本稿では、山陰4都市(鳥取・米子・松江・出雲)のホテル投資ポテンシャルを階層別に検証する。2026年1月30日に観光庁・SAN’IN観光ビジネス推進企業体が公表した「山陰(鳥取・島根)エリアマスタープラン」、および2028年6月開業予定の鳥取砂丘ラグジュアリーコレクション(108室・dhp都市開発)を起点に、4都市のADR・推定OCC・新規供給パイプライン・駅前商圏特性・既存ホテルの完売観測データを横断的に分析。私募ファンド・地銀(山陰合同銀行ほか)・運営オペレーター・地場デベロッパーの意思決定に資する定量根拠を提示する。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):OTA等で公開されている販売価格の平均値。実際の成約価格とは異なります(REIT開示データとの照合では、成約ADRより平均+25〜30%高い傾向)。2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均(素泊まり〜食事付きプランを含む)。
- OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。マクロ集計のみに使用し、個別ホテルでは在庫の室数推移と早期完売LTのみを用いる。
- LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。LT0=当日。
- 早期完売LT:残室数が初めて0室に到達したリードタイム(値が大きいほど早く完売)。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
- — 4都市ADR階層は出雲¥34,300 > 米子¥24,800 > 松江¥23,800 > 鳥取¥18,500。出雲が旅館・貸別荘で頭一つ抜け、鳥取は唯一YoYマイナス成長(-5.5%)。
- — 4都市すべてで¥20,000〜¥30,000帯(シティ・アッパーミドル)が構造的に欠落。2028年開業の鳥取砂丘ラグジュアリーコレクション登場までの過渡期に、ミドル帯リポジショニング機会が広がる。
- — 松江はYoY+19.9% × 新規供給208室(2026年8月開業)の同時進行で需給バランスに注視。GW2026の早期完売LT観測でも需給逼迫が再現。
- — 7主要REIT(インヴィンシブル/JHR/星野リゾート・リートほか)の山陰保有は0物件。機関投資家にとっての処女地で、地銀・地場デベロッパー主導の取得余地が温存。
- — 公示地価から逆算する中堅100-150室ビジネスホテル取得Cap Rateは松江6.8%・米子7.5%・出雲7.2%・鳥取8.0%レンジ。立地スコア・賃金トレンドで階層化される。
エグゼクティブサマリー — 4都市が示す価格階層と空白価格帯
2026年4月時点の4都市ADRを並べると、出雲市¥34,300(YoY+6.8%)、米子市¥24,800(YoY+9.8%)、松江市¥23,800(YoY+19.9%)、鳥取市¥18,500(YoY-5.5%)と、出雲が頭一つ抜けて高単価、鳥取が唯一マイナス成長という階層が浮かび上がる。出雲が高いのは「旅館¥43,074/18施設」と「貸別荘¥34,802/22施設」が主軸を形成しているため。一方、鳥取市は旅館13施設・¥28,996、ビジネス13施設・¥12,320と二極化しており、中間層が薄い。N=87施設(4都市合計)、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング集計。
注目すべきは、4都市いずれも¥20,000〜¥30,000帯の販売プラン数が薄いことだ。シティホテル/アッパーミドル相当のグレードが構造的に欠落しており、ラグジュアリーコレクション鳥取(2028年・¥60,000+/108室)が登場するまでの過渡期に、ミドル〜アッパーミドル帯のリポジショニング機会が広がる。さらに7主要REIT(インヴィンシブル・JHR・星野リゾート・リートほか)の山陰保有物件はゼロであり、機関投資家にとっての処女地でもある。 同様の中規模都市階層を山陽側で扱った山陽3都市ホテル投資環境比較(岡山・倉敷・姫路)では、新幹線結節と政令市集積で異なる階層が形成されており、山陰4都市の現在地を相対化する参照軸として読み合わせる価値がある。
4都市ADR月次推移 — 松江の急上昇と鳥取の足踏み
月次推移で見ると、出雲市は2025年8月¥37,800→11月¥41,151→12月¥40,948と神在月(11月)・年末で大きく跳ね、2026年5月も¥37,842と高位を維持。出雲大社(年間参拝者数約634万人・島根県観光ランキング1位)の宗教観光需要が単価形成の主軸であることが裏付けられる。松江市は2024年4月¥19,487→2026年4月¥23,813へ22.2%上昇、2026年3月以降は¥23,000台で定着し、これは2025年11月の¥24,747ピークを下支えする構造変化である。米子市は2025年11月¥29,150、2025年12月¥30,741、2026年1月¥31,209と冬季に急上昇している(プロスポーツ・キャンプ需要・大山スキー需要の三層押し上げ)。鳥取市のみ¥18,000台で横ばい、2026年2月は¥16,633まで下落しており、4都市の中で価格弾力性を確保できていない構図が見える。
カテゴリ別構成 — 出雲は旅館+貸別荘、米子は旅館+ビジネス二極
カテゴリ別の構造を見ると、米子市は「旅館¥45,763/14施設」と「ビジネス¥10,708/23施設」の落差が4.3倍と最も大きい。これは皆生温泉の温泉旅館群と米子駅前ビジネスホテル群が地理的にも需要層的にも分断しているためで、両者の中間レンジ(¥20,000〜¥30,000台のアッパーミドル)が事業性逆算の余地を残す。松江市はビジネス¥17,242/16施設の水準が4都市中最高で、温泉なし都市型ホテルでもプライシングが効いている特徴的な市場。出雲は旅館¥43,074/18施設に対しビジネス¥14,608/14施設の構造で、参拝客の宿泊需要が中規模旅館に集中している。
GW 2026 振り返り — 4都市すべてで先行完売が広域発生
2026年GW(5/3-5/5)の3日間集計では、4都市の200室前後のビジネス・シティホテルが軒並みLT30前後で早期完売を観測した。鳥取市では鳥取シティホテル(146室)が平均LT32で初完売・延べ完売51日、鳥取ワシントンホテルプラザ(163室)がLT31・延べ62日。米子市はホテル・アルファ-ワン米子(191室)がLT34、グリーンリッチホテル米子駅前(152室)がLT26.5・延べ48日。松江市はスーパーホテル島根・松江駅前(94室)、松江アーバンホテル(110室)、ホテルルートイン東松江(189室)の3軒がそろってLT34.5で先行完売。出雲市はセンチュリオンホテル&スパクラシック出雲(93室)がLT28.5、ツインリーブスホテル出雲(150室)がLT23.3。山陰4都市の中規模ビジネスホテルが、GW期間にLT30前後で在庫を売り切る構造は、ADR弾力性(さらに2-3割引き上げる余地)を示唆する。N=24-37施設/都市(OTA公開枠30%以上のみ)。
お盆 8/13-16 進行中の予約状況 — 旅館の早期完売が顕著
お盆4日間(8/13-16)の途中経過では、調査時点(2026年6月末・チェックインまで44日以上)の段階で既に小規模旅館・グランピング施設の先行完売が観測されている。鳥取市の鳥取温泉 観水庭こぜにや(25室・旅館)は平均LT75で初完売を観測。米子市の皆生温泉 旅館三井(16室)がLT89、皆生温泉 海潮園(13室)がLT78。松江市の松平閣(13室・旅館)はLT90到達かつ延べ完売85日と、観測初期から完売状態が継続。出雲市はNIPPONIA出雲大社門前町(6室・旅館)がLT90到達・OTA枠100%・延べ完売35日と、参拝動線直結の小規模リブランド施設が顕著に強い。希少性のあるカテゴリ(10-30室の上質旅館・少室高単価のリブランド町家)への需要集中が、データから明確に観測される。
4都市の駅前商圏特性 — オフィス比率が描く需要構造
| 松江駅 | 業務×観光 mix |
| 事業所1,683・office_pct 25.6%。県庁所在地として業務需要厚く、国宝松江城・宍道湖観光と二重需要。 | |
| 鳥取駅 | 業務×観光 mix |
| 事業所1,878・office_pct 24.7%。県庁所在地ながら砂丘観光は車30分圏。駅前は業務主導。 | |
| 米子駅 | 交通結節 mix |
| 事業所1,329・office_pct 13.7%。空港+境港+大山玄関口の三方向交通結節。office_pctは中程度。 | |
| 出雲市駅 | 観光主導 |
| 事業所1,283・office_pct 10.2%。出雲大社(年間約634万人)が需要の中核。業務需要は薄い。 |
4都市の駅前商圏特性を比較すると、松江駅(office_pct 25.6%)と鳥取駅(24.7%)が「業務×観光ミックス型」、米子駅(13.7%)が「交通結節型」、出雲市駅(10.2%)が「観光主導型」と明確に分類できる。これはホテル運用上、松江・鳥取は平日ビジネス需要で稼働の底を支えやすく週末は観光で乗せる二重構造、出雲は週末・神在月・お盆等のピーク偏重で稼働率の振れ幅が大きい構造であることを意味する。投資判断としては、業務型では平日OCCを8割以上で安定運営できる中規模ビジホ・シティが、観光主導型では小規模高単価旅館・リブランド町家が、それぞれ収益最大化のフォーマットになる。
山陰4都市 立地マップ — 商圏規模と4都市階層の可視化
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、各都市駅周辺商圏データ。
新規供給パイプライン — 松江208室の重み
| 施設名 | 所在地 | 客室 | 開業 | カテゴリ・備考 |
|---|---|---|---|---|
| ダイワロイネットホテル松江駅前 | 松江市 | 208 | 2026/8/6 | 大和ハウス系・山陰初出店。9タイプ客室・大浴場・サウナ・無人コンビニ・フィットネス |
| ホテルリブマックス鳥取GRANDE | 鳥取市永楽温泉町 | 195 | 2026/6/1 | 洋室7+和室10+キャビン2フロア138床。鳥取駅徒歩7分 |
| 天然温泉 湯屋天神 | 出雲市 | 38 | 2026/5/7 | 温浴施設併設型 |
| ピースINN益田駅北 | 益田市 | 35 | 2026/4/1 | 西部内陸ビジネス |
| ファーストキャビン松江 | 松江市 | 32 | 2026/1/19 | カプセル型 |
| 風の倉吉 | 倉吉市 | 11 | 2026/7/17 | 高単価少室リゾート |
| ラグジュアリーコレクション鳥取 | 鳥取砂丘西側 | 108 | 2028/6 | マリオット国内6軒目・¥60,000+想定・dhp都市開発 |
2026年の山陰新規供給で最も重いのが、ダイワロイネットホテル松江駅前(208室・8/6開業)である。山陰初出店ということは、大和ハウスグループが松江市場をビジネス×ミッドスケールセグメントの成長エリアとして再評価した意思表示と読める。これにより松江市のビジネスホテル供給は数+1施設の純増となり、現状16施設・¥17,242の単価レンジに新たな比較対象が加わる。一方、ホテルリブマックス鳥取GRANDE(195室・6/1開業済)は洋室・和室・キャビンの混合構成でインバウンド対応を全面に出した設計。鳥取市は3室タイプを単一施設に集約することで需要マルチセグメント獲得を狙う方向だ。2028年6月のラグジュアリーコレクション鳥取(108室・¥60,000+)は、山陰初の本格ラグジュアリー進出として、4都市全体の価格天井を引き上げる効果が見込まれる。出典:各社プレスリリース、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース)。
公示地価から読む取得コスト階層
| 都市 | 商業地平均 2025 | 最高地点 | 前年比 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 鳥取市 | ¥62,592/㎡ | ¥101,000/㎡(栄町) | -1.08% | 商業地レンジは4都市最高 |
| 松江市 | ¥58,409/㎡ | — | 10地点上昇 | マンション用地需要が地価を押上げ |
| 米子市 | — | 目久美町 +2.2% | +2.2%(最大上昇) | 米子駅南北通路開通効果 |
| 出雲市 | ¥37,467/㎡ | — | 6地点上昇 | 4都市中もっとも取得しやすい |
公示地価ベースで見ると、商業地平均は鳥取市(¥62,592/㎡)> 松江市(¥58,409/㎡)> 出雲市(¥37,467/㎡)の階層。出雲市が最も取得コストが低く、ADRも¥34,300と最高水準であるため、土地利回り(ADR/㎡)の観点では出雲が最良の組み合わせとなる。米子市目久美町は2025年に+2.2%と4都市最大の上昇を記録、米子駅南北通路開通による回遊性改善が背景にある。松江市は2026年4月のADRが前年比+19.9%という強い数字に対し、地価10地点上昇という需給逼迫サインが揃いつつあり、地価先行・ADR追随という典型的なリポジショニング初期局面に入っている。出典:鳥取県・島根県公示地価(2025年)、SUUMO・トチダイ。
事業性逆算 — 中堅100-150室ビジホ・シティの取得Cap Rate
4都市で空白価格帯(¥20,000〜¥30,000帯)に新規参入する場合の事業性を、保守的前提で試算した。建築費は2025年実績の鉄筋コンクリート造ホテル¥202.6万/坪(archi-book/国土交通省 建築着工統計)に2026-2028年の建設費インフレ年+5%を織り込み、開業時点で¥220-230万/坪に着地する想定。客室面積25㎡・延床70㎡/室(廊下・ロビー含む)で1室あたり延床21.2坪、建築費約¥4,400万/室。土地は¥62,592/㎡(鳥取市相当)・1,000㎡で¥63百万円、120室で総土地・建築約¥55億円。GOP率はインヴィンシブル投資法人MHM運営73物件の2024年6月期実績39.7%を参照に、新規開業初年度は保守値30%を採用。
| 項目 | 鳥取市 | 米子市 | 松江市 | 出雲市 |
|---|---|---|---|---|
| 客室数 | 120室 | 120室 | 120室 | 120室 |
| 目標ADR(空白帯) | ¥22,000 | ¥25,000 | ¥26,000 | ¥28,000 |
| 想定OCC(マクロ) | 70% | 75% | 78% | 72% |
| 年間売上 | ¥6.7億 | ¥8.2億 | ¥8.9億 | ¥8.8億 |
| GOP(30%想定) | ¥2.0億 | ¥2.5億 | ¥2.7億 | ¥2.6億 |
| 総投資額 | ¥55億 | ¥52億 | ¥55億 | ¥45億 |
| Cap Rate目安 | 3.6% | 4.7% | 4.8% | 5.8% |
| 都市部比較(東京) | 参考:東京 4.2% / 京都・大阪 4.7% / 札幌・福岡 5.0-5.5% | |||
試算結果から、出雲市は5.8%、松江・米子は4.7-4.8%と、東京(4.2%)・京都/大阪(4.7%)の主要都市比較で1.0-1.5pt程度のスプレッドを示す。出雲市はADRが¥28,000を取れる前提で利回りが大幅に厚く、観光主導×需給逼迫×地価安の三拍子で資金回収シナリオが描きやすい。一方、鳥取市はADR前提が低く土地が高いため3.6%と東京並みの利回り水準まで圧縮され、新規参入の利幅余地は限定的に見える。ただしラグジュアリーコレクション鳥取が2028年に開業すれば、鳥取エリア全体の単価天井が上がり、ミドル帯のADR弾力性も連動して引き上がる可能性がある(スピルオーバー効果)。これは2-3年後に再評価すべきアップサイドである。出典:国土交通省 建築着工統計(2024年・鉄筋コンクリート造)、インヴィンシブル投資法人 月次運営実績2024年6月期(MHM73物件)、メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。
ラグジュアリースピルオーバー — 米子・松江への波及シナリオ
既存基盤 米子・大山玄関口
米子鬼太郎空港(ソウル・台北・上海定期便)+境港クルーズ+大山スキー+皆生温泉。年間外貨獲得チャネルが揃う唯一の山陰都市。大山リゾートと連動した高級リーシングテナント誘致の素地。
第2弾候補 松江・国宝×水郷
松江城(国宝)・宍道湖・玉造温泉徒歩圏。県庁所在地の業務需要で平日稼働の底を支え、週末は観光主導。5室×1泊5万/名モデル(山陰DMOマスタープラン)がそのまま当てはまる立地。
第3弾候補 出雲・参拝動線リブランド
出雲大社年間約634万人の参拝客導線上にNIPPONIA出雲大社門前町(6室)が既に登場し、お盆8/13でLT90・OTA枠100%という早期完売を観測。町家リノベ×少室高単価フォーマットの追加投入余地。
2028年6月のラグジュアリーコレクション鳥取(108室・¥60,000+/室)開業により、山陰全域の高単価価格帯天井が一段引き上がる。これに連動する第2弾投資機会として、(1)米子・皆生温泉での温泉旅館リブランド(既存¥45,000/室 → ¥80,000/室への階段値上げ)、(2)松江・玉造温泉での高付加価値モデルのブティック旅館(山陰DMOマスタープラン2026年1月公表)、(3)出雲・大社門前町でのNIPPONIAフォーマット展開(既に1施設で実証済み)、の3シナリオが現実味を帯びる。SAN’IN観光ビジネス推進企業体(SAN’INツーリズムマネージメント株式会社設立、観光庁モデル観光地11カ所のうち1つに選定)がランドオペレーション機能を持つことも、追加供給を吸収する売上基盤として機能する見込み。出典:SAN’IN観光ビジネス推進企業体「山陰エリアマスタープラン」2026年1月30日、観光庁。
機関投資家にとっての位置づけ — 7主要REIT 0物件のホワイトスペース
主要7REIT(いちごホテルリート、インヴィンシブル、日本ホテル&レジデンシャル、ジャパン・ホテル・リート、星野リゾート・リート、森トラストリート、霞ヶ関ホテルリート)の保有物件マスター(保有関係マスター 2026年時点・N=298物件)を確認したところ、鳥取県・島根県の保有物件はゼロ件である。これは機関投資家にとって山陰がまだ意思決定対象に入っていないことを意味するが、同時に「先行者利益が確保できる未開拓市場」とも読める。
ラグジュアリーコレクション鳥取が2028年に開業し、その後、米子・松江・出雲での第2弾高単価開発が続けば、4都市のホテル取得市場は「ローカル地銀融資が中心の私募ファンド向け市場」から「J-REIT組入対象になり得るインカム型市場」へ性格変化する可能性がある。地銀(山陰合同銀行ほか)はこの過渡期に、運営オペレーターのGOP実績を蓄積させる育成融資の役割を担いやすい局面。出典:保有関係マスター(メトロエンジンリサーチ&コンサルティング集計、2026年時点)。 REIT未進出かつ需給逼迫が観測される地方エリアの取得余地を網羅したREIT未進出×需給逼迫エリアの取得余地マップでは、山陰4都市と類似する条件のエリアがGW2026完売率の観点から横並びで比較されている。
4都市の投資優先順位と次のアクション
| 優先度 | 都市 | 推奨フォーマット | 狙う収益帯 | 主なリスク |
|---|---|---|---|---|
| ★★★ | 出雲市 | 町家リノベ×少室高単価(5-15室・¥40,000-60,000) | Cap 5.8%目安 | 観光ピーク偏重・平日OCC振れ大 |
| ★★★ | 松江市 | 業務×観光ミックス型シティ(100-150室・¥25,000-30,000) | Cap 4.8%目安 | 新規供給208室の市場テスト要 |
| ★★ | 米子市 | 皆生温泉リブランド(30-80室・¥45,000-80,000)/空港隣接ビジネス | Cap 4.7%目安 | 大山リゾート需要連動・天候要因 |
| ★ | 鳥取市 | 2028年ラグジュアリー連動の周辺型(待ち戦略) | Cap 3.6%目安 | ADR前年比マイナス・利回り薄い |
4都市の投資優先順位を整理すると、現時点で最も事業性が明確なのは出雲市と松江市である。出雲はGW・お盆・神在月のピーク需要に対し小規模リブランド施設で対応する戦略、松江は2026年8月開業のダイワロイネット松江208室の市場吸収状況を見極めた上での100-150室クラス追加投入が候補となる。米子は皆生温泉のリブランドが第一手。鳥取は2028年ラグジュアリーコレクション開業前後の市況変化を1-2年間モニタリングし、スピルオーバー効果が顕在化したタイミングで参入するのが合理的な順序となる。
まとめ
山陰4都市は、2026年1月のSAN’IN観光ビジネス推進企業体マスタープラン公表と2028年6月のラグジュアリーコレクション鳥取開業を契機に、ホテル投資マーケットの構造変化期に入った。出雲市は地価・ADR・需給逼迫の三拍子で最も投資妙味があり、松江市は業務×観光ミックスの安定性で運営難度が低い。米子は大山リゾート連動の高級リブランド機会、鳥取はラグジュアリー進出のスピルオーバー受益を狙う「待ち」のポジショニングとなる。主要7REITの山陰保有が0件である現状は、ローカル私募ファンド・地銀融資中心の市場であることを意味し、運営オペレーターのGOP実績蓄積が次のJ-REIT組入余地を生み出す。4都市階層×開業シナリオの組み合わせで、山陰は今後5年で日本のホテル投資地図上で再評価される可能性が高い。 同じく機関投資家未進出の地方政令市について、規模感の異なる比較群として地方政令市「2軍」5都市のホテル投資ポテンシャルも参照すると、4都市階層フォーマットの再現性を別母集団で確認できる。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 山陰4都市(鳥取市・米子市・松江市・出雲市)のOTA公開価格データ・推定OCC(販売在庫ベース)・ブッキングカーブ(GW2026・お盆2026)・新規供給パイプライン・J-REIT保有関係マスター(7主要REIT・290物件)を横断集計。集計時点は2026年4月(ADR/OCC基準)、ブッキングカーブは観測時点。N=87施設(4都市合計)。観光庁・SAN’IN観光ビジネス推進企業体マスタープラン(2026年1月公表)、国土交通省・地価公示(2026年)を補助参照。
■ 試算前提
Cap Rate逆算は中堅100-150室ビジネスホテル/シティ想定。GOPマージンはADR連動のレンジ仮定(25-35%)、運営コストは標準オペレーター水準。取得コストは公示地価×想定容積率+建築費+設計監理費+取得諸費。早期完売LT観測は残室数が初めて0室到達したリードタイム(値が大きいほど早く完売)として定義。楽観/中位/悲観シナリオは(1)新規供給の市場吸収速度(松江208室)、(2)ラグジュアリースピルオーバーの波及範囲、(3)REIT再上場圧力の3軸で構築。
■ 限界・留意点
(1) ADRはOTA公開価格の平均で、実成約価格より+25-30%高い傾向(REIT開示データとの照合より)。実投資判断では成約ベースに割り戻すこと。(2) OCCは販売在庫ベースの推定で、実宿泊実績OCCとはセグメント比率・コミッション比率で乖離あり、マクロ集計でのみ使用し、個別ホテル判定では用いない。(3) お盆44日ローリング集計は宿泊日基準で、観測タイミングにより完売率が変動。(4) 鳥取砂丘ラグジュアリーコレクション108室の2028年開業計画は事業主体公表ベースで、開業日・室数は変更可能性あり。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — OTA公開価格データ・推定稼働率(OCC)・ブッキングカーブ・REIT保有関係マスター
■ 政府統計・公的データ
- 観光庁・SAN’IN観光ビジネス推進企業体「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり 山陰(鳥取・島根)エリアマスタープラン」(2026年1月30日)
- 国土交通省「建築着工統計調査」(2024年・坪単価データ)
- 鳥取県「地価調査・地価公示」(2025年)
- 島根県観光振興課「島根県観光動態調査結果」
- 総務省・経済産業省「経済センサス(町丁字別事業所・従業者数)」
■ REIT・業界レポート
■ 開業情報・プレスリリース
⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事のお盆2026年(8/13-16)データは2026年6月30日時点でOTAに公開されている販売価格・残室数のスナップショットであり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性、また現時点で観測されていない完売が今後広域で発生する可能性、いずれもある点にご留意ください。
