがほぼ横ばいで、単価の寄与は事実上ゼロ
  • — 延べ宿泊者数は−3.6% — 観光庁統計とは2026年1〜8月の全月で符号が逆。単身世帯・法人出張を含まない母集団の違いが背景
  • — 次回公表は2026年11月10日 — 9月分の比較対象は前年9月の2,817円。冬は前年11月3,459円・1月3,202円の金額水準を基準に見る

家計調査の「宿泊料」はどう読むか — 泊まらなかった世帯も含む1世帯あたりの月額

家計調査の宿泊料は、ホテルや旅館に泊まった世帯だけの平均ではない。調査対象となった二人以上の世帯すべて(その月に一度も宿泊しなかった世帯を含む)の支出を合計し、世帯数で割った「1世帯あたり1か月間の支出」である。したがって月6,204円という数字は、「泊まった世帯が平均6,204円払った」のではなく、「宿泊した世帯の支出を国内の二人以上の世帯全体に薄く均すと月6,204円になる」という意味になる。宿泊する世帯の割合(頻度)が上がっても、1回あたりの支払い(単価)が上がっても、同じように数字は増える。

読み方で押さえておきたい点が4つある。第一に、標本が小さい。総務省統計局の調査概要によれば二人以上の世帯の調査世帯は全国で8,076世帯、各世帯は6か月で入れ替わる。宿泊料のように支出する世帯が限られ、1回の金額が大きい品目では、高額な旅行をした世帯が数世帯含まれるだけで月の平均が動く。単月の前年比が+48%(2026年2月)になったり−16%(2025年7月)になったりするのはこのためで、本稿では3か月移動平均を併記する。第二に、パック旅行費は別品目である。宿泊と交通がセットになった旅行商品の代金は「9.4.2 パック旅行費」に計上され、宿泊料には入らない。旅行の買い方がパックから個別手配に移れば、宿泊料は泊数が変わらなくても増える。第三に、2025年1月分から収支項目分類が2025年改定版に切り替わっている。宿泊料の品目コードは継続しているため時系列の比較は可能だが、公表表の体裁や周辺品目の括りは前後で異なる。第四に、母集団は二人以上の世帯に限られ、単身世帯は含まれない。この点は後段で観光庁統計との差を考えるうえで重要になる。

2024年1月〜2026年8月の月次推移 — 8月が年間の15.7%、次いで11月・3月・7月・10月

まず季節の形を確認する。2023〜2025年の3年平均で、8月の支出は年間合計の15.7%を占め、他の月(5.5〜9.4%)から大きく突出している。8月に次ぐのは11月(9.4%)で、3月(8.8%)・7月(8.8%)・10月(8.8%)・5月(8.7%)がほぼ横並びで続く。谷は6月(5.5%)と2月(5.7%)だった。夏休みの家族旅行が1世帯あたり支出を押し上げる一方、年度替わりや連休のある3月・5月、紅葉期の11月が第二のピーク群を形成する。この形は宿泊施設の繁閑とおおむね一致するが、家計調査は「世帯が払った月」で記録されるため、前払いした宿泊料は宿泊月ではなく支払月に計上される点には留意したい。

出典:総務省「家計調査」(家計収支編・二人以上の世帯・9.4.1 宿泊料)よりホテルバンク編集部作成

水準の推移を年単位で見ると、年平均(12か月平均)は2023年2,530円、2024年2,863円、2025年3,000円と、2年で+18.6%上がった。2026年は1〜8月の累計が29,605円で、同期間の2025年(24,056円)を+23.1%、2024年(22,858円)を+29.5%上回る。2025年の1〜8月累計が2024年比+5.2%にとどまっていたことを考えると、2026年に入ってからの伸びの大きさが際立つ。月別では、2026年3月が4,097円と「8月以外で初めて4,000円台」に乗り、5月も3,870円と前年の3,227円を大きく上回った。

2026年の伸びを単月と3か月移動平均で読む — 累計+23.1%、8月単月は+10.0%

単月の前年比は1月+29.8%、2月+48.1%、3月+26.3%、4月+22.7%、5月+19.9%、6月+20.3%、7月+25.6%、8月+10.0%と推移した。振れの大きさを均すために3か月移動平均の前年比を取ると、2月+26.4%から3月+33.6%でピークを付け、4月+31.4%、5月+23.0%、6月+20.9%、7月+21.9%、8月+16.1%と、春をピークに伸び率が縮小してきた形になる。8月単月の+10.0%は年初来で最も低い伸びだが、8月は年間で最も支出額が大きい月であり、金額ベースの増加分(+563円)は2月(+1,089円)や3月(+853円)には及ばないものの、4月(+560円)・6月(+417円)を上回る。伸び率の鈍化を「失速」と読むのは早く、前年8月(5,641円、前年比+4.9%)の水準自体が高かった反動として理解するのが妥当だろう。

出典:総務省「家計調査」(二人以上の世帯・宿泊料)よりホテルバンク編集部作成。3か月移動平均は当月を含む直近3か月の平均値の前年同期比

2026年1〜8月の宿泊料支出と前年比・単価要因の推計(二人以上の世帯・全国)
月2026年(円)2025年(円)前年同月比3か月移動平均 前年比宿泊料CPI 前年比単価除く伸び(推計)日本人延べ宿泊者数 前年比
2026年1月3,2022,467+29.8%+17.2%+5.9%+22.5%-2.3%
2026年2月3,3552,266+48.1%+26.4%+6.0%+39.7%-1.6%
2026年3月4,0973,244+26.3%+33.6%+5.0%+20.3%-1.5%
2026年4月3,0232,463+22.7%+31.4%+4.6%+17.4%-5.5%
2026年5月3,8703,227+19.9%+23.0%+4.8%+14.4%-0.9%
2026年6月2,4702,053+20.3%+20.9%+3.1%+16.7%-6.3%
2026年7月3,3842,695+25.6%+21.9%+2.0%+23.1%-4.1%
2026年8月6,2045,641+10.0%+16.1%-0.2%+10.2%-5.8%
1〜8月累計29,60524,056+23.1%—+3.8%+18.6%−3.6%

出典:総務省「家計調査」「消費者物価指数」、観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成。「単価除く伸び」=(1+支出前年比)÷(1+CPI前年比)−1 の推計値

伸びを「単価」と「頻度・構成」に分ける — 1〜8月の+23.1%のうち単価要因は+3.8%

宿泊支出の増加は、同じ泊数で1泊あたりの支払いが上がった(単価要因)のか、泊まる回数や人数が増えた(頻度・構成要因)のかで、宿泊施設にとっての意味が変わる。ここでは総務省「消費者物価指数」の宿泊料指数(2020年=100)を使い、名目の前年比をCPIの前年比で除した残差を頻度・構成要因の近似とみなす。宿泊料CPIは2026年1〜8月の平均が168.0で前年同期(161.8)比+3.8%だった。名目+23.1%をこれで実質化すると+18.6%が残る。つまり、1〜8月の伸びの大半は価格上昇では説明できず、宿泊の頻度、同行人数、選ぶ施設のグレードといった「量と構成」の側にあると推計される。

月別に見ると、宿泊料CPIの前年比は1月+5.9%、2月+6.0%から徐々に縮み、7月+2.0%、8月は-0.2%とほぼ横ばいまで下がった。前年8月のCPIは181.4と2020年以来の最高値で、そこから上がっていない。その結果、8月の名目+10.0%はほぼそのまま実質+10.2%となり、単価の寄与は事実上ゼロである。一方、1〜3月は名目の伸びのうち5〜6ポイントが単価要因で、残りの20〜40ポイントが頻度・構成要因だった。この残差には、CPIが捉えない「同じ施設でも高い客室や食事付きプランを選ぶ」というアップグレードも含まれるため、泊数が実質+19%増えたと読むのは過大である。推計値として幅を持って受け止めたい。なお、宿泊料CPIは2026年7月分から2025年基準へ切り替わり、新旧基準で前年比が最大1.6pt異なる。本稿は時系列を接続するため2020年基準の指数で統一しており、基準改定の影響は「宿泊料CPI 2025年基準改定で前年比が最大1.6pt下振れ — 自館ADRとの併用法」で整理している。

出典:総務省「家計調査」「消費者物価指数(宿泊料)」、観光庁「宿泊旅行統計調査」よりホテルバンク編集部作成

なお、宿泊料CPIと当社が推計する成約ADRの乖離については「宿泊料CPIは3年で+25.6%、実勢の成約単価は+10.9%」で分解している。CPIは品質を一定に保った価格の指数であり、市場の平均成約単価とは動きが異なる。家計調査の実質化にCPIを使うのは、世帯が同じ品質の宿泊に払う価格の変化を取り除くためであって、市場ADRの変化を取り除くためではない。

観光庁の日本人延べ宿泊者数とは方向が逆 — 2026年は8か月すべてで符号が異なる

観光庁「宿泊旅行統計調査」によると、日本人の延べ宿泊者数は2026年1月−2.3%、2月−1.6%、3月−1.5%、4月−5.5%、5月−0.9%、6月−6.3%、7月−4.1%、8月−5.8%(第1次速報、5,004万人泊)と、1〜8月の累計で−3.6%だった。家計調査の宿泊料は同じ8か月すべてでプラスであり、符号が一致した月は一つもない。頻度・構成要因が+19%と推計される家計調査と、泊数が−3.6%の観光庁統計を並べると、矛盾しているように見える。

この差は、どちらかが誤っているのではなく、測っているものが違うことから生じる。第一に母集団が異なる。家計調査は二人以上の世帯のみを対象とし、単身世帯を含まない。2020年国勢調査では単独世帯が一般世帯の約38%を占めており、出張の多い単身者や一人旅の若年層・高齢層の宿泊は家計調査の宿泊料に現れない。第二に、支払主体が異なる。宿泊旅行統計は施設に泊まった延べ人数を数えるため、会社が負担する出張宿泊も含まれるが、家計調査には世帯が自ら支払った分しか計上されない。法人出張が減って個人・家族の旅行が増えれば、延べ宿泊者数が減りながら世帯支出が増える組み合わせは成立する。第三に、家計調査は人数ではなく金額であり、同行人数の増加や高グレード化は泊数を増やさずに支出を増やす。第四に、宿泊旅行統計は2026年1月調査から層化基準が従業者数から客室数に変更されており、前年比に制度変更の影響が含まれる可能性がある。第五に、前述のとおり家計調査は標本が小さく、単月の振れが大きい。

したがって両統計は「日本人の宿泊需要」を別の切り口で測っていると理解するのが適切である。延べ宿泊者数は施設側から見た総量、家計調査はファミリー・カップルを中心とした世帯側の財布である。2026年に入って前者が減り後者が増えているという事実は、国内の宿泊市場で「泊まる人数は減っているが、家族単位の旅行では1世帯あたりの支出が厚くなっている」という需要の質の変化を示唆している。同じ国内需要でも、観光庁「旅行・観光消費動向調査」が示す日本人の宿泊旅行消費(4〜6月期)は家計調査とも宿泊旅行統計とも別の統計であり、本稿の数値とは対象・調査方法が異なる点に留意されたい。同調査が示す2025年度の「実旅行者数は減りながら費用総額は過去最高」という構図は、「人数は微減、使う金額は過去最高 — 旅行費用8兆3,883億円が示す国内宿泊の質的転換」で扱っている。国内旅行者数の年間見通しは「2026年の国内旅行者は日本人・外国人とも減少」、都道府県別の量と単価の組み合わせは「2026年7月の延べ宿泊者数は−3.5%、ADRは−4.4%」で扱っている。

都道府県庁所在市等52市の年平均 — 中央値2,637円、半数が2,039〜3,214円に収まる

家計調査は都道府県庁所在市と政令指定都市(計52市)について結果を公表している。2025年の12か月平均を並べると、中央値は2,637円、第1四分位2,039円、第3四分位3,214円で、半数の市が2,039〜3,214円の範囲に収まる。最小は1,385円、最大は6,308円で、最大値は最小値の4.6倍だった。全国値(3,000円)が中央値より高いのは、全国値が市部以外の世帯も含めて世帯数で加重されていることと、少数の高水準の市が平均を引き上げていることによる。

出典:総務省「家計調査」(二人以上の世帯・宿泊料・2025年の月平均、都道府県庁所在市および政令指定都市52市)よりホテルバンク編集部作成

都道府県庁所在市等52市の宿泊料 年平均の分布(2025年)
2025年 年平均の階級市の数構成比
1,000〜1,999円12市23%
2,000〜2,999円23市44%
3,000〜3,999円12市23%
4,000円以上5市10%

出典:総務省「家計調査」よりホテルバンク編集部作成(N=52市)

ここで市ごとの順位を論じないのは、1市あたりの標本が百世帯程度にとどまり、年平均であっても前年から数十%動く市が珍しくないためである。実際、2024年から2025年にかけて年平均が+50%以上になった市も−30%以上になった市も複数あり、単年の序列には再現性がない。読み取れるのは分布の形、すなわち「多くの市は月2,000〜3,000円台で、4,000円を超える市は5市にとどまる」という水準感である。首都圏や大都市の世帯が高い傾向はあるが、これは所得水準に加えて、宿泊を伴う帰省・旅行の距離が長いことの反映でもあり、宿泊施設の所在地を示すものではない。

冬に向けて — 前年11〜1月は3か月で9,456円、次回公表は11月10日

冬場の需要を考える材料として、前年同期の水準を確認する。2025年11月の宿泊料は3,459円(前年同月比+17.7%)、12月は2,795円(+4.9%)、2026年1月は3,202円(+29.8%)で、3か月合計は9,456円と前年同期の8,071円を+17.2%上回った。11月は紅葉期と3連休、1月は年末年始の帰省・旅行が月内に収まるため、冬の中では支出が厚い。逆に12月は年末の出費が他費目に向かうため、宿泊料は相対的に軽い月になりやすい。

冬場(11〜1月)の宿泊料支出 前年比較(二人以上の世帯・全国)
月2024/25年冬(円)2025/26年冬(円)前年同月比3か月移動平均 前年比
11月2,9403,459+17.7%+3.6%
12月2,6642,795+4.9%+3.8%
1月2,4673,202+29.8%+17.2%
11〜1月合計8,0719,456+17.2%—

出典:総務省「家計調査」(二人以上の世帯・宿泊料)よりホテルバンク編集部作成

2026年冬が前年を上回るかどうかは、秋以降の伸び率の縮小がどこで止まるかにかかる。3か月移動平均の前年比は3月の+33.6%から8月の+16.1%まで縮んでおり、この傾きが続けば年末には一桁台に入る計算になるが、前年11月・1月の水準が高かった分、同じ金額でも前年比は低く出る。伸び率ではなく金額水準(11月3,459円、1月3,202円)を基準に見るのが実務的だろう。次回の公表は2026年9月分で、総務省統計局の公表予定によれば2026年11月10日(火)8時30分に7〜9月期の四半期平均とあわせて公表される。9月分は、前年9月の2,817円(前年比+3.9%)が比較対象となる。

運営者・投資家への示唆 — 「人数は減り、財布は厚い」需要にどう応えるか

本稿の数字をまとめると、二人以上の世帯の宿泊料支出は2026年1〜8月に+23.1%、うち単価要因は+3.8%、残る約+19%は頻度・人数・グレード構成の変化として推計される。同時に、日本人の延べ宿泊者数は−3.6%である。宿泊施設の側から見ると、客数の総量を追う戦略と、家族・カップル世帯の1回あたり支出を取り込む戦略では、向かう先が異なる局面にある。

第一に、世帯支出の第二のピークが11月・3月・5月に分散している点は、8月以外の繁忙期の商品設計に活かせる。特に3月は2026年に4,097円と8月以外で初めて4,000円を超えており、春休み・卒業旅行・年度末の家族旅行が宿泊支出として定着しつつあるといえる。第二に、頻度・構成要因が伸びているということは、宿泊料CPIが横ばいの8月でも世帯は支出を増やしたということであり、価格を上げなくても客室タイプや食事、滞在日数の組み合わせで客単価を伸ばす余地がある。第三に、家計調査が捉えない単身世帯・法人出張の動向は、延べ宿泊者数の減少側に現れている可能性が高く、ビジネスホテルの平日需要を見るうえでは家計調査より宿泊旅行統計や自社の予約データが先行指標になる。統計ごとに「誰の、どの支出を、どう数えているか」を分けて読むことが、需要の質の変化を見誤らないための前提になる。宿泊旅行統計調査の読み方は「宿泊旅行統計調査とは」に整理している。

よくある質問

Q. 月6,204円は「泊まった世帯の平均」ですか?

A. いいえ。その月に宿泊しなかった世帯も含めた二人以上の世帯全体の平均です。宿泊した世帯だけの平均はこれより大きくなります。

Q. パック旅行で泊まった分はどこに入りますか?

A. 宿泊と交通がセットになった旅行商品は「パック旅行費」という別の品目に計上され、宿泊料には含まれません。参考までに、二人以上の世帯のパック旅行費は2026年1〜8月の累計で前年同期比+4.7%、宿泊料と合算すると+13.5%でした。

Q. 家計調査と観光庁の延べ宿泊者数、どちらを見ればよいですか?

A. 目的によります。施設側の客数の総量を見るなら延べ宿泊者数、ファミリー・カップル世帯の財布の動きを見るなら家計調査が適しています。家計調査には単身世帯と会社負担の出張宿泊が含まれない点にご注意ください。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

総務省「家計調査」家計収支編(二人以上の世帯・品目分類2025年改定「9.4.1 宿泊料」「9.4.2 パック旅行費」、全国および都道府県庁所在市等52市、2023年1月〜2026年8月)、総務省「消費者物価指数」2020年基準 宿泊料(全国・月次)、観光庁「宿泊旅行統計調査」日本人延べ宿泊者数(2026年1〜7月は第2次速報、8月は第1次速報)。いずれも公表値をホテルバンク編集部が再集計した。

■ 試算前提

「単価要因」は宿泊料CPIの前年比、「頻度・構成要因」は名目の前年比をCPIの前年比で除した残差として推計した。3か月移動平均は当月を含む直近3か月の平均値の前年同期比。季節の構成比は2023〜2025年の3年平均。52市の分布は2025年の12か月平均を用いた。

■ 限界・留意点

家計調査は二人以上の世帯(調査世帯8,076世帯)の1世帯あたり平均で、宿泊しなかった世帯を含み、単身世帯と会社負担の出張宿泊は含まない。標本が小さく単月の振れが大きいため、単月の前年比で傾向を断定しない。頻度・構成要因はアップグレード等も含む残差で、泊数そのものの統計ではない。宿泊料CPIは2026年7月分から2025年基準に移行したが、本稿は時系列接続のため2020年基準で統一している。

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