箱根・強羅で、温泉地の高級宿に入る資本の形が同じ月に3つ示された。スターアジア不動産投資法人(3468)は2026年9月14日、旧閑院宮強羅別邸を裏付けとする匿名組合(TK)出資持分を1,679百万円で取得すると開示した。裏付け不動産の鑑定評価額は16,400百万円、客室42室で割ると1室あたり約390百万円(約3.9億円)になる。その10日前にはユナイテッド・アーバン投資法人(8960)が、上強羅で開発が始まる90室のホテルを持つ特定目的会社(TMK)の優先出資を引き受けると発表した。ヒルトンの開業予定リストには「LXR Hotels & Resorts(仮称)箱根強羅ホテル計画」94室(2028年開業)も載っている。本稿では、既存の名旅館と新規開発の2件に同時に入る資本の器を、開示原文とJ-REIT保有300物件、箱根町の推定成約ADRで読み解く。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。本記事では確定月(2026年8月まで)のみを使用しています。
- 1室あたり取得価格:J-REITが開示する取得価格を客室数で割った値(当社計算)。1室あたり鑑定額:鑑定評価額を客室数で割った値(当社計算)。取得価格は売買の合意額、鑑定評価額は不動産鑑定士による価格時点の評価額であり性質が異なるため、両者の並置は比較の目安です。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ、各投資法人の適時開示、国土交通省 不動産情報ライブラリ
- — 49.5%:既存の名旅館にはREITが匿名組合(TK)出資で49.5%のエクイティを持ち、ノンリコース・ローン10,000百万円(鑑定額比61.0%)が上に乗る。
- — 14.3%・2031年9月末:上強羅の新規開発90室にはREITが優先出資の約14.3%を引き受け、竣工(2028年9月予定)後から2031年9月末までの優先交渉権を得る。
- — 約16倍:1室あたり鑑定額約390百万円は、J-REIT保有ホテル国内300物件の1室あたり取得価格の中央値24.4百万円の約16倍。
- — 26,400円・+3.4%:箱根町の推定成約ADRは2025年9月〜2026年8月平均26,400円で前年比+3.4%、リゾートホテルは+9.7%と上位帯ほど伸びている。
- — 約320㎡/室:敷地1室あたり約320㎡、開示上の容積率90%という土地が同じ形の宿の新設を難しくし、2028年の184室(1.5km圏客室の約7.8%)が上位帯に加わる。
強羅で動いた3件の器 — TK出資・TMK優先出資・ブランド契約
3件は、いずれも「REITや運営会社が強羅の高級宿に関わる」話だが、使っている器が違う。スターアジア不動産投資法人の案件は、完成して営業中の旅館を信託受益権として持つ合同会社(GK)への匿名組合出資である。ユナイテッド・アーバン投資法人の案件は、土地を取得してこれから建物を建てる特定目的会社への優先出資であり、完成後に物件そのものを買う権利(優先交渉権)がついてくる。LXRの計画はヒルトンの資料に開業予定として載っているもので、ブランドと運営の側から見た動きになる。
投資家にとっての違いは、どの時点のリスクを、どの順位で持つかにある。前者は稼働中の旅館の収益に連動し、後者は竣工までの開発期間を経て、完成物件の取得判断につながる。同じ地区でこの2種類の器が同時に使われたことで、既存の高級旅館と新規の高級ホテルの両方に資金が向かう構図がはっきりした。
| 項目 | 旧閑院宮強羅別邸 | (仮)ノワ・バイ・リーガ 箱根強羅 | LXR(仮称)箱根強羅ホテル計画 |
|---|---|---|---|
| 公表主体・日付 | スターアジア不動産投資法人(2026年9月14日) | ユナイテッド・アーバン投資法人(2026年9月4日) | ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新) |
| 器 | 合同会社あかつきへの匿名組合出資 | 箱根上強羅プロジェクト特定目的会社の優先出資 | 開業予定ホテル(ブランド) |
| REITの出資額 | 1,679百万円(出資総額の49.5%) | 第1回166.5百万円・第2回77.3百万円(優先出資全体の約14.3%) | — |
| 客室数 | 42室(離れ4室) | 90室(東棟55室・西棟35室) | 94室 |
| 段階 | 営業中(建築1989年12月) | 2028年9月竣工予定(開発着手は2026年10月末予定) | 2028年開業 |
| 運営・契約 | マスターリース会社:合同会社あかつき運営(パススルー) | 株式会社ロイヤルホテルと定期建物賃貸借予約契約 | 資料に記載なし |
| 裏付け・評価 | 鑑定評価額16,400百万円(日本不動産研究所) | TMKの資産4,912.2百万円(主に土地と現預金、想定値) | 資料に記載なし |
出典:スターアジア不動産投資法人・ユナイテッド・アーバン投資法人の各適時開示、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
旧閑院宮強羅別邸 — 49.5%のTK出資とノンリコース10,000百万円
開示上の名称は「旧閑院宮強羅別邸及び付属する宿泊施設」で、施設の商号は書かれていない。ただし所在地(神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300)と、閑院宮別邸を起源とする由来は、強羅花壇の公式サイトの記載と一致する。開示は同施設を「ルレ・エ・シャトー(独立系高級ホテル・レストランの国際会員組織)加盟の日本有数の高級旅館」と紹介し、三つの源泉を生かした温泉とプールなどの施設、和室を基調とした離れや露天風呂付き客室を評価ポイントに挙げている。
資本の積み上がりを見ると、営業者である合同会社あかつきは信託受益権を持ち、その下にノンリコース・ローン10,000百万円と匿名組合出資3,392百万円が入る。匿名組合出資の内訳は、エムエル・エステート株式会社1,679百万円、スターアジア不動産投資法人1,679百万円、スターアジアグループ33百万円である。スターアジア不動産投資法人はサブスポンサーであるエムエル・エステートのブリッジスキームを活用したと説明しており、エクイティの半分を先に持つ形になる。ノンリコース・ローンを鑑定評価額で割ると61.0%(当社計算)で、残りの約39%がエクイティ側の余裕として働く。
出典:スターアジア不動産投資法人「第13回資産入替」(2026年9月14日)、ユナイテッド・アーバン投資法人「国内資産の取得に関するお知らせ」(2026年9月4日)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。TMKの構成は第1〜2回時点の想定値
担保の状況も開示されている。信託受益権には、ノンリコース・ローンのシニア貸付人を第一順位、メザニン貸付人を第三順位とする質権が設定されている。つまりこのローンはシニアとメザニンの2層で組まれており、匿名組合出資はその下に位置する。匿名組合契約の有効期間は2045年4月末日まで、計算期間は3か月ごとで、マイナスの損益は出資割合に応じて匿名組合員に配分され、出資額を上回る部分は営業者が負う。REIT側から見れば、下振れは出資額1,679百万円までに限られる一方、旅館の収益の伸びは出資割合に応じて取り込める構造である。
スターアジア不動産投資法人は、今回の資産入替の狙いとして「宿泊需要の拡大余地のある高級旅館」への投資による内部成長を挙げている。同時に大阪の宿泊特化型ホテルを取得し、築10年超の大阪のホテルを譲渡する入替であり、高級旅館は現物ではなく出資持分で組み入れた。月額賃料は営業者の同意が得られていないとして非開示である。
上強羅の開発TMK — 優先出資14.3%と2031年9月までの優先交渉権
ユナイテッド・アーバン投資法人の案件は、開発前の段階で入る器である。箱根上強羅プロジェクト特定目的会社は2026年9月30日付で開発予定地を取得し、同年10月末からホテルの開発に着手する予定だ。計画はレストラン・バーラウンジ・大浴場からなる北棟と、客室棟の東棟(55室)・西棟(35室)の3棟構成で、全室に露天風呂を備え、テラスを含めて50㎡以上の客室になる。箱根登山ケーブルカー「上強羅」駅から徒歩1分の立地で、土地は9,359.78㎡、建物は10,104.86㎡(鉄筋コンクリート造地下1階地上4階建ほか)と開示されている。
TMKの資金構成(第1〜2回時点の想定値)は、資産4,912.2百万円に対し、シニアローン2,957.9百万円、メザニンローン116.7百万円、消費税ローン134.6百万円、優先出資1,703百万円である。シニアとメザニンの合計を資産で割ると62.6%(当社計算)になる。資産の大半は土地と現預金であり、建物の工事代金は2027年9月末と2028年8月末に予定される優先出資の追加発行などで調達される。ユナイテッド・アーバン投資法人の引受額は第1回と第2回の合計で243.8百万円、優先出資全体の約14.3%である。
| 時期(予定) | 内容 |
|---|---|
| 2026年9月末 | ユナイテッド・アーバン投資法人が第1回優先出資を取得、優先交渉契約を締結 |
| 2026年10月末 | 優先出資の追加発行(第2回)。同月末から開発に着手 |
| 2027年9月末 | 優先出資の追加発行(第3回)予定 |
| 2028年8月末 | 優先出資の追加発行(第4回)予定 |
| 2028年9月 | 建物竣工予定。TMKの賃料発生は2029年1月予定 |
| 2028年9月頃〜2031年9月末 | ユナイテッド・アーバン投資法人が優先交渉権を行使可能 |
出典:ユナイテッド・アーバン投資法人「国内資産の取得に関するお知らせ(箱根上強羅プロジェクト(ホテル開発)特定目的会社 優先出資証券)」(2026年9月4日)
開業時期については、運営する株式会社ロイヤルホテルが2026年9月4日付のプレスリリースで「2028年12月末頃」と発表しており、2028年2月開業予定の「ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬」(93室)に続くブランド2軒目となる。開示上の竣工予定(2028年9月)から開業準備期間を経て営業に入る流れである。優先交渉権は取得義務を伴わず、売買価格は売上実績や金融環境を踏まえて協議で決める。開業後に実績を見てから買うかどうかを判断できる点が、この器の持つ選択肢の価値である。
1室あたり約3.9億円の鑑定額は、REIT保有300物件のどこに位置するか
J-REIT保有物件データ(当社集計、2026年9月21日時点、一部物件は2026年7月27日・9月14日時点)で、ホテルREIT 7法人が保有する国内ホテルのうち取得価格と客室数がそろう300物件を集計すると、1室あたり取得価格の中央値は24.4百万円だった。上位25%の境界は約40.6百万円、上位10%の境界は約66.5百万円で、100百万円を超える物件は16件にとどまる。集計対象の7法人は、いちごホテルリート投資法人(3463)、インヴィンシブル投資法人(8963)、日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、森トラストリート投資法人(8961)、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A)である。
出典:J-REIT保有物件データ(当社集計、2026年9月21日時点、N=300物件・国内のみ)、スターアジア不動産投資法人の適時開示よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
集計対象の300物件で1室あたり取得価格が最も高いのは、森トラストリート投資法人が保有するシャングリ・ラ 東京の246.0百万円(49,200百万円/200室)である。同じ強羅にあるジャパン・ホテル・リート投資法人の「箱根強羅温泉 季の湯 雪月花」は4,070百万円/158室で25.8百万円、星野リゾート・リート投資法人の「界 箱根」は950百万円/34室で27.9百万円と、いずれも全体の中央値に近い。旧閑院宮強羅別邸の1室あたり鑑定額約390百万円は、取得価格と鑑定額の違いを踏まえた比較の目安としても、集計対象のどの物件より高い位置にある。業態別に見た1室あたり取得額の分布は、REITの1室あたり取得額は旅館が最高4,960万円 — 業態別285物件の再集計で詳しく分析している。
出典:J-REIT保有物件データ(当社集計、2026年9月21日時点)、スターアジア不動産投資法人の適時開示よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。取得価格(REIT保有物件)と鑑定額(旧閑院宮強羅別邸)は性質が異なるため比較の目安
この差は、同じ温泉地でも宿の形がまったく違うことを示している。雪月花は158室の規模で幅広い客層を受け止める宿であり、旧閑院宮強羅別邸は42室を約1.3haの敷地に配した宿である。1室あたりで割った価格は、単価と客室あたりの土地・建物の厚みをそのまま映す。
| 還元利回りの前提 | 1室あたり年間NOI | 1室1日あたりNOI(365日) |
|---|---|---|
| 3.5% | 13.7百万円 | 約37,400円 |
| 4.0% | 15.6百万円 | 約42,800円 |
| 4.5% | 17.6百万円 | 約48,100円 |
出典:スターアジア不動産投資法人の適時開示(鑑定評価額16,400百万円・42室)をもとにメトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。還元利回りは開示されていないため仮定値。NOIは不動産としての純収益であり、客室売上ではない
鑑定額を1室あたりNOIに引き直すと、還元利回り4.0%の前提で1室1日あたり約42,800円の純収益が必要になる。これは客室売上ではなく、運営費用や賃料体系を差し引いたあとの不動産収益である。箱根町全体の推定成約ADR(後述、約26,400円)を大きく上回る水準であり、この価格は町の平均単価ではなく、最上位の単価帯と料飲・温泉を含めた滞在単価を前提にしていると読める。REIT保有ホテルの鑑定評価額と還元利回りの分布については、ホテルREIT鑑定評価額、取得価格の1.25倍 — 298物件の還元利回り分布が掘り下げている。
| 還元利回り\NOI率 | 25% | 30% | 35% | 40% |
|---|---|---|---|---|
| 3.5% | 約149,800円 | 約124,800円 | 約107,000円 | 約93,600円 |
| 4.0% | 約171,200円 | 約142,600円 | 約122,300円 | 約107,000円 |
| 4.5% | 約192,600円 | 約160,500円 | 約137,500円 | 約120,400円 |
出典:スターアジア不動産投資法人の適時開示(鑑定評価額16,400百万円・42室)をもとにメトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算。必要総売上=表3の1室1日あたりNOI÷NOI率。販売可能客室1室・1日あたり(全日・全室販売換算)で、料飲・温泉等の付帯売上を含む。還元利回り・NOI率はいずれも開示されていないため仮定値。網掛けは中位ケース
NOIを総売上に引き直すには、総売上のうちどれだけがNOIとして残るか(NOI率)の仮定が要る。還元利回り4.0%・NOI率30%の中位ケースでは、販売可能な1室・1日あたり約142,600円の総売上が必要になる(表4)。最も緩い組合せ(還元利回り3.5%・NOI率40%)でも約93,600円、厳しい組合せ(4.5%・25%)では約192,600円である。後述する強羅周辺1.5km圏の推定成約ADRの上位10%の境界は64,700円で、中位ケースの必要総売上はその約2.2倍に当たる。ADRは販売した客室あたりの宿泊単価、表4は全日・全室販売換算の付帯売上込みの値であり定義が異なるため直接の比較はできないが、客室単価だけでは届かず、料飲・温泉を含む滞在単価と高い稼働の両方がそろって初めて成り立つ水準であることが分かる。
箱根町の推定成約ADRは26,400円、前年比+3.4% — リゾートは+9.7%
メトロエンジンリサーチのデータによると、箱根町の推定成約ADRは2025年9月〜2026年8月の12か月平均で26,400円(N=170〜187施設)だった。前年の同じ12か月(2024年9月〜2025年8月)の25,500円に対して+3.4%である。月別では2025年11月(28,900円)、2026年3月(28,800円)、2026年8月(28,200円)が高く、梅雨の2026年6月(22,700円)が低い。紅葉期・春休み・夏休みに単価の山がくる温泉地らしい形が、2年続けて同じ位置に出ている。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(箱根町・全業態、N=170〜193施設、確定月のみ)
業態別に分けると伸び方に差がある。リゾートホテルは12か月平均33,700円で前年比+9.7%、旅館は25,600円で+2.5%だった。リゾートの対象は27〜29施設と少ないが、上位の単価帯ほど伸びている方向性は、高級宿に資本が向かう今回の動きと重なる。
| 業態 | 2024/9〜2025/8 | 2025/9〜2026/8 | 前年比 | N(直近12か月) |
|---|---|---|---|---|
| 全業態 | 25,500円 | 26,400円 | +3.4% | 170〜187施設 |
| 旅館 | 25,000円 | 25,600円 | +2.5% | 138〜155施設 |
| リゾートホテル | 30,700円 | 33,700円 | +9.7% | 27〜29施設 |
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
2028年に加わる184室と、強羅周辺1.5km圏の単価帯
2028年には、上強羅の90室とLXRの計画94室を合わせて184室が加わる計算になる。旧閑院宮強羅別邸の所在地点を中心とする半径1.5km圏で、メトロエンジンリサーチが直近12か月のうち6か月以上販売を確認できた施設は104施設・2,366室(各施設の登録客室数を合算)であり、184室はその約7.8%に当たる。LXRの計画は、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)の開業予定リストに「LXR Hotels & Resorts(仮称)箱根強羅ホテル計画」として94室・2028年開業と記載されている。資料に所在地の詳細はないため、地図には上強羅の計画地のみを示した。
① 旧閑院宮強羅別邸(42室) ② 箱根強羅温泉 季の湯 雪月花(158室、ジャパン・ホテル・リート投資法人保有) ③(仮)ノワ・バイ・リーガ 箱根強羅の計画地(上強羅駅付近、90室) 灰色の円:半径1.5km圏で販売を確認した宿泊施設(円の大きさは客室数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、各投資法人の適時開示。上強羅の計画地は駅位置による概略位置
同じ1.5km圏で推定成約ADRが確認できる64施設の分布を見ると、中央値は27,200円、上位25%の境界は43,200円、上位10%の境界は64,700円である。50,000円以上の帯には12施設がある。新たに加わる2件は、全室露天風呂付き・50㎡以上の客室(上強羅)とラグジュアリーブランド(LXR)であり、既存の上位帯の厚みを増やす方向の供給になる。箱根全体で高単価の新規供給がどの価格階層に入るかは、箱根の秋冬に積み上がる高単価供給 — 126室が入る価格階層を読むも参考になる。
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成(半径1.5km圏、2025年9月〜2026年8月のうち6か月以上推定値がある64施設の12か月平均)
低容積の土地が守る希少性 — 敷地1室あたり約320㎡
旧閑院宮強羅別邸の敷地は13,431.75㎡で、開示上の用途地域は第一種住居地域、建蔽率/容積率は30%/90%である。延床面積9,698.21㎡(登記上9棟の合計)を敷地で割ると約72%(当社計算)になる。1室あたりに直すと、敷地は約320㎡、延床は約231㎡に達する。上強羅の計画は1室あたり敷地約104㎡・延床約112㎡であり、同じ強羅でも前者が際立って土地を厚く使っている。
国土交通省の不動産情報ライブラリで同地点の用途地域を確認すると、第一種住居地域(指定建蔽率60%・容積率200%)と表示される。開示上の30%/90%はこの指定値を下回っており、開示は差の理由を記載していない。箱根町はほぼ全域が富士箱根伊豆国立公園の区域にあり、都市計画に加えて自然公園法の規制を受ける地域である(箱根町)。いずれにせよ、強羅で同じ規模の敷地を新たにまとめ、離れを含む低層の宿を建てることは容易ではなく、この点が既存の宿の資産価値を支える希少性として働く。
| 項目 | 旧閑院宮強羅別邸 | (仮)ノワ・バイ・リーガ 箱根強羅 |
|---|---|---|
| 敷地面積 | 13,431.75㎡ | 9,359.78㎡ |
| 延床面積 | 9,698.21㎡ | 10,104.86㎡ |
| 客室数 | 42室 | 90室 |
| 敷地/室 | 約320㎡ | 約104㎡ |
| 延床/室 | 約231㎡ | 約112㎡ |
| 用途地域(不動産情報ライブラリ) | 第一種住居地域 | 第一種住居地域(上強羅駅付近) |
| 構造 | RC造 地下7階付2階建(主要建物) | RC造 地下1階地上4階建ほか |
出典:各投資法人の適時開示、国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
災害リスクの確認 — PML14.8%、土砂災害警戒区域、箱根山
地震リスクについて、スターアジア不動産投資法人は旧閑院宮強羅別邸のPML値を14.8%(従業員寮も14.8%)と開示している。土砂災害については、不動産情報ライブラリで強羅周辺を確認すると、強羅・木賀・二ノ平などの斜面に土砂災害警戒区域・特別警戒区域が多数指定されている(同一図郭内で113区域)。一方、旧閑院宮強羅別邸と上強羅駅付近の代表地点は、いずれの区域にも含まれていなかった。敷地全体の判定は、各敷地の境界で個別に確認する必要がある。
火山については、気象庁は箱根山に噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)を発表している。箱根町は2019年5月19日から10月7日まで噴火警戒レベルが引き上げられた期間の対応を報告書にまとめており、この期間は大涌谷周辺で立入規制が敷かれた。投資家にとっては、火山活動の変化が宿の建物ではなく周辺の観光動線を通じて需要に効く点を、保険とあわせて織り込むことが実務上のポイントになる。
投資家の読み方 — 出資比率・優先交渉権・ノンリコース
出資比率を見る
TK出資49.5%は、完成した旅館の収益にREITが大きく参加する形。優先出資14.3%は、開発期間中の関与を小さく保ちながら取得の入口を確保する形。比率の差は、どの段階のリスクを持つかの差である。優先交渉権を見る
上強羅の優先交渉権は2028年9月頃から2031年9月末まで。取得義務はなく、開業後の売上実績を見て判断できる。開発型物件を実績とともに組み入れる選択肢である。ノンリコースを見る
旧閑院宮強羅別邸はノンリコース・ローン10,000百万円(鑑定額比61.0%)がシニアとメザニンの2層で入る。REITの下振れは出資額が上限で、収益の伸びは出資割合で取り込む。地銀の不動産ファイナンス担当から見ると、2件はいずれも営業者(GK・TMK)へのノンリコース融資であり、返済原資は物件の収益に限られる。旧閑院宮強羅別邸では、シニア・メザニン・TKの3層に分かれた資本構成が開示されたことで、高級旅館の案件でも層別にリスクを分けて資金を集められることが示された。旅館オーナーにとっては、所有権を手放さずに外部資本を入れる方法として、あるいは将来の売却先の器として、GK-TKとTMKの両方がすでに温泉地で使われている事実が参考になる。
アクイジション担当にとっての論点は、1室あたりの価格帯が一般的なホテルと別の水準にあることだ。REIT保有ホテルの1室あたり取得価格の中央値24.4百万円を基準に考えると、42室の高級旅館の鑑定額は16倍の水準になる。この価格を支えるのは客室数ではなく、敷地の広さと単価の上位帯であり、同じ地区で184室の高級供給が2028年に加わった後も、その上位帯がどこまで厚くなるかが次に見るべき指標になる。
よくある質問
Q. 強羅の高級旅館にREITはどのような形で投資したのですか?
A. スターアジア不動産投資法人は、旧閑院宮強羅別邸を信託受益権として持つ合同会社あかつきへの匿名組合出資持分を1,679百万円(出資総額の49.5%)で取得しました。物件そのものではなく、営業者への出資を通じて収益に参加する形です。
Q. 1室あたり約3.9億円という数字はどう計算していますか?
A. 鑑定評価額16,400百万円を客室数42室で割った当社計算値です。J-REIT保有ホテルの1室あたり取得価格の中央値24.4百万円(国内300物件)とは性質が異なるため、比較の目安として示しています。
Q. 上強羅の新しいホテルはいつ開業しますか?
A. ユナイテッド・アーバン投資法人の開示では2028年9月竣工予定、運営する株式会社ロイヤルホテルの発表では2028年12月末頃の開業予定です。全90室で、全室に露天風呂を備えます。
Q. 優先交渉権とは何ですか?
A. 物件の売買契約を優先的に交渉できる権利です。上強羅の案件では、建物の引渡しを受けた日(2028年9月頃予定)から2031年9月末日まで有効で、取得義務は伴いません。価格は売上実績や金融環境を踏まえて協議で決まります。
まとめ
強羅では2026年9月、営業中の高級旅館に匿名組合出資で入る器と、開発中のホテルに優先出資で入る器が相次いで示された。旧閑院宮強羅別邸の1室あたり鑑定額約390百万円は、J-REIT保有ホテルの1室あたり取得価格の中央値24.4百万円の約16倍であり、敷地1室あたり約320㎡という土地の厚みと最上位の単価帯がその水準を支えている。箱根町の推定成約ADRは12か月平均26,400円で前年比+3.4%、リゾートホテルは+9.7%と上位帯ほど伸びている。2028年には上強羅の90室とLXRの計画94室が加わり、高級帯の選択肢が広がる。温泉地の高級宿は、出資持分・優先出資・優先交渉権を組み合わせることで、REITや地銀が段階ごとに関われる投資対象になりつつある。
注記:本記事のADRは推定値(REIT開示実績との照合で誤差中央値約7%)です。REIT開示の成約ADRは消費税抜き表示で、本記事の推定成約ADRも税抜相当の水準です。開発計画の数値(竣工時期・資金構成・客室数)は各開示・資料の日付時点の予定・想定値であり、今後変更される可能性があります。還元利回りを用いた試算は仮定に基づく参考値です。
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- シニア60%+メザニン15%で旅館改装のIRRは9.2%、宿泊特化型17.6% — 劣後層が効く条件
- ホテル取得の借入可能額、100室30億円でLTV57〜63% — 金利2.0%なら価格上限28.4億円
- REITの1室あたり取得額は旅館が最高4,960万円 — 業態別285物件の再集計
- ホテルREIT鑑定評価額、取得価格の1.25倍 — 298物件の還元利回り分布
- 箱根の秋冬に積み上がる高単価供給 — 126室が入る価格階層を読む
参考資料・出典一覧
■ データソース
スターアジア不動産投資法人(2026年9月14日)・ユナイテッド・アーバン投資法人(2026年9月4日)の適時開示、株式会社ロイヤルホテルのプレスリリース(2026年9月4日)、ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)。市場データはメトロエンジンリサーチの推定成約ADR(箱根町・全業態/旅館/リゾートホテル、確定月2024年9月〜2026年8月、N=170〜193施設)、強羅周辺1.5km圏の販売確認施設(104施設・2,366室、推定成約ADRは64施設)、J-REIT保有物件データ(ホテルREIT 7法人・国内300物件、2026年9月21日時点)。用途地域・土砂災害警戒区域は国土交通省 不動産情報ライブラリ。
■ 試算前提
1室あたり鑑定額=鑑定評価額16,400百万円÷42室、1室あたり取得価格=取得価格÷客室数。表3の1室あたりNOI=1室あたり鑑定額×還元利回り(3.5〜4.5%の仮定値)、1日あたりは365日で除算。表4の必要総売上=1室1日あたりNOI÷NOI率(25〜40%の仮定値)。ローン比率=ノンリコース・ローン10,000百万円÷鑑定評価額、TMKは(シニア+メザニン)÷資産4,912.2百万円(第1〜2回時点の想定値)。1.5km圏は旧閑院宮強羅別邸の所在地点を中心とし、直近12か月のうち6か月以上販売を確認できた施設。箱根町の推定成約ADRは月次値の12か月単純平均。
■ 限界・留意点
推定成約ADRは推定値(REIT開示実績との照合で誤差中央値約7%)で、税抜相当・1室あたりの宿泊単価であり、付帯売上を含む総売上とは定義が異なる。鑑定評価額と取得価格は性質が異なるため、1室あたりの並置は目安である。還元利回り・NOI率は開示されておらず仮定値。開発計画の竣工時期・資金構成・客室数は各開示日時点の予定・想定値で変更されうる。1.5km圏の施設数は販売確認ベースで、休業中・非掲載の施設を含まない。用途地域・土砂災害警戒区域は代表地点での確認であり、敷地全体の判定ではない。
■ 適時開示・資料
- スターアジア不動産投資法人「国内不動産信託受益権及び匿名組合出資持分の取得並びに国内不動産信託受益権の譲渡(第13回資産入替)に関するお知らせ」(2026年9月14日)
- ユナイテッド・アーバン投資法人「国内資産の取得に関するお知らせ(箱根上強羅プロジェクト(ホテル開発)特定目的会社 優先出資証券)」(2026年9月4日)
- 株式会社ロイヤルホテル「ノワ・バイ・リーガ 箱根強羅」2028年12月開業(2026年9月4日)
- ヒルトン「会社概要」(2026年8月25日更新)
- 強羅花壇 公式サイト
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 用途地域・土砂災害警戒区域
- 箱根町「都市計画(用途地域など)について」
- 気象庁「火山活動の状況(箱根山)」
- 箱根町「箱根山の噴火警戒レベル引き上げへの対応に関する報告書」(2020年3月)
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(箱根町N=170〜187施設、強羅周辺N=64施設)、J-REIT保有物件データ(国内300物件、2026年9月21日時点)
