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ホテル客室数の平均は1施設31.7室・人口千人あたり14.5室 — 47都道府県で沖縄47.2室、埼玉3.7室

投稿日 : 2026.11.06

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エリア・施設分析

ホテル客室数の平均は1施設31.7室・人口千人あたり14.5室 — 47都道府県で沖縄47.2室、埼玉3.7室

「ホテルの客室数は平均どれくらいか」という問いに、公的統計で答えるとこうなる。厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」(2026年3月末現在、2026年10月27日公表)によれば、旅館業法上の旅館・ホテル営業は全国56,773施設・1,797,781室で、1施設あたりの平均客室数は31.7室、総務省「人口推計」(2024年10月1日現在)の総人口12,380万人で割った人口1,000人あたり客室数は14.5室だった。都道府県別に見ると、この「宿泊需要の受け皿の厚さ」は沖縄県の47.2室から埼玉県の3.7室まで10倍以上の開きがある。本稿では47都道府県の客室密度を地図と表で整理し、メトロエンジンリサーチの2026年9月推定稼働率・推定成約ADR、観光庁「宿泊旅行統計調査」の延べ宿泊者数と重ねて、どの県に供給余地が残り、大都市近郊県の宿泊需要がどこへ流れているのかを読み解く。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
本稿で用いる公的統計の定義
• 客室数・施設数=厚生労働省「衛生行政報告例」の旅館業法に基づく「旅館・ホテル営業」の施設数・客室数(年度末現在)。最新は令和7年度(2026年3月31日現在)で、比較に用いる前年度は令和6年度(2025年3月31日現在)。簡易宿所営業・下宿営業は含まない。
• 人口=総務省「人口推計」2024年10月1日現在の総人口(令和2年国勢調査基準)。客室の基準日(2026年3月末)とは約1年半のずれがある点に留意。
• 客室密度=人口1,000人あたり客室数(客室数÷総人口×1,000)。客室の平均規模=客室数÷施設数。
• 延べ宿泊者数=観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年1〜12月(年の確定値)、従業者数10人未満の施設を含む全施設集計。
• 推定稼働率は2026年9月のOTA掲載在庫ベースの推定値で、対象は主要予約サイト掲載の11,747施設/客室755,381室(46都道府県合計)。
Key Takeaways
  • — 1施設平均31.7室:厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」(2026年3月末現在)の旅館・ホテル営業は全国56,773施設・1,797,781室。施設数+7.2%に対し客室数+1.0%で、平均規模は前年度の33.6室から縮小した。
  • — 人口1,000人あたり14.5室:客室密度は沖縄県47.2室・山梨県34.4室・長野県31.9室が厚く、埼玉県3.7室・神奈川県6.4室・奈良県8.0室が薄い。上下の差は10倍以上ある。
  • — 密度と稼働・単価の相関は弱い:客室密度と2026年9月の推定稼働率の相関係数は0.05、推定成約ADRとは0.17。需給と単価を決めるのは県に来る需要の質と季節性である。
  • — 近郊県の薄さは需要流出の結果:2025年の人口1人あたり延べ宿泊者数は東京都7.61人泊に対し埼玉県0.74人泊、京都府13.16人泊に対し奈良県2.47人泊。宿泊は隣接大都市側に置かれている。
  • — 平均規模は大阪73.7室〜沖縄16.1室:開発規模や競合比較は全国平均ではなく県別の平均規模を基準にしたい。東京都は小規模施設の許可増で36.3室から26.8室へ縮んだ。

全国の平均像 — 1施設31.7室、人口1,000人あたり14.5室

まず全国の輪郭を押さえておきたい。令和7年度末の旅館・ホテル営業は56,773施設・1,797,781室で、前年度末(52,946施設・1,780,679室)から施設数は+7.2%、客室数は+1.0%と、施設の増え方が客室の増え方を大きく上回った。この結果、1施設あたり平均客室数は33.6室から31.7室へ約2室小さくなっている。年度中の営業許可件数は全国10,012件(前年度7,720件)、廃止は3,489件で、小規模な許可取得が供給の裾野を広げた1年だったと読める。前年度(令和6年度)の許可7,720件・廃止2,817件を県別に分解し、客室が純減した県を数えたネット供給の構造は、旅館業98,338施設、客室が純減した県は30 — 許可7,720件・廃止2,817件のネット供給で詳しく分析している。

「ホテルの客室数の平均」を聞かれたときの答えは、この31.7室が公的統計上の基準値になる。ただし、この数字は旅館業法の許可単位で数えた施設の平均であり、小規模な旅館や一棟貸しの施設、簡易宿所から旅館・ホテル営業へ切り替えた施設まで含む。チェーン系の宿泊特化型ホテルが100〜200室規模であることと矛盾するわけではなく、母集団の広さがそのまま平均値を押し下げている。都道府県別の平均規模は後段で詳しく見るが、大阪府の73.7室から沖縄県の16.1室まで4倍以上の差があり、「平均」は地域によってまったく違う顔を持つ。

一方で人口1,000人あたり客室数14.5室は、宿泊需要の受け皿の厚さを県どうしで比べるための物差しである。人口が多い県は域内の出張・帰省需要も大きいため、絶対客室数ではなく人口で正規化することで、観光地型の県がどれだけ「外からの需要」を受け止める構造になっているかが見えてくる。

47都道府県の客室密度 — 沖縄47.2室・山梨34.4室・長野31.9室が厚く、埼玉3.7室・神奈川6.4室・奈良8.0室は薄い

人口1,000人あたり客室数の上位は、沖縄県47.2室(69,200室)、山梨県34.4室(27,239室)、長野県31.9室(63,474室)の順で、以下に石川県26.3室、北海道23.8室が続く。いずれも県外・国外からの観光需要を主軸とする地域で、沖縄県は全国平均の3倍を超える厚さを持つ。石川県が北海道を上回って4位に入るのは、能登・加賀の温泉地と金沢市のビジネス・観光需要が人口規模に対して大きいためだろう。

反対に下位は埼玉県3.7室、神奈川県6.4室、奈良県8.0室、兵庫県8.8室、愛知県9.1室で、千葉県10.0室、茨城県10.2室、滋賀県10.9室も全国平均を下回る。東京都は219,461室と客室数では全国最大ながら、人口1,400万人超で割ると15.5室と全国中央値(15.9室)に近い水準に収まる。大阪府も14.6室とほぼ全国平均で、大都市は「客室が多い」のではなく「人口も多い」構造だと分かる。

出典:厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」(2026年3月末現在)、総務省「人口推計」(2024年10月1日現在)よりホテルバンク編集部作成

地図で見ると、密度の厚い県は沖縄、甲信(山梨・長野)、北陸(石川・福井)、北海道、東北の日本海側、九州の大分と、いずれも観光・温泉のデスティネーションに分布している。薄い県は首都圏と近畿圏の近郊県、中京圏の愛知県に集中しており、大都市のベッドタウンほど「泊まる場所」が少ない。これは需要が小さいからではなく、隣接する大都市の客室がその需要を吸収しているためで、この構造は後段の延べ宿泊者数で裏づける。

円の大きさ=人口1,000人あたり客室数(県庁所在地に配置)。出典:厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」(2026年3月末現在)、総務省「人口推計」(2024年10月1日現在)よりホテルバンク編集部作成。

客室密度 × 9月推定稼働率 — 密度が薄くても稼働が高い県に供給余地

客室の厚さは、それ自体では需給を語らない。そこで横軸に客室密度、縦軸にメトロエンジンリサーチの2026年9月推定稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)を置いた散布図を作った。対象は46都道府県(主要予約サイト掲載の11,747施設/客室755,381室)で、都道府県別の施設数・客室数は本稿末尾の表に示す。2つの指標の相関係数は0.05と、客室が厚い県ほど稼働が低い、あるいは高いという関係はほとんど見られない。9月の稼働は密度よりも、その県の需要の季節性と来訪者構成で決まっていると読める。

注目したいのは、密度が全国中央値(15.9室)を下回りながら稼働が中央値(84.6%)を上回る県である。該当するのは愛知県(密度9.1室・稼働90.4%)、東京都(密度15.5室・稼働89.8%)、広島県(密度12.3室・稼働88.5%)、福岡県(密度13.1室・稼働88.3%)、岐阜県(密度14.3室・稼働88.1%)、宮城県(密度14.6室・稼働87.9%)、高知県(密度15.7室・稼働86.9%)、兵庫県(密度8.8室・稼働86.3%)、滋賀県(密度10.9室・稼働85.7%)、岡山県(密度11.8室・稼働85.1%)、埼玉県(密度3.7室・稼働84.7%)で、いずれも「泊まる場所が人口比で少ないのに、ある客室は9月によく埋まっている」状態にある。愛知県は密度9.1室と下位5県に入りながら稼働90.4%と全国上位で、名古屋都心のビジネス需要と2026年のアジア競技大会関連需要が重なったとみられる。福岡県(13.1室・88.3%)、広島県(12.3室・88.5%)も同じ象限に位置し、地方中枢都市の稼働の高さが浮かび上がる。

逆に密度が厚い県でも、沖縄県86.7%、長野県88.4%、北海道90.3%と9月の稼働は高い。これらの県は客室が人口比で多くても、来訪者の絶対数がさらに大きい。山梨県は密度2位ながら稼働82.2%と中央値をやや下回り、富士五湖や石和の需要が秋の連休と紅葉期に集中する季節性が9月の数字に出ている。青森県は密度16.6室で中央値付近だが稼働95.5%と46県で最も高く、客室数が19,283室と限られる中で9月の観光・出張需要を受け止めている。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(9月推定稼働率は46都道府県・11,747施設/客室755,381室、主要予約サイト掲載ベース)/客室密度は厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」・総務省「人口推計」

散布図の左上、すなわち「密度が薄く稼働が高い」象限は、既存施設にとっては単価を取りやすい環境であり、新規供給にとっては受け皿を厚くする余地がある市場といえる。もっとも、推定稼働率は9月単月の値で、OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。供給余地の判断は、通年の稼働と後述する延べ宿泊者数の規模を合わせて行いたい。

客室密度 × 推定成約ADR — 薄い県ほど高単価という関係は弱い

次に横軸を同じ客室密度、縦軸を2026年9月の推定成約ADR(確定月・税抜相当、エリア中央値)に替えてみる。対象は47都道府県・計17,136施設で、相関係数は0.17とこちらも弱い。全国中央値は¥9,700で、最も高いのは京都府¥14,200(N=604)、神奈川県¥14,200(N=579)、大分県¥14,000(N=470)、東京都¥13,700(N=1,139)の順だった。神奈川県は密度が46位でありながらADRは全国2位で、箱根・湯河原・鎌倉のリゾート・旅館需要と横浜のシティ需要が人口比で少ない客室に集まる構造が単価を支えている。

密度の厚い県を見ると、沖縄県¥12,000、長野県¥11,800、山梨県¥11,700、石川県¥12,400と全国中央値を2,000〜2,700円上回り、客室が厚くても単価は維持されている。北海道¥11,500も中央値の上に位置する。一方で大阪府は¥9,300と、前年同月(¥13,800)から大きく下がった。2025年の大阪・関西万博で押し上げられた9月の単価が、翌年に平常水準へ戻る過程にあると読むのが自然で、密度(14.6室)そのものの変化(前年度比-0.2%)ではない。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(推定成約ADRは2026年9月・確定月、47都道府県 N=17,136施設)/客室密度は厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」・総務省「人口推計」

ここから読み取れるのは、県単位の客室密度は単価の説明変数としては弱く、単価を決めているのは「その県に来る需要の質」だということである。観光目的の比率、外国人比率、滞在型リゾートの有無といった要因が、人口比の客室数より強く働く。客室密度は供給の厚さを測る尺度として用い、単価と稼働は需要側の指標と組み合わせて読むのが実務的な使い方になる。

大都市近郊県の構造 — 埼玉・神奈川・千葉・奈良の宿泊需要は隣接大都市へ流れる

客室密度の下位に首都圏・近畿圏の近郊県が並ぶ理由を、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)の延べ宿泊者数で確認する。人口1人あたりの年間延べ宿泊者数(人泊)は、東京都7.61、京都府13.16、大阪府6.71に対し、埼玉県0.74、神奈川県2.90、奈良県2.47、千葉県4.52と、近郊県は大都市の数分の一にとどまる。埼玉県の延べ宿泊者数5,403,310人泊は、人口約733万人の県としては東京都の20分の1の規模で、人口1,000人あたり客室数3.7室という薄さと整合する。

この構造は「近郊県に需要がない」ことを意味しない。埼玉県や神奈川県を訪れる出張者・来訪者の多くは、鉄道で30分〜1時間圏にある東京都心の客室に泊まり、日中に移動する。奈良県も同様で、延べ宿泊者数3,177,210人泊のうち77.5%が観光目的の宿泊者が50%以上を占める施設での宿泊と全国で最も高い観光地型でありながら、人口1人あたり人泊は2.47にとどまる。京都府の13.16人泊、大阪府の6.71人泊と比べると、奈良を訪れる観光客の宿泊地が京都・大阪側に置かれている様子が数字に表れる。

千葉県は近郊県の中では例外的に人口1人あたり4.52人泊と高く、客室1室あたり年間450人泊は東京都(492人泊)に匹敵する。東京ディズニーリゾートと成田空港という2つの滞在拠点が、県内に宿泊を留める力を持っているためで、観光目的50%以上施設の人泊比率61.5%にその性格が出ている。客室密度10.0室は全国平均を下回るが、1室あたりの回転は大都市並みで、近郊県の中でも供給が需要に追いついている例といえる。

大都市と近郊県の客室密度・延べ宿泊者数(2025年)・外国人比率
都府県人口1,000人あたり客室数2025年 延べ宿泊者数(人泊)人口1人あたり人泊客室1室あたり年間人泊外国人比率観光目的50%以上の施設の人泊比率
東京都15.5107,900,6107.6149255.7%47.1%
京都府19.933,157,29013.1666055.2%72.7%
大阪府14.658,772,8206.7145841.7%51.7%
埼玉県3.75,403,3100.742005.2%16.0%
神奈川県6.426,794,9902.9045718.4%40.7%
千葉県10.028,244,1904.5245015.5%61.5%
奈良県8.03,177,2102.4730716.4%77.5%

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年1〜12月(年の確定値、全施設集計)、厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」、総務省「人口推計」よりホテルバンク編集部作成

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値)、厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」、総務省「人口推計」よりホテルバンク編集部作成

外国人比率でも流れは明確で、東京都55.7%、京都府55.2%、大阪府41.7%に対し、埼玉県5.2%、奈良県16.4%、神奈川県18.4%、千葉県15.5%と、訪日客の宿泊はほぼ大都市側に集約されている。近郊県にとっては、都心の客室が高稼働・高単価で推移する局面ほど、「都心より手前で泊まる」選択肢を提示できる余地が広がる。神奈川県の推定成約ADRが全国2位にあることは、人口比で薄い客室が高い需要に支えられている証左でもあり、受け皿を厚くするポテンシャルがあるエリアだと位置づけられる。

客室の平均規模 — 大阪73.7室・京都52.1室・宮城51.0室、沖縄16.1室

検索でよく問われる「ホテルの客室数の平均」を県別に見ると、1施設あたり客室数は大阪府73.7室が突出し、京都府52.1室、宮城県51.0室、千葉県50.7室、愛知県47.4室が続く。大阪府は1,739施設で128,218室を持ち、大型の宿泊特化型ホテルとシティホテルが施設の中心を占める。京都府は965施設と施設数は多くないが、簡易宿所3,890施設が別枠で存在するため、旅館・ホテル営業に残る施設の平均規模が大きく出る構造にある。簡易宿所まで分母に含めたときに県別の供給順位がどう入れ替わるかは、県別の宿泊供給は分母で入れ替わる — 簡易宿所44,901施設で京都21位→5位が掘り下げている。

平均規模が小さいのは沖縄県16.1室、福井県18.9室、山梨県20.5室、長野県21.6室で、いずれも客室密度の上位県と重なる。ペンション、小規模旅館、コンドミニアム型の施設が多い観光地では、客室が「多数の小さな施設」に分散しているため、密度が厚くても1施設の規模は小さい。沖縄県は施設数が前年度比+13.3%(3,799→4,304施設)と大きく増え、客室数の伸び+2.1%を上回ったため、平均規模は17.8室から16.1室へさらに小さくなった。

東京都も同じ方向に動いている。施設数が5,858から8,196へ+39.9%増える一方で客室数は+3.1%にとどまり、平均規模は36.3室から26.8室へ約10室縮んだ。年度中の営業許可件数は2,602件と全国の4分の1を占め、小規模な施設の許可取得が続いたことがうかがえる。福岡県(施設数+26.8%)、愛知県(+17.9%)でも同様の動きがあり、大都市では「大型ホテルが増えて平均が上がる」のではなく「小規模施設が増えて平均が下がる」局面にある。これは宿泊市場の裾野が広がっているサインでもあり、小規模運営者にとっては参入の間口が広がった1年と評価できる。

出典:厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」(2026年3月末現在)よりホテルバンク編集部作成。上位10県と下位8県を表示、点線は全国平均

47都道府県の一覧表 — 客室密度順

以下に47都道府県の客室密度、客室数、施設数、1施設平均客室数、9月推定稼働率、9月推定成約ADRをまとめた。推定稼働率は主要予約サイト掲載ベースの推定値、推定成約ADRは確定月(2026年9月)のエリア中央値で、括弧内は対象施設数である。鹿児島県の9月推定稼働率は本稿の集計対象外とした。

47都道府県の客室密度・客室数・施設数・平均規模と2026年9月の推定稼働率・推定成約ADR(客室密度順)
順位都道府県人口1,000人あたり客室数客室数施設数1施設平均客室数9月推定稼働率9月推定成約ADR(N)
1沖縄県47.269,2004,30416.186.7%¥12,040(515)
2山梨県34.427,2391,32820.582.2%¥11,655(306)
3長野県31.963,4742,94521.688.4%¥11,841(818)
4石川県26.328,90370640.984.2%¥12,389(242)
5北海道23.8119,9142,88641.690.3%¥11,456(960)
6福島県23.440,7381,35730.085.4%¥7,656(445)
7大分県22.624,5271,00424.478.8%¥14,027(470)
8福井県21.615,93284218.984.5%¥10,175(219)
9新潟県20.943,8691,94822.585.9%¥9,360(418)
10京都府19.950,23496552.184.0%¥14,168(604)
11栃木県19.536,8391,40326.381.2%¥10,930(408)
12静岡県19.267,8502,45727.683.0%¥12,990(862)
13鳥取県19.110,13631532.285.5%¥8,708(152)
14和歌山県18.916,63757429.079.0%¥9,411(218)
15長崎県18.723,35668734.077.2%¥7,988(257)
16岩手県18.621,26170330.285.8%¥7,611(251)
17山形県18.518,72272925.787.4%¥9,291(290)
18鹿児島県18.127,72485532.4—¥6,773(320)
19秋田県17.415,57748232.386.4%¥8,245(173)
20島根県17.411,14636530.585.2%¥9,693(181)
21三重県17.229,4411,26523.383.1%¥12,240(357)
22青森県16.619,28355035.195.5%¥9,888(182)
23熊本県16.027,22895828.488.0%¥10,995(404)
24富山県15.915,87939240.583.5%¥8,326(168)
25群馬県15.930,0561,12826.681.4%¥11,817(440)
26香川県15.814,47933643.180.1%¥8,317(163)
27高知県15.710,29232232.086.9%¥8,144(120)
28東京都15.5219,4618,19626.889.8%¥13,660(1,139)
29宮崎県15.315,76640439.078.4%¥7,362(169)
30大阪府14.6128,2181,73973.780.4%¥9,310(655)
31宮城県14.632,78464351.087.9%¥9,659(297)
32岐阜県14.327,3241,07825.388.1%¥11,469(379)
33愛媛県14.118,03341743.282.8%¥7,136(210)
34山口県14.118,02554233.382.0%¥7,556(198)
35徳島県13.69,34540623.082.4%¥6,633(141)
36福岡県13.166,4611,66739.988.3%¥11,594(477)
37広島県12.333,45179042.388.5%¥9,625(301)
38佐賀県12.29,61735726.980.3%¥12,295(157)
39岡山県11.821,58878127.685.1%¥9,137(191)
40滋賀県10.915,24048631.485.7%¥8,278(158)
41茨城県10.228,68187532.878.3%¥6,939(314)
42千葉県10.062,7721,23750.783.5%¥10,680(424)
43愛知県9.168,2111,43847.490.4%¥12,372(505)
44兵庫県8.846,8561,41333.286.3%¥12,749(547)
45奈良県8.010,34143923.682.5%¥12,323(136)
46神奈川県6.458,6851,32844.284.2%¥14,154(579)
47埼玉県3.726,98673136.984.7%¥7,876(216)
全国14.51,797,78156,77331.7——

出典:厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」(2026年3月末現在)、総務省「人口推計」(2024年10月1日現在)、メトロエンジンリサーチ(2026年9月・推定値)よりホテルバンク編集部作成

運営者・投資家への示唆 — 客室密度は「受け皿の厚さ」として使う

第一に、客室密度が薄く稼働が高い県は、既存施設にとって単価形成の余地が大きい市場である。愛知県、広島県、福岡県、兵庫県、岡山県のように人口比で客室が少なく9月稼働が中央値を上回る県、そして神奈川県のように薄い客室が全国2位の単価で埋まる県では、繁忙期の価格を段階的に引き上げる収益機会がある。ブッキングカーブを見ながら、リードタイム45日以内の残室推移に合わせて価格を上げていく運用が有効といえる。

第二に、新規供給を検討する側にとって、客室密度の薄さは「受け皿が足りない」サインになり得るが、近郊県では隣接大都市への需要流出という構造を織り込む必要がある。千葉県の例が示すように、県内に滞在を留める拠点(テーマパーク、空港、温泉地)があれば1室あたり年間450人泊という大都市並みの回転が成立する。拠点性のない立地では、都心の高単価局面を受ける「手前泊」需要を取り込む価格設計が現実的な戦略になる。2026年の新規開業客室を既存ストック比で見た県別の供給インパクトについては、ホテル新規供給2026、埼玉8.0%・熊本7.9% — 既存客室比で見る47都道府県も参考になる。

第三に、「ホテルの客室数の平均」は地域によって16室から74室まで幅があり、競合比較や開発規模の検討では全国平均31.7室ではなく県別の平均規模を基準にしたい。小規模施設の許可が増えた大都市では、同じ商圏に数十室規模の施設が増えており、既存の大型ホテルは団体・MICE・長期滞在といった規模の経済が働くセグメントで差別化する方向性が見えてくる。

まとめ

公的統計で見た2026年3月末の日本の宿泊供給は、旅館・ホテル営業56,773施設・1,797,781室、1施設平均31.7室、人口1,000人あたり14.5室である。客室密度は沖縄・山梨・長野の観光地型の県で厚く、埼玉・神奈川・奈良の大都市近郊県で薄い。密度と9月の推定稼働率・推定成約ADRの相関はいずれも弱く、県単位の客室の厚さは需給や単価を直接には決めていない。近郊県の薄さは需要がないためではなく隣接大都市への流出の結果であり、神奈川県のように薄い客室が高単価で埋まるエリアには受け皿を厚くするポテンシャルが残る。平均規模は大阪・京都・宮城で大きく、沖縄・甲信・北陸で小さい。大都市では小規模施設の増加で平均規模が縮小しており、宿泊市場の裾野が広がる局面にあるといえる。

よくある質問

Q. ホテルの客室数の平均はいくつですか。
厚生労働省「令和7年度衛生行政報告例」(2026年3月末現在)では、旅館業法の旅館・ホテル営業56,773施設・1,797,781室で、1施設あたり平均31.7室です。都道府県別では大阪府73.7室が最も大きく、沖縄県16.1室が最も小さくなっています。

Q. 人口あたりの客室数が多い県はどこですか。
人口1,000人あたり客室数は沖縄県47.2室、山梨県34.4室、長野県31.9室が上位です。全国平均は14.5室で、東京都は15.5室、大阪府は14.6室とほぼ全国平均に近い水準です。

Q. 埼玉県や奈良県の客室数が少ないのはなぜですか。
隣接する東京都や京都府・大阪府に宿泊需要が流れる構造があるためです。観光庁の2025年確定値では、人口1人あたりの延べ宿泊者数は東京都7.61人泊に対し埼玉県0.74人泊、京都府13.16人泊に対し奈良県2.47人泊で、来訪者の宿泊地が大都市側に置かれていることが分かります。

推定稼働率・推定成約ADRに関する注意:本稿の9月推定稼働率はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。対象は主要予約サイトに掲載された施設(46都道府県・11,747施設/客室755,381室)である。推定成約ADRはREIT開示実績との照合で誤差中央値約7%の推定値(税抜相当)で、確定月(2026年9月)の値を用いている。客室数は旅館業法の許可単位で集計された年度末の値であり、休業中・未稼働の施設を含む場合がある。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

客室数・施設数は厚生労働省「衛生行政報告例」の旅館・ホテル営業(令和7年度末=2026年3月31日現在、前年度比較は令和6年度末)、人口は総務省「人口推計」(2024年10月1日現在)、延べ宿泊者数・外国人比率・観光目的比率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値(確定値・全施設集計)。推定稼働率(2026年9月)と推定成約ADR(2026年9月・確定月)はメトロエンジンリサーチの集計である。

■ 試算前提

客室密度=客室数÷総人口×1,000、客室の平均規模=客室数÷施設数、人口1人あたり人泊=延べ宿泊者数÷総人口、客室1室あたり年間人泊=延べ宿泊者数÷客室数。推定稼働率は2026年9月のOTA掲載在庫の消化状況に基づく推定値(46都道府県・11,747施設/客室755,381室)、推定成約ADRは都道府県ごとの対象施設の中央値(47都道府県・N=17,136施設)。相関係数は県単位の値(稼働率46県、ADR47県)で算出した。

■ 限界・留意点

客室数(2026年3月末)と人口(2024年10月1日)の基準日には約1年半のずれがある。客室数は旅館業法の許可単位の年度末値で、簡易宿所営業を含まず、休業中・未稼働の施設を含む場合がある。推定稼働率は9月単月・OTA販売在庫ベースの推定値で施設全体の実稼働率とは異なり、鹿児島県は集計対象外。推定成約ADRは推定値(税抜相当)で、各施設の実際の成約価格とは異なる。

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