2026年10月18日(日)から24日(土)まで、愛知県で第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)が開催される。日本で初めて開かれるアジアパラ競技大会であり、44か国・地域から選手約2,700名が集まり、18競技が県内19会場で行われる。宿泊市場から見たとき、この7日間は「週末が混む」という通常のパターンとは異なる需要のかたちを持つ。本稿では愛知県の10月の在庫消化と価格を同一リードタイム断面で並べ、大会期間の平日に何が起きつつあるのかを定量的に読み解く。
本記事における指標の定義
- LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。LT0=当日。本記事の比較はすべて同一LT断面(各日付について「チェックインまで残り同じ日数」の時点)で行っている。
- 稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合。計算式は(総客室数−残室数)÷総客室数。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
- 平均価格:同断面で観測された掲載価格の平均(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)。
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ
- — 大会期間7日間(10月18日〜24日)はLT86断面で推定稼働率76.1〜78.0%に収まり、平日と週末の差がほぼ消える。
- — 大会週の平日5日平均は77.2%、翌週同曜日は65.0%で差は12.1pt。平均価格も¥23,200対¥18,200で27.6%高い。
- — 上乗せが最も大きいのはビジネスホテルの14.3pt・価格差約60%。旅館5.7pt・リゾート3.0ptと業態でくっきり割れる。
- — 供給側はメイン会場半径5km圏が82施設・5,303室にとどまり、名古屋駅半径5km圏の386施設・43,010室が主動線になる。
- — 会場を抱える周辺市の推定成約ADRは一宮市¥8,600〜豊橋市¥13,300で、名古屋市中村区¥18,100とは2〜5割の開きが残る。
大会の枠組み — 7日間・44か国・地域・18競技19会場
まず大会の与件を一次資料で確認しておく。日本パラスポーツ協会が公表する大会概要によれば、正式名称は「第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)」、大会期間は令和8年10月18日(日)から10月24日(土)までの7日間、開催地は愛知県名古屋市ほか、参加規模は44か国・地域、選手約2,700名である。運営主体はアジアパラリンピック委員会(APC)と愛知・名古屋2026アジア・アジアパラ競技大会組織委員会(AINAGOC)が担う。実施競技は18競技で、大会公式サイトは県内19の競技会場を掲げている。
宿泊需要を考えるうえで重要なのは、会場が名古屋市内に集中しつつも周辺市に相応に分散している点である。陸上競技のメイン会場は名古屋市瑞穂公園陸上競技場、ボッチャと水泳は名古屋市総合体育館、車いすバスケットボールは愛知国際アリーナ。一方でバドミントンは一宮市、ゴールボールは豊橋市、卓球は豊田市(スカイホール豊田)、アーチェリーとシッティングバレーボールは岡崎市中央総合公園、車いすラグビーは刈谷市(ウイングアリーナ刈谷)と、名古屋市外の5市にも会場が置かれている。なお自転車競技のみ、トラック・ロードとも静岡県伊豆地区の会場で実施される。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大会名称 | 第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋) |
| 大会期間 | 2026年10月18日(日)〜10月24日(土)/7日間 |
| 開催地 | 愛知県名古屋市ほか |
| 参加規模 | 44か国・地域/選手約2,700名 |
| 実施競技 | 18競技(公式サイト掲載の競技会場は19会場) |
| メイン会場 | 名古屋市瑞穂公園陸上競技場(陸上競技) |
| 名古屋市外の会場都市 | 一宮市・豊橋市・豊田市・岡崎市・刈谷市(ほか自転車競技は静岡県伊豆地区) |
出典:公益財団法人日本パラスポーツ協会「第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)概要」、第5回アジアパラ競技大会公式サイト
同一LT断面で見る10月 — 大会週の平日が翌週の同曜日を12pt上回る
ここからは内部データに入る。愛知県全体(メトロエンジンリサーチが在庫を観測している513〜537施設、総客室数54,067〜54,147室)について、10月9日から10月31日までの各チェックイン日の在庫消化を追跡した。日付ごとに観測の起点がずれるため、比較はすべてLT86(チェックインまで残り86日)という同一断面に揃えている。これにより「大会期間だけリードタイムが短いから高く見える」という見かけ上の差を排除できる。
結果は明快だった。大会期間の7日間(10月18日〜24日)は、いずれも稼働率(推定)76.1〜78.0%のレンジに収まり、平日・週末の差がほとんど消えている。対して大会翌週の平日(10月26日〜30日)は63.3〜67.3%である。曜日をそろえて並べると、月曜が76.1%対66.0%、火曜が77.2%対63.3%、水曜が76.9%対63.4%、木曜が77.7%対65.2%、金曜が78.0%対67.3%。平日5日の平均は77.2%対65.0%で、その差は12.1ptに達する。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
価格も同じ方向を向いている。同断面の平均価格は、大会週の平日が¥22,400〜¥24,400(5日平均¥23,200)、翌週の同曜日が¥17,400〜¥19,400(同¥18,200)で、水準差は約27.6%である。平日にもかかわらず、価格帯は平常週の土曜(10月31日の¥27,000)にこそ届かないものの、平常週の金曜(10月30日の¥19,400)を大きく上回る位置にある。
一方で週末はどうか。10月24日(土)は77.4%・¥29,300、10月31日(土)は69.5%・¥27,000で、差は7.9pt・8.5%にとどまる。10月18日(日)と10月25日(日)の比較でも9.6pt・20.2%である。つまり大会のインパクトは、もともと高稼働の週末よりも、平常なら谷になる火曜・水曜に色濃く出ている。これは会期が7日間連続で、選手・チーム関係者・大会スタッフ・観戦者がいずれも連泊で滞在する構造を素直に反映したものと考えられる。
| 曜日 | 大会週 | 稼働率 | 平均価格 | 翌週 | 稼働率 | 平均価格 | 稼働率差 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 日 | 10/18 | 77.8% | ¥22,300 | 10/25 | 68.2% | ¥18,600 | +9.6pt |
| 月 | 10/19 | 76.1% | ¥23,100 | 10/26 | 66.0% | ¥18,200 | +10.1pt |
| 火 | 10/20 | 77.2% | ¥22,400 | 10/27 | 63.3% | ¥17,900 | +13.9pt |
| 水 | 10/21 | 76.9% | ¥22,700 | 10/28 | 63.4% | ¥17,400 | +13.5pt |
| 木 | 10/22 | 77.7% | ¥23,200 | 10/29 | 65.2% | ¥17,800 | +12.5pt |
| 金 | 10/23 | 78.0% | ¥24,400 | 10/30 | 67.3% | ¥19,400 | +10.7pt |
| 土 | 10/24 | 77.4% | ¥29,300 | 10/31 | 69.5% | ¥27,000 | +7.9pt |
LT86断面。観測施設数は各列で366〜530施設(母集団513〜537施設・54,067〜54,147室)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
観測母集団について:本節の23日分すべてについて、LT86断面の観測施設数は最小366施設(10月25日)・最大530施設(10月23日)である。曲線全体(LT90〜直近観測)まで含めた場合の観測施設数レンジは最小101施設・最大530施設で、薄い断面が谷を作らないよう、比較にはすべて観測施設数が366施設以上あるLT86断面のみを用いている。
業態別に見ると — 受け皿の中心はビジネスホテル
次に、この上乗せがどの業態に現れているかを見る。同じLT86断面で、大会週の平日3日(10月20日・21日・22日)と翌週の同曜日3日(10月27日・28日・29日)を業態別に比較した。
最も大きな差が出たのはビジネスホテルである。愛知県内282〜287施設・42,499〜42,636室を母集団とすると、大会週平日の平均稼働率(推定)は77.9%、翌週同曜日は63.6%で、差は14.3pt。平均価格は¥19,500対¥12,200で、水準差は約60%に達する。シティホテルは28〜29施設・4,908〜5,059室と母数が小さいため幅を持って読む必要があるが、83.5%対71.1%(12.4pt差)、価格は¥27,000対¥20,500(約32%差)で、やはり明確な上乗せが観測される。
対照的に、旅館(106〜118施設・2,195〜2,397室)は59.8%対54.1%の5.7pt差、価格差は0.6%とほぼ横ばい。リゾートホテル(11施設・1,065室)は51.9%対48.9%の3.0pt差、価格差6.3%である。旅館・リゾートは会場から距離のある温泉地・湾岸部が中心で、大会由来の滞在が向かいにくい立地にある。裏を返せば、これらの業態には秋の行楽需要という別の軸が残されており、大会需要とは独立した集客の余地がある。なお愛知のビジネスホテルが平常時にどんな曜日プロファイルを描くかについては、愛知・広島のビジネスホテル 曜日別稼働の形が基準線として参考になる。
LT86断面。大会週平日=10/20・21・22、翌週=10/27・28・29の平均。観測施設数はビジネス196〜280、シティ17〜29、旅館83〜116、リゾート5〜11。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
9月のアジア競技大会という先行波 — 「満ちた状態」の目安
愛知県の2026年秋を考えるとき、アジアパラ競技大会の前に第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)が控えている点は外せない。会期は2026年9月19日(土)から10月4日(日)までの16日間で、45の国と地域が参加する。こちらは既に会期まで45日前後まで迫っており、市場が「どこまで詰まりうるか」の目安として参照できる。
同じLT86断面で見ると、アジア競技大会の開幕直後にあたる9月19日は稼働率(推定)90.6%・平均価格¥38,100、9月20日は92.9%・¥39,800。9月25日は91.7%・¥29,000、9月28日は88.0%・¥27,100である。アジアパラ競技大会期間の76.1〜78.0%と比べると、10ptから15pt高い水準にある。さらに直近の観測(9月19日はLT44、9月20日はLT45)では、それぞれ93.1%・¥43,200、95.4%・¥43,800まで進んでいる。LT86からLT44の間にさらに2〜3pt積み上がった計算になる。
この事実には二つの読み筋がある。ひとつは、愛知県の宿泊市場は9割超まで在庫が消化されうる需要密度を持っているということ。もうひとつは、アジアパラ競技大会の期間が現時点で77%前後にあるということは、会期まで70日以上を残した進捗としてはむしろ自然であり、ここから積み上がる余地が十分にあるということである。9月大会が示した「LT86からさらに伸びる」という軌跡は、10月大会の受け皿づくりを考えるうえでの有力な参照点になる。9月のアジア競技大会が名古屋圏のどこまで需要を波及させているかは、2026年アジア競技大会・愛知の宿泊需給で詳しく分析している。
LT86断面。観測施設数はアジア競技大会期間303〜397施設、アジアパラ競技大会期間379〜530施設。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
会場圏の宿泊供給 — メイン会場の半径5kmに82施設・5,303室
需要側の話をしたので、供給側の地理も押さえておきたい。メトロエンジンリサーチが把握する施設マスターで、メイン会場である名古屋市瑞穂公園陸上競技場から半径5km圏を数えると、客室数が判明する施設は82施設・5,303室である。うち50室以上の規模を持つのは25施設・3,949室。愛知県全体で観測している約54,100室に対して、メイン会場の徒歩・短距離移動圏に置かれた在庫は全体の1割程度という計算になる。
一方、名古屋駅から半径5km圏には386施設・43,010室が集積しており、うち50室以上が219施設・40,061室を占める。この圏域には名古屋駅周辺と栄・伏見エリアがまるごと含まれる。会場最寄りの在庫が限られる以上、大会期間の滞在の大半は名古屋駅・栄圏を起点に地下鉄で会場へ向かう動線になると考えるのが自然である。名古屋市営地下鉄名城線・桜通線で都心から瑞穂運動場エリアまでは15〜20分圏にあり、都心宿泊×鉄道移動という組み合わせが現実的な受け皿となる。
円の大きさは客室数。メイン会場から半径5km圏(N=82施設・5,303室)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
名古屋市中心部と会場都市の水準差 — 周辺市に残る価格ののりしろ
会場が名古屋市外の5市にも置かれることを踏まえ、市区別の価格水準も確認しておく。2026年10月の推定成約ADR(エリア中央値)を市区別に並べると、名古屋市中村区が¥18,100(N=61施設)、中区が¥15,900(N=83施設)と、名古屋駅・栄の二大集積が県内最上位を形成する(愛知のADRが月ごとにどれだけ振れるかは愛知の推定成約ADR確定18ヶ月を参照)。
これに対し、会場が置かれる周辺市は、豊橋市¥13,300(N=18施設)、豊田市¥12,300(N=27施設)、刈谷市¥12,100(N=7施設)、岡崎市¥11,000(N=12施設)、一宮市¥8,600(N=11施設)である。中村区との差は、豊田市で約32%、岡崎市で約39%、一宮市では約52%に及ぶ。会場が徒歩圏にありながら都心より2〜5割低い価格帯にある施設群が存在するということであり、大会期間中の滞在先としては、価格面でも移動時間の面でも十分に成立する選択肢になる。
宿泊事業者の視点で言えば、ここには明確なアップサイドがある。競技が名古屋市外の会場で行われる日は、その会場都市の宿がもっとも近い滞在拠点になる。一宮市総合体育館でのバドミントン、スカイホール豊田での卓球、岡崎市中央総合公園でのアーチェリー・シッティングバレーボール、ウイングアリーナ刈谷での車いすラグビー、豊橋市総合体育館でのゴールボール。競技日程が確定するにつれ、各会場都市には「その日だけ都心と同等の集客力を持つ」窓が生まれる。都心との価格差が大きいほど、その窓での上乗せ余地も大きい。
2026年10月の推定成約ADR(エリア中央値、税抜相当)。カッコ内は対象施設数。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
アクセシブルな客室の受け皿 — 制度と供給年次から読む
パラスポーツの国際大会である以上、車椅子使用者用客室をはじめとするアクセシブルな客室の供給は、需給を語るうえで欠かせない論点になる。制度面では、2019年9月1日施行のバリアフリー法施行令改正により、延べ面積2,000㎡以上かつ客室総数50室以上のホテル・旅館を新築する場合、車椅子使用者用客室の設置数が従来の「1室以上」から「客室総数の1%以上」へ引き上げられた。つまり、2019年秋以降に建てられた一定規模以上の施設ほど、客室総数に比例したアクセシブルルームを備えている構造にある。
この観点から名古屋駅半径5km圏を見ると、50室以上の規模を持つ219施設のうち、開業年が把握できる214施設中46施設が2019年9月以降の開業である。全体の2割強にあたり、名古屋の宿泊供給がこの数年で入れ替わりを進めてきたことを示している。会期まで70日以上を残した現時点では、こうした新しい大型施設を含めて、都心圏にはまだ相当量の在庫が残っている。
加えて、段差の少なさや動線の広さは新築だけの話ではない。改装によって客室・浴室まわりを整えた施設、エレベーターから客室までの動線がフラットな施設、大浴場ではなく客室内で完結できる設計の施設は、いずれも会期中の有力な受け皿になりうる。自館がどの条件を満たしているかを整理し、OTA上の設備情報として明示しておくことは、この期間の集客において直接的な効果を持つ打ち手といえる。
室数に置き換えるとどれだけの差か — 定義に基づく単位換算
ここまでの比較はすべて割合(パーセント)で述べてきた。本記事の指標定義にあるとおり、推定稼働率は「総客室数に対する販売済み客室数の割合」であり、これを移項すれば推定販売室数=対象客室数×推定稼働率という単純な掛け算になる。以下は将来の予測ではなく、本文に掲載済みの客室数と推定稼働率だけを用いた単位換算である。新しい観測や仮定は一切加えていない。
| 断面 | 推定稼働率 | 推定販売室数 | 平常週平日との差 |
|---|---|---|---|
| 平常週の平日(10月26〜30日の平均) | 65.0% | 35,196室 | — |
| 大会週の平日(10月19〜23日の平均) | 77.2% | 41,801室 | +6,605室 |
| 9月大会の開幕直後水準(9月19日の実測) | 90.6% | 49,057室 | +13,861室 |
県全体の総客室数54,147室に当てはめると、大会週の平日と平常週の平日の12.1ptの差は1泊あたり約6,605室にあたる。平日5日ぶんでは約33,025室泊で、9月のアジア競技大会が示した90.6%まで積み上がれば平常週平日との差は約13,861室に広がる。「12.1pt」という表現よりも、この室数のほうが受け皿づくりの規模感をつかみやすい。
| 対象客室数 | 51.9% | 63.6% | 77.2% | 83.5% | 90.6% |
|---|---|---|---|---|---|
| リゾートホテル(1,065室) | 553室 | 677室 | 822室 | 889室 | 965室 |
| 旅館(2,397室) | 1,244室 | 1,524室 | 1,850室 | 2,001室 | 2,172室 |
| シティホテル(5,059室) | 2,626室 | 3,218室 | 3,906室 | 4,224室 | 4,583室 |
| ビジネスホテル(42,636室) | 22,128室 | 27,116室 | 32,915室 | 35,601室 | 38,628室 |
| 愛知県全体(54,147室) | 28,102室 | 34,437室 | 41,801室 | 45,213室 | 49,057室 |
横軸の推定稼働率は本文で観測された5水準(リゾート51.9%、ビジネス翌週63.6%、県平日77.2%、シティ83.5%、9月大会90.6%)、縦軸は本文記載の業態別客室数。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
業態別に同じ換算を当てると差の性格がはっきりする。ビジネスホテルは42,636室に14.3ptがかかるため増分は約5,799室、リゾートホテルは1,065室に3.0ptで約32室と、比率では4.8倍の差が室数では181倍に開く。受け皿の設計を考えるとき、動く客室の絶対量はストックの大きい業態に偏るという点が、比率だけを見ていると見落とされやすい。
※ 本節は指標定義の移項による単位換算であり、需要予測・完売見通しを示すものではない。用いた客室数・推定稼働率はいずれも本文の各節に掲載済みの観測値である。
宿泊事業者への示唆 — 平日に生まれる7日連続の窓
ここまでのデータを事業者目線で整理すると、次の3点に集約できる。
第一に、需要の形が平日型であること。通常の10月の愛知県は、土曜が7割台前半、火曜・水曜が6割台半ばというプロファイルを描く。大会期間はこの谷が消え、7日間が一様に77%前後で並ぶ。連泊需要が主軸である以上、1泊単位の設定よりも、7日間を通した連泊プランや連泊割の設計が噛み合いやすい。すでに平日単価を平常週より2割強高い水準で置けていることは、市場がこの構造を織り込み始めていることを意味する。
第二に、伸びしろは会期直前ではなく今この時点にあること。9月のアジア競技大会が示したように、この市場はLT86の90%台からさらに積み上がる。逆に言えば、LT86時点で77%という水準は、残り2割強の在庫をどう配分するかという設計の自由度がまだ手元にある状態である。段階的な価格設計、連泊縛りの設定、キャンセル条件の見直しといった打ち手が、いずれもまだ間に合う。
第三に、周辺市には価格ののりしろが残っていること。名古屋市中村区と一宮市の推定成約ADRには約2倍の開きがある。会場を抱える周辺市の施設にとっては、競技日程という明確な需要アンカーが与えられるため、平常の相場から一段引き上げた設定を検討する根拠が揃う。もちろん現時点の水準は調査時点のスナップショットであり、今後の在庫追加や価格改定で変動する。だからこそ、競技日程の公表に合わせて自館の販売設計を見直すサイクルを持っておくことに意味がある。
まとめ
第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)は、2026年10月18日から24日までの7日間、44か国・地域・選手約2,700名・18競技という規模で開かれる。愛知県の宿泊在庫を同一LT断面で追跡すると、この7日間は稼働率(推定)76.1〜78.0%と、大会翌週の同曜日を平日平均で12.1pt、価格で27.6%上回る位置にある。とりわけビジネスホテルでは14.3ptの差と約60%の価格差が観測され、大会需要の受け皿の中心がこの業態にあることが読み取れる。
供給側では、メイン会場半径5km圏の在庫が82施設・5,303室と限られる一方、名古屋駅半径5km圏には386施設・43,010室が集積する。会場が名古屋市外の5市に分散していることを踏まえると、都心宿泊×鉄道移動という主動線に加えて、豊田・岡崎・一宮・豊橋・刈谷といった会場都市が「その日だけ最寄りになる」構図が生まれる。都心との価格差が2〜5割ある分だけ、これらの都市には上乗せの余地が残されている。
会期まではまだ70日以上ある。9月のアジア競技大会が示したように、この市場はここからさらに積み上がる。現在の77%という数字は到達点ではなく、これから設計できる余白そのものである。
⚠ 将来日程のデータに関する注意:本記事が扱う2026年9月〜10月のチェックイン日はいずれも調査時点(2026年8月7日)より先の日程であり、稼働率(推定)・平均価格・推定成約ADRはその時点でOTAに公開されている在庫と販売価格に基づく進行中の観測値です。会期まで70日以上を残しているため、今後の在庫追加・価格改定・キャンセル発生によって数値は変動します。本記事は特定日の「完売」や最終的な到達水準を示すものではなく、同一リードタイム断面での進捗を比較したものです。
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参考資料・出典一覧
■ 大会情報(一次資料)
- 第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)公式サイト
- 同「実施競技及び競技会場」
- 公益財団法人日本パラスポーツ協会「第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)概要」(PDF)
- スポーツ庁「第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)/第5回アジアパラ競技大会(2026/愛知・名古屋)」
- 日本オリンピック委員会「愛知・名古屋アジア大会」
■ 制度・法令
■ データソース
大会の与件(会期・参加規模・実施競技・会場)は日本パラスポーツ協会の大会概要と大会公式サイトの一次資料による。宿泊需給はメトロエンジンリサーチが観測する愛知県のOTA掲載在庫(母集団513〜537施設・54,067〜54,147室、2026年8月7日時点の観測)に基づく推定稼働率・平均価格で、市区別の推定成約ADRは2026年10月のエリア中央値(対象施設数は各市区3施設以上)。会場周辺の施設数・客室数・開業年は同社の施設マスターによる。
■ 試算前提
日付間の比較はすべて同一リードタイム断面(LT86)に揃え、リードタイムの違いによる見かけの差を排除している。観測施設数が薄い断面が谷を作らないよう、比較には観測施設数366施設以上のLT86断面のみを用いた。「室数に置き換えるとどれだけの差か」の節は、本文の指標定義(推定稼働率=総客室数に対する販売済み客室数の割合)を移項した推定販売室数=対象客室数×推定稼働率という単位換算であり、縦軸・横軸とも本文に掲載済みの客室数・推定稼働率の実測値のみを用いている。将来の稼働予測・完売見通しではない。
■ 限界・留意点
稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値であり、各施設の実稼働率とは異なる。推定成約ADRは推定値で、REIT開示実績との照合による誤差中央値は約7%。本記事が扱う2026年9〜10月はいずれも調査時点より先の日程で、数値は観測時点のスナップショットである。チェックイン日ごとに観測施設数は変動し、今後の在庫追加・価格改定・キャンセルによって値は動く。会場周辺の施設数・客室数は客室数が判明する施設に限った集計で、アクセシブルな客室の実数そのものは公表データが存在せず、制度要件と開業年次からの推論にとどまる。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ — 愛知県のOTA掲載在庫に基づく稼働率(推定)・平均価格・ブッキングカーブ(母集団513〜537施設・54,067〜54,147室、LT86断面の観測施設数366〜530施設)
- メトロエンジンリサーチ — 市区別の推定成約ADR(2026年10月、対象施設数は各市区3施設以上)
- メトロエンジンリサーチ — 施設マスターに基づく会場周辺の施設数・客室数・開業年
