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北海道ホテル投資マップ2026|市町村別単価、倶知安1月6.2万円・札幌中央区1.6万円・函館1.0万円

投稿日 : 2026.11.07

北海道

投資・開発

北海道ホテル投資マップ2026|市町村別単価、倶知安1月6.2万円・札幌中央区1.6万円・函館1.0万円

北海道のホテル投資を市町村の単位で見ると、同じ「道内」でも単価の季節の形がまったく違う。メトロエンジンリサーチの推定成約ADRを168市区町村のうち対象施設5以上の44市区町村で集計すると、2026年9月は札幌市南区が21,900円、倶知安町が17,000円、函館市が10,300円と2倍超の開きがあり、倶知安町の2026年1月は61,600円と9月の3.6倍まで跳ねる一方、函館市の1月は7,400円と9月を下回っていた。本稿はこの44市区町村を冬型・夏型・通年型の3類型と単価の3階層に整理し、前年比・新規供給・2026年地価公示を重ねて、スキーシーズン開幕前の取得・開発判断に使える投資地図として読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

要点 — 単価は「どの月に売るか」で4倍違う

集計対象
44
市区町村(対象施設N≥5)/全168
全道ADR 2026年9月
¥11,456
前年同月比+4.5%・N=960
9月最高 札幌市南区
¥21,854
N=25・前年同月比−7.2%
倶知安町 1月/9月
3.6倍
61,574円(N=20)/16,963円(N=21)
函館市 1月/9月
0.72倍
7,416円(N=82)/10,297円(N=87)

Key Takeaways

  • 44市区町村の2026年9月推定成約ADRは中央値10,900円。上位7(15,000円以上)は札幌市南区・北広島市・積丹町・登別市・倶知安町・札幌市中央区・音更町で、温泉地と札幌都心が並ぶ。
  • 1月単価が9月の1.5倍を超える「冬型」は倶知安町・ニセコ町・小樽市・上川町の4つ、7〜8月が1.3倍超の「夏型」は富良野市・美瑛町・礼文町の3つ。残る37は季節差1.3倍未満の「通年型」で、札幌中央区・函館・旭川・釧路・帯広の都市群がここに入る。
  • 前年同月比は積丹町+43.1%(N=6)、斜里町+30.7%(N=10)、稚内市+20.8%(N=18)が上位。白老町−36.5%・美瑛町−15.9%・札幌市南区−7.2%は前年の高い水準からの調整局面にある。
  • 2026年地価公示の商業地は倶知安町+16.0%、札幌市中央区+8.0%、函館市+1.3%。単価の伸びと地価の伸びが揃う倶知安・札幌都心、単価は平坦で地価が落ち着く函館と、投資の入口の値段が3つに分かれる。
  • 札幌都心では2027〜2028年完成の建築計画494室に報道ベースの約500室が重なり、ニセコ地区は2026年9月に310室のリゾートが加わった。供給が厚くなる都心と、冬の掲載施設数が夏の4分の1に薄くなるニセコ圏では、同じ「単価上昇」でも読み方が変わる。

全道の季節カーブ — 8月12,200円・4月8,000円、冬は2月に小さな山

まずは道全体の形を押さえておきたい。北海道の推定成約ADR(対象施設の中央値)は2026年8月が12,200円(N=960)で年間の頂点、4月が8,000円(N=947)で底となり、最高月と最低月の比は1.5倍である。冬は1月10,300円・2月10,600円と4月より3割高く、札幌の雪まつりとスキー需要が2月に小さな山をつくる。前年同月比では2026年9月が11,500円と+4.5%(2025年9月は11,000円・N=912)、8月は12,200円で2025年8月の12,900円から−5.1%と、夏のピークはわずかに緩み、秋口に持ち直した。

この道全体の線は、しかし市町村ごとの形を平均でならしたものにすぎない。倶知安町の1月は道平均の6倍、函館市の1月は道平均の7割であり、同じ月の同じ道内で単価が8倍開く。投資判断は道の線ではなく、市町村の線で行う必要がある。背景にある需要面では、北海道運輸局がまとめた2026年4〜6月期の延べ宿泊者数が918.4万人泊(前年同期比−7.5%)、うち外国人が193.4万人泊(同−11.3%)と、数量は前年を下回る局面にある。数量が緩むなかで単価が前年を上回る市町村が多数を占める点が、2026年秋の北海道の特徴といえる。

北海道 推定成約ADR 月次推移(年次重ね描き・2024年9月〜2026年9月)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(対象施設の中央値、各月N=865〜960施設)。2026年10月以降は調査時点の掲載水準からの推定のため除外

市町村の階層表 — 上位7・中位20・下位17を3類型で色分けする

44市区町村を2026年9月の推定成約ADRで15,000円以上(上位)、10,000〜14,999円(中位)、10,000円未満(下位)の3階層に分け、季節の形で冬型・夏型・通年型を付けたのが次の表である。上位7のうち5つは定山渓(札幌市南区)、登別、十勝川(音更町)、倶知安、積丹といった温泉・リゾート地で、都市の区では札幌市中央区だけが16,100円(N=140)で入る。北広島市は20,900円(N=5)と高いが、対象施設数が少ないため幅をもって読みたい。

中位20には函館市(10,300円・N=87)、小樽市(14,000円・N=27)、千歳市(13,700円・N=28)、釧路市(11,500円・N=29)、帯広市(10,100円・N=35)と道内主要都市の多くが入り、ニセコ町も9月は13,800円(N=10)で中位にとどまる。下位17は旭川市(9,600円・N=37)、北見市(7,900円・N=27)、室蘭市(6,800円・N=15)など道東・道北・道央の地方都市が中心で、9月の単価では1万円を下回る。ここで重要なのは、9月の階層は1月の階層とまったく一致しないことである。ニセコ町は1月に42,300円(N=10)と倶知安町に次ぐ全道2位に上がり、上川町(層雲峡)は9月8,300円から1月12,600円へと階層を一つ上げる。

北海道 市区町村別 推定成約ADR階層表(2026年9月、対象施設N≥5の44市区町村)
階層市区町村類型9月ADRN前年同月比1月ADR(N)7月ADR
上位札幌市南区通年型21,854円25-7.2%25,604円(N=23)19,940円
上位北広島市通年型20,949円5+5.8%13,862円(N=5)17,691円
上位積丹町通年型19,614円6+43.1%—20,965円
上位登別市通年型17,690円15+1.7%23,242円(N=15)17,713円
上位倶知安町冬型16,963円21+0.7%61,574円(N=20)17,468円
上位札幌市中央区通年型16,122円140+7.2%14,921円(N=135)18,147円
上位音更町通年型15,906円9+12.3%17,944円(N=9)14,927円
中位札幌市北区通年型14,868円22+3.2%13,074円(N=21)16,484円
中位幕別町通年型14,279円5+17.1%10,845円(N=5)12,811円
中位斜里町通年型14,223円10+30.7%12,067円(N=9)15,424円
中位壮瞥町通年型13,966円6+22.9%—15,694円
中位小樽市冬型13,954円27+3.0%17,942円(N=25)19,127円
中位ニセコ町冬型13,784円10-2.1%42,306円(N=10)14,574円
中位千歳市通年型13,732円28+0.6%13,568円(N=24)16,705円
中位洞爺湖町通年型13,470円15-4.0%14,100円(N=13)14,419円
中位稚内市通年型13,362円18+20.8%7,347円(N=16)13,774円
中位新得町通年型13,118円5+19.6%11,438円(N=5)8,652円
中位富良野市夏型12,395円13+5.4%16,025円(N=11)24,458円
中位礼文町夏型11,800円6+12.2%—15,722円
中位美瑛町夏型11,628円6-15.9%17,324円(N=5)24,652円
中位釧路市通年型11,490円29+2.4%7,797円(N=31)11,044円
中位白老町通年型11,074円7-36.5%11,544円(N=6)11,742円
中位利尻富士町通年型10,688円11-11.4%—12,564円
中位苫小牧市通年型10,363円19+5.9%6,619円(N=15)13,183円
中位新ひだか町通年型10,358円7+29.0%7,559円(N=7)9,329円
中位函館市通年型10,297円87+1.0%7,416円(N=82)9,644円
中位帯広市通年型10,111円35-3.4%6,287円(N=31)9,123円
下位根室市通年型9,736円6+17.4%7,321円(N=5)9,260円
下位旭川市通年型9,550円37-2.7%10,101円(N=37)12,092円
下位弟子屈町通年型9,469円13-0.2%12,826円(N=12)10,110円
下位網走市通年型9,067円17+5.8%8,080円(N=15)9,031円
下位浦河町通年型8,380円5+7.6%7,486円(N=5)8,629円
下位岩見沢市通年型8,348円6+11.0%7,129円(N=6)8,492円
下位上川町冬型8,260円11-10.0%12,613円(N=10)8,192円
下位中標津町通年型7,953円7+11.4%7,926円(N=7)7,822円
下位北見市通年型7,859円27+7.2%6,116円(N=28)7,696円
下位北斗市通年型7,624円5+21.8%5,306円(N=6)6,766円
下位岩内町通年型7,097円5-5.0%—8,228円
下位伊達市通年型7,074円8+3.7%8,297円(N=8)7,046円
下位名寄市通年型6,882円8+2.7%7,600円(N=8)7,195円
下位室蘭市通年型6,792円15-3.7%6,336円(N=15)6,733円
下位遠軽町通年型6,452円5+17.8%5,417円(N=7)6,181円
下位八雲町通年型6,374円7-12.3%9,397円(N=7)7,553円
下位留萌市通年型6,279円5+6.4%5,094円(N=5)6,954円
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR=対象施設の中央値、税抜相当)。1月ADRは対象施設数が5未満または9月の6割未満の市町村は「—」。冬型=1〜2月の最大値が9月の1.5倍以上、夏型=7〜8月の最大値が9月の1.3倍以上、通年型=それ以外

残る124市区町村は対象施設数が5未満のため表から外した。うち4施設は東川町・占冠村・中富良野町・上富良野町・上士幌町・足寄町・羅臼町・七飯町・えりも町・羽幌町・士別市・別海町・紋別市の13、3施設は留寿都村・余市町・蘭越町・鹿追町・長沼町など14、2施設以下が97である。星野リゾート トマムを擁する占冠村や、ルスツリゾート周辺の留寿都村は冬の単価水準が倶知安町に近いと推定されるが、対象施設が4以下のため本稿では数値を示さない。

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(円の大きさ=2026年9月の推定成約ADR、色=類型。位置は各市区町村の対象施設の平均座標)

9月と1月の散布図 — 冬型・夏型・通年型はこう分かれる

横軸に2026年9月、縦軸に2026年1月の推定成約ADRを取ると、44市区町村のうち1月の対象施設数が基準を満たす39が3つの群に分かれる。右上に離れて浮くのが倶知安町(9月17,000円→1月61,600円)とニセコ町(13,800円→42,300円)で、対角線から3〜4倍上方に外れる。小樽市(14,000円→17,900円)と上川町(8,300円→12,600円)は1.5倍前後の緩やかな冬型で、小樽の2月は21,700円(N=26)と1月よりさらに高く、雪あかりの路の時期に単価が乗る。

対角線の下側、すなわち1月のほうが安い群には函館市(10,300円→7,400円)、釧路市(11,500円→7,800円)、帯広市(10,100円→6,300円)、稚内市(13,400円→7,300円)が並ぶ。これらは9月の夏旅・秋旅で単価を取り、冬はビジネス需要と道民利用で稼働を保つ型で、冬の単価は9月の5〜7割に落ちる。富良野市(12,400円→16,000円)と美瑛町(11,600円→17,300円)は1月も9月を上回るが、7月はそれぞれ24,500円・24,700円とさらに高く、夏の山が冬の山を上回るため夏型に分類した。富良野は冬も1.3倍あり、スキー場と夏のラベンダーの両方で単価が取れる、道内で唯一の二山型といえる。

9月ADR × 1月ADR 散布図(2026年、対象施設N≥5・1月N基準充足の39市区町村)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR=対象施設の中央値)。破線=1月と9月が同額の線

前年同月比 — 積丹+43%・斜里+31%・稚内+21%、調整局面は白老・美瑛・定山渓

2026年9月の推定成約ADRを2025年9月と比べると、44市区町村のうち31が前年を上回り、13が下回った。上昇幅が大きいのは積丹町(13,700円→19,600円、+43.1%、N=6)、斜里町(10,900円→14,200円、+30.7%、N=10)、新ひだか町(8,000円→10,400円、+29.0%、N=7)、壮瞥町(11,400円→14,000円、+22.9%、N=6)、北斗市(6,300円→7,600円、+21.8%、N=5)、稚内市(11,100円→13,400円、+20.8%、N=18)である。知床の斜里町と利尻・礼文の玄関口である稚内市は対象施設数が2桁あり、道東・道北の夏旅需要が単価に乗った動きとして読める。積丹・壮瞥・北斗は対象施設が5〜6と少なく、1施設の価格改定で動く幅であることを添えておく。

一方で白老町は17,400円から11,100円へ−36.5%(N=7)と大きく下げたが、2024年9月は10,300円であり、2025年9月だけが突出した高さにあった。2026年9月の水準は2024年とほぼ同じで、前年の高い水準からの調整局面と捉えるのが妥当である。美瑛町(13,800円→11,600円、−15.9%、N=6)も2024年9月の12,500円を挟んだ範囲の動きで、札幌市南区の−7.2%(23,500円→21,900円、N=25)は2024年9月の23,700円から2年続けてわずかに緩んだ形になる。利尻富士町−11.4%、上川町−10.0%、八雲町−12.3%も対象施設が7〜11と薄く、個別施設のプラン構成の違いが数字に出やすい。これらはいずれも需要の後退を示すものではなく、翌年の単価設定に余地が残っている市町村と見ることができる。

推定成約ADR 前年同月比(2026年9月/2025年9月)— 上昇上位8と下落6
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR=対象施設の中央値、括弧内は2026年9月の対象施設数)

冬型と都市型の13か月 — 倶知安は1〜2月に6万円台、札幌中央区は2月2.1万円

倶知安町の2025年9月から2026年9月までの13か月を追うと、9月16,900円から10月の13,100円をはさんで11月以降に階段状に上がり、1月61,600円(N=20)・2月63,500円(N=21)で頂点を打ち、3月29,000円を経て4月以降は再び2万円を切る。2026年1月は2025年1月の48,000円(N=21)から+28.4%、2月は53,300円から+19.1%で、冬の単価の伸びは9月の+0.7%とは別の次元にある。ニセコ町も同じ形で、1月42,300円は前年の36,300円から+16.4%である。この2町では冬120日の売上が年間の過半を占める構造になっており(冬と冬以外の稼働が同じ水準なら、2025年10月〜2026年9月の単価で倶知安町57%・ニセコ町53%。稼働の差による感度は次節で示す)、取得価格の妥当性は9月の単価ではなく1〜2月の単価と冬の稼働で決まる。

ここで注意したいのは対象施設数の季節差である。倶知安町では主要予約サイトに掲載のある施設数が2026年8〜9月の160に対し、1月は42と4分の1に減る。推定成約ADRの対象は通年で20〜24施設に保たれているため中央値そのものの連続性はあるが、冬にだけ掲載する貸別荘・コンドミニアムの大部分は推定対象の外にあり、冬の掲載価格の分布は本稿の中央値よりはるかに上に広がる。冬の数値を引用する際は「対象N=20」を必ず添え、薄いカバレッジの推定値として扱うべきである。

札幌市中央区は対照的に平坦で、9月16,100円(N=140)、1月14,900円、2月20,600円(N=137)、7月18,100円と、雪まつりの2月と夏の7〜8月に2つの小さな山をもつ通年型である。前年同月比は9月+7.2%、2024年9月の12,700円からは2年で+27%と、都心の単価は着実に階段を上がっている。函館市は9月10,300円(N=87)、1月7,400円、8月11,000円で、山は8月だけの一山型であり、2年前の9月(9,400円)からは+9.7%にとどまる。

市区町村別 推定成約ADR 月次推移(2025年9月〜2026年9月)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR=対象施設の中央値。倶知安町N=20〜24、ニセコ町N=7〜10、小樽市N=25〜27、富良野市N=11〜13、札幌市中央区N=130〜140、函館市N=80〜88)

感度分析 — 冬120日が年間売上の過半になる条件

冬型の2町について「冬120日の売上が年間の過半を占める」という見立てがどの程度の前提に依存するかを、単価の実績と稼働の仮定に分けて確かめておく。2025年10月〜2026年9月の12か月の推定成約ADRを各月の日数で重み付けすると、倶知安町は冬4か月(12〜3月・121日)が47,158円、冬以外の8か月が17,545円で2.69倍、ニセコ町は34,472円と15,290円で2.25倍である。客室数が通年で一定とみなし、冬の稼働が冬以外の何倍かを3ケースで置くと、冬4か月の売上比率は次のとおりになる。

冬4か月(12〜3月)の客室売上比率 — 稼働の3ケース(2025年10月〜2026年9月の推定成約ADRで試算)
市区町村冬4か月の単価冬以外8か月の単価単価比冬の稼働が
冬以外の0.8倍
同水準1.2倍過半に必要な
稼働比
倶知安町47,158円17,545円2.69倍52%57%62%0.75倍
ニセコ町34,472円15,290円2.25倍47%53%57%0.89倍
小樽市17,004円14,009円1.21倍33%38%42%1.66倍
富良野市15,460円13,578円1.14倍31%36%40%1.77倍
札幌市中央区15,542円13,957円1.11倍31%36%40%1.81倍
函館市7,129円9,291円0.77倍23%28%31%2.63倍
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR=対象施設の中央値、2025年10月〜2026年9月の確定12か月。対象施設数は倶知安町N=20〜24、ニセコ町N=7〜10、小樽市N=25〜27、富良野市N=11〜13、札幌市中央区N=130〜140、函館市N=80〜88)。稼働比は設例。「過半に必要な稼働比」=冬4か月の売上比率が50%に達する冬÷冬以外の稼働比。太字は50%以上

冬と冬以外の稼働が同じ水準なら、倶知安町は57%、ニセコ町は53%と、どちらも過半に届く。ただし過半を保てる下限は倶知安町で冬の稼働が冬以外の約75%、ニセコ町で約89%であり、ニセコ町の余裕は小さい。小樽市・富良野市・札幌市中央区は冬の単価が冬以外の1.1〜1.2倍にとどまり、冬の稼働が冬以外の1.7〜1.8倍ないと過半には届かないため、冬型に分類した小樽市を含めて「冬で年間を稼ぐ」構造ではない。函館市は冬の単価が冬以外を下回り、冬の売上比率は同水準の稼働で28%である。

倶知安町/ニセコ町 冬4か月の売上比率 — 冬の単価変化 × 稼働比(冬÷冬以外)の2軸感度
冬の単価(2025-26冬比)稼働比0.60.70.80.91.0
−30%36% / 32%40% / 35%43% / 39%46% / 41%48% / 44%
−20%39% / 35%43% / 39%46% / 42%49% / 45%52% / 47%
−10%42% / 38%46% / 41%49% / 45%52% / 48%55% / 50%
±0(実績)44% / 40%48% / 44%52% / 47%55% / 50%57% / 53%
+10%47% / 42%51% / 46%54% / 50%57% / 53%59% / 55%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定成約ADR、2025年10月〜2026年9月)より試算。各セルは「倶知安町 / ニセコ町」。冬の単価変化は12〜3月の4か月に一律で適用し、冬以外の単価は実績のまま。網掛け=両町とも50%以上、太字のみ=倶知安町だけ50%以上

2軸で見ると、倶知安町は冬の単価が2025-26年冬並みなら稼働比0.8で52%と過半を保つが、単価が1割下がると稼働比0.9(52%)が必要になり、2割下がると稼働比1.0でようやく52%、3割下がると稼働比1.0でも48%と過半を割る。ニセコ町は単価が実績並みでも稼働比0.9でようやく50%であり、冬の単価が1割下がると稼働が冬以外と同水準でも50%と境目に並ぶ。冬型の取得価格を1〜2月の単価で説明する場合、その単価が47,000円前後(倶知安町の冬4か月平均)から1割下振れたときに年間の売上構成がどう変わるかを、冬の稼働の見込みとあわせて確認しておく必要がある。

供給 — 札幌都心に2027〜28年で約1,000室、ニセコは2026年9月に310室

単価の地図に供給を重ねる。メトロエンジンリサーチが主要予約サイトの掲載で確認した2026年開業の道内施設は172(都道府県別で最も多い)で、客室数100以上のものは11ある。札幌都心では2026年10月にハイアット セントリック 札幌(216室)が開業し、すすきの周辺ではホリデイ・イン エクスプレス札幌すすきの(223室)とKOKO HOTEL 札幌すすきの 2nd(212室)、札幌駅前ではリージョニアbyクインテッサ 札幌駅前(175室)が加わった。千歳市では空港需要を取り込む宿泊特化型が3棟(198〜212室)開業し、ニセコ地区では2026年9月にモクシー・ニセコビレッジ(310室)がスキーイン・スキーアウトのリゾートとして営業を始めた。日本ハイアットの報道資料(2026年4月)では、札幌でさらにパーク ハイアット 札幌(157室)が2029年に予定されている。

先の計画は国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請で追える。道内で確認できる計画8件のうち、未完成は4件で、札幌市中央区南7条西5丁目の200室(2028年5月完成予定、丸紅都市開発ほか)、富良野市下御料の200室(2027年12月、ルートインジャパン)、札幌市北区北6条西6丁目の168室(2027年4月、アパグループ)、札幌市中央区南7条西4丁目の126室(2027年2月、東急不動産)である。アパグループは札幌駅北口でこの168室に加え、2027年春にアパホテル&リゾート〈札幌駅前〉(報道では約500室、予約サイト掲載では488室)の開業を予定しており、札幌駅北口だけで650室超が同時期に加わる。札幌都心の供給は2027〜2028年に建築計画494室と報道ベースの約500室を合わせて1,000室近くが重なり、中央区の単価上昇(2年で+27%)を受け止める形になる。札幌駅前再開発側のホテル床が2034年度にずれ込む見通しと駅1km圏1.05万室の通年単価は、札幌駅前再開発のホテル床の分析で整理している。

北海道 ホテル建築計画(確認申請ベース・未完成分、2026年10月時点)
所在地客室数完成予定建築主単価の文脈(2026年9月ADR)
札幌市中央区 南7条西5丁目200室2028年5月丸紅都市開発・長谷工コーポレーション・相互住宅札幌市中央区 16,122円(N=140)
富良野市 下御料200室2027年12月ルートインジャパン富良野市 12,395円(N=13)・7月24,458円
札幌市北区 北6条西6丁目168室2027年4月アパグループ札幌市北区 14,868円(N=22)
札幌市中央区 南7条西4丁目126室2027年2月東急不動産札幌市中央区 16,122円(N=140)
出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。※調査時点での確認申請ベース。今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照

富良野市の200室は、夏型市町村の供給として規模が大きい。富良野市の推定対象施設は13、主要予約サイト掲載ベースでは111施設で、7月に24,500円まで上がる単価は夏の需要が供給に対して厚いことを示す。200室の宿泊特化型が入ることで夏の単価の階段は緩やかになる可能性があるが、冬の16,000円・通年の12,400円という水準に対して、夏冬の両方で稼働を積む通年型の運営が成り立つかどうかが、富良野を二山型から通年型に変える分岐になる。

2026年地価公示 — 倶知安商業地+16.0%、札幌中央区+8.0%、函館+1.3%

投資の入口の値段である地価も、3類型で向きが異なる。2026年(令和8年)地価公示の商業地平均は、倶知安町が181,000円/㎡で前年比+16.0%、札幌市中央区が1,304,294円/㎡で+8.0%、函館市が68,234円/㎡で+1.3%である。倶知安町の商業地は2023年の+3.2%から2024年+7.7%、2025年+11.4%、2026年+16.0%と3年連続で伸び率を高め、ひらふ地区の住宅地最高地点は200,000円/㎡(+10.5%)に達した。札幌市中央区の商業地は2024年の+11.0%を頂点に+9.4%、+8.0%と伸び率がやや落ち着いたが、最高地点の南1条西4丁目は7,440,000円/㎡(+7.1%)と水準は高い。函館市の商業地は2022〜2024年の小幅な下落から2025年に+1.0%、2026年に+1.3%と上向きに転じたところである。函館駅前と五稜郭の地点別の地価の動きと道南226施設の客室ストックは、函館・道南のホテル投資適地の記事が掘り下げている。

単価と地価を重ねると、倶知安町は「1月単価+28%・商業地+16%」と両方が強く、取得の値段も毎年上がる。札幌市中央区は「9月単価+7%・商業地+8%」で足並みが揃い、函館市は「9月単価+1%・商業地+1.3%」と両方が平坦である。函館は単価の伸びしろを地価がまだ織り込んでいない市であり、2026年5月に鹿部温泉で110室のリゾートが既存施設の再生で開業したように、既存建物の取得・再生で入る余地が大きい。倶知安とニセコ町では2026年4月からの北海道宿泊税に加え、ニセコ町の宿泊税が2026年11月1日から定率3%に移行する。税の仕組みはニセコ町の宿泊税の記事で整理しているため本稿では繰り返さないが、冬4万円台の単価に対する3%は1室1,200円超であり、冬型の収支には織り込んでおく必要がある。

商業地 公示地価 前年比変動率(2022〜2026年)
出典:国土交通省「地価公示」(令和4〜8年)より作成。変動率は各地点の変動率の平均
倶知安町(冬型)
商業地平均 181,000円/㎡(+16.0%)
住宅地平均 100,666円/㎡(+11.1%)
最高地点 ニセコひらふ5条3丁目 200,000円/㎡(+10.5%)
札幌市中央区(通年型・都心)
商業地平均 1,304,294円/㎡(+8.0%)
住宅地平均 249,042円/㎡(+2.5%)
最高地点 南1条西4丁目 7,440,000円/㎡(+7.1%)
函館市(通年型・地方都市)
商業地平均 68,234円/㎡(+1.3%)
住宅地平均 39,267円/㎡(+0.1%)
最高地点 本町32-13(五稜郭公園前)181,000円/㎡(±0.0%)

投資の3パターン — 単価×季節性×供給で見る入り方

ここまでを整理すると、北海道のホテル投資は市町村の類型ごとに「何で稼ぎ、何が値段を決めるか」が違う3つの型に分かれる。

A. 冬型 — 倶知安・ニセコ・小樽・層雲峡

冬120日で年間の過半を売る設計。ただし過半を保てるのは、冬の稼働が冬以外の稼働の倶知安町で約75%、ニセコ町で約89%以上ある場合に限られる。倶知安の1〜2月は6万円台(N=20〜21)で前年比+19〜28%、商業地地価は+16%。取得価格は冬の単価と冬の稼働で決まり、夏は17,000円と札幌中央区並みの水準で埋める。2026年9月に310室が加わり、冬の掲載施設数は夏の4分の1と薄いため、冬の推定値は必ずN付きで読む。宿泊税3%(ニセコ町は11月から)を収支に織り込む。

B. 夏型 — 富良野・美瑛・礼文

7月に9月の2倍、冬も1.3〜1.5倍の二山型。富良野市は7月24,500円・1月16,000円・9月12,400円で、スキーとラベンダーの両方で単価が取れる道内で唯一の型。2027年12月に200室の宿泊特化型が入るため、夏の単価の階段は緩やかになる可能性があり、通年で稼働を積む運営が前提になる。美瑛町の−15.9%は2024年水準への回帰で、夏の単価余地は残る。

C. 通年型 — 札幌中央区・函館・釧路・帯広・旭川

季節差1.3倍未満、対象施設数が厚く推定の信頼性が高い。札幌中央区は9月+7.2%・2年で+27%、商業地+8%と単価と地価が揃って上がる一方、2027〜28年に建築計画494室と報道ベースの約500室が重なる。函館は9月+1.0%・地価+1.3%と平坦で、冬の単価が9月の7割に落ちる分、既存建物の再生や冬の需要づくりに伸びしろがある。

3つの型に共通するのは、9月の単価だけで市町村を比べると判断を誤るという点である。9月の階層で中位にあるニセコ町は1月に全道2位へ上がり、上位にある札幌市南区(定山渓)は1月も25,600円(N=23)と高いが前年比では−7.2%の調整局面にある。取得や開発の対象を決める際は、本稿の階層表にある「9月・1月・7月」の3つの単価とN、前年同月比、建築計画の有無を同じ表で並べ、さらに冬の運営コストを足して比べることを勧めたい。雪国の除雪・融雪費や冬季休館の収支については除雪・融雪費の記事と改装休館の季節設計の記事で1室あたりの金額を試算している。

集計方法と留意点

■ データソース

推定成約ADRはメトロエンジンリサーチ&コンサルティングが主要予約サイトの公開価格から算出した市区町村別の月次推定値(2024年9月〜2026年9月、北海道168市区町村)。地価は国土交通省「地価公示」(令和4〜8年)、建築計画は国土交通省「建築物動態統計調査」、新規開業は主要予約サイトの掲載確認ベース(2026年、N=172施設)、宿泊者数は北海道運輸局が公表した観光庁「宿泊旅行統計調査」の道内集計(2026年4〜6月期暫定値)、ハイアット系の開業予定は日本ハイアット株式会社「報道資料 2026年4月」による。

■ 試算前提

階層は2026年9月の推定成約ADRで15,000円以上・10,000〜14,999円・10,000円未満の3区分。類型は1〜2月の最大値が9月の1.5倍以上を冬型、7〜8月の最大値が9月の1.3倍以上を夏型、それ以外を通年型とした。各月の値は対象施設数がその月の9月比6割以上かつ5以上の場合のみ採用し、満たさない月は「—」として分類にも用いていない。前年同月比は2026年9月と2025年9月の推定成約ADRの比較である。感度分析の冬4か月の売上比率は、2025年10月〜2026年9月の各月の推定成約ADR×各月の日数×稼働の仮定で算出し、客室数は通年一定、冬(12〜3月)と冬以外の稼働はそれぞれ月によらず一定とおいた。

■ 限界・留意点

対象施設数が5未満の124市区町村は数値を示していない。冬の推定値は夏に比べ掲載施設数が大幅に少なく(倶知安町は掲載160→42)、冬だけ掲載される貸別荘等は推定対象に含まれないため、冬の掲載価格の分布は本稿の中央値より上に広がる。推定成約ADRは上場ホテルREITの開示実績との照合で誤差中央値約7%の推定値であり、各施設の実際の成約価格とは異なる。建築計画は確認申請ベースの下限値で、今後の申請で増える。地価公示の変動率は各地点の変動率の平均であり、平均地価の変動率ではない。感度分析の稼働比は設例であり、実際の稼働の推定値ではない。また市区町村の中央値で試算しているため、個別施設の売上構成とは異なる。

よくある質問

Q. 北海道でホテルの単価が最も高い市町村はどこですか。

A. 月によって変わります。2026年9月の推定成約ADRは札幌市南区(定山渓温泉)が21,900円(N=25)で最も高く、2026年1月は倶知安町が61,600円(N=20)、ニセコ町が42,300円(N=10)と冬型の2町が上位になります。対象施設が5未満の留寿都村・占冠村は本稿の表には含めていません。

Q. 冬型・夏型・通年型はどう決めていますか。

A. 1〜2月の推定成約ADRの最大値が9月の1.5倍以上なら冬型、7〜8月の最大値が9月の1.3倍以上なら夏型、どちらでもなければ通年型としています。44市区町村のうち冬型は倶知安町・ニセコ町・小樽市・上川町の4、夏型は富良野市・美瑛町・礼文町の3、通年型は37です。

Q. 倶知安町の冬の単価は信頼できますか。

A. 推定の対象施設は通年で20〜24施設に保たれており中央値の連続性はありますが、主要予約サイトの掲載施設数は夏160に対して冬42と4分の1に減ります。冬だけ掲載される貸別荘などは推定対象の外にあるため、冬の値は「対象N=20」を添えた薄いカバレッジの推定値として扱ってください。

Q. 札幌都心の新規供給はどのくらいありますか。

A. 国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請ベースでは、札幌市中央区・北区で2027〜2028年完成予定の3件・494室が確認でき、報道ではこれに加えて2027年春に札幌駅北口で約500室の開業が予定されています。2026年には216室のハイアット セントリック 札幌をはじめ、すすきの・札幌駅前で100室超の開業が相次ぎました。

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参考資料・出典一覧

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

■ 企業資料・ニュース

出典: 日本ハイアット 株式会社「報道資料 2026年4月」

データの取扱いについて:本記事の推定成約ADRは2026年9月までの確定月のみを用い、2026年10月以降の調査時点の掲載水準に基づく推定値は使用していない。冬型市町村の1〜2月の値は夏に比べ掲載施設数が少ない状態での推定であり、対象施設数(N)を併記した推定値として参照されたい。

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